説明

偏光膜

【課題】 リオトロピック液晶化合物を配向させてなる、二色比の高い偏光膜を実現する。
【解決手段】 リオトロピック液晶化合物からなる有機色素を配向させてなる偏光膜であって、前記偏光膜がアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を含有し、前記アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が前記有機色素100重量部に対して10重量部未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリオトロピック液晶化合物を配向させてなる偏光膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいては液晶を通過する光線の旋光性を制御するため偏光板が用いられている。従来これらの偏光板にはポリビニルアルコール等の樹脂フィルムをヨウ素や二色性色素で染色し、一方向に延伸した偏光子が広く使用されている。しかし上記の偏光子は色素や樹脂フィルムの種類によっては耐熱性や耐光性が十分でなく、また液晶ディスプレイの大型化にともないフィルムの延伸装置が大型化するという問題がある。
【0003】
これに対してガラス板や樹脂フィルムなどの基材上にリオトロピック液晶化合物を含むコーティング液を塗布し、リオトロピック液晶化合物を配向させて偏光膜を形成する方法が知られている。リオトロピック液晶化合物は溶液中で液晶性を示す超分子会合体を形成しており、これを含むコーティング液に剪断応力を加えて流動させると、超分子会合体の長軸方向が流動方向に配向する。そのようなリオトロピック液晶化合物としてアゾ系化合物(特許文献1)、ペリレン系化合物(特許文献2、3)、アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物(特許文献4)などがある。リオトロピック液晶化合物の偏光膜は延伸する必要がないため、ポリビニルアルコールフィルムによる偏光子よりも広幅の偏光膜を得やすく、また薄くできる特徴がある。
【0004】
通常、リオトロピック液晶化合物は剪断応力やラビング処理などの配向規制力により配向する。しかし従来の偏光膜は配向が不十分、すなわちリオトロピック液晶化合物分子の方向が十分揃っていないため二色比が低いことが問題であった。このためかかる問題の解決された高い二色比を示す偏光膜が求められていた。
【特許文献1】特開2006−323377号公報
【特許文献2】特開2005−154746号公報
【特許文献3】特表平8−511109号公報
【特許文献4】特表2007−512236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はリオトロピック液晶化合物を配向させてなる、二色比の高い偏光膜を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはリオトロピック液晶化合物からなる有機色素を配向させた偏光膜の二色比を向上させるべく鋭意検討した結果、アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を少量添加することにより二色比の高い偏光膜が得られることを見出した。少量とはアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が有機色素100重量部に対して0重量部を超え10重量部未満という意味である。
【0007】
従来の偏光膜において二色比が低くなる原因は、有機色素からなる超分子会合体が完全には同じ方向に配向しておらず、互いに若干ずれた方向を向いて配向しているためであると考えられる。本発明者らの推測によれば本発明の偏光膜はアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を少量添加することにより、アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物が隣接する超分子会合体の間隙に入り込み、超分子会合体どうしをつなぐ新たな静電気的結合が生じて、隣接する超分子会合体が同じ方向に配向しやすくなり、二色比が高くなるものと考えられる。
【0008】
本発明の要旨は次の通りである。
(1)本発明の偏光膜はリオトロピック液晶化合物からなる有機色素を配向させてなる偏光膜であって、前記偏光膜がアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を含有し、前記アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が前記有機色素100重量部に対して10重量部未満であることを特徴とする。
(2)本発明の偏光膜は前記アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物が下記一般式(I)で表わされる化合物であることを特徴とする。
【化1】

式中、kおよびlはそれぞれ独立して0〜4の整数、mおよびnはそれぞれ独立して0〜6の整数を表わすが、k、l、m、nのうち少なくとも一つは0でなく、Mは対イオンを表わす。
(3)本発明の偏光膜は前記有機色素がアゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物のいずれかであることを特徴とする。
(4)本発明の偏光膜は前記偏光膜の厚みが0.05μm〜5μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
リオトロピック液晶化合物からなる有機色素にアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を少量添加することにより二色比の高い偏光膜が得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[偏光膜]
本発明の偏光膜はリオトロピック液晶化合物からなる有機色素を配向させてなる偏光膜であって、偏光膜がアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を含有し、アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が有機色素100重量部に対して10重量部未満である。本発明の偏光膜は従来の偏光膜に比べて二色比が高いという特徴を有する。本発明の偏光膜の二色比は、好ましくは25以上である。
【0011】
本発明の偏光膜の厚みは、好ましくは0.05μm〜5μmであり、より好ましくは0.1μm〜3μmである。前記の範囲の厚みとすることにより二色比の高い偏光膜を得ることができる。
【0012】
本発明の偏光膜はリオトロピック液晶化合物からなる有機色素とアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物以外に他の液晶化合物や界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤などの任意の添加剤を含むことができる。添加剤の含有量は有機色素100重量部に対して10重量部未満が好ましい。
【0013】
[有機色素]
本発明に用いられる有機色素はリオトロピック液晶化合物からなる。リオトロピック液晶化合物とは溶媒に溶解させた溶液状態で温度や濃度を変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす性質をもつ液晶化合物をいう。発現する液晶相に特に制限はないが、好ましくはネマチック液晶相である。液晶相は偏光顕微鏡で観察される光学模様により確認、識別される。
【0014】
本発明に用いられる有機色素は主に炭素、水素、窒素、酸素などの原子で構成される有機化合物であって、可視光の波長380nm〜780nmのいずれかの波長の光を吸収するものをいう。有機色素は金属錯体として金属イオンを含むものであってもよい。
【0015】
本発明に用いられる有機色素は、好ましくはアゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物のいずれかである。
【0016】
本発明に用いられる有機色素は、好ましくはペリレン系化合物である。ペリレン系化合物は、好ましくは下記一般式(II)で表わされる化合物である。一般式(II)中、Qは式(a)または式(b)を表わす。L、L、L、Lはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはアミノ基を表わす。o、p、q、rはそれぞれ0〜2の整数、sは1〜4の整数を表わし、o+p+q+r+s≦8を満足する。Mは対イオンを表わす。式(a)中、Qはそれぞれ独立してフェニル基、フェニルアルキル基またはナフチル基を表わす(これらの基は置換基を有していてもよい)。Lは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはアミノ基を表わし、tは0〜4の整数を表わす。
【化2】

【0017】
上記一般式(II)で表わされるペリレン系化合物は、例えば特表平8−511109号公報、特開2005−154746号公報、特開2006−098927号公報に記載の方法に従って得ることができる。
【0018】
上記一般式(II)中、対イオンMは、好ましくは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、金属イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンである。金属イオンとしては、例えばNa、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。例えば本発明の偏光膜が水溶液から生成される場合、対イオンMは当初水への溶解性を向上させる基を選択しておき、成膜後は耐水性を高めるため水に不溶性または難溶性の基に置換することもできる。
【0019】
上記一般式(II)のリオトロピック液晶化合物は水などの親水性溶媒に可溶で、かつそれ自身が単独で安定な液晶相を形成するため高度に配向する。その結果二色比の高い偏光膜を得ることができる。
【0020】
[アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物]
本発明に用いられるアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物は偏光膜中に有機色素100重量部に対して10重量部未満含まれる。アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量は、好ましくは1重量部以上、6重量部未満である。アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量は上記の範囲で適宜決定される。例えば個々の超分子会合体を形成する有機色素分子が多数である、すなわち個々の超分子会合体の分子量が大きい場合はアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量は少なめに設定される。逆に個々の超分子会合体を形成する有機色素分子が少数である、すなわち個々の超分子会合体の分子量が小さい場合はアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量は多めに設定される。
【0021】
アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が0重量部すなわち含有されない場合は、隣接する超分子会合体の間隙にアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物が入って超分子会合体が同じ方向に配向する効果は得られない。一方10重量部以上である場合はアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物が過剰に存在することにより超分子会合体の配向が阻害される場合がある。
【0022】
アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物は、好ましくは下記一般式(I)で表わされる化合物である。
【化1】

式中、kおよびlはそれぞれ独立して0〜4の整数、mおよびnはそれぞれ独立して0〜6の整数を表わすが、k、l、m、nのうち少なくとも一つは0でなく、Mは対イオンを表わす。対イオンMは、好ましくは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、金属イオンまたは置換もしくは無置換のアンモニウムイオンである。金属イオンとしては、例えばNa、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。
【0023】
一般式(I)で表わされるアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物は、例えば特表2007−512236号公報(0054段落〜0072段落)に記載の方法により得ることができる。
【0024】
[製法]
本発明の偏光膜の製造方法に特に制限はないが、例えば、リオトロピック液晶化合物からなる有機色素と、アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物と、前記の有機色素とアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物とを溶解する溶媒とを含むコーティング液を基材に塗布し乾燥させて製造される。溶媒に特に制限はないが、好ましくは親水性溶媒が用いられる。親水性溶媒は、好ましくは水、アルコール類、セロソルブ類である。コーティング液は、好ましくは全固形分濃度が1重量%〜50重量%である。またコーティング液は全固形分濃度が1重量%〜50重量%の範囲のいずれかで液晶相を示すことが好ましい。コーティング液を塗布する基材に特に制限はなくガラス板や樹脂フィルムが用いられる。ガラス板としては液晶セルに用いられる無アルカリガラス板が好ましい。樹脂フィルムの素材としてはスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。コーティング液の塗布方法に特に制限はなく任意のコータ、例えばスライドコータ、スロットダイコータ、バーコータ、ロッドコータ、カーテンコータ、スプレイコータなどを用いた塗布方法が用いられる。コーティング液の乾燥方法に特に制限はなく任意の乾燥方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが用いられる。
【0025】
[偏光膜の用途]
本発明の偏光膜は任意の光学用途に用いられる。特にパソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジなどの家庭用機器、バックモニター、カーナビゲーション、カーオーディオなどの車載用機器、店舗用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの医療機器の液晶表示装置に好適に用いられる。
【実施例】
【0026】
[合成例1]
<アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸の合成>
攪拌器を備えた反応容器に、氷酢酸12.5リットルとo−フェニレンジアミン275gとアセナフテンキノン490gとを入れて混合し、混合物を室温(23℃)窒素雰囲気下で3時間攪拌して下記の反応経路に示すように反応させた。次に反応容器内の沈殿物を濾過してアセナフト[1,2−b]キノキサリンを含む粗生成物を得た。この粗生成物を熱氷酢酸で再結晶を行なって精製しアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を単離した。
【0027】
反応容器にアセナフト[1,2−b]キノキサリン300gと30%発煙硫酸2.1リットルを入れて混合し、室温(23℃)で48時間攪拌して混合物を反応させた。次に反応容器内の沈殿物を濾過してアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸を含む粗生成物を得た。この粗生成物をイオン交換水に溶解し、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。得られた水溶液を逆浸透膜フィルター(日東電工社製 商品名「NTR−7430」)を備えた高圧逆浸透膜エレメント試験装置を用いて残存硫酸を除去して精製し、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムを得た。
【化3】

【0028】
[合成例2]
<アセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸の合成>
攪拌器を備えた反応容器に、ジメチルホルムアミド500mlと3,4−ジアミノ安息香酸8.4gとアセナフテンキノン10gとを入れて混合し、混合物を室温(23℃)窒素雰囲気下で21時間攪拌して下記の反応経路に示すように反応させた。次に反応容器内の沈殿物を濾過してアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸を含む粗生成物を得た。この粗生成物をジメチルホルムアミド、水およびアセトンで洗浄して精製し、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸を単離した。これをイオン交換水に溶解し、さらに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸を得た。
【化4】

【0029】
[実施例1]
リオトロピック液晶化合物からなる有機色素を含む水溶液A(オプティバ社製 商品名「NO15」)100重量部とアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムを含む水溶液B1.6重量部を混合し、室温(23℃)でネマチック液晶相を示すコーティング液Aを調整した。このコーティング液Aをガラス板(松浪ガラス社製 商品名「MATSUNAMI MICRO SLIDE GLASS」)の表面にバーコータ(BUSCHMAN社製 製品名「Mayer rot HS1.5」)を用いて23℃の恒温室内で剪断応力をかけながら一方向に塗布し、コーティング液A中のリオトロピック液晶化合物を配向させ、自然乾燥させて厚み0.42μmの偏光膜を作製した。
【0030】
上記水溶液Aの有機色素の濃度は12.9重量%、上記水溶液Bのアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムの濃度は8重量%である。また上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して1重量部である。この偏光膜の二色比は表1および図1に示すように27.1であった。
【0031】
[実施例2]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムを含む水溶液Bの混合量を8.0重量部とした以外は実施例1と同様の方法で厚み0.48μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して5重量部である。この偏光膜の二色比は表1および図1に示すように28.2であった。
【0032】
[比較例1]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムを含む水溶液Bを混合しなかった以外は実施例1と同様の方法で厚み0.45μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜にアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムは含有されない。この偏光膜の二色比は表1および図1に示すように22.7であった。
【0033】
[比較例2]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムを含む水溶液Bの混合量を16重量部とした以外は実施例1と同様の方法で厚み0.41μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して10重量部である。この偏光膜の二色比は表1および図1に示すように24.4であった。
【表1】

【0034】
[実施例3]
リオトロピック液晶化合物からなる有機色素を含む水溶液A(オプティバ社製 商品名「NO15」)100重量部とアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムを含む水溶液C1.6重量部を混合し、室温(23℃)でネマチック液晶相を示すコーティング液Bを調整した。このコーティング液Aをガラス板(松浪ガラス社製 商品名「MATSUNAMI MICRO SLIDE GLASS」)の表面にバーコータ(BUSCHMAN社製 製品名「Mayer rot HS1.5」)を用いて23℃の恒温室内で剪断応力をかけながら一方向に塗布し、コーティング液B中のリオトロピック液晶化合物を配向させ、自然乾燥させて厚み0.50μmの偏光膜を作製した。
【0035】
上記水溶液Aの有機色素の濃度は12.9重量%、上記水溶液Cのアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムの濃度は8重量%である。また上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して1重量部である。この偏光膜の二色比は表2および図2に示すように27.4であった。
【0036】
[実施例4]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムを含む水溶液Cの混合量を8.0重量部とした以外は実施例3と同様の方法で厚み0.45μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して5重量部である。この偏光膜の二色比は表2および図2に示すように25.5であった。
【0037】
[比較例3]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムを含む水溶液Cを混合しなかった以外は実施例3と同様の方法で厚み0.47μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜にアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムは含有されない。この偏光膜の二色比は表2および図2に示すように22.7であった。
【0038】
[比較例4]
アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムを含む水溶液Cの混合量を16重量部とした以外は実施例3と同様の方法で厚み0.43μmの偏光膜を作製した。上記偏光膜中、アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムの含有量は有機色素100重量部に対して10重量部である。この偏光膜の二色比は表2および図2に示すように23.0であった。
【表2】

【0039】
[評価]
(1)コーティング液がアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムまたはアセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムを含まないと二色比が25よりかなり低い。
(2)アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−スルホン酸ナトリウムの場合、二色比は含有量が5重量部のとき最も高く、1重量部のときは少し低くなるがまだ25より高い。10重量部のときは25より低くなるが、含まないときよりは高い。
(3)アセナフト[1,2−b]キノキサリン−2−カルボン酸ナトリウムの場合、二色比は含有量が1重量部のとき最も高く、5重量部のときは少し低くなるがまだ25より高い。10重量部のときは25より低くなるが、含まないときよりは高い。
【0040】
[測定方法]
[液晶相の偏光顕微鏡観察]
二枚のスライドガラスでアゾ系化合物を含む溶液を挟み込み、偏光顕微鏡(オリンパス社製 商品名「BX50」)を用いて温度を変化させながら液晶相を観察した。
【0041】
[偏光膜の厚みの測定方法]
偏光膜の一部を剥離し、三次元非接触表面形状計測システム(菱化システム社製 製品名「Micormap MM5200」)を用いて、段差を計測して偏光膜の厚みを求めた。
【0042】
[二色比の測定方法]
グラントムソン偏光子を備えた分光光度計(日本分光社製 製品名「U−4100」)を用いて、波長600nmの直線偏光の測定光を入射させ、最大透過率方向の直線偏光の透過率kおよび最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率kを求め、次式により二色比を算出した。
二色比=log(1/k)/log(1/k
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1、2および比較例1、2における二色比のグラフ
【図2】実施例3、4および比較例3、4における二色比のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リオトロピック液晶化合物からなる有機色素を配向させてなる偏光膜であって、前記偏光膜がアセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物を含有し、前記アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物の含有量が前記有機色素100重量部に対して10重量部未満であることを特徴とする偏光膜。
【請求項2】
前記アセナフト[1,2−b]キノキサリン系化合物が下記一般式(I)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の偏光膜。
【化1】

(式中、kおよびlはそれぞれ独立して0〜4の整数、mおよびnはそれぞれ独立して0〜6の整数を表わすが、k、l、m、nのうち少なくとも一つは0でなく、Mは対イオンを表わす。)
【請求項3】
前記有機色素がアゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物、メロシアニン系化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏光膜。
【請求項4】
前記偏光膜の厚みが0.05μm〜5μmであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の偏光膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−134033(P2009−134033A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309610(P2007−309610)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】