説明

偏光選択性散乱セキュリティデバイス及びその製造方法

分散相、及び場合により1種以上の添加剤を含むLCPポリマーの、印刷されたパターン化複屈折マトリクスを含む偏光選択性散乱セキュリティデバイスであって、LCPポリマーの複屈折マトリクスの通常又は異常な屈折率が、同一方向で分散層の屈折率の一方にほぼ合致するが、他の屈折率が合致しない、偏光選択性散乱セキュリティデバイス。更に、このようなセキュリティデバイスの製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に書類及び/又は製品の偽造防止のための認証機能としてのセキュリティデバイスに関する。
【0002】
偽造を防止するため、有益な書類及び製品を保護しようとする継続的な要求がある。構築は非常に困難であるが、調査が容易であることが好ましい認証機能を加えることは、これらの製品の偽造防止に役立つ。
【0003】
重合性液晶(LCP’s)は、特定の温度範囲内で、ネマチック、スメクチック又はキラルネマチック相のような1種以上の液晶相を示す材料である。更に、LCP’sは、分子の一部である反応基のために重合し得る。重合前、LCP’sはモノマーであるが、重合後にも、得られたポリマーは一般にLCP’sと呼ばれる。LCP’sがモノマー形態であると言及しているテキストにおいては、ポリマー形態は、LCPポリマーと呼ばれる。更に、当業者は、明細書との関連で、及び常識を用いて、ポリマー及びモノマーのLCP’sを識別することができる。LCP’sの重合は、高温下で自発的に誘発され、又は例えば光開始剤又は熱開始剤のような適切な開始剤を用いることにより補助され得る。反応基の通常の具体例は、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、オキセタン、ビニル−エーテル、スチレン及びチオール−エンである。ここで、2個の連結はポリマー形成に必要とされる最小数であるので、反応性末端基により、2個の他の分子と連結を形成する能力を有するモノマーは、単官能性と呼ばれる。2個以上の他の分子との結合を形成する能力を有するモノマーを高官能性と呼ぶ。
【0004】
液晶は、液晶状態における固有の常態と組み合わせた異方性分子形状のために異方性バルク特性を示し得る。それらのうち、異方特性は、複屈折として知られている、屈折率の違いであり得る。ネマチック相において、液晶分子は、いわゆる配向子の方向に局所配列され、この配向子に沿った屈折率は異常な屈折率(ne)であり、配向子と垂直方向の屈折率、正常な屈折率(no)とは異なる。液晶以外の他の物質、例えば、延伸ポリマーフィルム又は結晶性鉱物が複屈折を示し得る。
【0005】
液晶材料は種々の用途を有しており、これについての更なる情報は、例えば、Optics of Liquid Crystal Displays(by P.Yeh and C.Gu,1999,Wiley,New York)、The Physics of Liquid Crystals(by P.G.de Gennes and J.Prost,1995,Clarendon Press,Oxford)のような多くの書籍で見ることができる。
【0006】
周知の用途は液晶画面技術である。図1は、いわゆるTN液晶セルの概略図を示す。TN液晶セルにおいては、ネマチック液晶材料の層は、その偏光方向が直交する2つの偏光子の間に位置する。液晶材料の配列は、表面を配列することにより、適用され得る電場により誘導される。
【0007】
オフ状態においては、電場が適用されず、液晶材料は導波路として役割を果たすように配向され、光が第二の偏光子を通過するように、液晶材料を通過する光の偏光を90°変化させる。次いで、セルは透明である。場をオン状態にすることにより、液晶材料は、光が第二の偏光子を通過することができず、その結果セルを通過しないように、通過する光の偏光を変化させないように配向される。従って、セルは透明でない。
【0008】
他の用途は、図2に示すようなポリマー分散型液晶(PDLC)である。PDLCは、ポリマーマトリクス中に分散する非重合性液晶相からなる材料の層からなる。液晶材料は異方性であり、これは光の異なる偏光方向に対して2種の屈折率、ne及びnoを有することを意味する。ポリマーマトリクスは等方性であり、これは、1種の屈折率nのみを有することを意味する。液晶層は、マイクロメートルの桁のサイズを有する液滴を形成する。電場が適用される場合、全液晶液滴は電場方向に配列される。液晶材料及びポリマーマトリクスの屈折率は、PDLCの平面における屈折率が適合するように選択される。この場合、材料を通過する光は、1種の屈折率のみと相互作用する。従って、光は散乱せず、層は透明である。PDLCに電場が適用されない場合、液晶材料の各液滴は異なって配列される。これは、PDLCの平面における屈折率が、種々の液滴とポリマーマトリクスとの間で異なることを意味する。これは、材料を通過する光の散乱を導き、層は不透明である。
【0009】
液晶材料の他の用途はコレステリックフィルムである。図3に、コレステリック層の概略図を示す。コレステリック相においては、液晶分子は全て、1つの平面内で一方向に配列されているが(図において水平)、配列の方向は、図3に示すように、平面に対して垂直方向に回転する。配列の方向が360°回転する距離はピッチと呼ばれる。配列の周期的な変化は、ブラッグ格子として機能するコレステリックフィルムを生じる。波長λが、λ=ρ**cos(θ)(式中、ρはピッチサイズであり、nは屈折率であり、θは入射光の方向とコレステリックフィルムの表面に対する垂線の間の角度である)である場合、材料は光を反射する。これは、これらのコレステリックフィルムの反射色が角度依存であることを意味する。結晶材料の配列の回転の掌性に依存し、環状偏光の唯一の掌性が反射することに留意されたい。このタイプの材料は、光学的用途並びに装飾品又はセキュリティ用途の両方に用いられる。
【0010】
先行技術において、液晶材料がコレステリック相を有するPDLC系の組み合わせは、例えばEP0803525Aにおいても公知である。図4に、コレステリックPDLCを示す。コレステリックであるマトリクス、及び液晶であり、コレステリック及び同時配列でもある分散相を考慮する場合、全体の相は均一にコレステリックであり、その結果非散乱性である。電場が適用される場合、液晶相の配列が変化し、層は均一でなく、その結果PDLCは散乱している。
【0011】
図5は、複屈折層(マトリクス)を通過する光の偏光方向に対する散乱依存性の概略図を示し、ここで他の層は0.1〜10μmの範囲の直径の領域内で分散する。両方の層は、UV、可視光又は通過するスペクトルのIR部分中で電磁波に対して少なくとも部分的に透明である。単層に組み合わされ、マトリクスの屈折率の一方が、分散相の屈折率の一方と相性が良好である場合、このような系は散乱依存の偏光を示し、これら2つの屈折率が通過する光と同じ偏光方向に影響し、2つの屈折率が相性が良好でない他の偏光方向に影響することを示す。
【0012】
通常の屈折率が適合する場合、全ての層は、
−層を通過する非偏光の光の一部を散乱し;
−液晶マトリクスの異常な屈折率と並行して偏光する光を全て散乱し、
−液晶マトリクスの通常な屈折率と並行して偏光する光に対して完全に透明である。
【0013】
層内の散乱効果は、ディプレイ技術の異なる分野において用いられている。散乱偏光子フィルムも、米国特許第5876316号に開示されているように、ポリマーフィルムを分離する相の一軸伸延により、Aphoninら(Liquid Crystal,vol.15,p.395−407,1993年公開)により開示されたように、一軸伸延するポリマー分散液晶フィルムにより、又はDirixら(Journal of Applied Physics, vol. 83,no.6,p.2927−2933,1998年公開)により開示されたように、一軸伸延する等方性粒子分散ポリマーフィルムにより製造することもできる。
【0014】
このような散乱偏光子フィルムは、認証機能として用いることができる。しかし、このような用途は、効果を生成するための更なる伸延を必要とするフィルムをベースとしている。更に、これらの製造技術がフィルムのみを作成できるので、それらはセキュリティ機能として本質的に適しておらず、認識を向上させ、情報を含み得るので、パターン化された構造が好ましい。これらのパターン化された表面は毎回同じ、又は好ましくは毎回特有であり得、これは、例えば、独特なコード、指紋及び虹彩スキャンを持つ形状を有することにより、認証機能のシリアル化又は個性化を可能にするためである。
【0015】
本発明の1つの目的は、先行技術における不都合を示さず、製造が容易な偏光選択性散乱セキュリティデバイスを提供することである。
【0016】
この目的は、分散相を相分離によって生成する、LCP’sの印刷された、パターン化複屈折マトリクスを含む、偏光選択性散乱セキュリティデバイスを提供することによって達成される。次いで、印刷構造体が重合される。相分離は、構造体の重合中及び/又は重合前に、印刷構造体中で生じる。結果として、本発明は、LCPポリマーの複屈折マトリクスの正常又は異常な屈折率が、同じ方向に配列された分散相の一方の屈折率にほぼ合致するが、他の屈折率に合致しない分散相を含むLCPポリマーの印刷されたパターン化複屈折マトリクスを含む、偏光選択性散乱セキュリティデバイスに関する。
【0017】
構造体中の両方の相の材料は、偏光感受性効果が達成されるように選択される。これは、複屈折のLCPマトリクスの正常又は異常な屈折率が、同じ方向に配列された分散相の一方の屈折率にほぼ合致するが、他の屈折率に合致しないことを必要とする。
【0018】
これは、Δn適合がΔn非適合よりも常に小さいという条件で、好ましくはΔn適合が0.05より小さく、更に好ましくはΔn適合が0.01より小さく、好ましくはΔn非適合が0.05より大きいことを意味する。従って、複屈折LCPマトリクスの2つの屈折率の一方が、均一に配列した分散相の屈折率に合致し、他方が合致しない限り、分散相は複屈折であり得る。分散相が複屈折でない場合、この分散相の全ての屈折率はLCPマトリクスの屈折率の1つに合致しなければならない。LCPマトリクスの屈折率は重合中にわずかに変化するため、現実的なセキュリティ機能の生成において、重合は非常に望ましいので、重合化LCPマトリクスの屈折率に合致するように注意しなければならない。
【0019】
利点は、LCPマトリクス内の材料の相分離が偏光感受性散乱効果を作成するための更なる工程を必要しないということである。これにより、特徴の直接利用、従って印刷が可能となる。
【0020】
本発明は、以下の工程:
−第一の材料として1種以上の官能基、液晶又は非液晶分子を含む少なくとも第二の材料を含む、少なくとも1種のLCPを含む混合物を印刷する工程、
−基材上にLCP’sを配列する工程を含む、本発明の偏光選択性散乱セキュリティデバイスの製造方法であって、
−かなりの量の第二の材料の分子をバルクから相分離し、直径0.1〜10ミクロンの範囲の寸法を有する領域を形成し、
−相分離中又は相分離後に、配列した液晶相を重合し、固体マトリクスを形成する製造方法にも関する。
【0021】
場合により、第二の材料、すなわち、相分離領域は同様に重合され、全体の印刷が確実であるという利点を有し、その結果、優れた機械的特性を構造体に与えるとともに相分離領域の起こり得る破裂を防止し、印刷物からの材料の減少、損失並びに潜在的な漏洩のいずれかの影響を引き起こし得る。
【0022】
複屈折LCPマトリクス並びに分散相を構成する材料は必ずしも単一成分とは限らず、両方の相における材料の混合物も可能である。
【0023】
相分離又はマトリクス中に包埋した第二の材料は、特定の混合物に依存し、重合性又は重合性でなく、あるいは部分的に重合性であり得る。第二の材料が、非液晶材料であることが好ましく、更に好ましくは非液晶の重合性材料である。好ましくは、印刷混合物は、50質量%未満、非常に好ましくは30質量%未満、更に好ましくは15質量%未満の相分離画分を含む。
【0024】
複屈折でない場合、混合物への添加前、従って印刷前に分散相を重合させることも可能である。これはいくつかの利点を有する。分散相は、相分離を詳細に制御する必要なくサイズを正確に制御することができる。これは、特に、好ましくは球体又は球体様の予備重合した単分散構造体を用いる場合のサイズのより少ない変化を可能にし、例えば、棒状、円錐状、ピラミッド状等の他の形態をもとり得る。
【0025】
分散相のサイズ及び構造の高度な制御は、他の光学的特徴、例えばブラッグ散乱を生じ得る。例えば、分散相は、明確な結晶構造中にパックされた球体からなる場合、結晶構造のサイズに依存して特定の波長のブラッグ散乱を示すであろう。複屈折マトリックスのため、これら散乱波長は偏光に依存し、その結果、異なる偏光に対して異なる透過性を有する。
【0026】
更に、適切な程度に到達するまでに相分離に必要な時間は、添加前に重合化した分散相を用いる場合に、生産工程から除外することができる。また、このような構造体を用いることによって、相分離によりこれらの添加剤が2層のいずれかに完全に移動しないため、分散相に含まれるか又排除される添加剤を制御することは容易である。種々の可能な添加剤を以下に詳細に説明する。
【0027】
混合物の印刷は、接触印刷又は非接触印刷のような標準的な方法により実施することができる。しかし、インクジェット印刷により印刷を実施することが好ましい。印刷法としてインクジェット印刷を選択した場合、例えば、個々の書類又は製品をそれぞれたどり、追跡し、若しくは生体情報のような特定の情報を含ませる必要性が存在する場合に、独特なパターン(すなわち、全ての印刷物について異なる)を印刷し得るという利点を有する。印刷の他の具体例には、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、μ−接触印刷、凹版印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、オープンリール印刷及び熱転写印刷が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
適用すべき混合物は、適切な溶媒中の溶液の形態、又はあらゆる溶媒なしの形態であり得る。本明細書において、溶媒は、溶媒中に溶解すべきでない、任意の予備重合された非複屈折性の相分離物質、並びに(後述する)顔料のような特定の添加剤以外の混合物の成分をその中へ溶解し、溶液を形成する物質である。更に、本明細書において、このような溶媒は、処理後であるが、好ましくは重合前に蒸発させることを意味し、従って、最終生成物にはわずかな量の溶媒も含まれていない。LCP’sのために通常使用される溶媒の具体例はキシレン、トルエン及びアセトンである。
【0029】
印刷された混合物は界面活性剤を含み得る。これらの海面活性剤は、構造の上端で、底部又はバルク中で、あるいはこれらの配置の組み合わせのいずれかで液晶マトリクスの配列を、向上させることができる。更に、これらの界面活性剤は、混合物の相分離に影響し、又は印刷中及び基材上にある間に混合物の機械的特性(例えば、粘度、表面張力)に影響し得、又はこれら3機能の組み合わせを実現し得る。界面活性剤の割合は、好ましくは15質量%未満、非常に好ましくは5質量%未満、特に好ましくは2質量%未満である。
【0030】
添加剤の他の具体例は顔料及び染料である。顔料及び染料は、スペクトルの一部の吸収、及び場合によりスペクトルの一部の発光により、混合物に固有の色を付与するために加えることができる。このような固有の色は、例えば、印刷構造体の(一部)のコントラストを向上することにより、印刷構造体の光学的効果を向上することができる。
【0031】
顔料は、分子的に溶解しない粒子であるが、染料は、おおよそ分子的に溶解し得る。顔料及び染料の選択は種々の要因に依存する。1つの重要な要因は、安定したインクを生成するための、分散剤の補助がある場合又はない場合の染料又は顔料の溶解度である。染料を含む溶液は、通常、顔料を含む分散剤よりも速く処理することが容易であるが、顔料の光学的特性は、通常、より安定である。顔料については、偏光依存性散乱体の分散相としても作用し得ることが明らかである。あるいは、任意の種類の染料を含む予備重合された分散相を、顔料として考慮することができる。
【0032】
更に、誘電体スタックのような特定の光学的添加剤は、染料としてではなく、顔料としてのみ入手可能であり、その光学的効果は分子的効果をベースとせず、大規模な効果をベースとする。他の重要な要因は、顔料の価格であり、通常、染料の価格よりも高い。
【0033】
顔料が少なくとも一部透明であり、複屈折マトリクスの屈折率の一方にのみほぼ合致する場合、これらの顔料は、散乱偏光効果を生成するためにも用いることができる。これらの顔料は異なる光学的特性を有することができる。
【0034】
吸収性顔料又は染料の具体例は、例えば、
−スペクトルの特定の部分を吸収することを意味する吸収剤のみ、
−スペクトルの特定の部分の光を用いた励起により、元の化学種から異なる吸収スペクトルを有する他の化学種に可逆的に変化するフォトクロミック顔料又は染料(不可逆的フォトクロミック顔料及び染料は、特定の目的のためにも存在する)、
−加熱の適用による吸収スペクトルにおける可逆的な変化を示す(すなわち、高温において)サーモクロミック顔料又は染料(不可逆的サーモクロミック顔料及び染料は、特定の目的のためにも存在する)、
−電荷を加えることにより、吸収スペクトルにおける変化を示すエレクトロクロミック顔料又は染料、
−イオン電荷を加えることにより、吸収スペクトルにおける変化を示すイオノクロミック顔料又は染料、
−pHの変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すハロクロミック顔料又は染料、
−接触する溶媒の極性の変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すソルバトクロミック顔料又は染料、
−適用される抵抗の結果として吸収スペクトルにおける変化を示すトリボクロミック顔料又は染料、
−適用される圧力の変化により、吸収スペクトルにおける変化を示すピエゾクロミック顔料又は染料である。
【0035】
発光顔料又は染料の具体例は、例えば、
−スペクトルの特定部分において光の吸収を、スペクトルの他の部分、通常低い波長において発光を示し、個々の光子の吸収及び発光は、通常ナノ秒の遅れで続いて起こる、蛍光顔料又は染料、
−通常、吸収の後、最高で数時間から数日の大きな遅れを伴い光子を放射する量子力学崩壊メカニズムのために、蛍光染料と同じ吸収及び発光を示す蛍光発光顔料又は染料、
−顔料及び色素の化学反応の結果として光子の発光を示すケモルミネセント顔料又は染料(このような反応は、一般に不可逆である)、
−顔料又は染料中での電子及び正孔の放射再結合の結果として光子の発光を示すエレクトロルミネセント顔料又は染料(電流が顔料又は染料を通過するか、あるいは後に再結合する電子−正孔を励起し得る強電場に供される場合に、このような放射再結合が生じ得る)、
−適用される抵抗の結果として光子の発光を示すトリボルミネセント顔料又は染料、
−適用される圧力の結果として光子の発光を示すピエゾルミネンセント顔料又は染料、
−適用されるベータ粒子のようなイオン化放射の結果として光子の発光を示す放射線ルミネセント顔料又は染料である。
【0036】
単一の添加剤中に複数の光学的効果、実際に同時に複数の原因に関連する効果を兼ね備える顔料又は染料もある。具体例は、特定の限界温度を超えて加熱された場合に色を変化させるサーモクロミック顔料カプセルである。この温度において、カプセル中の結晶溶媒は溶解し、pHを効果的に低下させる。これは、存在するハロクロミック化合物に、順番にその吸収特性の変化を引き起こさせる。
【0037】
フォトクロミック蛍光染料は、分子が、それに続く蛍光状態において吸収しないスペクトルの部分から光子を吸収した後にのみ蛍光を示す染料である。同時にフォトクロミック及び蛍光であるこの効果、すなわち、最初の吸収のため、分子変化(フォトクロミズム)の吸収特性だけでなく、分子が、続いて蛍光又はその蛍光特性における変化を示す。
【0038】
顔料及び染料は、その分子配向に依存し、異方性光学特性を示す。異方性染料分子が、通常、独特な異方性分子形状によって引き起こされる、LCPの配列に対して平行又は垂直にLCPマトリクス中でかなりの程度に配列される場合、これらの分子は、集合的に異方性光学特性を示し、LCPマトリクスの重合後に残存する特徴的な光学特性を示す。この効果は、通常、二色性又は多色性として知られている。粒子自体が異方性光学特性を有する場合、顔料は二色性効果をも示す。しかし、集合効果のために、全ての顔料がそれら固有の異方性の方向に効果的に配列されなければならないので、このような特性を利用することは困難である。
【0039】
吸収において蛍光二色性を示す外観を生成することは可能であるが、発光においては可能でない。例えば、この効果は、2種の蛍光分子種を用いることにより達成でき、そのうちの1種は基本的に非二色で吸収及び発光し、他方は基本的に二色性である。吸収された光子エネルギーが他の種に移動するような方法で両方の種を選択することにより、このような効果を得ることができる。また、蛍光分子は、吸収及び発光において様々な程度の二色性を示し得るが、複数の適切に選択された種を用いることによる効果が一般的に言及される。
【0040】
特に、配列した二色性染料を液晶マトリクスに混合した場合、特別な光学的効果を生じ得る。二色発光蛍光染料が液晶マトリクス中に配列される場合、特定の実施態様は、発光軸がマトリクスの屈折率及び分散相が合致しない軸に対して等しいような状態である。UV光下でのこの系の直接的な光学的検査は、部分的に散乱する蛍光系を示すであろう。UV光下で偏光を通して見る場合、系は、偏光の一方向に対して透明であり非蛍光であり、他の偏光方向において蛍光及び散乱性である。
【0041】
他の特定の実施態様は、二色性吸収染料が液晶マトリクス中に配列され、マトリクスの屈折率の方向に平行な吸収軸及び分散相が合致している系である。この特徴を、直線状の偏光UV光下で試験した場合、UV光の偏光方向が染料の吸収軸に平行である場合に、それは透明であり、かつ蛍光性である。UV光の偏光方向が、染料の吸収軸に対して直行している場合、この特徴は散乱性であり、かつ非蛍光である。
【0042】
マトリクス中又は分散相中の異方性染料又は顔料の組み合わせは、より多くの光学的効果を生じ得る。
【0043】
UV吸収性顔料及び染料若しくは顔料は、いくつかの特定の目的を果たし得る。このようなUV保護顔料及び染料は、印刷混合物中に存在し、又は他の印刷工程、好ましくはフレキソ印刷又はオフセット印刷によって、硬化後に印刷構造体上に塗布し得る。また、バーコーティング、ドクターブレード、噴霧、又は印刷基材上層上にUV吸収基材を塗布するような他の塗布方法を用いることができる。
【0044】
これらの顔料又は染料はUV光を吸収するので、それらは、構造の(機械的)特性の劣化、例えば脆弱さをもたらし得る有害なUV照射から、印刷層又はこの層の下部の物質を保護することができる。印刷層のUV硬化中、UV吸収剤は層のより深い部分が重合されるのを防ぐためにも用いることができ、その結果、非重合層の存在を可能にするが、上層は重合中に凝固する。また、このような非重合層は生成されないが、重合中に混合物の特定成分が高度に重合した領域に、又はその領域から拡散する場合、構造体中に勾配が形成される。このような勾配は新しい光学的効果を生成する。例えば、キラルドーパント量の勾配は重合後にキラルピッチの勾配を示す構造をもたらし、その結果、単一のピッチ構造よりも広い波長範囲にわたって光を反射する。この効果は、ブロードバンドコレステリックミラーとして知られている。
【0045】
添加剤の他の具体例は導電性又は半導電性添加剤である。例えば、このような添加剤は以下の群の添加剤
−例えば、(金属)イオン、アルミニウム又は銅又は(半導体)GaAs、ドープしたシリコン又はグラファイトから生成される、ナノメーター又はマイクロメーターサイズの棒、フレーク、球体、あるいは、金属、合金又は半導体を主成分とする材料の適切な形状の導電性粒子、
−ポリフェニレンビニレンのような、半導電性共役ポリマー、
−好ましくはLCP’sであるオリゴチオフェンのような、半導電性液晶分子からなる。
【0046】
このような導電性添加剤は、電子回路の印刷を可能にする。このような回路は、例えば、電気信号により切替可能な、光学的効果の生成に用いることができる。構造体自体の導電性も、認証機能として用いることができる。FET’s、ダイオード又はコンデンサのような電子回路の構成要素が印刷物中で生成される場合、これらが設計可能で明らかに識別可能な電子応答を生じるので、これは特に効果的に実施することができる。導電性構造体を、切替可能な、他の隣接する非導電性印刷構造体の生成に用いることが可能であり、これらのいずれかは必ずでないが、好ましくはインクジェット印刷により適用される。このような多層の印刷物は、連続的又は同時に、単一層又は分離層中で、基材の上又は互いに隣接して又は反対側において、又は印刷後に一緒に構築される複数の基材上で印刷されて有利に生成される。更に、導電性であり、それはエレクトロルミネセント又はエレクトロクロミック添加剤を含む構造体を生成することが可能であり、印刷構造体自体を流れる電流により取り込み得る(機能の光学的外観を変化させられる)。更に、構造体の隣接部分により2個の電気的に分離された部分に、等しいか又は反対の電荷を供給することにより、コンデンサを形成することができる。構造体のこのような部分が機械的に移動する可能な場合、このような移動は、例えば、特徴を認証するために用いることができる、印刷構造体の光学的、機械的、電気的又は磁気的特性の変化をもたらす。
【0047】
配列したLCPポリマーマトリクスの異方特性が、印刷物の導電特性を十分に利用するのに望ましい電気的及び機械的特性を向上し得るので、印刷構造体が(部分的に)LCP’sから生成されることが特に有利である。
【0048】
添加剤の他の具体例は、常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子のような磁性添加剤である。このような粒子は、通常、5〜500nmのサイズである。このような粒子の添加は、磁場により機械的に移動できる構造体の生成を可能にする。また、このような移動は、例えば、特徴を認証するために用いることができる印刷構造体の、変化した光学的、機械的、電気的又は磁気的特性を引き起こし得る。
【0049】
印刷物に(半)導電性又は磁性添加剤を加えることの特別な利点は、電場及び磁場又は電流により認証が容易であることであり、その効果は非破壊的認証を可逆的に可能にする。更に、このような構造体をインクジェット印刷する特有の利点は、このような添加剤が種々の構造体中で印刷され、その結果、電場及び磁場に対して固有かつ識別可能な反応を可能にすることである。
【0050】
LCPポリマーマトリクスの異方特性が、印刷物の磁気特性を十分に利用するのに望ましい電気的及び機械的特性を向上し得るので、印刷構造体が(部分的に)LCP’sから生成されることが特に有利である。
【0051】
磁性粒子はポリマービーズ中に包埋させることもでき、その結果、分散相として機能することができるが、磁気的でもあるビーズを作成する。
【0052】
相分離中、完全な重合前に相分離を可能にする合計時間のような、特定の混合物及び相分離条件に依存し、添加剤はバルク中に残るか、相分離領域に移動するか、又は変動する質量比で両方に存在し得る。明らかな光学的特性を達成するために、種々の方法で2層にわたって分布し得る、数種の添加剤を含むことも可能である。相分離領域が、前述したように印刷前に予備重合される場合、分散相の内部又は外部に添加剤を再分配しないことが可能である。これは、LCPマトリクス中、又は相分離領域中のいずれかに存在する添加剤が、予め意図した場所にのみ存在し、重合中そこに残存し、その結果、選択された添加剤が完全に相分離しない場合、可能でないデザインを容易にするという特定の効果を有する。
【0053】
この開示を理解している当業者は、他の光学的特性を備えた複数の添加剤、若しくは他の物理的又は化学的特性を備えた他の添加剤を用いることにより、相分離によって達成される新規な効果を創出することができる。
【0054】
非反応性LC含有分散相を用いる場合、これらのLC分子は、電場又は磁場によって操作することができる。このような場を適用することにより、非反応性LC分散相の屈折率を、LCPポリマーマトリクスの屈折率に合致又は合致しないように調整することができ、その結果、印刷構造体の光学的特性を変化させ、場合により、偏光散乱効果を向上、変化又は低下させることができる。添加剤、特に光学的添加剤を含ませることは、既に明らかな切替効果を更に向上させることができる。
【0055】
印刷は、好ましくは、更に好ましくは透明であり、好ましくは柔軟である、平面に配列された基材上で実施される。このような配列された基材には、重合の前及び後でLCPマトリクスの均一な複屈折を起こすLCP’sの平面配列が含まれる。一般に用いられる平面配列基材は、こすられたポリイミド、並びにこすられたトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン又はポリプロピレンである。こすることは、これらの基材に対し、平面配列特性を生じさせる。電場又は磁場を用いるような、若しくは偏光による流動配列又は配列のような他の好ましくない配列技術も使用することができる。
【0056】
他の基材、また他のタイプの均一配列を生じる基材は、同様に当該技術分野において公知である。通常のタイプの配列は、例えば、平面、ホメオトロピック及び傾斜した配列である。
【0057】
LPP(直鎖状の光重合性ポリマー)層は、配向層としても用いることができる。LPPは、偏光により配向層をパターン形成することを可能にし、その結果、配向層のマルチドメインパターン形成を可能にする。更に、配向層として、例えば、印刷によりパターン中に容易に塗布され得る自己組織化単分子膜(SAM’s)を用いることが可能である。例えば、SAM’s及びLPP又はTAC層の組み合わせは、方位角方向及び極性方向におけるLCP’sの配列の全体にわたる、向上した制御を可能にする。
【0058】
パターン化した配列層上の偏光選択性散乱体の組み合わせは、偏光選択性散乱体の層中に隠れた情報を含ませるオプションを付与する。特定の実施態様は、パターン化LPP層の上部の平面連続層中に印刷される偏光選択性散乱体である。LPP層は、一方向に局所配列されるべきであるが、他の領域では配列は直交している。次いで、直接見る場合、偏光選択性散乱体は部分的に散乱する。偏光子を通して系を見る場合、LPPパターンが示される:ここで、それが散乱される他の領域において、透明である偏光子の方向において屈折率が合致するように系が配置される。偏光子が90°回転する場合、透明及び散乱領域は反転する。
【0059】
表面の配列特性に次いで、基材の選択も、混合物及び基材の相互作用を決定する。これらの相互作用は、更なる(光学的)効果を生成するために用いることができる。例えば、親水性の(化学的に)パターン形成された表面の疎水性の使用は、印刷体の閉じ込めを可能にし、よって、高度の印刷解像度及びより著しい光学的効果を可能にする。幾何学的にパターン形成された表面は、印刷インクを閉じ込めるためにも用いることができる。閉じ込めは、より制御された形状を有する印刷構造体をもたらし、認証の目的に有利である、より良好な所定の特性をもたらし得る。このような、基材の化学的又は幾何学的パターン形成は、印刷により達成することができるが、例えば、エンボス加工、摩擦及びリソグラフィ等の他の技術も用いられる。
【0060】
用いられる基材の光学的特性は、セキュリティ機能全体の特性に影響を及ぼす。このような基材は組み合わせることができ、すなわち、互いに作成された多層のセキュリティ機能上に積層され、又はセキュリティ機能は、それぞれ特に有益な特性を有する基材の積層の上に作成される。好ましい光学的特性に依存し、基材は、透明であり得、任意の波長範囲で吸収し、散乱し、又は反射し、又はこれらの効果のパターンを含み得る。基材は、他の光学的特性を有することもできる。具体例としては、1個の直線偏光のみを伝達する偏光フィルムの場合と同様の、1個の偏光のみを伝達する性能、又は1個の偏光のみを反射する性能、例えば、1個の光の掌性を反射するのみのコレステリックフィルムである。更に、基材は、例えば、リターダーフィルム及び半波長プレートの場合と同様に、伝達され、又は反射される光の偏光を変化することができる。
【0061】
基材は、他の認証機能を含むこともできる。具体例は、ホログラム、逆反射層、干渉スタック反射体、蛍光層、色変化層又はフレークにより印刷された特徴である。例えば、積層により、LCPポリマー構造上の他の認証機能を含む層を加えることも可能である。
【0062】
製造されたような外観が、製品又は書類に対する明らかな標識を変更するように塗布することができるように製造されることが好ましい。このような標識は、標識を無傷で除去することを非常に困難にする性質を有する。このような特性は機械的完全性に乏しく、例えば、外観は、低い強靱性、すなわち、引裂に対する低抵抗性を有する。更に、除去時の外観は、例えば、破裂−感受性インク粒子を用いて、前の存在の明確な跡を残すことができる。
【0063】
外観は、書類及び製品に容易に塗布できることも好ましい。このような塗布は、例えば、熱エンボス加工により、又は自己接着性特性を形成することにより可能である。
【0064】
前述したような方法において製造された装置は、製品又は書類の認証に用いることができる。実際、観察者は、散乱効果のために不透明又は半透明である正常な照明条件下にあり、散乱機能下で既に存在している、任意の情報を部分的又は完全にカバーしている印刷構造体からなる印刷マーキングを見るであろう。従って、配列基材は、好ましくは、この効果を達成するために透明であるべきである。この情報は、パターン化した吸収、反射又は回折構造体の形態で存在し得る。このような情報は、シリアルコード、パスワード、写真、生体情報、ロゴ又は回路図等であり得る。次いで、観察者は、前記機能の前の偏光フィルターを保持し、分散相と屈折率が合致する、LCPポリマーマトリクスとの偏光軸を配列することによって、基本的な情報を明らかにする。次いで、機能は観察者に対して透明である。追加のチェックとして、次いで、観察者は、更に層の不透明さを観察者に与えるために、偏光フィルターの軸を90°回転させることができる。この第二のチェックは、非偏光中で観察した時に、層が半透明である場合に特に著しいであろう。分散層が、パターン中で印刷され得るので、パターン自体が情報を含むことができる。
【0065】
警備産業において重要な機能である偏光選択性散乱セキュリティデバイスは新規かつ未知である。ホログラム又は色変化インクのような他のセキュリティ機能と比較した場合、それは、明らかに異なる外観を有する。
【0066】
容易な視覚認識を可能にする単一極による容易な検証を有する。更に、前記マーキングの自動化手順が通常は少なくとも1種の光学チェックを含むが、手の込んだ手順が実施される高速自動検証は、機能の信頼性における信頼のレベルを更に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】オフ(電圧を加えていない)及びオン(電圧を加えている)状態における、TN液晶ディスプレイセルの概略図である。
【図2】透明(電圧を加える)及び散乱(電圧を加えない)状態におけるポリマー分散性液晶ディスプレイセルの概略図である。
【図3】コレステリック液晶層及びコレステリック液晶層による光の反射の概略図である。
【図4】散乱していない(電圧オフ)及び散乱している(電圧オン)状態におけるポリマー安定化コレステリック液晶層の概略図である。
【図5】複屈折マトリクス及びポリマー分散相からなる偏光選択性散乱体の概略図である。
【0068】
以下の非限定的な実施例を用いて、本発明を更に説明する。
【0069】
実施例1:
成分1〜5を連続的に加え、60℃で15分間磁気的に攪拌することにより混合物を製造し、透明な溶液を得た。ここで、成分は以下の通りである。
【0070】
1)3.9質量%の、以下の分子
【化1】

からなる非反応性液晶混合物E7(Merck KGaA,ドイツ)。
【0071】
A.R.E.Bras et al,J.Chem.Eng.Data 2005,50,1857−1860に開示されているように、これらの分子は、成分1中に以下の画分において上から下へ:それぞれ、8%、25%、51%、16%存在している。
【0072】
2)15.7質量%のLCPジアクリレート
【化2】

【0073】
3)0.2質量%の光開始剤
【化3】

【0074】
4)0.2質量%の平坦化剤
【化4】

【0075】
5)80質量%の溶媒、パラキシレン
【化5】

【0076】
次いで、室温で、ポリイミド基材上に、線及び単滴からなるパターン中にインクジェット印刷する。印刷前に、基材上において平坦な配列を示すように、ポリイミド基材をビロードの布地でこすった。ホットプレート上、50℃で1分間、溶媒を蒸発させ、この時間中、複屈折マトリクスが基材上に配列する。この時間の後、混合物を、窒素不活性雰囲気下、室温で2分間UV重合し、機械的に安定な構造体を得た。
【0077】
直接的光学検査は、印刷構造体が複屈折であり、構成要素が偏光選択性散乱を示すことを示した。
【0078】
互いに90°に配向した偏光子の間の構成要素を見る時、構造体が複屈折であることが分かる。液晶マトリックスの配列軸が、いずれかの偏光子に対して平行である場合、透過率は最小であり、外観は暗い。外観が、両方の偏光子に対して45°に配向した液晶マトリクスの配列軸を有する場合、透過率は最適であり、偏光子と共に外観は透明である。このことは、構造体が複屈折であることを明確に示す。
【0079】
1個の偏光子のみを用いて、偏光散乱効果を見ることができる。偏光軸が液晶マトリクスの配列に平行になるように1個の偏光子を散乱体の前に置いた場合、構成要素は透過性である。偏光軸が液晶マトリクスの配列に対して直交する場合、構成要素は散乱性である。これは、構造体が偏光選択性散乱性であることを明らかに示す。
【0080】
実施例2
aからhまでを含む成分を連続的に加え、60℃で15分間、透明な溶液が得られるまで磁気的に攪拌することにより、混合物を製造する。次いで、成分jを加え、完全な混合物を50℃で5分間、磁気的に攪拌する。ここで、成分は以下の通りである。
【0081】
a)15.4質量%の単官能性LCPアクリレート
【化6】

【0082】
b)6.6質量%の二官能性LCPアクリレート
【化7】

【0083】
c)5.6質量%の非反応性LCモノマーK15
【化8】

【0084】
f)0.27質量%の光開始剤
【化9】

【0085】
g)0.13質量%の阻害剤、ヒドロキノン
【化10】

【0086】
h)22質量%の溶媒、パラキシレン
【化11】

【0087】
i)50質量%の、0.11μmの平均直径を有し、水中に分散し、分散液の合計10質量%がPMMAビーズからなる、PMMAの均一なビーズの分散液。
【0088】
次いで、20μmの層を、50℃で、ドクターブレードを用いてトリアセチルセルロースフィルムに塗布する。次いで、基材及び混合物を50℃に維持する間、2分間溶媒及び水を蒸発させ、その後、窒素不活性雰囲気下、室温で2分間、層をUV重合し、機械的に安定な構造体を得る。
【0089】
この構造体を視覚的に検査し、これは、印刷構造体が複屈折であり、構成要素が偏光選択性散乱性であることを示す。
【0090】
互いに90°に配向した偏光子の間の構成要素を見る時、その構造体が複屈折であることが分かる。液晶マトリクスの配列軸が、いずれかの偏光子に対して平行である場合、透過率は最小であり、外観は暗い。外観が、両方の偏光子に対して45°に配向した液晶マトリクスの配列軸を有する場合、透過率は最適であり、偏光子と共に外観は透明である。このことは、構造体が複屈折であることを明らかに示す。
【0091】
1個の偏光子のみを用いて、偏光散乱効果を見ることができる。偏光軸が液晶マトリクスの配列に平行になるように1個の偏光子を散乱体の前に置いた場合、構成要素は透過性である。偏光軸が液晶マトリクスの配列に対して直交する場合、構成要素は散乱性である。これは、構造体が偏光選択性散乱性であることを明らかに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相、及び場合により1種以上の添加剤を含むLCPポリマーの、印刷されたパターン化複屈折マトリクスを含む偏光選択性散乱セキュリティデバイスであって、LCPポリマーの複屈折マトリクスの通常又は異常な屈折率が、分散相の屈折率の一方にほぼ合致するが、他の屈折率が合致しない、偏光選択性散乱セキュリティデバイス。
【請求項2】
LCPポリマーの複屈折マトリクスの屈折率と、ほぼ合致する分散相との間の相違Δn適合が0.05より小さく、好ましくは0.01より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項3】
少なくとも1種の添加剤が、フォトクロミック顔料又は染料、サーモクロミック顔料又は染料、エレクトロクロミック顔料又は染料、イオノクロミック顔料又は染料、ハロクロミック顔料又は染料、ソルバトクロミック顔料又は染料、トロボクロミック顔料又は染料、並びにピエゾクロミック顔料又は染料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項4】
少なくとも1種の添加剤が導電性又は半導電性添加剤であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項5】
少なくとも1種の添加剤が、ナノメーター又はマイクロメーターサイズの棒、フレーク、球体、あるいは、金属、合金又は半導体を主成分とする材料の適切な形状の導電性粒子からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項6】
少なくとも1種の添加剤が、
−ポリフェニレンビニレンのような、半導電性共役ポリマー
−好ましくはLCP’sであるオリゴチオフェンのような、半導電性液晶からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項7】
少なくとも1種の前記添加剤が、常磁性、超常磁性、反磁性又はフェリ磁性粒子のような磁性添加剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項8】
前記装置が、線状の光重合性ポリマーを含む基材層により配列されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項9】
前記装置が、複数の配列した基材の組み合わせを介して、複数のタイプの配列により配列されていることを特徴とする、請求項8に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項10】
前記基材が、ホログラム、逆反射層、干渉スタック反射体、蛍光層、色変化層又はフレークにより印刷された特徴のような、更なる認証機能を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の偏光選択性散乱デバイス。
【請求項11】
以下の工程:
−第一の材料として1種以上の官能基、液晶又は非液晶分子を含む少なくとも1種の第二の材料、並びに場合により1種以上の添加剤を含む、少なくとも1種のLCPを含む混合物を印刷する工程、
−基材上にLCP’sを配列する工程を含む、偏光選択性散乱セキュリティデバイスの製造方法であって、
−かなりの量の第二の材料の分子をバルクから相分離し、0.1〜10ミクロンの範囲の通常のサイズを有する領域を形成し、
−相分離中又は相分離後に、配列した液晶相を重合し、固体マトリクスを形成することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
第二の材料の割合が50質量%未満、好ましくは30質量%未満、更に好ましくは15質量%未満であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第二の材料が、重合工程中に重合されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程:
−第一の材料として1種以上の官能基、0.1〜10ミクロンの範囲のサイズを有する予備重合分散材料を含む少なくとも1種の第2の材料、並びに場合により第1の材料又は第2の材料、あるいはその両方で1種以上の添加剤を含む、少なくとも1種のLCPを含む混合物を印刷する工程、
−基材上にLCP’sを配列する工程を含む、偏光選択性散乱セキュリティデバイスの製造方法であって、
−配列した液晶を重合し、固体マトリクスを形成することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
第二の材料が、ブラッグ反射を起こし得るように、マトリクス中に分布することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記印刷がインクジェット印刷により実施されることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521010(P2010−521010A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553056(P2009−553056)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001867
【国際公開番号】WO2008/110316
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509257318)テヒニッシェ ウニヴェルシテート アイントホーフェン (5)
【氏名又は名称原語表記】Technische Universiteit Eindhoven
【住所又は居所原語表記】Den Dolech 2, NL−5600 MB Eindhoven, Netherlands
【Fターム(参考)】