偏光非依存性位相変調器
本発明は、可視光に対する有効屈折率の偏光非依存性を与えるように十分に小さいピッチを有するカイラル液晶混合物の層を有する光に対する偏光非依存性位相変調器を提供する。その液晶混合物は、へリックス配向基底状態と液晶混合物層における電界の印加によりもたらされるチルト状態との間で制御可能である。液晶混合物は、好適には、電界を除去したときにへリックス基底状態が回復することを確実にする網目構造材料に分散されている。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
液晶(LC)は、フルカラーディスプレイ、温度インジケータ、及びグレーティング及びレンズのようなスイッチング可能位相変調装置を有する広範なアプリケーションに使用されている。従来の液晶セルは偏光光を選択的に制御し、それ故、典型的には、偏光子と重ね合わされる。しかしながら、偏光子は、典型的には、入射光の50%以上を吸収し、結果的に得られる輝度は、それ故、影響される。
【0002】
液晶の位相変調器は、光透過動作、簡単な制御、高信頼性及び低消費電力のために適応可能な光学装置として使用するための潜在能力は大きい。多くのアプリケーションにおいては、焦点ぼけ及び非点収差のような低次の収差の補正は最重要である。
【0003】
ポリマー分散型液晶(PDLC)は、偏光非依存性ディスプレイを提供するために提案されてきた。そのようなディスプレイにおいては、液晶分子は、光の散乱を生じるポリマー網目構造の状態でランダムに配向している。電界の印加により、印加された電界の方向に分子の一軸配向を生じる。ポリマーの屈折率及び液晶の通常の屈折率は、印加される電界の方向に伝播する光が何れの屈折率変化を生じず、それ故、散乱しないように適合される。
【0004】
しかしながら、偏光非依存性スイッチングが必要であるスイッチング可能レンズ及び回折格子のような光学装置においては、PDLC効果は、不所望の光散乱を生じるために用いられることができない。このような問題を低減するために、サブミクロンの大きさの液滴を有するPDLCが提案されてきた。しかしながら、そのような系の屈折率は、系内に大きい割合のポリマーが存在するために、電界の印加のみにおいては僅かに変化する。
【0005】
レンズのような液晶の位相変調器を得る最も容易な方法は、例えば、通常のマクロレンズのガラスを液晶で置き換えることである。より薄い構成が又、表面レリーフホログラムの上に置かれる場合又は(マイクロ)レンズが電気的に制御可能な焦点距離を得るようにネマチック液晶中に浸されている場合に提案されてきた(例えば、米国特許大6,014,197号明細書参照)。そのような構造は、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極上にフォトレジスト又は光レプリケーション技術を用いて作製される。
【0006】
他の適応可能なレンズは個々のレンズアレイにより制御され、ゾーン補正原理によってステップ関数により波面が近似される。それらの変調器における連続波面プロファイルに対する良好な近似は、非常に多くの離散的制御電極を必要とする。
【0007】
パターニングされた電極を用いることは又、液晶マイクロレンズの製造を容易にする。そのようなセルは、電極間の漏れ電界が液晶分子自体を光学的にレンズ構造である配向になるように、両方の基板における互いにアライメントされた孔と共にパターニングされている電極を用いて構成される。そのような電極を用いて、更に複雑なビーム操作機能を実現することができる。
【0008】
所謂、モードアドレッシングは、装置における位相プロファイルの連続変化を可能にし、又、LC波面補正及びモードLCレンズにおいて用いられることが可能である。このような技術においては、異なる抵抗を有する2つの電極領域が用いられる。制御電圧が、レンズの活性領域の周りの低抵抗環状電極に印加される。レンズにおける電圧は、LC層の静電容量及び高抵抗制御電極により形成される分圧部のために、レンズの中心方向に向かって半径方向に減少し、即ち、そのレンズのインピーダンスはレンズの中心方向に向かって半径方向に増加する。これは、電圧がその中心の方に向かって半径方向に減少することを意味する。逆に、LC層の光路長は周囲から開口中心に向かって増加する。
【0009】
他の可能性は、フォトマスクを用いてセルを照射することである。その場合、高UV強度で硬化された領域におけるモノマーは高濃度のポリマー網目構造になる。逆に、弱いUV露光を受けた領域は低濃度のポリマー網目構造になる。一様な電圧が印加されるとき、より低濃度の領域はスイッチングされる一方、他の領域はそれらの配向が変化せず、このようにして、リターデーション変動がセルにおいて得られる。
【0010】
しかしながら、その文献に記載されている殆ど全ての位相変調においては、一偏光方向のみについて機能する一軸配向したネマチック液晶を用いている。偏光されない光を用いる操作においては、互いに直交する配向を有する2つの同じレンズを用いるような複雑な手段を採用する必要がある。
【特許文献1】米国特許大6,014,197号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようにして、本発明の目的は、非依存性の偏光である位相変調(波リターダ)を提供することである。そのような要素は、例えば、光データ記憶システム(CD、DVD等)、照明において用いられる発光体の前、光相互接続、光ルーティング、印刷及び走査、マシンビジョン(パターン生成)、光演算、顕微鏡、CCDカメラにおける自動焦点及びズーム機能、並びにパターンジェネレータのような種々の装置の光学ユニットにおいて用いられることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それ故、本発明の一特徴に従って、光に対する偏光非依存性位相変調器が提供される。その位相変調器は、2つの基板と前記2つの基板間に備えられているカイラル液晶混合物とを有する。カイラル液晶混合物は、へリックス配向基底状態に配向され、前記基底状態と電界によるチルト状態との間で制御可能であり、光の偏光に実質的に依存しない有効屈折率の値を得るに十分小さいピッチを有する。有効屈折率は、所定の変更状態を有する光ビームにより経験される屈折率である。光ビームは、好適には、層の表面に対して実質的に垂直な方向に入射する。
【0013】
液晶混合物のへリックス配向基底状態において、液晶分子のダイレクタは層の表面に対して実質的に平行に配向される。ダイレクタは表面に対して垂直な長軸を有するへリックスをいう。電界が表面に対して好ましい垂直な方向に印加されるとき、チルト状態が得られる。チルト状態においては、分子の方向は層の表面に対してある角度に配向され、へリックスの長軸の方向は変わらないまま維持される。チルトは電界強度の増加に伴い増大する。へリックスの長軸の方向における光伝播は、光の偏光状態に依存しない有効屈折率を経験する。その偏光状態は、偏光の方向及び線偏光又は円偏光のような偏光モードの両方を示す。液晶の混合物のチルト状態においては、へリックスの長軸の方向における光伝播は又、偏光状態に依存しない有効屈折率を得るが、基底状態において経験される有効屈折率とは異なる。
【0014】
本発明は、それ故、実質的に可視光を反射しない小さいピッチのカイラル液晶混合物を用いて光りの偏光非依存性スイッチングのための方法を提供する。カイラル液晶混合物の有効屈折率は、ゲル(例えば、ポリマー網状構造により膨らんだ非反応液晶)を得るin−situ重合法を用いて可逆的な及び制御可能な様式でスイッチング可能にされる。位相変調は、例えば、レンズ、マイクロレンズアレイ、偏向器、ファンアウト要素、ビームプロファイラ、ビームステアリング、ビーム整形器、波面補正器等の動的要素のために用いられる種々の光学的硬化を得る要に電気的に対応することができることが更に理解できる。
【0015】
対掌性又はhandednessは対称でない分子の特性である。カイラル分子は特異な三次元形状を有し、その結果、カイラル分子及びその鏡像は完全に同一でない。
【0016】
カイラルネマチック液晶相は、ネマチック相を示す液晶混合物がカイラル分子をドープされるときに得られる。カイラル相においては、液晶分子(ダイレクタn)の長軸はへリックスに関して回転する。この相においては、へリックスと同じ回転様式を有する入射円偏光光の波長帯域は反射される一方、逆の様式を有する波長帯域は透過される。反射帯域の限界は、しかしながら、λmax=p*ne及びλmin=p*noとして与えられ、ここで、pはダイレクタが360°回転する長さに対応するピッチであり、ne及びnoはそれぞれ、一軸配向相の異常光屈折率及び通常光屈折率である。ピッチはカイラル成分の濃度により決定され、カイラル成分の割合の増加と共に減少する。文献には種々のカイラル分子が記載されていて、それらのカイラル分子は、ネマチック液晶における所望のピッチをもたらすために用いられることが可能である。反射帯域における光を与える反射は、それ故、偏光依存性である。
【0017】
しかしながら、偏光非依存性装置は反射帯域の外側で動作するように備えられることが可能であることが理解できる。それ故、非常に小さいピッチを有する液晶混合物を使用することが、他方では興味ないことであるが、可視光のための優れた偏光非依存性透過位相変調器を与えるために見出された。本発明に関連して、偏光非依存性は、偏光状態及び偏光方向に対して本質的に非依存的な偏光として解釈されるべきものである。それ故、本発明に従った位相変調器は、本質的に偏光非依存性スイッチング可能位相シフトを与える。僅かな副作用として起こる可能性のある何れの僅かな偏光依存性は、全体的な動作に影響を及ぼすことはなく、それ故、動作の観点から無視されることが可能である。偏光依存性の手段として、位相変調器を通る光の2つの線形偏光された直交するビームによりもたらされる屈折率の差を用いることができる。これに関連して、1つの代替としては、絶対値を用いることがある。そのような場合、本発明の目的のための偏光非依存性は、絶対屈折率の差が0.10以下である必要があり、好適には、0.05以下であることが必要である。代替として、その差は相対的数の状態で測定されることが可能であり、その場合、本発明の目的のための偏光非依存性は、相対的屈折率の差が5%以下、好適には、2%以下であることが必要である。
【0018】
その結果として、へリックスの軸に平行な方向に伝播する光ビームは、(ne+n0)/2に略等しい偏光非依存性屈折率をもたらす。換言すれば、へリックスの軸に平行な方向に伝播する光ビームは、全ての偏光方向について略(ne+n0)/2の等しい屈折率をもたらす。そのような系は負の複屈折率を有する一軸性として説明されるものである。へリックスの方向において(即ち、液晶混合物の層を横断して縦方向に)十分大きい電界が印加されるとき、一軸性の配向が液晶分子間にもたらされる。そのような一軸性配向状態における電界の方向に進む光は偏光非依存性屈折率n0を経験する。
【0019】
実際には、その層により伝播する光ビームが経験する屈折率は、分子の配向を変化させる層を横断する電界を印加することにより、その偏光の方向に依存せずにスイッチングされる。その電界は、有利であることに、2つ又はそれ以上の電極に印加され、液晶層の反対側に供給される。
【0020】
それ故、一実施形態に従って、位相変調器は所定の波長λより長い波長を有する光に対して動作可能(即ち、偏光非依存性)であり、ピッチはλ/nより小さく、ここで、nは、一軸性配向相において液晶混合物の異常屈折率及び通常屈折率はおけるより大きい。殆どの液晶混合物に対しては、異常屈折率は通常屈折率より大きい。所定の波長λは、例えば、位相変調器が可視光(例えば、λ=400nm又はλ=350nm)の全体のスペクトルに対して動作可能であるように設定される。
【0021】
典型的な液晶混合物においては、一軸性配向相の異常屈折率neは1.3乃至1.7の間のどこかにある。それ故、250nmの大きさであるピッチは、1.5のneを有する材料に対して約375nm(250nm*1.5)のλmaxを与える。それ故、本発明の一実施形態に従って、ピッチは250nmより小さい。そのような位相変調器は全体的な波長の可視スペクトルに対して動作可能である。しかしながら、より大きいピッチ、例えば、すぐに使える屈折率に依存して約525nm(350nm*1.5=525nm)の閾値波長を与える350nmが同様に認識される。そのような変調器は、波長の可視スペクトルの一部(例えば、525nmより大きい部分)のみに対して偏光非依存性である。これは、しかしながら、一部のアプリケーションに対しては十分である可能性がある。一実施形態に従って且つ上記のように、ピッチは、可視光の全体的スペクトル、即ち、400nm又は350nmより長い波長(即ち、λ)を有する光について偏光非依存性を与えるには十分に小さい。それにより、全体的な可視光スペクトルは偏光非依存性操作可能波長範囲に含まれる。このことは、非常に多くのアプリケーションに対して非常に好ましい。
【0022】
高速且つ反転可能スイッチングを得るように、メモリ状態はそのようなカイラルシステムの状態に構築される必要がある。更に、セルの表面に対して垂直な方向に伝播する光ビームについての漸次の偏光非依存性スイッチングを得るためには、分子が印加電圧の方向にチルトし始める円錐状変形モードが必要である。このことは、非反応性液晶分子内に分散された軽く架橋された網目構造を生成することにより達成される。それ故、一実施形態に従って、カイラル液晶混合物は網目構造材料中に分散された液晶分子を有する。
【0023】
網目構造材料は、例えば、非反応性カイラル液晶分子が存在する状態でインサイチュ(in−situ)の重合により与えられる異方性ポリマー網目構造であることが可能である。分子の制御可能且つ反転可能スイッチングを得るために、液晶混合物は、好適には、十分に架橋された適切に高ポリマー網目構造密度を有する。理想的には、その混合物における架橋分子の濃度は0.5重量%より大きく、ポリマーの直鎖(架橋されている)を構成する分子は20重量%を上回る濃度を有する。しかしながら、更なる一般的な一実施形態に従って、液晶混合物は、ポリマー鎖の直線上部分の間で架橋を与える0.5乃至1重量%の架橋分子により架橋されたポリマー鎖の直線状部分を構成する10乃至60重量%の分子を有する。
【0024】
本発明に従った位相変調器は、種々の制御可能光学特性と共にデザインされることが可能である。例えば、液晶分子のチルト角における横方向の変化に依存する焦点レンズ又は回折格子として動作することが可能である。横方向に変化するチルト角は、液晶混合物における対応して変化する屈折率をもたらす。そのような変化は種々の方法により与えられる。
【0025】
例えば、一実施形態に従って、ポリマー網目構造材料は、前記チルト状態、それ故、前記偏光非依存性有効屈折率の横方向の変化が、液晶混合物の層を横断する均一な電界の印加のときに与えられる。液晶分子に電界を印加するときに増加したポリマー網目構造の濃度を有する領域においてチルト状態が局部的に妨害されるような、網目構造における変化であることが可能である。その変化は、例えば、フォトマスクを用いる光重合プロセスにより与えられる。この実施形態は、変化する屈折率又は構造化された屈折率が均一な電界を用いて得られるために有利である。実際には、分子の移動が妨害される領域の屈折率はへリックス配向基底状態(即ち、通常屈折率及び異常屈折率の平均)と本質的に同様に維持される。ポリマー網目構造の濃度変化が存在する場合、上記で指定された濃度値は、高ポリマー網目構造濃度を有する領域にのみ適用されることが可能である。
【0026】
代替として、構造化された屈折率は、チルト状態にある液晶層の特定領域のみを設定する変化される電界により与えられる。それ故、一実施形態に従って、少なくとも基板の1つは構造化された電極を備え、その構造化された電極は前記の液晶混合物の層を横断する横方向に変化する電界を印加するように機能し、それ故、前記チルト状態における横方向の変化を与え、従って、前記偏光非依存性屈折率における横方向の変化を与える。
【0027】
しかしながら、横方向に変化する光学特性は液晶混合物において変化する屈折率によりもたらされる必要はない。他の代替としては、液晶マトリクスの内部に静電レンズ構造を備えることである。
【0028】
それ故、一実施形態に従って、光変調器は、前記構造間に備えられ、液晶混合物の状態の少なくとも1つにおいて液晶混合物の有効屈折率床となる屈折率を有する光学的に静的な構造を更に有する。それにより、光変調特性が、前記の静的な構造と前記の液晶混合物の層との間の界面により与えられる。その光学的に静的な構造は、例えば、レンズの形状を有し、そのような場合、液晶混合物を伴う凸状界面を規定する。
【0029】
一実施形態に従って、光学的に静的な構造は、基底状態にある液晶混合物の有効屈折率と同じ屈折率を有する。それにより、その構造は基底状態において光学的に非可視的である。しかしながら、液晶混合物において電界を印加することにより、液晶混合物の有効屈折率が変わり、それ故、異なる屈折率を有する領域間の界面が与えられる。その構造がレンズ形状である場合、その界面は、それにより、光フォーカシング(又は、デフォーカシング)効果を与える。しかしながら、他の静的な構造、例えば、回折効果を与える細長いプリズムを同様に用いることが又、可能である。
【0030】
本発明に従った位相変調器は多様な光学装置において実施されることが可能である。例えば、本発明の一特徴に従って、本発明の位相変調器を有するスイッチング可能なレンズを備えることができる。一実施形態に従って、本発明のスイッチング可能レンズにおける位相変調器は、前記基板上に配置された且つ液晶混合物の層において円形対称電界を印加するように操作可能である円形対称電極を更に有する。それにより、円形対称屈折率特性が本発明のレンズに備えられる。そのような構成においては、要素の厚さは、従来技術に比べて非常に減少される。
【0031】
本発明の他の特徴に従って、本発明の位相変調器を有するスイッチング可能回折格子が提供される。本発明の光源における位相変調器は、それにより、前記光源から出射される光の形状及び/又は方向を制御するように動作可能である。
【0032】
本発明の他の特徴に従って、光路を有し且つ前記光路に沿って配置された本発明の位相変調器を有する光データ記憶システムが提供される。そのような変調器は、動的に光りビームの焦点位置を変えるように、又、光記録担体の走査中に生じる種々の光収差を補償するように用いられることができる。収差の補正の実施例は、同じ光路を用いて読み取られる必要がある種々のタイプの記録担体の層の厚さにおける差に対する補正である。一実施形態に従って、データ記憶システムはCDシステム、DVDシステム又はブルーレイシステムである。
【0033】
本発明の更なる特徴及び目的については、以下の好適な実施形態についての詳細な説明を読み且つ理解するときに明らかになる。以下の詳細説明においては、添付図面に対する参照番号が付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
液晶セル100の一般的デザインを図1に示す。そのようなセルは、基板101、107と、透明電極102、106と、配向層103、105とを有する。液晶混合物の層104は配向層の間に挟まれている。電極102、106は液晶層104において電界を印加するように動作し、それにより、へリックス配向状態からチルト状態に液晶分子を再配向させる。本発明に従ったセルにおいては、液晶は、電界が印加されていないとき、液晶分子の配向が常に、へリックス配向の基底状態に戻るように、安定なメモリ状態を与えるポリマー網目構造中に分散されている。
【0035】
セルにおける種々の座標の規定について図2に示している。図2は、電界が印加されていない(V0=0)ときに、ピッチの半分(P/2)の距離においてへリックスに沿った異なる分子の配向を有する、本発明に従った位相の分子の5層を模式的に示している。図から理解できるように、それぞれの層における分子の平均配向の方向がへリックスに関して回転し、180°向きを変えるとき、分子は互いの上部に積層される平行な(即ち、横方向の)層において一軸配向されるように規定される。360°向きを変えるための縦方向の距離は、勿論、ピッチに等しい。
【0036】
電圧V0=0、V1>V0及びV2>V1それぞれに対応する3つの模式的なチルト配向Φ0、Φ1及びΦ2が又、図2に示されている。図から理解できるように、セル面内の分子の角配向は何れの印加電界に依存せず、セル面に関する分子の角配向(チルト角α)は電界強度の増加につれて増加する。
【0037】
液晶混合物は、へリックス配向を与えるカイラル分子がドープされている。可視光に対して透過するように、ピッチは十分に小さい必要がある。
【0038】
一実施例に従って、液晶混合物は、重合のときにポリマー主鎖を構成する20%のカイラルモノアクリレートCBCと、45%の非反応性カイラルドーパントCB15と、35%の非反応性液晶BL59(Merck社(独国ダルムシュタット市)製)と、0.5%のイルガキュア(Irgacure)651(Chiba Geigy社製)と、重合時に架橋を形成し、光開始剤が生成される種々の濃度のジアクリレートとを含む。重合される反応性分子の構造を、構造CB15及び光開始剤と共に次に示す。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
実験目的のために、その混合物は、ITO(Indium Tin Oxide)電極を有し、ベルベットの布で擦られたポリイミドで覆われた、図1に示すようなセル内に備えられた。セルギャップは、基板間にガラススペーサを用いて、4μmに設定された。図3においては、一軸性のネマチック相の屈折率は、重合前後のその混合物の温度の関数としてプロットされたものである。本研究においては、分光器を用いて反射帯域の最大値λmaxとカイラル分子の種々の割合を有する液晶混合物について屈折計を用いて異常屈折率neとを測定した後、関係p=λmax/neを用いてピッチが決定される。ピッチはカイラル成分の濃度の関数としてプロットされ、その混合物のピッチは約200nmになるように補間される。例えば、X線回折又は電子顕微鏡を用いる、他のピッチの測定方法が又、ある。他の従来のピッチの評価方法は楔形セルを用いることであり、それにより、所謂、楔形角度によるカイラル材料のピッチ及びディスクリネーションラインの位置を評価することが可能である。材料の等方性遷移温度及び異常屈折率が重合(黒色のドットは重合混合物に対応し、白色ドットは非重合混合物に対応する)するときに増加することが、図3から理解できる。上記のように、混合物のピッチ早く200nmであり、重合後の混合物の異常屈折率neは、図3に示すように、約1.74である。これは、λmax=348nm(1.74*200)であり、この材料が、波長の全体的な可視領域について、そして又より長い波長について適切であることを示している。
【0043】
そのようなピッチを有するカイラル液晶混合物の層は負の複屈折率を有する。それ故、そのような層を有するセルは、光の入射ビームがセルの面に対して垂直であるように、交差した偏光子の間に位置付けられているときに偏光方向は変化されず、それ故、セルは黒っぽくみえる。実際には、セルは、セルに対して垂直に入射する光について偏光依存性を有する。
【0044】
セルがある角度に位置付けられたときにのみ、この複屈折がこの入射ビームに対して現れる。本発明のセルの特性を更に研究するために、光ビームに関してθ=45°の角度にサンプルのセルは置かれる。これについては、図4に示し、その図は、本発明に従った液晶セル401に角度θで入射する強度I0を有する光線を示している。透過光の強度Iは光検出器402により測定される。
【0045】
実験は、波長550nmを有する光を用いて実行された。図5は、電圧の関数としてセルを透過する光の強度を示している。その図は、電圧が増加すると、その強度は、増加する前に、その最小値を通ることを示している。このような挙動は、電圧の増加に伴う有効複屈折における変化により説明される。有効複屈折率(Δneff)は、次式のように、透過強度Iに関連し、
I=I0sin2(πdΔneff/λ) (1)
ここで、I0は、偏光子及び分析器が互いに並列して設定されるときの最大透過強度であり、dは液晶層における光ビームの光路長であり、λは単色光の波長である。
【0046】
図5及び式(1)からのデータを用いて、Δn(ch)effは電圧の関数としてプロットされ、その結果について、図6に示されている(実線601で示していて、左の縦軸で表されている)。有効複屈折率は、より大きい電圧における飽和値に達する前に、約50Vにおいて0まで減少することが理解できる。複屈折率の連続変化は、円錐状変形に関連し、このとき、カイラルへリックス及びピッチは完全のままの状態を維持している一方、液晶分子は印加される電界の方に傾き始める。最終的には、全ての分子は印加電界の方向に配向される。図2に示す座標においては、これは、電圧の増加に伴うαの増加に対応している。カイラル相における通常屈折率n0(ch)及び異常屈折率ne(ch)は一軸性のネマチック相の通常屈折率n0及び異常屈折率ne並びに分子のチルト角αに関連し、次の式のようになる。
n0(ch)={n0ne+n0(n02cos2(α)+ne2sin2(α))}1/2/2(n02cos2(α)+ne2sin2(α))1/2 (2)
ne(ch)=n0ne/(n02cos2(α)+ne2sin2(α))1/2 (3)
カイラル相の有効通常屈折率n0(ch)effは角度θに依存しない一方、カイラル相の異常屈折率ne(ch)effは次式のように角度θに依存する。
ne(ch)eff=n0(ch)ne(ch)/{[n0(ch)cos(θ)]2+[ne(ch)sin(θ)]2}1/2 (4)
カイラル相の有効複屈折率Δn(ch)effは角度θに関連し、次式のようになる。
Δn(ch)eff=n0(ch)−n0(ch)ne(ch)/{[n0(ch)cos(θ)]2+[ne(ch)sin(θ)]2}1/2 (5)
式2、3及び5を用いて、チルト角は有効屈折率から推測され、図6において電圧の関数としてプロットされた。臨界電圧以上では、円錐状変形がもたらされ、チルト角αは、電圧の増加につれて連続的に増加する(波線602で示していて、右の縦軸で表されている)。
【0047】
ここで、ゲルにより現れるスイッチング挙動は全体的に反転可能であり、分子は印加電圧の除去時にそれらの初期の配向の状態に戻ることに留意することは重要なことである。それらのゲルにおいては、低い架橋(C6M)の濃度の存在により、液晶分子のチルトの間、カイラルの状態は維持される。スイッチングプロセスにおける架橋濃度の効果について、従って、研究された。図7においては、チルト角αが、種々の濃度の架橋基C6Mを含むゲルに対して電圧の関数としてプロットされている。0.4%及び0.5%のC6Mを有するゲルに対して、チルト角は低電圧において既に次第に増加し始める。臨界電圧以上では、チルト角αは90°になる傾向にあるため、チルト角の急峻な増加は再び急峻でない増加により後続される。より高濃度のC6M(0.6%及び0.7%)を含むゲルは、しかしながら、僅かに異なる挙動を示す。低電圧においては、電圧の増加に伴ってチルト角が連続的に増加し始める閾値電圧に達するまで、チルト角は変わらないまま保たれる。0.6%及び0.7%のC6Mを有するゲルが比較されるとき、より高い架橋密度を有するゲルがより小さい傾きを示すことが理解できる。
【0048】
本発明に従ったセルにおいて回折格子機能性を備える簡単な方法は、図8に示すようなストライプ状電極810を備えることである。有効な回折格子周期は、それ故、電極ストライプ810の間の間隔の関数である。液晶層812の各々の側における電極間に電圧Vが印加されるとき、回折格子は活性化され、通常の入射を有する光に非依存性の偏光を操作する。図8に示す構成において小さいピッチを混ぜたものを用いることにより、電圧を印加する前801及び後802に非偏光光について波長の関数として開口811を通る強度が測定され、その結果について、図9に示している。
【0049】
図9は又、式5において2つの等方的屈折率(n1及びn2それぞれ)が2つの領域について仮定されている場合、波長の関数として開口811によりブロックされないビームについての理論的に予測される挙動を示す曲線を示している。屈折率n1及びn2は、分子が基底状態又はチルト状態それぞれにある場合の回折格子の領域に対応する。
I=I0cos(πd(n1−n2)/λ) (6)
本発明に従った位相変換器は、種々の方法を用いて製造されることが可能である。それらの方法の1つは、マスク又はホログラフィック手段によるゲルの照射を有する。このようにして、局部的に変化する構造及び種々の閾値電圧を有するゲルを生成することが可能である。電圧印加時に、ゲルにおいて構築された構造は、図10に示すように屈折率変化の形で可視的になる。そのような要素を備えることは、それ故、次のような5つの段階を有する。
0. 電極及び配向層を備えた2つの透明基板1001、1003の間に挟まれた液晶混合物を有する液晶混合物のセルを備える段階。
1. 液晶混合物1002に適切なマスクを通して紫外光を照射する段階であって、それにより、その混合物は局部的に重合される、段階。
2. その液晶混合物1002に紫外光を均一に照射する段階であって、それにより、安定なメモリ状態が備えられるように、特定の重合レベルがその混合物の全ての領域において確実にされる、段階。
3. 各々の基板と平行に配置された電極に電圧供給を接続する段階。
4. 電極間に電圧を印加する段階であって、それ故、液晶混合物1002において均一な電界が生成される、段階。高ポリマー網目構造密度を有する領域(即ち、紫外光への非常な露出を受けた)はへリックス状態のまま保たれる、又は、少なくとも、より低いポリマー網目構造密度を有する領域と同じ位のチルト状態にはない。
【0050】
勿論、多くの種々のマスクパターンを用いることが可能であり、その結果、電界が印加されたとき、種々の屈折率パターンが得られる。
【0051】
屈折率パターンを得る他の方法はパターニングされた電極を用いることである。そのような電極の幾つかの例を図11及び12に示す。図11においては、電極1101は回折格子パターンを備え、電極1102はマイクロレンズアレイを備え、電極1103は、例えば、レンズ又は位相補正要素(各々の個々の電極において設定される電圧に依存する)において用いられる同心円状回折特性を有するレンズを備えている。図12は、周囲1201より大きい電気抵抗を有する円形領域を有する電極を示している。本発明に従ったセルにおける電極に電圧を印加することにより、セルの中央の方に次第に弱くなる電界が得られ、それ故、対応して次第に変化する屈折率が与えられる。
【0052】
偏光非依存性回折格子以外には、上記の装置を用いて、フレネルレンズ及びがボールレンズのようなスイッチング可能レンズ又はレンズアレイを又、備えることが可能である。
【0053】
更に、スイッチング可能レンズ及び回折格子等の偏光非感応性幾何学的光学構成要素は又、図13及び14に示すように、液晶セル内に光学的に静的なオブジェクトを置くことにより与えられる。それらの構造は、好適には、透明であり、例えば、基底状態にある液晶混合物と同じ屈折率を有する。それにより、それらの構造は、混合物が液晶分子をチルトさせる電界を印加されない、それ故、混合物の屈折率が変わらない場合、光学的に不活性(屈折率干渉がない)である。それらの構造は、光レプリカ技術又は光エンボス技術を用いて透明な表面に対して適用されることが可能である。
【0054】
所望の構造をレプリカする最も簡単な方法は所望の構造を備えたモールドを用いることである。反応性基を有する液体モノマーは、次いで、基板とモールドとの間で圧力を掛けられる。モノマーの重合のとき、その液体はガラス化され、モールドは、次いで、基板の上部のレプリカ層(所望の表面構造を有する層)の背後に離して、取り除かれる。
【0055】
図13においては、規定状態(V=0)及びチルト状態(V>0)にある異なる静的な構造を有する2つの実施形態1310、1320が示されている。実施形態1320における構造は凸状の屈折率インターフェース1321を備えている。実施形態1320においては1つのレンズ構造を示しているが、同様に機能するマイクロレンズアレイであることが又、可能である。実施形態1310は、チルト状態において光のビームのベンディングに導くプリズムアレイを備えている。図14においては、回折する回折格子構造のアレイの実施形態が示され、回折効果を示している。
【0056】
選択されたデザイン(例えば、ポリマー網目構造変化、構造化電極又は光学的に静的な構成を含む構造)に依存することなく、本発明に従った位相変調器を種々のアプリケーションのために用いることができる。
【0057】
例えば、図15は、ランプ1501と、リフレクタ1502と、光ビームの形状及び/又は方向を制御するための本発明の位相変調器とを有するランプ構成を示している。スイッチング可能レンズ又はレンズアレイのような位相変調器を用いることにより、ビーム形状に影響を及ぼすことができる一方、図13に示すプリズムのアレイはビーム操作のために用いられる。このアプリケーションのために、パターニングされた構成を用いて、複雑なビーム形状を又、生成することが可能である。このようにして、複雑な電極構造を回避することが可能である。
【0058】
図16は、本発明に従ったレーザ源1601、ダイオード1602、回折格子1603、スイッチング可能波面補償板又はレンズ1604及びレンズ1605を有するCD(Compact Disc)又はDVD(Digital Video Disc)のための読み取りユニットを示している。そのような波面補償板は、レコーダの寿命の間に起こる収差はもとより、温度変化によりもたらされる収差をも補正するために用いられる。その波面補償板は、2つ以上の波長がそのユニットの光路において用いられる場合、色収差を又、補正することができる。更に、波面補償板は、ディスクの回転の間のチルティングによりもたらされるディスクにおける光路変動を補正することができる。本発明に従ったそのような補償板は又、種々のディスクにおける情報の深さによりもたらされる光路変動を処理することができる。
【0059】
図17は、レーザ源1701、ダイオード1702、回折格子1703、静電レンズ1705を有するCD又はDVD1706のための他の読み取りユニットを示している。そのような回折格子は、その性能に対する要求が高いために、図14に示す技術を用いて、好適に作製されることができる。そのようなスイッチング可能回折格子は又、最大回折効率を得るように、2つ以上の波長を用いるユニットにおいて用いられることができる。
【0060】
図18は、オブジェクト1805をCCD検出器1804に画像化するためのCCD(Charge Coupled Device)のための焦点レンズ装置を示している。焦点レンズ装置は静電レンズ1801とスイッチング可能レンズ1802とを有する。図19は、オブジェクト1905をCCD検出器1904に画像化するためのCCDカメラについてのスイッチング可能ズームレンズ装置を示している。ズームレンズ装置は、第1静電レンズ1901と、スイッチング可能レンズ1902と、第2静電レンズ1903とを有する。例えば、図12に示すモードアドレッシングに基づくレンズが、図18及び19に関連して説明するアプリケーションで用いるために適切である。
【0061】
本質的に、本発明は、可視光についての有効屈折率に依存しない偏光を与えるに十分小さいピッチを有するカイラル液晶混合物の層を有する光に対して偏光非依存性の位相変調器を提供する。液晶混合物は、へリックス配向基底状態と液晶混合物層に電界を印加することによりもたらされるチルト状態との間で制御可能である。液晶混合物は、好適には、電界が除去されたときにへリックス配向基底状態が回復することを確実にする網目構造材料中に分散されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】偏光非依存性位相変調器の断面の模式図である。
【図2】液晶混合物におけるへリックス配向及びその混合物における一部の螺旋角度を規定する様子を示す図である。
【図3】液晶混合物における温度の関数としての屈折率を示す図である。
【図4】種々の角度において光強度を測定するための実験的構成を示す図である。
【図5】印加電圧の関数としての透過強度を示す図である。
【図6】印加電圧の関数としての有効複屈折率及びチルト角を示す図である。
【図7】異なる液晶混合物についての電圧の関数としてのチルト角を示す図である。
【図8】電圧が印加されるとき及び電圧が印加されないときの本発明の位相変調器の断面の模式図である。
【図9】電圧が印加されるときの波長の関数としての透過強度と、電圧が印加されるときの理論的及び実際の強度とを示す図である。
【図10】製造及び続く使用における本発明の位相変調器の断面を示す図である。
【図11】本発明の実施形態のための種々の電極のデザインを示す図である。
【図12】本発明の実施形態のための種々の電極のデザインを示す図である。
【図13】液晶混合物層における静的な構造を有する種々の実施形態の断面を示す図である。
【図14】液晶混合物層における静的な構造を有する種々の実施形態の断面を示す図である。
【図15】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図16】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図17】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図18】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図19】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【背景技術】
【0001】
液晶(LC)は、フルカラーディスプレイ、温度インジケータ、及びグレーティング及びレンズのようなスイッチング可能位相変調装置を有する広範なアプリケーションに使用されている。従来の液晶セルは偏光光を選択的に制御し、それ故、典型的には、偏光子と重ね合わされる。しかしながら、偏光子は、典型的には、入射光の50%以上を吸収し、結果的に得られる輝度は、それ故、影響される。
【0002】
液晶の位相変調器は、光透過動作、簡単な制御、高信頼性及び低消費電力のために適応可能な光学装置として使用するための潜在能力は大きい。多くのアプリケーションにおいては、焦点ぼけ及び非点収差のような低次の収差の補正は最重要である。
【0003】
ポリマー分散型液晶(PDLC)は、偏光非依存性ディスプレイを提供するために提案されてきた。そのようなディスプレイにおいては、液晶分子は、光の散乱を生じるポリマー網目構造の状態でランダムに配向している。電界の印加により、印加された電界の方向に分子の一軸配向を生じる。ポリマーの屈折率及び液晶の通常の屈折率は、印加される電界の方向に伝播する光が何れの屈折率変化を生じず、それ故、散乱しないように適合される。
【0004】
しかしながら、偏光非依存性スイッチングが必要であるスイッチング可能レンズ及び回折格子のような光学装置においては、PDLC効果は、不所望の光散乱を生じるために用いられることができない。このような問題を低減するために、サブミクロンの大きさの液滴を有するPDLCが提案されてきた。しかしながら、そのような系の屈折率は、系内に大きい割合のポリマーが存在するために、電界の印加のみにおいては僅かに変化する。
【0005】
レンズのような液晶の位相変調器を得る最も容易な方法は、例えば、通常のマクロレンズのガラスを液晶で置き換えることである。より薄い構成が又、表面レリーフホログラムの上に置かれる場合又は(マイクロ)レンズが電気的に制御可能な焦点距離を得るようにネマチック液晶中に浸されている場合に提案されてきた(例えば、米国特許大6,014,197号明細書参照)。そのような構造は、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極上にフォトレジスト又は光レプリケーション技術を用いて作製される。
【0006】
他の適応可能なレンズは個々のレンズアレイにより制御され、ゾーン補正原理によってステップ関数により波面が近似される。それらの変調器における連続波面プロファイルに対する良好な近似は、非常に多くの離散的制御電極を必要とする。
【0007】
パターニングされた電極を用いることは又、液晶マイクロレンズの製造を容易にする。そのようなセルは、電極間の漏れ電界が液晶分子自体を光学的にレンズ構造である配向になるように、両方の基板における互いにアライメントされた孔と共にパターニングされている電極を用いて構成される。そのような電極を用いて、更に複雑なビーム操作機能を実現することができる。
【0008】
所謂、モードアドレッシングは、装置における位相プロファイルの連続変化を可能にし、又、LC波面補正及びモードLCレンズにおいて用いられることが可能である。このような技術においては、異なる抵抗を有する2つの電極領域が用いられる。制御電圧が、レンズの活性領域の周りの低抵抗環状電極に印加される。レンズにおける電圧は、LC層の静電容量及び高抵抗制御電極により形成される分圧部のために、レンズの中心方向に向かって半径方向に減少し、即ち、そのレンズのインピーダンスはレンズの中心方向に向かって半径方向に増加する。これは、電圧がその中心の方に向かって半径方向に減少することを意味する。逆に、LC層の光路長は周囲から開口中心に向かって増加する。
【0009】
他の可能性は、フォトマスクを用いてセルを照射することである。その場合、高UV強度で硬化された領域におけるモノマーは高濃度のポリマー網目構造になる。逆に、弱いUV露光を受けた領域は低濃度のポリマー網目構造になる。一様な電圧が印加されるとき、より低濃度の領域はスイッチングされる一方、他の領域はそれらの配向が変化せず、このようにして、リターデーション変動がセルにおいて得られる。
【0010】
しかしながら、その文献に記載されている殆ど全ての位相変調においては、一偏光方向のみについて機能する一軸配向したネマチック液晶を用いている。偏光されない光を用いる操作においては、互いに直交する配向を有する2つの同じレンズを用いるような複雑な手段を採用する必要がある。
【特許文献1】米国特許大6,014,197号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようにして、本発明の目的は、非依存性の偏光である位相変調(波リターダ)を提供することである。そのような要素は、例えば、光データ記憶システム(CD、DVD等)、照明において用いられる発光体の前、光相互接続、光ルーティング、印刷及び走査、マシンビジョン(パターン生成)、光演算、顕微鏡、CCDカメラにおける自動焦点及びズーム機能、並びにパターンジェネレータのような種々の装置の光学ユニットにおいて用いられることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それ故、本発明の一特徴に従って、光に対する偏光非依存性位相変調器が提供される。その位相変調器は、2つの基板と前記2つの基板間に備えられているカイラル液晶混合物とを有する。カイラル液晶混合物は、へリックス配向基底状態に配向され、前記基底状態と電界によるチルト状態との間で制御可能であり、光の偏光に実質的に依存しない有効屈折率の値を得るに十分小さいピッチを有する。有効屈折率は、所定の変更状態を有する光ビームにより経験される屈折率である。光ビームは、好適には、層の表面に対して実質的に垂直な方向に入射する。
【0013】
液晶混合物のへリックス配向基底状態において、液晶分子のダイレクタは層の表面に対して実質的に平行に配向される。ダイレクタは表面に対して垂直な長軸を有するへリックスをいう。電界が表面に対して好ましい垂直な方向に印加されるとき、チルト状態が得られる。チルト状態においては、分子の方向は層の表面に対してある角度に配向され、へリックスの長軸の方向は変わらないまま維持される。チルトは電界強度の増加に伴い増大する。へリックスの長軸の方向における光伝播は、光の偏光状態に依存しない有効屈折率を経験する。その偏光状態は、偏光の方向及び線偏光又は円偏光のような偏光モードの両方を示す。液晶の混合物のチルト状態においては、へリックスの長軸の方向における光伝播は又、偏光状態に依存しない有効屈折率を得るが、基底状態において経験される有効屈折率とは異なる。
【0014】
本発明は、それ故、実質的に可視光を反射しない小さいピッチのカイラル液晶混合物を用いて光りの偏光非依存性スイッチングのための方法を提供する。カイラル液晶混合物の有効屈折率は、ゲル(例えば、ポリマー網状構造により膨らんだ非反応液晶)を得るin−situ重合法を用いて可逆的な及び制御可能な様式でスイッチング可能にされる。位相変調は、例えば、レンズ、マイクロレンズアレイ、偏向器、ファンアウト要素、ビームプロファイラ、ビームステアリング、ビーム整形器、波面補正器等の動的要素のために用いられる種々の光学的硬化を得る要に電気的に対応することができることが更に理解できる。
【0015】
対掌性又はhandednessは対称でない分子の特性である。カイラル分子は特異な三次元形状を有し、その結果、カイラル分子及びその鏡像は完全に同一でない。
【0016】
カイラルネマチック液晶相は、ネマチック相を示す液晶混合物がカイラル分子をドープされるときに得られる。カイラル相においては、液晶分子(ダイレクタn)の長軸はへリックスに関して回転する。この相においては、へリックスと同じ回転様式を有する入射円偏光光の波長帯域は反射される一方、逆の様式を有する波長帯域は透過される。反射帯域の限界は、しかしながら、λmax=p*ne及びλmin=p*noとして与えられ、ここで、pはダイレクタが360°回転する長さに対応するピッチであり、ne及びnoはそれぞれ、一軸配向相の異常光屈折率及び通常光屈折率である。ピッチはカイラル成分の濃度により決定され、カイラル成分の割合の増加と共に減少する。文献には種々のカイラル分子が記載されていて、それらのカイラル分子は、ネマチック液晶における所望のピッチをもたらすために用いられることが可能である。反射帯域における光を与える反射は、それ故、偏光依存性である。
【0017】
しかしながら、偏光非依存性装置は反射帯域の外側で動作するように備えられることが可能であることが理解できる。それ故、非常に小さいピッチを有する液晶混合物を使用することが、他方では興味ないことであるが、可視光のための優れた偏光非依存性透過位相変調器を与えるために見出された。本発明に関連して、偏光非依存性は、偏光状態及び偏光方向に対して本質的に非依存的な偏光として解釈されるべきものである。それ故、本発明に従った位相変調器は、本質的に偏光非依存性スイッチング可能位相シフトを与える。僅かな副作用として起こる可能性のある何れの僅かな偏光依存性は、全体的な動作に影響を及ぼすことはなく、それ故、動作の観点から無視されることが可能である。偏光依存性の手段として、位相変調器を通る光の2つの線形偏光された直交するビームによりもたらされる屈折率の差を用いることができる。これに関連して、1つの代替としては、絶対値を用いることがある。そのような場合、本発明の目的のための偏光非依存性は、絶対屈折率の差が0.10以下である必要があり、好適には、0.05以下であることが必要である。代替として、その差は相対的数の状態で測定されることが可能であり、その場合、本発明の目的のための偏光非依存性は、相対的屈折率の差が5%以下、好適には、2%以下であることが必要である。
【0018】
その結果として、へリックスの軸に平行な方向に伝播する光ビームは、(ne+n0)/2に略等しい偏光非依存性屈折率をもたらす。換言すれば、へリックスの軸に平行な方向に伝播する光ビームは、全ての偏光方向について略(ne+n0)/2の等しい屈折率をもたらす。そのような系は負の複屈折率を有する一軸性として説明されるものである。へリックスの方向において(即ち、液晶混合物の層を横断して縦方向に)十分大きい電界が印加されるとき、一軸性の配向が液晶分子間にもたらされる。そのような一軸性配向状態における電界の方向に進む光は偏光非依存性屈折率n0を経験する。
【0019】
実際には、その層により伝播する光ビームが経験する屈折率は、分子の配向を変化させる層を横断する電界を印加することにより、その偏光の方向に依存せずにスイッチングされる。その電界は、有利であることに、2つ又はそれ以上の電極に印加され、液晶層の反対側に供給される。
【0020】
それ故、一実施形態に従って、位相変調器は所定の波長λより長い波長を有する光に対して動作可能(即ち、偏光非依存性)であり、ピッチはλ/nより小さく、ここで、nは、一軸性配向相において液晶混合物の異常屈折率及び通常屈折率はおけるより大きい。殆どの液晶混合物に対しては、異常屈折率は通常屈折率より大きい。所定の波長λは、例えば、位相変調器が可視光(例えば、λ=400nm又はλ=350nm)の全体のスペクトルに対して動作可能であるように設定される。
【0021】
典型的な液晶混合物においては、一軸性配向相の異常屈折率neは1.3乃至1.7の間のどこかにある。それ故、250nmの大きさであるピッチは、1.5のneを有する材料に対して約375nm(250nm*1.5)のλmaxを与える。それ故、本発明の一実施形態に従って、ピッチは250nmより小さい。そのような位相変調器は全体的な波長の可視スペクトルに対して動作可能である。しかしながら、より大きいピッチ、例えば、すぐに使える屈折率に依存して約525nm(350nm*1.5=525nm)の閾値波長を与える350nmが同様に認識される。そのような変調器は、波長の可視スペクトルの一部(例えば、525nmより大きい部分)のみに対して偏光非依存性である。これは、しかしながら、一部のアプリケーションに対しては十分である可能性がある。一実施形態に従って且つ上記のように、ピッチは、可視光の全体的スペクトル、即ち、400nm又は350nmより長い波長(即ち、λ)を有する光について偏光非依存性を与えるには十分に小さい。それにより、全体的な可視光スペクトルは偏光非依存性操作可能波長範囲に含まれる。このことは、非常に多くのアプリケーションに対して非常に好ましい。
【0022】
高速且つ反転可能スイッチングを得るように、メモリ状態はそのようなカイラルシステムの状態に構築される必要がある。更に、セルの表面に対して垂直な方向に伝播する光ビームについての漸次の偏光非依存性スイッチングを得るためには、分子が印加電圧の方向にチルトし始める円錐状変形モードが必要である。このことは、非反応性液晶分子内に分散された軽く架橋された網目構造を生成することにより達成される。それ故、一実施形態に従って、カイラル液晶混合物は網目構造材料中に分散された液晶分子を有する。
【0023】
網目構造材料は、例えば、非反応性カイラル液晶分子が存在する状態でインサイチュ(in−situ)の重合により与えられる異方性ポリマー網目構造であることが可能である。分子の制御可能且つ反転可能スイッチングを得るために、液晶混合物は、好適には、十分に架橋された適切に高ポリマー網目構造密度を有する。理想的には、その混合物における架橋分子の濃度は0.5重量%より大きく、ポリマーの直鎖(架橋されている)を構成する分子は20重量%を上回る濃度を有する。しかしながら、更なる一般的な一実施形態に従って、液晶混合物は、ポリマー鎖の直線上部分の間で架橋を与える0.5乃至1重量%の架橋分子により架橋されたポリマー鎖の直線状部分を構成する10乃至60重量%の分子を有する。
【0024】
本発明に従った位相変調器は、種々の制御可能光学特性と共にデザインされることが可能である。例えば、液晶分子のチルト角における横方向の変化に依存する焦点レンズ又は回折格子として動作することが可能である。横方向に変化するチルト角は、液晶混合物における対応して変化する屈折率をもたらす。そのような変化は種々の方法により与えられる。
【0025】
例えば、一実施形態に従って、ポリマー網目構造材料は、前記チルト状態、それ故、前記偏光非依存性有効屈折率の横方向の変化が、液晶混合物の層を横断する均一な電界の印加のときに与えられる。液晶分子に電界を印加するときに増加したポリマー網目構造の濃度を有する領域においてチルト状態が局部的に妨害されるような、網目構造における変化であることが可能である。その変化は、例えば、フォトマスクを用いる光重合プロセスにより与えられる。この実施形態は、変化する屈折率又は構造化された屈折率が均一な電界を用いて得られるために有利である。実際には、分子の移動が妨害される領域の屈折率はへリックス配向基底状態(即ち、通常屈折率及び異常屈折率の平均)と本質的に同様に維持される。ポリマー網目構造の濃度変化が存在する場合、上記で指定された濃度値は、高ポリマー網目構造濃度を有する領域にのみ適用されることが可能である。
【0026】
代替として、構造化された屈折率は、チルト状態にある液晶層の特定領域のみを設定する変化される電界により与えられる。それ故、一実施形態に従って、少なくとも基板の1つは構造化された電極を備え、その構造化された電極は前記の液晶混合物の層を横断する横方向に変化する電界を印加するように機能し、それ故、前記チルト状態における横方向の変化を与え、従って、前記偏光非依存性屈折率における横方向の変化を与える。
【0027】
しかしながら、横方向に変化する光学特性は液晶混合物において変化する屈折率によりもたらされる必要はない。他の代替としては、液晶マトリクスの内部に静電レンズ構造を備えることである。
【0028】
それ故、一実施形態に従って、光変調器は、前記構造間に備えられ、液晶混合物の状態の少なくとも1つにおいて液晶混合物の有効屈折率床となる屈折率を有する光学的に静的な構造を更に有する。それにより、光変調特性が、前記の静的な構造と前記の液晶混合物の層との間の界面により与えられる。その光学的に静的な構造は、例えば、レンズの形状を有し、そのような場合、液晶混合物を伴う凸状界面を規定する。
【0029】
一実施形態に従って、光学的に静的な構造は、基底状態にある液晶混合物の有効屈折率と同じ屈折率を有する。それにより、その構造は基底状態において光学的に非可視的である。しかしながら、液晶混合物において電界を印加することにより、液晶混合物の有効屈折率が変わり、それ故、異なる屈折率を有する領域間の界面が与えられる。その構造がレンズ形状である場合、その界面は、それにより、光フォーカシング(又は、デフォーカシング)効果を与える。しかしながら、他の静的な構造、例えば、回折効果を与える細長いプリズムを同様に用いることが又、可能である。
【0030】
本発明に従った位相変調器は多様な光学装置において実施されることが可能である。例えば、本発明の一特徴に従って、本発明の位相変調器を有するスイッチング可能なレンズを備えることができる。一実施形態に従って、本発明のスイッチング可能レンズにおける位相変調器は、前記基板上に配置された且つ液晶混合物の層において円形対称電界を印加するように操作可能である円形対称電極を更に有する。それにより、円形対称屈折率特性が本発明のレンズに備えられる。そのような構成においては、要素の厚さは、従来技術に比べて非常に減少される。
【0031】
本発明の他の特徴に従って、本発明の位相変調器を有するスイッチング可能回折格子が提供される。本発明の光源における位相変調器は、それにより、前記光源から出射される光の形状及び/又は方向を制御するように動作可能である。
【0032】
本発明の他の特徴に従って、光路を有し且つ前記光路に沿って配置された本発明の位相変調器を有する光データ記憶システムが提供される。そのような変調器は、動的に光りビームの焦点位置を変えるように、又、光記録担体の走査中に生じる種々の光収差を補償するように用いられることができる。収差の補正の実施例は、同じ光路を用いて読み取られる必要がある種々のタイプの記録担体の層の厚さにおける差に対する補正である。一実施形態に従って、データ記憶システムはCDシステム、DVDシステム又はブルーレイシステムである。
【0033】
本発明の更なる特徴及び目的については、以下の好適な実施形態についての詳細な説明を読み且つ理解するときに明らかになる。以下の詳細説明においては、添付図面に対する参照番号が付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
液晶セル100の一般的デザインを図1に示す。そのようなセルは、基板101、107と、透明電極102、106と、配向層103、105とを有する。液晶混合物の層104は配向層の間に挟まれている。電極102、106は液晶層104において電界を印加するように動作し、それにより、へリックス配向状態からチルト状態に液晶分子を再配向させる。本発明に従ったセルにおいては、液晶は、電界が印加されていないとき、液晶分子の配向が常に、へリックス配向の基底状態に戻るように、安定なメモリ状態を与えるポリマー網目構造中に分散されている。
【0035】
セルにおける種々の座標の規定について図2に示している。図2は、電界が印加されていない(V0=0)ときに、ピッチの半分(P/2)の距離においてへリックスに沿った異なる分子の配向を有する、本発明に従った位相の分子の5層を模式的に示している。図から理解できるように、それぞれの層における分子の平均配向の方向がへリックスに関して回転し、180°向きを変えるとき、分子は互いの上部に積層される平行な(即ち、横方向の)層において一軸配向されるように規定される。360°向きを変えるための縦方向の距離は、勿論、ピッチに等しい。
【0036】
電圧V0=0、V1>V0及びV2>V1それぞれに対応する3つの模式的なチルト配向Φ0、Φ1及びΦ2が又、図2に示されている。図から理解できるように、セル面内の分子の角配向は何れの印加電界に依存せず、セル面に関する分子の角配向(チルト角α)は電界強度の増加につれて増加する。
【0037】
液晶混合物は、へリックス配向を与えるカイラル分子がドープされている。可視光に対して透過するように、ピッチは十分に小さい必要がある。
【0038】
一実施例に従って、液晶混合物は、重合のときにポリマー主鎖を構成する20%のカイラルモノアクリレートCBCと、45%の非反応性カイラルドーパントCB15と、35%の非反応性液晶BL59(Merck社(独国ダルムシュタット市)製)と、0.5%のイルガキュア(Irgacure)651(Chiba Geigy社製)と、重合時に架橋を形成し、光開始剤が生成される種々の濃度のジアクリレートとを含む。重合される反応性分子の構造を、構造CB15及び光開始剤と共に次に示す。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
実験目的のために、その混合物は、ITO(Indium Tin Oxide)電極を有し、ベルベットの布で擦られたポリイミドで覆われた、図1に示すようなセル内に備えられた。セルギャップは、基板間にガラススペーサを用いて、4μmに設定された。図3においては、一軸性のネマチック相の屈折率は、重合前後のその混合物の温度の関数としてプロットされたものである。本研究においては、分光器を用いて反射帯域の最大値λmaxとカイラル分子の種々の割合を有する液晶混合物について屈折計を用いて異常屈折率neとを測定した後、関係p=λmax/neを用いてピッチが決定される。ピッチはカイラル成分の濃度の関数としてプロットされ、その混合物のピッチは約200nmになるように補間される。例えば、X線回折又は電子顕微鏡を用いる、他のピッチの測定方法が又、ある。他の従来のピッチの評価方法は楔形セルを用いることであり、それにより、所謂、楔形角度によるカイラル材料のピッチ及びディスクリネーションラインの位置を評価することが可能である。材料の等方性遷移温度及び異常屈折率が重合(黒色のドットは重合混合物に対応し、白色ドットは非重合混合物に対応する)するときに増加することが、図3から理解できる。上記のように、混合物のピッチ早く200nmであり、重合後の混合物の異常屈折率neは、図3に示すように、約1.74である。これは、λmax=348nm(1.74*200)であり、この材料が、波長の全体的な可視領域について、そして又より長い波長について適切であることを示している。
【0043】
そのようなピッチを有するカイラル液晶混合物の層は負の複屈折率を有する。それ故、そのような層を有するセルは、光の入射ビームがセルの面に対して垂直であるように、交差した偏光子の間に位置付けられているときに偏光方向は変化されず、それ故、セルは黒っぽくみえる。実際には、セルは、セルに対して垂直に入射する光について偏光依存性を有する。
【0044】
セルがある角度に位置付けられたときにのみ、この複屈折がこの入射ビームに対して現れる。本発明のセルの特性を更に研究するために、光ビームに関してθ=45°の角度にサンプルのセルは置かれる。これについては、図4に示し、その図は、本発明に従った液晶セル401に角度θで入射する強度I0を有する光線を示している。透過光の強度Iは光検出器402により測定される。
【0045】
実験は、波長550nmを有する光を用いて実行された。図5は、電圧の関数としてセルを透過する光の強度を示している。その図は、電圧が増加すると、その強度は、増加する前に、その最小値を通ることを示している。このような挙動は、電圧の増加に伴う有効複屈折における変化により説明される。有効複屈折率(Δneff)は、次式のように、透過強度Iに関連し、
I=I0sin2(πdΔneff/λ) (1)
ここで、I0は、偏光子及び分析器が互いに並列して設定されるときの最大透過強度であり、dは液晶層における光ビームの光路長であり、λは単色光の波長である。
【0046】
図5及び式(1)からのデータを用いて、Δn(ch)effは電圧の関数としてプロットされ、その結果について、図6に示されている(実線601で示していて、左の縦軸で表されている)。有効複屈折率は、より大きい電圧における飽和値に達する前に、約50Vにおいて0まで減少することが理解できる。複屈折率の連続変化は、円錐状変形に関連し、このとき、カイラルへリックス及びピッチは完全のままの状態を維持している一方、液晶分子は印加される電界の方に傾き始める。最終的には、全ての分子は印加電界の方向に配向される。図2に示す座標においては、これは、電圧の増加に伴うαの増加に対応している。カイラル相における通常屈折率n0(ch)及び異常屈折率ne(ch)は一軸性のネマチック相の通常屈折率n0及び異常屈折率ne並びに分子のチルト角αに関連し、次の式のようになる。
n0(ch)={n0ne+n0(n02cos2(α)+ne2sin2(α))}1/2/2(n02cos2(α)+ne2sin2(α))1/2 (2)
ne(ch)=n0ne/(n02cos2(α)+ne2sin2(α))1/2 (3)
カイラル相の有効通常屈折率n0(ch)effは角度θに依存しない一方、カイラル相の異常屈折率ne(ch)effは次式のように角度θに依存する。
ne(ch)eff=n0(ch)ne(ch)/{[n0(ch)cos(θ)]2+[ne(ch)sin(θ)]2}1/2 (4)
カイラル相の有効複屈折率Δn(ch)effは角度θに関連し、次式のようになる。
Δn(ch)eff=n0(ch)−n0(ch)ne(ch)/{[n0(ch)cos(θ)]2+[ne(ch)sin(θ)]2}1/2 (5)
式2、3及び5を用いて、チルト角は有効屈折率から推測され、図6において電圧の関数としてプロットされた。臨界電圧以上では、円錐状変形がもたらされ、チルト角αは、電圧の増加につれて連続的に増加する(波線602で示していて、右の縦軸で表されている)。
【0047】
ここで、ゲルにより現れるスイッチング挙動は全体的に反転可能であり、分子は印加電圧の除去時にそれらの初期の配向の状態に戻ることに留意することは重要なことである。それらのゲルにおいては、低い架橋(C6M)の濃度の存在により、液晶分子のチルトの間、カイラルの状態は維持される。スイッチングプロセスにおける架橋濃度の効果について、従って、研究された。図7においては、チルト角αが、種々の濃度の架橋基C6Mを含むゲルに対して電圧の関数としてプロットされている。0.4%及び0.5%のC6Mを有するゲルに対して、チルト角は低電圧において既に次第に増加し始める。臨界電圧以上では、チルト角αは90°になる傾向にあるため、チルト角の急峻な増加は再び急峻でない増加により後続される。より高濃度のC6M(0.6%及び0.7%)を含むゲルは、しかしながら、僅かに異なる挙動を示す。低電圧においては、電圧の増加に伴ってチルト角が連続的に増加し始める閾値電圧に達するまで、チルト角は変わらないまま保たれる。0.6%及び0.7%のC6Mを有するゲルが比較されるとき、より高い架橋密度を有するゲルがより小さい傾きを示すことが理解できる。
【0048】
本発明に従ったセルにおいて回折格子機能性を備える簡単な方法は、図8に示すようなストライプ状電極810を備えることである。有効な回折格子周期は、それ故、電極ストライプ810の間の間隔の関数である。液晶層812の各々の側における電極間に電圧Vが印加されるとき、回折格子は活性化され、通常の入射を有する光に非依存性の偏光を操作する。図8に示す構成において小さいピッチを混ぜたものを用いることにより、電圧を印加する前801及び後802に非偏光光について波長の関数として開口811を通る強度が測定され、その結果について、図9に示している。
【0049】
図9は又、式5において2つの等方的屈折率(n1及びn2それぞれ)が2つの領域について仮定されている場合、波長の関数として開口811によりブロックされないビームについての理論的に予測される挙動を示す曲線を示している。屈折率n1及びn2は、分子が基底状態又はチルト状態それぞれにある場合の回折格子の領域に対応する。
I=I0cos(πd(n1−n2)/λ) (6)
本発明に従った位相変換器は、種々の方法を用いて製造されることが可能である。それらの方法の1つは、マスク又はホログラフィック手段によるゲルの照射を有する。このようにして、局部的に変化する構造及び種々の閾値電圧を有するゲルを生成することが可能である。電圧印加時に、ゲルにおいて構築された構造は、図10に示すように屈折率変化の形で可視的になる。そのような要素を備えることは、それ故、次のような5つの段階を有する。
0. 電極及び配向層を備えた2つの透明基板1001、1003の間に挟まれた液晶混合物を有する液晶混合物のセルを備える段階。
1. 液晶混合物1002に適切なマスクを通して紫外光を照射する段階であって、それにより、その混合物は局部的に重合される、段階。
2. その液晶混合物1002に紫外光を均一に照射する段階であって、それにより、安定なメモリ状態が備えられるように、特定の重合レベルがその混合物の全ての領域において確実にされる、段階。
3. 各々の基板と平行に配置された電極に電圧供給を接続する段階。
4. 電極間に電圧を印加する段階であって、それ故、液晶混合物1002において均一な電界が生成される、段階。高ポリマー網目構造密度を有する領域(即ち、紫外光への非常な露出を受けた)はへリックス状態のまま保たれる、又は、少なくとも、より低いポリマー網目構造密度を有する領域と同じ位のチルト状態にはない。
【0050】
勿論、多くの種々のマスクパターンを用いることが可能であり、その結果、電界が印加されたとき、種々の屈折率パターンが得られる。
【0051】
屈折率パターンを得る他の方法はパターニングされた電極を用いることである。そのような電極の幾つかの例を図11及び12に示す。図11においては、電極1101は回折格子パターンを備え、電極1102はマイクロレンズアレイを備え、電極1103は、例えば、レンズ又は位相補正要素(各々の個々の電極において設定される電圧に依存する)において用いられる同心円状回折特性を有するレンズを備えている。図12は、周囲1201より大きい電気抵抗を有する円形領域を有する電極を示している。本発明に従ったセルにおける電極に電圧を印加することにより、セルの中央の方に次第に弱くなる電界が得られ、それ故、対応して次第に変化する屈折率が与えられる。
【0052】
偏光非依存性回折格子以外には、上記の装置を用いて、フレネルレンズ及びがボールレンズのようなスイッチング可能レンズ又はレンズアレイを又、備えることが可能である。
【0053】
更に、スイッチング可能レンズ及び回折格子等の偏光非感応性幾何学的光学構成要素は又、図13及び14に示すように、液晶セル内に光学的に静的なオブジェクトを置くことにより与えられる。それらの構造は、好適には、透明であり、例えば、基底状態にある液晶混合物と同じ屈折率を有する。それにより、それらの構造は、混合物が液晶分子をチルトさせる電界を印加されない、それ故、混合物の屈折率が変わらない場合、光学的に不活性(屈折率干渉がない)である。それらの構造は、光レプリカ技術又は光エンボス技術を用いて透明な表面に対して適用されることが可能である。
【0054】
所望の構造をレプリカする最も簡単な方法は所望の構造を備えたモールドを用いることである。反応性基を有する液体モノマーは、次いで、基板とモールドとの間で圧力を掛けられる。モノマーの重合のとき、その液体はガラス化され、モールドは、次いで、基板の上部のレプリカ層(所望の表面構造を有する層)の背後に離して、取り除かれる。
【0055】
図13においては、規定状態(V=0)及びチルト状態(V>0)にある異なる静的な構造を有する2つの実施形態1310、1320が示されている。実施形態1320における構造は凸状の屈折率インターフェース1321を備えている。実施形態1320においては1つのレンズ構造を示しているが、同様に機能するマイクロレンズアレイであることが又、可能である。実施形態1310は、チルト状態において光のビームのベンディングに導くプリズムアレイを備えている。図14においては、回折する回折格子構造のアレイの実施形態が示され、回折効果を示している。
【0056】
選択されたデザイン(例えば、ポリマー網目構造変化、構造化電極又は光学的に静的な構成を含む構造)に依存することなく、本発明に従った位相変調器を種々のアプリケーションのために用いることができる。
【0057】
例えば、図15は、ランプ1501と、リフレクタ1502と、光ビームの形状及び/又は方向を制御するための本発明の位相変調器とを有するランプ構成を示している。スイッチング可能レンズ又はレンズアレイのような位相変調器を用いることにより、ビーム形状に影響を及ぼすことができる一方、図13に示すプリズムのアレイはビーム操作のために用いられる。このアプリケーションのために、パターニングされた構成を用いて、複雑なビーム形状を又、生成することが可能である。このようにして、複雑な電極構造を回避することが可能である。
【0058】
図16は、本発明に従ったレーザ源1601、ダイオード1602、回折格子1603、スイッチング可能波面補償板又はレンズ1604及びレンズ1605を有するCD(Compact Disc)又はDVD(Digital Video Disc)のための読み取りユニットを示している。そのような波面補償板は、レコーダの寿命の間に起こる収差はもとより、温度変化によりもたらされる収差をも補正するために用いられる。その波面補償板は、2つ以上の波長がそのユニットの光路において用いられる場合、色収差を又、補正することができる。更に、波面補償板は、ディスクの回転の間のチルティングによりもたらされるディスクにおける光路変動を補正することができる。本発明に従ったそのような補償板は又、種々のディスクにおける情報の深さによりもたらされる光路変動を処理することができる。
【0059】
図17は、レーザ源1701、ダイオード1702、回折格子1703、静電レンズ1705を有するCD又はDVD1706のための他の読み取りユニットを示している。そのような回折格子は、その性能に対する要求が高いために、図14に示す技術を用いて、好適に作製されることができる。そのようなスイッチング可能回折格子は又、最大回折効率を得るように、2つ以上の波長を用いるユニットにおいて用いられることができる。
【0060】
図18は、オブジェクト1805をCCD検出器1804に画像化するためのCCD(Charge Coupled Device)のための焦点レンズ装置を示している。焦点レンズ装置は静電レンズ1801とスイッチング可能レンズ1802とを有する。図19は、オブジェクト1905をCCD検出器1904に画像化するためのCCDカメラについてのスイッチング可能ズームレンズ装置を示している。ズームレンズ装置は、第1静電レンズ1901と、スイッチング可能レンズ1902と、第2静電レンズ1903とを有する。例えば、図12に示すモードアドレッシングに基づくレンズが、図18及び19に関連して説明するアプリケーションで用いるために適切である。
【0061】
本質的に、本発明は、可視光についての有効屈折率に依存しない偏光を与えるに十分小さいピッチを有するカイラル液晶混合物の層を有する光に対して偏光非依存性の位相変調器を提供する。液晶混合物は、へリックス配向基底状態と液晶混合物層に電界を印加することによりもたらされるチルト状態との間で制御可能である。液晶混合物は、好適には、電界が除去されたときにへリックス配向基底状態が回復することを確実にする網目構造材料中に分散されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】偏光非依存性位相変調器の断面の模式図である。
【図2】液晶混合物におけるへリックス配向及びその混合物における一部の螺旋角度を規定する様子を示す図である。
【図3】液晶混合物における温度の関数としての屈折率を示す図である。
【図4】種々の角度において光強度を測定するための実験的構成を示す図である。
【図5】印加電圧の関数としての透過強度を示す図である。
【図6】印加電圧の関数としての有効複屈折率及びチルト角を示す図である。
【図7】異なる液晶混合物についての電圧の関数としてのチルト角を示す図である。
【図8】電圧が印加されるとき及び電圧が印加されないときの本発明の位相変調器の断面の模式図である。
【図9】電圧が印加されるときの波長の関数としての透過強度と、電圧が印加されるときの理論的及び実際の強度とを示す図である。
【図10】製造及び続く使用における本発明の位相変調器の断面を示す図である。
【図11】本発明の実施形態のための種々の電極のデザインを示す図である。
【図12】本発明の実施形態のための種々の電極のデザインを示す図である。
【図13】液晶混合物層における静的な構造を有する種々の実施形態の断面を示す図である。
【図14】液晶混合物層における静的な構造を有する種々の実施形態の断面を示す図である。
【図15】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図16】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図17】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図18】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【図19】本発明の位相変調器の種々の実施を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光についての偏光非依存性位相変調器であって:
2つの透明基板;及び
前記透明基板間のカイラル液晶混合物の層;
を有する偏光非依存性位相変調器であり、
前記カイラル液晶混合物はへリックス配向基底状態にあるように配向し、前記基底状態と電界によるチルト状態との間で制御可能であり、前記カイラル液晶混合物の状態に依存する有効屈折率を有し、そして前記屈折率の値が前記光の前記偏光に実質的に依存するように十分に小さいピッチを有する;
ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、光は所定の波長λより長い波長を有し、前記ピッチはλ/nより小さく、nは一軸性配向面における前記液晶混合物の異常屈折率及び通常屈折率より大きい、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項3】
請求項2に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記所定の波長λは400nmであり、又は、好ましくは350nmである、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項4】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記ピッチは350nmより小さく、好ましくは250nmより小さい、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項5】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記カイラル液晶混合物は、網目構造材料において分散された液晶分子を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記網目構造材料は異方性ポリマー網目構造であり、前記分散された混合物は0.5乃至1重量%の架橋分子により架橋された10乃至60重量%の直線状ポリマー分子を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項7】
請求項5に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記網目構造は、前記チルト状態即ち前記偏光非依存性屈折率の横方向の変化が前記の液晶混合物の層における一様な電界の印加において与えられるように、横方向に変化する濃度を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項8】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記基板の少なくとも一は構造化された電極を備え、その電極は前記液晶分子において横方向に変化する電界を印加するように動作し、それにより、前記チルト状態における横方向の変化であって、従って、前記偏光非依存性屈折率における横方向の変化を与える、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項9】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記基板間に配置された光学的に静的な構造を更に有し、前記液晶混合物の状態の少なくとも1つにおける前記液晶混合物の前記有効屈折率と異なる屈折率を有し、それ故、光変調特性は前記静的な構造と前記の液晶混合物の層との間の界面により与えられる、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項10】
請求項1に従った偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とするスイッチング可能レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載のスイッチング可能レンズであって、前記偏光非依存性位相変調器は、前記基板において備えられ、前記スイッチング可能レンズの円形対称屈折率特性を有するように液晶混合物の層において円形対称電界を印加するように動作する円形対称電極を更に有する、ことを特徴とするスイッチング可能レンズ。
【請求項12】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とするスイッチング可能回折格子。
【請求項13】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有する光源であって、前記偏光非依存性位相変調器は前記光源から出射される光の形状又は方向を制御するように動作する、ことを特徴とする光源。
【請求項14】
光路を有し且つ前記光路に沿って備えられた請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とする光学的データ記憶システム。
【請求項15】
請求項14に記載の光学的データ記憶システムであって、前記光学的データ記憶システムはCDシステム、DVDシステム又はブルーレイシステムである、ことを特徴とする光学的データ記憶システム。
【請求項16】
光路と前記光路に沿って備えられた請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器とを有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項1】
光についての偏光非依存性位相変調器であって:
2つの透明基板;及び
前記透明基板間のカイラル液晶混合物の層;
を有する偏光非依存性位相変調器であり、
前記カイラル液晶混合物はへリックス配向基底状態にあるように配向し、前記基底状態と電界によるチルト状態との間で制御可能であり、前記カイラル液晶混合物の状態に依存する有効屈折率を有し、そして前記屈折率の値が前記光の前記偏光に実質的に依存するように十分に小さいピッチを有する;
ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、光は所定の波長λより長い波長を有し、前記ピッチはλ/nより小さく、nは一軸性配向面における前記液晶混合物の異常屈折率及び通常屈折率より大きい、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項3】
請求項2に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記所定の波長λは400nmであり、又は、好ましくは350nmである、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項4】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記ピッチは350nmより小さく、好ましくは250nmより小さい、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項5】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記カイラル液晶混合物は、網目構造材料において分散された液晶分子を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記網目構造材料は異方性ポリマー網目構造であり、前記分散された混合物は0.5乃至1重量%の架橋分子により架橋された10乃至60重量%の直線状ポリマー分子を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項7】
請求項5に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記網目構造は、前記チルト状態即ち前記偏光非依存性屈折率の横方向の変化が前記の液晶混合物の層における一様な電界の印加において与えられるように、横方向に変化する濃度を有する、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項8】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記基板の少なくとも一は構造化された電極を備え、その電極は前記液晶分子において横方向に変化する電界を印加するように動作し、それにより、前記チルト状態における横方向の変化であって、従って、前記偏光非依存性屈折率における横方向の変化を与える、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項9】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器であって、前記基板間に配置された光学的に静的な構造を更に有し、前記液晶混合物の状態の少なくとも1つにおける前記液晶混合物の前記有効屈折率と異なる屈折率を有し、それ故、光変調特性は前記静的な構造と前記の液晶混合物の層との間の界面により与えられる、ことを特徴とする偏光非依存性位相変調器。
【請求項10】
請求項1に従った偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とするスイッチング可能レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載のスイッチング可能レンズであって、前記偏光非依存性位相変調器は、前記基板において備えられ、前記スイッチング可能レンズの円形対称屈折率特性を有するように液晶混合物の層において円形対称電界を印加するように動作する円形対称電極を更に有する、ことを特徴とするスイッチング可能レンズ。
【請求項12】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とするスイッチング可能回折格子。
【請求項13】
請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有する光源であって、前記偏光非依存性位相変調器は前記光源から出射される光の形状又は方向を制御するように動作する、ことを特徴とする光源。
【請求項14】
光路を有し且つ前記光路に沿って備えられた請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器を有することを特徴とする光学的データ記憶システム。
【請求項15】
請求項14に記載の光学的データ記憶システムであって、前記光学的データ記憶システムはCDシステム、DVDシステム又はブルーレイシステムである、ことを特徴とする光学的データ記憶システム。
【請求項16】
光路と前記光路に沿って備えられた請求項1に記載の偏光非依存性位相変調器とを有することを特徴とするカメラシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−510172(P2007−510172A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536222(P2006−536222)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052043
【国際公開番号】WO2005/040907
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052043
【国際公開番号】WO2005/040907
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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