説明

偏心伝動装置

【課題】摩擦損失を少なくさせて作動安定性が向上するように偏心伝動装置を改良する。
【解決手段】両剪断カッター(2,3)はその両溝付きリンク(4,5)の領域に押圧面(11,12)を有している。押圧面(11,12)は、少なくとも調整距離(a)の一部にわたって露出するように互いにずらして配置されている。それぞれ1つの付設の押圧面(11,12)に作用する2つの押さえ部材(13,14)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の構成を備えた偏心伝動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに逆方向に移動する2つの剪断カッターを備えた、原動機で駆動され、手で操縦される剪定ばさみでは、連接棒駆動以外に偏心駆動も使用される。偏心駆動の場合、互いに180゜ずれた2つの偏心体を備えた、回転駆動される偏心ホイールが設けられている。これら2つの偏心体は両剪断カッターの溝付きリンクに係合し、これによって両偏心体が互いに逆方向に振動駆動される。
【0003】
公知の構成では、両剪断カッターはその両溝付きリンクをも含めて直接に重設されており、その際両偏心体は付属の駆動車の同じ側に配置され、それぞれ両溝付きリンクの一方に係合している。これにより剪断カッターの交換が容易になる。というのは、伝動装置ハウジングを開いたときに、偏心ホイール自体を取り外さずに、剪断カッターを偏心駆動部から引き離すことができるからである。
【0004】
しかしながら、実際には、大きな剪断力を供給する場合、剪断板の、溝付きリンクを取り囲んでいる駆動眼状部が、軸線方向に偏心体から離間することがあり、その結果駆動車から切り離して配置されている剪断カッターの駆動が中断することが明らかになった。前記剪断カッターと駆動車の間にある剪断カッターも離間する傾向にあり、このとき両偏心体は同時に付属の溝付きリンクに係合する。このため、剪定ばさみの駆動全体がブロックされる。
【0005】
前記離間を回避するため、反力でもって剪断カッターの溝付きリンクをその軸線方向の位置で偏心駆動部にて保持するカバーが装着される。しかしながら、両剪断カッターが互いに積層されているので、この種のカバーは外側の剪断カッターにしか保持力を及ぼさず、この保持力はその後その下にある剪断カッターへ伝えられる。このため、両剪断カッターの間の摩擦が増大し、よって偏心駆動部に望ましくない温度上昇が生じ、永続潤滑を阻害する。潤滑グリースが液状になり、流出または燃焼することがある。総じてこの配置構成の摩耗特性は満足なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、摩擦損失を少なくさせて作動安定性が向上するようにこの種の偏心伝動装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成を備えた偏心伝動装置によって解決される。
【0008】
本発明によれば、両剪断カッターがその両溝付きリンクの領域に押圧面を有し、該押圧面が、少なくとも調整距離の一部にわたって露出するように互いにずらして配置されていること、それぞれ1つの付設の押圧面に作用する2つの押さえ部材が設けられていることが提案される。
【0009】
本発明による配置構成により、両押圧面に対し互いに独立に且つ直接に保持力を作用させることができ、しかもこの保持力を外側の剪断カッターを通じて内側の剪断カッター側へ伝える必要がない。従って、保持力によって両剪断カッターの間に付加的な摩擦は発生しない。摩擦と摩耗が減少する。摩擦による温度発生も制限されており、その結果グリースの潤滑作用を損なうことなく偏心伝動装置にグリースを充填することを省略できる。高荷重時に必要な駆動パワーは少なく、他方摩耗による寿命は長くなる。
【0010】
押圧面をたとえば溝付きリンクの側方に配置するのが合目的な場合がある。この場合、第1の剪断カッターの押圧面はたとえば左側に位置し、第2の剪断カッターの押圧面は反対側の右側に位置する。このようにして、両押圧面が互いに覆いあうのが避けられ、その結果直接または間接にこれに押さえ部材を用いて押圧力を作用させることができる。有利な他の構成では、剪断カッターは、それぞれ1つの剪断部分と、調整距離に平行に延在しているそれぞれ1つの押圧突出部とを有し、該押圧突出部は、剪断カッターの、調整距離の方向において剪断部分に対向している背面に配置され、且つ調整距離に対し交差する方向の側方方向において側方に互いにずれている。この場合、押圧面は押圧突出部に形成されている。両押圧突出部が側方にずれていることにより、調整距離とは関係なく相互に覆い合うことが回避される。押圧突出部が前記背面に配置され、且つ剪断カッターの長手方向にまたは調整距離の方向に延在しているので、側方方向にはわずかな構成空間しか必要なく、これによって偏心伝動装置をスリムにコンパクトに保持できる。動力導入時の側方偏心率は最小になっている。
【0011】
有利な他の構成では、押圧突出部の押圧面は、調整距離に少なくともほぼ等しい長さを有している。これによって、押さえ部材が少なくともほぼ全調整距離にわたって付設の押圧面に作用できるよう保証されている。従って、押さえ作用はほぼ全調整距離にわたって維持される。
【0012】
加えて、剪断カッターが溝付きリンクの側方に滑り面を有し、該滑り面により剪断カッターが互いに滑動し、その際駆動車から離れて位置している第2の剪断カッターが、付設の滑り面とオーバーラップして少なくとも1つの他の押圧面を有し、該他の押圧面に作用する他の押さえ部材が設けられているのが合目的である。特に、滑り面と他の押圧面と他の押さえ部材とは調整距離に関し対をなして対向し合っている。これによって押圧面での上述した保持作用が補助され、その結果偏心伝動装置は全体的に非常に堅牢である。前記他の押圧部材の領域および付属の他の押圧面の領域では、保持力は直接に外側の剪断カッターのみに伝えられ、この外側の剪断カッターを通じて間接的に内側の剪断カッターに伝えられるが、しかしこの場合に生じる付加摩擦は小さい。というのは、本来の押さえ作用は露出している押圧面に作用し、その結果ここでは補助的な押さえ作用または偏心伝動装置を堅牢にする押さえ作用のみが、摩擦力の著しい増大なしに観察されるからである。対称配置構成により均一な荷重導入が得られ、この均一な荷重導入は剪断カッターの調整距離全体にわたってまたは偏心駆動部の全調整距離にわたって維持される。
【0013】
偏心ホイールと剪断カッターとを溝付きリンクおよび押圧面の領域で受容するための伝動装置ハウジングが設けられている。この場合、押さえ部材を直接伝動装置ハウジングまたはそのハウジングカバーに形成するのが合目的である。しかし、有利には、伝動装置ハウジング内に、押さえ部材とともに保持板が配置されていることである。この場合、特に、少なくとも1つの押さえ部材および有利には側方の押圧面に作用する前記2つの他の押さえ部材も保持板に配置されている。これによってハウジングの荷重が軽減され、その結果ハウジングは薄壁の軽量な軽金属鋳造物等から製造されていてよい。高保持力を吸収するため、伝動装置ハウジングの材料選択とは関係なく、保持板は、たとえば薄鋼板または他の高強度の材料から製造する。
【0014】
有利には、保持板は、押さえ部材をも含めて、特に前記少なくとも1つの他の押さえ部材をも含めて、薄板成形部材として一体に形成されている。耐荷重力が高いので、または、調達可能な押さえ力が高いので、適正コストの製造が得られる。
【0015】
有利な実施態様では、保持板は、ハウジングシェルとハウジングカバーとの間で、特に螺合および/またはクランプおよび/または形状拘束によって保持されている。たとえば剪断カッターを交換することができるように、ハウジングカバーを取り外した後に保持板を簡単に除去することができる。さらに、保持板をハウジングシェルとハウジングカバーとの間に固定することで、広い面積にわたる動力導入が可能になり有利であり、軽量構造への努力にとって好ましい。
【0016】
偏心ホイールの軸ピンをハウジングカバー内で支持するのが合目的である。有利には、保持板は偏心ホイールの前記軸ピンのための支持穴を有している。保持板は高い保持力を調達する必要があるので適宜堅牢に構成されていなければならず、またこれに対応する材料から製造されていなければならないので、保持板は、付加コストなしに、偏心ホイールの軸ピンのための高荷重可能な支持ユニットとしても用いることができ、これによって伝動装置ハウジングの荷重がさらに軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】互いに逆方向に駆動される2つの剪断カッターのために本発明にしたがって実施された偏心伝動装置を備えた剪定ばさみの斜視図である。
【図2】ハウジングカバーを取り外し、両剪断カッターを偏心ホイールに押し付けるための保持板を備えた図1の偏心伝動装置を下から見た斜視図である。
【図3】保持板を取り外した図2の配置構成を示したもので、偏心駆動部と押圧突出部を一体成形した剪断カッターとの構成をさらに詳細に示した図である。
【図4】図3のカッター位置で示した、図2の線IV−IVによる偏心伝動装置の縦断面図であり、第1の剪断カッターに作用する押さえ部材を備えた構成を示すものである。
【図5】偏心ホイールを180゜回転させ、剪断カッターを対応的に互いにずらした図3の配置構成を示した図である。
【図6】図5の剪断カッター位置で示した、図2の線VI−VIによる偏心伝動装置の縦断面図であり、第2の剪断カッターに当接している押さえ部材を備えた構成を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は手で操縦される剪定ばさみ1の斜視図であり、剪定ばさみ1は、詳細には図示していない駆動原動機1と、ケーシング32と、前部ハンドグリップ33と、後部ハンドグリップ34とを備えている。駆動原動機は配電網による作動またはバッテリー作動用の電動機であってもよいが、図示した実施形態では単気筒2サイクル内燃エンジンである。4サイクル内燃エンジンであってもよい。
【0019】
ケーシング32の、利用者とは逆の側の前端には、本発明による偏心伝動装置が装着されている。偏心伝動装置は、調整距離aだけ互いにわずかに駆動される2つの剪断カッター2,3と、伝動装置ハウジング24とを含み、伝動装置ハウジング24は、ケーシング32に固定されたまたは一体に成形されたハウジングシェル26と、取り外し可能なハウジングカバー27とを備えている。両剪断カッター2,3は原動機に近い部分でもって伝動装置ハウジング24内に位置し、伝動装置ハウジング24の外側に、枝等の切断のために設けられている切断歯を備えた剪断部分15を有している。両剪断カッター2,3は直接重なっており、位置固定の担持体30において長手方向に調整距離aにわたって振動するように案内されている。駆動原動機31によって駆動されるこの縦振動運動は、後で詳細に説明する他の偏心伝動装置によって発生させる。
【0020】
図2は、図1に図示した剪定ばさみ1の本発明による偏心伝動装置を下から見た斜視図である。なお、ケーシング32に一体成形されたハウジングシェル26からハウジングカバー27(図1)を取り外して図示してある。本発明による偏心伝動装置の一部は後でさらに詳細に説明する偏心ホイール6である。偏心ホイール6は駆動原動機31(図1)により回転軸線10のまわりを回転可能に駆動され、偏心ホイール6自体は、回転軸線10に平行な高さ方向において直接重設されている両剪断カッター2,3を調整距離aだけ振動駆動する。
【0021】
回転軸線10によって設定される高さ方向に対し垂直に、且つ調整距離aの方向に延びる長手方向に対し垂直に、側方方向19が設定されている。偏心伝動装置は第1の押さえ部材13と第2の押さえ部材14とを含み、偏心伝動装置の長手軸線を境にして側方方向19に互いに横にずれており、後で詳細に説明する態様で両剪断カッター2,3に対し作用を及ぼす。なお、さらに一対の第3の押さえ部材23が設けられており、これらの押さえ部材23も長手軸線に関し対称に側方方向19において対向し合っている。第1および第2の押さえ部材13,14は、剪断カッター2,3の、調整距離aの方向で剪断部分15に対向している背面に配置され、他方第3の2つの押さえ部材23は回転軸線10のすぐ側方に位置している。
【0022】
押さえ部材13,14,23は電動装置ハウジンク24またはそのハウジングカバー27(図1)に直接一体成形されていてよく、図示した実施形態では別個の保持板25によって形成されている。保持板25は押さえ部材13,14,23を含めて薄鋼板から成る薄板成形部材として一体に形成され、偏心ホイール6の軸ピン29を回転可能に支持している支持穴28を有している。保持板25は、ハウジングシェル26とハウジングカバー(ここでは取り外されており、図1に図示されている)との間で螺合およびクランプによっても保持されている。このため、保持板25は一体に形成されたねじ込み眼状部材38を有し、ねじ込み眼状部材38は伝動装置ハウジング24または保持シェル26の成形部で形状拘束的に保持されており、ハウジングカバー27の固定ねじがこのねじ込み眼状部材38を貫通している。さらに、押さえ部材23の外側エッジは伝動装置ハウジング24または保持シェル26の壁で側方から支持されている。このようにして保持板25は伝動装置ハウジング24と堅牢に固定結合されて、押さえ力を押さえ部材13,14,23で吸収するとともに、支持力を支持穴28で吸収できるようになっている。伝動装置ハウジング24は薄壁の軽金属鋳造物から作製されているが、適当なプラスチック材から成っていてもよい。
【0023】
図3は、図2の装置を、保持板25を取り外して図示したものである。図3から認められるように、偏心ホイール6は、歯車から形成されている駆動車7と、2つの偏心体8,9と、軸ピン29とから成っている。両偏心体8,9は駆動車7の同じ端面に配置され、駆動車7と相対回転不能に結合されている。両偏心体8,9は円板形状部を有し、相互に180゜の位相ずれをもって回転軸線10に対し偏心して配置されている。第1の偏心体8は直接駆動車7の側面上にあり、他方第2の偏心体9は、回転軸線10によって設定される高さ方向において、第1の偏心体8のすぐ上に配置されている。駆動車7と両偏心体8,9とは互いに形状拘束的に結合され、硬蝋付けされている。
【0024】
両剪断カッター2,3は、偏心ホイール6の領域に、内側に楕円形穴を備えた駆動眼状部としてのフレーム状成形部を有している。この場合、楕円形穴の長手軸線は側方方向19に延びている。両楕円形穴によって、第1の剪断カッター2の第1の溝付きリンク4と、第2の剪断カッター3の第2の溝付きリンク5とが形成され、この場合両剪断カッター2,3はその溝付きリング4,5でもって互いに直接重なりあっている。第1の偏心体8は第1の剪断カッター2の第1の溝付きリンク4に係合し、他方第2の偏心体9は第2の剪断カッター3の第2の溝付きリンク5に係合している。溝付きリンク4,5に係合している偏心体8,9を回転駆動運動することににより、両剪断カッター2,3は調整距離aだけ長手方向において互いに逆方向に振動駆動される。詳細に図示していない、両剪断カッター2,3の縦ガイドは、両剪断カッター2,3の縦運動のみが発生し、側方運動成分が発生しないようにする。
【0025】
両剪断カッター2,3は、溝付きリンク4,5を取り囲んでいる駆動眼状部の互いに向かい合っている面に、滑り面20,21を有している。この滑り面20,21において両剪断カッター2,3は偏心ホイール6の領域でその振動調整経路aに沿って互いに滑動し合う。駆動車7に対向している第2の剪断カッター3は、滑り面21に対し対向するように、さらに押圧面22を有している。総じてそれぞれ2つの滑り面20と、2つの滑り面21と、2つの押圧面22とが設けられ、これらは側方方向19において対をなして且つ装置の長手軸線に関し対称に対向し合っている。
【0026】
両剪断カッター2,3は、長手方向において剪断部分15に対向している背面18に、平面ピンとして形成され、且つ調整経路aによって設定される長手方向に延在している押圧突出部16,17をそれぞれ有している。押圧圧突出部16,17は溝付きリンク4,5を取り囲んでいる駆動眼状部に直接一体に成形されている。両押圧突出部16,17は側方方向19において装置の長手軸線に関し対称に互いに横にずれており、その結果両押圧突出部16,17は全調整経路aに沿って互いを覆うことができず、互いに当接しない。前記対称構成によって同一に構成された2つの剪断カッター2,3を使用でき、その際両剪断カッターのうちの一方の剪断カッター2,3は他方の剪断カッター3,2に対しその長手軸線のまわりに180゜だけ回転することができる。それぞれ1つの押圧面11,12は、押圧突出部16,17の、駆動車7とは逆の側の平坦な側面に形成され、この場合両押圧突出部16,17は、その押圧面11,12を含めて、調整経路aの方向に長さlにわたって延在している。長さlは、有利には、調整距離aに等しいかこれよりも長い。さらに、両押圧面11,12は、少なくとも調整距離aの一部にわたって露出するように、有利には調整距離a全体にわたって露出するように、すなわち特に第1の剪断カッター2の第1の押圧面11が調整距離aに沿って対向する第2の剪断カッター3の一部によって覆われないように、互いにずらして配置されている。
【0027】
図4は、図2の切断線IV−IVに沿った縦断面図であり、ハウジングカバー27を取り付けた状態で且つ図3のカッター位置の状態で示したものである。同一の構成には同一の参照符号が付してある。ハウジングシェル26には、玉軸受として構成された軸受37が挿着され、軸受37では、駆動ピニオン36を備えた2分割軸機構が支持されている。この軸機構には、遠心クラッチのクラッチケース35が相対回転不能に結合されている。駆動ピニオン36は、歯車として構成された偏心ホイール6の駆動車7に噛み合っている。駆動原動機31(図1)が所定連結回転数以上になると、図示していない遠心体がクラッチケース35の内面に摩擦で係合し、これによってクラッチケース35が駆動ピニオン36をも含めて回転せしめられる。この回転が偏心ホイール6に伝達され、これによって剪断カッター2,3が上述の態様で偏心体8,9と溝付きリンク4,5により運動する。
【0028】
図2の斜視図において認められるように、保持板25に形成された両押さえ部材13,14は、回転軸線10によって設定される高さ方向において互いに高さがずれるように配置されている。この高さのずれは、互いに重なって全体で平面状に形成されている両剪断カッター2,3の高さのずれに相当しており、従って両押圧突出部16,17もその押圧面11,12(図3)をも含めて同じ高さずれを有している。
【0029】
図4の縦断面図からわかるように、保持板25に形成されている第1の押さえ部材13は、第1の剪断カッター2の第1の押圧突出部16の第1の押圧面11に直接当接し、すなわち第2の剪断カッター3の部材を中間に配置することなく当接しており、これによって剪断カッター2は、これに割り当てられた保持力が第2の剪断カッター3に作用することなく、駆動車7を押圧する。従って、第1の溝付きリンク4を備えた第1の剪断カッター2が付設の第1の偏心体8から持ち上げられて離間することがない。
【0030】
図5は図3の装置を、偏心ホイール6を180゜回転させて示した図で、ここでも同一の構成には同じ参照符号が付されている。両剪断カッター2,3は、その押圧突出部16,17をも含めて、図3の図示に比べて調整距離aだけ互いに変位している。ここに図示した第1の剪断カッター2の最前端位置では、その押圧突出部16は付属の押圧面11(図3)とともにその上にある第2の剪断カッター3によって平面状に覆われており、その結果この最前端位置では、図4の図示とは異なり、第1の押さえ部材13は付設の押圧面11に作用しない。これは、第1の剪断カッター2のこの極限位置で発生する切断力は、よってこれに伴う第1の剪断カッター2の、付設の偏心体8からの離間傾向は、無視できるほど小さいからである。しかしながら、剪断カッター2,3が図5の位置からわずかだけでもずれた位置を占めると、押さえ部材13は、図4の図示に対応して、その支持機能を第1の剪断カッター2の押圧面11に対し作用させる。しかし、両押圧面11,12が適宜より長く形成されている構成も合目的であり、この場合には調整距離a全体にわたって支持作用が生じる。
【0031】
図6は図2の装置の切断線VI−VIによる縦断面図で、図5のカッター位置で示したものである。図4と一致して異なっていない限りにおいては、同一の構成に同じ参照符号が付してある。図2および図4の図示に対応して第1の押さえ部材13に対し高さがずれ、側方にもずれている押さえ部材14は、第2の剪断カッター3の第2の押圧突出部17の第2の押圧面12に当接して支持され、よって高さ方向において駆動車7側で保持力を第2の剪断カッター3に対し作用させており、これによって第2の剪断カッター3は高荷重の場合でも付設の第2の偏心体9から持ち上げることができる。当接力または保持力は、第2の押さえ部材14から第2の押圧面12へ直接作用し、その間に第1の剪断カッター2の部材はない。両押圧突出部16,17がさらに図3の図示に対応して側方へ互いにずれているので、第2の押圧突出部17に作用する保持力は第1の剪断カッター2の第1の押圧突出部16に伝達されない。
【0032】
総じて、図2ないし図6の図示から明らかなように、両剪断カッター2,3は互いに独立であり、直接偏心ホイール6の領域で押し下げられ、持ち上げによる離間が阻止され、しかもこれに伴う保持力が両剪断カッター2,3間の摩擦を増大させることはない。図3および図4または図5および図6に図示した剪断カッター2,3の極限位置では、両押さえ部材13,14の一方のみがそれぞれに付設の押圧突出部16,17を押圧する。これとは異なる中間位置では、両剪断カッター2,3はその押圧突出部16,17において同時に、しかし相互に影響しあうことなく押さえ部材13,14によって押し下げられ、その際第2の剪断カッター3の第2の押圧突出部17は図3の図示に対応して、第1の剪断カッター2の、溝付きリンク4を取り囲んでいる駆動眼状部で支持される。溝付きリンク4,5は付設の偏心体8,9から離間することがなく、その結果偏心体8,9と剪断カッター2,3の間の動力伝達は高作動荷重の場合でも保証されている。
【0033】
図3の剪断カッター2,3の両極限位置の間の中間位置(図示せず)では、両偏心体8,9は側方方向19において互いに横に並んでおり、その際両溝付きリンク4,5は互いにオーバーラップ状態で重なっている。この場合、両溝付きリンク4,5が同時に持ち上げられると、第2の偏心体9が持ち上げられた両溝付きリンク4,5に同時に係合するケースを考慮すべきである。このケースでは駆動が即座に遮断される。これも押さえ部材13,14と押圧突出部16,17とによって阻止される。しかし、これを補助するように上述の両押さえ部材23が設けられており、押さえ部材13,14の押さえ作用を特に前記中央の中間位置で支援して駆動の遮断を阻止するようになっている。図2、図3、図5を概観するとわかるように、両押さえ部材23は付設の押圧面22に作用する。押圧面22は対向する滑り面21とオーバーラップ状態にある。これにより、特に上記中央の中間位置で、補助保持力が第3の押さえ部材23から第2の剪断カッター3の第3の押圧面22に作用し、この補助保持力は滑り面21,20を介して中間にある第1の剪断カッター2にも作用し、これによって偏心ホイール6の領域での両剪断カッター2,3での押さえ作用が補助され、または改善される。
【0034】
両押圧突出部を剪断カッターの背面に配置することにより、剪断カッターを側方方向において可能な限り接近して配置することができる。両押圧突出部16,17の間の側方へのずれは、押さえ時の非対称性をできるだけ少なくするため、技術的に合目的に変換可能であるように小さく選定されている。長手軸線に関し対称に配置される押圧面22との関連で、少なくともほぼ対称な、両剪断カッター2,3への押さえ力の導入が行われ、これは荷重による変形傾向を減少させる。
【符号の説明】
【0035】
1 剪定ばさみ
2,3 剪断カッター
4,5 溝付きリンク
6 偏心ホイール
7 駆動車
8,9 偏心体
10 偏心ホイールの回転軸線
11,12 押圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機で駆動され、手で操縦される剪定ばさみ(1)の偏心伝動装置であって、調整距離(a)だけ互いに逆方向に駆動され、それぞれ1つの溝付きリンク(4,5)を備えているる2つの剪断カッター(2,3)と、回転軸線(10)のまわりに回転駆動され、1つの駆動車(7)と2つの偏心体(8,9)とを備えた偏心ホイール(6)とを含み、前記両溝付きリンク(4,5)が互いに直接重設され、前記両偏心体(8,9)が前記駆動車(7)の同じ側に配置され且つそれぞれ前記両溝付きリンク(4,5)の一方に係合している前記偏心伝動装置において、
前記両剪断カッター(2,3)がその前記両溝付きリンク(4,5)の領域に押圧面(11,12)を有し、該押圧面(11,12)が、少なくとも前記調整距離(a)の一部にわたって露出するように互いにずらして配置されていること、
それぞれ1つの付設の押圧面(11,12)に作用する2つの押さえ部材(13,14)が設けられていること、
を特徴とする偏心伝動装置。
【請求項2】
前記剪断カッター(2,3)が、それぞれ1つの剪断部分(15)と、前記調整距離(a)に平行に延在しているそれぞれ1つの押圧突出部(16,17)とを有し、該押圧突出部(16,17)が、前記剪断カッター(2,3)の、前記調整距離(a)の方向において前記剪断部分(15)に対向している背面(18)に配置され、且つ前記調整距離(a)に対し交差する方向の側方方向(19)において側方に互いにずれており、前記押圧面(11,12)が前記押圧突出部(16,17)に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の偏心伝動装置。
【請求項3】
前記押圧突出部(16,17)の前記押圧面(11,12)が、前記調整距離(a)に少なくともほぼ等しい長さ(l)を有していることを特徴とする、請求項2に記載の偏心伝動装置。
【請求項4】
前記剪断カッター(2,3)が前記溝付きリンク(4,5)の側方に滑り面(20,21)を有し、該滑り面(20,21)により前記剪断カッター(2,3)が互いに滑動すること、前記駆動車(7)から離れて位置している第2の剪断カッター(3)が、付設の前記滑り面(21)とオーバーラップして少なくとも1つの他の押圧面(22)を有していること、該他の押圧面(22)に作用する他の押さえ部材(23)が設けられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の偏心伝動装置。
【請求項5】
前記滑り面(20,21)と前記他の押圧面(22)と前記他の押さえ部材(23)とが前記調整距離(a)に関し対をなして対向し合っていることを特徴とする、請求項4に記載の偏心伝動装置。
【請求項6】
前記偏心ホイール(6)と前記剪断カッター(2,3)とを前記溝付きリンク(4,5)および前記押圧面(11,12)の領域で受容するための伝動装置ハウジング(24)が設けられていること、該伝動装置ハウジング(24)内に、前記押さえ部材(13,14)とともに保持板(25)が配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の偏心伝動装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの押さえ部材および有利には前記2つの他の押さえ部材(23)も前記保持板(25)に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の偏心伝動装置。
【請求項8】
前記保持板(25)が、前記押さえ部材(13,14)をも含めて、特に前記少なくとも1つの他の押さえ部材(23)をも含めて、薄板成形部材として一体に形成されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の偏心伝動装置。
【請求項9】
前記伝動装置ハウジング(24)がハウジングシェル(26)とハウジングカバー(27)とを有し、前記保持板(25)が、前記ハウジングシェル(26)と前記ハウジングカバー(27)との間で、特に螺合および/またはクランプおよび/または形状拘束によって保持されていることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか一つに記載の偏心伝動装置。
【請求項10】
前記保持板(25)が前記偏心ホイール(6)の軸ピン(29)のための支持穴(28)を有していることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか一つに記載の偏心伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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