説明

偏心調整素子

本発明は、偏心調整素子(10)であって、その両側端部の双方に小径の雄ねじ部(14,16)を有するロッド(12)を設け、これら雄ねじ部の内側には、ねじ山のない輪郭形成部分(18,20)を隣接して設け、ロッドの回転軸線から輪郭面までの最短距離は、雄ねじ部(14,16)の外径よりも大きく、各輪郭形成部分(18,20)には、それぞれ偏心ワッシャ(24,26)を装着した偏心調整素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心調整素子に関する。このような調整素子は、例えば自動車構造において、輪距を調整するのに用いられる。従来、この目的には、もっぱら、偏心ねじ、またはねじと偏心ディスク(ワッシャ)との組み合わせが用いられてきた。これらは、例えば本願人による特許文献1(独国実用新案第202007006410号)に記載されている。
【背景技術】
【0002】
さらに、特許文献2(仏国特許出願公開第2720845号)、特許文献3(欧州特許出願公開第1216362号)、および特許文献4(独国実用新案第20012108号)には、他のねじと偏心ワッシャとの組み合わせが記載されている。
【0003】
これら先行技術では、常にねじまたはボルトとして構成された偏心調整素子が用いられている。この場合、ねじヘッド側の偏心ワッシャは、冷間成形においてねじヘッドと一体に構成する、またはねじのシャフトに装着してヘッドにクランプする。しかしながら、これらの方法は、以下の欠点を有する。
【0004】
対応するねじヘッドを、非常に大きい偏心ワッシャを含めて冷間成形により製造するのは、高品位な冷間成形が必要である故に、ワッシャが製造中に破損する恐れがあり、非常に困難である。
【0005】
これに対する代替の方法として、現時点では、対応するワッシャをヘッド近傍でシャフトにクランプすることが知られている。この方法は、一方で、ねじのシャフト全体を一貫した輪郭にすることが必要である。この方法は、製造に費用が相当かかり、これは、特に長いねじと偏心ワッシャとの組み合わせにおいては、長いねじのシャフト全体をその輪郭にする変形加工のために多大な電力が必要となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国実用新案第202007006410号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2720845号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1216362号明細書
【特許文献4】独国実用新案第20012108号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来技術から、本発明の課題は、より一層簡単に製造できる偏心調整素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、その両側端部の双方に小径の雄ねじ部を有するロッドを設け、これら雄ねじ部の内側に隣接して輪郭形成部分を設け、ロッドの回転軸線から輪郭面までの最短距離を、雄ねじ部の外径よりも大きくし、輪郭形成部分に、それぞれ偏心ワッシャを装着した偏心調整素子により解決される。
【0009】
従来技術において既知であるねじと偏心ワッシャとの組み合わせに比較して、この構成は、組み立て時に、直径の大きいねじヘッドを考慮しなくて良いため、ロッドを任意の側から差し込むことができるという利点を有する。
【0010】
ロッドを取り付けた後に、偏心ワッシャを装着し、ナットを両側からねじ付けることができる。
【0011】
このとき、ロッドの輪郭形成部分は、雄ねじ部に隣接する小さな領域に限定することができるが、この代案として、輪郭形成部分は、ロッドの全長に渡って延在させることもできる。このことは、ロッドの製造要求に応じて選択することができる。
【0012】
このとき、特に好適には、雄ねじ部に適合する雌ねじ部を有するナットを雄ねじ部にねじ付け、また、雌ねじ部は、偏心ワッシャの方向に向かって直径がより大きい孔に移行し、この直径がより大きい孔の直径は、輪郭形成部分の最大直径よりも大きいように選択する。このようにして、偏心ワッシャは、輪郭形成部分のより長い範囲にわたり、輪郭形成部分上でナットによりねじ付けされる。
【0013】
取り付けを簡単にするにあたり、さらに好適には、ロッドの一方の端部に力係合部、好適には外側力係合部を設ける。このようにして、ナットをねじ付ける間、工具でロッドを保持することができ、こうすることで、各ナットを個々に、互いに独立して、ねじ付けて締結することができ、または、ナットを保持し、ロッドを、力係合部によって、ねじ込むことができる。
【0014】
以下、本発明を、添付図面に示した例示的実施形態例に基づき詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明偏心調整素子の側面図(ナットおよび偏心ワッシャは断面図)である。
【図2】図1に示す偏心調整素子の、力係合部側から見た端面図である。
【図3】図1に示すロッドの輪郭形成した部分における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すのは、本発明偏心調整素子10である。この偏心調整素子10は、両側双方の端部に雄ねじ部14,16を有するロッド12を備える。これら雄ねじ部14,16の内側には、それぞれロッド12の輪郭形成した部分18,20を設ける。この場合、雄ねじ部14,16の半径は、ロッド12の回転軸線から輪郭形成部分18,20の輪郭面までの最小距離よりも常に小さい。
【0017】
ロッド12の一方、できれば両側双方の端部において、雄ねじ部14または16を越える位置、すなわちロッド12の最端部に、外側力係合部22を設ける。図1に示す実施形態において、外側力係合部22は、雄ねじ部16を越える位置に設ける。この場合、力係合部22の外径は、それぞれ雄ねじ部14,16の谷径よりも小さくなるように選択する。
【0018】
好適には、断面が6個の突歯を有する形状または星形の力係合部を用いる。
【0019】
このように構成したロッドの両側双方のには、輪郭形成部分に対応する形状に輪郭形成した偏心孔を有する対応の偏心ワッシャ24,26を嵌合する。それぞれの雄ねじ部16には、好適には特別に構成したナット28,30をねじ付ける。これらナット28,30は、その長さの一部にわたり雌ねじ部32,34を有する。ナット28,30における、その組立てた状態において偏心ワッシャ24,26に対面する側には、好適にはより大きい内径の孔を設ける。好適には、この内径は、輪郭形成部分18,20の最大外径よりも大きくする。このようにして、ナットを輪郭形成部分18,20の上方に、少なくとも部分的にねじ付けることができ、偏心ワッシャ24,26も、これに対応して内方にロッド12上で調整することができる。
【0020】
図2に示すのは、図1に示す本発明偏心調整素子を、力係合部22を設けた側から見た端面図である。
【0021】
図2から分かるように、力係合部22は、外形が6個の突歯を有する形状(ヘクサロビュラ形)の力係合部とする。さらに、ナットは、通常の六角形状をした外側力係合部を備える。勿論、他の形式の外側力係合部にすることも可能である。
【0022】
図3に示すのは、輪郭形成部分20の領域におけるロッド12の断面図である。この図面から分かるように、この輪郭は、ロッド12の外周に、複数の平面部分を非対称に設けたものとして選択する。本発明によれば、他の異なる輪郭、例えば対称的な輪郭としても良い。
【0023】
図1〜3に示した例示的な実施形態によれば、偏心調整素子を自動車のアクセスしにくい箇所に組み付けることも可能である。すなわち、本発明偏心調整素子は、例えば、一方の(アクセスし易い方の)側から挿入することができ、つぎに、アクセスし難い方の側からは、偏心ワッシャを嵌めるだけでナット28が雄ねじ部14上に保持されるようになる。このとき、ナット28は保持するだけで良く、ナットを回転させる必要はない。なぜならば、ロッド12は、外側力係合部22によって、保持しているナット28内にねじ込まれ、この後第2のナット30をアクセスし易い側でねじ付けることができるからである。この場合、ナット28は、アクセスし難い方の側で、同様に、僅かにのみ保持するだけで良く、このためには、対応する小さい工具を用いることができる。場合によっては、ナット28が、この組み付けステップ中に、既に全くアクセス可能でない状態にあったとしても、ナット30をこちら側からねじ付ける間、ロッド12を、外側力係合部22により保持することができる。
【0024】
その他にも、本発明によれば、本発明偏心調整素子の製造に関して高い融通性を得ることができる。長さの異なるロッドさえ製造すれば、顧客の要望に応じて、それらに様々な直径および偏心度の、対応する偏心ワッシャを取り付けることができるためである。このため、製造すべき種類を大幅に減らすことができ、在庫管理が容易になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心調整素子(10)であって、その両側端部の双方に小径の雄ねじ部(14,16)を有するロッド(12)を設け、これら雄ねじ部(14,16)の内側には、ねじ山のない輪郭形成部分(18,20)を隣接して設け、ロッドの回転軸線から輪郭面までの最短距離は、前記雄ねじ部(14,16)の外径よりも大きく、前記輪郭形成部分(18,20)には、それぞれ偏心ワッシャ(24,26)を装着したことを特徴とする偏心調整素子。
【請求項2】
請求項1記載の偏心調整素子(10)において、前記雄ねじ部(14,16)間における前記ロッド(12)の長さ全体にわたり前記輪郭形成部分(18,20)を延在させたことを特徴とする偏心調整素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の偏心調整素子(10)において、前記雄ねじ部(14,16)に適合する雌ねじ部(32,34)を有するナット(28,30)を前記雄ねじ部(14,16)にねじ付け、また、前記雌ねじ部(32,34)は、前記偏心ワッシャ(24,26)の方向に向かって直径がより大きい孔(36,38)に移行し、直径がより大きい孔(36,38)の直径は、前記輪郭形成部分(18,20)の最大直径よりも大きいように選択したことを特徴とする偏心調整素子。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の偏心調整素子(10)において、前記ロッド(12)の一方の端部に、力係合部(22)を設けたことを特徴とする偏心調整素子。
【請求項5】
請求項4記載の偏心調整素子(10)において、前記力係合部(22)は、外側力係合部として構成したことを特徴とする偏心調整素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540852(P2010−540852A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526161(P2010−526161)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001554
【国際公開番号】WO2009/039834
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504387724)アキュメント ゲーエムベーハー ウント コー オーハーゲー (4)
【Fターム(参考)】