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偏波選択性多モード干渉導波路デバイス
説明

偏波選択性多モード干渉導波路デバイス

【課題】偏波選択機能を有する多モード干渉導波路デバイスを得る。
【解決手段】偏波選択性多モード干渉導波路デバイス(10)は、多モード干渉導波路部(3)と、多モード干渉導波路部(3)の一端の中心に接続される第1の導波路(1)と、多モード干渉導波路部(3)の一端に対向する他端の中心に接続される第2の導波路(2)とを備え、第1の導波路(1)から入射し多モード干渉導波路部(3)を伝搬して第2の導波路(2)に出射する光波のTMモードとTEモードの透過率の比が、当該デバイスの使用目的によって決まる要求仕様を満たすように、多モード干渉導波路部(3)の幅及び長さが決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波の選択性を有する多モード干渉導波路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光集積回路等で用いられる導波路形光デバイスでは、デバイスに入射する偏波(通常、TEモード、TMモードで区別される)が異なると、所望の機能を発現しないものがある。即ち、一方の偏波のみに対して所望の機能を発現するデバイスが多く、これをデバイス特性の偏波依存性という。
【0003】
一方、通常の光ファイバでは、光波の偏波面を一定に保つ作用がなく、光ファイバに加わる温度や圧力の変化によって、偏波面が回転する。このような光ファイバを通して、偏波依存性を有する光導波路形デバイスに光を入射すると、ファイバから互いに直交したTE偏波(導波路中ではTEモードと呼ばれる)とTM偏波(導波路中ではTMモードと呼ばれる)がそのまま光導波路形デバイスに入射され、その結果、光導波路形デバイスは所期の機能を発現しない。
【0004】
例えば、干渉導波路形光アイソレータ(特許文献1参照)では、順方向にTMモードの光波を低損失で透過させ、逆方向にTMモードの光波の伝搬を阻止する機能を備えている(光アイソレータ機能)。しかしながら、TEモードに対しては、非相反効果がないため、順方向、逆方向ともに伝搬を阻止する作用をもたず、光アイソレータとして機能しない。従って、このような干渉導波路形光アイソレータに、光ファイバを介して光波を入射させた場合、デバイスは光アイソレータとして正常に機能しない。
【0005】
従って、偏波依存性を有する導波路形光デバイスを、例えば光ファイバと接続して正常に動作させるためには、光ファイバを介して入射される光波からデバイスを正常に機能させない偏波を取り除き、このデバイスに所望の偏波のみを入射させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−302603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従って、所定の偏波のみを選択して透過させる機能を備えた、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様では、多モード干渉導波路部と、前記多モード干渉導波路部の一端の中心に接続される第1の導波路と、前記多モード干渉導波路部の前記一端に対向する他端の中心に接続される第2の導波路と、を備える、多モード干渉導波路導波路デバイスにおいて、前記第1の導波路から入射し前記多モード干渉導波路部を伝搬して前記第2の導波路に出射する光波のTMモードとTEモードの透過率の比が、前記多モード干渉導波路部と前記第2の導波路との接続部において当該デバイスの使用目的によって決まる要求仕様を満たすように、前記多モード干渉導波路部の幅及び長さが決定されていることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを提供する。
【0009】
上記第1の態様において、上記要求仕様を少なくとも20dBとしても良い。また、前記TEモードの透過率に対する前記TMモードの透過率の比を20dB以上(TMモード透過率/TEモード透過率≧100(20dB))とすることによって、当該デバイスをTMモード選択性デバイスとして機能させるようにしても良い。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様では、多モード干渉導波路部と、前記多モード干渉導波路部の一端の中心に接続される第1の導波路と、前記多モード干渉導波路部の前記一端に対向する他端の中心から一定の距離に、互いに対称となるように配置された第2及び第3の導波路と、を備える、多モード干渉導波路導波路デバイスにおいて、前記第1の導波路から入射し前記多モード干渉導波路部を伝搬して前記第2の導波路と第3の導波路に出射する光波のTMモードとTEモードの透過率の比が、前記多モード干渉導波路部と前記第2及び第3の導波路との接続部において当該デバイスの使用目的によって決まる要求仕様を満たすように、前記多モード干渉導波路部の幅及び長さ、さらに前記一定の距離が決定されていることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを提供する。
【0011】
上記態様において、前記要求仕様は、少なくとも20dB以上としても良い。また、前記第1の導波路をTMモード及びTEモードを含む光波の入力導波路とすることによって、当該デバイスを偏波選択性のMMI分岐器として機能させるようにしても良い。
【0012】
また、前記TEモードの透過率に対する前記TMモードの透過率の比を20dB以上(TMモード透過率/TEモード透過率≧100(20dB))とすることによって、当該デバイスをTMモード選択性デバイスとして機能させるようにしても良い。
【0013】
また、上記第2の態様の偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを、MMI結合器として用いて、多モード干渉導波路形光アイソレータを構成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
多モード干渉導波路を伝搬する光波では、偏波に依存して多モード干渉が現れる周期が変化する。具体的には、TMモードとTEモードで多モード干渉の周期が異なる。この周期の違いを利用し、多モード干渉導波路を、その出射端でTMモードの出力が大きく、TEモードの出力が殆ど無いような構造とすることによって、TM偏波のみを選択して出力することが可能な、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを作成することが出来る。反対に、多モード干渉導波路の出射端でTEモードの出力が大きく、TMモードの出力が殆ど無いような構造とすることによって、TE偏波のみを選択して出力することが可能な、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、1入力1出力導波路形のデバイスの概略構成を示す斜視図。
【図2】図1に示すデバイスの上面図。
【図3】図1及び2に示すデバイスの多モード干渉導波路部における光波伝搬にともなう光パワー分布を示す図。
【図4】図(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係るデバイスの構成原理を説明するための図。
【図5】図(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係るデバイスの構成原理を説明するための図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るデバイスの、多モード干渉導波路部の長さに対する出力導波路への透過率変化を示す図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るデバイスの透過率の偏波選択性を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る、1入力2出力デバイスの概略構造を示す斜視図。
【図9】図8に示すデバイスの上面図。
【図10】図8及び9に示すデバイスの多モード干渉導波路部における光波伝搬にともなう光パワー分布を示す図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るデバイスの構成原理を説明するための図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るデバイスの構成原理を説明するための図。
【図13】図(a)及び(b)は、第2の実施形態に係るデバイスの動作原理を説明するための図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るデバイスの、多モード干渉導波路部の長さに対する出力導波路への透過率変化を示す図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係るデバイスの透過率の偏波選択性を示す図。
【図16】本発明の第2の実施形態に係るデバイスによって構成したMMI結合器を用いた、干渉導波路形光アイソレータの概略構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の種々の実施形態を、図面を参照して説明するが、これらの実施形態は単に一例であって本発明を限定するものでは無い。また、全図面を通して、同じ符号は同一又は類似の構成要素を示すので、重複した説明は行わない。更に、各図は本発明の実施形態の説明のみを目的としており、従って各部分の図面上の大きさが実際の縮尺に対応するものではない。
【0017】
<第1の実施形態:1入力1出力導波路デバイス>
以下に、本発明の第1の実施形態に係る、1入力1出力導波路形の偏波選択性多モード干渉導波路デバイスについて説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明の他の実施形態に係る多モード干渉デバイス10の概略構造を示す斜視図である。このデバイス10は、1入力導波路1出力導波路型のデバイスであり、後述するように、偏波選択デバイスとして機能する。偏波選択性多モード干渉導波路デバイス10は、SIO(Silicon On Insulator)ウェーハのシリコン層に形成される多モード干渉導波路部3とシングルモードの入力導波路1、出力導波路2とで構成されている。4はシリコン基板、5はSiO2クラッド層を示す。図示はしていないが、多モード干渉導波路デバイス10を構成する多モード干渉導波路部3と入力導波路1、出力導波路2はSiO2のクラッド層5によって埋設されている。
【0019】
図2に、デバイス10の構造を定義するためのパラメータを示す。多モード干渉導波路部3の幅方向の端部に沿ってx軸を設定し、長さ方向にz軸を設定している。これによって、入力導波路1、出力導波路2は、x軸に対称な位置(x=0)に配置される。入出力導波路1、2の断面の幅をWで示し、多モード干渉導波路部3の幅をWMMI、長さをLMMI、厚さをWTで示す。入出力導波路1、2及び多モード干渉導波路部3の厚さWTは、通常、同じとされている。
【0020】
図3は、図1及び図2に示す構造の偏波選択性多モード干渉導波路デバイス10において、導波路1から光波を入力した場合の、多モード干渉導波路部3における光波分布のシミュレーション結果を示す。このシミュレーション結果は、TMモードの偏波に対するものである。また、シミュレーションはモード整合法を用いて行っている。図3において、3aで示した部分は光強度が高い部分、3bで示した部分は光強度が最も高い部分であり、3cで示す部分は光強度が最も低い部分を示す。図示するように、光波の伝搬にともなって、x方向の光強度分布が周期性を持って変化する様子が理解される。
【0021】
多モード干渉導波路部を伝搬する光波分布は、TMモードとTEモードで相違している。また、光強度分布の周期もTMモードとTEモードで相違している。本発明者等は、TMモードとTEモードにおけるこのような周期の違いを利用することによって、一方の偏波を通過させ、他方の偏波を遮断する、偏波選択性デバイスを構成できると考えた。
【0022】
即ち、適当な位置で多モード干渉導波路部3を切断し、出力導波路2を接続する。例えば、図3の伝搬距離z=z1では、大部分の光波パワーがx=0の位置に集中している。多モード干渉導波路部3をこの位置で切断して、横方向に対称な位置(x=0)に出力導波路2を接続すると、図4(a)に示すように、多モード干渉導波路部3の大部分の光パワーが出力導波路2に出力される(状態A)。即ち、高い透過率(=出力光パワー/入力光パワー)が得られる。
【0023】
一方、図3において、伝搬距離z=z2の位置で多モード干渉導波路部3を切断した場合、x=0の位置では光波パワーはほとんど存在しない。即ち、x=0に出力導波路2を設置しても出力導波路2からは光波が出力されない(図4(b)、状態B))。この場合、多モード干渉導波路部3中を伝搬する光波は、一部は反射して多モード干渉導波路部3中を逆方向に伝搬して入力導波路1から出力され、残りは多モード干渉導波路部3の外部に放射される。
【0024】
以上のことから、多モード干渉導波路部3における干渉の結果、出力導波路2との接続部において光波が集中するように設定することができれば、入力導波路1から出力導波路2への透過率が大きくなる(状態A)。逆に、多モード干渉導波路部3と出力導波路2との接続部において、光波のパワーが打ち消されるような状態になれば、入力導波路1から出力導波路2への透過率は小さくなる(状態B)。
【0025】
状態A及び状態Bとなる条件は、デバイスの構造が同じであっても偏波により異なるため、一方の偏波(例えばTMモード)で状態Aとなり、他方の偏波(例えばTEモード)で状態Bとなるようにデバイス構造を設定すれば、偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを構成することができる。
【0026】
即ち、一方の偏波(例えばTMモード)に対しては状態Aになり、他方の偏波(例えばTEモード)に対して状態Bになるようなデバイス構造を探索し、その特性をシミュレーションによって求めることにより、図1の構造の多モード干渉デバイス10を偏波選択性デバイスとして機能させることが出来る。具体的には、干渉導波路部の幅WMMIを与え、長さLMMIを適当に選ぶと、TMモードに対しては状態A、TEモードに対しては状態Bとなる、偏波選択性多モード干渉デバイス10を設計することが出来る。
【0027】
図5は、このようにして構成された、TEモード遮断多モード干渉導波路デバイスの一例を示す。図5(a)に示すように、このデバイスではTMモードを透過するが、図(b)に示すように、TEモードを透過しないため、TMモード選択デバイスとして機能する。
【0028】
以下に、図5に示すTMモード選択デバイスの設計方法について説明する。
【0029】
図6は、出力導波路2をx=0に配置し、多モード干渉導波路部3の厚さWTと幅WMMIを固定し、多モード干渉導波路部3の長さLMMIを変化させた場合の、出力される光波の透過率(出力光パワーと入力光パワーの比)をシミュレーションによって求めた結果を示す。ここで、シミュレーションはモード整合法を用いて行っている。図6に示すシミュレーションでは、多モード干渉導波路部3の厚さWTを300nm、幅WMMIを1μmとし、さらに、入力光の波長を1.27μmとして行った。入力及び出力導波路1、2は、断面の幅W及び高さを300nmとし、その長さは任意である。
【0030】
図6において、縦軸はTMモード及びTEモードの透過率を[dB]で示し、横軸は多モード干渉導波路部3の長さLMMIを[μm]で示している。この図から、多モード干渉導波路長LMMIに対して、TMモード、TEモードの透過率が周期的に変化する様子がわかる。さらに、透過率の周期は、TMモードとTEモードで異なる。したがって、例えばLMMI=10.8μmとすると、TMモードの透過率が高く、TEモードはほとんど出力導波路2に透過されない多モード干渉導波路部3の構造を得ることが出来る。
【0031】
なお、このような構造は一意に定まらない。即ち、同じ構造において、LMMIが10.8μmの奇数倍でも、TMモードの透過率が高く、TEモードの出力導波路への透過が阻止される。一般に、多モード干渉導波路部の長さLMMIが大きくなると、光波の損失が大きくなり、実際にデバイスとして用いるのは適当ではない。したがって、できるだけ短い多モード干渉導波路部3でTMモードの透過率が高く、TEモードの出力導波路への透過が阻止できる構造を選ぶことが適当である(以下、これを最適多モード干渉導波路長LMMIOとよぶ)。最適多モード干渉導波路長LMMIOは、多モード導波路部3の幅WMMIによって変化する。
【0032】
図7は、多モード干渉導波路幅WMMIに対してTEモードとTMモードの透過率を計算した結果を示す。ここで、入力及び出力導波路は、いずれも多モード干渉導波路部3の幅方向に対称な位置(横方向の中心、即ち、x=0)に接続している。また、光波の波長は1.27μmである。さらに、シリコンによって形成される入力及び出力導波路1、2の幅Wと高さを何れも300nmとし、多モード干渉導波路3、入出力導波路1、2を取り囲むクラッド層5をSiO2で構成している。図7の結果から、多モード干渉導波路部3の幅WMMI=1.6μm、多モード干渉導波路部3の長さ(多モード干渉導波路長)LMMI=91.5μmの場合に、TMモードとTEモードの透過率比20dB以上のTMモード選択性(TEモード遮断)デバイスが実現可能であることがわかる。
【0033】
以下の表1に、以上を考慮して設計した、TMモード選択性(TEモード遮断)1入力1出力導波路デバイスの一例を示す。
【表1】

【0034】
<第2の実施形態:1入力2出力デバイス>
図8は、本発明の第1の実施形態に係る偏波選択性多モード干渉結合器20の概略構造を示す斜視図であり、図9は結合器20の各部のパラメータを示す上面図である。本実施形態の偏波選択性多モード干渉結合器20は、光導波路形デバイスにおいて分岐・結合素子として汎用的に用いられる多モード干渉結合器(MMI結合器:Multi−Mode Interference Coupler)において、本発明に従って、入射した偏波のうち一方の偏波のみを選択的に分岐・透過させる機能を持たせるようにしたものである。この偏波選択性MMI結合器20を、後述する図16に示すように、一偏波動作の干渉型アイソレータ(特許文献1参照)に組み込むことによって、光ファイバからのTMモード及びTEモードを含む入射光に対して、このアイソレータを所期の目的で動作させることが可能となる。
【0035】
図8及び9に示すMMI結合器20は、シングルモードの導波路21、22、23と多モード干渉導波路部24とを備えており、これらは、シリコン基板25上に形成したSiO2クラッド層26中に埋め込まれている。なお、図8及び9では、導波路21、22、23及び多モード干渉導波路部24を被覆するクラッド層を省略して示している。このMMI結合器20は、導波路21から入力し、導波路22及び23に出力する分岐動作、逆に、導波路22及び23から入力し、導波路21に出力する結合動作を行う。光波伝搬の相反性から、分岐動作と結合動作は同じように動作するので、以下においては分岐動作のみについてその構成を説明する。
【0036】
一般に、MMI結合器は、多モード干渉導波路部を伝搬する多くのモードの重ね合わせ(干渉)によって分岐特性(及び結合特性)が決まる。多モード干渉導波路部を伝搬するモードは、TEモードとTMモードで異なる伝搬特性(伝搬定数)をもつ。したがって、MMI結合器にTEモードが入力した場合とTMモードが入力した場合で、モードの干渉の仕方は異なり、分岐特性がモードに依存して変化する。一方のモード(例えばTMモード)が低損失な分岐特性を示す場合に、他方のモード(TEモード)が分岐導波路に出力されないように多モード干渉導波路部の構造及び分岐(出力)導波路の位置を調整することで、TMモードを透過し、TEモードを遮断するMMI結合器を構成することができる。
【0037】
以下に、図8、9に示すMMI結合器20をTEモード遮断導波路デバイスとして機能させる構成について説明する。
【0038】
図10は、図8及び9の構成を有するMMI結合器20において、導波路21から光波を入力した場合の、多モード干渉導波路部24における光波分布のシミュレーション結果を示す。シミュレーションはモード整合法を用いて行った。光波の伝搬にともなって、x方向の光強度分布が周期的に変化する様子が図から読み取れる。
【0039】
ここで、適当な位置で多モード干渉導波路を切断し、2本の出力導波路(導波路22及び23)を接続する。例えば、図10の伝搬距離z=z1で多モード干渉導波路部24を切断して、Px=±x1の位置に出力導波路22及び23を接続すると、図11に示すように、多モード干渉導波路部24中の大部分の光パワーが出力導波路22及び23に出力される。ここで、多モード干渉導波路部24はx方向に対称な構造となっているため、出力導波路22及び23は多モード干渉導波路部24の軸に対して、対称な位置に配置することで、等分配の分岐特性を示す。また、MMI結合器としての挿入損失が最も小さくなるように、多モード干渉導波路部24の長さLMMI、出力導波路22、23の位置Pxを選択する。
【0040】
一方、図10において、伝搬距離z=z2の位置で多モード干渉導波路部24を切断した場合、ほとんどの光波パワーがx=0の位置に集中している。即ち、図11と同じ±x1の位置に出力導波路22及び23を設置しても、出力導波路22、23からは光波が出力されない(図12)。この場合、多モード干渉導波路部24中を伝搬する光波は、一部は反射して多モード干渉導波路部24中を伝搬して入力導波路21から出力され、残りは多モード干渉導波路部24の外部に放射される。
【0041】
したがって、一方の偏波(例えばTMモード)に対しては図11のように挿入損失が小さい良好な分岐特性を示し、他方の偏波(TEモード)に対しては図12のように出力導波路22、23からの出力が無いように、多モード干渉導波路長LMMIと出力導波路位置Pxを設定すれば、一方の偏波のみを透過する所望のMMI結合器20を設計することができる。実際、干渉導波路部の幅WMMI、長さLMMIを適切に設計すると、図13に示すように、TMモードに対しては位置x=±Px(図9参照)に配置された出力導波路22,23に光波が出力され(図13の(a))、TEモードはほとんどx=0に光波が集中する(図13の(b))デバイス、即ち、偏波選択性MMI結合器20を構成することができる。
【0042】
TMモードに対して良好な出力があり、TEモードに対して殆ど出力の無いMMI結合器20を設計するために、多モード干渉導波路部24の構造(多モード干渉導波路部24の厚さWT、幅WMMI、長さLMMI)と出力導波路22及び導波路23の位置±Pxを明らかにする必要がある。ここで、多モード干渉導波路部24の構造対称性から、入力導波路21を多モード干渉導波路部24のx方向の中心に配置し、出力導波路22及び導波路23をx方向に対称な位置に配置するという条件で設計する。
【0043】
多モード干渉導波路部24の厚さと幅を与えることによって、良好な分岐特性を得ることが可能な出力導波路22、23の位置、±PXを得ることが出来る。
【0044】
図14は、出力導波路22及び23をPx及び−Pxに配置し、多モード干渉導波路部24の厚さと幅WMMIを固定し、多モード干渉導波路部24の長さLMMIを変化させた場合の、出力される光波の透過率(出力光パワーと入力光パワーの比)をシミュレーションによって求めた結果を示す。ここで、シミュレーションはモード整合法を用いて行っている。図14に示すシミュレーションでは、多モード干渉導波路部24の厚さWTを300nm、幅WMMIを1μm、出力導波路位置PXを0.3μmとし、さらに、入力光の波長を1.27μmとして行った。入力及び出力導波路21、22、23は、断面の幅W及び高さを300nmとし、その長さは任意である。
【0045】
図14において、縦軸はTMモード及びTEモードの透過率を[dB]で示し、横軸は多モード干渉導波路部24の長さLMMIを[μm]で示している。この図から、多モード干渉導波路長LMMIに対して、TMモード、TEモードの透過率が周期的に変化する様子がわかる。さらに、透過率の周期は、TMモードとTEモードで異なる。したがって、例えばLMMI=9.5μmとすると、TMモードの透過率が高く、TEモードはほとんど出力導波路22、23に透過されない多モード干渉導波路部4の構造を得ることが出来る。
【0046】
なお、このような構造は一意に定まらない。即ち、同じ構造において、LMMIが9.5μmの奇数倍のMMI結合器でも、TMモードの透過率が高く、TEモードの出力導波路への透過が阻止される。一般に、多モード干渉導波路部の長さLMMIが大きくなると、光波の損失が大きくなり、実際にデバイスとして用いるのは適当ではない。したがって、できるだけ短い多モード干渉導波路部24でTMモードの透過率が高く、TEモードの出力導波路への透過が阻止できる構造を選ぶことが適当である(以下、これを最適多モード干渉導波路長LMMIOとよぶ)。最適多モード干渉導波路長LMMIOは、多モード導波路部24の幅WMMIによって変化する。
【0047】
図15は、いくつかの多モード導波路部幅WMMI(1.0μm〜1.8μm)について最適多モード干渉導波路長LMMIOを計算で求めた結果を示す。また、それぞれの多モード導波路幅WMMIに対する最適多モード干渉導波路長LMMIOにおいて、TMモードとTEモードの透過率を計算した結果も示している。図示するように、最適多モード干渉導波路長LMMIOが長くなると、TEモードの透過率が小さくなる(遮断特性が大きくなる)。しかし、最適多モード干渉導波路長LMMIOが長くなると、TMモードの透過率も減少する。実際のデバイス使用状況を考えると、透過を望むモードの透過率はできるだけ高い方が望ましい。したがって、目的に応じてTMモードの透過率を確保しつつ、適当な長さの多モード干渉導波路を用いることになる。
【0048】
以下の表2に、以上を考慮して設計したMMI結合器20の一例を示す。
【表2】

【0049】
なお、上記の表1及び表2において、既定値とは、一実施形態に係る多モード干渉導波路部4の構造、特に、多モード導波路幅WMMIと最適多モード干渉導波路長LMMIOを特定するための計算において、予め設定した値を意味する。多モード導波路幅WMMIと最適多モード干渉導波路長LMMIOは、入力光の波長、入出力導波路の幅Wによっても変化するため、これらの値をシミュレーション等により予め決定して、最適値の計算を行う様にしている。また、出力導波路位置±PXは、多モード干渉導波路部4の最適構造を決定した後、シミュレーションによって多モード干渉導波路部中の光波のパワー分布を求め、この分布に基づいて最適位置を決定する。
【0050】
上述の設計は、シリコンを導波層として用い、その周りをSiO2クラッドで囲んだ導波路構造において、導波層厚300nmの導波路部構造で、TMモードを透過し、TEモードを遮断するMMI結合器に対する設計手法であるが、TEモードを透過し、TMモードを遮断するMMI結合器に対しても、この設計手法を同様に適用することができる。また、他の導波路厚、多モード干渉導波路幅に対しても、この設計手法を同様に適用することができる。さらに、シリコンを導波層として用い、その周りをSiO2クラッドで囲んだ導波路構造以外の任意の導波路部構造に対しても、この設計手法を同様に適用することができる。
【0051】
<第3の実施形態:偏波選択性MMI結合器を用いた多モード干渉導波路形光アイソレータ>
図16は、本発明の第3の実施形態に係る多モード干渉導波路型アイソレータ30の構造を示す斜視図であり、このアイソレータ30では、図8及び9に示す構造のMMI結合器20、20’を偏波選択性デバイスとして用いている。図16において、31はシリコン基板、32はSiO2クラッド層、33は非相反位相器、34はSi導波路で形成される相反位相器、35は外部磁界の印加方向を示す。なお、図面では示していないが、MMI結合器20、20’、非相反位相器33、相反位相器34はSiO2のクラッド層32中に埋め込まれている。
【0052】
従来の干渉導波路形光アイソレータは、順方向にTMモードの光波を低損失で透過させ、逆方向にTMモードの光波の伝搬を阻止する機能がある(光アイソレータ機能)。しかし、TEモードに対しては、非相反効果がないため、順方向、逆方向ともに伝搬を阻止する作用をもたない。即ち、光アイソレータとして機能しない。
【0053】
一方、図16の光アイソレータ30において、本発明の第2の実施形態に係るMMI結合器20を用いて干渉導波路形光アイソレータ30を形成することによって、TEモードの伝搬を阻止することができる。その結果、アイソレータ30は、順方向に伝搬する光波の偏波がTMモードであることが保障されていて(例えば一定の偏波を出射する発光素子を順方向に接続する)、逆方向には任意の偏波の光が入射する(例えば光ファイバを通して光波が逆方向に入射する)場合に、逆方向に光波が伝搬することを阻止することができる(TMモードに対しては光アイソレータ機能による、TEモードに対してはMMI結合器の機能による)。
【0054】
なお、光アイソレータの詳細な構造及び動作については、上記特許文献1に詳細に記載されている。
【符号の説明】
【0055】
1 入力導波路
2 出力導波路
3 多モード干渉導波路部
4 シリコン基板
5 SiO2クラッド層
10 1入力1出力導波路デバイス
20 1入力2出力導波路デバイス
21 入力導波路
22、23 出力導波路
24 多モード干渉導波路部
25 シリコン基板
26 SiO2クラッド層
30 光アイソレータ
31 シリコン基板
32 SiO2クラッド層
33 非相反位相器
34 相反位相器
35 外部磁界印加方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多モード干渉導波路部と、
前記多モード干渉導波路部の一端の中心に接続される第1の導波路と、
前記多モード干渉導波路部の前記一端に対向する他端の中心に接続される第2の導波路と、を備える、多モード干渉導波路デバイスにおいて、
前記第1の導波路から入射し前記多モード干渉導波路部を伝搬して前記第2の導波路に出射する光波のTMモードとTEモードの透過率の比が、前記多モード干渉導波路部と前記第2の導波路との接続部において当該デバイスの使用目的によって決まる要求仕様を満たすように、前記多モード干渉導波路部の幅及び長さが決定されていることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記要求仕様が少なくとも20dBである、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記TEモードの透過率に対する前記TMモードの透過率の比を20dB以上とすることによって、当該デバイスをTMモード選択性デバイスとして機能させることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項4】
多モード干渉導波路部と、
前記多モード干渉導波路部の一端の中心に接続される第1の導波路と、
前記多モード干渉導波路部の前記一端に対向する他端の中心から一定の距離に、互いに対称となるように配置された第2及び第3の導波路と、を備える、多モード干渉導波路導波路デバイスにおいて、
前記第1の導波路から入射し前記多モード干渉導波路部を伝搬して前記第2の導波路と第3の導波路に出射する光波のTMモードとTEモードの透過率の比が、前記多モード干渉導波路部と前記第2及び第3の導波路との接続部において当該デバイスの使用目的によって決まる要求仕様を満たすように、前記多モード干渉導波路部の幅及び長さ、さらに前記一定の距離が決定されていることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記第1の導波路をTMモード及びTEモードを含む光波の入力導波路とすることによって、当該デバイスを偏波選択性のMMI分岐器として機能させることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項6】
前記4又は5に記載のデバイスにおいて、前記要求仕様は少なくとも20dBである、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項7】
請求項4に記載のデバイスにおいて、前記TEモードの透過率に対する前記TMモードの透過率の比を20dB以上とすることによって、当該デバイスをTMモード選択性デバイスとして機能させることを特徴とする、偏波選択性多モード干渉導波路デバイス。
【請求項8】
請求項4乃至7の何れか1項に記載の偏波選択性多モード干渉導波路デバイスを、MMI結合器として用いたことを特徴とする、多モード干渉導波路形光アイソレータ。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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