偏波量子もつれ光子対発生装置
【課題】4つのベル状態の全てを選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対発生装置を提供する。
【解決手段】偏波分離合成器101とその2つの入出力端とを含んで構成されるサニャック型干渉計のループ光路20と、励起光をループ光路に入力し、またこのループ光路から出力される量子もつれ光子対波長成分を空間分離して出力する光分岐入出力部10を備えた偏波量子もつれ光子対発生装置である。ループ光路は、非線形光学媒質102と90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104とを光ファイバーで直列に配置接続されている。光分岐入出力部は、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107を備えて構成されている。また、光分岐入出力部の後段には1/2波長板108が配置されている。
【解決手段】偏波分離合成器101とその2つの入出力端とを含んで構成されるサニャック型干渉計のループ光路20と、励起光をループ光路に入力し、またこのループ光路から出力される量子もつれ光子対波長成分を空間分離して出力する光分岐入出力部10を備えた偏波量子もつれ光子対発生装置である。ループ光路は、非線形光学媒質102と90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104とを光ファイバーで直列に配置接続されている。光分岐入出力部は、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107を備えて構成されている。また、光分岐入出力部の後段には1/2波長板108が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、量子暗号、量子コンピュータなど量子情報通信技術等で必要とされる量子もつれ光子対発生装置に関し、特に、4つのベル状態の偏波量子もつれ光子対のいずれの状態の光子対も選択して出力することができる偏波量子もつれ光子対発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子もつれ光子対発生は、量子暗号、量子コンピュータなど、量子力学的粒子(光子)の非局所性を応用した高度な量子情報通信技術を実現するための重要な要素技術となっている。
【0003】
量子もつれ光子対を発生させる手段として、従来から2次あるいは3次の非線形光学媒質中での自然パラメトリック蛍光を用いる方法が研究されてきた。2次あるいは3次の非線形光学媒質中に、波長λp、波数kp、角周波数ωpの励起光子を入力すると、波長λs、波数ks、角周波数ωsのシグナル光子と、波長λi、波数ki、角周波数ωiのアイドラー光子が出力されるのが自然パラメトリック蛍光である。その際、シグナル光子、アイドラー光子は必ず対(ペア)となって同時に発生する。
【0004】
以後、励起光子、シグナル光子、アイドラー光子を、それぞれ励起光、シグナル光、アイドラー光と記載する。
【0005】
励起光、シグナル光、アイドラー光の波数、角周波数には、それぞれ運動量保存則、エネルギー保存則に相当する相関関係がある。
【0006】
2次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然パラメトリック下方変換(SPDC: Spontaneous parametric down conversion)とも呼ばれる。このとき、各光子の波数、角周波数はそれぞれ次式(1)、(2)を満足する。
kp=ks+ki+K (1)
ωp=ωs+ωi (2)
一方、3次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然4光波混合(SFWM: Spontaneous four wave mixing)とも呼ばれる。このとき、各光子の波数、角周波数はそれぞれ次式(3)、(4)を満足する。
2kp=ks+ki+K (3)
2ωp=ωs+ωi (4)
ここで、式(1)及び式(3)に含まれるKは、非線形光学定数の周期的変調構造の周期に対応するパラメータであり、周期的変調構造の周期がΛである場合K=2π/Λで与えられる。非線形光学定数の周期的変調構造は、擬似位相整合により非線形光学効果を高効率化することを目的に、例えばLiNbO3結晶を非線形光学媒質として採用する場合などで現在頻繁に利用されている。
【0007】
この発明の発明者らは、自然パラメトリック蛍光の生成プロセスとして、SPDC過程の種光となる光第2高調波(SHG: Second harmonic generation)とSPDCが、単一の2次非線形光学媒質中で生じることによる、カスケードSHG/SPCD過程について既に報告している(非特許文献1参照)。
【0008】
この手法によれば、LiNbO3結晶に非線形光学定数の周期的変調構造を作りつけたLiNbO3結晶(PPLN: Periodically Poled Lithium Niobate、以後、PPLN結晶ということもある)に励起光を入力すると、PPLN結晶内でまずSHG光が発生し、次に、このSHG光を種光としてSPDCが生ずる。この過程は、擬似的な3次非線形光学効果と見ることができ、入力する励起光と発生するシグナル光、アイドラー光の波数、角周波数は、それぞれ上述の式(3)及び(4)の関係を満足する。
【0009】
上述の波数、角周波数、発生時間の相関関係以外にも、シグナル光、アイドラー光間には、偏波についても相関関係が存在する。以後このような自然パラメトリック蛍光で発生する相関のあるシグナル光、アイドラー光の光子対を相関光子対と呼ぶこともある。
【0010】
また、上述したSPDC過程、SFWM過程、またはカスケードSHG/SPDC過程で生じさせた相関光子対を利用することで、偏波相関を利用した偏波量子もつれ光子対を生成することができる。この一例として、偏波分離合成器(PBS: Polarization Beam Splitter)と単一のPPLN結晶を用いたサニャック型干渉計を利用した波長1550 nm帯量子もつれ光子対発生装置が従来文献に開示されている(例えば、非特許文献2参照)。非特許文献2では、PBSとPPLN結晶を結ぶ偏波面保存光ファイバーにおいて、その一箇所に90度光軸変換箇所が設けられている。この90度光軸変換箇所は光ファイバー融着技術等によって形成可能である。
【0011】
非特許文献2に開示されている量子もつれ光子対発生装置では、PBSを介して波長776 nmで45度偏光した励起光をPPLN結晶に入力すると、PPLN結晶中で自然パラメトリック下方変換によって波長1542 nmのシグナル光及び1562 nmのアイドラー光の相関光子対が発生する。量子もつれ光子対発生装置では、励起光強度が十分に弱いので、これら相関光子対はサニャック型干渉計のループを時計回りに伝播する励起光か、ループを反時計回りに伝播する励起光のどちらか一方からしか発生しない。この場合、この量子もつれ光子対発生装置から発生する相関光子対の状態は、ループを時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し時計回り成分とは偏波直交した相関光子対の重ね合わせ状態となる。すなわちこの量子もつれ光子対発生装置から偏波量子もつれ光子対が発生する。
【0012】
一方、タイプIIと呼ばれる位相整合あるいは擬似位相整合を利用した2次非線形光学媒質中でSPDCを利用して偏波量子もつれ光子対を生成する手法が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。この手法によれば、シグナル光、アイドラー光の相関光子対は互いに直交した偏波状態が生成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】荒平慎、岸本直、「PPLNリッジ導波路デバイスを用いたカスケードχ(2)方式によるパラメトリック下方変換光発生」第21回量子情報技術研究会資料、電子情報通信学会、量子情報技術時限研究専門委員会、pp.184-187、(2009)
【非特許文献2】H.C.Lim, A.Yoshizawa, H.Tsuchida, and K.Kikuchi, "Stable source of high quality telecom-band polarization-entangled photon-pairs based on a single, pulse-pumped, short PPLN waveguide," Optics Express. vol.16, No.17, pp.12460-12468, (2008)
【非特許文献3】長谷川啓佑、大日方政史、行方直人、栗村直、井上修一郎、「Type−II型周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路による1550 nm帯狭帯域直交偏光量子もつれ光子対の生成」、第19回量子情報技術研究会資料、電子情報通信学会、量子情報技術時限研究専門委員会、pp.137-140、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
偏波量子もつれ光子対に関して、最大の量子もつれ状態を実現する量子状態としては以下に示す4つの状態が存在することが知られている。この4つの状態は式で表すと、次式(5-a)〜(5-d)となる。
|H>s|H>i + |V>s|V>i (5-a)
|H>s|H>i - |V>s|V>i (5-b)
|H>s|V>i + |V>s|H>i (5-c)
|H>s|V>i - |V>s|H>i (5-d)
ここで、状態ベクトル|H>及び|V>は、それぞれ横偏波及び縦偏波の光子の状態を示すケットベクトルである。また、これらケットベクトルに付されたサブスクリプトs及びiはそれぞれシグナル光及びアイドラー光を識別する符牒である。
【0015】
式(5-a)及び式(5-b)で表される量子状態はともに同じ偏波状態のシグナル光、アイドラー光がペアで発生している状態であり、一方、式(5-c)及び式(5-d)はそれぞれ直交した偏波状態のシグナル光、アイドラー光がペアで発生している状態である。また、式(5-a)と式(5-b)で表される状態、式(5-c)と式(5-d)で表される状態は、それぞれ重ね合わせの状態の位相が反転している状態を示している。式(5-a)、式(5-b)、式(5-c)、式(5-d)で表される状態は「ベル状態」とも呼ばれ、これらの状態を実現可能とする偏波量子もつれ光源の開発は、量子情報通信分野における重要な課題とされている。
【0016】
上述した非特許文献2に開示された偏波量子もつれ光源においては、シグナル光、アイドラー光は同じ偏波状態のペアとして発生している状態なので、式(5-a)及び式(5-b)で表されるいずれかの状態を実現可能である。
【0017】
一方、上述した非特許文献3に開示されている偏波量子もつれ光子対生成の手法によれば、シグナル光、アイドラー光の相関光子対は互いに直交した偏波状態で生成されるので、式(5-c)及び式(5-d)で表されるいずれかの状態を実現可能である。
【0018】
しかしながら、これまで同一の装置によって式(5-a)、式(5-b)、式(5-c)、式(5-d)で表される4つのベル状態のいずれをも選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対出力光源、すなわち偏波量子もつれ光子対発生装置は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この出願の発明者は、非線形光学媒質を備えるループ光路に、励起光を入力し、時計回り及び反時計回りに相関光子対を発生させて、このループ光路から出力される時計回りの相関光子対と、この相関光子対と偏波面が直交する反時計回りの相関光子対とを、波長分離フィルターで相関光子対のそれぞれの光子の波長成分を分離して取り出す構成を検討した。このような構成とすることによって、上述の式(5-a)及び式(5-b)で表されるいずれかの状態が実現可能であること、及び波長分離された波長成分のいずれか一方を1/2波長板を介して取り出す構成とすることによって、式(5-c)と式(5-d)で表されるいずれかの状態が実現可能であることに思い至った。すなわち、波長分離フィルターで相関光子対のそれぞれの光子の波長成分を分離して取り出す構成とし、一方の波長成分の光路中に、1/2波長板を設置することによって、4つのベル状態の全てを選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対発生装置を実現させることが可能であることに思い至った。
【0020】
そして、この出願の発明者が鋭意研究を行った結果、4つのベル状態の全てを具体的に実現するには、さらにループ光路中に設置する偏波面及び光位相調整部によって、偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによって実現可能であることを確かめた。
【0021】
また、ループ光路中に偏波面を回転する機能部分及び偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整する複屈折媒体を工夫して配置し、この複屈折媒体によって偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによっても、4つのベル状態の全てを選択して実現することが可能であることを確かめた。
【0022】
また、ループ光路外の、後述するように45度偏波の励起光がループ光路に入力されるまでの光路に、45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する複屈折媒体を工夫して配置し、この複屈折媒体によって偏波面が直交する励起光間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによっても、4つのベル状態の全てを選択して実現することが可能であることを確かめた。
【0023】
したがって、この発明の目的は、簡便な構成の装置であって、4つのベル状態の全てを選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対発生装置を提供することにある。
【0024】
そこで、この発明の要旨によれば、以下の構成の偏波量子もつれ光子対発生装置が提供される。
【0025】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と光分岐入出力部とこの光分岐入出力部の後段に配置される1/2波長板とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0026】
ループ光路中には、非線形光学媒質と、このループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、この非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する偏波面及び光位相調整部とが配置されている。
【0027】
光分岐入出力部は、ループ光路に励起光を入力し、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。
【0028】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている。
【0029】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0030】
ループ光路を、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、非線形光学媒質と偏波面及び光位相調整部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。
【0031】
光分岐入出力部の出力端は、偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、励起光がこの光分岐入出力部の入力端から入力されてこの光分岐入出力部を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。
【0032】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と入力部と光分岐入出力部とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0033】
ループ光路中には、第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とが直列に配置されている。
【0034】
入力部は、励起光を入力させる部分である。そして、光分岐入出力部は、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて非線形光学媒質中で発生するループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。
【0035】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が通過する光路中に第1の1/2波長板が配置されている。
【0036】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0037】
ループ光路を、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第2入出力端と第3入出力端とを、第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。そして、入力部を、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第1入出力端とする。偏波分離合成器の第4入出力端と光分岐入出力部の入力端とを接続する。
【0038】
第1非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子と第2の1/2波長板を備えて構成し、第2非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子と第3の1/2波長板を備えて構成する。
【0039】
また、励起光が偏波分離合成器の第1入出力端から入力されてこの偏波分離合成器を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。
【0040】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と光分岐入出力部とこの光分岐入出力部の後段に配置される1/2波長板とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0041】
ループ光路中には、非線形光学媒質と、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光のいずれか一方と、またこの励起光に基づいて、この非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分のいずれか一方の偏波面を90度回転する90度偏波面回転部が配置されている。
【0042】
光分岐入出力部は、ループ光路に励起光を入力し、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。また、励起光をループ光路に入力するまでのいずれかの光路に、後述する45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する複屈折媒体が配置されている。
【0043】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている。
【0044】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0045】
ループ光路を、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、非線形光学媒質と90度偏波面回転部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。
【0046】
光分岐入出力部の出力端は、偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、励起光がこの光分岐入出力部の入力端から入力されてこの光分岐入出力部を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。また45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する上述の複屈折媒体は、上述の光分岐入出力部の入力端に配置される。また、光分岐入出力部の出力端と偏波分離合成器の第1入出力端を接続する箇所に配置しても良い。いずれにしろ、励起光が45度偏光の励起光となった後にループ光路に入力されるまでに経過するいずれかの光路に配置する。
【発明の効果】
【0047】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0048】
偏波面及び光位相調整部によって、後述するように時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光と、反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光の偏波面とが互いに直交する状態となる。また、偏波面及び光位相調整部によって、ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りをする光成分との間の位相差が調整される。この位相差の調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【0049】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0050】
第1非相反偏波面変換部と第2非相反偏波面変換部とによって、時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光と、反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光の偏波面とが互いに直交する状態となる。また、複屈折媒体によって、後述するようにループ光路を時計回りする光成分と反時計回りをする光成分との間の位相差が調整される。この位相差の調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【0051】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0052】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、光分岐入出力部を経過しループ光路に励起光が入力される光路に複屈折媒体が配置される。したがって、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と異なり、光子対は複屈折媒体を経過しない。一方、横偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相と、縦偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相は、複屈折媒体で生じるリタデーションに応じて異なる。このリタデーションの調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図2】偏波面及び光位相調整部の構成及びその機能についての説明に供する図である。
【図3】第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部の構成及びその機能についての説明に供する図である。
【図4】1/2波長板の光学軸の方向をどのように設定して当該1/2波長板を配置するかについての説明に供する図であり、(A)は式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の、(B)は式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の説明に供する図である。
【図5】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例の概略的ブロック構成図である。
【図6】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例の概略的ブロック構成図である。
【図7】この発明の実施形態の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図8】第1非相反偏波面変換部の概略的構成及びその動作の説明に供する図である。
【図9】第2非相反偏波面変換部の概略的構成及びその動作の説明に供する図である。
【図10】この発明の実施形態の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図11】励起光がループ光路に入力されるまでのいずれかの光路に挿入される複屈折媒体の光学軸と励起光の偏波方向との関係の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図1〜図9を参照してこの発明の実施形態につき説明する。以下の説明において、特定の素子及び動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子及び動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、図1及び図5〜図7は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。
【0055】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図1を参照してこの発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0056】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、偏波分離合成器101とその2つの入出力端とを含んで構成されるサニャック型干渉計のループ光路20と、励起光をループ光路20に入力し、またこのループ光路20から出力される偏波量子もつれ光子対波長成分を空間分離して出力する光分岐入出力部10を備えている。
【0057】
ループ光路20は、非線形光学媒質102と偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103とが光ファイバーで直列に配置接続されており、この光ファイバーの両端を、第1入出力端101-1、第2入出力端101-2、及び第3入出力端101-3を備える偏波分離合成器101の第2入出力端101-2及び第3入出力端10-3に接続することによって構成されている。
【0058】
光分岐入出力部10は、第1入出力端105-1、第2入出力端105-2及び第3入出力端105-3を備えるバンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルター107を備えて構成されている。波長λpである励起光は第1入出力端105-1からバンドパス光フィルター105に入力され、このバンドパス光フィルター105を介して偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からループ光路20に入力される。
【0059】
光分岐入出力部10を介してループ光路20に、このループ光路20を時計回り及び反時計回りに伝播するように励起光が入力されると、この励起光に基づく非線形光学媒質102中で非線形光学効果によって、ループ光路20を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対が生成される。この相関光子対は、ループ光路20を構成する偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されて、バンドパス光フィルター105の、第2入出力端105-2からバンドパス光フィルター105に入力され、第3入出力端105-3から光分岐入出力部10が備えるローパス光フィルター106を介してWDMフィルター107に入力される。WDMフィルター107に入力されたシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対は、WDMフィルター107によって、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力される。
【0060】
ローパス光フィルター106は、後述するように、非線形光学媒質102で発生したSHG光の波長成分(λp/2)を除去する働きをする。
【0061】
WDMフィルター107から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に、通過する光子の偏光方向を90度回転させる1/2波長板108が配置されている。図1に示す装置では、アイドラー光波長成分が出力される光路中に1/2波長板108が配置されているが、シグナル光波長成分が出力される光路中に1/2波長板108が配置される構成としてもよい。
【0062】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、好ましくは偏波面保存光学系で構成するのがよい。その上で、ループ光路20を構成する偏波分離合成器101、非線形光学媒質102、90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104等の光学軸の関係は後述する特別の配慮を以って規定されている。
【0063】
また、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、各光学部品を光結合レンズによって空間的に結合する構成としてもよい。また、偏波面保存光ファイバーで各光学部品を結合する構成としてもよい。いずれにしても、この装置は、シグナル光、アイドラー光が最終的に空間分離出力される出力端に至るまで、偏波面保存光学系で構成するのが望ましい。
【0064】
ただし、偏波面保存光ファイバーの代わりに偏波面が保存されることが補償されていない通常の光ファイバーを用いて構成する場合であっても、適宜偏波面コントローラー等の付加光学部品を用いることによって、擬似的に偏波面保存光学系を構成することは可能である。
【0065】
励起光波長を、発生させる偏波量子もつれ光子対の波長の近傍波長であるλpとする。すなわち、発生させる偏波量子もつれ光子対の波長帯域が1550 nmであるならば、励起光波長λpの値は1550 nmの近傍の値に設定する。
【0066】
非線形光学媒質102は、PPLN等の2次非線形光学効果を効果的に発現する非線形光学媒質、もしくは光ファイバー等の3次非線形光学効果を効果的に発現する非線形光学媒質とする。いずれにしても励起光によってパラメトリック蛍光を発生する非線形光学媒質を採用する。
【0067】
非線形光学媒質102に2次非線形光学媒質を採用した場合、カスケードSHG/SPDC過程によって相関光子対を発生させることが可能である(非特許文献1参照)。すなわち、波長λpの励起光を用いると、2次非線形光学媒質中で波長λp/2のSHG光が発生し、このSHG光を種光としたSPDC過程によって、波長λsのシグナル光及び波長λiのアイドラー光の相関光子対が同時に空間的に同一箇所で、すなわち同時空間的に発生する。
【0068】
一方、非線形光学媒質102に3次非線形光学媒質を採用した場合、SFWM過程によって相関光子対が発生する。すなわち、波長λpの励起光によって、SFWM過程によって波長λsのシグナル光及び波長λiのアイドラー光の相関光子対が同時空間的に発生する。
【0069】
2次非線形光学媒質あるいは3次非線形光学媒質のいずれのパラメトリック蛍光過程を利用するにせよ、励起光、シグナル光、アイドラー光の波長であるλp、λs、λiは、次式(6)で与えられるエネルギー保存則に相当する関係を満足する。ここで、λp、λs、λiは、いずれも真空中における波長である。
【0070】
2/λp=1/λs+1/λi (6)
ただし、λs≠λp、λi≠λpであるとする。
【0071】
バンドパス光フィルター105では、第1入出力端105-1から入力される入力光(波長λpの励起光)は、このバンドパス光フィルター105の透過波長である波長λpの成分が透過して第2入出力端105-2から出力されて偏波分離合成器101の第1入出力端101−1に入力される。
【0072】
一方、ループ光路20から出力される、すなわち偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されバンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2に入力される入力光のうち、波長がλpの近傍の波長成分(励起光成分)のみが選択的にバンドパス光フィルター105を透過し、第1入出力端105-1から出力される。この透過される波長成分以外の波長成分、すなわちバンドパス光フィルター105の反射成分のうち、シグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分を含む波長成分は、第3入出力端105-3から出力されてローパス光フィルター106を介してWDMフィルター107に入力される。
【0073】
バンドパス光フィルター105には、誘電体多層膜を利用した光学フィルターの一種で、現在バンドパス光フィルターとして市販されている光学フィルターを適宜利用できる。また、いわゆるAWG(Arrayed waveguide grating)型のWDMフィルターを適宜利用することもできる。
【0074】
偏波分離合成器101は、バンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2と結合する第1入出力端101-1と、第1入出力端101-1の入力光を直交した偏波成分、すなわちp偏波成分とs偏波成分に分離してそれぞれ出力するための第2入出力端101-2と第3入出力端101-3とを備えている。このような偏波分離合成器101には、例えば市販されている偏光ビームスプリッタから適宜選択して利用することができる。あるいはまた、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを適宜利用することもできる。
【0075】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端101-2から出力され、第1入出力端101-1から入力されたs偏波成分は、第3入出力端101-3から出力される。また、第2入出力端101-2から入力されたp偏波成分は、第1入出力端101-1から出力され、第3入出力端101-3から入力されたs偏波成分は第1入出力端101-1から出力される。
【0076】
偏波分離合成器101の第2入出力端101-2には非線形光学媒質が光ファイバーによって接続されている。一方、第3入出力端101-3には90度偏波面回転部103が光ファイバーによって接続されている。
【0077】
波長λpの励起光は、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1から入力され、第2入出力端105-2から出力される。その後、波長λpの励起光は、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へと入力され、p偏波成分とs偏波成分とに分離され、それぞれ偏波分離合成器101の第2入出力端101-2、第3入出力端101-3から出力される。
【0078】
上述の偏波分離された励起光のp偏波成分とs偏波成分とは、同一強度でなければならない。そのために、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力されるときの励起光は、p偏波成分とs偏波成分の強度比が1:1であるように偏波調整しておく。
【0079】
偏波分離合成器101におけるp偏波方向もしくはs偏波方向から45度傾いた直線偏波となるように調整するには、例えば、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1の手前に偏波面コントローラーを用意し、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力されるときの励起光の偏波状態を、偏波分離合成器101におけるp偏波方向もしくはs偏波方向から45度傾いた直線偏波となるように調整すればよい。このように強度比が調整された励起光を、以後45度偏波の励起光ということもある。
【0080】
90度偏波面回転部103は、直線偏波光に対してその偏波面を90度回転する機能を有する。すなわち、直線偏波光である励起光、シグナル光、アイドラー光の偏波面を90度回転する。90度偏波面回転部103に利用して好適な素子の一例は、1/2波長板である。以後、特に断らない限り1/2波長板という場合は、波長λpの光に対する1/2波長板を意味する。
【0081】
また、90度偏波面回転部103の好適な構成例として、以下のような手法で形成される融着接続部としてもよい。すなわち、ループ光路20として、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器101の第2入出力端101-2及び第3入出力端101-3を、非線形光学媒質102と偏波面及び光位相調整部104とを直列に配置して接続する偏波面保存光ファイバーの両端とを結んで構成させた光モジュール構成の部品を採用し、偏波分離合成器101の第3入出力端101-3と偏波面及び光位相調整部104とを結ぶ偏波面保存光ファイバーの途中箇所を、偏波面保存光ファイバーの互いに直交する光学軸(進相軸と遅相軸)を90度回転させて融着接続することで90度偏波面回転部103を形成することができる。
【0082】
偏波面及び光位相調整部104の構成及びその機能について図2を参照して説明する。偏波面及び光位相調整部104は、図1に示したように、90度偏波面回転部103と非線形光学媒質102との間に設置される。
【0083】
偏波面及び光位相調整部104は、直線偏波光の偏波面を+45度回転する第1ファラデー回転子278、光学軸X、Yを有する複屈折媒体282、直線偏波光の偏波面を-45度回転する第2ファラデー回転子280をこの順序で直列に配置して構成される。
【0084】
偏波面及び光位相調整部104の動作は以下のとおりである。
【0085】
図2で時計回り成分として示した方向に光が伝播する場合、すなわち、p偏波の光が偏波面及び光位相調整部104の第2ファラデー回転子280側から入力され、第1ファラデー回転子278側から出力されるときの動作を説明する。p偏波の光は、第2ファラデー回転子280を通過して、偏波方向が-45度回転する。偏波回転された後の偏波方向が複屈折媒体282の光学軸方向の一つ(図2ではY軸)と一致するように、複屈折媒体282を配置する。この光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282のY軸と平行な直線偏波として通過した後、第1ファラデー回転子278に入力される。そして、第1ファラデー回転子278において、+45度偏波回転される。その結果、この光は、再びp偏波の光に戻って偏波面及び光位相調整部104から出力される。
【0086】
次に、図2で反時計回り成分として示した方向に光が伝播する場合、すなわち、p偏波の光が偏波面及び光位相調整部104の第1ファラデー回転子278側から入力され、第2ファラデー回転子280側から出力されるときの動作を説明する。このp偏波の光は、第1ファラデー回転子278を通過して、偏波方向が+45度回転する。このとき、偏波回転された光の偏波方向は、複屈折媒体282のX軸の方向と一致する。したがって、この光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282のX軸と平行な直線偏波として通過する。その後、第2ファラデー回転子280に入力される。そして、第2ファラデー回転子280において、-45度偏波回転される。その結果、この光は、再びp偏波光に戻って偏波面及び光位相調整部104から出力される。
【0087】
すなわち、偏波面及び光位相調整部104の図2に示す左右から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部104の存在にもかかわらず、p偏波光として偏波面及び光位相調整部104から出力される。一方、偏波面及び光位相調整部104に図2に示す左右から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部104内に配置された複屈折媒体282を、互いに直交する光学軸(X軸及びY軸)に平行な直線偏波の状態で通過する。そのため、図2に示す左右から入力される両光間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0088】
すなわち、偏波面及び光位相調整部104をループ光路20内に挿入することにより、ループ光路20内を時計回り及び反時計回りに伝播する光成分間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差を生じさせることができる。
【0089】
複屈折媒体282としては、偏波面保存光ファイバーを利用することができる。また、1軸性もしくは2軸性の複屈折を有する光学結晶を利用してもよい。いずれの場合においても、当該複屈折媒体の長さを調整することによって生じさせる光位相差の量を調整できる。あるいはまた、生じさせるべき光位相差量を生じさせるために必要とされる長さにほぼ等しく調整された複屈折媒体を用意して、この複屈折媒体の温度を制御することによって正確に生じさせるべき光位相差を生じさせることができるように制御する手法を採用しても良い。
【0090】
一方、複屈折媒体の好適例としてバビネソレイユ補償板を用いることもできる。この場合、光位相差量を広範囲に変化させることができ、この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の性能を最大限実現することが可能となる。
【0091】
また、偏波面及び光位相調整部104において、第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部を利用することによって、偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103の機能を一体化することが可能である。すなわち、このように構成される偏波面及び光位相調整部を偏波面及び光位相調整部104の代わりに利用することによって、90度偏波面回転部103が不要となる。以後、第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部を、偏波面及び光位相調整部109と記載する。
【0092】
偏波面及び光位相調整部104及び109のいずれも、ループ光路に入力される励起光に基づいて非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光の、ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する機能を有している。
【0093】
図3を参照して、第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部の構成とその機能について説明する。
【0094】
図3に示すように、偏波面及び光位相調整部109の第2ファラデー回転子280側から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部109から出力されるときs偏波光に変換される。一方、第3ファラデー回転子284側から入力されたs偏波光は、偏波面及び光位相調整部109から出力されるときにp偏波光に変換される。また、図3に示す左右から入力される両光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282の互いに直交する光学軸(X軸、Y軸)に平行な直線偏波光の状態で通過する。そのため、両光間に複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0095】
この偏波面及び光位相調整部109によって得られる効果は、上述した偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103の2つの機能部分で実現された効果と等価である。したがって、偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103とを利用する代わりに、偏波面及び光位相調整部109のみを利用しても同一の機能を有する偏波量子もつれ光子対発生装置を形成することが可能である。
【0096】
なお、以上説明した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の実施の形態においては、非線形光学媒質102に入出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光は、同一偏波方向の直線偏波光であると規定した。非線形光学媒質102に入出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光を同一偏波方向の直線偏波光となるようにするには、例えば、非線形光学媒質102としてPPLN結晶を用い、PPLN結晶の2次非線形光学定数のテンソル成分の内のd33成分を、SHGの発現、SPDCの発現に利用し、PPLN結晶を構成する非線形光学結晶のz軸方向に偏波した励起光を入力させる構成とすることによって実現される。
【0097】
ローパス光フィルター106は、バンドパス光フィルター105の第3入出力端子105-3から出力される出力光の内、非線形光学媒質102で発生したSHG光の波長成分(λp/2)を除去する働きをする。ローパス光フィルター106の透過光の波長成分は、励起光波長成分(λp)の残留光、シグナル光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)である。なお、非線形光学媒質102として3次非線形光学媒質を利用した場合、SHG光が発生しないためローパス光フィルター106は不要である。
【0098】
WDMフィルター107は、ローパス光フィルター106の透過光の内、少なくともシグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とを別々の光路に切り分け、シグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とに空間分離された状態で出力する。このようなWDMフィルター107としては、少なくともシグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とを透過波長成分として有する、AWG型のWDMフィルター等を適宜利用することができる。
【0099】
WDMフィルター107を通過して出力されたシグナル光あるいはアイドラー光が通過するいずれか一方の光路中に1/2波長板108が配置される。図1ではアイドラー光が通過する光路中に1/2波長板108が配置されているが、シグナル光が通過する光路中に1/2波長板108を配置しても良い。
【0100】
図4(A)及び(B)を参照して、1/2波長板108の光学軸の方向をどのように設定して当該1/2波長板108を配置するかについて説明する。図4(A)は式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の、図4(B)は式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の説明に供する図である。
【0101】
式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合は、図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと一致するように配置する。また、式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合は、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと45度の角度を為すように配置する。そして、図4(A)及び図4(B)に示すどちらの配置も任意に選択できるようになっている。そのため、1/2波長板108の好適な一例は、1/2波長板108の光学軸方向を任意に回転させて設定できる1/2波長板モジュールである。
【0102】
WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過した、シグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分は、光ファイバー通信網等の光伝送路を伝播して、それぞれ受信者A及び受信者Bに送信される。受信者A及び受信者Bは同時計測を実行することで、量子情報通信技術に基づく情報伝達を実行する。
【0103】
偏波分離合成器101、90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104、偏波面及び光位相調整部109としては、波長λp近傍(λs及びλiを含む)でそれぞれ動作を保証できる素子、あるいは装置を利用すればよい。すなわち、波長λp/2においては、これら素子あるいは装置の動作は担保されている必要はない。λpが1550 nmであれば、1550 nm帯用の偏波分離合成器、ファラデー回転子、波長板等として市販されている光学部品を適宜利用することが可能であって、非特許文献2に記載されているようなλp、λp/2の両波長で正常動作する特殊な偏波分離合成器を利用する必要はない。
【0104】
また、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置を作製するには、ループ光路20、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過したシグナル光、アイドラー光の偏波保存が成されるのが望ましい。ゆえに、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び1/2波長板108としては、空間結合系または偏波保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用するのが望ましい。
【0105】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて詳細に説明する。
【0106】
非線形光学媒質102として2次非線形光学媒質であるPPLN結晶を使い、パラメトリック蛍光生成過程として非特許文献1に開示されているカスケードSHG/SPDC過程を利用して、また2次非線形光学定数のテンソル成分d33によるSHG発現、SPDC発現を利用するものとして、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の動作を説明する。
【0107】
バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1へ波長λpの励起光が入力され、この励起光はその後偏波分離合成器101の第1入出力端101-1に入力される。このとき、励起光は45度偏波の状態であるように適宜偏波調整されていることにより、偏波分離合成器101の第2入出力端101-2、第3入出力端101-3から、それぞれp偏波、s偏波で、同一強度の励起光が出力される。そして、p偏波方向と、PPLN結晶のz軸方向が一致するように、PPLN結晶を配置する。
【0108】
ループ光路20を時計回りに伝播し、PPLN結晶に入力されるときの励起光はp偏波であり、このとき、非特許文献1に開示されているように、PPLN結晶内でSHG光が発生し、さらにこのSHG光を種光としてSPDC過程により、PPLN結晶内でシグナル光、アイドラー光の相関光子対が発生する。これらの光は全てp偏波である。
【0109】
PPLN結晶から出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光(これらの光は全て同一の偏波状態である)は、次に偏波面及び光位相調整部104を通過する。この際、波長がλp近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光は、p偏波のまま偏波面及び光位相調整部104から出力される。そして、複屈折結晶282を複屈折結晶282のY軸方向の直線偏波として通過し、Y軸方向の偏波成分に対して光位相が生じる。一方、SHG光については、偏波面及び光位相調整部104の光学系はこのSHG光の波長に対しては最適化されていないので、どのような偏波状態で出力されるのか不確定な要素を含むが、これについては最終的にローパス光フィルター106によってSHG光成分が除去されるため問題とならない。
【0110】
次に、励起光、シグナル光、アイドラー光は、90度偏波面回転部103を通過して偏波方向が90度回転してs偏波となって偏波分離合成器101の第3入出力端101-3に入力され、その結果、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からs偏波として出力される。
【0111】
つまり、ループ光路20を時計回りに伝播する励起光によって、PPLN結晶内でSHG過程とSPDC過程とがともに発現することにより、s偏波のシグナル光、アイドラー光の相関光子対が、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される。
【0112】
一方、ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光は、偏波分離合成器101の第3入出力端101-3から出力される段階においてはs偏波であるが、90度偏波面回転部103を通過して偏波方向が90度回転してp偏波となる。その後この励起光は、偏波面及び光位相調整部104を通過する。この際、波長がλp近傍である励起光は、p偏波のまま偏波面及び光位相調整部104から出力される。ただしこの際、複屈折結晶282を複屈折結晶282のX軸方向の直線偏波として通過し、X軸方向の偏波成分に対して光位相が生じる。
【0113】
その後この励起光がPPLN結晶に入力するとき、励起光の偏波はPPLN結晶のz軸方法と一致するp偏波である。すると、PPLN結晶内でSHG光が発生し、さらにこのSHG光を種光としてSPDC過程により、PPLN結晶内でシグナル光、アイドラー光の相関光子対が発生する。これらは全てp偏波である。
【0114】
次に、励起光、シグナル光、アイドラー光は、p偏波として偏波分離合成器101の第2入出力端101-2に入力され、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からp偏波として出力される。つまり、ループ光路を反時計回りに伝播する励起光によって、p偏波のシグナル光、アイドラー光の相関光子対が、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される。
【0115】
偏波分離合成器101、バンドパス光フィルター105等の光学部品の光損失を無視すると、PPLN結晶に入力されるループ光路20を時計回りする励起光と、ループ光路20を反時計回りする励起光の強度は等しく、また偏波方向も等しいから、PPLN結晶が中心対称な構造であればPPLN結晶内で発生するSPDC相関光子の生成確率は、時計回り及び反時計回りの励起光に対して等しい。
【0116】
したがって、励起光強度が十分に弱いので、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されるシグナル光とアイドラー光の相関光子対は、ループ光路20を時計回りに伝播する励起光に基づいて発生したs偏波の相関光子対か、ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光に基づいて発生したp偏波の相関光子対のどちらか一方であることになる。すなわち、偏波量子もつれ光子対発生装置から出力される相関光子対の状態は、ループ光路20を時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し時計回り成分とは偏波直交した相関光子対との重ね合わせの状態となる。つまり、偏波量子もつれ光子対発生装置から偏波量子もつれ光子対が生成される。
【0117】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力された励起光、シグナル光、アイドラー光は、その後バンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2に入力されて、シグナル光、アイドラー光は第3入出力端105-3から出力される。また、励起光はその多くが(理想的には全てが)第1入出力端105-1から出力される。一部の残存光成分は第3入出力端105-3から出力される。
【0118】
バンドパス光フィルター105の第3入出力端105-3から出力される出力光は、ローパス光フィルター106を通過することで、波長λp/2のSHG光成分が除去される。
【0119】
次に、WDMフィルター107によって、シグナル光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)を別々の光路に切り分けて出力する。それぞれの光路に残存励起光波長成分(λp)が混入しないように、WDMフィルター107には十分な波長分離能力が必要となる。このようなWDMフィルターとしては、少なくとも、シグナル光波長成分、アイドラー光波長成分を透過波長成分として有する、いわゆるAWG型のWDMフィルター等を適宜利用することができる。また、ブラッグ反射波長がλpである回折格子型のフィルター、例えばファイバーブラッググレーティング等と組み合わせて励起光波長成分を十分除去できる構造とすることもできる。
【0120】
既に説明したように、WDMフィルター107を通過したシグナル光、アイドラー光が通過するいずれか一方の光路に1/2波長板を配置するが、この1/2波長板の光学軸の方向は図4(A)及び(B)に示すように配置されている。
【0121】
すなわち、図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと一致するように配置されている。または、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと45度の角度を成すように配置されている。そして、これらの配置の一方(図4(A)に示す配置、あるいは図4(B)に示す配置のいずれか一方)を任意に選択できるように構成されている。
【0122】
WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過したシグナル光波長成分、アイドラー光波長成分は、光ファイバー通信網等の光伝送路を通過した後、それぞれ受信者A、受信者Bに送信される。受信者A、Bは同時計測等を実行することで、量子情報通信技術に基づく情報伝達等を実行する。
【0123】
この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置を好適に動作させるには、ループ光路20内やバンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び、1/2波長板108を通過したシグナル光、アイドラー光の偏波保存が保証されていることが必要である。ゆえに、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び、1/2波長板108としては、既に説明したように、空間光学系又は偏波面保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用するのが望ましい。
【0124】
次に、この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置が如何にして4つのベル状態を実現できるのかについて説明する。
【0125】
まず、簡単のために、1/2波長板108がない場合について説明する。
【0126】
この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、WDMフィルター107のシグナル光及びアイドラー光の2つの出力端において、同一偏波方向のシグナル光及びアイドラー光の光子対を発生させるために、その実現し得るベル状態は、式(5-a)又は(5-b)で与えられるいずれかである。
【0127】
このときの偏波量子もつれ光子対の一般的な状態は、次式(7)で与えられる。
α|H>s|H>i+ βejφ|V>s|V>i (7)
ただし、jは虚数単位であり、α、βは|α|2 +|β|2 = 1を満たす。
【0128】
|α|と|β|はそれぞれ横偏波(H)と縦偏波(V)の光子対が発生する確率を表している。最大もつれ状態は、|α|=|β|= 2-1/2で、かつφ=0またはπのときに実現される。以下、横偏波(H)をH偏波、縦偏波(V)をV偏波と書くこともある。
【0129】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、空間光学系又は偏波面保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用して形成されている。それゆえ、横偏波(H)と縦偏波(V)のそれぞれの偏波方向は、p偏波とs偏波のそれぞれの偏波方向のいずれかと合致している。
【0130】
ここでは、p偏波と横偏波(H)、s偏波と縦偏波(V)の偏波方向がそれぞれ合致しているものとする。すなわち、ループ光路20の時計回りに伝播する励起光からは、V偏波の相関光子対|V>s|V>iが、ループ光路20の反時計回りに伝播する励起光からは、H偏波の相関光子対|H>s|H>iが、それぞれWDMフィルター107の異なる出力端から出力される。
【0131】
ここで、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ45度偏波の励起光を入力させたとき、第2入出力端101-2及び第3入出力端101-3からそれぞれ出力されるp偏波成分とs偏波成分の強度が等しくなるように(強度比が1:1になるように)偏波分離合成器101が偏波調整され、かつ、ループ光路20における光損失が無視できるほど小さく調整されていれば、H偏波とV偏波の光子対の発生確率は等しく、|α|=|β|= 2-1/2が実現される。
【0132】
φは縦偏波(V)の光子対と横偏波(H)の光子対との光位相差を表すパラメータである。最大もつれを実現するには、φ=0あるいはφ=πとなるように光の光路長を設定すればよい。そのためには、WDMフィルター107の2つの出力端(V偏波の相関光子対が出力される出力端とH偏波の相関光子対が出力される出力端)にいたるまでに、時計回り及び反時計回りにループ光路を伝播する励起光、シグナル光、アイドラー光が伝播する光路長が、波長以下の精度で調整されている必要がある。
【0133】
これを実現するには、空間光学系の空間光路長や、装置を構成するのに使用される偏波面保存光ファイバーの長さを波長以下の精度で調整・制御する必要があり、現実にはこの調整・制御は非常に難しい。
【0134】
そこで、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、偏波面及び光位相調整部104あるいは109を使用することによって、励起光、シグナル光、アイドラー光に対する光路長を波長以下の精度で調整・制御することが可能とされている。以下、偏波面及び光位相調整部104を使用することとして上述の光路長の調整・制御について説明する。
【0135】
V偏波の相関光子対|V>s|V>iが生成される場合(ループ光路20を時計回りに伝播する励起光によって生成される)、偏波面及び光位相調整部104による光位相変化は、偏波面及び光位相調整部104を第2ファラデー回転子280から入力されて通過するp偏波のシグナル光、アイドラー光に対する位相変化の和で考えればよい。このとき、シグナル光、アイドラー光は、複屈折媒体282をY軸方向の直線偏波として通過する。
【0136】
一方、H偏波の相関光子対|H>s|H>iが生成される場合(ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光によって生成される)、偏波面及び光位相調整部104による光位相変化は、偏波面及び光位相調整部104を第1ファラデー回転子278から入力されて通過するp偏波の励起光に対する位相変化を2倍して考えればよい。このとき励起光は、複屈折媒体282をX軸方向の直線偏波として通過する。
【0137】
したがって、偏波面及び光位相調整部104の効果を含んだφは一般的に次式(8)で与えられるものと考えればよい。
φ=φ0+2[(2πnX/λp)L]−[(2πnY/λs)L]−[(2πnY/λi)L]
=φ0+2[(2πΔn/λp)L] (8)
ここで、nX、nYはそれぞれ複屈折媒体282のX軸方向Y軸方向の直線偏波に対する屈折率、Lは複屈折媒体282の厚さであり、φ0は偏波面及び光位相調整部104以外の光路で生じる縦偏波の光子対と横偏波の光子対との光位相差の総量である。これは、偏波分離合成器101、偏波面及び光位相調整部104などの光部品やそれらを接続する空間光学系あるいは偏波面保存光ファイバーの複屈折や光路長差によって生じる光位相差の総量である。
【0138】
式(8)の2[(2πnX/λp)L]は、偏波面及び光位相調整部104を通過するp偏波の励起光に対する光位相変化の2倍を与え、[(2πnY/λs)L]及び[(2πnY/λi)L]がそれぞれ偏波面及び光位相調整部104を通過するp偏波のシグナル光、アイドラー光に対する光位相変化を与える。式(8)におけるΔn≡nX−nYは複屈折媒体282のリタデーションであり、バビネソレイユ補償板を用いた場合は重ね合わせられた2枚の結晶の厚さの差に相当する。
【0139】
式(8)で与えられるφを0となるようにLを設定すれば、式(5-a)で与えられるベル状態が実現でき、φ=πとなるようにLを設定すれば式(5-b)で与えられるベル状態が実現できる。複屈折媒体282としては、位相変化量[(2πΔn/λp)L]として0〜πの何れの値も連続的に実現できる可変式バビネソレイユ補償板を利用すれば、任意に与えられたφ0に対して、φ=0、φ=πの何れも実現することが可能である。すなわち、空間光学系の空間光路長や、装置を構成するために使用されている偏波面保存光ファイバーのファイバー長を高精度に調整・制御する必要がなく、式(5-a)及び式(5-b)で与えられるいずれのベル状態も実現することが可能である。
【0140】
次に、WDMフィルター107の後段に配置される1/2波長板108の機能について説明する。いま、WDMフィルター107から出力されたシグナル光と、1/2波長板108から出力されたアイドラー光との偏波関係と位相関係を考える。因みに図1では1/2波長板108が、アイドラー光が通過する光路中に配置されているが、シグナル光が通過する光路中に配置してもよい。
【0141】
図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸がp偏波方向(H偏波方向)、s偏波方向(V偏波方向)のそれぞれと一致する場合、アイドラー光の偏波状態はなんら変化しない。ゆえに、WDMフィルター107のシグナル光出力端と1/2波長板108のアイドラー光出力端に至るまでに時計回り及び反時計回りの励起光、シグナル光、アイドラー光が通過する光路の光路長差に相当する光位相差(φ0)を相殺し、かつ、0又はπの光位相差を加えた光位相差を偏波面及び光位相調整部104に与えてやれば、式(5-a)で与えられるベル状態及び式(5-b)で与えられるベル状態を実現することができる。
【0142】
一方、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸がp偏波方向(H偏波方向)、s偏波方向(V偏波方向)のそれぞれと45度の角度を成すように配置すると、アイドラー光の偏波面は90度回転することとなる。すなわち、WDMフィルター107から出力されたシグナル光と1/2波長板108から出力されたアイドラー光の状態は、それぞれ偏波直交した偏波状態|H>s|V>i及び|V>s|H>iの重ね合わせで与えられる偏波もつれ状態となる。このとき、WDMフィルター107のシグナル光出力端と1/2波長板108のアイドラー光出力端に至るまでに時計回り及び反時計回りの励起光、シグナル光、アイドラー光が伝播する光路の光路長差に相当する光位相差(φ0)を相殺し、かつ、0又はπの光位相差を加えた光位相差を偏波面及び光位相調整部104によって与えてやれば、式(5-c)で与えられるベル状態及び式(5-d)で与えられるベル状態を実現することができる。
【0143】
すなわち、光学軸の方法を任意に回転させることができる(少なくとも図4(A)及び(B)に示す2つの状態を取れる)1/2波長板108を用い、また偏波面及び光位相調整部104によって適宜光位相補償を行えば、4つのベル状態(式(5-a)〜(5-d)で与えられるベル状態)のいずれも実現可能な偏波量子もつれ光子対発生措置が実現できる。
【0144】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、励起光や偏波量子もつれ光子対の入出力部分を構成する形態の相違に基づく変形例がある。以下でこの変形例を2つ、第1変形例及び第2変形例として説明する。
【0145】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例≫
図5を参照して、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例を説明する。図5に示す第1変形例では、光分岐入出力部を図1に示した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置とその構成が少し異なるので、光分岐入出力部12としてある。
【0146】
第1変形例は、図1に示した偏波量子もつれ光子対発生装置のバンドパス光フィルター105とWDMフィルター107の持つ役割を、1台のWDMフィルター107を用いて実現する構成例である。ここでは、WDMフィルター107として、AWG型のWDMフィルターを用いる。AWG型フィルターとして、シグナル光波長(λs)、アイドラー光波長(λi)、及び励起光波長(λp)の3波長を透過波長成分として有するAWG型フィルターを用いる。
【0147】
AWG型フィルターは、その透過波長に相当する波長の光を入力する、複数の透過光入出力ポートと、それぞれの透過光入出力ポートに入力された光を合波出力する共通入出力ポートを有する。逆に、共通入出力ポートに入力された光は、それぞれの波長に応じて分波され、それぞれの透過光波長に相当する透過光入出力ポートから分波して出力される。
【0148】
AWG型フィルターの上述の特性を利用して以下のような構成をとる。すなわち、励起光波長に相当する透過光入出力ポートへ励起光を入力し、共通入出力ポートからの出力光を偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へと入力し、図1に示した装置と同様に、非線形光学媒質102へと双方向に入力する。
【0149】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される、ループ光路20からの出力光は、AWG型フィルターの共通入出力ポートへと入力され、シグナル光、アイドラー光がそれぞれ対応する透過光入出力ポートへと入力され、この段階で励起光波長成分は除去される。さらに、SHG光波長成分を除去するために、必要であればWDMフィルター107の共通入出力ポートと偏波分離合成器101の第1入出力端101-1との間にローパス光フィルター106を接続して、SHG光波長成分を除去する。
【0150】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例≫
図6を参照して、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例を説明する。図6に示す第2変形例では、光分岐入出力部を図1に示した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置とその構成が少し異なるので、光分岐入出力部14としてある。
【0151】
第2変形例は、バンドパス光フィルター105を使用する代わりに、光サーキュレーター110を使用する。光サーキュレーター110の第1入出力端110-1から入力された励起光は、第2入出力端110-2から出力され、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力され、図1に示した装置と同様にして、非線形光学媒質102へと双方向に入力される。また偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されるループ光路20からの出力光は、光サーキュレーター110の第2入出力端110-2へと入力され、第3入出力端110-3から出力される。その後、図1に示した装置と同様に、ローパス光フィルター106とWDMフィルター107とを用いて、SHG光波長成分の除去と、シグナル光とアイドラー光の分離が実行される。
【0152】
≪第2の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図7を参照してこの発明の実施形態の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0153】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の動作を基本とし、励起光と偏波量子もつれ光子対とを、偏波分離合成器のそれぞれ異なる入出力端を介して入出力するように構成されている。そのために、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で用いた90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104の代わりに、ファラデー回転子と1/2波長板からなる光学部品ペア(非相反偏波面変換部)を2組と、複屈折媒体とを用いる。ここで、複屈折媒体は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で用いた複屈折媒体282と同等の素子を利用する。又、偏波分離合成器として4つの入出力端を有する偏波分離合成器を利用する。
【0154】
すなわち、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路40と励起光を入力させる入力部と、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する光分岐入出力部30とを備えて構成される。
【0155】
ループ光路40は、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器201の第2入出力端201-2と第3入出力端201-3とを、第1非相反偏波面変換部211と非線形光学媒質102と第2非相反偏波面変換部212と複屈折媒体213とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成される。入力部は、偏波分離合成器201の第1入出力端201-1である。
【0156】
偏波分離合成器201の第4入出力端201-4と光分岐入出力部30の入力端とが接続されており、第1非相反偏波面変換部211は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208を備えており、第2非相反偏波面変換部212は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210を備えている。
【0157】
励起光が偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から入力されてこの偏波分離合成器201を介して第1入出力端201-1からループ光路40に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部30の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている。
【0158】
また、光分岐入出力部30から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が通過する光路中に第1の1/2波長板214が配置されている。
【0159】
第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208のペアで第1非相反偏波面変換部211を構成する。同様に、第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210のペアで第2非相反偏波面変換部212を構成する。
【0160】
第1ファラデー回転子207と第2ファラデー回転子209は、波長がλpの近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光に対して偏波面を-45度(反時計回りに45度)回転させる。また、第2の1/2波長板208と第3の1/2波長板210は、波長がλpの近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光に対して1/2波長板として機能する。
【0161】
偏波分離合成器201は、4つの入出力端子201-1〜201-4を有する。第1入出力端201-1〜第3入出力端201-3の機能と役割は、上述した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の偏波分離合成器101の3つの入出力端101-1〜101-3がもつ機能と役割と同一である。
【0162】
すなわち、第1入出力端201-1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端201-2から出力され、第1入出力端201-1から入力されたs偏波成分は、第3入出力端201-3から出力される。また、第2入出力端201-2から入力されたp偏波成分は第1入出力端201-1から出力され、第3入出力端201-3から入力されたs偏波成分は第1入出力端201-1から出力される。さらに、偏波分離合成器201においては、第2入出力端201-2から入力されたp偏波成分は第4入出力端201-4から出力され、第3入出力端201-3から入力されたs偏波成分は第4入出力端201-4から出力される。
【0163】
このような機能を満たす偏波分離合成器201としては、例えば市販の偏光ビームスプリッタの中から適宜選んで利用することができる。
【0164】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から、45度偏波の励起光が入力される。この他、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で利用されている光学部品と同一機能を有する第2の偏波量子もつれ光子対発生装置で利用される光学部品についての重複する説明を省略する。
【0165】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて詳細に説明する。
【0166】
上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様に、波長がλpであり45度偏光の励起光が偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から入力され、同一強度のp偏波成分、s偏波成分に分離されて、それぞれ第2入出力端201-2、第3入出力端201-3から出力される。
【0167】
ここで、第1ファラデー回転子207、第2の1/2波長板208、第2ファラデー回転子209、及び第3の1/2波長板210の光学軸の向きと、第1非相反偏波面変換部211及び第2非相反偏波面変換部212の動作について図8及び図9を参照して説明する。図8は第1非相反偏波面変換部211の概略的構成を示し、この第1非相反偏波面変換部211を左右両方向に通過する光の偏波面の変化の様子の説明に供する図である。また、図9は第2非相反偏波面変換部212の概略的構成を示し、この第2非相反偏波面変換部212を左右両方向に通過する光の偏波面の変化の様子の説明に供する図である。
【0168】
図8に示すように、第1非相反偏波面変換部211において、第1ファラデー回転子207側あるいは第2の1/2波長板208側から、ある特定の偏波方向の直線偏波の励起光が入力される。この特定の偏波方向とは偏波分離合成器201におけるp偏波方向か、s偏波方向のどちらか一方に一致する。そして第2の1/2波長板208の光学軸は、特定の偏波方向(図8ではs偏波方向として図示されている)と22.5度の角度を成すように調整されている。図9に示すように、第2非相反偏波面変換部212における第3の1/2波長板210においても同様に、22.5度の角度を成すように調整されている。
【0169】
偏波分離合成器201の第3入出力端201-3からループ光路40に入力されこのループ光路40を反時計回りに伝播するs偏波の励起光は、第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208からなる第1非相反偏波面変換部211を通過する。このときの偏波の状態の変化について図8を参照して説明する。
【0170】
図8において、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3から出力された反時計回りに伝播するs偏波の励起光を図中上向きの矢印で示してある。この光が第1ファラデー回転子207を通過する。第1ファラデー回転子207において、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じるとすると、第1ファラデー回転子207の出力光の偏波方向は、左斜め上45度向きの矢印で表される。次に、この光が第2の1/2波長板208を通過する。このとき偏波方向は、第2の1/2波長板208の光学軸と22.5度の角度を成すため、第2の1/2波長板208から出力される励起光の偏波方向は、右向き矢印の方向で表すことができる。
【0171】
このことは、第2の1/2波長板208を通過して出力される励起光の偏光方向がp偏波方向となることを意味している。すなわち、第1非相反偏波面変換部211を第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208の順序で通過した励起光は、偏波が90度回転される。この励起光は、非線形光学媒質102に入力され、励起光の偏波(p偏波)と同じ偏波のSHG光、シグナル光とアイドラー光との相関光子対が発生される。
【0172】
ループ光路40を反時計回りに伝播する励起光、SHG光、相関光子対は、次に第2非相反偏波面変換部212に入力される。このときの偏波状態の変化について図9を参照して説明する。
【0173】
図9に示すように、反時計回りに伝播するp偏波である励起光、相関光子対は、第2ファラデー回転子209を通過した後、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じて、右斜め上45度向きの矢印で表される偏波状態となる。次に、この光が第3の1/2波長板210を通過した結果、その偏波方向は上向き矢印、すなわちs偏波に変換される。
【0174】
その後、ループ光路40を反時計回りに伝播した励起光と相関光子対は、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2に入力され、偏波状態がs偏波であることから、第4入出力端201-4から出力される。すなわち、最初の励起光が入力された入出力端とは異なる入出力端から、励起光及び相関光子対が出力される。
【0175】
次に、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2から出力された、ループ光路40を時計回りに伝播するp偏波の励起光とこの励起光によって生じるループ光路40を時計回りに伝播する相関光子対について説明する。
【0176】
励起光は、第2非相反偏波面変換部212を通過する。このときの偏波の状態について図9を参照して説明する。図9に示すように、反時計回りに伝播するp偏波で入力された励起光は、第3の1/2波長板210を通過することで、図中左斜め上45度向きの矢印で表す偏波状態に変換される。次に、励起光は第2ファラデー回転子209を通過し、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じる。その結果図中左向きの矢印の偏波、すなわちp偏波となって第2非相反偏波面変換部212から出力される。
【0177】
この励起光は、p偏波として非線形光学媒質102に入力され、励起光の偏波(p偏波)と同じ偏波のSHG光、SPDC相関光子対を発生させる。ループ光路40を時計回りに伝播するSHG光、SPDC相関光子対は、次に第1非相反偏波面変換部211に入力される。このときの偏波状態の変化について図8を参照して説明する。
【0178】
図8に示すように、反時計回りに伝播するp偏波である励起光及びSPDC相関光子対は、まず第2の1/2波長板08を通過した結果、左斜め上45度向きの矢印で表される偏波に変換される。次に、第1ファラデー回転子207を通過した後、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じて、図中左向きの矢印で表されるp偏波に変換される。
【0179】
その後、ループ光路40を時計回りに伝播してきた励起光と相関光子対は、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3に入力され、偏波状態がp偏波であることから、第4入出力端201-4から出力される。すなわち、最初の励起光が入力された入出力端とは異なる入出力端から、励起光及び相関光子対が出力される。そして出力されるこれらの励起光及び相関光子対は、ループ光路40を反時計回りに伝播してきた励起光及び相関光子対が出力される入出力端と同一であり、かつ、ループ光路40を反時計回りに伝播してきた励起光及び相関光子対とは偏波直交の関係となっている。すなわち、偏波分離合成器201の第4入出力端201-4から、偏波量子もつれ光子対が出力される。
【0180】
偏波分離合成器201の第4入出力端201-4から出力された偏波量子もつれ光子対は、その後、ローパス光フィルター106及びWDMフィルター107で余分なSHG光波長成分及び励起光波長成分が除去されて、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力される。
【0181】
一方、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置で最大もつれ状態の偏波量子もつれ光子対を得るためには、φを0またはπに設定するための光位相補償装置をこの偏波量子もつれ光子対発生装置のいずれかの場所に挿入しなければならない。
【0182】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の偏波面及び光位相調整部104の動作として説明したように、偏波面及び光位相調整部104による光位相補償は上述の式(8)で与えられる。ループ光路を互いに逆行する励起光と相関光子対(シグナル光とアイドラー光)において、これらの偏波同士が直交する箇所に複屈折媒体を配置すれば、この複屈折媒体の複屈折に相当する量[(2πΔn/λp)L]だけの光位相補償ができる。
【0183】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置において、ループ光路40を互いに逆行する励起光と相関光子対の偏波が直交する箇所は、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3と第1非相反偏波面変換部211を結合する箇所(図7にaと示す箇所)、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2と第2非相反偏波面変換部212を結合する箇所(図7にbと示す箇所)、第2非相反偏波面変換部212内の第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210の間の箇所(図7にcと示す箇所)である。
【0184】
ゆえに、図7にa〜cと示すいずれかの箇所に、複屈折媒体213を配置すれば、φを0あるいはπに設定することが可能となり、最大もつれ状態を実現することが可能となる。
【0185】
なお、励起光と相関光子対との偏波方向を考慮すれば、図7でaあるいはbと示す位置に複屈折媒体213を配置する場合には、複屈折媒体213の光学軸の方向をp偏波方向、s偏波方向と一致するように配置すればよい。一方、図7でcと示す位置に複屈折媒体213を配置する場合には、複屈折媒体213の光学軸の方向をp偏波方向、s偏波方向と45度の角度をなす方向と一致するように配置すればよい。
【0186】
また、WDMフィルター107を通過するアイドラー光(またはシグナル光)の光路中に第1の1/2波長板214を配置することで、アイドラー光(またはシグナル光)の偏波を90度回転することができるので、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様に、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によっても、式(5-a)〜式(5-d)で与えられるいずれのベル状態も実現することが可能となる。
【0187】
ただし、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と第2の偏波量子もつれ光子対発生装置とは、次のような相違がある。
【0188】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、励起光が元の励起光入力端に逆行して戻っていくことがない。それゆえに反射戻り光等による装置の不安定動作の懸念が小さい。反射戻り光の懸念を解消するためには、光アイソレーター等の光部品が必要となるが、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置はこのようなことを考慮しなくともよい。光アイソレーター等を利用すれば、装置製造コストが増大する上、光アイソレーター等の光素子を挿入することで、この光素子における光損失が発生し装置の性能を低下させるが、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置にはこのような問題が生じない。
【0189】
≪第3の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図10を参照してこの発明の実施形態の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0190】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の構成と下記の点で異なる。すなわち、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の構成と異なり、ループ光路50内に90度偏波面回転部103と非線形光学媒質102とを含み、偏波面及び光位相調整部104を含まない。
【0191】
一方、45度偏光の励起光がループ光路50に入力されるまでのいずれかの光路に複屈折媒体216が挿入される。図10では、複屈折媒体216は、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1(光分岐入出力部10の入力端)に接続されて配置されている。複屈折媒体216の挿入箇所は図10に示す例に留まらず、例えば、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1とバンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2とを結ぶ経路(光分岐入出力部10の出力端)に配置されていても良い。いずれにしろ、励起光が45度偏光の励起光となった後にループ光路50に入力されるまでに経過するいずれかの光路に配置する。
【0192】
また、複屈折媒体216の光学軸は図11のように配置されている。すなわち、45度偏波の励起光の偏波方向と45度の角度をなす方向に、その光学軸X、Yが配置されている。
【0193】
その他の構成は第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様なので、ここではその説明を割愛する。
【0194】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて説明する。
【0195】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と異なり、光子対は複屈折媒体216を経過しない。一方、H偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相と、V偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相は、複屈折媒体216で生じるリタデーションに応じて異なる。
【0196】
したがって、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、縦偏波(V)の光子対と横偏波(H)の光子対との光位相差φは次式(9)のように表される。
φ=φ0+2[(2πΔn/λp)L] (9)
ここで、Δn≡nX−nYであり、nX、nYはそれぞれ複屈折媒体216のX軸方向Y軸方向の直線偏波に対する屈折率、Lは複屈折媒体216の厚さである。φ0は複屈折媒体216以外の光路で生じる縦偏波の光子対と横偏波の光子対との光位相差の総量である。
【0197】
ゆえに、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の場合と同様に、複屈折媒体216として可変式バビネソレイユ補償板を用いて、式(9)で与えられるφを0となるようにLを設定すれば、式(5-a)で与えられるベル状態が実現でき、φ=πとなるようにLを設定すれば式(5-b)で与えられるベル状態が実現できる。また、1/2波長板108を回転することで、式(5-c)、(5-d)で与えられるベル状態も実現できる。
【0198】
ただし、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と第3の偏波量子もつれ光子対発生装置とは、次のような相違がある。
【0199】
すなわち、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、偏波量子もつれ光子対が経過する光路に複屈折媒体216は存在しない。また、偏波面及び光位相調整部104も使用しない。ゆえにこれらの光部品の挿入損失が存在しない。すなわち、より低損失に偏波量子もつれ光子対を発生することができる。
【0200】
≪実施形態に関する変形例≫
上述した実施形態の第1、第2及び第3の偏波量子もつれ光子対発生装置では、非線形光学媒質としてPPLN結晶を用いたが、PPLN結晶以外の2次非線形光学媒質も利用することができる。また、非線形光学媒質として、光ファイバー等の3次非線形光学媒質を利用することもできる。さらに、非線形光学媒質としてバルク結晶、PPLN結晶に光導波路を作り込んだPPLN導波路素子等の導波路型素子、その他様々な形態の非線形光学媒質を用いることができる。
【0201】
90度偏波面回転部103や偏波面及び光位相調整部104、109等を、ループ光路中で非線形光学媒質102に対してどのような位置に配置するかは設計事項に属する。すなわち、例えば、2次非線形光学媒質の非線形光学係数のテンソル成分であるd11成分を利用する場合には90度偏波面回転部103を偏波分離合成器101の第2入出力端101-2と非線形光学媒質102を接続する光路に配置することもあり得る。また、90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104との配置の位置を入れ替えた構成とすることも可能である。すなわち、90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104との配置の位置箇所は、非線形光学媒質の利用する光学軸の方向と、非線形光学媒質に入力される励起光の偏波方向に基づいて、適宜柔軟に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0202】
10、12、14、30:光分岐入出力部
20、40、50:ループ光路
101、201:偏波分離合成器
102:非線形光学媒質
103:90度偏波面回転部
104、109:偏波面及び光位相調整部
105:バンドパス光フィルター
106:ローパス光フィルター
107:WDMフィルター
108:1/2波長板
110:光サーキュレーター
207、278:第1ファラデー回転子
208:第2の1/2波長板
209、280:第2ファラデー回転子
210:第3の1/2波長板
211:第1非相反偏波面変換部
212:第2非相反偏波面変換部
213、216、282:複屈折媒体
214:第1の1/2波長板
284:第3ファラデー回転子
【技術分野】
【0001】
この発明は、量子暗号、量子コンピュータなど量子情報通信技術等で必要とされる量子もつれ光子対発生装置に関し、特に、4つのベル状態の偏波量子もつれ光子対のいずれの状態の光子対も選択して出力することができる偏波量子もつれ光子対発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子もつれ光子対発生は、量子暗号、量子コンピュータなど、量子力学的粒子(光子)の非局所性を応用した高度な量子情報通信技術を実現するための重要な要素技術となっている。
【0003】
量子もつれ光子対を発生させる手段として、従来から2次あるいは3次の非線形光学媒質中での自然パラメトリック蛍光を用いる方法が研究されてきた。2次あるいは3次の非線形光学媒質中に、波長λp、波数kp、角周波数ωpの励起光子を入力すると、波長λs、波数ks、角周波数ωsのシグナル光子と、波長λi、波数ki、角周波数ωiのアイドラー光子が出力されるのが自然パラメトリック蛍光である。その際、シグナル光子、アイドラー光子は必ず対(ペア)となって同時に発生する。
【0004】
以後、励起光子、シグナル光子、アイドラー光子を、それぞれ励起光、シグナル光、アイドラー光と記載する。
【0005】
励起光、シグナル光、アイドラー光の波数、角周波数には、それぞれ運動量保存則、エネルギー保存則に相当する相関関係がある。
【0006】
2次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然パラメトリック下方変換(SPDC: Spontaneous parametric down conversion)とも呼ばれる。このとき、各光子の波数、角周波数はそれぞれ次式(1)、(2)を満足する。
kp=ks+ki+K (1)
ωp=ωs+ωi (2)
一方、3次の非線形光学媒質を用いた場合、自然パラメトリック蛍光現象は自然4光波混合(SFWM: Spontaneous four wave mixing)とも呼ばれる。このとき、各光子の波数、角周波数はそれぞれ次式(3)、(4)を満足する。
2kp=ks+ki+K (3)
2ωp=ωs+ωi (4)
ここで、式(1)及び式(3)に含まれるKは、非線形光学定数の周期的変調構造の周期に対応するパラメータであり、周期的変調構造の周期がΛである場合K=2π/Λで与えられる。非線形光学定数の周期的変調構造は、擬似位相整合により非線形光学効果を高効率化することを目的に、例えばLiNbO3結晶を非線形光学媒質として採用する場合などで現在頻繁に利用されている。
【0007】
この発明の発明者らは、自然パラメトリック蛍光の生成プロセスとして、SPDC過程の種光となる光第2高調波(SHG: Second harmonic generation)とSPDCが、単一の2次非線形光学媒質中で生じることによる、カスケードSHG/SPCD過程について既に報告している(非特許文献1参照)。
【0008】
この手法によれば、LiNbO3結晶に非線形光学定数の周期的変調構造を作りつけたLiNbO3結晶(PPLN: Periodically Poled Lithium Niobate、以後、PPLN結晶ということもある)に励起光を入力すると、PPLN結晶内でまずSHG光が発生し、次に、このSHG光を種光としてSPDCが生ずる。この過程は、擬似的な3次非線形光学効果と見ることができ、入力する励起光と発生するシグナル光、アイドラー光の波数、角周波数は、それぞれ上述の式(3)及び(4)の関係を満足する。
【0009】
上述の波数、角周波数、発生時間の相関関係以外にも、シグナル光、アイドラー光間には、偏波についても相関関係が存在する。以後このような自然パラメトリック蛍光で発生する相関のあるシグナル光、アイドラー光の光子対を相関光子対と呼ぶこともある。
【0010】
また、上述したSPDC過程、SFWM過程、またはカスケードSHG/SPDC過程で生じさせた相関光子対を利用することで、偏波相関を利用した偏波量子もつれ光子対を生成することができる。この一例として、偏波分離合成器(PBS: Polarization Beam Splitter)と単一のPPLN結晶を用いたサニャック型干渉計を利用した波長1550 nm帯量子もつれ光子対発生装置が従来文献に開示されている(例えば、非特許文献2参照)。非特許文献2では、PBSとPPLN結晶を結ぶ偏波面保存光ファイバーにおいて、その一箇所に90度光軸変換箇所が設けられている。この90度光軸変換箇所は光ファイバー融着技術等によって形成可能である。
【0011】
非特許文献2に開示されている量子もつれ光子対発生装置では、PBSを介して波長776 nmで45度偏光した励起光をPPLN結晶に入力すると、PPLN結晶中で自然パラメトリック下方変換によって波長1542 nmのシグナル光及び1562 nmのアイドラー光の相関光子対が発生する。量子もつれ光子対発生装置では、励起光強度が十分に弱いので、これら相関光子対はサニャック型干渉計のループを時計回りに伝播する励起光か、ループを反時計回りに伝播する励起光のどちらか一方からしか発生しない。この場合、この量子もつれ光子対発生装置から発生する相関光子対の状態は、ループを時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し時計回り成分とは偏波直交した相関光子対の重ね合わせ状態となる。すなわちこの量子もつれ光子対発生装置から偏波量子もつれ光子対が発生する。
【0012】
一方、タイプIIと呼ばれる位相整合あるいは擬似位相整合を利用した2次非線形光学媒質中でSPDCを利用して偏波量子もつれ光子対を生成する手法が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。この手法によれば、シグナル光、アイドラー光の相関光子対は互いに直交した偏波状態が生成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】荒平慎、岸本直、「PPLNリッジ導波路デバイスを用いたカスケードχ(2)方式によるパラメトリック下方変換光発生」第21回量子情報技術研究会資料、電子情報通信学会、量子情報技術時限研究専門委員会、pp.184-187、(2009)
【非特許文献2】H.C.Lim, A.Yoshizawa, H.Tsuchida, and K.Kikuchi, "Stable source of high quality telecom-band polarization-entangled photon-pairs based on a single, pulse-pumped, short PPLN waveguide," Optics Express. vol.16, No.17, pp.12460-12468, (2008)
【非特許文献3】長谷川啓佑、大日方政史、行方直人、栗村直、井上修一郎、「Type−II型周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路による1550 nm帯狭帯域直交偏光量子もつれ光子対の生成」、第19回量子情報技術研究会資料、電子情報通信学会、量子情報技術時限研究専門委員会、pp.137-140、(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
偏波量子もつれ光子対に関して、最大の量子もつれ状態を実現する量子状態としては以下に示す4つの状態が存在することが知られている。この4つの状態は式で表すと、次式(5-a)〜(5-d)となる。
|H>s|H>i + |V>s|V>i (5-a)
|H>s|H>i - |V>s|V>i (5-b)
|H>s|V>i + |V>s|H>i (5-c)
|H>s|V>i - |V>s|H>i (5-d)
ここで、状態ベクトル|H>及び|V>は、それぞれ横偏波及び縦偏波の光子の状態を示すケットベクトルである。また、これらケットベクトルに付されたサブスクリプトs及びiはそれぞれシグナル光及びアイドラー光を識別する符牒である。
【0015】
式(5-a)及び式(5-b)で表される量子状態はともに同じ偏波状態のシグナル光、アイドラー光がペアで発生している状態であり、一方、式(5-c)及び式(5-d)はそれぞれ直交した偏波状態のシグナル光、アイドラー光がペアで発生している状態である。また、式(5-a)と式(5-b)で表される状態、式(5-c)と式(5-d)で表される状態は、それぞれ重ね合わせの状態の位相が反転している状態を示している。式(5-a)、式(5-b)、式(5-c)、式(5-d)で表される状態は「ベル状態」とも呼ばれ、これらの状態を実現可能とする偏波量子もつれ光源の開発は、量子情報通信分野における重要な課題とされている。
【0016】
上述した非特許文献2に開示された偏波量子もつれ光源においては、シグナル光、アイドラー光は同じ偏波状態のペアとして発生している状態なので、式(5-a)及び式(5-b)で表されるいずれかの状態を実現可能である。
【0017】
一方、上述した非特許文献3に開示されている偏波量子もつれ光子対生成の手法によれば、シグナル光、アイドラー光の相関光子対は互いに直交した偏波状態で生成されるので、式(5-c)及び式(5-d)で表されるいずれかの状態を実現可能である。
【0018】
しかしながら、これまで同一の装置によって式(5-a)、式(5-b)、式(5-c)、式(5-d)で表される4つのベル状態のいずれをも選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対出力光源、すなわち偏波量子もつれ光子対発生装置は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この出願の発明者は、非線形光学媒質を備えるループ光路に、励起光を入力し、時計回り及び反時計回りに相関光子対を発生させて、このループ光路から出力される時計回りの相関光子対と、この相関光子対と偏波面が直交する反時計回りの相関光子対とを、波長分離フィルターで相関光子対のそれぞれの光子の波長成分を分離して取り出す構成を検討した。このような構成とすることによって、上述の式(5-a)及び式(5-b)で表されるいずれかの状態が実現可能であること、及び波長分離された波長成分のいずれか一方を1/2波長板を介して取り出す構成とすることによって、式(5-c)と式(5-d)で表されるいずれかの状態が実現可能であることに思い至った。すなわち、波長分離フィルターで相関光子対のそれぞれの光子の波長成分を分離して取り出す構成とし、一方の波長成分の光路中に、1/2波長板を設置することによって、4つのベル状態の全てを選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対発生装置を実現させることが可能であることに思い至った。
【0020】
そして、この出願の発明者が鋭意研究を行った結果、4つのベル状態の全てを具体的に実現するには、さらにループ光路中に設置する偏波面及び光位相調整部によって、偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによって実現可能であることを確かめた。
【0021】
また、ループ光路中に偏波面を回転する機能部分及び偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整する複屈折媒体を工夫して配置し、この複屈折媒体によって偏波面が直交する相関光子対間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによっても、4つのベル状態の全てを選択して実現することが可能であることを確かめた。
【0022】
また、ループ光路外の、後述するように45度偏波の励起光がループ光路に入力されるまでの光路に、45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する複屈折媒体を工夫して配置し、この複屈折媒体によって偏波面が直交する励起光間の光位相差を調整することとし、このループ光路外に配置する、励起光をこのループ光路に入力しこのループ光路中で生成される相関光子対を出力する機能部分の構成及び配置方法を工夫することによっても、4つのベル状態の全てを選択して実現することが可能であることを確かめた。
【0023】
したがって、この発明の目的は、簡便な構成の装置であって、4つのベル状態の全てを選択して実現可能とする偏波量子もつれ光子対発生装置を提供することにある。
【0024】
そこで、この発明の要旨によれば、以下の構成の偏波量子もつれ光子対発生装置が提供される。
【0025】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と光分岐入出力部とこの光分岐入出力部の後段に配置される1/2波長板とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0026】
ループ光路中には、非線形光学媒質と、このループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、この非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する偏波面及び光位相調整部とが配置されている。
【0027】
光分岐入出力部は、ループ光路に励起光を入力し、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。
【0028】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている。
【0029】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0030】
ループ光路を、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、非線形光学媒質と偏波面及び光位相調整部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。
【0031】
光分岐入出力部の出力端は、偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、励起光がこの光分岐入出力部の入力端から入力されてこの光分岐入出力部を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。
【0032】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と入力部と光分岐入出力部とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0033】
ループ光路中には、第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とが直列に配置されている。
【0034】
入力部は、励起光を入力させる部分である。そして、光分岐入出力部は、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて非線形光学媒質中で発生するループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。
【0035】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が通過する光路中に第1の1/2波長板が配置されている。
【0036】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0037】
ループ光路を、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第2入出力端と第3入出力端とを、第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。そして、入力部を、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第1入出力端とする。偏波分離合成器の第4入出力端と光分岐入出力部の入力端とを接続する。
【0038】
第1非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子と第2の1/2波長板を備えて構成し、第2非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子と第3の1/2波長板を備えて構成する。
【0039】
また、励起光が偏波分離合成器の第1入出力端から入力されてこの偏波分離合成器を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。
【0040】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路と光分岐入出力部とこの光分岐入出力部の後段に配置される1/2波長板とを備える偏波量子もつれ光子対発生装置である。
【0041】
ループ光路中には、非線形光学媒質と、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光のいずれか一方と、またこの励起光に基づいて、この非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分のいずれか一方の偏波面を90度回転する90度偏波面回転部が配置されている。
【0042】
光分岐入出力部は、ループ光路に励起光を入力し、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対を、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する。また、励起光をループ光路に入力するまでのいずれかの光路に、後述する45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する複屈折媒体が配置されている。
【0043】
そして、光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている。
【0044】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、次のように構成するのが好適である。
【0045】
ループ光路を、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、非線形光学媒質と90度偏波面回転部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成する。
【0046】
光分岐入出力部の出力端は、偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、励起光がこの光分岐入出力部の入力端から入力されてこの光分岐入出力部を介して偏波分離合成器の第1入出力端からループ光路に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とする。また45度偏波の励起光の直交する偏波面間の光位相差を調整する上述の複屈折媒体は、上述の光分岐入出力部の入力端に配置される。また、光分岐入出力部の出力端と偏波分離合成器の第1入出力端を接続する箇所に配置しても良い。いずれにしろ、励起光が45度偏光の励起光となった後にループ光路に入力されるまでに経過するいずれかの光路に配置する。
【発明の効果】
【0047】
この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0048】
偏波面及び光位相調整部によって、後述するように時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光と、反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光の偏波面とが互いに直交する状態となる。また、偏波面及び光位相調整部によって、ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りをする光成分との間の位相差が調整される。この位相差の調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【0049】
この発明の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0050】
第1非相反偏波面変換部と第2非相反偏波面変換部とによって、時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光と、反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光の偏波面とが互いに直交する状態となる。また、複屈折媒体によって、後述するようにループ光路を時計回りする光成分と反時計回りをする光成分との間の位相差が調整される。この位相差の調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【0051】
この発明の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、ループ光路にこのループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光に基づいて、このループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光が、このループ光路中に配置された非線形光学媒質によって発生する。
【0052】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、光分岐入出力部を経過しループ光路に励起光が入力される光路に複屈折媒体が配置される。したがって、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と異なり、光子対は複屈折媒体を経過しない。一方、横偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相と、縦偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相は、複屈折媒体で生じるリタデーションに応じて異なる。このリタデーションの調整を行うこと、及び光分岐入出力部から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に1/2波長板を配置することによって、後述するように式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態のいずれをも選択して実現される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図2】偏波面及び光位相調整部の構成及びその機能についての説明に供する図である。
【図3】第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部の構成及びその機能についての説明に供する図である。
【図4】1/2波長板の光学軸の方向をどのように設定して当該1/2波長板を配置するかについての説明に供する図であり、(A)は式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の、(B)は式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の説明に供する図である。
【図5】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例の概略的ブロック構成図である。
【図6】この発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例の概略的ブロック構成図である。
【図7】この発明の実施形態の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図8】第1非相反偏波面変換部の概略的構成及びその動作の説明に供する図である。
【図9】第2非相反偏波面変換部の概略的構成及びその動作の説明に供する図である。
【図10】この発明の実施形態の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置の概略的ブロック構成図である。
【図11】励起光がループ光路に入力されるまでのいずれかの光路に挿入される複屈折媒体の光学軸と励起光の偏波方向との関係の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図1〜図9を参照してこの発明の実施形態につき説明する。以下の説明において、特定の素子及び動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子及び動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、図1及び図5〜図7は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。
【0055】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図1を参照してこの発明の実施形態の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0056】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、偏波分離合成器101とその2つの入出力端とを含んで構成されるサニャック型干渉計のループ光路20と、励起光をループ光路20に入力し、またこのループ光路20から出力される偏波量子もつれ光子対波長成分を空間分離して出力する光分岐入出力部10を備えている。
【0057】
ループ光路20は、非線形光学媒質102と偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103とが光ファイバーで直列に配置接続されており、この光ファイバーの両端を、第1入出力端101-1、第2入出力端101-2、及び第3入出力端101-3を備える偏波分離合成器101の第2入出力端101-2及び第3入出力端10-3に接続することによって構成されている。
【0058】
光分岐入出力部10は、第1入出力端105-1、第2入出力端105-2及び第3入出力端105-3を備えるバンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルター107を備えて構成されている。波長λpである励起光は第1入出力端105-1からバンドパス光フィルター105に入力され、このバンドパス光フィルター105を介して偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からループ光路20に入力される。
【0059】
光分岐入出力部10を介してループ光路20に、このループ光路20を時計回り及び反時計回りに伝播するように励起光が入力されると、この励起光に基づく非線形光学媒質102中で非線形光学効果によって、ループ光路20を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対が生成される。この相関光子対は、ループ光路20を構成する偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されて、バンドパス光フィルター105の、第2入出力端105-2からバンドパス光フィルター105に入力され、第3入出力端105-3から光分岐入出力部10が備えるローパス光フィルター106を介してWDMフィルター107に入力される。WDMフィルター107に入力されたシグナル光及びアイドラー光からなる相関光子対は、WDMフィルター107によって、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力される。
【0060】
ローパス光フィルター106は、後述するように、非線形光学媒質102で発生したSHG光の波長成分(λp/2)を除去する働きをする。
【0061】
WDMフィルター107から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が出力される光路中に、通過する光子の偏光方向を90度回転させる1/2波長板108が配置されている。図1に示す装置では、アイドラー光波長成分が出力される光路中に1/2波長板108が配置されているが、シグナル光波長成分が出力される光路中に1/2波長板108が配置される構成としてもよい。
【0062】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、好ましくは偏波面保存光学系で構成するのがよい。その上で、ループ光路20を構成する偏波分離合成器101、非線形光学媒質102、90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104等の光学軸の関係は後述する特別の配慮を以って規定されている。
【0063】
また、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、各光学部品を光結合レンズによって空間的に結合する構成としてもよい。また、偏波面保存光ファイバーで各光学部品を結合する構成としてもよい。いずれにしても、この装置は、シグナル光、アイドラー光が最終的に空間分離出力される出力端に至るまで、偏波面保存光学系で構成するのが望ましい。
【0064】
ただし、偏波面保存光ファイバーの代わりに偏波面が保存されることが補償されていない通常の光ファイバーを用いて構成する場合であっても、適宜偏波面コントローラー等の付加光学部品を用いることによって、擬似的に偏波面保存光学系を構成することは可能である。
【0065】
励起光波長を、発生させる偏波量子もつれ光子対の波長の近傍波長であるλpとする。すなわち、発生させる偏波量子もつれ光子対の波長帯域が1550 nmであるならば、励起光波長λpの値は1550 nmの近傍の値に設定する。
【0066】
非線形光学媒質102は、PPLN等の2次非線形光学効果を効果的に発現する非線形光学媒質、もしくは光ファイバー等の3次非線形光学効果を効果的に発現する非線形光学媒質とする。いずれにしても励起光によってパラメトリック蛍光を発生する非線形光学媒質を採用する。
【0067】
非線形光学媒質102に2次非線形光学媒質を採用した場合、カスケードSHG/SPDC過程によって相関光子対を発生させることが可能である(非特許文献1参照)。すなわち、波長λpの励起光を用いると、2次非線形光学媒質中で波長λp/2のSHG光が発生し、このSHG光を種光としたSPDC過程によって、波長λsのシグナル光及び波長λiのアイドラー光の相関光子対が同時に空間的に同一箇所で、すなわち同時空間的に発生する。
【0068】
一方、非線形光学媒質102に3次非線形光学媒質を採用した場合、SFWM過程によって相関光子対が発生する。すなわち、波長λpの励起光によって、SFWM過程によって波長λsのシグナル光及び波長λiのアイドラー光の相関光子対が同時空間的に発生する。
【0069】
2次非線形光学媒質あるいは3次非線形光学媒質のいずれのパラメトリック蛍光過程を利用するにせよ、励起光、シグナル光、アイドラー光の波長であるλp、λs、λiは、次式(6)で与えられるエネルギー保存則に相当する関係を満足する。ここで、λp、λs、λiは、いずれも真空中における波長である。
【0070】
2/λp=1/λs+1/λi (6)
ただし、λs≠λp、λi≠λpであるとする。
【0071】
バンドパス光フィルター105では、第1入出力端105-1から入力される入力光(波長λpの励起光)は、このバンドパス光フィルター105の透過波長である波長λpの成分が透過して第2入出力端105-2から出力されて偏波分離合成器101の第1入出力端101−1に入力される。
【0072】
一方、ループ光路20から出力される、すなわち偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されバンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2に入力される入力光のうち、波長がλpの近傍の波長成分(励起光成分)のみが選択的にバンドパス光フィルター105を透過し、第1入出力端105-1から出力される。この透過される波長成分以外の波長成分、すなわちバンドパス光フィルター105の反射成分のうち、シグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分を含む波長成分は、第3入出力端105-3から出力されてローパス光フィルター106を介してWDMフィルター107に入力される。
【0073】
バンドパス光フィルター105には、誘電体多層膜を利用した光学フィルターの一種で、現在バンドパス光フィルターとして市販されている光学フィルターを適宜利用できる。また、いわゆるAWG(Arrayed waveguide grating)型のWDMフィルターを適宜利用することもできる。
【0074】
偏波分離合成器101は、バンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2と結合する第1入出力端101-1と、第1入出力端101-1の入力光を直交した偏波成分、すなわちp偏波成分とs偏波成分に分離してそれぞれ出力するための第2入出力端101-2と第3入出力端101-3とを備えている。このような偏波分離合成器101には、例えば市販されている偏光ビームスプリッタから適宜選択して利用することができる。あるいはまた、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを適宜利用することもできる。
【0075】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端101-2から出力され、第1入出力端101-1から入力されたs偏波成分は、第3入出力端101-3から出力される。また、第2入出力端101-2から入力されたp偏波成分は、第1入出力端101-1から出力され、第3入出力端101-3から入力されたs偏波成分は第1入出力端101-1から出力される。
【0076】
偏波分離合成器101の第2入出力端101-2には非線形光学媒質が光ファイバーによって接続されている。一方、第3入出力端101-3には90度偏波面回転部103が光ファイバーによって接続されている。
【0077】
波長λpの励起光は、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1から入力され、第2入出力端105-2から出力される。その後、波長λpの励起光は、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へと入力され、p偏波成分とs偏波成分とに分離され、それぞれ偏波分離合成器101の第2入出力端101-2、第3入出力端101-3から出力される。
【0078】
上述の偏波分離された励起光のp偏波成分とs偏波成分とは、同一強度でなければならない。そのために、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力されるときの励起光は、p偏波成分とs偏波成分の強度比が1:1であるように偏波調整しておく。
【0079】
偏波分離合成器101におけるp偏波方向もしくはs偏波方向から45度傾いた直線偏波となるように調整するには、例えば、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1の手前に偏波面コントローラーを用意し、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力されるときの励起光の偏波状態を、偏波分離合成器101におけるp偏波方向もしくはs偏波方向から45度傾いた直線偏波となるように調整すればよい。このように強度比が調整された励起光を、以後45度偏波の励起光ということもある。
【0080】
90度偏波面回転部103は、直線偏波光に対してその偏波面を90度回転する機能を有する。すなわち、直線偏波光である励起光、シグナル光、アイドラー光の偏波面を90度回転する。90度偏波面回転部103に利用して好適な素子の一例は、1/2波長板である。以後、特に断らない限り1/2波長板という場合は、波長λpの光に対する1/2波長板を意味する。
【0081】
また、90度偏波面回転部103の好適な構成例として、以下のような手法で形成される融着接続部としてもよい。すなわち、ループ光路20として、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器101の第2入出力端101-2及び第3入出力端101-3を、非線形光学媒質102と偏波面及び光位相調整部104とを直列に配置して接続する偏波面保存光ファイバーの両端とを結んで構成させた光モジュール構成の部品を採用し、偏波分離合成器101の第3入出力端101-3と偏波面及び光位相調整部104とを結ぶ偏波面保存光ファイバーの途中箇所を、偏波面保存光ファイバーの互いに直交する光学軸(進相軸と遅相軸)を90度回転させて融着接続することで90度偏波面回転部103を形成することができる。
【0082】
偏波面及び光位相調整部104の構成及びその機能について図2を参照して説明する。偏波面及び光位相調整部104は、図1に示したように、90度偏波面回転部103と非線形光学媒質102との間に設置される。
【0083】
偏波面及び光位相調整部104は、直線偏波光の偏波面を+45度回転する第1ファラデー回転子278、光学軸X、Yを有する複屈折媒体282、直線偏波光の偏波面を-45度回転する第2ファラデー回転子280をこの順序で直列に配置して構成される。
【0084】
偏波面及び光位相調整部104の動作は以下のとおりである。
【0085】
図2で時計回り成分として示した方向に光が伝播する場合、すなわち、p偏波の光が偏波面及び光位相調整部104の第2ファラデー回転子280側から入力され、第1ファラデー回転子278側から出力されるときの動作を説明する。p偏波の光は、第2ファラデー回転子280を通過して、偏波方向が-45度回転する。偏波回転された後の偏波方向が複屈折媒体282の光学軸方向の一つ(図2ではY軸)と一致するように、複屈折媒体282を配置する。この光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282のY軸と平行な直線偏波として通過した後、第1ファラデー回転子278に入力される。そして、第1ファラデー回転子278において、+45度偏波回転される。その結果、この光は、再びp偏波の光に戻って偏波面及び光位相調整部104から出力される。
【0086】
次に、図2で反時計回り成分として示した方向に光が伝播する場合、すなわち、p偏波の光が偏波面及び光位相調整部104の第1ファラデー回転子278側から入力され、第2ファラデー回転子280側から出力されるときの動作を説明する。このp偏波の光は、第1ファラデー回転子278を通過して、偏波方向が+45度回転する。このとき、偏波回転された光の偏波方向は、複屈折媒体282のX軸の方向と一致する。したがって、この光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282のX軸と平行な直線偏波として通過する。その後、第2ファラデー回転子280に入力される。そして、第2ファラデー回転子280において、-45度偏波回転される。その結果、この光は、再びp偏波光に戻って偏波面及び光位相調整部104から出力される。
【0087】
すなわち、偏波面及び光位相調整部104の図2に示す左右から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部104の存在にもかかわらず、p偏波光として偏波面及び光位相調整部104から出力される。一方、偏波面及び光位相調整部104に図2に示す左右から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部104内に配置された複屈折媒体282を、互いに直交する光学軸(X軸及びY軸)に平行な直線偏波の状態で通過する。そのため、図2に示す左右から入力される両光間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0088】
すなわち、偏波面及び光位相調整部104をループ光路20内に挿入することにより、ループ光路20内を時計回り及び反時計回りに伝播する光成分間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差を生じさせることができる。
【0089】
複屈折媒体282としては、偏波面保存光ファイバーを利用することができる。また、1軸性もしくは2軸性の複屈折を有する光学結晶を利用してもよい。いずれの場合においても、当該複屈折媒体の長さを調整することによって生じさせる光位相差の量を調整できる。あるいはまた、生じさせるべき光位相差量を生じさせるために必要とされる長さにほぼ等しく調整された複屈折媒体を用意して、この複屈折媒体の温度を制御することによって正確に生じさせるべき光位相差を生じさせることができるように制御する手法を採用しても良い。
【0090】
一方、複屈折媒体の好適例としてバビネソレイユ補償板を用いることもできる。この場合、光位相差量を広範囲に変化させることができ、この発明の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の性能を最大限実現することが可能となる。
【0091】
また、偏波面及び光位相調整部104において、第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部を利用することによって、偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103の機能を一体化することが可能である。すなわち、このように構成される偏波面及び光位相調整部を偏波面及び光位相調整部104の代わりに利用することによって、90度偏波面回転部103が不要となる。以後、第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部を、偏波面及び光位相調整部109と記載する。
【0092】
偏波面及び光位相調整部104及び109のいずれも、ループ光路に入力される励起光に基づいて非線形光学媒質中で発生しこのループ光路を伝播するシグナル光及びアイドラー光の、ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する機能を有している。
【0093】
図3を参照して、第1ファラデー回転子の代わりに直線偏波光の偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子を使用する構成とした偏波面及び光位相調整部の構成とその機能について説明する。
【0094】
図3に示すように、偏波面及び光位相調整部109の第2ファラデー回転子280側から入力されたp偏波光は、偏波面及び光位相調整部109から出力されるときs偏波光に変換される。一方、第3ファラデー回転子284側から入力されたs偏波光は、偏波面及び光位相調整部109から出力されるときにp偏波光に変換される。また、図3に示す左右から入力される両光は、複屈折媒体282を当該複屈折媒体282の互いに直交する光学軸(X軸、Y軸)に平行な直線偏波光の状態で通過する。そのため、両光間に複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0095】
この偏波面及び光位相調整部109によって得られる効果は、上述した偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103の2つの機能部分で実現された効果と等価である。したがって、偏波面及び光位相調整部104と90度偏波面回転部103とを利用する代わりに、偏波面及び光位相調整部109のみを利用しても同一の機能を有する偏波量子もつれ光子対発生装置を形成することが可能である。
【0096】
なお、以上説明した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の実施の形態においては、非線形光学媒質102に入出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光は、同一偏波方向の直線偏波光であると規定した。非線形光学媒質102に入出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光を同一偏波方向の直線偏波光となるようにするには、例えば、非線形光学媒質102としてPPLN結晶を用い、PPLN結晶の2次非線形光学定数のテンソル成分の内のd33成分を、SHGの発現、SPDCの発現に利用し、PPLN結晶を構成する非線形光学結晶のz軸方向に偏波した励起光を入力させる構成とすることによって実現される。
【0097】
ローパス光フィルター106は、バンドパス光フィルター105の第3入出力端子105-3から出力される出力光の内、非線形光学媒質102で発生したSHG光の波長成分(λp/2)を除去する働きをする。ローパス光フィルター106の透過光の波長成分は、励起光波長成分(λp)の残留光、シグナル光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)である。なお、非線形光学媒質102として3次非線形光学媒質を利用した場合、SHG光が発生しないためローパス光フィルター106は不要である。
【0098】
WDMフィルター107は、ローパス光フィルター106の透過光の内、少なくともシグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とを別々の光路に切り分け、シグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とに空間分離された状態で出力する。このようなWDMフィルター107としては、少なくともシグナル光波長成分(λs)とアイドラー光波長成分(λi)とを透過波長成分として有する、AWG型のWDMフィルター等を適宜利用することができる。
【0099】
WDMフィルター107を通過して出力されたシグナル光あるいはアイドラー光が通過するいずれか一方の光路中に1/2波長板108が配置される。図1ではアイドラー光が通過する光路中に1/2波長板108が配置されているが、シグナル光が通過する光路中に1/2波長板108を配置しても良い。
【0100】
図4(A)及び(B)を参照して、1/2波長板108の光学軸の方向をどのように設定して当該1/2波長板108を配置するかについて説明する。図4(A)は式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の、図4(B)は式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合の配置方法の説明に供する図である。
【0101】
式(5-a)及び式(5-b)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合は、図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと一致するように配置する。また、式(5-c)及び式(5-d)で与えられるベル状態の光子対を生成する場合は、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと45度の角度を為すように配置する。そして、図4(A)及び図4(B)に示すどちらの配置も任意に選択できるようになっている。そのため、1/2波長板108の好適な一例は、1/2波長板108の光学軸方向を任意に回転させて設定できる1/2波長板モジュールである。
【0102】
WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過した、シグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分は、光ファイバー通信網等の光伝送路を伝播して、それぞれ受信者A及び受信者Bに送信される。受信者A及び受信者Bは同時計測を実行することで、量子情報通信技術に基づく情報伝達を実行する。
【0103】
偏波分離合成器101、90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104、偏波面及び光位相調整部109としては、波長λp近傍(λs及びλiを含む)でそれぞれ動作を保証できる素子、あるいは装置を利用すればよい。すなわち、波長λp/2においては、これら素子あるいは装置の動作は担保されている必要はない。λpが1550 nmであれば、1550 nm帯用の偏波分離合成器、ファラデー回転子、波長板等として市販されている光学部品を適宜利用することが可能であって、非特許文献2に記載されているようなλp、λp/2の両波長で正常動作する特殊な偏波分離合成器を利用する必要はない。
【0104】
また、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置を作製するには、ループ光路20、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過したシグナル光、アイドラー光の偏波保存が成されるのが望ましい。ゆえに、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び1/2波長板108としては、空間結合系または偏波保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用するのが望ましい。
【0105】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて詳細に説明する。
【0106】
非線形光学媒質102として2次非線形光学媒質であるPPLN結晶を使い、パラメトリック蛍光生成過程として非特許文献1に開示されているカスケードSHG/SPDC過程を利用して、また2次非線形光学定数のテンソル成分d33によるSHG発現、SPDC発現を利用するものとして、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の動作を説明する。
【0107】
バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1へ波長λpの励起光が入力され、この励起光はその後偏波分離合成器101の第1入出力端101-1に入力される。このとき、励起光は45度偏波の状態であるように適宜偏波調整されていることにより、偏波分離合成器101の第2入出力端101-2、第3入出力端101-3から、それぞれp偏波、s偏波で、同一強度の励起光が出力される。そして、p偏波方向と、PPLN結晶のz軸方向が一致するように、PPLN結晶を配置する。
【0108】
ループ光路20を時計回りに伝播し、PPLN結晶に入力されるときの励起光はp偏波であり、このとき、非特許文献1に開示されているように、PPLN結晶内でSHG光が発生し、さらにこのSHG光を種光としてSPDC過程により、PPLN結晶内でシグナル光、アイドラー光の相関光子対が発生する。これらの光は全てp偏波である。
【0109】
PPLN結晶から出力される励起光、SHG光、シグナル光、アイドラー光(これらの光は全て同一の偏波状態である)は、次に偏波面及び光位相調整部104を通過する。この際、波長がλp近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光は、p偏波のまま偏波面及び光位相調整部104から出力される。そして、複屈折結晶282を複屈折結晶282のY軸方向の直線偏波として通過し、Y軸方向の偏波成分に対して光位相が生じる。一方、SHG光については、偏波面及び光位相調整部104の光学系はこのSHG光の波長に対しては最適化されていないので、どのような偏波状態で出力されるのか不確定な要素を含むが、これについては最終的にローパス光フィルター106によってSHG光成分が除去されるため問題とならない。
【0110】
次に、励起光、シグナル光、アイドラー光は、90度偏波面回転部103を通過して偏波方向が90度回転してs偏波となって偏波分離合成器101の第3入出力端101-3に入力され、その結果、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からs偏波として出力される。
【0111】
つまり、ループ光路20を時計回りに伝播する励起光によって、PPLN結晶内でSHG過程とSPDC過程とがともに発現することにより、s偏波のシグナル光、アイドラー光の相関光子対が、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される。
【0112】
一方、ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光は、偏波分離合成器101の第3入出力端101-3から出力される段階においてはs偏波であるが、90度偏波面回転部103を通過して偏波方向が90度回転してp偏波となる。その後この励起光は、偏波面及び光位相調整部104を通過する。この際、波長がλp近傍である励起光は、p偏波のまま偏波面及び光位相調整部104から出力される。ただしこの際、複屈折結晶282を複屈折結晶282のX軸方向の直線偏波として通過し、X軸方向の偏波成分に対して光位相が生じる。
【0113】
その後この励起光がPPLN結晶に入力するとき、励起光の偏波はPPLN結晶のz軸方法と一致するp偏波である。すると、PPLN結晶内でSHG光が発生し、さらにこのSHG光を種光としてSPDC過程により、PPLN結晶内でシグナル光、アイドラー光の相関光子対が発生する。これらは全てp偏波である。
【0114】
次に、励起光、シグナル光、アイドラー光は、p偏波として偏波分離合成器101の第2入出力端101-2に入力され、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1からp偏波として出力される。つまり、ループ光路を反時計回りに伝播する励起光によって、p偏波のシグナル光、アイドラー光の相関光子対が、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される。
【0115】
偏波分離合成器101、バンドパス光フィルター105等の光学部品の光損失を無視すると、PPLN結晶に入力されるループ光路20を時計回りする励起光と、ループ光路20を反時計回りする励起光の強度は等しく、また偏波方向も等しいから、PPLN結晶が中心対称な構造であればPPLN結晶内で発生するSPDC相関光子の生成確率は、時計回り及び反時計回りの励起光に対して等しい。
【0116】
したがって、励起光強度が十分に弱いので、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されるシグナル光とアイドラー光の相関光子対は、ループ光路20を時計回りに伝播する励起光に基づいて発生したs偏波の相関光子対か、ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光に基づいて発生したp偏波の相関光子対のどちらか一方であることになる。すなわち、偏波量子もつれ光子対発生装置から出力される相関光子対の状態は、ループ光路20を時計回りに伝播する相関光子対と、反時計回りに伝播し時計回り成分とは偏波直交した相関光子対との重ね合わせの状態となる。つまり、偏波量子もつれ光子対発生装置から偏波量子もつれ光子対が生成される。
【0117】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力された励起光、シグナル光、アイドラー光は、その後バンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2に入力されて、シグナル光、アイドラー光は第3入出力端105-3から出力される。また、励起光はその多くが(理想的には全てが)第1入出力端105-1から出力される。一部の残存光成分は第3入出力端105-3から出力される。
【0118】
バンドパス光フィルター105の第3入出力端105-3から出力される出力光は、ローパス光フィルター106を通過することで、波長λp/2のSHG光成分が除去される。
【0119】
次に、WDMフィルター107によって、シグナル光波長成分(λs)、アイドラー光波長成分(λi)を別々の光路に切り分けて出力する。それぞれの光路に残存励起光波長成分(λp)が混入しないように、WDMフィルター107には十分な波長分離能力が必要となる。このようなWDMフィルターとしては、少なくとも、シグナル光波長成分、アイドラー光波長成分を透過波長成分として有する、いわゆるAWG型のWDMフィルター等を適宜利用することができる。また、ブラッグ反射波長がλpである回折格子型のフィルター、例えばファイバーブラッググレーティング等と組み合わせて励起光波長成分を十分除去できる構造とすることもできる。
【0120】
既に説明したように、WDMフィルター107を通過したシグナル光、アイドラー光が通過するいずれか一方の光路に1/2波長板を配置するが、この1/2波長板の光学軸の方向は図4(A)及び(B)に示すように配置されている。
【0121】
すなわち、図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと一致するように配置されている。または、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸が、p偏波方向、s偏波方向のそれぞれと45度の角度を成すように配置されている。そして、これらの配置の一方(図4(A)に示す配置、あるいは図4(B)に示す配置のいずれか一方)を任意に選択できるように構成されている。
【0122】
WDMフィルター107及び1/2波長板108を通過したシグナル光波長成分、アイドラー光波長成分は、光ファイバー通信網等の光伝送路を通過した後、それぞれ受信者A、受信者Bに送信される。受信者A、Bは同時計測等を実行することで、量子情報通信技術に基づく情報伝達等を実行する。
【0123】
この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置を好適に動作させるには、ループ光路20内やバンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び、1/2波長板108を通過したシグナル光、アイドラー光の偏波保存が保証されていることが必要である。ゆえに、バンドパス光フィルター105、ローパス光フィルター106、WDMフィルター107及び、1/2波長板108としては、既に説明したように、空間光学系又は偏波面保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用するのが望ましい。
【0124】
次に、この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置が如何にして4つのベル状態を実現できるのかについて説明する。
【0125】
まず、簡単のために、1/2波長板108がない場合について説明する。
【0126】
この発明の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、WDMフィルター107のシグナル光及びアイドラー光の2つの出力端において、同一偏波方向のシグナル光及びアイドラー光の光子対を発生させるために、その実現し得るベル状態は、式(5-a)又は(5-b)で与えられるいずれかである。
【0127】
このときの偏波量子もつれ光子対の一般的な状態は、次式(7)で与えられる。
α|H>s|H>i+ βejφ|V>s|V>i (7)
ただし、jは虚数単位であり、α、βは|α|2 +|β|2 = 1を満たす。
【0128】
|α|と|β|はそれぞれ横偏波(H)と縦偏波(V)の光子対が発生する確率を表している。最大もつれ状態は、|α|=|β|= 2-1/2で、かつφ=0またはπのときに実現される。以下、横偏波(H)をH偏波、縦偏波(V)をV偏波と書くこともある。
【0129】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、空間光学系又は偏波面保存光ファイバーを利用した光モジュールを利用して形成されている。それゆえ、横偏波(H)と縦偏波(V)のそれぞれの偏波方向は、p偏波とs偏波のそれぞれの偏波方向のいずれかと合致している。
【0130】
ここでは、p偏波と横偏波(H)、s偏波と縦偏波(V)の偏波方向がそれぞれ合致しているものとする。すなわち、ループ光路20の時計回りに伝播する励起光からは、V偏波の相関光子対|V>s|V>iが、ループ光路20の反時計回りに伝播する励起光からは、H偏波の相関光子対|H>s|H>iが、それぞれWDMフィルター107の異なる出力端から出力される。
【0131】
ここで、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ45度偏波の励起光を入力させたとき、第2入出力端101-2及び第3入出力端101-3からそれぞれ出力されるp偏波成分とs偏波成分の強度が等しくなるように(強度比が1:1になるように)偏波分離合成器101が偏波調整され、かつ、ループ光路20における光損失が無視できるほど小さく調整されていれば、H偏波とV偏波の光子対の発生確率は等しく、|α|=|β|= 2-1/2が実現される。
【0132】
φは縦偏波(V)の光子対と横偏波(H)の光子対との光位相差を表すパラメータである。最大もつれを実現するには、φ=0あるいはφ=πとなるように光の光路長を設定すればよい。そのためには、WDMフィルター107の2つの出力端(V偏波の相関光子対が出力される出力端とH偏波の相関光子対が出力される出力端)にいたるまでに、時計回り及び反時計回りにループ光路を伝播する励起光、シグナル光、アイドラー光が伝播する光路長が、波長以下の精度で調整されている必要がある。
【0133】
これを実現するには、空間光学系の空間光路長や、装置を構成するのに使用される偏波面保存光ファイバーの長さを波長以下の精度で調整・制御する必要があり、現実にはこの調整・制御は非常に難しい。
【0134】
そこで、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、偏波面及び光位相調整部104あるいは109を使用することによって、励起光、シグナル光、アイドラー光に対する光路長を波長以下の精度で調整・制御することが可能とされている。以下、偏波面及び光位相調整部104を使用することとして上述の光路長の調整・制御について説明する。
【0135】
V偏波の相関光子対|V>s|V>iが生成される場合(ループ光路20を時計回りに伝播する励起光によって生成される)、偏波面及び光位相調整部104による光位相変化は、偏波面及び光位相調整部104を第2ファラデー回転子280から入力されて通過するp偏波のシグナル光、アイドラー光に対する位相変化の和で考えればよい。このとき、シグナル光、アイドラー光は、複屈折媒体282をY軸方向の直線偏波として通過する。
【0136】
一方、H偏波の相関光子対|H>s|H>iが生成される場合(ループ光路20を反時計回りに伝播する励起光によって生成される)、偏波面及び光位相調整部104による光位相変化は、偏波面及び光位相調整部104を第1ファラデー回転子278から入力されて通過するp偏波の励起光に対する位相変化を2倍して考えればよい。このとき励起光は、複屈折媒体282をX軸方向の直線偏波として通過する。
【0137】
したがって、偏波面及び光位相調整部104の効果を含んだφは一般的に次式(8)で与えられるものと考えればよい。
φ=φ0+2[(2πnX/λp)L]−[(2πnY/λs)L]−[(2πnY/λi)L]
=φ0+2[(2πΔn/λp)L] (8)
ここで、nX、nYはそれぞれ複屈折媒体282のX軸方向Y軸方向の直線偏波に対する屈折率、Lは複屈折媒体282の厚さであり、φ0は偏波面及び光位相調整部104以外の光路で生じる縦偏波の光子対と横偏波の光子対との光位相差の総量である。これは、偏波分離合成器101、偏波面及び光位相調整部104などの光部品やそれらを接続する空間光学系あるいは偏波面保存光ファイバーの複屈折や光路長差によって生じる光位相差の総量である。
【0138】
式(8)の2[(2πnX/λp)L]は、偏波面及び光位相調整部104を通過するp偏波の励起光に対する光位相変化の2倍を与え、[(2πnY/λs)L]及び[(2πnY/λi)L]がそれぞれ偏波面及び光位相調整部104を通過するp偏波のシグナル光、アイドラー光に対する光位相変化を与える。式(8)におけるΔn≡nX−nYは複屈折媒体282のリタデーションであり、バビネソレイユ補償板を用いた場合は重ね合わせられた2枚の結晶の厚さの差に相当する。
【0139】
式(8)で与えられるφを0となるようにLを設定すれば、式(5-a)で与えられるベル状態が実現でき、φ=πとなるようにLを設定すれば式(5-b)で与えられるベル状態が実現できる。複屈折媒体282としては、位相変化量[(2πΔn/λp)L]として0〜πの何れの値も連続的に実現できる可変式バビネソレイユ補償板を利用すれば、任意に与えられたφ0に対して、φ=0、φ=πの何れも実現することが可能である。すなわち、空間光学系の空間光路長や、装置を構成するために使用されている偏波面保存光ファイバーのファイバー長を高精度に調整・制御する必要がなく、式(5-a)及び式(5-b)で与えられるいずれのベル状態も実現することが可能である。
【0140】
次に、WDMフィルター107の後段に配置される1/2波長板108の機能について説明する。いま、WDMフィルター107から出力されたシグナル光と、1/2波長板108から出力されたアイドラー光との偏波関係と位相関係を考える。因みに図1では1/2波長板108が、アイドラー光が通過する光路中に配置されているが、シグナル光が通過する光路中に配置してもよい。
【0141】
図4(A)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸がp偏波方向(H偏波方向)、s偏波方向(V偏波方向)のそれぞれと一致する場合、アイドラー光の偏波状態はなんら変化しない。ゆえに、WDMフィルター107のシグナル光出力端と1/2波長板108のアイドラー光出力端に至るまでに時計回り及び反時計回りの励起光、シグナル光、アイドラー光が通過する光路の光路長差に相当する光位相差(φ0)を相殺し、かつ、0又はπの光位相差を加えた光位相差を偏波面及び光位相調整部104に与えてやれば、式(5-a)で与えられるベル状態及び式(5-b)で与えられるベル状態を実現することができる。
【0142】
一方、図4(B)に示すように、1/2波長板108の2つの光学軸がp偏波方向(H偏波方向)、s偏波方向(V偏波方向)のそれぞれと45度の角度を成すように配置すると、アイドラー光の偏波面は90度回転することとなる。すなわち、WDMフィルター107から出力されたシグナル光と1/2波長板108から出力されたアイドラー光の状態は、それぞれ偏波直交した偏波状態|H>s|V>i及び|V>s|H>iの重ね合わせで与えられる偏波もつれ状態となる。このとき、WDMフィルター107のシグナル光出力端と1/2波長板108のアイドラー光出力端に至るまでに時計回り及び反時計回りの励起光、シグナル光、アイドラー光が伝播する光路の光路長差に相当する光位相差(φ0)を相殺し、かつ、0又はπの光位相差を加えた光位相差を偏波面及び光位相調整部104によって与えてやれば、式(5-c)で与えられるベル状態及び式(5-d)で与えられるベル状態を実現することができる。
【0143】
すなわち、光学軸の方法を任意に回転させることができる(少なくとも図4(A)及び(B)に示す2つの状態を取れる)1/2波長板108を用い、また偏波面及び光位相調整部104によって適宜光位相補償を行えば、4つのベル状態(式(5-a)〜(5-d)で与えられるベル状態)のいずれも実現可能な偏波量子もつれ光子対発生措置が実現できる。
【0144】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置は、励起光や偏波量子もつれ光子対の入出力部分を構成する形態の相違に基づく変形例がある。以下でこの変形例を2つ、第1変形例及び第2変形例として説明する。
【0145】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例≫
図5を参照して、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第1変形例を説明する。図5に示す第1変形例では、光分岐入出力部を図1に示した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置とその構成が少し異なるので、光分岐入出力部12としてある。
【0146】
第1変形例は、図1に示した偏波量子もつれ光子対発生装置のバンドパス光フィルター105とWDMフィルター107の持つ役割を、1台のWDMフィルター107を用いて実現する構成例である。ここでは、WDMフィルター107として、AWG型のWDMフィルターを用いる。AWG型フィルターとして、シグナル光波長(λs)、アイドラー光波長(λi)、及び励起光波長(λp)の3波長を透過波長成分として有するAWG型フィルターを用いる。
【0147】
AWG型フィルターは、その透過波長に相当する波長の光を入力する、複数の透過光入出力ポートと、それぞれの透過光入出力ポートに入力された光を合波出力する共通入出力ポートを有する。逆に、共通入出力ポートに入力された光は、それぞれの波長に応じて分波され、それぞれの透過光波長に相当する透過光入出力ポートから分波して出力される。
【0148】
AWG型フィルターの上述の特性を利用して以下のような構成をとる。すなわち、励起光波長に相当する透過光入出力ポートへ励起光を入力し、共通入出力ポートからの出力光を偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へと入力し、図1に示した装置と同様に、非線形光学媒質102へと双方向に入力する。
【0149】
偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力される、ループ光路20からの出力光は、AWG型フィルターの共通入出力ポートへと入力され、シグナル光、アイドラー光がそれぞれ対応する透過光入出力ポートへと入力され、この段階で励起光波長成分は除去される。さらに、SHG光波長成分を除去するために、必要であればWDMフィルター107の共通入出力ポートと偏波分離合成器101の第1入出力端101-1との間にローパス光フィルター106を接続して、SHG光波長成分を除去する。
【0150】
≪第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例≫
図6を参照して、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の第2変形例を説明する。図6に示す第2変形例では、光分岐入出力部を図1に示した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置とその構成が少し異なるので、光分岐入出力部14としてある。
【0151】
第2変形例は、バンドパス光フィルター105を使用する代わりに、光サーキュレーター110を使用する。光サーキュレーター110の第1入出力端110-1から入力された励起光は、第2入出力端110-2から出力され、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1へ入力され、図1に示した装置と同様にして、非線形光学媒質102へと双方向に入力される。また偏波分離合成器101の第1入出力端101-1から出力されるループ光路20からの出力光は、光サーキュレーター110の第2入出力端110-2へと入力され、第3入出力端110-3から出力される。その後、図1に示した装置と同様に、ローパス光フィルター106とWDMフィルター107とを用いて、SHG光波長成分の除去と、シグナル光とアイドラー光の分離が実行される。
【0152】
≪第2の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図7を参照してこの発明の実施形態の第2の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0153】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の動作を基本とし、励起光と偏波量子もつれ光子対とを、偏波分離合成器のそれぞれ異なる入出力端を介して入出力するように構成されている。そのために、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で用いた90度偏波面回転部103、偏波面及び光位相調整部104の代わりに、ファラデー回転子と1/2波長板からなる光学部品ペア(非相反偏波面変換部)を2組と、複屈折媒体とを用いる。ここで、複屈折媒体は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で用いた複屈折媒体282と同等の素子を利用する。又、偏波分離合成器として4つの入出力端を有する偏波分離合成器を利用する。
【0154】
すなわち、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、ループ光路40と励起光を入力させる入力部と、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力する光分岐入出力部30とを備えて構成される。
【0155】
ループ光路40は、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器201の第2入出力端201-2と第3入出力端201-3とを、第1非相反偏波面変換部211と非線形光学媒質102と第2非相反偏波面変換部212と複屈折媒体213とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成される。入力部は、偏波分離合成器201の第1入出力端201-1である。
【0156】
偏波分離合成器201の第4入出力端201-4と光分岐入出力部30の入力端とが接続されており、第1非相反偏波面変換部211は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208を備えており、第2非相反偏波面変換部212は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210を備えている。
【0157】
励起光が偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から入力されてこの偏波分離合成器201を介して第1入出力端201-1からループ光路40に入力され、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分が、光分岐入出力部30の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている。
【0158】
また、光分岐入出力部30から空間分離されて出力されるシグナル光波長成分及びアイドラー光波長成分のいずれか一方が通過する光路中に第1の1/2波長板214が配置されている。
【0159】
第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208のペアで第1非相反偏波面変換部211を構成する。同様に、第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210のペアで第2非相反偏波面変換部212を構成する。
【0160】
第1ファラデー回転子207と第2ファラデー回転子209は、波長がλpの近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光に対して偏波面を-45度(反時計回りに45度)回転させる。また、第2の1/2波長板208と第3の1/2波長板210は、波長がλpの近傍である励起光、シグナル光、アイドラー光に対して1/2波長板として機能する。
【0161】
偏波分離合成器201は、4つの入出力端子201-1〜201-4を有する。第1入出力端201-1〜第3入出力端201-3の機能と役割は、上述した第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の偏波分離合成器101の3つの入出力端101-1〜101-3がもつ機能と役割と同一である。
【0162】
すなわち、第1入出力端201-1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端201-2から出力され、第1入出力端201-1から入力されたs偏波成分は、第3入出力端201-3から出力される。また、第2入出力端201-2から入力されたp偏波成分は第1入出力端201-1から出力され、第3入出力端201-3から入力されたs偏波成分は第1入出力端201-1から出力される。さらに、偏波分離合成器201においては、第2入出力端201-2から入力されたp偏波成分は第4入出力端201-4から出力され、第3入出力端201-3から入力されたs偏波成分は第4入出力端201-4から出力される。
【0163】
このような機能を満たす偏波分離合成器201としては、例えば市販の偏光ビームスプリッタの中から適宜選んで利用することができる。
【0164】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置は、偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から、45度偏波の励起光が入力される。この他、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置で利用されている光学部品と同一機能を有する第2の偏波量子もつれ光子対発生装置で利用される光学部品についての重複する説明を省略する。
【0165】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて詳細に説明する。
【0166】
上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様に、波長がλpであり45度偏光の励起光が偏波分離合成器201の第1入出力端201-1から入力され、同一強度のp偏波成分、s偏波成分に分離されて、それぞれ第2入出力端201-2、第3入出力端201-3から出力される。
【0167】
ここで、第1ファラデー回転子207、第2の1/2波長板208、第2ファラデー回転子209、及び第3の1/2波長板210の光学軸の向きと、第1非相反偏波面変換部211及び第2非相反偏波面変換部212の動作について図8及び図9を参照して説明する。図8は第1非相反偏波面変換部211の概略的構成を示し、この第1非相反偏波面変換部211を左右両方向に通過する光の偏波面の変化の様子の説明に供する図である。また、図9は第2非相反偏波面変換部212の概略的構成を示し、この第2非相反偏波面変換部212を左右両方向に通過する光の偏波面の変化の様子の説明に供する図である。
【0168】
図8に示すように、第1非相反偏波面変換部211において、第1ファラデー回転子207側あるいは第2の1/2波長板208側から、ある特定の偏波方向の直線偏波の励起光が入力される。この特定の偏波方向とは偏波分離合成器201におけるp偏波方向か、s偏波方向のどちらか一方に一致する。そして第2の1/2波長板208の光学軸は、特定の偏波方向(図8ではs偏波方向として図示されている)と22.5度の角度を成すように調整されている。図9に示すように、第2非相反偏波面変換部212における第3の1/2波長板210においても同様に、22.5度の角度を成すように調整されている。
【0169】
偏波分離合成器201の第3入出力端201-3からループ光路40に入力されこのループ光路40を反時計回りに伝播するs偏波の励起光は、第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208からなる第1非相反偏波面変換部211を通過する。このときの偏波の状態の変化について図8を参照して説明する。
【0170】
図8において、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3から出力された反時計回りに伝播するs偏波の励起光を図中上向きの矢印で示してある。この光が第1ファラデー回転子207を通過する。第1ファラデー回転子207において、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じるとすると、第1ファラデー回転子207の出力光の偏波方向は、左斜め上45度向きの矢印で表される。次に、この光が第2の1/2波長板208を通過する。このとき偏波方向は、第2の1/2波長板208の光学軸と22.5度の角度を成すため、第2の1/2波長板208から出力される励起光の偏波方向は、右向き矢印の方向で表すことができる。
【0171】
このことは、第2の1/2波長板208を通過して出力される励起光の偏光方向がp偏波方向となることを意味している。すなわち、第1非相反偏波面変換部211を第1ファラデー回転子207と第2の1/2波長板208の順序で通過した励起光は、偏波が90度回転される。この励起光は、非線形光学媒質102に入力され、励起光の偏波(p偏波)と同じ偏波のSHG光、シグナル光とアイドラー光との相関光子対が発生される。
【0172】
ループ光路40を反時計回りに伝播する励起光、SHG光、相関光子対は、次に第2非相反偏波面変換部212に入力される。このときの偏波状態の変化について図9を参照して説明する。
【0173】
図9に示すように、反時計回りに伝播するp偏波である励起光、相関光子対は、第2ファラデー回転子209を通過した後、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じて、右斜め上45度向きの矢印で表される偏波状態となる。次に、この光が第3の1/2波長板210を通過した結果、その偏波方向は上向き矢印、すなわちs偏波に変換される。
【0174】
その後、ループ光路40を反時計回りに伝播した励起光と相関光子対は、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2に入力され、偏波状態がs偏波であることから、第4入出力端201-4から出力される。すなわち、最初の励起光が入力された入出力端とは異なる入出力端から、励起光及び相関光子対が出力される。
【0175】
次に、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2から出力された、ループ光路40を時計回りに伝播するp偏波の励起光とこの励起光によって生じるループ光路40を時計回りに伝播する相関光子対について説明する。
【0176】
励起光は、第2非相反偏波面変換部212を通過する。このときの偏波の状態について図9を参照して説明する。図9に示すように、反時計回りに伝播するp偏波で入力された励起光は、第3の1/2波長板210を通過することで、図中左斜め上45度向きの矢印で表す偏波状態に変換される。次に、励起光は第2ファラデー回転子209を通過し、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じる。その結果図中左向きの矢印の偏波、すなわちp偏波となって第2非相反偏波面変換部212から出力される。
【0177】
この励起光は、p偏波として非線形光学媒質102に入力され、励起光の偏波(p偏波)と同じ偏波のSHG光、SPDC相関光子対を発生させる。ループ光路40を時計回りに伝播するSHG光、SPDC相関光子対は、次に第1非相反偏波面変換部211に入力される。このときの偏波状態の変化について図8を参照して説明する。
【0178】
図8に示すように、反時計回りに伝播するp偏波である励起光及びSPDC相関光子対は、まず第2の1/2波長板08を通過した結果、左斜め上45度向きの矢印で表される偏波に変換される。次に、第1ファラデー回転子207を通過した後、図中反時計回りに45度の偏波回転が生じて、図中左向きの矢印で表されるp偏波に変換される。
【0179】
その後、ループ光路40を時計回りに伝播してきた励起光と相関光子対は、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3に入力され、偏波状態がp偏波であることから、第4入出力端201-4から出力される。すなわち、最初の励起光が入力された入出力端とは異なる入出力端から、励起光及び相関光子対が出力される。そして出力されるこれらの励起光及び相関光子対は、ループ光路40を反時計回りに伝播してきた励起光及び相関光子対が出力される入出力端と同一であり、かつ、ループ光路40を反時計回りに伝播してきた励起光及び相関光子対とは偏波直交の関係となっている。すなわち、偏波分離合成器201の第4入出力端201-4から、偏波量子もつれ光子対が出力される。
【0180】
偏波分離合成器201の第4入出力端201-4から出力された偏波量子もつれ光子対は、その後、ローパス光フィルター106及びWDMフィルター107で余分なSHG光波長成分及び励起光波長成分が除去されて、シグナル光波長成分とアイドラー光波長成分に空間分離された状態で出力される。
【0181】
一方、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置で最大もつれ状態の偏波量子もつれ光子対を得るためには、φを0またはπに設定するための光位相補償装置をこの偏波量子もつれ光子対発生装置のいずれかの場所に挿入しなければならない。
【0182】
第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の偏波面及び光位相調整部104の動作として説明したように、偏波面及び光位相調整部104による光位相補償は上述の式(8)で与えられる。ループ光路を互いに逆行する励起光と相関光子対(シグナル光とアイドラー光)において、これらの偏波同士が直交する箇所に複屈折媒体を配置すれば、この複屈折媒体の複屈折に相当する量[(2πΔn/λp)L]だけの光位相補償ができる。
【0183】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置において、ループ光路40を互いに逆行する励起光と相関光子対の偏波が直交する箇所は、偏波分離合成器201の第3入出力端201-3と第1非相反偏波面変換部211を結合する箇所(図7にaと示す箇所)、偏波分離合成器201の第2入出力端201-2と第2非相反偏波面変換部212を結合する箇所(図7にbと示す箇所)、第2非相反偏波面変換部212内の第2ファラデー回転子209と第3の1/2波長板210の間の箇所(図7にcと示す箇所)である。
【0184】
ゆえに、図7にa〜cと示すいずれかの箇所に、複屈折媒体213を配置すれば、φを0あるいはπに設定することが可能となり、最大もつれ状態を実現することが可能となる。
【0185】
なお、励起光と相関光子対との偏波方向を考慮すれば、図7でaあるいはbと示す位置に複屈折媒体213を配置する場合には、複屈折媒体213の光学軸の方向をp偏波方向、s偏波方向と一致するように配置すればよい。一方、図7でcと示す位置に複屈折媒体213を配置する場合には、複屈折媒体213の光学軸の方向をp偏波方向、s偏波方向と45度の角度をなす方向と一致するように配置すればよい。
【0186】
また、WDMフィルター107を通過するアイドラー光(またはシグナル光)の光路中に第1の1/2波長板214を配置することで、アイドラー光(またはシグナル光)の偏波を90度回転することができるので、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様に、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によっても、式(5-a)〜式(5-d)で与えられるいずれのベル状態も実現することが可能となる。
【0187】
ただし、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と第2の偏波量子もつれ光子対発生装置とは、次のような相違がある。
【0188】
第2の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、励起光が元の励起光入力端に逆行して戻っていくことがない。それゆえに反射戻り光等による装置の不安定動作の懸念が小さい。反射戻り光の懸念を解消するためには、光アイソレーター等の光部品が必要となるが、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置はこのようなことを考慮しなくともよい。光アイソレーター等を利用すれば、装置製造コストが増大する上、光アイソレーター等の光素子を挿入することで、この光素子における光損失が発生し装置の性能を低下させるが、第2の偏波量子もつれ光子対発生装置にはこのような問題が生じない。
【0189】
≪第3の偏波量子もつれ光子対発生装置≫
<構成の説明>
図10を参照してこの発明の実施形態の第3の偏波量子もつれ光子対発生装置の基本構成について説明する。
【0190】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置は、上述の第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の構成と下記の点で異なる。すなわち、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の構成と異なり、ループ光路50内に90度偏波面回転部103と非線形光学媒質102とを含み、偏波面及び光位相調整部104を含まない。
【0191】
一方、45度偏光の励起光がループ光路50に入力されるまでのいずれかの光路に複屈折媒体216が挿入される。図10では、複屈折媒体216は、バンドパス光フィルター105の第1入出力端105-1(光分岐入出力部10の入力端)に接続されて配置されている。複屈折媒体216の挿入箇所は図10に示す例に留まらず、例えば、偏波分離合成器101の第1入出力端101-1とバンドパス光フィルター105の第2入出力端105-2とを結ぶ経路(光分岐入出力部10の出力端)に配置されていても良い。いずれにしろ、励起光が45度偏光の励起光となった後にループ光路50に入力されるまでに経過するいずれかの光路に配置する。
【0192】
また、複屈折媒体216の光学軸は図11のように配置されている。すなわち、45度偏波の励起光の偏波方向と45度の角度をなす方向に、その光学軸X、Yが配置されている。
【0193】
その他の構成は第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と同様なので、ここではその説明を割愛する。
【0194】
<動作の説明>
ここでは、式(5-a)〜式(5-d)で表されるベル状態の偏波量子もつれ光子対を選択して発生させるために、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置がどのように動作するかについて説明する。
【0195】
第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と異なり、光子対は複屈折媒体216を経過しない。一方、H偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相と、V偏波の相関光子対を生成する励起光の光位相は、複屈折媒体216で生じるリタデーションに応じて異なる。
【0196】
したがって、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置においては、縦偏波(V)の光子対と横偏波(H)の光子対との光位相差φは次式(9)のように表される。
φ=φ0+2[(2πΔn/λp)L] (9)
ここで、Δn≡nX−nYであり、nX、nYはそれぞれ複屈折媒体216のX軸方向Y軸方向の直線偏波に対する屈折率、Lは複屈折媒体216の厚さである。φ0は複屈折媒体216以外の光路で生じる縦偏波の光子対と横偏波の光子対との光位相差の総量である。
【0197】
ゆえに、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置の場合と同様に、複屈折媒体216として可変式バビネソレイユ補償板を用いて、式(9)で与えられるφを0となるようにLを設定すれば、式(5-a)で与えられるベル状態が実現でき、φ=πとなるようにLを設定すれば式(5-b)で与えられるベル状態が実現できる。また、1/2波長板108を回転することで、式(5-c)、(5-d)で与えられるベル状態も実現できる。
【0198】
ただし、第1の偏波量子もつれ光子対発生装置と第3の偏波量子もつれ光子対発生装置とは、次のような相違がある。
【0199】
すなわち、第3の偏波量子もつれ光子対発生装置によれば、偏波量子もつれ光子対が経過する光路に複屈折媒体216は存在しない。また、偏波面及び光位相調整部104も使用しない。ゆえにこれらの光部品の挿入損失が存在しない。すなわち、より低損失に偏波量子もつれ光子対を発生することができる。
【0200】
≪実施形態に関する変形例≫
上述した実施形態の第1、第2及び第3の偏波量子もつれ光子対発生装置では、非線形光学媒質としてPPLN結晶を用いたが、PPLN結晶以外の2次非線形光学媒質も利用することができる。また、非線形光学媒質として、光ファイバー等の3次非線形光学媒質を利用することもできる。さらに、非線形光学媒質としてバルク結晶、PPLN結晶に光導波路を作り込んだPPLN導波路素子等の導波路型素子、その他様々な形態の非線形光学媒質を用いることができる。
【0201】
90度偏波面回転部103や偏波面及び光位相調整部104、109等を、ループ光路中で非線形光学媒質102に対してどのような位置に配置するかは設計事項に属する。すなわち、例えば、2次非線形光学媒質の非線形光学係数のテンソル成分であるd11成分を利用する場合には90度偏波面回転部103を偏波分離合成器101の第2入出力端101-2と非線形光学媒質102を接続する光路に配置することもあり得る。また、90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104との配置の位置を入れ替えた構成とすることも可能である。すなわち、90度偏波面回転部103と偏波面及び光位相調整部104との配置の位置箇所は、非線形光学媒質の利用する光学軸の方向と、非線形光学媒質に入力される励起光の偏波方向に基づいて、適宜柔軟に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0202】
10、12、14、30:光分岐入出力部
20、40、50:ループ光路
101、201:偏波分離合成器
102:非線形光学媒質
103:90度偏波面回転部
104、109:偏波面及び光位相調整部
105:バンドパス光フィルター
106:ローパス光フィルター
107:WDMフィルター
108:1/2波長板
110:光サーキュレーター
207、278:第1ファラデー回転子
208:第2の1/2波長板
209、280:第2ファラデー回転子
210:第3の1/2波長板
211:第1非相反偏波面変換部
212:第2非相反偏波面変換部
213、216、282:複屈折媒体
214:第1の1/2波長板
284:第3ファラデー回転子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ光路と光分岐入出力部とを備え、
前記ループ光路中に、非線形光学媒質と、該ループ光路に入力される励起光子に基づいて該非線形光学媒質中で発生し該ループ光路を伝播するシグナル光子及びアイドラー光子の、該ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する偏波面及び光位相調整部とが配置されており、
前記光分岐入出力部は、前記ループ光路に該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように前記励起光子を入力し、かつ該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播する前記シグナル光子及び前記アイドラー光子からなる相関光子対を、該シグナル光子波長成分と該アイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力し、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及び前記アイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されてい
る
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項2】
前記ループ光路は、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、前記非線形光学媒質と前記偏波面及び光位相調整部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記光分岐入出力部の出力端は、前記偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、前記励起光子が該光分岐入出力部の入力端から入力されて該光分岐入出力部を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項3】
前記ループ光路の前記偏波面及び光位相調整部が配置されている位置と前記偏波分離合成器が配置されている位置との間の位置に、偏波面を90度回転させる90度偏波面回転部がさらに配置されており、
前記偏波面及び光位相調整部は、偏波面を+45度回転する第1ファラデー回転子と、偏波面を前記第1ファラデー回転子と同じ向きに+45度回転する第2ファラデー回転子と、前記第1ファラデー回転子と前記第2ファラデー回転子との間に直交した光学軸間での光位相差量が可変な複屈折媒体とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項4】
前記偏波面及び光位相調整部は、偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子と、偏波面を前記第3ファラデー回転子と同じ向きに+45度回転する第4のファラデー回転子と、前記第3ファラデー回転子と前記第4のファラデー回転子との間に直交した光学軸間での光位相差量が可変な複屈折媒体とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項5】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子及び前記アイドラー光子の波長を反射波長帯域にもつバンドパス光フィルターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項6】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記励起光子を入力し、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項7】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子を前記ループ光路に導き、該ループ光路から出力される前記シグナル光子及び前記アイドラー光子を外部に取り出すための入出力端を有する光サーキュレーターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項8】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項9】
第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とが直列に配置されたループ光路と、
励起光子を入力させる入力部と、
前記ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される前記励起光子に基づいて前記非線形光学媒質中で発生する該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光子及びアイドラー光子からなる相関光子対を、シグナル光子波長成分とアイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力する光分岐入出力部と
を備え、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及びアイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に第1の1/2波長板が配置されている
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項10】
前記ループ光路は、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第2入出力端と第3入出力端とを、前記第1非相反偏波面変換部と前記非線形光学媒質と前記第2非相反偏波面変換部と前記複屈折媒体とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記入力部は、第1〜第4入出力端を備える前記偏波分離合成器の第1入出力端であって、
前記偏波分離合成器の第4入出力端と前記光分岐入出力部の入力端とが接続されており、
前記第1非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子と第2の1/2波長板を備えており、
前記第2非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子と第3の1/2波長板を備えており、
励起光子が前記偏波分離合成器の第1入出力端から入力されて該偏波分離合成器を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項9に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項11】
前記光分岐入出力部は、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項10に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項12】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項13】
ループ光路と光分岐入出力部とを備え、
前記ループ光路中に、非線形光学媒質と、該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光子のいずれか一方と、該励起光子に基づいて、前記非線形光学媒質中で発生し前記ループ光路を伝播するシグナル光子及びアイドラー光子のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分のいずれか一方の偏波面を90度回転する90度偏波面回転部が配置されており、
前記光分岐入出力部を経過し前記ループ光路に励起光が入力される光路に複屈折媒体が配置されており、
前記光分岐入出力部は、前記ループ光路に該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように前記励起光子を入力し、かつ該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播する前記シグナル光子及び前記アイドラー光子からなる相関光子対を、該シグナル光子波長成分と該アイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力し、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及び前記アイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項14】
前記ループ光路は、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、前記非線形光学媒質と前記90度偏波面回転部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記光分岐入出力部の入力端もしくは出力端に前記複屈折媒体が配置され、
前記光分岐入出力部の出力端は、前記偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、前記励起光子が該光分岐入出力部の入力端から入力されて該光分岐入出力部を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項13に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項15】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子及び前記アイドラー光子の波長を反射波長帯域にもつバンドパス光フィルターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項16】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記励起光子を入力し、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項17】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子を前記ループ光路に導き、該ループ光路から出力される前記シグナル光子及び前記アイドラー光子を外部に取り出すための入出力端を有する光サーキュレーターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項18】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項1】
ループ光路と光分岐入出力部とを備え、
前記ループ光路中に、非線形光学媒質と、該ループ光路に入力される励起光子に基づいて該非線形光学媒質中で発生し該ループ光路を伝播するシグナル光子及びアイドラー光子の、該ループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分との間の光位相差を調整する偏波面及び光位相調整部とが配置されており、
前記光分岐入出力部は、前記ループ光路に該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように前記励起光子を入力し、かつ該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播する前記シグナル光子及び前記アイドラー光子からなる相関光子対を、該シグナル光子波長成分と該アイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力し、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及び前記アイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されてい
る
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項2】
前記ループ光路は、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、前記非線形光学媒質と前記偏波面及び光位相調整部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記光分岐入出力部の出力端は、前記偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、前記励起光子が該光分岐入出力部の入力端から入力されて該光分岐入出力部を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項3】
前記ループ光路の前記偏波面及び光位相調整部が配置されている位置と前記偏波分離合成器が配置されている位置との間の位置に、偏波面を90度回転させる90度偏波面回転部がさらに配置されており、
前記偏波面及び光位相調整部は、偏波面を+45度回転する第1ファラデー回転子と、偏波面を前記第1ファラデー回転子と同じ向きに+45度回転する第2ファラデー回転子と、前記第1ファラデー回転子と前記第2ファラデー回転子との間に直交した光学軸間での光位相差量が可変な複屈折媒体とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項4】
前記偏波面及び光位相調整部は、偏波面を-45度回転する第3ファラデー回転子と、偏波面を前記第3ファラデー回転子と同じ向きに+45度回転する第4のファラデー回転子と、前記第3ファラデー回転子と前記第4のファラデー回転子との間に直交した光学軸間での光位相差量が可変な複屈折媒体とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項5】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子及び前記アイドラー光子の波長を反射波長帯域にもつバンドパス光フィルターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項6】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記励起光子を入力し、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項7】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子を前記ループ光路に導き、該ループ光路から出力される前記シグナル光子及び前記アイドラー光子を外部に取り出すための入出力端を有する光サーキュレーターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項8】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項9】
第1非相反偏波面変換部と非線形光学媒質と第2非相反偏波面変換部と複屈折媒体とが直列に配置されたループ光路と、
励起光子を入力させる入力部と、
前記ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される前記励起光子に基づいて前記非線形光学媒質中で発生する該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するシグナル光子及びアイドラー光子からなる相関光子対を、シグナル光子波長成分とアイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力する光分岐入出力部と
を備え、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及びアイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に第1の1/2波長板が配置されている
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項10】
前記ループ光路は、第1〜第4入出力端を備える偏波分離合成器の第2入出力端と第3入出力端とを、前記第1非相反偏波面変換部と前記非線形光学媒質と前記第2非相反偏波面変換部と前記複屈折媒体とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記入力部は、第1〜第4入出力端を備える前記偏波分離合成器の第1入出力端であって、
前記偏波分離合成器の第4入出力端と前記光分岐入出力部の入力端とが接続されており、
前記第1非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第1ファラデー回転子と第2の1/2波長板を備えており、
前記第2非相反偏波面変換部は、偏波面を45度回転する第2ファラデー回転子と第3の1/2波長板を備えており、
励起光子が前記偏波分離合成器の第1入出力端から入力されて該偏波分離合成器を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項9に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項11】
前記光分岐入出力部は、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項10に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項12】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項13】
ループ光路と光分岐入出力部とを備え、
前記ループ光路中に、非線形光学媒質と、該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように入力される励起光子のいずれか一方と、該励起光子に基づいて、前記非線形光学媒質中で発生し前記ループ光路を伝播するシグナル光子及びアイドラー光子のループ光路を時計回りする光成分と反時計回りする光成分のいずれか一方の偏波面を90度回転する90度偏波面回転部が配置されており、
前記光分岐入出力部を経過し前記ループ光路に励起光が入力される光路に複屈折媒体が配置されており、
前記光分岐入出力部は、前記ループ光路に該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播するように前記励起光子を入力し、かつ該ループ光路を時計回り及び反時計回りに伝播する前記シグナル光子及び前記アイドラー光子からなる相関光子対を、該シグナル光子波長成分と該アイドラー光子波長成分に空間分離された状態で出力し、
前記光分岐入出力部から空間分離されて出力される前記シグナル光子波長成分及び前記アイドラー光子波長成分が出力されるいずれか一方の光路中に1/2波長板が配置されている
ことを特徴とする偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項14】
前記ループ光路は、第1〜第3入出力端を備える偏波分離合成器の第2及び第3入出力端を、前記非線形光学媒質と前記90度偏波面回転部とを直列に配置して接続する光ファイバーの両端と結んで構成され、
前記光分岐入出力部の入力端もしくは出力端に前記複屈折媒体が配置され、
前記光分岐入出力部の出力端は、前記偏波分離合成器の第1入出力端に接続され、前記励起光子が該光分岐入出力部の入力端から入力されて該光分岐入出力部を介して前記偏波分離合成器の第1入出力端から前記ループ光路に入力され、前記シグナル光子波長成分と前記アイドラー光子波長成分が、前記光分岐入出力部の出力端から空間分離された状態で出力される構成とされている
ことを特徴とする請求項13に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項15】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子及び前記アイドラー光子の波長を反射波長帯域にもつバンドパス光フィルターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項16】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子の波長、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記励起光子を入力し、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項17】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子を前記ループ光路に導き、該ループ光路から出力される前記シグナル光子及び前記アイドラー光子を外部に取り出すための入出力端を有する光サーキュレーターと、前記シグナル光子の波長及び前記アイドラー光子の波長を透過波長帯域にもち、前記シグナル光子の波長成分及び前記アイドラー光子の波長成分を空間分離して出力するWDM(Wavelength Division Multiplexer/Demultiplexer)フィルターを備えていることを特徴とする請求項14に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【請求項18】
前記光分岐入出力部は、前記励起光子に基づいて発生する光第2高調波成分を除去するローパス光フィルターをさらに備えていることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の偏波量子もつれ光子対発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−25253(P2013−25253A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162160(P2011−162160)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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