説明

停車場検知システム及び方法並びに旅行時間計測システム

【課題】車両の時系列の軌跡情報を用いて、当該車両の停車場の位置を検出する。
【解決手段】交差点などで区切られた道路の区間を表すリンクを、ブロックに細分し、車両の軌跡情報を収集し、ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に(S6)、当該車両の位置が属するブロックの停車時間に単位時間を加算し(S9)、他の時刻についても、前記処理を繰り返し、すべての時刻について完了すると(S5)、そのブロックの累積された停車時間が、閾値よりも大きな場合に(S12)、そのブロックに停車場の存在を検知する(S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス停若しくはバスターミナル、タクシーの乗降場、運送トラックの配送ターミナルなど、人又は荷物を乗降させるための停車場を検知する停車場検知システム及び方法、並びに停車場での停車時間を考慮することのできる旅行時間計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の軌跡情報をGPS受信機などを用いて取得し、地図マッチング法を適用して、当該車両がリンク上を走行するのに要した時間(リンク旅行時間という)を求めることができる。なお、この明細書で「リンク」とは、交差点などで区切られた道路の区間をいう。
ところが、定期運航バス(以下単に「バス」という)、タクシー、配送トラックなどの場合、停車場での停車時間があるので、リンクの始点から終点までの時間に基づいてリンク旅行時間を求めても、それは道路の混雑状況を正しく反映したものとならない。
【特許文献1】特開昭61−288299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、リンク旅行時間から停車場での停車時間を差し引いて正味の旅行時間を求める必要があるが、停車場での停車時間を求めるためには、停車場の位置の座標がわかる必要がある。
しかし、停車場の位置に関する座標データは入手できないことが多い。かといって停車場の位置に関する座標を新たに測量するには、多くの人手と手間がかかる。
【0004】
そこで、本発明は、車両の時系列の軌跡情報を用いて停車場の位置を検知することができる停車場検知システム及び方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、停車場の位置と停車時間の情報に基づいて、正味のリンク旅行時間を求めることのできる旅行時間計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の停車場検知システムは、リンクをブロックに細分する細分手段と、車両の軌跡情報を収集する収集手段と、当該軌跡情報に基づき車両の速度0が続く場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車時間を加算する加算手段と、そのブロックの加算された停車時間が、閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する検知手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
前記「車両」は、例えばバス停を検知しているのであれば、バスであり、タクシーの乗降場を検知しているのであれば、タクシーである。前記「閾値」は、軌跡情報の収集対象となった車両台数などに応じて変わるものであるので、一定値に固定することはできない。経験的に定めることが望ましい。前記「ブロック」の大きさは、検知するのがバス停であればバスが止まる範囲、前後1mくらいにとることが理想的であるが、あまり細かくとっても、車両の位置検出誤差よりも小さくなっては意味がない。そこで、車両の位置検出誤差程度の範囲にとればよい。
【0007】
この発明の停車場検知システムであれば、リンクをブロックに細分して、ブロックごとに車両の停車時間を加算していく。そして、車両がよく停車するブロックがあれば、そのブロックに停車場が存在するものと推定できる。
前記加算手段は、車両の速度0が続く第1の停車時間が第1の閾値以上である場合に、前記第1の停車時間を当該車両の位置が属するブロックの第2の停車時間に加算するものであり、前記検知手段は、第2の停車時間が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知するものとすれば(請求項2)、信号待ちなどで分散した短時間の停車を除くことができるので、望ましい。この観点から、前記「第1の閾値」は、信号待ちなどの一時的な停車を除くことのできる値にとるとよい。
【0008】
前記加算手段は、複数の車両及び/又は複数の日数にわたって前記加算を行うことが好ましい(請求項3,請求項6,請求項9)。軌跡情報の収集対象となった車両台数が多いほうが、正確性の高い停車場の検知ができるからである。
また、本発明の停車場検知方法は、リンクをブロックに細分し、車両の軌跡情報を収集し、ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車時間に単位時間を加算し、他の時刻についても、前記処理を繰り返し、そのブロックの累積された停車時間が閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する方法である(請求項4)。この停車場検知方法は、時刻ごとに単位時間の加算処理を行う。ある期間にわたって加算処理を繰り返し、加算された停車時間が、閾値よりも大きな場合に、そのブロックに、停車場の存在を検知する。
【0009】
また、車両の停車時間が第1の閾値未満であれば、停車時間の加算をしないような処理を加えてもよい(請求項5)。これは、前述したのと同様、短時間の停車を除くためである。
また、本発明の停車場検知システムは、リンクをブロックに細分する細分手段と、車両の軌跡情報を収集する収集手段と、当該軌跡情報に基づき車両の速度0が続く場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車回数を加算する加算手段と、そのブロックの累積された停車回数が閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する検知手段とを備えるものである(請求項7)。この停車場検知システムは、ブロックにおける停車時間で判定するのではなく、停車回数で判定するところが、請求項1記載の停車場検知システムと相違している。すなわち、車両の停車回数の多いブロックを停車場のあるブロックであると推定する。
【0010】
前記加算手段は、車両の速度0が続く時間が第1の閾値以上である場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車回数を加算し、そのブロックの累積された停車回数が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知してもよい(請求項8)。これも前述したのと同様、短時間の停車を停車回数から除くためである。
また、本発明の停車場検知方法は、リンクをブロックに細分し、車両の軌跡情報を収集し、ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、当該車両の停車を判定し、車両が動き出した時点で、当該車両が属するブロックの停車回数に1を加算して当該車両の停車を解除し、他の時刻についても、前記処理を繰り返し、そのブロックの累積された停車回数が、閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する方法である(請求項10)。
【0011】
この停車場検知方法は、時刻ごとに停車判定を行い、1つの連続した停車が検出された場合に、それを1回の停車回数と数える。ブロックにおいて、累積された停車回数が、閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する。
前記停車回数を数えるときに、停車時間が非常に少なければ、停車回数のカウントをしないという実施も可能である(請求項11)。前述したのと同様、短時間の停車を停車回数から除くためである。

また、本発明の旅行時間計測システムは、リンク単位の道路地図を有する地図データベースと、車両の時系列の軌跡情報における車両の位置と、地図データベースに設定されている各リンクの位置座標とを比較して、車両が走行しているリンクを推定する走行リンク推定手段と、推定された走行リンクの旅行時間を算出する旅行時間算出手段とを備える旅行時間計測システムにおいて、前記走行リンクの旅行時間を算出する際に、前記請求項4、請求項5、請求項10又は請求項11記載の停車場検知方法を用いて検知された停車場での停車時間を引いて、リンク旅行時間を計測する。これにより、停車場での停車時間が差し引かれた正確な旅行時間を計測することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、車両の時系列の軌跡情報を用いて、ブロックにおける停車時間又は停車回数にもとづいて停車場の位置を検出することができる。したがって、旅行時間を計算するときに、停車場での停車時間を除いて計算することができ、正確な旅行時間がわかる。また、停車場の存在位置データが取得できるので、車両の運航管理に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、バス停の検知を例にとって、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の停車場検知システムを構成するセンター装置のブロック構成図である。センター装置は、軌跡情報を車両から収集し蓄積する軌跡情報蓄積部11、蓄積した軌跡情報に基づいて、軌跡の緯度経度、速度、方位を時刻ごとに記憶する軌跡情報記憶部13、軌跡情報記憶部13に記憶された軌跡情報を基にしてバス停又はバスターミナルの位置を検出するバス停検出部12、リンクの座標、方位など記憶した地図データベース15、並びに検出されたバス停又はバスターミナルの位置データを蓄積するバス停データ蓄積部14を有している。
【0014】
前記軌跡情報蓄積部11は、バスの車載装置(後述)から軌跡情報を収集する。どのような手段で旅行時間データを収集してもよい。例えば、車載装置の通信機6から移動無線通信により軌跡情報を取得してもよく、記憶媒体をバッチ方式で受け取り、この記憶媒体を読み出してデータを取得してもよい。
センター装置が、軌跡情報記憶部13に記憶された軌跡情報を基にしてバス停又はバスターミナルの位置を検出する処理については、後にフローチャートを用いて説明する。
【0015】
センター装置は、バス停データ蓄積部14に蓄積されたバス停又はバスターミナルの位置データを、バス運航会社など関係機関の要求に応じて、必要な時に配布する。
また、センター装置は、このバス停又はバスターミナル位置情報に基づいて、車両のリンク旅行時間を算出することができる。センター装置はこのリンク旅行時間を関係機関に配布してもよい。
【0016】
センター装置あるいは関係機関は、このリンク旅行時間情報を基にして、道路の渋滞の程度などを決定し、道路標示版に表示したり、交通情報として放送したりする。また、このリンク旅行時間情報を基にして出発地と目的地とを結ぶ最適経路を算出することもできる。このリンク旅行時間の算出処理についても後述することにする。
図2は、本発明の停車場検知システムを構成する車載装置のブロック構成図である。車載装置は、車両に搭載され、車輪速度を計測する車速センサ2、車両の方位を計測するコンパスなどの方位センサ3、車両の位置を測位するGPS受信機4、車速センサ2、方位センサ3、GPS受信機4の出力に基づいて車両の位置を時系列に検出し、時系列に検出された車両の位置すなわち軌跡情報を軌跡情報記憶部7に蓄積する軌跡情報蓄積部5、軌跡情報記憶部7に蓄積された軌跡情報をセンター装置に送信する通信機6を備えている。前記通信機6又は軌跡情報記憶部7は、いずれか一方のみ具備する構成でもよい。前記通信機6を搭載しない場合は、軌跡情報記憶部7に記憶された軌跡情報をバッチ方式でセンター装置に配布する手順になる。
【0017】
また、車両に、リンクの座標、方位など記憶した地図データベースを備えて、いわゆる地図マッチング方式により、リンク上の車両の位置を検出し、それを軌跡情報としてもよい。
図3は、前記軌跡情報記憶部13に蓄積された軌跡情報の一例を示す図である。軌跡情報は、車両の識別コード、車速センサ2、方位センサ3、GPS受信機4の出力に基づいて車両の位置を検出した時刻(図3では1秒ごとになっている)、その時刻の車両の位置の緯度経度、その時刻の車両の速度[km/h]及び方位[°]の情報を含んでいる。前記車両の速度の情報は、GPS受信機4の出力から得てもよく、車両の位置の時間変化分をとって計算で得てもよい。また、前記車両の方位データは、方位センサから得てもよく、地図マッチング方式を用いているのであれば、道路の方位をそのまま採用してもよい。
【0018】
次に、センター装置が、車両から収集される軌跡情報に基づき、バス停又はバスターミナルの位置データを算出する処理を、フローチャートを用いて詳しく説明する。
まず、「ブロック」を定義する。ブロックとは、リンクを区切るための1つ1つの領域のことを言う。2次元的に広がった領域であってもよく、リンクに沿った一次元の領域であってもよい。
【0019】
図4は、1本のリンクと、当該リンクを分割する複数のブロックを示す図である。図4(a)は二次元領域を、図4(b)は一次元領域を表している。
2次元領域の場合、緯度経度方向に区切った1つのマス目となる。その大きさは、例えば5m四方程度とする。通常、平均的なリンク長が数十mなので、1本のリンクを、当該リンクを通る複数のブロックで区切ることができる。
【0020】
一次元領域の場合は、リンクに沿った、例えば5mおきの区間となる。
以下の処理では、このブロック単位で車両が停車しているかどうかを判断し、ブロック単位で停車時間又は停車回数を累積していく。なお、1つのトリップ(軌跡の発生から消滅までを1トリップという)内での車両を1車両と数え、トリップが違うと、別車両とみなす。
【0021】
図5は、ブロックに累積された停車時間を判定することにより、バス停又はバスターミナルの位置を検出する処理を示すフローチャートである。
まず、センター装置のバス停検出部12は、各ブロックごとの累積停車時間データを0に初期化する(ステップS1)。
次に、軌跡情報記憶部13に蓄積された複数台の車両の軌跡情報のうち、1台の車両の軌跡情報を抽出する(ステップS2)。
【0022】
すべての車両の軌跡情報の抽出を完了しているか、チェックする(ステップS3)。すべての車両の軌跡情報の抽出が完了していない場合、ステップS2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、1時刻の軌跡情報を抽出する(ステップS4)。
ここで本明細書で「時刻」とは、図3の車両の軌跡情報の取得時刻のことをいう。図3では、時刻は1秒おきとなっている。
【0023】
次に、ステップS2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、すべての時刻について抽出を完了しているか、チェックする(ステップS5)。
完了していない場合、抽出した1時刻の位置において、車両の速度が0km/hかどうかチェックする(ステップS6)。0km/hでなければ次の時刻の処理に進む。
0km/hである場合、ステップS4で抽出した位置(緯度経度)を含むブロックを抽出する(ステップS7)。
【0024】
ステップS4で抽出した時刻から、次の時刻までの時間差(図3の例では1秒)を求める(ステップS8)。
ステップS8の時間差を、当該ブロックの累積停車時間に加算する(ステップS9)。
以上の処理を複数の時刻について行う。すべての時刻について処理を完了すれば、他の車両についても同様の処理を行い、全ての車両について完了すれば、ステップS10に移動する。
【0025】
ステップS10では、1つのブロックを抽出する。
そして、すべてのブロックの抽出が完了しているかどうかチェックする(ステップS11)。抽出が完了していなければ、当該ブロックの累積停車時間が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップS12)。
累積停車時間が一定の閾値以上となっている場合、そのブロックをバス停又はバスターミナル位置として登録する(ステップS13)。
【0026】
以上の処理を他のブロックについても行い(ステップS14)、全てのブロックの抽出が完了すれば、処理を終える。
このように、リンクをブロックに区切って、累積停車時間が一定の閾値以上になっているブロックを、バス停又はバスターミナルとみなす。これにより、バス停又はバスターミナルの存在するブロックを特定することができる。
【0027】
図6は、バス停又はバスターミナルの位置を特定する他の処理を示すフローチャートである。
この処理では、車両が停車した位置のブロックごとに、車両が停車した時間が第1の閾値以上となっている場合に、その停車時間を加算していき、停車時間の合計が第2の閾値以上となっているブロックをバス停又はバスターミナルの位置とする。
【0028】
図5の処理では、車両が停車した時間を単純に加算していったが、この処理では、車両が停車した時間が第1の閾値以上となっている場合のみ、加算の対象とするところが異なっている。これは、一時停車など、バス停又はバスターミナルでの乗降に関係ない停車を除外するためである。
まず、各ブロックの累積停車時間を初期化し、カウントビットをオフにする(ステップT1)。カウントビットは、車両が停車中であることを示すフラグである。
【0029】
複数台の車両の軌跡情報のうち、1台の車両の軌跡情報を抽出する(ステップT2)。
すべての車両の軌跡情報の抽出を完了しているか、チェックする(ステップT3)。
完了していなければ、ステップT2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、1時刻の軌跡情報を抽出する(ステップT4)。
ステップT2で抽出した1台の時系列の軌跡情報のうち、すべての時刻について抽出を完了しているか、チェックする(ステップT5)。
【0030】
すべての時刻について抽出を完了していない場合は、抽出した時刻の、車両の速度が0km/hかどうかチェックする(ステップT6)。
速度が0km/hであれば、カウントビットがオンかどうか、チェックする(ステップT7)。カウントビットがオンでなければ、カウントビットをオンにする(ステップT8)。
ステップT4で抽出した時刻の位置(緯度経度)に対応するブロックを抽出する(ステップT9)。
【0031】
ブロックの停車時間を初期化する(ステップT10)。この停車時間は、特許請求の範囲の「第1の停車時間」に該当する。
ステップS4で抽出した時刻から、次の時刻までの時間差を求める(ステップT11)。
ステップT11の時間差を、抽出したブロックの停車時間に加算する(ステップT12)。
【0032】
以上の処理を他の時刻についても行う(ステップT4)。このようにして、車両が停車している限り、停車時間を加算していく。
車両が動いた場合、ステップT13に移動し、カウントビットがオンか、チェックする。カウントビットがオンであれば、ブロックの停車時間が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップT14)。
【0033】
ブロックの停車時間が一定の閾値以上の場合、当該ブロックの停車時間を同ブロックの累積停車時間(この累積停車時間は、特許請求の範囲の「第2の停車時間」に該当する)に加算して(ステップT15)、カウントビットをオフにする(ステップT16)。このとき停車時間のカウントも終了する。
ステップT13でカウントビットがオフの場合、又はステップT14で停車時間が一定の閾値に満たない場合、ステップT4に戻り、他の時刻について処理を行う。
【0034】
すべての時刻について処理が完了すれば、他の車両についても同様の処理を行う。すべての車両について処理が完了すれば、ステップT17に移動する。
ステップT17では、1つのブロックを抽出する(ステップT17)。
すべてのブロックの抽出が完了しているかどうかチェックする(ステップT18)。
すべてのブロックの抽出が完了していなければ、ステップT17のブロックの累積停車時間が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップT19)。ブロックの累積停車時間が一定の閾値以上となっていれば、抽出されたブロックをバス停又はバスターミナル位置として登録する(ステップT20)。以上の処理を他のブロックについても行い(ステップT21)、すべてのブロックの抽出が完了するまで行う。
【0035】
図7は、バス停又はバスターミナルの位置を特定する他の処理を示すフローチャートである。
この処理では、車両が停車したブロックごとに、車両が停車した回数を加算していき、停車した回数の合計が多いブロックをバス停又はバスターミナルの位置とする。
まず、各ブロックの累積停車時間を初期化し、カウントビットをオフにする(ステップU1)。
【0036】
複数台の車両の軌跡情報のうち、1台の車両の軌跡情報を抽出する(ステップU2)。
すべての車両の軌跡情報の抽出を完了しているか、チェックする(ステップU3)。すべての車両の軌跡情報の抽出が完了していない場合、ステップU2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、1時刻の軌跡情報を抽出する(ステップU4)。
ステップU2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、すべての時刻について抽出を完了しているか、チェックする(ステップU5)。
【0037】
すべての時刻について抽出を完了していない場合、抽出した時刻の、車両の速度が0km/hかどうかチェックする(ステップU6)。
カウントビットがオンかどうか、チェックする(ステップU7)。カウントビットがオンでなければ、カウントビットをオンにする(ステップU8)。
ステップU4で抽出した時刻の位置(緯度経度)に対応するブロックを抽出する(ステップU9)。
【0038】
以上の処理を他の時刻についても行う(ステップU4)。
車両が動いた場合、ステップU6からU10に移動し、カウントビットがオンか、チェックする。カウントビットがオンであれば、当該ブロックの累積停車回数に1を加算して(ステップU11)、カウントビットをオフにする(停車回数のカウント終了)(ステップU12)。
【0039】
カウントビットをオフにした後、又はステップU10でカウントビットがオフの場合、ステップU4に戻り、他の時刻について同様の処理を行う。
すべての時刻について処理が完了すれば、他の車両についても同様の処理を行う。すべての車両について処理が完了すれば、ステップU13に移動する。
ステップU13では、1つのブロックを抽出する。
【0040】
すべてのブロックの抽出が完了しているかどうかチェックする(ステップU14)。
すべてのブロックの抽出が完了していなければ、ブロックの累積停車回数が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップU15)。ブロックの累積停車回数が一定の閾値以上となっていれば、抽出されたブロックをバス停又はバスターミナル位置として登録する(ステップU16)。以上の処理を他のブロックについても行い(ステップU17)、すべてのブロックの抽出が完了するまで行う。
【0041】
このようにして、ブロックにおいて、車両が停車した回数が閾値よりも多い場合に、当該ブロックをバス停又はバスターミナルの位置とする。
図8は、車両が停車した位置のブロックごとに、車両が停車した時間が一定の閾値以上となっている回数を加算していき、その回数の合計が多いブロックをバス停又はバスターミナルの位置とする処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
まず、各ブロックの累積停車時間を初期化し、カウントビットをオフにする(ステップV1)。
複数台の車両の軌跡情報のうち、1台の車両の軌跡情報を抽出する(ステップV2)。
すべての車両の軌跡情報の抽出を完了しているか、チェックする(ステップV3)。完了していない場合、ステップV2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、1時刻の時系列の軌跡情報を抽出する(ステップV4)。
【0043】
ステップV2で抽出した時系列の軌跡情報のうち、すべての時刻について抽出を完了しているか、チェックする(ステップV5)。すべての時刻について抽出を完了していない場合、抽出した時刻の、車両の速度が0km/hかどうかチェックする(ステップV6)。
車両の速度が0km/hであれば、カウントビットがオンか、チェックする(ステップV7)。
【0044】
カウントビットがオンでなければ、カウントビットをオンにする(ステップV8)。
ステップV4で抽出した時刻の位置(緯度経度)に対応するブロックを抽出する(ステップV9)。
ブロックの停車時間を初期化する(ステップV10)。
ステップV4で抽出した時刻から、次の時刻までの時間差を求める(ステップV11)。
【0045】
この時間差を、ステップV9のブロックの停車時間に加算する(ステップV12)。
以上の処理を他の時刻についても行う(ステップV4)。このようにして、停車時間を加算していく。
車両が動いた場合、ステップV13に移動し、カウントビットがオンか、チェックする。カウントビットがオンであれば、ブロックの停車時間が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップV14)。ブロックの停車時間が一定の閾値以上となっていれば、当該ブロックの累積停車回数に1を加算して(ステップV15)、カウントビットをオフにする(停車回数のカウント終了)(ステップV16)。
【0046】
カウントビットをオフにした場合、ステップV13でカウントビットがオフの場合、又はブロックの停車時間が一定の閾値と未満の場合、ステップV4に戻り、他の時刻について同様の処理を行う。
すべての時刻について処理が完了すれば、他の車両についても同様の処理を行う。すべての車両について処理が完了すれば、ステップV3からステップV17に移動する。
【0047】
ステップV17では、1つのブロックを抽出する(ステップV17)。
すべてのブロックの抽出が完了しているかどうかチェックする(ステップV18)。
当該ブロックの累積停車回数が一定の閾値以上となっているか、チェックする(ステップV19)。
当該ブロックの累積停車回数が一定の閾値以上となっている場合、ステップV17のブロックをバス停又はバスターミナル位置として登録する(ステップV20)。以上の処理を他のブロックについても行い(ステップV21)、すべてのブロックの抽出が完了するまで行う。
【0048】
以上の図5から図8までのようにして、バス停又はバスターミナルの位置をブロック単位で特定することができる。
次に、バス停又はバスターミナルの位置及びバス停又はバスターミナルでの停車時間を考慮したリンク旅行時間計測処理を説明する。
図9は、本発明のリンク旅行時間計測システムを構成するセンター装置のブロック構成図である。センター装置は、図1で説明したのと同様、軌跡情報を車両から収集し蓄積する軌跡情報蓄積部11、蓄積した軌跡情報に基づいて、軌跡の緯度経度、速度、方位を時刻ごとに記憶する軌跡情報記憶部13、軌跡情報記憶部13に記憶された軌跡情報を基にしてバス停又はバスターミナルの位置を検出するバス停検出部12、リンクの座標、方位など記憶した地図データベース15、並びに検出されたバス停又はバスターミナルの位置データを蓄積するバス停データ蓄積部14を有している。
【0049】
さらに、センター装置は、リンク旅行時間算出部16、走行リンク推定・経路確定部17、リンク旅行時間出力部18、リンクの旅行時間の現在値を記憶する旅行時間現在値記憶部19、旅行時間統計値記憶部20、旅行時間現在値及び旅行時間統計値を用いて最適経路トリーを計算し蓄積する経路計算部31、並びに旅行時間現在値及び旅行時間統計値の情報を提供する情報提供部32を有している。
【0050】
走行リンク推定・経路確定部17は、車両から受信される軌跡情報に基づいて、いわゆる地図マッチング方式により、リンク上の車両の位置を検出する。これにより、車両の道路上の走行経路を確定する。
前記リンク旅行時間算出部16は、リンクの退出時刻と進入時刻との差に基づいて、リンク旅行時間を算出する。
【0051】
さらにリンク旅行時間算出部16は、本発明に関連して、前記算出した旅行時間から、バス停又はバスターミナルにおける停車時間を差し引く。
ここで、リンク旅行時間の算出方法を説明する。
図10は、交差点のリンク地図であり、車両位置は一定時間ごとに検出され、その一連の軌跡を△印で表している。
【0052】
図10(a)は、車両がリンク21を通過し、交差点22を経由して、直進しているリンク23に進入する場合の走行軌跡を示す。一連の車両位置の中から、交差点22との距離が所定のしきい値以内であり、かつ交差点に最も近い車両位置を決定する。決定された車両位置をハッチングで示す。このハッチングの車両位置の時点を交差点22の通過時点(リンク21の退出時点、リンク23への進入時点)と判断する。
【0053】
図10(b)は、車両がリンク21を通過し、交差点22を経由し、右折しているリンク24に進入する場合の走行軌跡を示す。一連の車両位置の中から、車両の方位と進入する下流のリンク24との角度差θの絶対値がしきい角以内と判断された時点の車両位置を決定する。決定された車両位置をハッチングで示す。このハッチングの車両位置の時点を交差点22の通過時点(リンク21の退出時点、リンク24への進入時点)と判断する。前記「しきい角」は例えば30°又はそれ以下の一定の角度とする。
【0054】
リンク旅行時間算出部16は、相互に接続するリンクの交差点通過時点の差を計算することによってリンク旅行時間を算出する。
さらに、前記リンク旅行時間出力部18は、リンクの中に、バス停又はバスターミナルを含むブロックが存在するときは、そのブロックの停車時間を、前記リンク旅行時間算出部16によって求められたリンク旅行時間から差し引く。
【0055】
以下、リンク旅行時間出力部18の、リンク内における停車時間の求め方をフローチャート(図11)を用いて説明する。
まず、リンク旅行時間を求めたい車両の、時系列の軌跡情報のうち、1時刻の軌跡情報を抽出する(ステップW1)。
次に、ステップW1で抽出した時系列の軌跡情報のうち、当該リンクを走行したすべての時刻について抽出を完了しているか、チェックする(ステップW2)。
【0056】
完了していない場合、抽出した1時刻の位置において、バス停を含むブロックがあるかどうか判定する(ステップW3)。バス停を含むブロックがある場合に、ステップW1で抽出した時刻から、次の時刻までの時間差(図3の例では1秒)を求める(ステップW4)。
この時間差を停車時間に加算する(ステップW5)。
【0057】
以上の処理を複数の時刻について行う。すべての時刻について処理を完了すれば、ステップW6に移り、累積の停車時間を算出する。
そして、当該車両のリンク旅行時間から、累積の停車時間を差し引く(ステップW7)。
このようにして、バス停での停車時間を差し引いたリンク旅行時間を求めることができる。
【0058】
リンク旅行時間出力部18は、複数の車両について、バス停での停車時間を考慮したリンク旅行時間を求め、これらのリンク旅行時間を旅行時間現在値記憶部19に記憶させる。さらに過去に記憶した、リンク旅行時間を日、曜日、時間帯、天候、催しの有無などに分類して時間統計値記憶部20に記憶させる。
経路計算部31は、時間統計値記憶部20に記憶された旅行時間情報を用いて、ある地点を出発地として、各地点までの最短時間経路又は最短距離経路の経路トリーを算出する。
【0059】
センター装置は、経路計算部31で計算され蓄積された経路トリーを用いて、他の車載装置から目的地を示されて要求があったときに、前記リンク旅行時間統計値を用いて、その目的地までの最適経路データを抽出して当該車載装置に提供することができる。
また、センター装置は、車載装置や関係機関からの要求に応じて旅行時間現在値及び旅行時間統計値の情報を提供することができる。関係機関は、この旅行時間現在値及び旅行時間統計値の情報に基づいて、道路の渋滞の程度などを決定し、道路標示版に表示したり、交通情報として放送したりする。
【0060】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、前記の形態では、バスの運行を例にとってバス停又はバスターミナルを検知し、そのバス停又はバスターミナルにおける停車時間を算出することを主眼としていたが、本発明は、タクシーの乗降場を検知し、その乗降場での待ち時間を算出することもできる。また、トラックのターミナルや配送地点を検知して、そこでの待ち時間を算出することもできる。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の停車場検知方法を実施するためのセンター装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の停車場検知方法を実施するための車載装置のブロック構成図である。
【図3】軌跡情報蓄積部に蓄積された軌跡情報の一例を示す図である。
【図4】1本のリンクと当該リンクを通る複数のブロックとを示す図である。
【図5】バス停又はバスターミナルの位置を特定する処理を示すフローチャートである。
【図6】バス停又はバスターミナルの位置を特定する他の処理を示すフローチャートである。
【図7】バス停又はバスターミナルの位置を特定する他の処理を示すフローチャートである。
【図8】バスが停車した位置のブロックごとに、バスが停車した時間が一定の閾値以上となっている回数を加算していき、停車した回数の合計が多いブロックをバス停又はバスターミナルの位置とする処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明のリンク旅行時間計測方法を実施するためのセンター装置のブロック構成図である。
【図10】交差点のリンク地図と車両軌跡を示す図である。
【図11】リンク内における停車時間を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
2 車速センサ
3 方位センサ
4 GPS受信機
5 軌跡情報蓄積部
6 通信機
7 軌跡情報記憶部
11 軌跡情報蓄積部
12 バス停検出部
13 軌跡情報記憶部
14 バス停データ蓄積部
15 地図データベース
16 リンク旅行時間算出部
17 走行リンク推定・経路確定部
18 リンク旅行時間出力部
19 旅行時間現在値記憶部
20 旅行時間統計値記憶部
21,23,24,25 リンク
22 交差点
31 経路計算部
32 情報提供部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の区間を表すリンクを、ブロックに細分する細分手段と、
車両の軌跡情報を収集する収集手段と、
当該軌跡情報に基づき車両の速度0が続く場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車時間を加算する加算手段と、
そのブロックの加算された停車時間が、閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知する検知手段とを備えることを特徴とする停車場検知システム。
【請求項2】
前記加算手段は、車両の速度0が続く第1の停車時間が第1の閾値以上である場合に、前記第1の停車時間を当該車両の位置が属するブロックの第2の停車時間に加算するものであり、
前記検知手段は、第2の停車時間が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知する請求項1記載の停車場検知システム。
【請求項3】
前記加算手段は、複数の車両及び/又は複数の日数にわたって前記加算を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の停車場検知システム。
【請求項4】
(a)交差点などで区切られた道路の区間を表すリンクを、ブロックに細分し、
(b)車両の軌跡情報を収集し、
(c)ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車時間に単位時間を加算し、
(d)他の時刻についても、前記(c)の処理を繰り返し、
(e)そのブロックの累積された停車時間が、閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知することを特徴とする停車場検知方法。
【請求項5】
前記処理(c)に代えて次の処理(c1)(c2)を採用し、前記処理(e)に代えて次の処理(e1)を採用することを特徴とする請求項4記載の停車場検知方法。
(c1)ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、当該車両の位置が属するブロックの第1の停車時間に単位時間を加算し、
(c1)車両が動き出した時点で、前記第1の停車時間が第1の閾値以上である場合に、前記第1の停車時間を、第2の停車時間に加算し、
(e1)そのブロックの累積された第2の停車時間が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知する。
【請求項6】
前記(b)から(d)までの処理を複数の車両及び/又は複数の日数について行うことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の停車場検知方法。
【請求項7】
道路の区間を表すリンクを、ブロックに細分する細分手段と、
車両の軌跡情報を収集する収集手段と、
当該軌跡情報に基づき車両の速度0が続く場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車回数を加算する加算手段と、
そのブロックの累積された停車回数が、閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知する検知手段とを備えることを特徴とする停車場検知システム。
【請求項8】
前記加算手段は、車両の速度0が続く時間が第1の閾値以上である場合に、当該車両の位置が属するブロックの停車回数を加算し、
そのブロックの累積された停車回数が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知するものである請求項7記載の停車場検知システム。
【請求項9】
前記加算手段は、複数の車両及び/又は複数の日数にわたって前記加算を行うことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の停車場検知システム。
【請求項10】
(a)交差点などで区切られた道路の区間を表すリンクを、ブロックに細分し、
(b)車両の軌跡情報を収集し、
(c)ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、当該車両の停車を判定し、
(d)車両が動き出した時点で、当該車両が属するブロックの停車回数に1を加算して当該車両の停車を解除し、
(e)他の時刻についても、前記(c)から(d)の処理を繰り返し、
(f)そのブロックの累積された停車回数が、閾値よりも大きな場合に、そのブロック中に停車場の存在を検知することを特徴とする停車場検知方法。
【請求項11】
前記処理(c)に代えて次の処理(c1)を採用し、前記処理(d)に代えて次の処理(d1)を採用し、前記処理(f)に代えて次の処理(f1)を採用することを特徴とする請求項10記載の停車場検知方法。
(c1)ある時刻の車両の位置における、その車両の速度が0である場合に、停車時間に単位時間を加算し、
(d1)車両が動き出した時点で、前記停車時間が第1の閾値以上である場合に、当該車両が属するブロックの停車回数に1を加算し、
(f1)そのブロックの累積された停車回数が、第2の閾値よりも大きな場合に、そのブロックに停車場の存在を検知する。
【請求項12】
リンク単位の道路地図を有する地図データベースと、車両の時系列の軌跡情報における車両の位置と、地図データベースに設定されている各リンクの位置座標とを比較して、車両が走行しているリンクを推定する走行リンク推定手段と、推定された走行リンクの旅行時間を算出する旅行時間算出手段とを備える旅行時間計測システムにおいて、
前記走行リンクの旅行時間を算出する際に、前記請求項4、請求項5、請求項10又は請求項11記載の停車場検知方法を用いて検知された停車場での停車時間を引いて、リンク旅行時間を計測することを特徴とする旅行時間計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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