説明

健康レベル報知システム

【課題】周囲の人の健康状態に基づいてその場所の健康レベルを報知できるシステムを提供する。
【解決手段】ユーザーから自己申告入力があれば(S1:YES)、その値を体調レベルとして(S5)送信する(S40)。自己申告入力がなければ(S1:NO)、他の情報端末からの受信データ、センサから取得したセンサ値に基づいて体調レベルを推論し(S30)、送信する(S40)。また、他の情報端末から受信した体調レベルに基づいて周囲の健康レベルを算出し、そのレベルに応じてLEDやモータを用いて出力する(S35)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康レベル報知システムに関し、詳細には、複数の情報端末の使用者の体調から周辺環境の健康レベルを判別して報知する健康レベル報知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体情報をセンシングしてそこで取得される情報に基づいて個人の健康状態を判別し、体調の管理に役立てることが提案されている。例えば、特許文献1では、医療機関における検査に限らず、経時変化も観察できるように携帯端末にセンサ機能を持たせ、取得した情報を管理装置に送って健康支援サービスを行うようにしている。
【特許文献1】特開2006−26208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、感染性の病気が流行しているときには感染者の多い場所に近づかないようにしたい等、周りの人の健康状態からその場所の健康レベルを知りたいというニーズがある。しかしながら、上記健康管理システムでは、本人の健康支援を行うことはできるものの、周囲の人の情報は得られないため、ある場所に入ってもよいかどうかの目安を得ることはできなかった。
【0004】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、周囲の人の健康状態に基づいてその場所の健康レベルを報知できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の健康レベル報知システムは、相互に接続された複数の情報端末から構成される健康レベル報知システムであって、生体情報を計測するセンサ又は健康レベルを入力する入力手段の少なくとも一方を有し、使用者の体調に関する情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された情報である取得情報又は前記取得情報から判別された体調レベルを送信する端末側送信手段と、他の装置から前記取得情報又は前記体調レベルを受信する端末側受信手段と、前記端末側受信手段により受信した前記取得情報又は前記体調レベルに基づき送信元の周辺環境の健康レベルを判別する環境判別手段と、前記環境判別手段により判別された健康レベルを出力する出力手段とを備え、前記情報端末は、前記情報取得手段と前記端末側送信手段とを少なくとも備える取得端末、及び前記端末側受信手段と前記環境判別手段と前記出力手段とを少なくとも備える出力端末の少なくとも一方であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項2に記載の健康レベル報知システムは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記環境判別手段が、受信した前記体調レベルの平均値に基づいて周辺環境の健康レベルを判別することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項3に記載の健康レベル報知システムは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記環境判別手段が、受信した前記体調レベルの送信元の情報端末からの距離と当該体調レベルの平均値に基づいて周辺環境の健康レベルを判別することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項4に記載の健康レベル報知システムは、請求項1に記載の発明の構成に加え、特定の空間の内部に固定され、前記情報端末と通信可能な中継装置をさらに備え、前記中継装置は、前記空間内の前記取得端末から前記体調レベルを受信する中継側受信手段と、前記中継側受信手段が受信した前記体調レベルに基づき前記空間内の健康レベルを判別する空間内判別手段と、前記空間内判別手段により判別された健康レベルを前記情報端末に送信する中継側送信手段とを備え、前記出力端末は、前記端末側受信手段が前記中継装置から前記健康レベルを受信し、前記出力手段が前記端末側受信手段が受信した前記健康レベルを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の健康レベル報知システムは、複数の情報端末で構成され、センサ又は入力手段からの入力結果(取得情報)や、取得情報から判別したユーザーの体調レベルを他の情報端末に向けて送信する。取得情報や体調レベルを受信した情報端末では、周囲の複数の情報端末の体調レベルを総合して周辺環境の健康レベルを判別して出力する。従って、出力結果から、ユーザーはその周辺環境の健康レベルを把握し、その場所に入る・滞在する・その場所を立ち去る等の行動を起こす目安にできる。尚、すべての情報端末がセンサ機能や入力機能を有する必要はなく、体調レベルを判別できる複数の取得端末が存在していれば、それを受けて周囲環境の健康レベルを判別する機能だけを有する情報端末があってもよい。また、取得情報を送受信し、送信元の情報端末ユーザーの体調レベルの判別を受信側の情報端末で行ってもよい。もちろん、両方の機能を併せ持つ情報端末であってもよい。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の健康レベル報知システムは、請求項1に記載の発明の効果に加え、受信した複数の体調レベルの平均値から周囲環境の健康レベルを判別する。従って、十分な数の情報端末から体調レベルが得られれば、簡単な方法で健康レベルを判別し、ユーザーに提供することができる。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の健康レベル報知システムは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、体調レベルの送信元からの距離と体調レベルの平均値とに基づいて周辺環境の健康レベルを判別する。従って、現在その情報端末がいる位置に近い情報端末から受信した体調レベルの影響が大きくなるので、より自分の位置に近い健康レベルをユーザーに提供することができる。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の健康レベル報知システムは、請求項1に記載の発明の効果に加え、電車内等に固定された中継装置が情報端末から体調レベルを収集し、その空間(電車の車両など)の健康レベルを判別して情報端末に送信する。従って、空間の外にいる情報端末に、その空間の健康レベルを提供することができるので、情報端末のユーザーは、その空間に入るかどうかの目安を空間に入る前に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、健康レベル報知システムの概要及び健康レベル報知システムを構成する情報端末1の電気的構成について説明する。図1は、健康レベル報知システムの構成を示す概念図である。図2は、情報端末1の電気的構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の健康レベル報知システムは、相互に無線通信可能で携帯できる複数の情報端末1により構成されている。情報端末1は、心拍センサ、加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等の各種センサを備え、これらのセンサから入力された値と、過去のセンサの値の平均値に基づいて情報端末1を把持しているユーザーの体調レベルを推論する。そして、推論結果である体調レベルを他の情報端末1に送信する。体調レベルを受信した情報端末1では、周囲の複数の情報端末1から受信した体調レベルによって、自身が存在する周辺環境の健康レベルを推論し、LEDやモータ等の出力装置に出力する。情報端末1のユーザーは、出力結果を見て周辺環境の健康レベルを把握し、行動の参考にすることができる。
【0015】
情報端末1は、詳細には、図2に示すように、情報端末1の制御を司るCPU10と、BIOS等を記憶したROM11と、各種のデータを一時的に記憶するRAM12と、ハードディスク装置(HD)13と、センサ回路15や送受信回路16を接続するインタフェイス(I/F)回路14と、出力手段である液晶ディスプレイ(LED)17及びモータ18、入力手段である入力キー19,時間を計測するリアルタイムクロック(RTC)20から構成されている。センサ回路15には、上述の心拍センサ、加速度センサ、温度センサ、湿度センサ等の各種センサが接続され、センサから入力された値がRAM12に記憶される。その値は、ユーザーの体調レベルを推論するために使用され、推論結果とセンサ値は過去データとしてHD13に蓄積される。また、他の情報端末1から送信された体調レベルの値もRAM12に記憶される。
【0016】
次に、情報端末1における処理の過程でRAM12及びHD13に記憶される各種データについて図3〜図7を参照して説明する。図3は、RAM12に記憶されるセンサ値121の説明図である。図4は、他の情報端末1から送信され、RAM12に記憶される受信体調データ122の説明図である。図5は、電車内に設置された装置から送信され、RAM12に記憶される場所データ123の説明図である。図6は、体調レベル推論処理で算出されるセンサ値の平均値からなるセンサ過去データ131の説明図である。図7は、体調レベル推論処理で算出される体調レベルを時刻や場所データとともに蓄積する体調レベル過去データテーブル132の説明図である。
【0017】
図3に示すように、心拍センサ、加速度センサ、温度センサ、湿度センサから所定間隔で出力される値がセンサ値121としてRAM12に記憶される。このセンサ値121は、センサからの出力のタイミングで随時更新されて上書きされ、常に最新の値が格納される。
【0018】
情報端末1では、後述するように、センサ値121に基づいてユーザーの体調レベルを推論し、決定する。そして、その体調レベルを他の情報端末1に送信する。従って、他の情報端末1では、体調レベルの値を受信するとともに、受信したときの電波の強度が得られるため、受信体調レベルと受信時の電波強度を図4に示すような受信体調データ122としてRAM12に記憶する。
【0019】
本実施形態では、情報端末1を持ったユーザーは例えば電車内やオフィス内等の閉じられた空間にいることを想定している。このようなユーザーの所在場所には、その場所の状況を情報端末1に提供する装置が設置されているとよい。場所の状況を加味して健康レベルを推定することができるためである。そこで、たとえば、電車内に固定で設置された装置は、加速度センサや応荷重装置に接続し、そこからの入力を場所データ123として各情報端末1に送信する。情報端末1では、図5に示すような場所データ123をRAM12に記憶する。
【0020】
情報端末1では、センサから得られたセンサ値121及び受信した場所データ123を用いてユーザーの体調レベルを推論する(後述)。その処理を実行する際に、各センサのセンサ値の平均を算出し、センサ過去データ131としてHD13に記憶する。例えば、図6に示すように、処理の結果得られた体調レベル、平均心拍数、平均加速度、平均体温、平均加速度がセンサ過去データ131として記憶される。
【0021】
また、推論されたユーザーの体調レベルは、その処理の際に使用された場所データ123、処理の時刻、処理の結果得られた体調レベル、処理の前にセンサ過去データ131に「体調レベル」として記憶されていた前回の体調レベルとともに、図7に示すような、HD13内の体調レベル過去データテーブル132に追加記憶される。
【0022】
次に、上記の構成を有する情報端末1における健康レベル報知処理について図8〜図10を参照して説明する。図8は、健康レベル報知処理のメインルーチンのフローチャートである。図9は、メインルーチンで実行される体調レベル推論処理のフローチャートである。図10は、メインルーチンで実行される健康レベル出力処理のフローチャートである。
【0023】
メインルーチンが開始されると、通常の初期化処理の後、入力キー19から体調レベルの自己申告入力があったか否かを判断する(S1)。自己申告入力があれば(S1:YES)、その値を取得する(S5)。自己申告は、体調レベルの値(1〜10)を直接入力する。従って、自己申告入力がある場合には、センサ値の取得や体調レベルの推定は行わない。そして、他の情報端末1から受信したデータを取得して(S10)、健康レベル出力処理に進む(S35)。
【0024】
自己申告入力がなかった場合には(S1:NO)、健康レベル出力処理の更新タイミングになっているかどうかを判断する(S15)。更新のタイミングは、適宜定めることができる。まだ更新時刻でなければ(S15:NO)、S1に戻る。
【0025】
更新時刻となっていれば(S15:YES)、次に、他の情報端末1から受信し、RAM12に記憶されていた受信体調データ122(図4参照)、及び、車両装置から受信し、RAM12に記憶されていた場所データ123(図5参照)を取得する(S20)。次に、センサから出力され、RAM12に記憶されていたセンサ値121(図3参照)を取得する(S25)。
【0026】
次に、取得した受信体調データ122,場所データ123,センサ値121及び過去のデータを用いてユーザーの体調レベルを推論する体調レベル推論処理を実行する(S30)。
【0027】
ここで、図9を参照して体調レベル推論処理について説明する。体調レベル推論処理が開始されると、まず、取得した場所データ123に含まれている場所、及び、RTC20から取得した現在時刻をキーにして、HD13に記憶されている体調レベル過去データテーブル132(図7参照)を検索する(S201)。
【0028】
検索の結果、体調レベル過去データテーブル132に場所と時刻が一致する過去データが発見された場合(S205:YES)、次に、発見された過去データの中で、「前回の体調レベル」の値が、センサ過去データ131に記憶されている「体調レベル」の値と一致する過去データがあるかどうかを検索する(S210)。場所、時刻、「前回の体調レベル」の一致する過去データが存在していた場合には(S210:YES)、そのデータの「体調レベル」の値を変数「level」に代入する(S215)。
【0029】
例えば、場所が電車内で、現在時刻が10:20とする。これは、図7の体調レベル過去データテーブル132の1行目のデータが場所と時刻が一致している(S205:YES)。ここで、図6のセンサ過去データ131を参照すると、「体調レベル」は5である。体調レベル過去データテーブル132の1行目のデータの「前回の体調レベル」も5であり、一致しているので(S210:YES)、変数「level」にそのデータの「体調レベル」の値である「6」が代入される(S215)。
【0030】
場所と時刻が一致する過去データがない場合(S205:NO)、又は、場所と時刻が一致する過去データはあるが(S205:YES)、その中に、「前回の体調レベル」の値が、センサ過去データ131に記憶されている「前回の体調レベル」の値と一致するデータがない場合(S210:NO)、センサ過去データ131に記憶されている「前回の体調レベル」の値を変数「level」に代入する(S220)。
【0031】
S215又はS220の後、各センサ値とセンサ過去データ131に記憶されている平均値とを用いて変動値を算出する(S225)。変動値は、主には平均値と現在値の差を平均値で割ったものであり、各センサ値について以下の式で計算する。例えば、図3のセンサ値と図6のセンサ過去値を用いると、以下のように計算できる。
心拍数:(平均心拍数−心拍数)/平均心拍数=(75-98)/75=-0.307
加速度:(加速度−平均加速度)/平均加速度=(0.5-0.3)/0.3=0.667
体温 :(平均体温−体温)/平均体温=(37-38)/37=-0.027
湿度 :(湿度−平均湿度)/100=(20-55)/100=-0.35
【0032】
次に、算出した変動値を合計し、変数「level」に加算する(S230)。先の例では、変数「level」=「6」であったから、上記の変動値の合計を加算すると以下のようになる。
level=6+(−0.307+0.667−0.027−0.35)=5.983
【0033】
次に、取得した場所データ123の値から変動値を算出し、それを変数「level」に加算する(S235)。場所データ123には、図5に示すように、加速度(ゆれ)と乗車率が含まれている。また、センサ過去データ131には、加速度(ゆれ)の平均値が含まれている。これらの値から、以下の式により変動値を算出する。
乗車率:(100−乗車率)/100=(100−200)/100=−1
加速度(ゆれ):(加速度(ゆれ)−平均加速度(ゆれ))/100=(3-4)/100=-0.25
以上の変動値をの変数「level」に加算する。先の例では、S230において、変数「level」は「5.983」であったから、以下のようになる。
level=5.983+(−1−0.25)=4.733
【0034】
次に、S235で算出されたlevelの値を、小数点以下を四捨五入して体調レベルを決定する(S240)。先の例では、体調レベルは「5」となる。次に、ここで決定された体調レベルが「1」未満、すなわち「0」又は負の値になったかどうかを判断する(S245)。本実施形態では、もっとも体調が悪いレベルを「1」としているので、体調レベルが「1」未満となった場合には(S245:YES)、体調レベルを「1」に修正する(S250)。体調レベルが「1」以上の場合は、そのままとする。
【0035】
次いで、場所、時刻、体調レベルを体調レベル過去データテーブル132に記憶する(S255)。このとき、「前回の体調レベル」には、センサ過去データ131の「前回の体調レベル」を記憶する。そして、センサ値の平均値を算出し、センサ過去データ131に記憶する(S260)。平均値の算出は、各センサの値に関して,{(平均値×データ数)+今回取得したセンサ値}/(データ数 + 1) を計算する。計算した値を、新しいセンサ値の平均値とする。以上でユーザーの体調レベルが決定されたので、メインルーチンに戻る。
【0036】
メインルーチンでは、体調レベル推論処理の後、他の情報端末1から送信された体調レベルとそのときの電波強度(距離)に基づいてユーザーがいる場所の健康レベルを推論し、出力する健康レベル出力処理を実行する(S35)。
【0037】
ここで、図10を参照して、健康レベル出力処理について説明する。健康レベル出力処理では、受信した体調レベルと距離とから周囲の健康レベルを算出し、5段階に分けてLED17とモータ18により出力をしている。以下の説明では、体調レベルは1〜10の間とし、「10」が体調が「良い」ものとする。健康レベル出力処理が開始されると、まず、受信した体調レベルが「良い」とされる値(「10」)のみであったかどうか、すなわち体調の悪いユーザーがいないかを判断する(S301)。体調の悪いユーザーがいなければ(S301:YES)、そのユーザーの周囲の健康レベルは良好なので、LED17を青色で発光させ(S355)、メインルーチンに戻る。
【0038】
体調が悪いユーザーが存在すれば(S301:NO)、例えば電車内では1m、オフィス内では2m、等の所定距離内に体調の悪い人(体調レベルが「10」未満の値を送信してきた情報端末1)がいるかどうかを判断する(S305)。所定距離は、受信した電波強度により判断する。所定距離内に体調レベル「10」未満を送信してきた情報端末1があれば(S305:YES)、ユーザーに警告した方がいいと思われるので、LEDを赤色で発光させ、モータ18を作動させる(S310)。そして、メインルーチンに戻る。
【0039】
所定距離内には体調レベル「10」未満の送信元がなければ(S305:NO)、次に、電波強度(距離)にかかわらず、体調レベルが低い、例えば「3」以下の送信元があるかどうかを判断する(S315)。体調レベルが低い送信元があれば(S315:YES)、LEDを赤色で発光させ、モータ18を作動させる(S310)。そして、メインルーチンに戻る。
【0040】
体調レベルが低い送信元がなければ(S315:NO)、受信した個々の体調レベルを受信距離の10倍で割ったもの(体調レベル/(距離×10))を合計し、その場所の健康レベル(sum_state)を算出する(S320)。尚、ここでは体調レベルが良いとされる「10」の受信データについては除外して計算する。
【0041】
次に、算出された健康レベル(sum_state)が、例えば電車内であれば「0.3」、オフィス内であれば「2」等の危険値以下であるかを判断する(S325)。健康レベルが危険値以下であれば(S325:YES)、LEDを赤色で発光させ、モータ18を作動させる(S310)。そして、メインルーチンに戻る。
【0042】
健康レベルが危険値以下でなければ(S325:NO)、次に、健康レベルが、例えば電車内であれば「1」、オフィス内であれば「4」等の警告値以下かどうかを判断する(S330)。警告値以下であれば(S330:YES)、モータ18は作動させず、LED17を発光させ(S335)、メインルーチンに戻る。
【0043】
健康レベルが警告値以下でなければ(S330:NO)、次に、健康レベルが、例えば電車内であれば「1.5」、オフィス内であれば「8」等の注意値以下かどうかを判断する(S330)。注意値以下であれば(S340:YES)、LED17を黄色で発光させ(S345)、メインルーチンに戻る。注意値以下でなければ(S340:NO)、LED17を緑色で発光させ(S350)、メインルーチンに戻る。
【0044】
以上の処理で、周囲の健康レベルが出力されたので、図8のメインルーチンに戻り、次に、S30で決定した自身のユーザーの体調レベルを他の情報端末1に送信する(S40)。ここで送信した体調レベルが、他の情報端末1において取得され、その電波強度に基づく距離とともに健康レベル出力処理(S35)で用いられる。
【0045】
そして、電源がOFFされていないかどうかを判断し(S45)、ONであれば(S45:YES)、更新時刻を計測するためのタイマをリセットし(S50)、S1に戻る。電源OFF操作がなされれば(S45:NO)、メインルーチンを終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の健康レベル報知システムによれば、ユーザーの自己申告入力又は各種センサから得られたセンサ値により、ユーザーの体調レベルが算出され、周囲の情報端末1に送信される。また、周囲の情報端末1から体調レベルを受信すると、その体調レベルの値と送信元の距離から自身の周囲の健康レベルを算出し、出力する。従って、情報端末1のユーザーは、出力結果を見て、自分の行動の参考にすることができる。たとえば、体調があまり優れないときには、健康レベルの低いところにはとどまらないようにする等の行動が可能である。
【0047】
尚、上記実施形態では、体調レベル推論処理(S30,図9)を、自己申告入力又はセンサ値に基づいて、入力又はセンサ値の出力がなされた情報端末1にて実行し、その体調レベルの値を他の情報端末1に送信している(S40)。これを、自己申告の入力値やセンサ値を他の情報端末1に送信し、受信側の情報端末1において送信元の情報端末1の体調レベル推論処理を実行するようにしてもよい。
【0048】
ところで、上記の実施形態では、送信元からの距離を計測するために、電波強度を用いたが、マルチホップ通信を利用して情報端末1間の距離を計測することもできる。このような距離測定のためのホップ通信処理について図11を参照して説明する。図11は、ホップ通信処理のフローチャートである。
【0049】
ホップ通信処理を用いて距離を計測する場合、情報端末1の電波強度を調節し、通信距離を一定(例えば、1m)とする。そして、通信されるデータは、体調レベル、経由する装置の数(=距離)、情報端末1を経由した回数、情報端末1のIDとする。ホップ通信処理は、他の情報端末1から何らかのデータが送信されたときに開始される。
【0050】
図11に示すように、ホップ通信処理が開始されると、まず、送信されてきたデータを受信するかどうかを判断する(S400)。受信しない場合は(S400:NO)、そのまま処理を終了する。受信する場合には(S400:YES)、次に、受信した通信距離の値が実際の通信回数(その通信内容が自身を経由した回数)よりも大きいかかどうかを判断する(S405)。
【0051】
実際の通信回数が通信距離より小さい場合には(S405:YES)、通信回数に1を加算してデータを更新し、それを周囲の情報端末1に向けて送信する(S410)。実際の通信回数が通信距離に達した場合には(S405:NO)、その通信データに関する通信は終了する。
【0052】
そして、受信した情報端末1のID、実際の通信回数、体調レベルをRAM12に格納し(S415)、処理を終了する。以上のように、実際の通信回数が通信距離に達するまで繰り返し送信を実行する。従って、受信した実際の通信回数を用いてそのデータの発信元がどの程度距離が離れているのかを計測することができる。
【0053】
尚、上記実施形態において、入力キー19が本発明の入力手段に相当する。また、図8のS5の自己申告取得及びS25のセンサ値取得を実行するCPU10が本発明の情報取得手段に相当する。また、図8のS30で体調レベル推論処理を実行するCPU10が本発明の体調判別手段に相当する。また、送受信回路16が本発明の端末側送信手段及び端末側受信手段に相当する。また、図8のS35及び図10で健康レベルを算出するCPU10が本発明の環境判別手段に相当する。
【0054】
ところで、上記実施形態は、情報端末1が相互に通信を行って健康レベルを推論し、ユーザーに報知するものであった。これに加え、特定の空間内に装置を固定し、その装置が情報端末1から体調レベルを収集し、空間内の健康レベルを算出して、情報端末1に送信して出力させるようにすることもできる。そこで、電車の車両に固定された装置を設け、電車が駅に着いたことを検知して、扉が開いたときにその扉の付近で待機している情報端末1に車両内の健康レベルを報知する第二実施形態について、図12〜図14を参照して説明する。図12は、第二実施形態の健康レベル報知システムの構成を示す概念図である。図13は、車両装置100の電気的構成を示すブロック図である。図14は、車両装置100が実行する健康レベル報知処理のフローチャートである。
【0055】
図12に示すように、第二実施形態の健康レベル報知システムは、無線通信可能で携帯できる複数の情報端末1と、これらの情報端末1と通信可能で電車の車両内に固定された車両装置100とから構成されている。尚、車両装置100は、出入口付近に設置されているものとする。情報端末1は、第一実施形態における情報端末1と同様の構成であるため、その説明を援用する。情報端末1は、自己申告入力やセンサ値から算出した体調レベルの値を無線通信で送信する。そして、車両装置100は、車両内の情報端末1から送信されるデータを受信し、車両内のユーザーの体調レベルの平均や割合を求めて、車両内の健康レベルとする。電車が駅に到着し、扉が開いたときに、この健康レベルを送信する。すると、扉の前で待機しているユーザーが持っている情報端末1がそのデータを受信し、車両内の健康レベルをLED17やモータ18によりユーザーに報知する。
【0056】
車両装置100は、詳細には、図13に示すように、車両装置100の制御を司るCPU110と、BIOS等を記憶したROM111と、各種のデータを一時的に記憶するRAM112と、ハードディスク装置(HD)113と、センサ回路155や送受信回路116を接続するインタフェイス(I/F)回路114とから構成されている。センサ回路15には、車両の出入口に設置され、人の出入りを検知するセンサが接続され、センサから入力された値がRAM12に記憶される。また、情報端末1から送信された体調レベルの値は、RAM12に記憶される。また、車両の連結部分にも、人の出入りを検知するセンサが設置され、車両装置100のセンサ回路115に接続されている。
【0057】
次に、車両装置100における健康レベル報知処理について説明する。図14に示すように、処理が開始されると、まず、電車が駅に到着したか否かを判断する(S100)。駅に到着したかどうかは、電車を制御する装置から情報を受信するようにしておけばよい。駅に到着した場合には(S100:YES)、ホームで電車を待っている情報端末1に向けて、車両内の健康レベルを送信する(S105)。車両装置100は、情報端末1がそのユーザーの体調レベルの送信を随時行っているのを受け、体調レベルが5以下の情報端末1の存在比率を計算し、HD113に保存している(後述)。ここでは、HD113に保存されている体調レベルが5以下の情報端末1の存在比率を車両内の健康レベルとして送信する。
【0058】
次に、扉が開くかどうかを判断する(S110)。扉の開閉は、扉部分にセンサを設置しても良いし、電車を制御する装置から情報を受信するようにしてもよい。扉が開かない場合は(S115:NO)、開くまで待機する。扉が開く場合には(S110:YES)、情報端末1から収集した体調レベルデータのデータ集の更新を行う(S115)。具体的には、出入り口に設置されている車両装置100から情報端末1に対してIDを問い合わせ、これを受けた情報端末1がIDを返信してくる。受信したIDがHD113に保存されているデータ集の中に既に存在すれば、その情報端末1のユーザーは電車を降りたということなので、データ集の中から対応IDのデータを消去する。また、受信したIDがHD113に保存されているデータ集の中に存在しなければ、その情報端末1のユーザーが車両内に乗車してきたということなので、データ集にIDを追加する。
【0059】
次に、扉が閉じるかどうかを判断する(S120)。扉がまだ閉じない場合は(S120:NO)、閉じるまで待機する。扉が閉じる場合には(S120:YES)、次に、予め設定された間隔の更新時間になったかどうかを判断する(S125)。更新時間になっていなければ(S125:NO)、S100に戻る。
【0060】
更新時間になっていれば(S125:YES)、車両の連結部に設置された装置からIDが送信されてきたかどうかを判断する(S130)。連結部の装置では、所定時間間隔でIDを問い合わせる信号を送信し、これを受信した情報端末1が返信してくるIDを受信して収集する。ここで受信したIDとHD113に保存されたデータ集内のIDを比較することにより、車両を移動した情報端末1が特定される。
【0061】
そこで、連結部に設置された装置から受信情報がある場合には(S130:YES)、受信したIDに基づいて体調レベルデータの更新を行う(S115)。具体的には、連結部の装置から受信したIDがHD113に保存されているデータ集の中に既に存在すれば、その情報端末1のユーザーはその車両から隣の車両に移動したということなので、データ集の中から対応IDのデータを消去する。また、受信したIDがHD113に保存されているデータ集の中に存在しなければ、その情報端末1のユーザーが隣の車両からこの車両内に入ってきたということなので、データ集にIDを追加する。
【0062】
体調レベルデータの更新後、又は、連結部に設置された装置からの受信情報がない場合には(S130:NO)、データ集にある情報端末1のうち、体調レベルが5以下のものの存在率を算出する(S140)。そして、S100に戻り、以上の処理を繰り返す。
【0063】
以上説明したように、車両装置100と情報端末1から構成される第二実施形態の健康レベル報知システムによれば、車両装置100が車両内に存在する情報端末1から体調レベルを収集し、体調レベルが5以下の端末の存在率を算出する。この存在率を、車両内の健康レベルとして、駅に到着したときに、ホームに向けて送信し、ホームで待機しているユーザの情報端末1は、電車内の健康レベルをLED17やモータ18により出力する。従って、ホームにいるユーザーは、送信されてきた健康レベルによってその車両に乗車するかどうかを判断することができる。
【0064】
尚、第二実施形態において、送受信回路116が中継側受信手段及び中継側送信手段に相当する。また、図14のS140で健康レベルを算出するCPU110が本発明の空間内判別手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】健康レベル報知システムの構成を示す概念図である。
【図2】情報端末1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】RAM12に記憶されるセンサ値121の説明図である。
【図4】他の情報端末1から送信され、RAM12に記憶される受信体調データ122の説明図である。
【図5】電車内に設置された装置から送信され、RAM12に記憶される場所データ123の説明図である。
【図6】体調レベル推論処理で算出されるセンサ値の平均値からなるセンサ過去データ131の説明図である。
【図7】体調レベル推論処理で算出される体調レベルを時刻や場所データとともに蓄積する体調レベル過去データテーブル132の説明図である。
【図8】健康レベル報知処理のメインルーチンのフローチャートである。
【図9】メインルーチンで実行される体調レベル推論処理のフローチャートである。
【図10】メインルーチンで実行される健康レベル出力処理のフローチャートである。
【図11】ホップ通信処理のフローチャートである。
【図12】第二実施形態の健康レベル報知システムの構成を示す概念図である。
【図13】車両装置100の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】車両装置100が実行する健康レベル報知処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 情報端末
10 CPU
12 RAM
13 ハードディスク装置(HD)
15 センサ回路
16 送受信回路
17 LED
18 モータ
19 入力キー
100 車両装置
110 CPU
113 ハードディスク装置(HD)
115 センサ回路
116 送受信回路
121 センサ値
122 受信体調データ
123 場所データ
131 センサ過去データ
132 体調レベル過去データテーブル
155 センサ回路
112 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接続された複数の情報端末から構成される健康レベル報知システムであって、
生体情報を計測するセンサ又は健康レベルを入力する入力手段の少なくとも一方を有し、使用者の体調に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報である取得情報又は前記取得情報から判別された体調レベルを送信する端末側送信手段と、
他の装置から前記取得情報又は前記体調レベルを受信する端末側受信手段と、
前記端末側受信手段により受信した前記取得情報又は前記体調レベルに基づき送信元の周辺環境の健康レベルを判別する環境判別手段と、
前記環境判別手段により判別された健康レベルを出力する出力手段とを備え、
前記情報端末は、前記情報取得手段と前記端末側送信手段とを少なくとも備える取得端末、及び前記端末側受信手段と前記環境判別手段と前記出力手段とを少なくとも備える出力端末の少なくとも一方であることを特徴とする健康レベル報知システム。
【請求項2】
前記環境判別手段は、受信した前記体調レベルの平均値に基づいて周辺環境の健康レベルを判別することを特徴とする請求項1に記載の健康レベル報知システム。
【請求項3】
前記環境判別手段は、受信した前記体調レベルの送信元の情報端末からの距離と当該体調レベルの平均値に基づいて周辺環境の健康レベルを判別することを特徴とする請求項1又は2に記載の健康レベル報知システム。
【請求項4】
特定の空間の内部に固定され、前記情報端末と通信可能な中継装置をさらに備え、
前記中継装置は、
前記空間内の前記取得端末から前記体調レベルを受信する中継側受信手段と、
前記中継側受信手段が受信した前記体調レベルに基づき前記空間内の健康レベルを判別する空間内判別手段と、
前記空間内判別手段により判別された健康レベルを前記情報端末に送信する中継側送信手段とを備え、
前記出力端末は、
前記端末側受信手段が前記中継装置から前記健康レベルを受信し、
前記出力手段が前記端末側受信手段が受信した前記健康レベルを出力することを特徴とする請求項1に記載の健康レベル報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−11706(P2009−11706A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179628(P2007−179628)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】