説明

健康医療器具

【課題】
荷電粒子浸透効果を主とし、磁力線効果、赤外線効果との相乗効果を効率的に発揮し、宝飾品としても使用できる健康医療器具を提供する。
【解決手段】
人体の加温効果による熱電素子の熱起電力を利用した。人体内部への継続的な荷電粒子浸透効果が維持される。熱電素子の近傍に磁石又は赤外線放射材料を配置して、磁力線及び赤外線放射効果を相乗的に発揮させる。磁力線発生には、熱電素子を埋めこんだ硬質磁石又は健康医療器具を構成する金属バンドに半硬質磁性材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子の人体浸透効果をもたらす健康医療器具、特に半導体熱電素子を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
磁力線の人体への血行促進効果を利用するため、磁石材料をチップ状化し、これを粘着テープ等で人体に貼りつけて健康医療器具として使用することは、広く行われている。
磁石には、(BH)maxが3程度のフェライト磁石、(BH)maxが5ないし10程度のアルニコ系金属磁石が用いられ、また最近では、(BH)maxが10ないし30にもなるエネルギー積の大きな希土類磁石が使用されている。
【0003】
赤外線にも、血行促進効果、神経繊維活性化効果、鎮痛効果等があることが認められ、磁石同様にチップ状に加工され、健康医療器具として使用されてきている。赤外線放射材料としては、波長100μm程度の遠赤外線を出すGeから、波長10−15μmの赤外線を出すトルマリン等も使用されてきている。
【0004】
また、トルマリン等の圧電焦電材料が体温により活性化されて出てくる荷電粒子の人体への浸透による筋肉の疲労回復効果、鎮痛効果も認識され利用されてきている。最近では、磁力線単体又は赤外線単体ではその作用効果が限定されるため、磁力線、赤外線及び荷電粒子の相乗効果を狙って磁石材料と圧電焦電効果を有する赤外線放射材料からなる複合磁石が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平05−347206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、提案されている圧電焦電材料、例えばトルマリンを使用した健康医療器具について言えば、赤外線は人体温度による加温効果が続いている間は活性化され、材料固有の赤外線を放射し、その効果は持続する。
しかしながら、荷電粒子は、トルマリンが体温により加熱されて結晶体が歪むとき、又は体温と健康医療器具の間の温度差の変化が継続して結晶が歪む時に発生するものであり、医療器具装着後、全体の温度が定常状態になると、圧電焦電材料は電気的には絶縁体に属するため、その放出電荷量は激減し、荷電粒子の効果は期待できなくなる。即ち、圧電焦電材料の電荷放出効果は健康医療器具の温度が定常状態に達するまでの時間に限られ、その作用効果は時間的に限定される。
【0006】
荷電粒子の効果と赤外線及び磁力線の相乗効果を目的として製造されている磁石粉末と赤外線粉末の混合体をプレス成型して作成される複合磁石では、荷電粒子の効果を特に増すため、赤外線荷電粒子粉末であるトルマリン粉末を予めカップリング剤で絶縁コートして、樹脂成型する製造方法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献2】特開2001−126908号公報
【0007】
希土類磁石は導電性の金属材料であり、赤外線をほぼ完全に反射する。フェライト磁石は絶縁体であり、赤外線を透過させる。そのため、磁石材料による赤外線の吸収ロスは余りないと思われるが、樹脂は基本となる高分子主鎖に付随した官能基による赤外線吸収能が大きいので、磁石内部の赤外線放射材料が体温で活性化されて出てくる赤外線は途中で吸収され、複合磁石表面には到達し難い。そのため、配合された赤外線放射材料は有効に利用されていない。
【0008】
また、荷電粒子の人体浸透効果についていえば、発生する電荷は定常状態に達するまでの時間限定的なものであり、圧電焦電材料であるトルマリンの表面が絶縁された場合は、荷電粒子は絶縁膜を通りにくいので、その効果は殆ど期待できない。また、絶縁膜を抜けた荷電粒子もボンド樹脂中の電荷のライフタイム及び移動度は大きくないため、樹脂中でトラップされ、例えトルマリンから電荷が発生しても人体表面に達する量は小さく、この意味でも、従来型の複合磁石タイプでの電荷浸透効果は殆ど期待できない。このため、本発明者は、磁力線の遠接作用効果と赤外線及び荷電粒子の近接作用効果を利用した表面コート型複合磁石を特願2006-42915で提案したが、電荷浸透効果は時間的に限られる。
【0009】
本発明は、上記従来の複合磁石を用いる健康医療器具の欠点を排除するためになされたものである。すなわち、本発明が解決しようとする第一の課題は、荷電粒子の人体表面への浸透効果の時間的制約をなくし、装着している時には常に荷電粒子を人体に浸透させることができる健康医療器具を提供することにある。また、第二の課題は、荷電粒子の人体表面への浸透効果の時間的制約をなくし、装着している時には常に荷電粒子を人体に浸透させつつ、磁力線と赤外線の相乗効果も十分に発揮する健康医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記第一の課題を解決するために、半導体熱電素子をその一方の電極が人体側に存在し、他方の電極が人体と反対側に存在するように配設して健康医療器具を構成したことを特徴とする(請求項1)。
すなわち、電荷発生素子として温度差により定常的に電荷を発生する半導体熱電素子を、健康医療器具を身体に装着した時の人体接触面と外気接触面との温度差を利用して発電機能を発揮させるように、半導体素子の配置を工夫したものである。これにより、半導体熱電素子の体表面よりの加熱に基づく熱起電力による荷電粒子の皮膚浸透効果を利用することができる。
このように配置された熱電素子を有する健康医療器具を人体に装着して使用する場合は、その熱電素子の人体接触面と外気接触面では、体温による加熱効果と外気による表面冷却効果とで、常に温度差が生じている。熱電素子は、温度差により発電するため、健康医療器具として装着している時は、常に荷電粒子浸透効果が期待できる。ゼーペック効果は、熱電素子に温度差があれば発生するので、人体接触面と外気接触面のどちらの温度が高くても、起電力は発生する。どちらの温度が高いかよってプラスマイナスの極性が反転するのみであり、荷電粒子の作用効果には影響がない。
【0011】
本発明の好ましい実施態様は、半導体熱電素子として単体半導体のゼーペック効果及びこの効果をさらに高揚するPN接合半導体を使用したことを特徴とする(請求項2)。
半導体熱電素子の具体例として、単元素半導体であるGe,Siを、化合物半導体としてFeSiO2等の珪化物,Bi2Te3、PbTe等のカルコゲン化合物、Ca−Mn、Ca−Cr、Zn等酸化物又は金属不定比酸化物半導体を単独で又は組合せて使用することができる(請求項3)。
通常酸化物は絶縁体に近く比抵抗が大きいので、熱電半導体として使用する場合は、化学当量比からずらした不定比酸化物の形で使用される。
さらに、半導体熱電素子の近傍に磁石又は赤外線放射材料を含む複合磁石を配置することが好ましい(請求項4)。具体的には、酸化物又は希土類磁石に穴をあけ、中心部に熱電素子を埋め込むか、又は磁力線を出す金属健康医療器具に熱電素子を埋め込む構造が提案できる。場合によっては磁石材料の表面に赤外線放射材料をコートしても良い。これにより、荷電粒子浸透効果に加えて、赤外線及び磁力線の相乗作用を利用して身体に対する健康医療効果をより向上させることができる。
また、単体熱電半導体では電極が対向面になるため、外側電極に健康医療器具を構成する金属を密着させて、その金属で熱電素子冷却端及び電荷粒子の人体への浸透用電極を兼ねる構造にすることが望ましい(請求項5)。
PN接合熱電素子は、電極が同一面に来るため、人体に電極面を接触でき、荷電粒子浸透効果が発揮できる。このため、健康医療器具を構成する金属に穴又はスリットを開け、その穴又はスリットにPN接合熱電素子を樹脂又は低温半田蝋で固定して使用できる。場合によっては、PN接合熱電素子を磁石に埋め込み、その磁石を前記健康医療器具に埋め込んでもよい(請求項6)。
また、個別磁石の替わりに、加工性のよい抗磁力Hc400Oe以下の半硬質磁性材料でバンド(帯)状の健康医療器具を構成し、金属バンド全体より磁場を発生させても良い(請求項7)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、半導体熱電素子の体温による健康医療器具の人体接触面側と外気接触面側の温度差により発生する電力に基づく荷電粒子浸透効果を利用するため、圧電焦電材料による時間的に限定された定常状態に達するまでの電荷発生とは異なり、本健康医療器具装着時には常に電荷の効果が期待できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、P型及びN型単体熱電素子又はPN接合型熱電素子を電気的に直列又は並列に接続して使用することにより、発生起電力を増加することができる。
請求項3の発明によれば、半導体熱電素子として、単元素半導体であるGe,Si、化合物半導体としてFeSiO2等の珪化物、Bi2Te3、PbTe等のカルコゲン化合物、Ca−Mn、Ca−Cr、Zn酸化物又は金属不定比酸化物を使用する場合は、これらの半導体はキャリア荷電粒子の数が金属に比べて3桁程少ない10E19個 /ccになるようドーパント不純物濃度を制御するため、温度差によるキャリアの濃度分布の差が大きくとれ、ゼーペック係数が金属より1ないし2桁大きく比抵抗も比較的小さいので電荷浸透効果は大きい。絶縁物はキャリアの数が少ないので、起電力があっても比抵抗が数kΩ−cm以上と大きく電流が流れないので荷電粒子浸透効果は期待できない。
請求項4の発明によれば、荷電粒子浸透効果に加えて磁力線及び赤外線の相乗効果が期待でき、人体に対する効果が一層向上する。
請求項5の発明によれば、P型又はN型単体熱電素子の場合は健康医療器具を構成する金属バンド(腕輪、指輪等)に熱電素子の電極を兼ねる冷却端を密着させて放熱効果を上げ、反対側電極を人体に密着させて、温度差をつくり、発生起電力を増加させ、荷電粒子浸透効果を増すことができる。
請求項6によれば、PN接合型半導体熱電素子の場合は、単体熱電素子に比較して熱起電力が大きいので、健康医療器具を構成する金属バンドの外気接触面にPN接合面を、反対側の電極を人体接触面側に埋め込み、プラスマイナス電極線を金属バンドに接続し、金属バンドを人体電荷浸透電極として使用することができる。
請求項7によれば、健康医療器具を構成する金属バンドを半硬質磁性材料で作り、人体に弱磁場を作用させて相乗効果を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、荷電粒子浸透効果を高めるため、半導体熱電素子を健康医療器具に使用して人体温により温度差を発生させ、ゼーペック効果により発生する持続的な起電力を荷電粒子浸透に使用するものである。
固体材料の温度差により発生する起電力を利用する場合は、その性能係数は数式(1)で示される。
Z= Sの2乗/ KxΩ ・・・・・・(1)
Zは性能指数、Sは材料に発生する起電力(ゼーペック係数)、
Kは材料の熱伝導率、Ωは材料の比抵抗。
金属は、伝導電子が多いため、温度差による電子の拡散により生じる熱起電力は10μV/℃程度と小さく、また電子による熱伝導が大きいため、性能指数は小さい。
逆に、絶縁物は熱拡散による移動電子が少なく、熱起電力も比較的小さく、電気抵抗も高いので、同じく性能指数は小さい。チタン酸化物では、100μV/K程度の熱起電力をもつ化合物もあるが、比抵抗が1KΩ−cm程度と大きく、厚さ1mmX4mmφの円盤に加工しても素子の内抵抗は1kΩを切ることが難しく、 150−300Ωと言われる人体内部抵抗を無しにしても、最大0.1μA程度の電流しか流れず、生体電流20−60μAに比較して小さく、有効性は期待できない。このため、中間的な性質を持つ半導体熱電素子が利用される。単体元素であるGeとSiを熱電半導体として使用する場合は、半導体電気回路に使用する場合と異なり、10E19個/cc程度と高濃度アクセプター又はドナーをドープした不純物半導体が使用される。半導体熱電素子の熱起電力は、300−400μV/℃にもなるので、温度差が10−3℃あれば、生体電流効果が期待できる。
起電力が不足する場合は、P型及びN型半導体熱電素子を1個又は複数個直列接続したものを使用する。P型素子及びN型素子の1組を使用した場合は、各単体素子が300μVの起電力があれば、PN接合一組で600μ/℃の起電力が期待できる。この素子を10組直列した熱電素子を温度差5℃で使用した場合は、30mVの起電力が期待できる。
また、半導体熱電素子の近傍に赤外線放射材料及び磁石又は赤外線放射材料と磁石粉末の混合体から成型された複合磁石を使用した場合は、赤外線、荷電粒子と磁力線の複合効果が期待できる。この場合、赤外線輻射材料としては禁止バンド幅1.5eV以上の絶縁体赤外線輻射材料と、禁止バンド幅0.4eV以下の半導体赤外線輻射材料とを共用して、波長の異なる赤外線を同時に使用することが望ましい。
絶縁体赤外線輻射材料としては、トルマリン、黒水晶等が従来より使用されているが、火薬の爆発力で作成されるダイヤモンド超微粒子(UDD:Ultra-Dispersed Diamonds)の使用も好ましい。このダイヤモンドは、中心核が単結晶ダイヤで、その表面がSP2構造に近い薄いグラファイトライク層で覆われた特殊な構造をもっているため、全波長で赤外線輻射能が大きい。半導体赤外線輻射材料としては、Ge,InSb等が挙げられる。
【0015】
本発明の具体例として、半導体熱電素子にBi−Te熱電半導体を用いる例について説明する。
P型及びN型不純物《アクセプターとドナー》を入れたBi−Te合金を、不活性雰囲気中で坩堝にて溶解した後、冷却された金属ロールに吹きつけて急冷凝固させる。得られた薄片Bi−Te合金をメカニカル・アトライター又はボールミルにて粉砕する。急冷凝固品は結晶粒が細かいので、得られた粉末の粒子サイズは細かくなる。得られた粉末に、必要ならば結合剤を加えて、所定の型に粉末燒結成型して、P型又はN型単体熱電素子を作る。PN接合型熱電素子の場合は、アルミナ等絶縁物紛体をP型及びN型熱電素子粉末の間に入れて、複数層を構成し、同時にプレス成型燒結する方法も選択できる。
成型方法は、粉末燒結以外に、真空蒸着、スパッタ、溶射方法等が適用できるが、熱電素子構成結晶は、微細化されることが好ましい。
熱電素子の性能指数は、前掲数式(1)に示されるように、ゼーペック係数、熱伝導率、電気伝導率で決定される。ゼーペック係数及び電気伝導率は半導体中のキャリア濃度の関数であり、最適値が存在する。熱伝導率は、熱励起キャリアよって運ばれる熱と格子振動フォノンによって運ばれるものの和で決定される。熱励起キャリアは、荷電粒子を運ぶため、ある割合より減らすことができず、最適キャリア濃度が存在する。最適値は通常10E19個 /ccのキャリア濃度と一致する。したがって、性能指数を上げるためには、格子振動フォノンによって運ばれる熱伝達を減らす必要がある。
結晶粒が微細化されると、結晶粒界面では荷電粒子及びフォノン振動が妨げられるが、キャリアの方が波長が長いので、粒界面での影響を受け難く、結果として性能指数が向上する。このため、熱電素子の結晶粒は、どのような製法がとられようとも、微細化は必要である。
【0016】
熱電素子と併用される磁石材料としては、フェライト磁石及び希土類磁石又はアルニコ等の金属磁石が使用される。磁石としては、バリウムフェライト磁石、Sm−Fe−N希土類磁石、Fe−Ni−Co系のアルニコ磁石も挙げられるが、Fe−Cr―Ni系 Fe−Co−V系等半硬質磁性材料は、圧延線引加工が可能であるので、健康器具金属バンドとして好ましい。抗磁力Hc400Oe以下の機械加工性の良い半硬質磁性材料との組み合わせも有効である《請求項7》。抗磁力400Oeを超える半硬質磁性材料は、機械的に脆くなるので、金属バンドの製造が難しくなり、実用的ではなくなる。
【0017】
同時に使用される赤外線輻射材料としては、波長10−16μmの赤外線を出す禁止バンド幅1.5eV以上の圧電焦電材料、例えばトルマリン、及び波長50μm以上の赤外線を出す禁止バンド幅0.4eV以下の半導体、例えばGeを同時に使用することが好ましい。熱電半導体は、通常禁止バンドが0.4eV以下で遠赤外線も同時に放出するので、短波長赤外線単独使用でも、場合によっては、効果が期待できる。また、単一材料で全波長の赤外線を効率よく出すUDDダイヤモンド微粒子を使用すれば、製造工程が簡単になる。
【実施例】
【0018】
続いて、本発明を腕輪の形態に具現化した場合の実施例について説明する。
図1は本発明の第1実施例の健康医療器具である腕輪の正面図、図2は同腕輪の構成要素である金属帯及びその金属帯に埋め込まれる熱電素子の拡大図であり、図3は第2実施例の健康医療器具である腕輪の一部透視正面図、図4は同腕輪の金属帯に埋め込まれているPN接合熱電素子の例を示す拡大図、図5は第3実施例になる腕輪の構成要素である熱電素子と磁石及びこれを組み込んだ金属帯の構造を示す断面図、図6は第4実施例になる腕輪の構成要素である半硬質磁性材料金属帯の構造を示す断面図である。
【0019】
図1に示す第1実施例である腕輪Aは、非磁性Ti系合金からなる複数個の円弧状の金属帯1をその両端に設けてある結合リング2同士をチェーン接続して環状バンドに構成され、互いに対向する位置に存在する金属帯1a,1bにBi−Te系半導体を直列接続するようにP型熱電素子3pとN型熱電素子3nを熱起電力の極性が互いに逆になるように向けて埋め込んである。P型熱電素子3pとN型熱電素子3nは、図2に示すように、両端に極性が互いに異なる電極P1,P2を有するもので、一方の電極P2は金属帯1の人体接触面側に突出され、他方の電極P1は金属帯1の外気接触面側に位置されている。
熱起電力の極性が互いに逆になるので、出力が倍になる。図2において、T1,T2は温度であり、T1とT2が異なる時には常に起電力が生じる。
【0020】
図3に示す第2実施例である腕輪Bは、非磁性Ti系合金からなる一つの金属帯1の中に図4(a)に示される1個のPN接合型熱電素子3pnを埋め込んで、腕輪の半分ずつを身体荷電粒子浸透電極とした構成を有するものである。図3の1dは、絶縁端子である。更に起電力を必要とする場合は、PN接合型熱電素子に代えて、図4(b)に示されるような複数個のPN接合型熱電素子を同様に用いることもできる。
【0021】
図5は、第3実施例である腕輪(C、図示省略)の構成要素である非磁性Ti系合金からなる金属帯1に、フェライト磁石4の中心に熱電素子3を埋め込んでユニット化した素子を固定したものである。
【0022】
図6は、第4実施例である腕輪(D、図示省略)を構成する金属帯1に、Fe−18Cr−9Ni系半硬質磁性ステンレスを使用し、その金属帯1に熱電素子3を埋め込んだものである。半硬質磁性材料の磁気特性は、Bs2200G,Br460G,Hc120Oeであった。
【0023】
前記腕輪(C)のフェライト磁石4の人体接触面及び腕輪(D)の半硬質磁性材料表面に、それぞれ、ルテニウム酸化物及びUDDダイヤモンドを含む赤外線放射材料をコートしたもの(E)を第5実施例として製作した。
【0024】
上記各実施例の腕輪(A)〜(E)を腕に装着し、所定時間後の体温上昇効果をサーモグラフで測定し、筋肉疲労回復効果による血流促進の評価をした。
(A)人体による加温により4度の温度差が得られ、発生する起電力として24mVが得られ、10μA程度の荷電粒子浸透効果が得られた。
(B)人体による加温で3mV(PN接合1組)及び2.4mV(15組複数PN接合)の電圧が発生し、約3及び30μAの荷電粒子浸透効果が得られた。
(C)前の実施例と同じ荷電粒子浸透効果に加えて、磁力線強度500Gが得られ、磁気荷電粒子の相乗効果が得られた。
(D)50Gの弱磁場が発生し、荷電粒子浸透効果と磁力線を併用し、相乗効果を得た。
(E)荷電粒子浸透効果、磁力線効果、赤外線効果の相乗効果を得た。
【0025】
測定結果 サーモグラフによる平均温度上昇
(A) 2.0℃
(B) 2.5℃(PN接合1組) 3.5℃(15組PN接合)
(C) 3.7℃(15組PN接合) 2.6℃(P及びN素子)
(D) 3.9℃(15組PN接合) 2.8℃(P及びN素子)
(E) フェライト磁石表面赤外線コート(ルテニウム酸化物) 4.0℃(15組PN接合)
半硬質金属バンド赤外線コート(UDDダイヤモンド) 4.2℃(15組PN接合)
【0026】
上記測定結果から明らかなように、人体の加温による熱起電力を使った荷電粒子浸透効果を利用した本発明に係る健康医療器具は、筋肉疲労回復効果による血行促進による体温上昇が大きい。
さらに、磁力線及び赤外線の相乗効果を併用すると、効果が一層促進される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の半導体熱電素子の体温加熱による熱起電力を利用した荷電粒子浸透効果及び磁力線と赤外線効果の人体に対する複合作用を利用した健康医療器具は、ネックレス、腕輪、指輪、足輪、肌着、靴下、腹巻、シーツ、枕及び寝具等の必要とされる形状に成型して使用する以外に、動物用医療器具としても応用できる。
特に、従来の圧電焦電材料の定常温度に達するまでの時間限定的な電荷浸透効果と異なり、定常的に電荷が流れるため、健康医療器具としての効果は著しく大きい。
愛玩動物は、人体より体温が高いものが多いので、特に有効であると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例の健康医療器具である腕輪の正面図。
【図2】同腕輪の構成要素である金属帯及びその金属帯に埋め込まれる熱電素子の拡大図。
【図3】第2実施例の健康医療器具である腕輪の一部透視正面図。
【図4】同腕輪の金属帯に埋め込まれている熱電素子の例を示す拡大図。
【図5】第3実施例になる腕輪の構成要素である金属帯及び熱電素子の構造を示す断面図。
【図6】第4実施例になる腕輪の構成要素である金属帯の構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
A,B 腕輪(健康医療器具)
1 金属帯
2 結合リング
3 熱電素子
3p P型熱電素子
3n N型熱電素子
3pn PN接合型熱電素子
3pn’ PN連続型熱電素子
P1,P2 電極
4 永久磁石
5 半硬質磁性材料金属帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体熱電素子をその一方の電極が人体側に存在し、他方の電極が人体と反対側に存在するように配設してなる健康医療器具。
【請求項2】
半導体熱電素子は、P型及びN型単体半導体又はPN接合型半導体である請求項1記載の健康医療器具。
【請求項3】
半導体熱電素子として単元素半導体であるGe,Siを、化合物半導体としてFeSiO2等の珪化物,Bi2Te3、PbTe等のカルコゲン化合物、Ca−Mn、Ca−Cr、Zn等酸化物を単独で又は組合せて使用した請求項1又は2記載の健康医療器具。
【請求項4】
半導体熱電素子の近傍に磁石又は赤外線放射材料を含む複合磁石を配置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の健康医療器具。
【請求項5】
単体半導体熱電素子の互いに反対側の面に電極金属を着け、一方の電極金属を人体表面に近接又は密着させる加熱端とし、他方の電極金属を健康医療器具を構成する金属部材に接続して冷却端としたことを特徴とする請求項1,2,3,又は4記載の健康医療器具。
【請求項6】
PN接合型半導体熱電素子を健康医療器具を構成する金属部材に樹脂又は低温半田蝋により1個又は複数個埋め込んであることを特徴とする請求項2記載の健康医療器具。
【請求項7】
金属部材として、抗磁力Hc400Oe以下の半硬質磁性材料を用いたことを特徴とする請求項6記載の健康医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319248(P2007−319248A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150279(P2006−150279)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(395003486)株式会社ナック (5)
【Fターム(参考)】