説明

側溝嵩上げ材、及びこれを使用した側溝の嵩上げ工法

【課題】既に埋設されている側溝20をそのまま利用することができて、地盤の嵩上げを行うことのできる側溝用嵩上げ材を簡単な構成によって提供すること。
【解決手段】埋設されている側溝20内の嵩上げ材料33上に載置されて、排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とにより構成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の嵩上げを行うに際して、既に設置されている側溝の嵩上げを、この側溝の除去作業を全く行わないでできるようにした側溝嵩上げ材、及びこれを使用した側溝の嵩上げ工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、同じ敷地内で家の新築や増築を行う場合に、周囲の環境変化などによって地盤の嵩上げをする必要がある。そのような場合に、その新築または増築すべき敷地を「更地」にしておいてから客土して、これよってできた図1の(イ)に示すような嵩上げ地盤面32上に建築作業を始めることが一般的であった。
【0003】
このとき、図1の(ロ)に示すように、もし敷地内に側溝20が施工してあれば、この側溝20を除去してから更地工事を行うのが一般的であったのであるが、この側溝20の除去作業はそれだけでも大変であり、また除去した側溝20の廃棄処理も近年では行い辛くなってきている。
【0004】
そこで、本発明者等は、既に埋設されている側溝20を除去しないで、嵩上げ地盤面32を形成するようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねたところ、特許文献1に提案されているような「嵩上げ側溝用ブロック及びその施工方法」を見出した。
【特許文献1】特開平8−209792号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載された技術は、「構造が簡単で廉価に製造することができ、且つ施工が容易なものを提供すること」を目的としてなされたもので、図9に示すように、「U字形の側溝11と、該U字形の側溝11の開口部上方に設置する一部に導水穴15を備えた嵩上げブロック13とから構成され、該嵩上げブロック13を前記U字形の側溝11に対し上下方向に調整可能となるようレベル調整金具16により連結する構成としたこと」を特徴とするものであり、この特許文献1の「嵩上げ側溝用ブロック」は、埋設されている側溝の除去を行わないで、地盤の嵩上げが行えるものと考えられる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の「嵩上げ側溝用ブロック」は、下側の側溝側に「レベル調整金具16」が取り付けられる「ボルト18」が設けられていることが前提となっているものであり、図1の(ロ)に示した側溝20のような既設の側溝を前提としてはいないものである。つまり、この特許文献1に記載された「嵩上げ側溝用ブロック」は、埋設されている古い側溝20には適用することができないものとなっている。
【0007】
まして、この特許文献1の「ブロック」は、図9に示したように、「レベル調整金具16」によって下側の側溝に連結しなければならないものであるから、埋設されている側溝20と同じ幅を有している必要があると考えられる。それだけでなく、この特許文献1の「ブロック」は、当該文献中にはハッキリと明示はされていないものの、所謂コンクリート製のものとして製造しなければならないと考えられ、相当な重量物となっていて運搬や施工が困難になっているものとも考えられる。
【0008】
そこで、本発明者等は、既に埋設されている側溝20がどんな形状のものであっても、これを埋設したままの状態で利用しながら地盤の嵩上げが行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明の目的とするところは、既に埋設されている側溝20をそのまま利用することができて、地盤の嵩上げを行うことのできる側溝用嵩上げ材、及びこれを使用した地盤嵩上げ工法を簡単な構成によって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「埋設されている側溝20内の嵩上げ材料33上に載置されて、排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とからなることを特徴とする側溝嵩上げ材10」
である。
【0011】
すなわち、この請求項1に係る側溝嵩上げ材10は、合成樹脂や金属板によって一体的に形成される軽量なものであり、既設の側溝20内に入れた、土砂や砕石等の嵩上げ材料33の上に載置される底板部11と、この底板部11の両側から立ち上がる側板部12と、左右両側に開口している開口13とからなっているものである。このように、この側溝嵩上げ材10は構成が非常に簡単なものであるから、特許文献1にて提案されているブロックに比較すれば、その合成樹脂や金属板による製造が非常に簡単に行えるのであり、軽量であることから、運搬や次に示す施工も非常に簡単に行えるのである。
【0012】
また、この側溝嵩上げ材10は、図1の(イ)に示すように、嵩上げ材料33を入れた既設の側溝20内にそのまま入れて使用されるものであり、各側板部12の支持は、それ自体の剛性、後に周囲になされる客土、あるいは既設の側溝20の内壁をそのまま利用してなされるものである。勿論、この側溝嵩上げ材10は、既設の側溝によって形成されている水路の長さとなるに必要な数が使用されるのである。
【0013】
さらに、この請求項1に係る側溝嵩上げ材10は、文言通りに図示すると、図2の(イ)に示すものになるのであるが、図2の(ロ)に示すようなフランジ部16を有するものも含むものであり、更には、図3に示すような種々な重ね合わせ部14を有するものも含むものである。そして、この請求項1の側溝嵩上げ材10は、図5〜図8に示すグレーチング15を有するものをも含むことは当然である。
【0014】
勿論、この側溝嵩上げ材10は、規定長さのものとして形成しておかれるものであり、排水路の長さに応じて複数のものを組み合わせて使用されるものである。このとき、既設の側溝20内での、当該側溝嵩上げ材10の支持が十分であれば、その各開口13を突き合わせて連結すればよい。それだけでは連結が不安定になるようであれば、後述する請求項2の側溝嵩上げ材10等のように、重ね合わせ部14を積極的に形成すればよい。この重ね合わせ部14は、二つの側溝嵩上げ材10を互いに接合させるにあたって、他の側溝嵩上げ材10に部分的に重なるようにして当該側溝嵩上げ材10を施工するものであり、図3及び図4に示すように、接合される二つの側溝嵩上げ材10の端部において重なり合い部分を形成するものである。
【0015】
なお、複数の側溝嵩上げ材10が使用された場合、その繋ぎ目部分は、既設の側溝20がそれまで十分機能を発揮していたものであれば、完全に塞ぐ必要はない。当該側溝嵩上げ材10によって形成された水路から排水が下に漏れたとしても、既設の側溝20がこれを受け取るからである。
【0016】
この請求項1に係る側溝嵩上げ材10の実際の施工方法を、図1を参照して説明すると、まず、既設の側溝20内に嵩上げ材料33を投入して、側溝嵩上げ材10側の底板部11が載置され得る場所を形成する。この場合、嵩上げ地盤面32が既に設計されているから、側溝嵩上げ材10の高さと側溝20の深さから嵩上げ材料33を入れる高さを逆算しておき、その値通りの深さに嵩上げ材料33を投入すればよい。
【0017】
次に、各側溝嵩上げ材10を側溝20内に入れるのであるが、このとき、各側溝嵩上げ材10の側板部12は底板部11に対して多少広がった状態で形成されているとよい。何故なら、当該側溝嵩上げ材10を側溝20内に入れたとき、各側板部12が側溝20の内面に弾力的に当たるようにできるからであり、各側溝嵩上げ材10の位置決め固定が簡単に行えるからである。そして、各側溝嵩上げ材10間のレベル調整や隙間調整を行った後、各側溝嵩上げ材10の周囲に客土を行うのである。
【0018】
これにより、各側溝嵩上げ材10の施工が完了するから、後は、敷地内への客土を行って、図1の(イ)に示した嵩上げ地盤面32を形成するのである。
【0019】
従って、この請求項1の側溝嵩上げ材10は、既に埋設されている側溝20をそのまま利用することができて、地盤の嵩上げを簡単に行うことができるものとなっているのである。
【0020】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の側溝嵩上げ材10について、
「側板部12または底板部11の少なくともいずれか一方の端部に、他の側溝嵩上げ材10の端部に重ね合わせられる重ね合わせ部14を形成したこと」
である。
【0021】
すなわち、この請求項2の側溝嵩上げ材10は、複数のものを連結して使用するのに適したものとしたものであり、図3の(イ)または(ロ)に示すように、側板部12または底板部11の少なくともいずれか一方の端部に重ね合わせ部14を形成したものである。
【0022】
この重ね合わせ部14は、図3の(イ)に示すような開口13の小径部13a、または図3の(ロ)に示すような薄肉部14cと段部14dとの組合せであってもよく、さらには、図4に示したような形状のものであってもよい。勿論、小径部13aや薄肉部14cのような重ね合わせ部14は、当該側溝嵩上げ材10を複数連結する場合の位置決めや補強を行い、あるいは流れてきた汚水の次への流し込みを良好に行うためのものであるから、底板部11あるいは各側板部12のいずれか少なくとも一つに形成してあればよいものである。
【0023】
また、この重ね合わせ部14は、二つの側溝嵩上げ材10を互いに接合させるにあたって使用されるものであったが、図3及び図4に示すように、接合される二つの側溝嵩上げ材10の端部において重なり合い部分を形成するのである。この重ね合わせ部14が存在することによって、当該側溝嵩上げ材10を複数使用したとき(当然この側溝嵩上げ材10は規定長さのものとしておき、排水路の長さに応じた複数のものが使用される)の互いの位置が規定されることは当然として、形成した排水路について、接合部における隙間が発生しないようにするものでもある。
【0024】
従って、この請求項2の側溝嵩上げ材10は、上記請求項1のそれと同様な効果を発揮する他、排水機能をより確実にすることができるものとなっているのである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項2に記載の側溝嵩上げ材10について、
「重ね合わせ部14は、開口13の一方の大きさを他方のそれより小さくした小径部13aであること」
である。
【0026】
すなわち、この請求項3の側溝嵩上げ材10における重ね合わせ部14は、文字通り、複数の当該側溝嵩上げ材10の重ね合わせを行えるようにするものであるから、上記請求項2の説明で例示したように種々なものが適用できるものであるが、開口13の一方の大きさを他方のそれより小さくした小径部13aとするのが最も効果的で製造上でも効率がよいものである。何故なら、当該側溝嵩上げ材10を金属によって形成するにしろ、合成樹脂によって形成するにせよ、いずれの場合も「製造型」において、開口13の一方の大きさが他方のそれより小さくなるような小径部13aが形成できるようにしておけばよく、特別な材料を必要としないからである。
【0027】
このような開口13の小径部13aを重ね合わせ部14とした側溝嵩上げ材10では、図3の(イ)及び(ロ)に示すように、接合される二つの側溝嵩上げ材10の端部において重なり合い部分を形成するのである。この重ね合わせ部14が存在することによって、当該側溝嵩上げ材10を複数使用したときの互いの位置が規定されることは当然として、形成した排水路について、接合部における隙間が発生しないようになされるのである。
【0028】
図3の(イ)に示した小径部13aでは、両側溝嵩上げ材10が薄い板厚のものである場合に適したものを例示しているが、この場合には、一方の側溝嵩上げ材10の一つの端部を窄めて小径部13aとしておき、この小径部13aが内嵌合できるように、他方の側溝嵩上げ材10の端部はそのままに形成した最も簡単な構成としたものである。これに対して、図3の(ロ)に示した重ね合わせ部14では、両側溝嵩上げ材10が比較的厚い板厚のものである場合(例えばコンクリートで形成した場合など)に適したものを例示しているが、この場合には、一方の側溝嵩上げ材10の一つの端部に薄肉部14cを形成しておき、この薄肉部14c(実際上はこれが小径部13aに該当する)が内嵌合できるように、他方の側溝嵩上げ材10の端部に段部14dを形成したものである。
【0029】
従って、この請求項3の側溝嵩上げ材10は、上記請求項1及び2のそれと同様な効果を発揮する他、重ね合わせ部14を小径部13aとして側溝嵩上げ材10全体の製造を簡単にできるものとなっているのである。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項2または請求項3の側溝嵩上げ材10について、
「重ね合わせ部14に、他の側溝嵩上げ材10の端部との係止を行う係合部14aを形成したこと」
である。
【0031】
すなわち、この請求項4の側溝嵩上げ材10は、図3または図4に示すように、他の側溝嵩上げ材10に対して係合し得る係合部14aを、重ね合わせ部14に形成したものであり、この係合部14aは、他の側溝嵩上げ材10の開口13近傍に形成した係合穴14b等に係合されるものである。この係合部14aは、上述した重ね合わせ部14に形成したり、この重ね合わせ部14が小径部13aであるものについては、当該小径部13aつまり底板部11または側板部12の何れか一方に形成したりして実施できるものであり、上述した係合穴14b、あるいは他の部材や部分に係合されて、隣接し合う側溝嵩上げ材10同士の位置決め及び連結固定を行うものである。
【0032】
従って、この請求項4に係る側溝嵩上げ材10は、上記請求項2または請求項3のいずれかに記載のそれと沿うような機能を発揮する他、隣接し合う側溝嵩上げ材10の位置決め及び連結固定を確実に行うことができるものである。
【0033】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の側溝嵩上げ材10について、
「側板部12のいずれか少なくとも一方を底板部11に対して外方向に傾斜させたこと」
である。
【0034】
すなわち、この請求項5の側溝嵩上げ材10では、図1及び図2に示すように、両側板部12のいずれか少なくとも一方を外方に広げたものである。
【0035】
このように、側板部12が広げられていれば、当該側溝嵩上げ材10の複数を保管したり運搬したりする場合に、複数の側溝嵩上げ材10の積み重ねが効率的に行えるものである。また、各側板部12の上端部が既設の側溝20の開口より広がっていれば、各側板部12の側溝20に対する固定や位置決めを、図1の(イ)に示すように、側板部12の側溝20に対する当接によって行うこともできることになる。
【0036】
従って、この請求項5の側溝嵩上げ材10は、請求項1〜請求項4のいずれかのそれと同様な効果を発揮する他、複数のものの積み重ねを効率的に行うことができるものとなっているのである。
【0037】
さらに、上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の側溝嵩上げ材10について、
「両側板部12上に覆い被せられて、これらの側板部12の少なくともいずれか一方に係止されて当該側溝嵩上げ材10に対する位置決めを行う係止部15aを有したグレーチング15を有したこと」
である。
【0038】
すなわち、この請求項6の側溝嵩上げ材10は、図5〜図8に示すように、グレーチング15をも有したものであり、このグレーチング15は、その裏面などに形成した係止部15aによって底板部11側に係合されるものである。
【0039】
グレーチング15は、種々なものが適用できるが、この請求項6に係る側溝嵩上げ材10では、このグレーチング15は、両側板部12上に載置または覆い被せられて、これらの側板部12の少なくともいずれか一方に係止されながら当該側溝嵩上げ材10に対する位置決めを行う係止部15aを有したものとしてある。
【0040】
つまり、この側溝嵩上げ材10では、図5、図6あるいは図8に示すように、グレーチング15が両側板部12上に載置または覆い被せられるものであるから、当該側溝嵩上げ材10の覆いを行って側溝嵩上げ材10内に落ち葉やゴミが入らない。また、グレーチング15に形成してある係止部15aは、側板部12の少なくともいずれか一方に係止されて当該側溝嵩上げ材10に対する位置決めを行うものであるから、側溝嵩上げ材10への覆蓋施工が簡単に行えるだけでなく、側溝嵩上げ材10の覆蓋そのものを常に安定した状態で行えるのである。
【0041】
特に、図5に示すグレーチング15は、フランジ部16がない側溝嵩上げ材10全体に覆い被せられるものであり、係止部15aは各側板部12の上部外面に係合されるものである。図6に示すグレーチング15は、側溝嵩上げ材10がフランジ部16を有する場合を想定したもので、各側板部12の上部内面に係合される係止部15aを有しているとともに、当該グレーチング15が側溝嵩上げ材10内に落ち込まないようにするための載置部15bを外端部に形成して、この載置部15bをフランジ部16上に載置するようにするものである。
【0042】
また、図7あるいは図8に示す側溝嵩上げ材10では、係止部15aをグレーチング15の裏面に一体化したものであり、この係止部15aが側溝嵩上げ材10側の側板部12の外側または内側に嵌合できるようにしたものである。特に、図8に示した係止部15aは側溝嵩上げ材10側の側板部12の外側に嵌合されるものであり、図8の(イ)に示すように、この係止部15aを側溝嵩上げ材10側の側板部12に対して止め具15d等によって位置決め固定できるようにしたものである。
【0043】
この止め具15dによる位置決め固定を行うとき、最良形態の側溝嵩上げ材10では、図8の(ロ)に示すように、当該止め具15dが上下動できるような長穴15eが係止部15aに形成してあり、この長穴15e内の適宜位置で止め具15dの固定が自由に行えるようにしてある。排水路を形成するための側溝嵩上げ材10は、排水が流れ易いようにするために一定の傾斜状態で施工しなければならないものであるが、この側溝嵩上げ材10の上に載置または覆い被せられる各グレーチング15によって形成される面は水平面である必要がある。そうすると、僅かに傾斜している側溝嵩上げ材10に対するグレーチング15の固定は当然のことながら一致しないことになるが、その場合の微小な調整がこれらの止め具15d及び長穴15eによって確実になされるのである。
【0044】
従って、この請求項6の側溝嵩上げ材10は、請求項1〜請求項5のいずれかのそれと同様な効果を発揮する他、グレーチング15によって情報開口の覆蓋が行えるものとなっているのである。
【0045】
また、上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の側溝嵩上げ材10について、
「各側板部12の上端に一体化されて、外方または内方に突出するフランジ部16を形成したこと」
である。
【0046】
すなわち、この請求項7の側溝嵩上げ材10は、図1の(イ)、図6あるいは図7に示すように、各側板部12の上端に外方または内方に突出するフランジ部16を形成したものであり、このフランジ部16によって側板部12の上端部が平らになるようにしたものである。
【0047】
つまり、各フランジ部16は、各側板部12の上部の剛性を高めるものであり、運搬や保管を安定した状態で行うことを可能にするだけでなく、施工後の当該側溝嵩上げ材10の安定化をも図るものである。また、このフランジ部16は、これによって当該側溝嵩上げ材10の外側に施工した客土上を覆うこともできるから、当該側溝嵩上げ材10と客土との間に隙間が形成されることを防止するものでもある。なお、このフランジ部16は、当該側溝嵩上げ材10全体の剛性を高めるものとなっている他、当該側溝嵩上げ材10を施工するに当たっての手掛けともし得るものであり、設置施工を容易にするものである。
【0048】
さらに、フランジ部16を有する側溝嵩上げ材10については、各フランジ部16がグレーチング15の載置または覆い被せを安定的に行えるようにするだけでなく、当該側溝嵩上げ材10と客土との間に隙間が形成されることをも防止する。
【0049】
従って、この請求項7の側溝嵩上げ材10は、請求項1〜請求項6のいずれかのそれと同様な効果を発揮する他、フランジ部16によって全体の剛性を高めているだけでなく、グレーチング15の載置を安定的に行えるようにもしているのである。
【0050】
さらに、上記課題を解決するために、請求項8に係る発明の採った手段は、上記請求項7に記載の側溝嵩上げ材10について、
「両フランジ部16上に載置されて、これらのフランジ部16の少なくともいずれか一方に係止されて当該側溝嵩上げ材10に対する位置決めを行う係止部15aを有したグレーチング15を有したこと」
である。
【0051】
すなわち、この請求項8の側溝嵩上げ材10は、グレーチング15を有したものであり、かつ、このグレーチング15はその係止部15aによってフランジ部16上に載置され、フランジ部16に係止されることになるものとしている。
【0052】
従って、この請求項8の側溝嵩上げ材10は、上記請求項7のそれと同様な効果を発揮する他、グレーチング15による効果をも発揮し得るものとなっているのである。
【0053】
そして、上記課題を解決するために、請求項9に係る発明の採った手段は、
「排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とからなる側溝嵩上げ材10を使用し、次の各工程を含む側溝20の嵩上げ工法。
【0054】
1埋設されている側溝20内に嵩上げ材料33を投入する工程;
2この側溝20内に側溝嵩上げ材10を入れて、その底板部11を嵩上げ材料33上に載置する工程;
3この側溝嵩上げ材10の周囲に客土する工程」
である。
【0055】
すなわち、この請求項9に係る嵩上げ方法は、基本的には、上述した各請求項に係る側溝嵩上げ材10を採用して、嵩上げしたい土地の嵩上げを行うものであり、その最大の特徴は、既設の側溝20を掘り起こさなくても、そのままの状態で既にあった排水路を確保できるようにした点である。
【0056】
この嵩上げ方法を実施するについては、上記各請求項の側溝嵩上げ材10を説明をする中で殆ど言い尽くしているから、ここでは省略する。
【発明の効果】
【0057】
以上、説明した通り、本発明においては、
「埋設されている側溝20内の嵩上げ材料33上に載置されて、排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とからなること」
あるいは、
「排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とからなる側溝嵩上げ材10を使用し、次の各工程を含む側溝20の嵩上げ工法。
【0058】
1埋設されている側溝20内に嵩上げ材料33を投入する工程;
2この側溝20内に側溝嵩上げ材10を入れて、その底板部11を嵩上げ材料33上に載置する工程;
3この側溝嵩上げ材10の周囲に客土する工程」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、既に埋設されている側溝20をそのまま利用することができて、地盤の嵩上げを行うことのできる側溝用嵩上げ材10、及びこれを使用した嵩上げ工法を簡単な構成によって提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である側溝嵩上げ材10について説明するが、この側溝嵩上げ材10は、上記各請求項に係る発明の全てを実質的に含むものである。
【0060】
図1の(イ)には、本発明に係る側溝嵩上げ材10、及びこれを使用した嵩上げ工法が完了した状態が示してあり、図1の(ロ)に示した原地盤面31の上に客土することにより、これより高い嵩上げ地盤面32が完成されている。ここで重要なのは、原地盤面31に既に施工してあった側溝20は、掘り起こして撤去することは行われていないことであり、むしろこの側溝20をそのまま利用しながら、本発明に係る側溝嵩上げ材10を使用して嵩上げ地盤面32上に排水路がそのまま形成されていることである。
【0061】
側溝嵩上げ材10は、図2の(イ)あるいは(ロ)に示したようなグレーチング15を有さないタイプのものと、図5〜図7に示したようなグレーチング15を有したものとがあるが、基本的には、埋設されている側溝20内の嵩上げ材料33上に載置されて、排水路面を形成することになる底板部11と、この底板部11から一体的に立ち上がる側板部12と、これらの側板部12と底板部11との端面に形成された開口13とからなるものである。この側溝嵩上げ材10は、金属や合成樹脂を材料として一体的に形成されたり、あるいは既設の側溝20と同様にコンクリートによって形成されるものである。
【0062】
また、この側溝嵩上げ材10は、図2の(イ)に示したように、各側板部12の上端にフランジ部16を有さないタイプのものと、図2の(ロ)に示したように、各側板部12の上端にフランジ部16を一体的に形成したタイプのものとが考えられる。フランジ部16を有さない側溝嵩上げ材10は、フランジ部16を形成しなくてよい分簡単に製造できるというメリットを有し、一方、フランジ部16を有する側溝嵩上げ材10は、このフランジ部16によって全体の剛性を高めたり、後述するグレーチング15の支持部としたりすることができるというメリットを有している。
【0063】
さらに、この側溝嵩上げ材10は、既設されていた側溝20による排水路を同じ位置に高さを変えて形成するためのものであるから、全体形状は、底板部11と、その両側から立ち上がる一対の側板部12からなる所謂「U字溝」としたものであり、その両端は開口13としてある。側溝嵩上げ材10の一方を閉じるということも考えられるが、一般的な建設資材とするためには、開口13を両端に形成しておいた方が汎用性が高まることはいうまでもない。
【0064】
このような「U字溝」である側溝嵩上げ材10では、その各側板部12のいずれか少なくとも一方を、開口13に対して外方に傾斜させたものとするとよい。側板部12が広げられていれば、当該側溝嵩上げ材10の複数を保管したり運搬したりする場合に、複数の側溝嵩上げ材10の積み重ねが効率的に行えるからである。また、各側板部12の上端部が既設の側溝20の開口より広がっていれば、各側板部12の側溝20に対する固定や位置決めを、図1の(イ)に示したように、側板部12の側溝20に対する当接によって行うこともできるからである。
【0065】
上述した開口13は、図4に示した例のように、他の側溝嵩上げ材10に突き合わせて使用できるようにして実施してもよいが、図3の(イ)に示したように、小径部13aとすることにより他の側溝嵩上げ材10の他方側に差込できるようにしたり、あるいは、図3の(ロ)に示したように、この開口13に薄肉部14cを形成して、この薄肉部14cが他の側溝嵩上げ材10内に嵌合できるように実施してもよい。
【0066】
つまり、この開口13の小径部13aが請求項2等で述べている重ね合わせ部14となるのである。重ね合わせ部14は、複数の側溝嵩上げ材10を互いに連結して排水路とする際に、隣接し合う側溝嵩上げ材10についての重なり合い部分を形成するもので、上述した開口13の小径部13aをそのまま採用する他、底板部11または側板部12の何れか少なくとも一方を突出させてこれを重ね合わせ部14とするように実施してもよいものである。
【0067】
なお、図4に示した例では、各開口13の上部では、他の側溝嵩上げ材10に対して突き合わせができるものとしてあるが、底板部11及び各側板部12の一部を開口13から突出する重ね合わせ部14として、この重ね合わせ部14が他の側溝嵩上げ材10内に差し込まれるようにしてある。このようにすることによって、排水路となる複数の側溝嵩上げ材10の位置決めや連結作業を簡単に行え、排水機能を確実にすることができる。
【0068】
各重ね合わせ部14は、単なる差込タイプのものとするだけでなく、図3あるいは図4に示したように、これに係合部14aを積極的に形成し、この係合部14aが係止されるべき係合穴14bを他の側溝嵩上げ材10側に形成しておくとよい。そうすれば、一つの側溝嵩上げ材10を他の側溝嵩上げ材10に連結するに際して、図3及び図4に示したように、係合部14aを係合穴14bに差し込むように施工することができ、各側溝嵩上げ材10の連結を確実なものとすることができるからである。
【0069】
このような係合部14aは、図3の(ロ)に示したような例の場合、つまり一方の側溝嵩上げ材10に形成した薄肉部14cを、他方の側溝嵩上げ材10に形成した段部14d内に係合させるものである場合には、これらの薄肉部14cまたは段部14dにこの係合部14aを一体的に形成しておき、この係合部14aが差し込まれるべき係合穴14bを、段部14dまたは薄肉部14cに形成すればよい。
【0070】
この側溝嵩上げ材10は、前述したように、グレーチング15を備えたものとしてもなされる。グレーチング15は、例えば図7に示したようなものであり、当該側溝嵩上げ材10に載置されたり覆い被せられたりするものであり、様々な形態のものが考えられるものである。
【0071】
側溝嵩上げ材10が後述するフランジ部16を有さないものである場合には、グレーチング15としては、図5に示したように、側溝嵩上げ材10の各側板部12の外側に嵌合される係止部15aを形成したものとすればよい。また、このグレーチング15の係止部15aとしては、図8に示すように、ボルトや長ネジ等の止め具15dによって側溝嵩上げ材10側の各側板部12に固定できるように実施してもよい。この場合、この止め具15dの上下方向の位置調整を行えるようにするために、図8の(ロ)に示したように、係止部15aに上下方向の長穴15eを形成しておくとよい。
【0072】
また、側溝嵩上げ材10がフランジ部16を有するものである場合には、図6及び図7に示したように、フランジ部16上に載置される載置部15bを、各側板部12の内側に嵌合される係止部15aの外端に一体的に形成するか、フランジ部16上に載置される載置部15bを有した程度の大きさのものを採用すればよい。図7または図8に示した側溝嵩上げ材10では、グレーチング15の下側に、側溝嵩上げ材10側の側板部12の内側または外側に係合される位置決め部15cを一体的に形成したものである。
【0073】
図6及び図7に示した側溝嵩上げ材10では、グレーチング15の両側を載置部15bとしたものであるが、この載置部15bは側溝嵩上げ材10側のフランジ部16上に載置されるものである。この載置部15bは、図7に示したように、これに係止部15aを一体的に形成しておいて、この係止部15aがフランジ部16側の止め部16aに係合できるようにすることもなされる。
【0074】
勿論、この側溝嵩上げ材10は、図1の(イ)、図6あるいは図7に示したように、各側板部12の上端に外方または内方に突出するフランジ部16を形成して実施してもよいものであり、このフランジ部16によって側板部12の上端部を平らにし、かつ剛性を高めたものとすることができる。
【0075】
つまり、各フランジ部16は、各側板部12の上部の剛性を高めるものであり、運搬や保管を安定した状態で行うことを可能にするだけでなく、施工後の当該側溝嵩上げ材10の安定化をも図るものである。また、このフランジ部16は、これによって当該側溝嵩上げ材10の外側に施工した客土上を覆うこともできるから、当該側溝嵩上げ材10と客土との間に隙間が形成されることを防止するものでもある。なお、このフランジ部16は、当該側溝嵩上げ材10全体の剛性を高めるものとなっている他、当該側溝嵩上げ材10を施工するに当たっての手掛けともし得るものであり、設置施工を容易にするものである。
【0076】
さらに、フランジ部16を有する側溝嵩上げ材10については、各フランジ部16がグレーチング15の載置または覆い被せを安定的に行えるだけでなく、当該側溝嵩上げ材10と客土との間に隙間が形成されることをも防止する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る側溝嵩上げ材を使用して地盤の嵩上げを行う様子を示すもので、(イ)は嵩上げが完了したときの部分断面図、(ロ)は施工前の状態を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る側溝嵩上げ材を示すもので、(イ)はフランジ部を有さない例を示す斜視図、(ロ)はフランジ部を有する例を示す斜視図である。
【図3】二つの側溝嵩上げ材を連結した場合の例を示すもので、(イ)は小径部を利用した連結を行った例を示す部分拡大断面図、(ロ)は薄肉部と段部を利用した連結を行った例を示す部分拡大断面図である。
【図4】二つの側溝嵩上げ材を連結した他の例を示すもので、重ね合わせ部14を利用した例を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明に係る側溝嵩上げ材であってグレーチングを有するものの縦断面図である。
【図6】同側溝嵩上げ材であってグレーチングを有するものの他の例を示す縦断面図である。
【図7】同側溝嵩上げ材であって形態が異なるグレーチングを有するものを示す縦断面図である。
【図8】同側溝嵩上げ材であって形態が異なるグレーチングを有するものの他のを示すもので、(イ)は縦断面図、(ロ)は(イ)に示した係止部を拡大して示した部分側面図である。
【図9】従来の技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
10 側溝嵩上げ材
11 底板部
12 側板部
13 開口
13a 小径部
14 重ね合わせ部
14a 係合部
14b 係合穴
14c 薄肉部
14d 段部
15 グレーチング
15a 係止部
15b 載置部
15c 位置決め部
15d 止め具
15e 長穴
16 フランジ部
16a 止め部
20 側溝
31 原地盤面
32 嵩上げ地盤面
33 嵩上げ材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設されている側溝内の嵩上げ材料上に載置されて、排水路面を形成することになる底板部と、この底板部から一体的に立ち上がる側板部と、これらの側板部と前記底板部との端面に形成された開口とからなることを特徴とする側溝嵩上げ材。
【請求項2】
前記側板部または底板部の少なくともいずれか一方の端部に、他の側溝嵩上げ材の端部に重ね合わせられる重ね合わせ部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の側溝嵩上げ材。
【請求項3】
前記重ね合わせ部は、前記開口の一方の大きさを他方のそれより小さくした小径部であることを特徴とする請求項2に記載の側溝嵩上げ材。
【請求項4】
前記重ね合わせ部に、他の側溝嵩上げ材の端部との係止を行う係合部を形成したことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の側溝嵩上げ材。
【請求項5】
前記側板部のいずれか少なくとも一方を前記底板部に対して外方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の側溝嵩上げ材。
【請求項6】
前記両側板部上に覆い被せられて、これらの側板部の少なくともいずれか一方に係止されて当該側溝嵩上げ材に対する位置決めを行う係止部を有したグレーチングを有したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の側溝嵩上げ材。
【請求項7】
前記各側板部の上端に一体化されて、外方または内方に突出するフランジ部16を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の側溝嵩上げ材。
【請求項8】
前記両フランジ部上に載置されて、これらのフランジ部の少なくともいずれか一方に係止されて当該側溝嵩上げ材に対する位置決めを行う係止部を有したグレーチングを有したことを特徴とする請求項7に記載の側溝嵩上げ材。
【請求項9】
排水路面を形成することになる底板部と、この底板部から一体的に立ち上がる側板部と、これらの側板部と前記底板部との端面に形成された開口とからなる側溝嵩上げ材を使用し、次の各工程を含む側溝の嵩上げ工法。
(1)埋設されている側溝内に嵩上げ材料を投入する工程;
(2)この側溝内に前記側溝嵩上げ材を入れて、その前記底板部を前記嵩上げ材料上に載置する工程;
(3)この側溝嵩上げ材の周囲に客土する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−200309(P2006−200309A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15743(P2005−15743)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】