説明

側溝用ブロック

【課題】 集中豪雨における急激な流量増にも柔軟に対応可能な滞水機能を有する構造の側溝等の路面排水構造物を提供すること。
【解決手段】 側溝用ブロックの下部に内部長手方向に開通させた孔で構成させた内部水路の暗渠部と、該側溝用ブロックの上面に窪みを設けて長手方向に連接排水可能な上部水路とした開渠部を備え、該上部水路の該窪みの最底部に長手方向に細長い通水溝の開口部を設けて該内部水路の上面まで連通させたことを特徴とする側溝用ブロックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、自動車道路などの走行車線の路肩などに敷設するプレキャストコンクリート製ブロックの路面などの排水に適した側溝に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道路などの舗装面は、降雨により路面が濡れると、タイヤ等の摩擦抵抗が減り、走行安全性が低下しやすくなることが知られている。とりわけ降雨により雨水が路面に溜まるようなことになると、ハイドロプレーニング現象を起こしやすくなる。タイヤとアスファルト路面との間に水の膜が生じてタイヤが路面をグリップしなくなると、ハンドル操作がままならなくなるので、車両走行に極めて危険な状況を招来しかねないものとなる。
【0003】
そこで、車両側において、タイヤに排水用の溝を設け、さらにタイヤの材質や溝形状などに種々の工夫が試みられている。他方、車両の走行車線となる道路側においても、道路の横断方向に舗装路盤をなだらかなに傾斜させることで路肩に雨水排水を促したり、路肩に敷設した水路で効率よく集水排水することを指向したりするほか、浸透性アスファルトを表層部に用いることで路面上に雨水が溜まりにくくするなど、雨水を排水する工夫が種々に試みられてきた。
【0004】
ところで、高速道路などの自動車走行道路の路肩もしくは中央分離帯に設ける側溝は、走行車両の路線逸脱による脱輪等を防ぐ必要があるため、路面排水の取込みに有利だからといって、側溝の上部を大きく開口して単純に大きな取水口とすることは容易ではない。例えば、側溝の上部をグレーチングで蓋をすると、高速走行する車輪にグレーチングが撥ね上げられる事故が生ずるので、ボルト等で確実に固定しなければならず、保守点検上も必要であるなど、設置コストの高いものであった。そこで、断面円形や断面矩形のコンクリートブロックの水路の上部に細長いスリットの取水口を設けた構造の側溝が一般に多数敷設されている。ブロック内部の水路のサイズは、設置場所の平均降雨量等に基づいて設計されるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、自然な降雨は降り方に強弱のばらつきがあり、長期的には雨水を側溝から排水できるとしても、瞬間的な側溝への流入量が想定量を上回るときには処理に追いつかなくなり、雨水が排水しきれず側溝から溢水することとなる。特に近年はゲリラ豪雨と称されるような集中豪雨が激増している。一箇所に短時間に急激な雨が降り注いでしまうと、これまでに敷設された既存の排水集水設備では十分に対応しきれず、新たな対応に迫られている状況にある。
【0006】
また、たとえば道路を横断した形で断面をみた場合に、中央が高くなっていれば、降雨は左右の路肩へと流れるが、中央分離帯が地震等の地盤沈下などで大きく沈下していたりすると、中央部分に水が集中的に溜まりやすくなることがある。すると、中央側に水路を設けてあったとしても、集中豪雨などではより簡易に排出能力を越えてしまい、溢水しやすくなる。こうした地盤沈下や設置後の変化に対応するべく既存の施設を代替の設備に更新するとしても、既存の道路状況をなるべく変化させずに対応しなければならないので、排水能力を高くしたり、溢水に対する対策を講じる必要性を認識しているとしても、それに対応するために単に容量の大きな側溝に置き換えることでは対応しきれない状況にもある。
【0007】
こうした雨水流入を意識した側溝用ブロックとしては、上段水路と下段水路を2段に設けて、上段水路に流れ込む雨水が多くなると、雨水が上段水路の側部上端部に形成の側部の溝から下段水路に流れ込むようにして排水させる側溝用ブロックがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。特許文献1に記載のものは断面U字状の下段水路と上段水路との上下2段の水路としたもので、上段水路の側部上端部に形成の側部の縦溝から下段水路に流れ込むものである。特許文献2に記載のものは、特許文献1の断面U字状の下段水路と上段水路を一体のパーツで構成したものであって、特許文献1の上段水路の側部上端から下段水路への縦溝を、特許文献2では横長な通水路の形状としたものであるが、上段水路が溢れそうになったら、上段の流水の一部を横長な通水路から下段水路に逃がすというものであり、特許文献1および特許文献2の技術的思想は基本的に同じである。
【0008】
しかしながら、これら特許文献1および特許文献2のものは、上段の水路がほぼ満杯になったときに下段に流し込めるといえども、下段の水路に流せる量は、上下段の水路を結ぶ細い経路の通水路を通水できる単位時間あたりの通水量によって制限を受けることとなる。この通水路における単位時間あたりの通水量は、ほぼ通水路の断面積に左右される。ところが、流入する雨水は、走行車線等の路面全般から集水されてくるのであって、通水量とは無関係に急増する場合のあるものである。これらの通水路のサイズは、従来の慣用の円形水路や矩形水路における流入用の上部スリットと同程度である。それゆえ、特許文献1および特許文献2のものおいて、上部水路が一杯になった以後は通水路に逃がす量が限られた一定量である点に、従来の慣用的に設置されている円形水路や矩形水路野ものとの、違いはなく、ゲリラ豪雨などの急激な雨水の流入に対応するには十分とはいえず、雨水流入量の急劇な増加に対する余力に乏しい構造でのものであった。
【0009】
また、透水性アスファルト舗装を採用することで、走行路面の上表面に雨水が溜まることを避けることは有用とはいえ、浸透した水を路盤の直下に浸透させることはできない。なぜなら、透水性アスファルトの強度との関係で、透水層が路盤の上層5cmほどに限られることや、路盤の直下に水が浸透することは道路全体の強度を下げるなど新たな問題を招来しかねかいからである。そこで、一般には透水層への浸透した雨水は、側溝の上部側面に所定の間隔をあけて設けられた呑口から内部水路の上方へ貫通させた通水孔を経て、内部水路へと排水されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
しかしながら、透水層を通過した水といえども、地下水のような濾過された状態ではなく、雑多な汚れを伴っており、上部側面の呑口には、ゴミ等の流入を防ぐべくあらかじめネット等を設置するなどして、内部水路への通水孔が塞がれないような工夫が必要となっている。しかしながら、側溝の上部側面の呑口は、透水層に接する形で地中に埋まっていることから、ゴミ詰まりしたときには、通路が閉塞されたままとなり、メンテナンスでゴミだけを物理的に除去することはできはないものであった。そこで、透水性舗装と組みあわせて側溝を設定する場合においても、雨水を側溝内の水路へと適切に誘導しうるものであって、かつ、メンテナンスの容易性を確保するため、透水性舗装の水路への排水を長期にわたって閉塞阻害しない構造であることが要請されている。
【0011】
ところで、側溝用ブロックはコンクリート製であり、重量のある製品であることから、その強度に影響しない範囲で、その側面の一部を肉薄に凹ませることで軽量化しているのが一般的であり、輸送時や敷設工事時の作業負担を軽減している。埋設時には側溝の周囲を土で押し固めて固定するが、一部を薄肉化して側面を削った場合には、その凹んだ部分に土を入れこんで押し固めなければならない。こうした転圧作業は、一般に大型ローラーやランマーを用いることとなる。ところが、既存の側溝をより豪雨に強い排水性のよい水路に置換する改良工事では、側溝の周囲に十分な幅の掘削スペースが確保できるとはかぎらない。また、できるだけ掘削量を減らして工期を短期間に済ませるには、側溝の周囲の掘削スペースは小さいほうが望ましい。しかしながら、改良工事で側溝の周囲の掘削幅が小さいと、薄肉化した凹んだ部分に土砂を十分に埋め戻せず、転圧できずに強度が不十分となることがありえる。転圧不足だと、敷設後に側溝が動いてしまうなどのトラブルもありえる。そこで、掘削量を減らして工期を短くすることと、転圧等に必要な作業スペースを確保することとはトレードオフの関係にあり、必ずしも両立しがたかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭60−181438号公報
【特許文献2】特開2009−7889号公報
【特許文献3】意匠登録第1234180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、自動車の走行路面の舗装道路などの降雨を集排水するのに適した路肩の側溝や、道路反交点部における路面排水のための側溝において、ゲリラ豪雨等の集中豪雨における急激な流量増にも柔軟に対応可能な滞水機能を有する構造の側溝等の路面排水構造物を提供することである。そして、透水性舗装と組みあわせた場合にも目詰まりすることなく透水層から水路へと排水ができる構造であって透水性舗装の能力を阻害しにくい側溝であること、また、傾斜面にも適用できること、さらに側溝の構造を掘削量のより少ない構造としつつ転圧不足となることのないものとすることで、側溝改良工事等における工期の短縮や経費削減に資する側溝を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、長手方向に連設配置することで排水路としうる側溝用ブロックであって、該側溝用ブロックの下部に内部長手方向に開通させた孔で構成させた内部水路の暗渠部と、該側溝用ブロックの上面に窪みを設けて長手方向に連接排水可能な上部水路とした開渠部を備え、該上部水路の該窪みの最底部に長手方向に細長い通水溝の開口部を設けて該内部水路の上面まで連通させたことを特徴とする側溝用ブロックである。
【0015】
すなわち上段の開渠部の長手方向の窪みからなる上部水路と下段の暗渠部からなる内部水路の2段の水路を有する側溝用ブロックであり、上段の水路は上部が開放された開渠部からなる溝であって、下段の水路は地中に埋設されたもので暗渠部となっている。そして、上段の上部水路の最底部が長手方向に開口して下段の内部水路の上部と連絡しているので、路面からの雨水が流れ込むと、上段の上部水路の水路側面を伝った雨水が最底部の開口部から通水溝を通って下段の内部水路へと流れ落ちるように導く仕組みとなっている。
【0016】
このように上段の上部水路に流れ込んだ雨水は、通水溝から下段の内部水路に流れるので、通常の流入した雨水は上部水路に溜まって上部水路を流れることはなく、下段の内部水路の中を流れて排水される。雨水が側溝表面に溜まらないので、車両のタイヤが上部水路に乗り上げても、浮き上がることなく制御が可能であり、安全である。内部水路へ導かれた雨水は、その後、内部水路から雨水桝などを経て集水され、さらに油水分離槽などで適切な浄化がなされた後、処理水として下流にて放出される。
【0017】
豪雨等で急激な雨水が走行路面から上部水路へと流入した場合、随時通水溝から下段の内部水路へ排出するものの、通水溝の通水量を上回る流入があるときは、上部水路内に溜まり上部水路を流れて下流の雨水桝などへ排水されることとなる。すなわち、通常時は下部の内部水路から排出させることで上部水路を空にした状態で待機させ、急激な短期的な雨水の流入に対しては上部水路にも雨水を流下させて排水させることとなるので、路面に雨水を溢れさせにくい構造となっている。
【0018】
本発明の第2の手段は、上部水路の窪みは、上部水路の長手方向に直角な断面の形状が弧状からなり、窪みの最底部の通水溝の開口部が該弧状の最下部に位置することを特徴とする請求項1に記載の側溝用ブロックである。水路となる窪みの断面形状は、底が断面弧状の窪みの最下部が開口して通水溝となって下部の内部水路に連通した形状で、この開口した部分からいわば漏斗の断面のような形で、上部水路の底から雨水を下方の内部水路へと落下させ排水するものである。単なる傾斜面ではなく、湾曲させたことで、より大きな断面積が確保できることから、上部水路に水を溜めることができるので、それだけ溢水にも強くなる。また、湾曲形状であるので、車両のタイヤが乗り入れても、傾斜曲面を通じてスムーズに脱出することができる。
【0019】
本発明の第3の手段は、下部水路は、側溝用ブロックの長手方向に流路勾配を備え、上部水路は該下部水路の流路勾配と異なる傾斜角度の流路勾配を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の側溝用ブロックである。
【0020】
通常の雨水は、連接された側溝用ブロック内下部に設けられた内部水路を通って、間隔を開けて設けられた雨水桝へと導かれる。雨水桝の設置箇所は、ある程度地形に応じて定まってくるので、その雨水桝に向けてスムーズに排水が可能となるように、内部水路に流路勾配を設けて側溝用ブロックを連接し、雨水の排水を促すことが重要である。もっとも、連接される側溝用ブロックは隣同士が完全に同一形状のブロックであると、継ぎ目で水路の位置が合わなくなってしまう。そこで、ブロック内部の内部水路の設置高さが長手方向の勾配にあわせて連続的に変化するように、連接するブロック同士の向かい合う端面での、水路の深さ位置を上下にシフトさせて、水路のレベルをあわせつつ、ブロックを組み合わせて連接配置しながら用いることとする。これにより、雨水をスムーズに雨水桝へと排水できる。当然ながら水は高いところから低いところへと流れるので、長手方向に流路勾配を備えた内部水路の底面は、雨水桝に近づくにつれ、側溝用ブロックのなかでより下方に位置することとなる。
【0021】
しかしながら、側溝ブロックの設置箇所の道路路面の道路勾配は自然地形に左右されるものであり、雨水桝に向かって内部水路に設けられた流路勾配の傾斜とは合致するとは限らない。そこで、本手段では、内部水路と上部水路の流路勾配が異なる傾斜角となりうるものとする。たとえば上部水路の流路勾配は、道路路面の傾斜に合わせたものとしつつも、内部水路に設けられた流路勾配は排水効率を優先して雨水桝に向かってスムーズな勾配を維持するようにする。
【0022】
上部水路に流入した雨水は随時通水溝から下段の内部水路へと滴下するので、上部水路に溜まった水が流れて排水される場面は限られているが、短期急激な豪雨で上部水路に大量の雨水が流入した場合には、一時雨水を貯留するバッファーとしての滞水させる役割を果しつつ、上部水路自体もその勾配にしたがって雨水を排水することができることとなる。そのとき、内部水路の流路勾配より、上部水路の流路勾配が緩やかであれば、雨水桝に大量に流入する雨水の量に時間差が生じて流入集中が若干緩和されるので、瞬間的に雨水が集中して溢水してしまうといった事態をより回避しやすくなる。
【0023】
本発明の第4の手段は、下部水路は、側溝用ブロックの長手方向に流路勾配を備え、上部水路は該下部水路の流路勾配と反対向きの流路勾配を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の側溝用ブロックである。本手段によると、内部水路の長手方向の流路勾配の傾斜角と、上部水路の長手方向の流路勾配の傾斜角を逆向きとした側溝用ブロックを連接すると、たとえば内部水路側が右向きに排水されるとき、上部水路側は左向きに排水されることとなる。
【0024】
局所的な豪雨の場合、僅か十数メートルの距離の違いで降雨量に大きな差が生ずることも稀ではなく、場所によって個々に瞬間的な降雨量の変化は大きい。そこで、上部水路の排出先と下部水路の排出先が逆方向となれば、流入する雨水を異なる雨水桝へと分散することができる。上部と内部の各水路から集水される雨水が別々な雨水桝へと導かれるようになれば、雨水の一点集中が回避されるので、短時間での瞬間的な溢水を回避しやすくなるからである。
【0025】
この手段では、内部水路と、上部水路の流れの流路勾配を逆向きとするべく、それぞれの流路勾配の向きを逆に配することから、連接される側溝用ブロックの左右それぞれの先に設けられた雨水桝は、たとえば右側の内部水路の水と左側の上部水路からの水を受ける雨水桝となる。これにより、上部水路の水と下部水路の水が左右の雨水桝に振り分けられるので、一カ所に集中することなく、適切に分散排水されうることとなる。そこで集水先での急激な変動による瞬間的な溢水といったトラブルをより回避しやすくなる。
【0026】
この第4の手段では、内部水路は雨水桝のある方向に向かって流路勾配が傾斜しており、上部水路はその逆方向に傾斜した流路勾配となっている。上部水路の先に集水する雨水桝等を特に設けていない場合でも、上部水路の水は、内部水路へと通水溝を通じて徐々に流下することで排水することができる。そこで、局所的な集中豪雨は上部水路によって最初は雨水桝から逆方向に流れながら通水溝を徐々に流下して内部水路から雨水桝へと集水されて排水される。一旦逆方向に流れることでその分だけ時間を稼ぐことができるので上部水路が雨水を滞水させることとなり、集水先の雨水桝等に処理能力を越えた雨水が一挙に集中することを避けることができ、溢水しにくいものとなる。
【0027】
本発明の第5の手段は、上部水路は、隣接する路面の透水性舗装部分の厚みに相当する深さの切込み溝を側溝用ブロックの長手方向外側壁上端から上部水路の内壁上端にわたって備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の側溝用ブロックである。この手段は、本発明の側溝用ブロックを透水性舗装の路盤に隣接させた場所に配置した場合の工夫である。
【0028】
隣接する路面の透水性舗装では、一般にその表層部分に透水層を備えている。従来は、透水性舗装の表層の最下面側から路肩等の側溝用ブロックの内部水路へと排水されてきた。本手段では、隣接する透水性舗装の表層に浸透する雨水を上部水路へと排水できるようにするため、側溝用ブロックの上平面の一部に切込み溝を適宜配置して、透水層の側端から雨水を上部水路内へと切り込み溝から導けるようにしている。本発明のように、透水層と接する側溝用ブロックの上部に切込み溝を設けることで、埋設による目詰まり等が生じにくく、またメンテナンスが容易な集水路とすることができる。なお、こうした本手段の切込み溝の工夫と、透水層下面から内部水路へと直接雨水を導く通水構構造とを、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
このように本手段を透水性舗装と組みあわせると、降雨の一部が一旦路面全体に浸み込んでから側溝に流れてくるまでに時間が経過するので、雨水の流入に時間差が生じやすくなり、瞬間的な局所的集中豪雨によって側溝等の排水処理能力が限界に達することが回避しやすくなることから、溢水しにくくなり、路面に雨水が溜まるといった危険な状態を招来することが従来よりも回避しやすくなる。
【0030】
本発明の第6の手段は、上部水路の窪みは、上部水路の長手方向に直角な断面において左右に非対称な湾曲形状からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の側溝用ブロックである。この構成は、上部水路の窪みの断面形状が左右対象ではなく、左右いずれかが曲率の大きい湾曲をした偏った形状となっているものであって、上部水路の一番底にあたる最深部も、湾曲にしたがい左右いずれかに偏って位置することとなる。こうした工夫は、流入する水をスムーズに下方の内部水路に誘導するのみならず、道路を走行する車両が、側溝や路肩との境界を体感的にも立体的にも視認・把握しやすくするものとなる。
【0031】
また、最深部が隣接路面の道路側から遠い位置に設けられる場合、いわゆる路肩の縁石的な機能も果しうるものとなる。たとえば、設置路面の道路側から最深部に開口する通水溝部分までは、緩やかに湾曲しながら深くなっていくが、他方、路肩側の湾曲は短い距離で急に立ち上がる形状となる。すると、道路からうっかり車両が入ってきても、急な立ち上がりの部分で車両のタイヤが道路側にやんわりと押し返されることとなる。そこで、居眠り等、意図せずに入り込んだ車両が上部水路を越えてしまう前に運転者が異常に気がつきやすくなることから、重大事故を低減することにも寄与することとなる。
【0032】
本発明の第7の手段は、下段の内部水路は、その断面形状が横長な矩形からなる矩形水路により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の側溝用ブロックである。この手段では、下段の内部水路は、断面が横長な矩形からなる矩形水路であるから、円形の内部水路に比較したとき、同じ断面積の通水量を確保しようとする場合の内部水路の高さをより低いものとすることができる。内部水路の高さが低くなれば、それだけコンクリートブロック敷設のために地面を掘削する深さも浅くできることとなる。すると、敷設のための掘削に要する作業量や作業時間を大きく短縮できることとなるので、ひいてはコスト削減にも資することとなる。特に、高速道路等での工事においては、通行する車両の走行を制限しながら速やかに工事を進めることが求められており、走行を妨げる時間を短縮できれば、夜間工事などの通行量の少ない時間帯を選んで適宜により長い距離を作業することができる。そこでより柔軟な工事計画等を立案することができるなど、極めて有用性が高いものとなる。
【0033】
また、本発明は、集中豪雨やゲリラ豪雨が増加してきた対策として、従来は単に縁石ブロックだけで路面内に排水路が敷設されていなかった箇所や、従来の水路では排水能力が乏しかった側溝を、交換代替する場面において、適用しやすいものとなりうる。なぜなら、矩形水路であれば、掘削する深さを浅くできたり、省スペースとなるので、設計自由度の小さい場所への改良工事などにおいても、十分対応しうるものとなり、適用しやすい。
【0034】
本発明の第8の手段は、側溝用ブロックは、長手方向外側壁の下部の一部を内部水路側へ切欠きにより薄肉化した長手方向外側壁を有し、該切欠きの少なくとも一方に該切欠き形状と同形状の発泡プラスチック樹脂成形体を嵌合して、該長手方向外側壁の上部壁面と該発泡プラスチック樹脂成形体の外側面とで面一な外側壁面を形成し、該面一な外側壁面を該側溝用ブロックの長手方向外側壁としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の側溝用ブロックである。この手段は、軽量化のために側溝用ブロックの一部を強度を阻害しない範囲で外壁の切り欠いた場合に、その切り欠いた部位に、その部位に相当する形状の発泡スチロール樹脂等の硬質発泡プラスチックを充当することで、長手方向外側壁を面一とすることで窪んだ場所を設けないようにすることで、転圧を良好にするものである。
【0035】
これまでコンクリートを薄肉化して軽量化した部位はそのままだと立体的な形状となっているので、上部から土砂を流し込んでも、窪んだ部分にまで十分に土砂が到達しないこととなり隙間が生ずることがあった。すると上方から側溝の両脇を転圧していっても、隙間によって力が逃げてしまい、転圧不足等の不都合が発生することとなっていた。こうした転圧不足を防ぐには、両脇を余裕をもって大きく掘削することが考えられる。ところが、高速道路の中央分離帯の近辺のように、脇に掘削できる領域の余裕がない場面で支障がでてしまう。また、改良工事などでは、そうした設計自由度が特に乏しく、掘削範囲も限られざるを得ない。
【0036】
本手段では、こうした外側壁の切欠き部に予め発泡プラスチック樹脂を嵌め込んでから敷設することとなるので、土砂を上部から投入して上方からランマー等で転圧するだけで、隙間なく土砂を掘削箇所に充填することができ、簡便に転圧の実効性が得られるようになる。転圧不足にならないので、後日、側溝ブロックが歪んだり傾いたりすることもなく、また、周囲の構造物、たとえばガードレールや塀等の敷設物が傾いたり、土台が揺らぎやすくなることで強度不足に陥ることも防げることとなる。
【0037】
なお、発泡プラスチック樹脂は、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの素材を適宜用いることができる。土砂とコンクリートの間で側溝用ブロックを支えるに足るだけの十分な強度を有する硬質な発泡樹脂を用いるものとする。土中に埋設されて使用されるので、直射日光の紫外線等によって変質、分解することなく、長期に渡って強度を保持しうることとなるが、耐水性や耐久性の高いものが好適である。
【0038】
軽い発泡プラスチック樹脂を嵌め込んだままクレーン等で吊り下げて、掘削した穴に埋設することができるので、肉薄化と軽量化による作業容易性を失うこともなく、短時間で設置作業を進めることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の側溝用ブロックを適用すると、通常の降雨による雨水は、上部水路から通水溝を経て内部水路へと導かれ内部水路から下流へと排水されるので、側溝用ブロックの表層には雨水が溜まらない状態を長く保持することができる。集中豪雨等の急激な雨水の流入においても、すぐに周囲に溢水することはなく、内部水路へと通水溝から排水することに加えて、上部水路内にも雨水を貯留、滞水することができる。また、上部水路自体も下流へと排水する水路として機能することができるので、上部水路からも排水ができる。そこで、周囲の路面に雨水が道路面上に溢水させることなく、大量な雨水を排水することができる。
【0040】
本発明の第2の手段では、上部水路が断面が円弧状に湾曲していることから、上部水路に雨水を大量に貯留できることとなり、溢水しにくくなる。
【0041】
本発明の第3の手段では、上部水路と内部水路の流路勾配の傾斜を異なるものとすることができるので、下流の雨水桝への大量流入を回避しながら排水する処理時間を稼ぐことができる。すなわち、流路勾配の強い内部水路については雨水を下流へ素早く排水しつつも、上部水路の流路勾配を緩やかにすることで上部水路に雨水を溜めながらゆっくり排水することができるので、大量の排水が一挙に流入することがなく、流れの一部を弱めて時間を稼ぐことで、局所的に雨水が集中して溢水するといったことを避けることができる。
【0042】
本発明の第4の手段では、上部水路と内部水路の流路勾配が逆向きなので、それぞれの水路の下流方向が逆となっており、雨水が別々な方向へと排水される、もしくは一時的に上部水路で迂回されることとなるから、一カ所の雨水桝に一気に一点集中することがなくなるので、短時間、瞬間的に集水箇所の処理能力を越えて溢水する事態をより回避しやすくなる。
【0043】
本発明の第5の手段では、透水性舗装道路と組みあわせる際に、表層の透水層からの雨水を切込み溝から上部水路へと導くことができ、目詰まり等がしにくく、また清掃等によるメンテナンスが容易な集水路とすることができる。
【0044】
本発明の第6の手段では、上部水路の窪みの断面形状が左右非対称とすることができるので、緩やかな湾曲斜面と急な湾曲面とを組みあわせることができ、乗り入れた車両が乗り上げを認識しやすく、また乗り入れた車両の制御もしやすくすることができる。
【0045】
本発明の第7の手段は、内部水路を断面矩形な水路とすることで、側溝用ブロックの深さを円形水路よりも浅いものとすることができる。そこで、掘削量や工事作業量を低減することができ、敷設のための費用や時間も削減することができる。
【0046】
本発明の第8の手段では、軽量化のために肉薄化された部分に軽い発泡プラスチック樹脂を嵌め込むことで、軽量な状態で作業ができるので、作業容易性を保つことができる。また、転圧不足になりにくいので、周囲の掘削量や掘削幅が少なくでき、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態のひとつの側溝用ブロックの斜視図である。
【図2】本発明の他の実施の形態である透水製舗装道路に好適な側溝用ブロックの斜視図である。
【図3】本発明の他の実施の形態である発泡プラスチック樹脂が適用される様子を示す斜視図である。
【図4】発泡プラスチック樹脂の有無による転圧の違いを示す模式図である。
【図5】同一断面積の内部水路の断面外形形状を矩形的もしくは円形とした場合の全高および掘削深さの違いを示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態のひとつである、上部水路の断面形状が左右非対称な弧状からなるものである場合の断面図である。
【図7】本発明の側溝用ブロックの接続面のシール材の配置を示す図である。
【図8】本発明に好適な立体編目構造の充填材の斜視図である。
【図9】本発明の側溝用ブロックの通水溝に立体編目構造の充填材が適用されることを示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態のひとつである、上部水路と内部水路の流路勾配が逆向きな場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施の形態を適宜図面を用いつつ以下に説明する。まず、本発明の側溝用ブロック1には、内部に鉄筋等を配筋した一般的なコンクリートブロックを適用することができ、格別に特殊な材料や製造方法をとらずとも、実施しうる。たとえば、工場で型枠にコンクリートを流して製作するプレキャスト製コンクリートの側溝用ブロック1であれば、工場で本発明品を大量に生産することができ、施工箇所に運んで一気に設置することで現場での作業時間を短縮することができる。もちろん現場打ちで現地でコンクリートを流し固めることで側溝用ブロック1を得ることもできるので、複雑な地形や条件にも柔軟に対応しうるものである。本物品は、排水能力が高く溢水しにくいので、道路の路肩以外に、道路反交点部の中央分離帯側の側溝にも好適に適用できる。
【0049】
図1に本発明の実施の形態の1つの態様を示す。この側溝用ブロック1は、たとえば全長1m、全幅0.9m、全高0.65m程度の大きさであり、暗渠部の内部水路4の断面は、横幅50cm強、高さ25cm程度、開渠部の上部水路2の断面弧状の水路は、横幅35cm、縦幅10cm程度の円弧からなり、上部水路2から内部水路4へと開口したスリット状の通水溝3は上方の幅が6cmで下方が5cm程度で断面が楔形になっている。なお、図示はしないが内部には直径1cm前後の鉄筋が20〜30センチ程度の間隔で配置された一般的な構造のコンクリート製ブロックであり、配筋材を型枠内に配置したのちコンクリートを流し込んでプレキャストコンクリート製ブロックとして製造される。
【0050】
この側溝用ブロック1は、これを多数連接配置することで、内部水路4と上部水路2をそれぞれ長手方向に形成することができ、下流に配設された雨水桝等の集水口へと、流入した雨水を導水し排水する。雨水桝は、土砂等の堆積物を下方に蓄積して、水路内の排水の効率を低下させないようにするほか、雨水桝からさらに下流に設けた油水分離槽等の排水処理施設へと集水を排出することとなる。
【0051】
上記のサイズの図1の側溝用ブロックの場合、内部水路4と上部水路2それぞれの断面積は、矩形の内部水路4が0.119m2、上部水路2の半円状水路の断面積は、0.073m2である。通常の内部に水路を有する側溝用ブロックの上平面は水を貯留することなく内部に流下することを目的としているので、上部水路側に水を貯留することはない。一方、本発明の上部水路は、弧状に窪んだ水路となっており、内部水路に比しても決して少なくない断面積の水路である。全長1mの側溝用ブロックであれば、上部水路には最大73リットル分の雨水を貯留することができる計算となる。したがって、雨水が流入しても、容易には溢水しにくいバッファーとして十分機能するポテンシャルを備えており、雨水を一時的に上部水路に滞留させる高い滞水機能を備えたものである。
【0052】
もっとも、側溝用ブロック1に設けた内部水路および上部水路は、それぞれ雨水を下流に排水できる水路となるように、それぞれ流路勾配が設けられており、いずれの水路も下流に順次排水することができる。流路勾配が大きければ、それだけ排水速度が高まり、時間あたりの排水量は大きくなる。
たとえば、上記のサイズの側溝用ブロックの場合、内部水路の排水能力は、1%の勾配で流速が約1.91m/Sec、流量は、約227リットル/Sec、3%の勾配で流速が3.31m/Sec、流量が約394リットル/Secである。上部水路については、最深部が開口していないと仮定した場合、0.4%の勾配で流速が0.95m/Sec、流量が69リットル/Sec、1%の勾配で流速1.47m/Sec、流量が約107リットル/Sec、3%の勾配で流速が2.54m/Sec、185リットル/Secである。流路勾配は、たとえば0.1%から10%程度まで、設置場所の傾斜にも応じて選択することができ、またその設置場所の時間あたりの雨水流入見込量に応じてその排出目標に応じた流路勾配とすることもできる。
【0053】
側溝用ブロック1の設置のためには、設置箇所の周囲を埋設しうる程度の深さで幅広に掘削して、砂利14等を敷いてモルタル13の上に、クレーン等で吊り下げた側溝用ブロック1,1を順次連接するように配置し、連接後に、周囲の空隙に土砂を埋戻し、埋戻土を上部からランマーで転圧し、しっかりと固定する。連接する側溝用ブロック同士1,1の連結の際には、接し合う端面間での漏水を防ぐために、両ブロックの間をシール材23を用いてシールすることが望ましい。たとえば、シール材23としては、水で膨張するエチレン−プロピレンゴム(EPDM)製の、たとえば幅15mmで、数ミリ厚の板材を用いることができ、側溝用ブロック1のいずれか一方の端面側の、内部水路4の下方や、他の実施形態の透水製舗装向けの側溝用ブロックの場合には、さらに切り込み溝5の下方にもシール材23を配置する。また、シール材23の嵌まる部分のコンクリートに僅かに窪ませた溝を形成しておき、シール材23を適切に配置しやすくしてもよい。
【0054】
また、連接する側溝用ブロック同士1,1は、さらに、連結プレートの金属板を用いて、側溝用ブロックの側面上部の連結用インサート穴12にボルトで締結し固定するようにしてもよい。
【0055】
内部水路4は、雨水が最初に流入し、下流へと排水する水路となるから、連続的に十分に排水できるように、断面積と流路勾配を適用場所にみあった排水能力のものとしておくことが望ましい。内部水路4の断面形状は、主に円形もしくは矩形であるが、5角形や6角形、8角形等の多角形でもよい。
【0056】
図5は、内部水路の断面形状が円形のものと矩形のものとを対比した図であり、円形と矩形の断面積は同一である。内部水路4の断面形状が矩形な場合には、図5(a)右に示す断面円形の水路と対比して扁平な形状となりうるので、機能的に側溝用ブロック1の高さを19に矢示した高さ分だけコンパクトにできる利点がある。なお、ここに矩形とは、こうした扁平な形状とする観点からのものであるから、底面中央部が若干低くなっていたり、四隅が面取りされている形状であっても、本発明にいう矩形に含まれる。内部水路4の断面が円形と矩形とで、水路の断面積を同じにした場合、図5(b)に示すように、円形水路ではブロックの高さが19に指し示す分だけ増すことになれば、これを埋設するためには、20で矢示したように、その分だけ深く余計に掘削しなければならない。掘削量が多くなれば、それだけ作業時間を要するので、改良工事等の進捗に大きく影響することとなる。そこで、同じ断面積であれば、扁平な矩形状の内部水路を用いることが好適である。
【0057】
ところで、上部水路2から内部水路4へと雨水を流下する通水溝3は、幅が5〜8センチ程度の幅の狭い溝である。そこで、落ち葉やゴミ等が目詰まりすることによるメンテナンスの頻度を少なくしつつ、適切な流下量を確保するために、グレーチングなどを嵌め込んでもいい。さらに、立体編目構造の空隙率の高いプラスチック樹脂線条からなる充填材21(たとえば新光ナイロン製のヘチマロンなど)を嵌め込むことが好適である。図8に立体編目構造の充填材21の模式図を示す。
【0058】
グレーチングであると、固定のためにボルト等が必要であり設置とメンテナンスに手間が多くかかる。他方、弾力に富んだ立体編目構造のプラスチック樹脂線条からなる充填材21であれば、図9に示すように、上方から通水溝3に押し込むことで弾力によって堅固に固定できる。たとえば通水溝の6cmの溝幅に6.5cm四方の全長1mの直方体の充填材21を適用するものとし、これを上方から通水溝3に押し込むようにして嵌め込めば、通水溝3内に簡易にネジ締めなしにしっかりと固定できる。
【0059】
こうした立体編目構造の充填材21であれば、通水率が85〜95%程度まで確保できる空隙の大きな針金が絡んだような構造なので、グレーチングに比して、ゴミや落ち葉に塞がれてしまうことが少ない。充填材21は細かい線条が複雑に絡み合って互いに接点で溶融接着されることで立体編目構造となっているので、編目は5ミリから15ミリ程度の空隙であり、弾力を有するのみならず、細かなゴミを補足しやすいものとなっているからである。そして、立体編目構造の充填材21はメンテナンスも容易で、立体的で目詰まりしにくいことから、メンテナンス頻度も減らすことができる。本発明のように、急激な降雨での路面への溢水を防止する目的からも、落ち葉等で簡単に通水能力が低下しないことは、排水性能を確保しつづけることから有用である。
【0060】
また、請求項5に記載の透水性舗装道路の端部15から上部水路2にかけての切り込み溝5にも、溝のサイズに見合った立体編目構造のプラスチック樹脂線条からなる充填材21を嵌め込んでもよい。充填材21の設置によりゴミが詰まりにくく、長期にわたって良好な通水性を確保しうることとなるので、溢水防止に資する。
【0061】
ところで、側溝用ブロック1の長手方向の側面下方は、軽量化のため適宜薄肉化することが望ましい。たとえば、長手方向の左右側面を幅75cm、高さ40cm、深さ9cmにわたって薄肉化するとき、コンクリートのみかけ密度を2300kg/m3とすると、左右の薄肉箇所10,10の合計で約125kgの軽量化となる。このまま埋設使用することもできるが、図4(a)に示すように、周囲の掘削部位に十分な領域が確保できないと、薄肉化した部分に土の埋戻しが十分にできず、埋戻土17と薄肉箇所10とのあいだに隙間22ができてしまい、上方からのランマー等による転圧18が十分にできないこととなる。
【0062】
そこで、図3に示すように、この薄肉化により凹んだ薄肉箇所10に、同サイズの発泡プラスチック樹脂11の硬質な発泡スチロール樹脂を嵌め込むことで転圧不足を回避することができる。左右の発泡プラスチック樹脂11は、板材を適宜カットすることで、容易に薄肉化形状にあわせた形状に仕上げることができる。硬質な密度20kg/m3の発泡スチロールの場合、薄肉化部分の左右の発泡スチロールの合計重量は約1kgであるから、発泡スチロールを嵌め込んだ状態で吊り下げて設置作業をしても、作業性は損なわれることもない。埋戻土17への転圧18は、ランマー等により上方からなされるのみであるから、発泡プラスチック樹脂11の適用がなされると、図4(b)に示すように、発泡プラスチック樹脂11により隙間22が予め塞がれた状態となることから、図4(a)の隙間22のように左右の薄肉による空隙へと転圧力18の力が流れて逃げてしまうことがない。そこで、より効率的に転圧力18による十分な転圧作業ができることとなる。また、隙間22に土砂を埋め戻す作業をするために、大きく周辺を掘削する必要がなくなるので、設置場所や改良工事の掘削場所の幅が小さくでき、作業量が大きく低減される。
【0063】
なお、本発明の側溝用ブロック1は、既設のロールドガッター(円弧上に窪んだ排水溝)と組み合わせて用いることもできる。すなわち、道路全域にわたって側溝を全面交換するのではなく、スポット的に本発明の側溝用ブロックを雨水桝の周囲に配置する一部改良によって、ロールドガッター上の貯留水を効率よく排水しうるようにすることができる。たとえば30メートルおきに雨水桝が配置されていたロールドガッターの排水溝の改良において、雨水桝の周囲の両側各5mを本発明の側溝用ブロックへと置き換える改良工事をすることで、雨水桝への効率的な排水と上部水路と内部水路の組合せによる滞水機能を付与することができる。
【0064】
さらに、ロールドガッターの湾曲水路と本発明の上部水路とは、水路断面を同じ曲率の円弧とすることができるので、連続的に段差なく接続することができ、スムーズな流れとなる。またロールドガッター部の雨水を上部水路から通水溝を経て内部水路へと流下するので、従来のようにロールドガッターの湾曲水路内に雨水が長く貯留することがない。
【0065】
本発明の他の実施の形態として、本発明の第三の手段に記載の、内部水路と上部水路の流路勾配が異なるものについて説明する。本発明に記載の側溝用ブロックは、内部水路による排水のみならず、上部水路は貯留、滞水と排水を果すものである。
以下、側溝用ブロック1を、内部水路4、上部水路2の口が左右に開口する、側面側から観察していると想定して、以下説明する。たとえば内部水路4の流路勾配6の傾斜角は、右に1%下がったものとする。このとき、上部水路の流路勾配7は、右に0.4%下がった傾斜角とする。すると、内部水路4内の雨水の排水に比べて、上部水路2側の排水は緩やかになる。急激な降雨により、内部水路4から排水された雨水が大量に下流の雨水桝へと集中していくときでも、上部水路2内の雨水は比較的緩やかに排水され、一部は徐々に通水溝3から内部水路4へと流下していくこととなる。たとえば0.4%の流路勾配の上部水路では、その流速は0.95m/Secであるところ、1%の流路勾配の内部水路の流速は約1.91m/Secであり、ほぼ倍の速さで流れている。このように上部水路が緩やかであっても、上部水路内は70リットル程度の水を貯留できる能力があるので、緩やかな流れとなったのみで直ちに溢水するものではなく、むしろ緩慢に流れることで下流の雨水桝等に排水が一挙に集中して処理しきれずに溢水するといったことを避けることができる。
【0066】
図10に、さらに別な他の実施の形態として、上部水路2の流路勾配7と内部水路4の流路勾配6が左右逆に傾斜している場合の側溝用ブロックの左右両端面と中央から縦に分割した断面図とを示す。たとえば、上部水路2は、斜面の勾配に応じて流路勾配7が左に1%下がって傾斜しているときでも、内部水路4の流路勾配6は、右下がりに1%下がって傾斜しているものとすることができる。上部水路の左側下流に雨水桝を設けて、上部水路の雨水を左側に、内部水路の水は右側の雨水桝へと排水させることができる。各雨水桝からは、その下流に設けた路面排水処理施設へと流下される。
【0067】
また上部水路の水をいったん左向きに誘導しつつ、通水溝3から順次流下させていくことで、内部水路のなかでは右向きに排水させるということもできる。この場合は、上部水路は一旦右に排水させる雨水を左向きに迂回させる貯留、滞水させる機能を果すこととなる。
たとえば、上部水路2を左に流れていく間に、徐々に通水溝3から内部水路4へと雨水が導かれていき、内部水路4を右に流れていくものとする。また、たとえば、左に傾斜して雨水を流す上部水路2の左端に、左側の雨水桝を連接し、雨水桝に入った水が今度は逆向きに右方向の下部水路4へと戻るようにしてもよく、その場合は、最終的に右側の端に連接された右側の雨水桝に迂回した雨水が排出されることとなる。
上部水路に水が貯留されながら下流に流れている状態は、通水溝3から内部水路に流下する水量よりも多くの雨水が流入している場合であって、通水溝3の流下量がいわばボトルネックになっている。このとき、上部水路の水がそのまま内部水路と同方向に排水されると、下流で溢水する危険性が高まるが、上部水路を逆方向に誘導することで、通水溝3から流下されるまでの時間を稼ぐことができ、通水溝3への流下が分散されるので、全体として流入量が平均化されたような状態となり、急激な溢水を避けやすくなる。
【0068】
また、本発明のさらに別な他の実施の形態として、透水性舗装道路に適用する場合の好適な形態について説明する。図2に示すのは、連接する側溝用ブロック1の上端部の両端に、透水性舗装の表層部からの雨水を上部水路2へと導水することができる切り込み溝5を備えている。切り込み溝5の深さは、透水性舗装の道路の雨水浸透部位となる、路面の表層の厚さに相当する深さである。透水性舗装の表層は5cm程度であるので、切り込み深さも同様に5cm程度である。切り込み溝の溝幅は、同じく5cm程度である。連接するブロックとで、幅10cmの切り込み溝が1m毎に設けられることになる。しかし、道路面積に応じて、切り込み溝の数や位置は、上端に限らず、適宜追加しうる。また、切り込み溝に加えて、路面の浸透層から直接内部水路へと導水する排水溝を組みあわせて用いることもできる。
【0069】
切り込み溝5は外部に開口しているので、メンテナンスが容易であるが、ゴミ等の流入に備えて、立体編目構造のプラスチック樹脂線条からなる充填材21を適宜な大きさにカットして、切り込み溝5内に嵌め込んでもよい。
また、切り込み溝5の下部には、連接する側溝用ブロックの連結時に、図7に示すように、シール材23を適用して漏水を防ぐようにしてもよい。連接する一方の側溝用ブロック1の端面の切り込み溝5の直下にシール部材23の厚みよりやや浅い数ミリの下溝を設けて、そこに5mm厚程度の幅15cm程度のEPDM製の板状のシール剤23を差し入れる。
【0070】
また、図6に示すとおり、本発明のさらに別な実施の形態として、上部水路2の断面形状を左右非対称な湾曲形状とすることができる。深さは10センチほどだが、左右非対称な断面であるので、上部水路2の最深部は、図6であれば、全幅90センチのうち、右から30センチあたりに位置することとなる、すなわち、通水溝3の開口部は、側溝用ブロックの中央ではなく、右寄りに移動して開口している。
【0071】
図6の側溝用ブロック1であれば、側溝用ブロックの左側に走行路面を敷設し、最深部を道路側から遠い側へと配置せしめることができる。こうすることで、上部水路2に貯留する水の上を車両が走行する可能性を若干低減することができる。また、左右非対称な異形の湾曲断面であれば、右側の湾曲面を縁石のように急に立ち上がるものとすることができる。すると、上部水路2に入り込んだ車両のタイヤが急な湾曲部分を乗り越えにくくなり、湾曲によって元の方向に車両が押し返されることから、車両の進路逸脱を阻止しやすくなる。また、上部水路2が丸く左右対象に窪んでいると、車両のタイヤが脱輪のように嵌まり込むことも考えうるが、図6のブロックでは、右側の緩い斜面側から入り込んだタイヤは、緩いカーブであるから、道路側へと脱出することも容易となる。
【符号の説明】
【0072】
1 側溝用ブロック
2 上部水路
3 通水溝
4 内部水路
5 切り込み溝
6 (内部水路の)流路勾配
7 (上部水路の)流路勾配
10 薄肉箇所
11 発泡プラスチック樹脂
12 連結インサート孔
13 モルタル
14 砂利
15 舗装道路表層
16 路盤
17 埋戻土
18 転圧力
19 ブロック高さの違い
20 掘削高さの違い
21 充填材
22 隙間
23 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連設配置することで排水路としうる側溝用ブロックであって、該側溝用ブロックの下部に内部長手方向に開通させた孔で構成させた内部水路の暗渠部と、該側溝用ブロックの上面に窪みを設けて長手方向に連接排水可能な上部水路とした開渠部を備え、該上部水路の該窪みの最底部に長手方向に細長い通水溝の開口部を設けて該内部水路の上面まで連通させたことを特徴とする側溝用ブロック。
【請求項2】
上部水路の窪みは、上部水路の長手方向に直角な断面の形状が弧状からなり、窪みの最底部の通水溝の開口部が該弧状の最下部に位置することを特徴とする請求項1に記載の側溝用ブロック。
【請求項3】
下部水路は、側溝用ブロックの長手方向に流路勾配を備え、上部水路は該下部水路の流路勾配と異なる傾斜角度の流路勾配を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の側溝用ブロック。
【請求項4】
下部水路は、側溝用ブロックの長手方向に流路勾配を備え、上部水路は該下部水路の流路勾配と反対向きの流路勾配を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の側溝用ブロック。
【請求項5】
上部水路は、隣接する路面の透水性舗装部分の厚みに相当する深さの切込み溝を側溝用ブロックの長手方向外側壁上端から上部水路の内壁上端にわたって備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の側溝用ブロック。
【請求項6】
上部水路の窪みは、上部水路の長手方向に直角な断面において左右に非対称な湾曲形状からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の側溝用ブロック。
【請求項7】
下段の内部水路は、その断面形状が横長な矩形からなる矩形水路により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の側溝用ブロック。
【請求項8】
側溝用ブロックは、長手方向外側壁の下部の一部を内部水路側へ切欠きにより薄肉化した長手方向外側壁を有し、該切欠きの少なくとも一方に該切欠き形状と同形状の発泡プラスチック樹脂成形体を嵌合して、該長手方向外側壁の上部壁面と該発泡プラスチック樹脂成形体の外側面とで面一な外側壁面を形成し、該面一な外側壁面を該側溝用ブロックの長手方向外側壁としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の側溝用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91976(P2013−91976A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234653(P2011−234653)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000161817)ケイコン株式会社 (37)
【出願人】(511259289)株式会社ネクスコ・メンテンナンス関東 (1)
【Fターム(参考)】