説明

傷跡が残ることを防止する及び減少させる被覆製剤

【課題】
【解決手段】本発明により揮発性液体状の高分子量シリコーンクロスポリマー及びシリコーンオイルの混合物を含む傷跡被覆製剤が提供され、ここで、前記揮発性液体状の高分子量シリコーンクロスポリマーは、ジメチコーンクロスポリマーである。その製剤は、ように、柔らかく、絹の感触を有し、脂ぎっておらず、かつ迅速に乾燥し、耐久性のある、柔軟な傷跡被覆[物]を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷跡を被覆ないしは修覆すること(ないしは、傷跡修覆[物]:scar dressing)に関する。さらに特別には、本発明は、傷跡に直接適用される無水シリコーン製剤を含み、傷跡が残ることを防止する又は減少させる被覆組成物(compositions for dressing)に関する。
【背景技術】
【0002】
傷跡が残ることは、皮膚損傷又は切開の後の通常の生理学的な治癒応答の結果として起こる。皮膚の創傷治癒プロセスは、炎症、肉芽形成(granulation)及びマトリックスリモデリング(matrix remodeling)の3つの段階を含んでなる。第一の段階では、炎症応答が開始され、損傷部位(ないしは、箇所)で血管拡張、滲出物(ないしは、浸出物:exudate)が創傷を充填すること及び膨張(ないしは、隆起:swelling)することが結果として起こる生化学的な反応のカスケードを生成する。損傷部位(ないしは、領域:area)への好中球の遊走は、細胞及び組織ダメージを引き起こすホスホリパーゼA2(phospholipase A2:PLA2)の放出及びプロスタグランジン(prostaglandins)の生成をトリガーする。第二の段階では、マクロファージが肉芽組織形成(granulated tissue formation)を促進するサイトカインを分泌して、肉芽形成が起こる。この新たなる組織は、新たなる脈管構造及び血液供給構造(blood supply)を完備する新たなる上皮組織を含んでなる。第三の段階では、繊維芽細胞が増殖し、そして、創傷部位の中及びその周りにブロックを構築するコラーゲン、エラスチン及び他の組織を生成して、マトリックスリモデリングが起こる。
【0003】
肥大型の傷跡(hypertrophic scars)は、高頻度であるが悪化した(ないしは、誇張した)治癒の応答を表す。臨床的に、肥大型の傷跡は、隆起し、赤く、しばしば結節状(nodular)である。それらは、全ての皮膚の部位で起こるが、厚い皮膚の部位が最も一般的である。しばしば、肥大型の傷跡は、数週間内に、火傷[痕]、創傷閉鎖、創傷感染、低酸素症(ないしは、ハイポキシア)及び他の外傷性の皮膚損傷を生じさせる。コラーゲンは、この傷跡のタイプにおいて、高度に乱れた状態(disorganized)で見られ、そして、通常のパラレルな方向というよりも、渦巻状に似た配置(ないしは、配列)を形成し、通常の皮膚の表面上の硬化及び隆起を引き起こす。
【0004】
アブノーマルな傷跡が残った皮膚を有する人は、しばしば、かなりの情動的及び財政的コストを伴う身体的(フィジカル)な、そして心理学的な結果に直面する。したがって、傷跡が残ることの処置及び防止は、重大な未処置のニーズを残す。現在の処置オプションは、全く処置しないこと(すなわち、傷跡を単独で残すこと);病変部位内への副腎皮質ステロイド投与、レーザー治療、そして冷凍外科療法のような浸潤性の手法及び手術;さらに、非浸潤性の対応(ないしは、処置:management)、特に局所的な薬物療法を介した対応に及ぶ。例えば、Zurada et al., J. Am. Acad. Dermatol. 55:1024-31 (2006)参照。処置を行うことを選択する傷跡に苦しむほとんどの人は、全体的に見てコンプライアンスが高く、プロセスが自己調節(ないしは、セルフコントロール)であり、痛みが少ないので、非浸潤性の技術を使用することを好む。
【0005】
傷跡の非浸潤性の対応に使用される重要な物質の1つは、ポリジメチルシロキサンポリマーゲルシート(polydimethylsiloxone[sic, polydimethylsiloxane] polymer gel sheeting)、又はシリコーンゲルシート(silicone gel sheeting)である。1982年に導入されて以来、局所用シリコーンゲルシートは、混合した結果を伴う前に存在する肥大型の傷跡の、サイズ、硬化、紅斑症、そう痒及び伸展性を極小化することに使用されている。例えば、Fette, Plastic Surg. Nurs. 26:87-92 (2006); de Oliveria et al., Dermatol. Surg. 27:721-26 (2001); Ricketts et al., Dermatol. Surg. 22:955-59 (1996)参照。しかしながら、コントロール実験は、ゲル創傷被覆と、シリコーンベースの創傷被覆との間に有意な差がないことを示している。さらに、シリコーンゲルシートの主要な欠点は、使用の難しさであり、そして、そのために、非コンプライアンスが高いことである。その性質により、シリコーンゲルは、扱うことが難しい。それは、柔らかく、かつ壊れやすい、そして、そのため、ゲルシートは、使用中に破れやすい。ポリエステル又は他の繊維のネットのようなサポート物質を製造する間に、その中に包埋することによって、シリコーンゲルシートの強さ及び扱いやすさを改善することが提案されている。しかしながら、この技術は、ゲルシートを扱う能力及び適用する能力を改善する結果となっているが、シートが適用する間及び使用中に断片化する傾向をいまだに有することが、見かけられている。なおかつ、シートは、2〜4ヶ月の間、1日に24時間まで装着されなければならない。
発明の開示
【発明により解決しようとする課題】
【0006】
シリコーンゲルシートに伴ういくつかの束縛を避けるために、液体状のシリコーンゲル生成物も試されている。例えば、液体状のジメチコーン生成物は、使用しやすいというアドバンテージを有するが、液体状のジメチコーンの魅力のないべとつき(greasy)、取り扱いにくい(messy)性質のためコンプライアンスもまた低い。シリコーンの取り扱いにくい性質を減少させる又は削減する試みは、主に、必要な適合能力(conformability)及びほとんどの傷に必要な長期間の柔軟性を欠く複雑な創傷被覆製剤に依存する。
【0007】
したがって、容易に適用され、痛み又は更なる傷を有することを誘導することがなく、しかし、損傷部位において適切な組織の再生を許容する十分な保護を提供する適合化(conforming)及び柔軟被覆化に結果としてなる改善された創傷又は傷跡被覆[物]に対するニーズが残っている。
【0008】
本発明は、室温で閉じた創傷に容易に適用され、かつ、迅速に治療するシリコーンエラストマークロスポリマーを含む傷跡被覆(ないし修覆)[物](スカードレッシング)に関する。シリコーンクロスポリマー混合物は、容易に閉じた創傷に直接適用することができ、そして治癒したとき、最近閉塞した傷に容易に適用され、適合性があり(conformable)かつ柔軟な被覆[物](dressing)を提供する。本願明細書において提供される被覆[物]は、傷跡をさらに小さくし、感染症の可能性を減少させそして、傷跡変色(scar discoloration)の強度及び持続時間を減少させる。
【0009】
さらに特別には、本願明細書により、高分子量のシリコーンエラストマークロスポリマー及びシリコーンオイルの混合物を含む傷跡被覆[物]が提供され、ここで前記シリコーンエラストマークロスポリマーは揮発性の液体状態である。シリコーンエラストマークロスポリマーは、ジメチコーンベースのもの、又はシクロヘキサシロキサン(cylclohexasiloxane[sic, cyclohexasiloxane])及びシクロペンタシロキサン(cyclopentasiloxane)の混合物があり得る。シリコーンオイルは、ジメチコーン、シクロメチコーン(cyclomethicone)、又はその混合物であり得る。
【0010】
被覆[物](dressing)は、適用時に皮膚上で柔らかく、絹の感触を有し、更なる損傷又は不快感を与えることなく適用されることができる。混合物が閉じた創傷に適用された後、揮発性の希釈剤の蒸発は、シリコーン混合物の「治癒」に結果としてなり、永い時間のあいだ、閉じた創傷又は傷跡を覆うことができる高度に柔軟な被覆[物]を形成する。それは、閉塞性であり得る。その製剤は、べとつかず、自ずと乾燥し、硬化、肥大化及び持続的な美観損傷(disfiguration)なしの継続的な治癒の最良の機会のために傷跡を塞ぐので、敏感な傷跡(tender scars)に適用することが容易であり、傷跡組織をなだめ、痛みがなく、副作用がなく、さらにユーザが複数に渡る適用態様に適応することが容易な傷跡処置生成物であり得る。
本発明を実施するための最良の形態
【0011】
別段に定義される場合を除き、本願明細書において使用された全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者(当業者)に一般的に理解されているものと同様の意味を有する。本願明細書に引用された全ての特許、出願、公開出願及び他の刊行物は、その全体が引用によって本願明細書に組み込まれる。このセクションに提示の定義が、本願明細書に引用によって組み込まれた特許、出願、公開出願及び他の刊行物に開示の定義に反する又は一致しない場合には、このセクションに提示の定義は、引用によって本願明細書に組み込まれた定義に優先する。
【0012】
本願明細書において使用した「a」又は「an」[すなわち、単数で表される用語]は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0013】
シリコーンは、反復ユニット(recurring group)--SiR2O-- を含む完全合成ポリマー(completely synthetic polymers)の基であり、上記の式において、Rは、アルキル、アリール、フェニル又はビニル基のようなラジカルである。単体のシリコーン(simpler silicones)は、非常に低融点のオイルであり、これに対し、反対の物理的(ないしはフィジカル)な性質のスケールでは、強固な固形物を形成する高架橋構造シリコーン(highly crosslinked silicones)である。これら2つの極端なものの間の物理的性質における中間のものは、ゲル及びゴムのようなシリコーンエラストマーである。シリコーンが、2以上のシリコーンの混合物を架橋(ないしはクロスリンク)することによって形成されたとき、種々の構成要素の分子量及び/又は反応性の基によるそれらの置換の度合いは、異なり得る。このことは、異なる物理的な性質を有する混合物が単に構成要素の比率が変化することによって形成されることを可能にする。
【0014】
本願明細書により、高分子量のシリコーンエラストマークロスポリマー及びシリコーンオイルの混合物を含む傷跡(又は創傷)被覆[物]が提供され、前記シリコーンエラストマークロスポリマーは、揮発性の液体状態にある。シリコーンエラストマークロスポリマーは、ジメチコーンベースのもの、又はシクロヘキサシロキサン(cylclohexasiloxane[sic, cyclohexasiloxane])及びシクロペンタシロキサン(cyclopentasiloxane)の混合物があり得る。シリコーンオイルは、ジメチコーン、シクロメチコーン、又はその混合物があり得る。創傷被覆[物]において有用なシリコーンエラストマーにより提供されるものは、最初に適用されるときには、迅速に乾燥し、柔らかく、皮膚上で絹の感触を有し、そして快適な手触りを被覆[物]に加えるものである。本願明細書において提供される傷跡被覆[物]は、閉塞性(occlusive)であり、かつ柔軟であり得る。被覆[物]は、非粘着性でありかつべとべとしない(non-greasy)。
【0015】
任意の適した高分子量のシリコーンエラストマーを採用することができる。シリコーンエラストマーは、架橋構造のシリコーンポリマーを含む。架橋構造のシリコーンポリマーの使用は、傷跡被覆製剤における触媒又は架橋剤(crosslinking agent)の必要性を排除する。いくつかの実施形態(ないしは実施例)では、好ましいエラストマーの分子量は、傷跡被覆製剤の所望の粘性、及び所望の速乾性、適合性、手触りの良さそしてべとつかなさ(non-tackiness)に依存する。例えば、エラストマーは、Dow Corning(登録商標) 9040(ジメチコーンクロスポリマー)、若しくはKSG-210(ジメチコーン/PEG−10/15クロスポリマー及びジメチコーン)(信越化学工業株式会社)及びVolasil 7525(シクロペンタシロキサン及びシクロヘキサシロキサンの混合物)(Chemisil Silicones社)としてのジメチコーンクロスポリマーを含む。典型的には、高分子量のエラストマークロスポリマーは、約50センチストークス(cSt)以下、約25センチストークス以下、又は時には5センチストークス以下の低粘性を有する。
【0016】
シリコーンエラストマーは、揮発性の液体状態にある。ほとんどの実施形態では、非揮発性の構成要素は、重量比で、約10%未満、約15%未満、約20%未満、又は約30%未満である。揮発性の液体は、シクロメチコーン又はジメチコーンのような超低粘性(super low viscosity)の液体シリコーンを含む。揮発性の液体状態のシリコーンエラストマーは、創傷被覆製剤の重量比で、約70%を上回る、約80%[を上回る]、約85%を上回る、約90%を上回る、約95%を上回る重量比を表す。
【0017】
本願明細書において提供される創傷被覆製剤に有用なシリコーンオイルは、70%を上回る、80%を上回る又は90%を上回る高い非揮発性内容物を有する。例えば、シリコーンオイルは、ジメチコーン、シクロメチコーン、又はBotanisil S-19 (PEG-12ジメチコーン)のようなその混合物を含む。シリコーンオイルは、液状又は粉末状であり得る。1つの実施形態では、シリコーンオイルは、Dow Corning(登録商標)9506のようなジメチコーン/ビニル ジメチコーンクロスポリマーがあり得る。傷跡被覆製剤におけるシリコーンオイルの量は、混合物の約0.5%から約15%重量であり得る。いくつかの実施形態では、好ましいエラストマーの粒子サイズは、創傷被覆製剤の所望の粘性、並びに、所望の速乾性、適合性、手触りの良さ及びべとつかなさに依存する。一般的に、粒子サイズの範囲は、約500nmから約100μmであり得る。いくつかの実施形態では、粒子サイズは、約1から約15μmに及ぶ。平均粒子サイズは約500nm、約1μm、約3μm、約5μm、約10μm、約15μm又はそれより大であり得る。
【0018】
傷跡被覆製剤は、1以上の添加物を任意に含むことができる。添加物は、治療剤(therapeutic agents)、抗細菌剤(antimicrobials)(抗菌剤(antibacterials)、抗ウィルス剤及び抗真菌剤を含む)、安定剤、増粘剤、色素ないし顔料、染料、防腐剤及び抗酸化剤を含むがこれに限定されない。1つの実施形態では、傷跡被覆製剤は、約0.001%から約25〜35%重量の少なくとも1の添加物を含む。特定の実施形態では、添加物は、約5%重量以下、約3%重量以下又は約1%重量以下である。
【0019】
いくつかの実施形態では、添加物は、傷跡被覆製剤の滑らかさ(smoothness)を増やすことができる。そのような添加物は、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エステル(類)、ジアシルグリセロールエステル(類)及びデンプンを含むがこれに限定されない。
【0020】
いくつかの傷跡被覆製剤では、ベンジルアルコールのような防腐剤が有用である。水のような治療剤及び/または抗細菌剤の担体(carriers)も採用することができる。
【0021】
安定剤は、特にアミン系安定剤を含む。適した増粘剤は、ガレノス式薬学(galenic pharmacy)においてゲル形成に慣用的に使用される膨張剤である(swelling agents)。適した増粘剤の例は、寒天、ゼラチン、アラビアガム、ペクチンなどのような天然有機増粘剤、カルボキシメチルセルロース又はセルロースエーテル(類)のような変性(ないし修飾)された天然有機化合物、もしくは、ポリアクリル化合物、ビニルポリマー(類)又はポリエーテル(類)のような完全合成有機増粘剤を含む。
【0022】
治療剤は、抗敗血症(剤)、抗細菌性の薬剤、抗真菌性の薬剤又は火傷及び傷の治療に採用される他のアジュバントを含む任意の生理活性剤(bioactive agent)を含むがこれに限定されない。そのような薬剤は、有機分子、好ましくは50ダルトンを上回り、かつ2,500ダルトン未満の分子量を有する小(small)有機化合物、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、(これらの)誘導体(ないしは類縁体)、そして構造類似体を含む。治療剤は、抗体または結合性フラグメント(binding fragments)またはその模倣物(mimetics)、例えば、Fv, F(ab´)2及びFab又は創傷治癒及び皮膚の成長を促進する成長因子のようなペプチド及びタンパク質製剤も含む。フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、ペニシリン、テトラサイクリン及びストレプトマイシンのような鎮痛剤及び抗生物質も、本願明細書において提供される創傷被覆製剤において有用な適した治療剤である。
【0023】
特定の実施形態では、本願明細書において提供される傷跡被覆製剤は、リポソーム又はリポソーム組成物を含む。任意の適したリポソーム又はリポソーム組成物が採用され得る。いくつかの実施形態では、リポソームは、創傷を被覆することに適した1つ以上の治療剤を含むことができる。例えば、リポソームは、U.S.特許No. 6,958,160及び7,150,883におけるそれらを含む。1つの実施形態では、リポソームは、ジアシルグリセロール‐PEGである1以上の脂質、特にジオレオイルグリセロール(dioleolylglycerol)-PEG-12を含む。
【0024】
[本発明に係る]製剤は、傷跡の進展(scar evolution)の間の任意の段階で有用である。該製剤は、初期の再上皮化プロセスを完了した創傷、又は閉傷である創傷に適用され得る。該製剤は、創傷治癒の収縮(contraction)、成熟(maturation)又はリモデリング段階の間に傷跡を処置することにも有用である。従って、傷跡は、約1週齡未満、約2週齡未満、約3週齡未満、約1月齡未満、約3月齡未満またはそれ以上であり得る。任意のタイプの創傷から生じる傷跡は、本発明に従って処置され得る。そのような傷跡は、切り傷、擦り傷、外傷による皮膚損傷、火傷、そして手術による(メスまたはレーザーの使用の結果生じる傷のような)創傷から結果として生じる、又はそれらに関する創傷を含むがそれに限定されない。そのような傷は、萎縮型、肥大型、ケロイド(型)、拘縮(型)があり得る。本願明細書において提供される傷跡被覆製剤は、特に火傷の後の創傷の肥大型の傷跡の処置及び/又は予防に適する。
【0025】
いくつかの実施形態において、傷跡被覆製剤は、所望の部位に適用されるが、一方では、実質的に流動可能な状態である。一度、傷跡被覆製剤が完全に混合されると、流動可能[な状態]に留まり、そのため、創傷の表面に15分間まで適用可能になる。流動可能又は実質的に流動可能な状態は、創傷被覆製剤が任意の輪郭又は形状の表面に適した状態になることを可能にする。したがって、創傷被覆製剤が傷跡に適用されると、約2分から約15分間、必要に応じて傷跡を被覆するために働くことができる。適用後、傷跡被覆製剤は、所望の厚さで滑らかになり、そして、混合の後、実質的にべとつかなくなる(tack-free)。
【0026】
傷跡被覆製剤は、治癒上、典型的には約0.1mmから約5mmの厚さを有する膜を形成する。膜は、傷跡の表面上で連続的または実質的に連続的であり得る。膜の連続的な性質は、傷跡被覆[物]が傷跡の中に水分ないしは湿気を保持し、細菌バリア(bacterial barrier)として働くことをを可能にする。傷跡被覆[物]は、空気の気泡を含まない(free)又は少なくとも実質的に含まない。
【0027】
傷跡被覆製剤は、透明、または実質的に透明であり得る。透明さは、治癒を続行する傷跡の視覚的な観察及びモニタリングを可能にし、そして被覆[物]の美容的な外観を改善する(例えば、目立たなくする)。
【0028】
傷跡被覆製剤は、傷跡の治癒及び/または回復が可能な充分な任意の時間、傷跡の上に残ることができる。1つの実施形態では、膜を形成する傷跡被覆製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日間、少なくとも約4日間、少なくとも約6日間、又は少なくとも約7日から約10日間、傷の上に残る。
【0029】
治癒そして傷跡の形成を促進すること及び/又は実質的に完了するために充分な時間、傷跡上に傷跡被覆製剤があった後に、傷跡被覆[物]は、傷跡からそっとふき取ることによって、取り除くことができる。治癒した創傷は、発赤(redness)、湿っぽさが少ないこと、そして傷跡が小さいこと(minimal scarring)によって特徴付けられる。
【0030】
さらに、本願明細書により、本願明細書に提示の製剤の構成成分、そして任意の使用のための説明書を含むキットが提供される。
【0031】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定するものではない。
実施例1
ジメチコーンクロスポリマーを使用する傷跡被覆製剤
【0032】
KSG-210は、液体シリコーン内で膨潤するジメチコーン及びジメチコーン/PEG-10/15 クロスポリマーである。微小なクロスリンク粒子は、液体との界面に配向し、ネットワーク(ないしは網状構造)を形成する。Botanisil S-19、シリコーンオイル、すなわち、PEG-12 ジメチコーンである。
【0033】
GDM-12は、特定の自己形成タイプの治療剤の送達(delivery)に適した熱力学的に安定なリポソームである(U.S.特許No. 6,958,160参照)。より具体的には、GDM-12は、グリセロールジミリステート(glycerol dimyristate "GDM")から形成されたリポソームの混合物であり、ここで、脂質の頭部の基は、PEG鎖に12 C2H4Oサブユニットを有するポリエチレングリコール("PEG")分子を含む。



実施例2
ジメチコーンクロスポリマーを使用する傷跡被覆製剤
【0034】
ダウコーニング(登録商標) 9040 シリコーンエラストマーブレンド(Dow Corning(登録商標) 9040 Silicone Elastomer Blend)は、高分子量シリコーンエラストマー(すなわち、ジメチコーンクロスポリマー)の混合物のシクロメチコーン溶液(<1重量%)である。それは、揮発性の希釈液、すなわち、液体シリコーンである。それは、250,000〜580,000cpの粘性範囲、及び12.0重量%から12.75重量%の典型的な非揮発性内容物を有する。シクロメチコーンは、シリコーンオイルである。


実施例3
ジメチコーンクロスポリマーを使用する傷跡被覆製剤
【0035】
Volasil 7525は、エラストマー(ズ)シクロヘキサシロキサン(elastomers cyclohexasiloxane)及びシクロペンタシロキサンの低粘性混合物である。ダウコーニング(登録商標)9506 パウダー(Dow Corning(登録商標) 9506 powder)は、シリコーンオイルである。さらに特別には、ダウコーニング(登録商標)9506は、(最小)98%の非揮発性内容物を伴うジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーである。それは、乾燥した滑らかさ(dry smoothness)及び粉状の軽い、脂ぎってない感触を提供する白い自由流動性(free-flowing)の粉末である。それは、べとつき(tackiness)も減らす。


【0036】
本発明は、その好ましい実施例に関して説明されているが、その種々の変形、変更ないしは修正が、本願明細書を読めば、当該技術分野における通常の知識を有する者に明白になるだろう。従って、本願明細書に提示(ないしは、記載)の発明が、本願特許請求の範囲の各請求項の範囲内に含まれるものとして、そのような変形、変更ないしは修正を包含すると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)揮発性液体状態の高分子量シリコーンクロスポリマー;及び
b)液体シリコーン/オイル
を含む傷跡被覆製剤。
【請求項2】
前記揮発性液体状態の高分子量シリコーンクロスポリマーは、ジメチコーンクロスポリマーである
請求項1に記載の傷跡被覆製剤。
【請求項3】
前記揮発性液体状態の高分子量シリコーンクロスポリマーは、シクロヘキサシロキサン及びシクロペンタシロキサンの混合物である
請求項1に記載の傷跡被覆製剤。
【請求項4】
前記シリコーンオイルは、ジメチコーン、シクロメチコーン又はその混合物である
請求項1に記載の傷跡被覆製剤。
【請求項5】
治療剤をさらに含む
請求項1に記載の傷跡被覆製剤。
【請求項6】
前記治療剤は、リポソーム中にカプセル化されている
請求項4に記載の傷跡被覆製剤。
【請求項7】
請求項1の製剤の構成成分を含むキット。

【公表番号】特表2010−520890(P2010−520890A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552931(P2009−552931)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/056443
【国際公開番号】WO2008/109887
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(500107304)バイオゾーン ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】