説明

傾斜コイル動作誘導による磁場ドリフトをモデル化するためのシステム及び方法

【課題】MR撮像及び画像再構成のために磁場ドリフト及び/または高調波ドリフトを特徴付けしかつ補償する。
【解決手段】MRスキャン中に印加されるパルスシーケンスを収集すること、並びにパルスシーケンスの複数の傾斜パルスに関するパワースペクトルを決定すること、を行うようにプログラムされたコンピュータ(20)を含む。このコンピュータ(20)は、パルスシーケンスの印加中の複数の傾斜コイルによる複数の傾斜パルスの印加に由来する磁場のドリフトを計算すること、並びにMRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、を行うようにプログラムされている。このコンピュータ(20)はさらに、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、磁場に関する計算済みドリフトに基づいて収集MRデータを補正すること、並びに補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、を行うようにプログラムされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的にはMR撮像に関し、またさらに詳細には、傾斜コイル動作の誘導による磁場及び/または高調波ドリフトをモデル化するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIシステムやNMRシステムでは、多数のコイルによって電流を伝達し、極めて強力で比較的均一な磁場を発生させている。この磁場のことを主磁場またはB0磁場と呼ぶことがある。人体組織などの物質を均一な磁場(偏向磁場B0)にかけると、組織中のスピンの個々の磁気モーメントはこの偏向磁場と整列しようとして、この周りをそのラーモアの特性周波数によってランダムな秩序で歳差運動することになる。この物質や組織に、x−y平面内にありラーモア周波数に近い周波数の磁場(励起磁場B1)がかけられると、正味の整列モーメント(すなわち、「縦磁化」)MZは、x−y平面内に来るように回転させられ(すなわち、「傾けられ(tipped)」)、正味の横方向磁気モーメントMtが生成される。励起信号B1を停止させた後、励起したスピンにより信号が放出され、さらにこの信号を受信し処理して画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を用いて画像を作成する際には、磁場傾斜(Gx、Gy及びGz)が利用される。典型的には、撮像しようとする領域は、使用する具体的な位置特定方法に従ってこれらの傾斜を変更させる一連の計測サイクルによりスキャンを受ける。得られた受信NMR信号の組はディジタル化され、よく知られた多くの再構成技法のうちの1つを用いて画像を再構成するように処理される。
【0004】
傾斜磁場(Gx、Gy及びGz)は、均一ではなく各軸それぞれに沿った大きさが様々である。円筒状のマグネットシステムでは、主磁場を発生させるコイルをアキシャル方向に整列させている。典型的には傾斜コイルは、主磁場コイルの半径方向内側の管状空間に配置される。典型的な配列では傾斜コイルは、樹脂などのポッティングされた(potted)材料内に埋め込まれた抵抗性のワイヤを備える。
【0005】
受動型シム配列は、傾斜コイルのポッティングした材料内に形成されたスロット内部にマグネット軸に対して平行な方向に収容したシムトレイを利用するのが通例である。このシムトレイは、その長さ方向に多数のポケットを含む。このポケット内部には、典型的には正方形または矩形をした平坦な鋼鉄片であるシム片が配置されており、さらに傾斜コイル内に来るようにシムトレイが装填される。
【0006】
傾斜コイルの動作には使用されるパルスシーケンスに応じた一連の高速「オン−オフ」切替えが不可欠であるのが通例である。この傾斜動作が動作時にB0磁場ドリフト及び高調波ドリフトを生じさせる可能性があること、並びにその結果として画質が損なわれる可能性があることが知られている。こうした傾斜動作は、大量の鋼鉄製シムを使用してその均一性を維持させるようなフル受動型シムマグネットにとって特に有害である。
【0007】
傾斜コイルの動作により生じるB0ドリフト及び高調波ドリフトは、マグネットシステム内の様々な構成要素に対して異なるメカニズムを介した複雑な依存関係を有する。図1は、傾斜動作を磁場ドリフト及び高調波ドリフトと相関させたブロック図を表している。第1のブロック2はMRスキャンシーケンス中に実施される傾斜動作を表している。例えば傾斜動作は、患者やスキャン対象のある具体的なスライスに関するMRデータを収集し得るようにパルスシーケンスに従ってMRシステムの傾斜コイルがパワー供給を受けるようなスピンエコーMRシーケンスにおいて実施されることがある。傾斜動作2は、常温ボア寄与8、圧力変動による寄与10、及びMRシステム内の受動シム12による寄与を含む複数の寄与要因6のためにB0及び高調波ドリフト4につながる可能性がある。B0及び高調波ドリフト4は画質の低下を生じさせる可能性がある。
【0008】
常温ボア寄与8は例えば、うず電流加熱14及び対流や伝導などのその他の加熱メカニズム16に起因する可能性がある。圧力変動10は例えば、誘導されるうず電流による傾斜コイルからヘリウム容器への熱伝達に起因する可能性があり、これがヘリウム容器内の圧力を上昇させる。さらにヘリウム容器内のヘリウム温度の変化は圧力変動10を変化させることがある。さらに受動シム12が、うず電流加熱18やその他の加熱メカニズム20によりB0及び高調波ドリフト4に影響を及ぼすことがある。
【0009】
図2は、受動シムを通じた磁場ドリフト及び高調波ドリフトに対する寄与を表したブロック図である。傾斜コイルにより発生させる切替式の電磁場22は、鋼鉄、鉄その他の強磁性体のシム内にオーム損失26を生じさせるようなうず電流24を誘導する可能性があり、これがシム内に温度上昇28を生じさせる。さらに高温の傾斜表面及び傾斜冷却水からの熱伝達は、シム温度を変化させ、これによりシム磁化を変化させることになる。このシムは、簡易(easy)軸に沿って主磁場により飽和するまで磁化させ、視野域(FOV)内のB0磁場及び高調波に対して双極子として寄与するのが通常である。軟磁性材料の飽和磁化は温度依存的であり、そのためシムにより生成される磁場は温度依存的となり変化する可能性(30)がある。図示したような傾斜コイルの動作により変化する可能性がある飽和磁化の変化30は、磁場ドリフト及び高調波ドリフト32に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7375526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、MR撮像及び画像再構成のために磁場ドリフト及び/または高調波ドリフトを特徴付けしかつ補償することが可能なシステム及び方法があることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による磁気共鳴撮像(MRI)装置はMRIシステム及びコンピュータを備える。このMRIシステムは、磁場を発生するように構成されたマグネットと、複数の傾斜コイルと、MR画像を収集させるためにRF信号をRFコイルアセンブリに送るためにパルスモジュールにより制御を受けるRF送受信器システム及びRFスイッチと、を備える。コンピュータは、MRスキャン中に印加しようとするパルスシーケンスを収集すること、並びにパルスシーケンスの複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定すること、を行うようにプログラムされている。コンピュータはさらに、パルスシーケンスの印加中の複数の傾斜コイルによる複数の傾斜パルスの印加に由来する磁場のドリフトを計算すること、並びにMRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、を行うようにプログラムされている。コンピュータはさらに、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、磁場に関する計算済みドリフトに基づいて収集MRデータを補正すること、並びに補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、を行うようにプログラムされている。
【0013】
本発明の別の態様による方法は、MRスキャン中にパルスシーケンス内に印加しようとする複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定する工程と、パルスシーケンス中の複数の傾斜パルスの印加に由来する主磁場の磁場ドリフトを決定する工程と、MRスキャン中にパルスシーケンスを印加する工程と、を含む。本方法はさらに、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集する工程と、収集したMRデータを磁場ドリフトに基づいて補正する工程と、補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成する工程と、を含む。
【0014】
本発明の別の態様によるコンピュータプログラムをその上に保存した非一時的コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータにより実行させたときに該コンピュータに対してMRスキャン中にパルスシーケンス内に印加しようとする複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定すること、並びに主磁場ドリフトを得るためにパワースペクトルの少なくとも1つの周波数に対する主磁場の依存性を特徴付けすること、を行わせる命令を含む。この命令はコンピュータに対してさらに、MRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、収集したMRデータを主磁場ドリフトに基づいて補正すること、並びに補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、を行わせている。
【0015】
別の様々な特徴及び利点については以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【0016】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図される実施形態を表している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】傾斜動作を磁場ドリフト及び高調波ドリフトと相関させたブロック図である。
【図2】受動シムを介した磁場ドリフト及び高調波ドリフトに対する寄与を表したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による磁場及び/または高調波ドリフトに由来した収集MRデータの補正のための技法を表した流れ図である。
【図4】本発明の一実施形態によるパルスシーケンス図表を表したプロットである。
【図5】本発明の一実施形態による図4のパルスシーケンス図表のパワースペクトルのプロットである。
【図6】本発明の一実施形態で使用するための例示的なMR撮像システムのブロック概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、傾斜コイル動作で誘導される磁場ドリフト及び高調波ドリフトを特徴付けしかつモデル化するためのシステム及び方法を提供する。磁場ドリフト及び高調波ドリフトのモデルに基づいて、MRスキャン中におけるそのリアルタイム補償を実施し画質を向上させることができる。
【0019】
傾斜コイル動作の特徴付けには、B0及び/または高調波ドリフトを周波数の関数として特徴付けすることを含む。B0及び/または高調波ドリフトに関する周波数の関数としての特徴付けを決定した後、任意のPSDパワースペクトルPW(f)に由来するB0及び/または高調波ドリフトを式1によって特徴付けすることが可能である。以下に記載する本発明の実施形態はB0ドリフトを対象とすることがあるが、当業者であれば高調波ドリフトによりこれに代えることができることを理解されよう。
【0020】
所与のパルスシーケンス図表(PSD)パワースペクトル(PW)に由来するB0ドリフトは、各傾斜軸ごとに次式で与えられる。
【0021】
【数1】

【0022】
時間領域では、式1はコンボリューション積分となる。時間量tの間に加えられる各PSDごとのB0ドリフト寄与は次式で与えられる。
【0023】
【数2】

【0024】
均一な時間Δtにおいてサンプリングすると、コンボリューション積分(式2)を以下の総和によって近似することが可能である。
【0025】
【数3】

【0026】
0の周波数依存性は、1)受動シム片加熱(B0shim)による寄与、2)常温ボア(WB)加熱(B0WB)による寄与、及び3)圧力変動(B0P)による寄与という3つの主要成分に分解することが可能である。B0の周波数依存性に関する表現は次式で与えられる。
【0027】
【数4】

【0028】
0(f)の各成分(すなわち、B0shim(f)、B0WB(f)及びB0P(f))は、物理モデルベースの解析または数値シミュレーションからのそれぞれの成分の決定によるか、あるいは試験的計測によって特徴付けすることが可能である。
【0029】
0ドリフトに対するシム片からの支配的な寄与は、温度変化の結果としての磁化の変化に由来するものである。以下の検討は、本発明の一実施形態によるシム片に対するうず電流に由来するB0ドリフトの解析的決定を表している。
【0030】
A(ri)を第i番目のシム片の箇所における傾斜に由来する磁気ベクトルポテンシャルとしてみると、次式となる。
【0031】
【数5】

【0032】
伝導率σを有する第i番目の片に対するジュール加熱は次式で与えられる。
【0033】
【数6】

【0034】
次式が成り立つため、
【0035】
【数7】

【0036】
式6を次のように書き換えることができる。
【0037】
【数8】

【0038】
マクスウェルの方程式から、時変動する磁場に由来する電場は次式で与えられる。
【0039】
【数9】

【0040】
したがって次式が成り立つ。
【0041】
【数10】

【0042】
したがってシム表面上で消費される総エネルギーは次式で表すことができる。
【0043】
【数11】

【0044】
シム片内におけるパワー消費を式11を用いて周波数の関数として計算した後、シム片内の温度上昇を次式によって決定することが可能である。
【0045】
【数12】

【0046】
上式において、c(T)はシム片材料の比熱容量である。キュリー温度(Tc)より十分に低い温度では、飽和磁化に関する温度依存は既知である。したがって第i番目のシム片に由来する磁場(B0)は次式となる。
【0047】
【数13】

【0048】
上式において、
【0049】
【数14】

【0050】
でありかつm0は300ケルビンにおける磁化である。
【0051】
うず電流加熱に由来するシム片内の磁化変化によるB0ドリフトはしたがって、周波数の2乗で変動するように観察されることがある。
【0052】
【数15】

【0053】
本発明の別の実施形態では、シム片内の磁化の変化に由来するB0ドリフトがシム片の温度変化と一緒に計測されることがある。この方式では、熱伝達の全メカニズムによるシム片内の磁化の変化に由来するB0ドリフトが計測を通じて正確に決定されることがある。
【0054】
WBに由来するB0ドリフトに対する支配的な寄与は、うず電流加熱の結果としての温度に伴う透磁率の変化によって主に生じている。この透磁率変化は、追加の未補償B0項及び常温ボアの磁化の変化を生じさせる。以下の検討は、本発明の一実施形態によるうず電流加熱によるWBに由来するB0ドリフトの解析的決定を表している。
【0055】
A(R,z)をWBの表面上の箇所(R,z)にある傾斜に由来するベクトルポテンシャルとすると、次式となる。
【0056】
【数16】

【0057】
シム片上のうず電流に由来するB0ドリフトに関連して上で説明したのと同じ推論に従うと、WBの表面上に誘導されるうず電流、またしたがって加熱及び磁場生成の結果としてうず電流により生じるB0磁場は次式のように表現することが可能である。
【0058】
【数17】

【0059】
本発明の別の実施形態では、熱伝達の全メカニズムにより生じるWBに由来するB0ドリフトが常温ボアの温度変化と一緒に計測されることがある。この方式では、WBに由来するB0ドリフトが計測を通じて決定されることがある。
【0060】
圧力変化に由来するB0ドリフトは本発明の一実施形態に従って計測によって決定されることがある。例えばB0ドリフトは、圧力を例えば0.5psiのステップで変化させて得られるB0ドリフトを計測することなどによって様々な圧力で計測されることがある。これについては別の圧力間隔も企図される。
【0061】
図3は、本発明の一実施形態による磁場及び/または高調波ドリフトによる収集MRデータを補正するための技法34を表している。技法34は、磁場及び/または高調波ドリフトを周波数の関数として特徴付けする工程を含む。ドリフトを特徴付けする工程は、ブロック36におけるパルスシーケンスの収集で開始される。このパルスシーケンスは、撮像の間に使用される傾斜パルスを含む任意のパルスシーケンスとすることができる。ブロック38では、パルスシーケンスの間に印加しようとする傾斜が時間領域で決定される。この傾斜の決定は、パルスシーケンス全体に基づいたパルスシーケンス図表(PSD)の展開、あるいはPSDの傾斜のみに基づく展開を含むことがある。
【0062】
図4を参照すると、パルスシーケンスのPSD56を表している。PSD56は、パルスシーケンス中に印加されることになる唯一の傾斜パルス58を表している。傾斜パルス58は、x方向に印加されることになる第1の傾斜60と、y方向に印加されることになる第2の傾斜62と、z方向に印加されることになる第3の傾斜64と、を含む。
【0063】
図3に戻りブロック40では、時間領域傾斜のパワースペクトル(PW)が決定される。PWは、PSDの特定の周波数における傾斜の電流入力及びAC抵抗からI(f)2R(f)のように決定されることがある。図5は、図4の傾斜パルス58のPWに関するプロット66を表している。決定した周波数68に基づいて、B0及び/または高調波ドリフトに対する寄与を決定することが可能である。
【0064】
再度図3を見るとブロック42では、B0及び/または高調波ドリフトに関する周波数依存性が収集される。一実施形態ではこの周波数依存性を、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に保存されたデータベースから収集している。上述のようにこの周波数依存性は受動シム片加熱、WB加熱及び圧力変動による寄与を含む。
【0065】
技法34におけるB0及び/または高調波ドリフトの計算は、周波数領域で実施することも時間領域で実施することもできる。したがって、B0及び/または高調波ドリフトの計算を時間領域で実行したい場合は、技法34はブロック44においてブロック40、42における決定したPW及び収集した周波数依存性を時間領域に変換する工程を含む。
【0066】
周波数領域による場合でも時間領域による場合でも、決定したPWと周波数依存性の組み合わせに基づいてブロック46においてB0及び/または高調波ドリフトが計算される。例えばB0ドリフトは上記の式1または2に基づいて計算されることがある。
【0067】
ブロック48では、ブロック36で収集したパルスシーケンスがMRスキャン中に印加されると共に、ブロック50においてスキャン中にMRデータが収集される。収集したMRデータはブロック52において、ブロック46で計算したB0及び/または高調波ドリフトに基づいて補正される。ブロック54では補正済みのMRデータに基づいて、B0及び/または高調波ドリフトに由来するアーチファクトを低減させた画像が再構成される。
【0068】
図6を参照すると、本発明の一実施形態を組み込んだ磁気共鳴撮像(MRI)システム110の主要コンポーネントを表している。このシステムの動作はある種の機能のために、この例ではキーボードその他の入力デバイス113、制御パネル114及び表示画面116を含むオペレータコンソール112から制御を受けている。コンソール112は、オペレータが画像の作成及び表示画面116上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム120と、リンク118を介して連絡している。コンピュータシステム120は、バックプレーン120aを介して互いに連絡した多くのモジュールを含む。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール122、CPUモジュール124、並びに画像データアレイを記憶するためのフレームバッファとして当技術分野で知られるメモリモジュール126が含まれる。コンピュータシステム120は、高速シリアルリンク134を介して単独のシステム制御部132と連絡している。入力デバイス113は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、カードリーダ、プッシュボタン、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0069】
システム制御部132は、バックプレーン132aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール136や、シリアルリンク140を介してオペレータコンソール112に接続したパルス発生器モジュール138が含まれる。システム制御部132は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク140を介して受け取っている。パルス発生器モジュール138は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させるRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール138は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器142と接続させている。パルス発生器モジュール138はさらに、生理学的収集制御器144から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器144は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール138はスキャン室インタフェース回路146と接続されており、スキャン室インタフェース回路146はさらに、患者及びマグネットシステムの状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。さらにこのスキャン室インタフェース回路146を介して、患者位置決めシステム148は患者を所望のスキャン位置まで移動させるコマンドを受け取っている。
【0070】
パルス発生器モジュール138が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム142に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように全体を番号150で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ150は、偏向マグネット154及び全身用RFコイル156を含む共鳴アセンブリ152の一部を形成している。システム制御部132内の送受信器モジュール158は、RF増幅器160により増幅を受けて送信/受信スイッチ162によりRFコイル156に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル156により検知し、送信/受信スイッチ162を介して前置増幅器164に結合させることがある。増幅したMR信号は、送受信器158の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ162は、パルス発生器モジュール138からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器160をコイル156と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器164をコイル156に接続させている。送信/受信スイッチ162によりさらに、単独のRFコイル(例えば、表面コイル)を送信モードと受信モードとのいずれにおいても使用することが可能となる。
【0071】
RFコイル156により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール158によりディジタル化され、システム制御部132内のメモリモジュール166に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール166内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ168に入力される。この画像データはシリアルリンク134を介してコンピュータシステム120に送られ、コンピュータシステム120において画像データはメモリ内に保存される。この画像データは、オペレータコンソール112から受け取ったコマンドに応答するか、さもなければシステムのソフトウェアの指令に従って、長期記憶内にアーカイブされることや、画像プロセッサ122によりさらに処理してオペレータコンソール112に伝達しディスプレイ116上に提示したりすることがある。
【0072】
開示した方法及び装置に関する技術的寄与は、傾斜コイル動作誘導による磁場ドリフトをモデル化するためのコンピュータ実現によるシステム及び方法を提供できることである。
【0073】
本発明の実施形態がコンピュータプログラムをその上に保存したコンピュータ読み取り可能記憶媒体とインタフェースされこれにより制御され得ることは当業者であれば理解されよう。このコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、電子構成要素、ハードウェア構成要素及び/またはコンピュータソフトウェア構成要素のうちの1つまたは幾つかなどの複数の構成要素を含む。これらの構成要素には、あるシーケンスの1つまたは複数の実現形態や実施形態のうちの1つの部分または複数の部分を実行するためにソフトウェア、ファームウェア及び/またはアセンブリ言語などの命令を保存するのが一般的である1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含むことがある。これらのコンピュータ読み取り可能記憶媒体は非一時的及び/または実体的であるのが一般的である。こうしたコンピュータ読み取り可能記憶媒体の例には、コンピュータ及び/または記憶デバイスの記録可能なデータ記憶媒体が含まれる。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、例えば磁気式、電気式、光学式、生物学式及び/または原子式のデータ記憶媒体のうちの1つまたは幾つかを利用することがある。さらにこうした媒体は例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスクドライブ及び/または電子式メモリの形態をとることがある。非一時的かつ/または実体的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体に関するここに列挙していない別の形態も本発明の実施形態で利用することができる。
【0074】
システムの一実現形態においてこうした構成要素を多数組み合わせたり分割したりすることが可能である。こうした構成要素はさらに、多くのプログラミング言語のいずれかによって記述されたまたはこれらを用いて実現されたコンピュータ命令組及び/または命令列を含むことがあることは当業者であれば理解されよう。さらに、1つまたは複数のコンピュータにより実行させたときに該1つまたは複数のコンピュータに対してあるシーケンスの1つまたは複数の実現形態や実施形態のうちの1つの部分または複数の部分を実行させるような命令シーケンスを表したコンピュータデータ信号を具現化するために、搬送波など別の形態をしたコンピュータ読み取り可能媒体を利用することがある。
【0075】
本発明の一実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)装置はMRIシステム及びコンピュータを備える。このMRIシステムは、磁場を発生するように構成されたマグネットと、複数の傾斜コイルと、MR画像を収集させるためにRF信号をRFコイルアセンブリに送るためにパルスモジュールにより制御を受けるRF送受信器システム及びRFスイッチと、を備える。コンピュータは、MRスキャン中に印加しようとするパルスシーケンスを収集すること、並びにパルスシーケンスの複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定すること、を行うようにプログラムされている。コンピュータはさらに、パルスシーケンスの印加中の複数の傾斜コイルによる複数の傾斜パルスの印加に由来する磁場のドリフトを計算すること、並びにMRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、を行うようにプログラムされている。コンピュータはさらに、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、磁場に関する計算済みドリフトに基づいて収集MRデータを補正すること、並びに補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、を行うようにプログラムされている。
【0076】
本発明の別の実施形態による方法は、MRスキャン中にパルスシーケンス内に印加しようとする複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定する工程と、パルスシーケンス中の複数の傾斜パルスの印加に由来する主磁場の磁場ドリフトを決定する工程と、MRスキャン中にパルスシーケンスを印加する工程と、を含む。本方法はさらに、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集する工程と、収集したMRデータを磁場ドリフトに基づいて補正する工程と、補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成する工程と、を含む。
【0077】
本発明の別の実施形態によるコンピュータプログラムをその上に保存した非一時的コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータにより実行させたときに該コンピュータに対してMRスキャン中にパルスシーケンス内に印加しようとする複数の傾斜パルスのパワースペクトルを決定すること、並びに主磁場ドリフトを得るためにパワースペクトルの少なくとも1つの周波数に対する主磁場の依存性を特徴付けすること、を行わせる命令を含む。この命令はコンピュータに対してさらに、MRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、収集したMRデータを主磁場ドリフトに基づいて補正すること、並びに補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、を行わせている。
【0078】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0079】
2 傾斜動作
4 B0及び高調波ドリフト
6 寄与要因
8 常温ボア寄与
10 圧力変動
12 受動シム
14 うず電流加熱
16 その他の加熱メカニズム
18 うず電流加熱
20 その他の加熱メカニズム
22 切替式電磁場
24 うず電流
26 オーム損失
28 温度上昇
30 飽和磁化の変化
32 磁場ドリフト及び高調波ドリフト
56 パルスシーケンス図表(PSD)
58 傾斜パルス
60 第1の傾斜
62 第2の傾斜
64 第3の傾斜
66 傾斜パルスのPWのプロット
68 決定した周波数
110 磁気共鳴撮像(MRI)システム
112 オペレータコンソール
113 入力デバイス
114 制御パネル
116 表示画面
118 リンク
120 コンピュータシステム
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132a バックプレーン
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136 CPUモジュール
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142 傾斜増幅器
144 生理学的収集制御器
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152 共鳴アセンブリ
154 偏向マグネット
156 RFコイル
158 送受信器モジュール
160 RF増幅器
162 送信/受信スイッチ
164 前置増幅器
166 メモリモジュール
168 アレイプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)であって、
磁場を発生させるように構成されたマグネット(54)と、
複数の傾斜コイル(50)と、
MR画像を収集するようにRF信号をRFコイルアセンブリ(56)に送信するようにパルスモジュール(38)により制御を受けるRF送受信器システム(58)及びRFスイッチ(62)と、
を有するMRIシステム(10)と、
コンピュータ(20)であって、
MRスキャン中に印加されるパルスシーケンスを収集すること、
パルスシーケンスの複数の傾斜パルスに関するパワースペクトルを決定すること、
パルスシーケンスの印加中の複数の傾斜コイルによる複数の傾斜パルスの印加に由来する磁場のドリフトを計算すること、
MRスキャン中にパルスシーケンスを印加すること、
パルスシーケンスの印加に基づいてMRデータを収集すること、
磁場に関する計算済みドリフトに基づいて収集MRデータを補正すること、
補正済みのMRデータに基づいて画像を再構成すること、
を行うようにプログラムされたコンピュータ(20)と、
を備える磁気共鳴撮像(MRI)装置。
【請求項2】
前記MRIシステムはさらに、複数の傾斜コイルに隣接して位置決めされた複数の受動シム片(12)を備えること、並びに
前記コンピュータ(20)はドリフトを計算するようにプログラムされる際に、前記受動シム片(12)の加熱に基づいてドリフトを計算するようにプログラムされること、を特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記コンピュータ(20)はさらに、ドリフト周波数依存性のモデルを収集するようにプログラムされること、並びに
前記コンピュータ(20)はドリフトを計算するようにプログラムされる際に、パワースペクトルの少なくとも1つの周波数に基づきかつ前記ドリフト周波数依存性のモデルに基づいてドリフトを計算するようにプログラムされること、を特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記ドリフト周波数依存性のモデルの第1成分は受動シム片加熱に由来する寄与を含むこと、
前記ドリフト周波数依存性のモデルの第2成分は常温ボア加熱に由来する寄与を含むこと、並びに
前記ドリフト周波数依存性のモデルの第3成分は圧力変動に由来する寄与を含むこと、を特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記コンピュータ(20)は、前記第1成分を物理モデルベースの解析シミュレーションから決定するようにプログラムされる、請求項4に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記コンピュータ(20)は、前記第2成分を物理モデルベースの解析シミュレーションから決定するようにプログラムされる、請求項4に記載のMRI装置。
【請求項7】
前記コンピュータ(20)は、前記第3成分を試験的計測により決定するようにプログラムされる、請求項4に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記ドリフト周波数依存性のモデルの第4成分はヘリウム温度変化に由来する寄与を含む、請求項4に記載のMRI装置。
【請求項9】
前記コンピュータ(20)はドリフト周波数依存性のモデルを収集するようにプログラムされる際に、ドリフト周波数依存性のモデルをコンピュータ読み取り可能記憶媒体上に保存されたデータベースから収集するようにプログラムされる、請求項3に記載のMRI装置。
【請求項10】
前記コンピュータ(20)はドリフトを計算するようにプログラムされる際に、B0ドリフトを計算するようにプログラムされる、請求項1に記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75865(P2012−75865A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188075(P2011−188075)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】