傾斜型乗客コンベア
【課題】本発明は、設置スペースを拡張することなく乗客の手荷物の運搬を行うことができる傾斜型乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、傾斜型乗客コンベア(1)の移動手摺5の表面側に、手荷物滑り防止手段(7,21)を設けたのである。
上記構成とすることで、移動手摺5に載せた手荷物20は、傾斜区間において下方にずれ落ちることなく降り口側まで運搬することができ、その結果、傾斜型乗客コンベア(1)の設置スペースを拡張することなく、乗客の負担を軽減させることができる。
【解決手段】本発明は、傾斜型乗客コンベア(1)の移動手摺5の表面側に、手荷物滑り防止手段(7,21)を設けたのである。
上記構成とすることで、移動手摺5に載せた手荷物20は、傾斜区間において下方にずれ落ちることなく降り口側まで運搬することができ、その結果、傾斜型乗客コンベア(1)の設置スペースを拡張することなく、乗客の負担を軽減させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜区間において隣接踏面間に段差が生じるエスカレータや傾斜区間において踏面に段差か生じない傾斜型電動道路等の傾斜型乗客コンベアに係り、特に、手荷物を持った乗客の負担を軽減させることができる傾斜型乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜型乗客コンベアを利用する乗客が持った手荷物の負担を軽減するために、例えば、特許文献1に示すように、エスカレータに並設して手荷物搬送専用の補助エスカレータを設ける技術が既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−218386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術は、手荷物搬送専用の補助エスカレータに手荷物を載せることで、乗客の負担を軽減できると共に、他の乗客の邪魔にならずに手荷物の運搬が行える点で極めて便利である。
【0005】
しかしながら、手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設することで、エスカレータ設備全体の設置面積を広く確保する必要がある。そのために、例えば駅舎内のプラットフォーム等挟域な場所への設置は極めて困難となる問題があった。即ち、プラットフォームへの通路としては階段が既に設置されており、近年、乗客の利便性を向上させるために階段の幅寸法を最小限に狭めてエスカレータを並設している。このような階段とエスカレータを並設した設置スペースが最小限の場所に、新たに手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設することは、階段をさらに狭くするか撤去しなければならず、実現性は極めて乏しいものである。
【0006】
本発明の目的は、設置スペースを拡張することなく乗客の手荷物の運搬を行うことができる傾斜型乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、傾斜型乗客コンベアの移動手摺の表面側に、手荷物滑り防止手段を設けたのである。
【0008】
上記構成とすることで、移動手摺に載せた手荷物は、傾斜区間において下方に滑ってずれ落ちることなく降り口側まで運搬することができる。したがって、傾斜型乗客コンベアの設置スペースを拡張することなく、乗客の負担を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、設置スペースを拡張することなく乗客の手荷物の運搬を行うことができる傾斜型乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明による傾斜型乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図8に示すエスカレータに基づいて説明する。
【0011】
エスカレータ1は、多く区分けて傾斜区間に設置された枠体2と、この枠体2内に案内され無端状に連結されて循環移動する複数の踏段3と、これら踏段3の幅方向両側に対向する前記枠体2に立設された左右の欄干4と、この欄干4の周縁に案内され前記踏段3と同期的に循環移動する移動手摺5と、この移動手摺5を駆動する駆動輪6とを備えている。尚、前記踏段3は、往路側、即ち、乗客を搬送する側においては、水平に保持された踏面を有している。
【0012】
前記移動手摺5は、その表面側に手荷物滑り防止手段であり手荷物滑り止め手段である複数の凸部7を移動方向に沿って複数設けている。そして、これら複数の凸部7は、移動方向に曲線で波山状に形成されており、移動手摺5の幅方向に長く形成されている。
【0013】
一方、前記枠体2の長手方向両端部には、前記移動手摺5が出入する出入口部8A,8Bが夫々形成されている。この枠体2の出入口部8A,8Bの近傍には、上方に延在する延在部9A,9Bが設けられている。そして、この延在部9A,9Bに、前記出入口部8A,8Bと後述する回転ローラ12を覆う出入口カバー10A,10Bが軸11によって回動自在に軸支されている。
【0014】
この出入口カバー10A,10Bの反軸支側端部には、前記移動手摺5の表面側を押圧する回転ローラ12が軸13によって回転自在に軸支されている。回転ローラ12の移動手摺5側への押圧は、軸13と延在部9A,9B間に張架した引張ばね14によって行うようにしている。ところで、引張ばね14の延在部9A,9Bへの連結は、図5及び図6に示すように、前記出入口カバー10A,10Bを軸支する軸11よりも上方位置に貫通穴7Hを設け、この貫通穴7Hに引張ばね14のばね端14Eを貫通させたボルト15を貫通さ、貫通端にナット16をねじ込んで軸支している。
【0015】
このように、引張ばね14の延在部9A,9Bへの連結位置を前記出入口カバー10A,10Bを軸支する軸11よりも上方位置とすることで、回転ローラ12に移動手摺5を押圧する力を付与することができる。尚、図6に示すように、ボルト15には座金17が貫通されていてボルト15の頭部との間で引張ばね14のばね端14Eを挟圧している。
【0016】
さらに、ボルト15と引張ばね14のばね端14Eとの間には、回転ローラ12による移動手摺5への押圧力を検出する押圧力検出手段を構成する圧力センサ18が介在されており、この圧力センサ18はボルト15による軸支部の圧力変化を検出し、その出力を図示しない演算処理手段に入力し、そこで検出された圧力が設定された押圧力以上の押圧力と判断された場合には、延在部9A,9Bに設置した警報手段19を作動させて警報を発すると共に、図示しないエスカレータ1の運転を停止させる手段を機能させるように構成されている。
【0017】
以上のように構成することで、乗客が手荷物20を移動手摺5に載せた場合に、凸部7が滑り止めとなって手荷物20が下階側に滑って移動するのを防止することができる。したがって、乗客は手荷物を持つことなく単に手荷物に手を添えるだけで目的階まで移動することができ、乗客の負担を軽減することができる。また、本実施の形態によれば、本来必須の移動手摺5を利用して手荷物20の搬送を行えるので、手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設する必要はなく、その結果、手荷物20の搬送のためにエスカレータ1の設置スペースを拡張する必要はなくなる。
【0018】
ところで、移動手摺5の表面側に凸部7を形成することで、移動手摺5の枠体2内への出入口部8A,8Bの開口面積を増大させなければならず、その結果、出入口部8A,8Bへの乳幼児の手指の引き込まれを誘発させることが懸念される。しかしながら、出入口部8A,8Bには出入口カバー10A,10Bが存在するので、手指の引き込まれの誘発を低減させることができる。しかし、万一、移動手摺5と回転ローラ12との間に手指が引き込まれた場合には、回転ローラ12が移動手摺5から引き離されることで、引張ばね14の張力が増大、云い代えれば、回転ローラ12の移動手摺5への押圧力が増大するので、それを圧力センサ18で検出することで警報手段19を作動させて警報を発すると共に、エスカレータ1の運転を停止させることができるので、最悪の事態を回避することができる。
【0019】
また、移動手摺5に凸部7を設けることで、凸部7が回転ローラ12を通過する度に、回転ローラ12に衝撃が加わる。そのために、図8に示すように、凸部7の回転ローラ12と接触する面と移動手摺5とがなす角度αが、180度から移動手摺5の傾斜角βを差し引いた角度よりも大きくなるように、即ち、α>(180−β)に形成することで、凸部7による回転ローラ12による衝撃を緩和することができ、凸部7の回転ローラ12の通過を円滑にすることができる。
【0020】
図9は、図8の変形例で、移動手摺5の表面側に、断面が三角形状の凸部21を形成したものである。そして、図8と同じように、α>(180−β)に形成されている。
【0021】
ところで、以上の説明は、本発明による手荷物滑り防止手段、手荷物滑り止め手段として、凸部7,21を設けたが、凸部7,21に限定されるものではなく、移動手摺5の表面側に、凹溝を形成して手荷物滑り防止手段、手荷物滑り止め手段としても良い。さらに、移動手摺5の表面側に、柔軟材を設けたり、移動手摺5の表面側幅方向に長い小溝を移動手摺移動方向に無数に形成したりして手荷物20の滑りを防止する摩擦手段を設けても良い。
【0022】
また、上記実施の形態においては、凸部7,21の間隔は、一つの踏段3に対して一つ対向するような間隔で設けても良いが、混雑時を除き乗客は、他の乗客と接近することを避ける傾向にあるので、2つの踏段3毎に一つの凸部7,21が対向するように間隔を設定することが望ましい。しかしながら、凸部7,21の間隔は、設置されるエスカレータ1の環境によって随時変更して設計すればよいので、上記間隔にこだわる必要はない。
【0023】
尚、前記凸部7,21を形成した移動手摺5は、図10に示す第1の適用例のように、両側の欄干4の移動手摺5に夫々設けても良く、図11に示す第2の適用例のように、左側の欄干4の移動手摺5にのみ設けても良く、さらには図12に示す台3の適用例のように、右側の欄干4の移動手摺5にのみ設けても良い。
【0024】
このほか、前記出入口カバー10A,10Bは、回転ローラ12を覆うように形成したが、張架された引張ばね14をも覆うように形成することで、安全性を橋上することができる。
【0025】
さらに、以上の説明では、回転ローラ12を移動手摺5の表面側に押圧させるために、引張ばね14を用いた。しかし、前記出入口カバー10A,10Bを延在部9A,9Bに固定させ、その出入口カバー10A,10B内に前記回転ローラ12を移動手摺5の表面側に対して接触及び乖離する方向にのみ移動可能に支持させた上で、回転ローラ12の軸と出入口カバー10A,10Bとの間に圧縮ばねを介在さるように構成して回転ローラ12を移動手摺5の表面側に押圧させるようにしてもよい。
【0026】
以上の説明は、傾斜型乗客コンベアとしてエスカレータ1を一例に説明したが、本発明はエスカレータ1に特定されるものではなく、傾斜区間においても踏面に段差が生じない傾斜型電動道路の移動手摺にも適用できるのは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による傾斜型乗客コンベアの一実施の形態を示すエスカレータの概略側面図。
【図2】図1のエスカレータに適用される移動手摺を示す側面図。
【図3】図1のエスカレータの枠体を示す側面図。
【図4】図1のエスカレータの移動手摺の出入口部を示す斜視図。
【図5】図4の出入口部に入口カバーを取り付けた斜視図。
【図6】図5の引張ばねの枠体への取り付け部を示す縦断正面図。
【図7】図5の引張ばねの枠体への取り付け部を示す縦断側面図。
【図8】移動手摺の凸部の一例を示す斜視図。
【図9】移動手摺の凸部の変形例を示す斜視図。
【図10】移動手摺の第1の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【図11】移動手摺の第2の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【図12】移動手摺の第3の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【符号の説明】
【0028】
1…エスカレータ、2…枠体、3…踏段、4…欄干、5…移動手摺、6…駆動輪、7,21…凸部、7H…貫通穴、8A,8B…出入口部、9A,9B…延在部、10A,10B…出入口カバー、11,13…軸、12…回転ローラ、14…引張ばね、14E…ばね端、15…ボルト、16…ナット、17…座金、18…圧力センサ、19…警報手段、20…手荷物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜区間において隣接踏面間に段差が生じるエスカレータや傾斜区間において踏面に段差か生じない傾斜型電動道路等の傾斜型乗客コンベアに係り、特に、手荷物を持った乗客の負担を軽減させることができる傾斜型乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜型乗客コンベアを利用する乗客が持った手荷物の負担を軽減するために、例えば、特許文献1に示すように、エスカレータに並設して手荷物搬送専用の補助エスカレータを設ける技術が既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−218386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術は、手荷物搬送専用の補助エスカレータに手荷物を載せることで、乗客の負担を軽減できると共に、他の乗客の邪魔にならずに手荷物の運搬が行える点で極めて便利である。
【0005】
しかしながら、手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設することで、エスカレータ設備全体の設置面積を広く確保する必要がある。そのために、例えば駅舎内のプラットフォーム等挟域な場所への設置は極めて困難となる問題があった。即ち、プラットフォームへの通路としては階段が既に設置されており、近年、乗客の利便性を向上させるために階段の幅寸法を最小限に狭めてエスカレータを並設している。このような階段とエスカレータを並設した設置スペースが最小限の場所に、新たに手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設することは、階段をさらに狭くするか撤去しなければならず、実現性は極めて乏しいものである。
【0006】
本発明の目的は、設置スペースを拡張することなく乗客の手荷物の運搬を行うことができる傾斜型乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、傾斜型乗客コンベアの移動手摺の表面側に、手荷物滑り防止手段を設けたのである。
【0008】
上記構成とすることで、移動手摺に載せた手荷物は、傾斜区間において下方に滑ってずれ落ちることなく降り口側まで運搬することができる。したがって、傾斜型乗客コンベアの設置スペースを拡張することなく、乗客の負担を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、設置スペースを拡張することなく乗客の手荷物の運搬を行うことができる傾斜型乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明による傾斜型乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図8に示すエスカレータに基づいて説明する。
【0011】
エスカレータ1は、多く区分けて傾斜区間に設置された枠体2と、この枠体2内に案内され無端状に連結されて循環移動する複数の踏段3と、これら踏段3の幅方向両側に対向する前記枠体2に立設された左右の欄干4と、この欄干4の周縁に案内され前記踏段3と同期的に循環移動する移動手摺5と、この移動手摺5を駆動する駆動輪6とを備えている。尚、前記踏段3は、往路側、即ち、乗客を搬送する側においては、水平に保持された踏面を有している。
【0012】
前記移動手摺5は、その表面側に手荷物滑り防止手段であり手荷物滑り止め手段である複数の凸部7を移動方向に沿って複数設けている。そして、これら複数の凸部7は、移動方向に曲線で波山状に形成されており、移動手摺5の幅方向に長く形成されている。
【0013】
一方、前記枠体2の長手方向両端部には、前記移動手摺5が出入する出入口部8A,8Bが夫々形成されている。この枠体2の出入口部8A,8Bの近傍には、上方に延在する延在部9A,9Bが設けられている。そして、この延在部9A,9Bに、前記出入口部8A,8Bと後述する回転ローラ12を覆う出入口カバー10A,10Bが軸11によって回動自在に軸支されている。
【0014】
この出入口カバー10A,10Bの反軸支側端部には、前記移動手摺5の表面側を押圧する回転ローラ12が軸13によって回転自在に軸支されている。回転ローラ12の移動手摺5側への押圧は、軸13と延在部9A,9B間に張架した引張ばね14によって行うようにしている。ところで、引張ばね14の延在部9A,9Bへの連結は、図5及び図6に示すように、前記出入口カバー10A,10Bを軸支する軸11よりも上方位置に貫通穴7Hを設け、この貫通穴7Hに引張ばね14のばね端14Eを貫通させたボルト15を貫通さ、貫通端にナット16をねじ込んで軸支している。
【0015】
このように、引張ばね14の延在部9A,9Bへの連結位置を前記出入口カバー10A,10Bを軸支する軸11よりも上方位置とすることで、回転ローラ12に移動手摺5を押圧する力を付与することができる。尚、図6に示すように、ボルト15には座金17が貫通されていてボルト15の頭部との間で引張ばね14のばね端14Eを挟圧している。
【0016】
さらに、ボルト15と引張ばね14のばね端14Eとの間には、回転ローラ12による移動手摺5への押圧力を検出する押圧力検出手段を構成する圧力センサ18が介在されており、この圧力センサ18はボルト15による軸支部の圧力変化を検出し、その出力を図示しない演算処理手段に入力し、そこで検出された圧力が設定された押圧力以上の押圧力と判断された場合には、延在部9A,9Bに設置した警報手段19を作動させて警報を発すると共に、図示しないエスカレータ1の運転を停止させる手段を機能させるように構成されている。
【0017】
以上のように構成することで、乗客が手荷物20を移動手摺5に載せた場合に、凸部7が滑り止めとなって手荷物20が下階側に滑って移動するのを防止することができる。したがって、乗客は手荷物を持つことなく単に手荷物に手を添えるだけで目的階まで移動することができ、乗客の負担を軽減することができる。また、本実施の形態によれば、本来必須の移動手摺5を利用して手荷物20の搬送を行えるので、手荷物搬送専用の補助エスカレータを並設する必要はなく、その結果、手荷物20の搬送のためにエスカレータ1の設置スペースを拡張する必要はなくなる。
【0018】
ところで、移動手摺5の表面側に凸部7を形成することで、移動手摺5の枠体2内への出入口部8A,8Bの開口面積を増大させなければならず、その結果、出入口部8A,8Bへの乳幼児の手指の引き込まれを誘発させることが懸念される。しかしながら、出入口部8A,8Bには出入口カバー10A,10Bが存在するので、手指の引き込まれの誘発を低減させることができる。しかし、万一、移動手摺5と回転ローラ12との間に手指が引き込まれた場合には、回転ローラ12が移動手摺5から引き離されることで、引張ばね14の張力が増大、云い代えれば、回転ローラ12の移動手摺5への押圧力が増大するので、それを圧力センサ18で検出することで警報手段19を作動させて警報を発すると共に、エスカレータ1の運転を停止させることができるので、最悪の事態を回避することができる。
【0019】
また、移動手摺5に凸部7を設けることで、凸部7が回転ローラ12を通過する度に、回転ローラ12に衝撃が加わる。そのために、図8に示すように、凸部7の回転ローラ12と接触する面と移動手摺5とがなす角度αが、180度から移動手摺5の傾斜角βを差し引いた角度よりも大きくなるように、即ち、α>(180−β)に形成することで、凸部7による回転ローラ12による衝撃を緩和することができ、凸部7の回転ローラ12の通過を円滑にすることができる。
【0020】
図9は、図8の変形例で、移動手摺5の表面側に、断面が三角形状の凸部21を形成したものである。そして、図8と同じように、α>(180−β)に形成されている。
【0021】
ところで、以上の説明は、本発明による手荷物滑り防止手段、手荷物滑り止め手段として、凸部7,21を設けたが、凸部7,21に限定されるものではなく、移動手摺5の表面側に、凹溝を形成して手荷物滑り防止手段、手荷物滑り止め手段としても良い。さらに、移動手摺5の表面側に、柔軟材を設けたり、移動手摺5の表面側幅方向に長い小溝を移動手摺移動方向に無数に形成したりして手荷物20の滑りを防止する摩擦手段を設けても良い。
【0022】
また、上記実施の形態においては、凸部7,21の間隔は、一つの踏段3に対して一つ対向するような間隔で設けても良いが、混雑時を除き乗客は、他の乗客と接近することを避ける傾向にあるので、2つの踏段3毎に一つの凸部7,21が対向するように間隔を設定することが望ましい。しかしながら、凸部7,21の間隔は、設置されるエスカレータ1の環境によって随時変更して設計すればよいので、上記間隔にこだわる必要はない。
【0023】
尚、前記凸部7,21を形成した移動手摺5は、図10に示す第1の適用例のように、両側の欄干4の移動手摺5に夫々設けても良く、図11に示す第2の適用例のように、左側の欄干4の移動手摺5にのみ設けても良く、さらには図12に示す台3の適用例のように、右側の欄干4の移動手摺5にのみ設けても良い。
【0024】
このほか、前記出入口カバー10A,10Bは、回転ローラ12を覆うように形成したが、張架された引張ばね14をも覆うように形成することで、安全性を橋上することができる。
【0025】
さらに、以上の説明では、回転ローラ12を移動手摺5の表面側に押圧させるために、引張ばね14を用いた。しかし、前記出入口カバー10A,10Bを延在部9A,9Bに固定させ、その出入口カバー10A,10B内に前記回転ローラ12を移動手摺5の表面側に対して接触及び乖離する方向にのみ移動可能に支持させた上で、回転ローラ12の軸と出入口カバー10A,10Bとの間に圧縮ばねを介在さるように構成して回転ローラ12を移動手摺5の表面側に押圧させるようにしてもよい。
【0026】
以上の説明は、傾斜型乗客コンベアとしてエスカレータ1を一例に説明したが、本発明はエスカレータ1に特定されるものではなく、傾斜区間においても踏面に段差が生じない傾斜型電動道路の移動手摺にも適用できるのは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による傾斜型乗客コンベアの一実施の形態を示すエスカレータの概略側面図。
【図2】図1のエスカレータに適用される移動手摺を示す側面図。
【図3】図1のエスカレータの枠体を示す側面図。
【図4】図1のエスカレータの移動手摺の出入口部を示す斜視図。
【図5】図4の出入口部に入口カバーを取り付けた斜視図。
【図6】図5の引張ばねの枠体への取り付け部を示す縦断正面図。
【図7】図5の引張ばねの枠体への取り付け部を示す縦断側面図。
【図8】移動手摺の凸部の一例を示す斜視図。
【図9】移動手摺の凸部の変形例を示す斜視図。
【図10】移動手摺の第1の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【図11】移動手摺の第2の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【図12】移動手摺の第3の適応例を示すエスカレータの正面遠近図。
【符号の説明】
【0028】
1…エスカレータ、2…枠体、3…踏段、4…欄干、5…移動手摺、6…駆動輪、7,21…凸部、7H…貫通穴、8A,8B…出入口部、9A,9B…延在部、10A,10B…出入口カバー、11,13…軸、12…回転ローラ、14…引張ばね、14E…ばね端、15…ボルト、16…ナット、17…座金、18…圧力センサ、19…警報手段、20…手荷物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物滑り防止手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項2】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物滑り止め手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項3】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物の滑りを防止する摩擦手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項4】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を前記移動手摺の表面側に移動方向に沿って複数設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項5】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を、前記移動手摺の表面側に移動方向に沿って複数設け、かつ、前記移動手摺が前記枠体に出入する出入口部に、移動手摺の表面側と出入口部との隙間を塞ぎ移動手摺の表面側に押圧される回転ローラを配置すると共に、この回転ローラを覆う出入口カバーを設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項6】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を、前記移動手摺の移動方向に沿って複数設け、かつ、前記移動手摺が前記枠体に出入する出入口部に、移動手摺の表面側と出入口部との隙間を塞ぎ移動手摺の表面側に押圧される回転ローラを配置し、この回転ローラを覆う出入口カバーを設けると共に、前記回転ローラが押圧される力を検出する押圧力検出手段を設け、この押圧力検出手段が設定された押圧力を出力したとき警報を発する警報手段と運転を停止させる手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項7】
前記回転ローラは、ばねによって移動手摺の表面側に押圧されており、前記押圧力検出手段は、前記ばねを軸支する軸支部の圧力変化を計測して押圧力を検出するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項8】
前記凸部は、前記回転ローラと接触する面と移動手摺とがなす角度が、180度から移動手摺の傾斜角を差し引いた角度よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項9】
前記凸部は、前記移動手摺の移動方向に沿って等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項4,5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項10】
前記枠体は、前記移動手摺の出入口部近傍の前記枠体を上方に延在させた延在部を形成しており、前記回転ローラを覆う出入口カバーは、前記回転ローラを軸支していると共に前記枠体の延在部に回動可能に軸支されており、かつ、前記出入口カバーの回転ローラを軸支する側と前記枠体の延在部との間に、前記回転ローラを前記移動手摺の表面側に押圧する引張ばねを張架していることを特徴とする請求項5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項1】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物滑り防止手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項2】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物滑り止め手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項3】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の表面側に、手荷物の滑りを防止する摩擦手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項4】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を前記移動手摺の表面側に移動方向に沿って複数設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項5】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を、前記移動手摺の表面側に移動方向に沿って複数設け、かつ、前記移動手摺が前記枠体に出入する出入口部に、移動手摺の表面側と出入口部との隙間を塞ぎ移動手摺の表面側に押圧される回転ローラを配置すると共に、この回転ローラを覆う出入口カバーを設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項6】
傾斜区間に設置された枠体と、この枠体内に案内されて循環移動する無端状に連結された踏面と、前記枠体の前記踏面の幅方向両側に対向する位置に立設された欄干と、この欄干の周縁を前記踏面と同期して循環移動する移動手摺とを備えた傾斜型乗客コンベアにおいて、前記移動手摺の幅方向に長い凸部を、前記移動手摺の移動方向に沿って複数設け、かつ、前記移動手摺が前記枠体に出入する出入口部に、移動手摺の表面側と出入口部との隙間を塞ぎ移動手摺の表面側に押圧される回転ローラを配置し、この回転ローラを覆う出入口カバーを設けると共に、前記回転ローラが押圧される力を検出する押圧力検出手段を設け、この押圧力検出手段が設定された押圧力を出力したとき警報を発する警報手段と運転を停止させる手段を設けたことを特徴とする傾斜型乗客コンベア。
【請求項7】
前記回転ローラは、ばねによって移動手摺の表面側に押圧されており、前記押圧力検出手段は、前記ばねを軸支する軸支部の圧力変化を計測して押圧力を検出するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項8】
前記凸部は、前記回転ローラと接触する面と移動手摺とがなす角度が、180度から移動手摺の傾斜角を差し引いた角度よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項9】
前記凸部は、前記移動手摺の移動方向に沿って等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項4,5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【請求項10】
前記枠体は、前記移動手摺の出入口部近傍の前記枠体を上方に延在させた延在部を形成しており、前記回転ローラを覆う出入口カバーは、前記回転ローラを軸支していると共に前記枠体の延在部に回動可能に軸支されており、かつ、前記出入口カバーの回転ローラを軸支する側と前記枠体の延在部との間に、前記回転ローラを前記移動手摺の表面側に押圧する引張ばねを張架していることを特徴とする請求項5又は6記載の傾斜型乗客コンベア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−227393(P2009−227393A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74000(P2008−74000)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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