説明

優れた拡散光大表面積水支持式フォトバイオリアクタ

微細藻類および藍色細菌などの光合成微生物の効率的な生成の拡張性に富んだフォトバイオリアクタシステムを記載する。種々の実施の形態において、このシステムは、光の強度の低減および光合成の効率の向上のために広げられた表面積を使用すること、外側の水容器が、低コストで構造体および温度調節をもたらすこと、接合された可撓なプラスチックパネルまたは複合パネルが、部分的に水に沈められたときに三角形または他の形状の断面を形成すること、フォトバイオリアクタチャンバの構造的な完全性を維持するためにガスの正の浮力および圧力を使用すること、および拡散光の分布を最適にするために構造体を使用すること、を含むことができる。別の実施の形態は、プラスチックフィルムで構成され、各フォトバイオリアクタチャンバの底部に位置し、チャンバへとスパージング気泡を供給する空気チューブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2007年10月12日に出願された米国特許出願第11/871,728号の継続出願であり、そして、2006年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/877,997号;2007年3月9日に出願された米国仮特許出願第60/878,506号;および2007年3月9日に出願された米国仮特許出願第60/894,082号(これらの各々の本文は、本明細書中に参考として援用される)に対する米国特許法119(e)の下の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、バイオディーゼルおよび他のバイオ燃料の生産を支援すべく藻類を培養するための、経済的であって高密度であり、かつ拡張性の高い閉鎖系フォトバイオリアクタのための方法および装置に関する。好ましい実施の形態においては、フォトバイオリアクタ構造が、藻類の増殖を支援すべく日光の利用を最適にするように設計される。他の実施の形態は、藻類の密度および生産性を最大にし、フォトバイオリアクタの構成部品の材料、構築、および操作のコストを最小にするために、システムの温度制御を最適にするように設計されたフォトバイオリアクタシステムの構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
運輸および電力ネットワークを機能させるために化石燃料に依存することが、同時多発的なエネルギー危機を引き起こしている。石炭、石油、および天然ガスが、いずれも地球温暖化および気候変動の一因となる一方で、地政学的不安定およびエネルギー不安を引き起こしている。近年では、多数の先進国および発展途上国が、これらの問題を解決するためにバイオ燃料に目を向けている。
【0004】
残念ながら、植物を源にしてバイオ燃料を得ることは、それ自身のジレンマを抱えている。エネルギー作物を育てるための土地が、食用作物の土地に取って代わる傾向にあり、結果として、基礎的な主食のコストの上昇を引き起こす。農業は、大量のエネルギーを利用しており、その多くは、化石燃料のかたちで供給されるため、結果として、バイオ燃料作物の全体としての二酸化炭素の収支が低くなる。さらに、多くのエネルギー作物の産出はきわめて小さい。1エーカーのトウモロコシは、1年につき約350ガロンのエタノールしか生産できず、1エーカーの大豆は、1年につき約50ガロンのバイオディーゼルを生産できる。最後に、農業的に辺鄙な土地をエネルギー作物の生育に利用することは、植物の成長を支援するために利用することができる充分な水を欠くため、限界がある。
【0005】
通常であれば利用できない土地において、最小限のエネルギーの入力で生産的に成長できるバイオ燃料が、持続可能なエネルギー基盤への転換のために必要である。伝統的な土壌作物は、いずれも完全な解決策を提供していない。しかしながら、微細藻類が、バイオ燃料の制限因子のそれぞれに対処する可能性を秘めている。閉鎖系フォトバイオリアクタを、通常であれば利用できない土地に配置することができ、食用作物との競合を抑えることができ、気化による水の喪失を最小限にすることができる。藻類からのバイオ燃料の産出は、土壌作物の産出を数桁も超える可能性がある(例えば、非特許文献1を参照されたい)。藻細胞の増殖が、抽出された物質を速やかに置き換えることができ、通年の収穫を約束する。さらなるボーナスとして、微細藻類は、二酸化炭素の豊富な化石燃料発電プラントの煙道ガスおよび他の産業排気ガスを利用し、発電プラント、醸造所、ワイナリー、などから大気へと放出される温室効果ガスの量を少なくすることができる。
【0006】
これまでのところ、バイオ燃料の生産を目的として建設された微細藻類の商業規模の農場は存在していない。伝統的な産業フォトバイオリアクタは、研究室規模のフォトバイオリアクタにおいて達成される高い細胞密度を、未だ再現できていない。化石燃料に対抗できる土俵で微細藻類からエネルギー作物を生み出すために、きわめて高い密度の培養物を、利用可能な太陽光を最大限に利用するフォトバイオリアクタの内部で成長させなければならない。さらに、それらのフォトバイオリアクタの製作に使用される材料が、費用対効果に優れていなければならない。高価なガラス製および鋼製の部品ならびに複雑なポンプおよび流れ分配システムで作られる伝統的な閉鎖フォトバイオリアクタは、化石燃料に対抗できるバイオ原料のコスト目標を達成できないであろう。また、そのようなシステムは、実験室のベンチ装置から商業規模の生産への拡張性に乏しい(例えば、非特許文献2)。高密度の藻類培養物を成長させることができ、太陽光の利用を最適化し、化石燃料に対抗できる程度の価格でバイオ燃料を生産するように設計された経済的かつ効率的な閉鎖系フォトバイオリアクタについてのニーズが、この分野に存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Natl.Renewable Energy Laboratoryの「A Look Back at the U.S.Department of Energy’s Aquatic Species Program: Biodiesel from Algae」、NREL/TP−580−24190、1998年7月
【非特許文献2】GrimaらのJ.Applied Phycology 12:355−68、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高密度の藻類培養物を成長させることができ、太陽光の利用を最適にするように設計され、化石燃料に対抗できるコストでバイオ燃料を生成すべく設計された経済的かつ効率的な閉鎖系フォトバイオリアクタのための方法、装置、および構成を提供することによって、この技術分野における未解決のニーズを満足させる。また、このフォトバイオリアクタを、たんぱく質、でんぷん、他の炭水化物、ビタミン、カロテノイド、キサントフィル、およびセルロース主体の物質など、燃料以外の生成物を生産するためにも使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の実施の形態は、詳しくは後述されるとおりの優れた拡散光大表面積水支持式フォトバイオリアクタの設計に関する。本明細書に開示される設計を、システムの特定の特徴を最適化するために変更することができ、そのような変更がすべて、本発明の技術的範囲に包含されると考えられることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0010】
種々の実施の形態において、フォトバイオリアクタは、1つ以上の閉鎖フォトバイオリアクタチャンバを備えることができる。好ましくは、チャンバは、安価かつ可撓なプラスチックフィルムで構成され、それらプラスチックフィルムを、密封チャンバを形成すべく例えば熱で溶着することができる。取り付けの方法はとくに限定されず、にかわの使用など、他の公知の取り付け方法を利用してもよい。さまざまなチャンバの設計が、本発明の技術的範囲において想定される。しかしながら、好ましい設計においては、チャンバが、上部および下部において接続されて連続的なチャンバを形成する一連のチューブ状の構造体を含んでいる。チューブ状の構造体を、おおむね平行なアレイに配置することができ、個々のチューブは、垂直であっても、あるいは上部から下部へと斜め(準垂直)にされてもよい。フォトバイオリアクタにおけるチューブ状要素の配置およびチャンバの配置は、好ましくは、拡散させた日光へのチューブ内の藻類の暴露を最大化するように設計される。
【0011】
別の設計は、一連のスポット溶着部において熱溶着または他の方法で互いに取り付けられる平行なシートを備えることができ、そのような一連のスポット溶着部は、隣接する各列にずらされたパターンで配置することができる。シートの間の内部空間が、流体および気泡をスポット溶着部の周囲に循環させることができるチャネルを形成する。
【0012】
他の好ましい実施の形態においては、フォトバイオリアクタチャンバが、1つ以上のプラスチックフィルム空気チューブを、チャンバの底部に備えることができる。空気チューブを、小径の気泡をチャンバ内の藻類成長培地へと送るように設計することができる。気泡は、チャンバの中身の連続的な混合、藻類の増殖を支援するためのCOガスの供給、ならびに藻類または他の生物の付着を最小限にするためのチャンバのプラスチック表面の清掃など、複数の機能を提供することができる。このチャンバ表面の清掃の機構は、表面を通過する光の透過も向上させ、周辺光状態のもとでの光合成の効率を向上させる。
【0013】
より好ましい実施の形態においては、フォトバイオリアクタチャンバを、チャンバの構造の支持をもたらすため、およびチャンバ内の流体の温度の調節を改善するために、水容器に沈めることができる。いくつかの実施の形態においては、水容器を、例えば冷却水を容器を通して循環させること、ヒートポンプユニットを水容器へと接続すること、高温の煙道ガスまたは高温の水を容器を通して循環させること、または液体の加熱または冷却に関して公知の他の任意の方法によって、加熱または冷却することができる。さらに、水容器内の水のマスが大きいことが、それ自身で、温度の1日の変動を穏やかにするためのヒートシンクとして機能する。好ましい実施の形態においては、水容器そのものも、水容器からの気化を少なくするために、例えばプラスチックカバーによって囲むことができる。
【0014】
いくつかの実施の形態においては、フォトバイオリアクタチャンバが、チャンバの上部に1つ以上の空気ポケットを備えることができる。例えば、チューブ状の設計においては、チャンバの上部に沿って延びるチューブであって、垂直または準垂直に配置されたチューブに連続しているチューブが、空気を収容することができる。この空気ポケットを、藻類の光合成によって生み出される酸素を集めるために利用することができる。好ましくは、集められた酸素を、例えばガス化複合発電(IGCC)プロセスにおける燃焼の効率を改善するために、近傍の発電プラントへと供給することができる。また、空気ポケットを、余分なCOおよび/または上述のとおりチューブ内の液体培地を通してスパージできる他のガスを集めるために使用してもよい。さらに、チャンバの上部の空気チャネルは、チャンバに浮力をもたらすことによって、水容器内のチャンバの構造をさらに支持することができる。
【0015】
さらに別の実施の形態は、藻類および成長培地をフォトバイオリアクタチャンバを通して、ポンプによる給水/排水、あるいは他の方法で循環させるための機構を備えている。低せん断の排気ポンプの形態である好ましいポンプによる給水/排水の機構(これに限られるわけではない)は、後述する。
【0016】
種々の実施の形態においては、フォトバイオリアクタを連続的に監視して性能を向上させるために、いくつかのサブシステムを使用することができる。種々の内部および外部条件(周囲およびフォトバイオリアクタチャンバの温度、日射、生長培地のpH、藻細胞の密度、成長培地中の種々の栄養素および廃棄物の濃度、ならびに他の任意の状態、など)を、任意の公知の技術(市販のプローブ、電極、および他の検出装置、ならびに統合型のコンピュータコントローラシステム、など)を使用して、監視することができる。好ましくは、フォトバイオリアクタの状態の連続的な監視を、例えばリアルタイムの監視データをインターネットのウェブサイトに用意することによって、離れた場所へと提供することができる。加熱、冷却、遮光、pH調節、栄養素の投入、COの流れ、および他のさまざまな支援機能など、フィードバック式のコンピュータ制御機構を、自動的に調節することができ、あるいは操作者によって制御することができる。
【0017】
バイオディーゼル、エタノール、または他のバイオ燃料の合成のための脂質および/または炭水化物を含んでいる藻類を、いくつかの選択肢の機構によってフォトバイオリアクタから収穫または収集することができる。いくつかの実施の形態においては、チャンバ内の藻類のうちのある選択された割合が連続的にシステムから取り除かれる連続流の収穫システムを利用することができる。他の実施の形態においては、藻類を収集するためにバッチ処理システムを使用することができる。藻類を、連続流の遠心分離および/またはろ過システムを使用するなど、種々の公知の技術によって成長培地から分離することができる。種々の実施の形態においては、高密度の藻類培養物を、収穫前の種々の処理のために、別途のチャンバまたは池へと分岐させることができる。例えば、収穫前に脂質の生成を増加させるために、藻類に何らかの形態の環境的ショック(温度、pH、光、塩分、1つ以上の化学物質または制御化合物の濃度)を加えることができる。脂質の生成を受動的に刺激する簡単な方法は、COによって制御されたpHで藻類を最大の細胞密度まで増殖させ、培地のチッ素が枯渇した後でCOによる制御を停止させることである。
【0018】
藻類または光合成微生物の任意の公知の種を、フォトバイオリアクタにおいて成長させることができる。好ましい実施の形態においては、Tetraselmis suecica(UTEX 2286およびNREL/Hawaii TETRA 01)、Tetraselmis chuii、Nannochloropsis oculata(UTEX 2164、CCMP 525)、Nannochloropsis sp.(UTEX 2341)、Nannochloropsis salina(NANNO 01 NREL/Hawaii、CCMP 1776、1777、1776)、Chlorella salina(SAG 8.86)、Chlorella protothecoides(UTEX 25)、Chlorella ellipsoidea(UTEX 20)、またはDunaliella tertiolectaのいくつかの株(UTEX LB999、DCCBC5、ATCC 30929)、ならびにDunaliella salinaを、個別または種の混合物として、成長させることができる。周囲の温度、光の強さ、海抜、季節、地理的位置、水中塩分、または他の要因に応じて、藻類の異なる種を選択して成長させることができることを、理解できるであろう。
【0019】
いくつかの実施の形態は、藻類の成分をバイオ燃料へと変換するための方法、構成、および/または装置に関係することができる。本発明は、バイオ燃料の生成のためのいかなる特定の技術にも限定されないが、藻類の脂質、炭水化物、または他の成分からバイオ燃料を生成するための任意の公知の方法を利用することができる(例えば、米国特許第5,354,878号、第6,015,440号、第6,712,867号、第6,768,015号、第6,822,105号、第6,979,426号、および第7,135,308号を参照)。典型的な実施の形態においては、藻類のトリグリセリドを、Mark T.MachacekおよびThomas Gordon Smithによる2007年7月27日付の「Continuous Algal Biodiesel Production Facility」という名称の米国特許仮出願第60/952,443号(その内容は、ここでの言及によって本明細書に援用される)に開示されているように、藻類の脂質の最初の分離または抽出を必要とすることなく、バイオディーゼルへと変換することができる。
【0020】
以下の図は、本明細書の一部を構成するものであって、本発明の特定の態様をさらに説明するために用意されている。本発明を、これらの図のうちの1つ以上を本明細書に提示される具体的な実施の形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、よりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】フォトバイオリアクタシステムの概略である。
【図2】フォトバイオリアクタチャンバの製作であり、プラスチックフィルムの2枚のシートをプラスチックフィルムの空気チューブ部分とともに接合している。
【図3】チューブ溶着装置(3A)および得られる溶着パターン(3B)である。
【図4】ジグザグ溶着装置(4A)、得られる溶着パターン(4B)、および部分拡大(4C)である。
【図5】バルクヘッド穴の位置の図(5A)、プレートポートの拡大(5B)、およびバルクヘッドの拡大(5C)である。
【図6】終端の垂直方向の溶着部の配置である。
【図7】空気導入用硬質プラスチックチューブおよび挿入手順である。
【図8】フォトバイオリアクタチャンバの周囲の4辺すべてにおける余分なプラスチックの切除である。
【図9】2つの袋を上部において接合する熱溶着の図である。
【図10】種々の支持システム、すなわちワイヤ(10A)、盛り土(10B)、内部フレーム(10C)、およびバルーン構造(10D)である。
【図11】代替の袋の設計である単一の三角形フォトバイオリアクタチャンバの断面である。
【図12】直線チューブの設計を有するフォトバイオリアクタパネルである。
【図13】外側の容器の底部に取り付けられた縦置きフォトバイオリアクタチャンバの断面(13A)および外側の容器の底部に取り付けることができる縦置きフォトバイオリアクタチャンバの溶着の図である。
【図14】くぼみ付きのフォトバイオリアクタチャンバの設計の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(定義)
本明細書において使用されるとき、不定冠詞「a」または「an」は、ある事項が1つまたは2つ以上であることを意味することができる。
【0023】
本明細書において使用されるとき、用語「および(and)」および「または(or)」は、接続語または離接語のいずれかを指すことができ、「および/または」を意味することができる。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「約」は、ある値のプラスまたはマイナス10%の範囲にあることを意味する。例えば、「約100」は、90〜110の間の任意の数を指すと考えられる。
【0025】
(フォトバイオリアクタ)
このセクションおよび以下のセクションにおいて検討される方法、組成、および装置が、あくまでも例であり、請求項に記載される主題の範囲を限定するものではないことを、当業者であれば理解できるであろう。とくには、あらゆる寸法、濃度、組成、時間、温度、ならびに/あるいは他の数または値が、あくまでも例であり、それぞれについて別の値を、本発明の実施において利用することが可能であり、そのような値も、請求項に記載される主題の範囲に包含されることを、理解できるであろう。
【0026】
本発明の種々の実施の形態は、光合成微生物を高い密度で成長させるように設計された拡張性が高く低コストなフォトバイオリアクタに関する。特定の実施の形態においては、光合成微生物が、微細藻類である。高密度な藻類の培養は、石油ベースの運輸燃料にコストの面で対抗できるバイオ燃料の経済的な生産を可能にする。散光へとさらされる表面積を最大化することによって、フォトバイオリアクタの表面に入射する光が、最も効率的に利用される。フォトバイオリアクタチャンバの全体を水の容器に沈めることによって、安価な可撓プラスチックを使用することができ、それらの構造が、外側の水ならびにフォトバイオリアクタチャンバの上部の内部の正の浮力を有する空気チャンバによって支持される。気泡を送出する空気スパージャをプラスチックフィルムフォトバイオリアクタに作り付けることによって、フォトバイオリアクタチャンバの中身を混ぜ合わせ、最大数の藻細胞を光へと暴露できるようにするための乱流が生成される。
【0027】
典型的な閉鎖フォトバイオリアクタシステムが、図1に示されている。閉鎖されたフォトバイオリアクタチャンバ(110)が、水容器(115)によって囲まれている。容器(115)内の水を、制御ボックス(130)に位置するコントローラによって、特定の温度帯または温度設定点を維持すべく加熱システム(120)または冷却システム(125)によって能動的に加熱および冷却することができる。この方法で温度を能動的に維持することは、エネルギー集約的となる可能性があり、代替の加熱および冷却機構を、後述のとおり利用することも可能である。フォトバイオリアクタチャンバ(110)内の光合成微生物を、低せん断ポンプ(135)を使用することによってフォトバイオリアクタチャンバを巡って循環させることができる。複数のフォトバイオリアクタチャンバの流体がすべて、重力によって低せん断ポンプの入り口へと供給を行う共通母管(140)へと流入する。次いで、低せん断ポンプの出口が、流体をろ過システム(145)を通して案内する。この位置において、培養物の全体的な健康を維持するために、代謝産物、バクテリアなどを、藻類培養物から取り除くことができる。藻類培養物は、もう1つの共通母管(150)へと流入する前に、培地混合ステーション(155)によって藻類の流れへと新鮮な培地を供給する分岐合流点を通過する。これは、フォトバイオリアクタ内の体積を一定に保つために、ろ過プロセス(145)において失われた流体を補償する。次いで、藻類培養物は、再び閉鎖フォトバイオリアクタチャンバ(110)へと入る。さらに、共通空気母管(170)においてろ過済みのCO供給源(165)に組み合わせられるろ過済みの空気供給源(160)も存在する。この空気/CO混合物を、フォトバイオリアクタチャンバの底部へと溶接されたフィルムチューブによって、閉鎖されたフォトバイオリアクタチャンバ(110)の全長にわたって供給することができる。このフィルムチューブは、切断または穿孔による複数のオリフィスを有しており、これらのオリフィスが、この気体混合物を気泡を形成させることによって藻類の培地へと伝えることを可能にする。このバブリング気体によってもたらされる閉鎖フォトバイオリアクタチャンバ内の圧力は、圧力レギュレータ(175)によって調節される。図1に開示したフォトバイオリアクタシステムが、好ましい実施の形態に関係しており、フォトバイオリアクタシステムについて、請求項に記載の主題の技術的範囲において、別の代替の構成要素および配置構成を利用してもよいことを、当業者であれば理解できるであろう。
【0028】
(フォトバイオリアクタチャンバ)
このシステムにおいて成長させられる光合成微生物は、閉鎖されたフォトバイオリアクタチャンバの内部に保持される。好ましい実施の形態においては、チャンバが、熱溶着によって貼り合わせられた可撓プラスチックフィルムの2枚のシートで構成される。また、プラスチックシートのチューブを備えることも可能である。フォトバイオリアクタチャンバの寸法はさまざまであってよいが、チャンバのサイズの例(これに限られるわけではない)は、内部の高さが66cmであって、長さが100mである。典型的なフォトバイオリアクタチャンバのさらなる詳細は、後述の実施例1に提示される。
【0029】
実施例1で述べられるとおり、典型的なフォトバイオリアクタチャンバは、互いにおおむね平行に配置されて上部および下部で一体に接合される一連の連続チューブを備えることができる。種々の実施の形態において、チューブを、地面に対してある角度に傾けることができ、あるいはチューブがほぼ垂直であってもよい。さらに、チャンバは、小径の気泡の連続的な流れをチューブへともたらすように設計できる空気チューブを、チャンバの下部に備えることができる。気泡は、好ましくは培地へと二酸化炭素を供給し、発電プラントからの煙道ガスなど、COを多く含むガスを含むことができる。さらに、チューブへの気泡の導入は、成長培地への光の進入を妨げかねない藻類または他のバイオフィルム物質の付着を最小限にすべくチューブの内側をこするようにも機能することができる。
【0030】
好ましい実施の形態においては、チャンバを、優れた温度調節およびチャンバの構造の浮力による支持をもたらすために、水の容器に沈めることができる。チャンバの上部に位置する1つ以上の空気ポケットによって、さらなる構造的支持をもたらしてもよい。さらなる圧力をもたらし、チューブの内部の圧力を高めることができる。空気チューブによってチャンバの下部に導入される気泡は、光合成によって生成される酸素とともに、上昇してチャンバの上部に集まる。したがって、チャンバの上部の空気は、昼の光の下では酸素を多く含み、例えばIGCCプラントにおける燃焼の効率を高めるために、収集して利用することができる。実施例1に記載のさらに好ましい実施の形態においては、フォトバイオリアクタチャンバを、ペアに組み合わせることができる。ペアにしたチャンバをお互いに対してある角度に配置する(図10)ことで、フォトバイオリアクタシステムにさらなる構造的な支持がもたらされる。
【0031】
(ポンプおよびフィルタ)
統合型のフォトバイオリアクタシステムへと取り付けられるとき、培地排出チューブを、低せん断ポンプへと取り付けることができる。排気ポンプ、ダイアフラムポンプ、容積形ポンプ、および遠心ポンプなど、低せん断ポンプのさまざまな例が、この技術分野において知られており、市販の供給元(例えば、Wanner Engineering、Minneapolis、MN;PendoTech、Princeton、NJ;Levitronix、Waltham、MA;Graco、Minneapolis、MN)から入手可能である。
【0032】
低せん断の横断流薄膜フィルタを、ポンプの成長培地排出チューブへと取り付けることができる。このフィルタが、成長培地(ろ液)から細胞(濃縮水)を分離する。成長培地をろ過チャンバへと引き込む真空が、空気ポンプによってフィルタに生成される。液体ポンプが、ろ過チャンバの主軸に沿って圧力差を生成し、ろ過チャンバの主軸を横切って、ろ過膜が位置している。これは、フォトバイオリアクタ内で成長している光合成微生物の壊れやすい細胞膜または細胞壁を害さない低せん断の培地ろ過ユニットを生み出すための機構を提供する。任意の所与の時点においては、成長培地のわずかな部分しかろ過できないかもしれないが、システムを、24時間の期間で培地のほぼ100パーセントをろ過するように設定することが可能である。ろ過ユニットの実際の流量は、フォトバイオリアクタ内で成長させられる光合成微生物の所望の種および/または株の許容されるせん断応力レベル、特定の藻類種の増殖速度、および選択された藻細胞の収穫速度に応じて設定される。
【0033】
ひとたびフォトバイオリアクタからろ過されると、成長培地を、消毒を行うリサイクルチャンバへと送ることができ、培養物の成長を害しかねない粒子を除去するためのフィルタを通して送ることができる。フォトバイオリアクタチャンバへと再び加える前に、この使用後の成長培地へと、使い果たされた栄養素を補給することができる。
【0034】
ろ過/培地リサイクルユニットの全体が、リサイクル後の培地を培地のろ過と同じ速度で再投入するように設定され、フォトバイオリアクタパネル内の流体のレベルを一定に保つ。
【0035】
(フォトバイオリアクタパネルの配置構成)
「フォトバイオリアクタチャンバ」という名称のセクションにおいて上述したそれぞれのフォトバイオリアクタパネルを、上部において同一かつ隣接するフォトバイオリアクタパネルへと取り付けることができ、下部において別の同一かつ隣接するフォトバイオリアクタパネルへと取り付けることができる。次いで、取り付けられたパネルを、ある角度に設定することができる。このようにして、上部において互いに取り付けられた2枚のパネルが、断面図において三角形に類似することができ(図9)、三角形の頂点が、接合された上部である。
【0036】
フォトバイオリアクタチャンバの形状の構造を、それぞれのフォトバイオリアクタパネルの上部の空気ポケットの存在、ならびに他の物理的な支持方法(調節可能なチャンバ内の圧力によってもたらされるチャンバ壁の張力など)によって、維持することができる。典型的な1つの支持方法(これに限られるわけではないが)は、フォトバイオリアクタシステムの一端から他端へと引き張られた金属ワイヤ(図10A)を備えている。別の例(これに限られるわけではない)は、それぞれのパネルが置かれる盛り土を形成することである(図10B)。別の例(これに限られるわけではない)は、金属、熱硬化性プラスチック、コンクリート、れんが、またはこの技術分野において公知の任意の他の材料で構成される三角形のフレーム(図10C)を配置し、その上にフォトバイオリアクタパネルを置くことである。別の例(これに限られるわけではない)は、プラスチックシートで構成され、空気で満たされている密封チューブ(図10D)を、上部において取り付けられた2つのフォトバイオリアクタの頂点の直下に配置することである。
【0037】
フォトバイオリアクタパネルをある角度で配置することによって、フォトバイオリアクタシステムの有効な光合成の表面積が、そのようなシステムを設置する土地の所与の大きさを超えて拡大される。一実施の形態(これに限られるわけではないが)においては、フォトバイオリアクタパネルが、地面から60〜90°の角度に配置され、所与の表面積を拡大する。表面積をこの程度まで拡大することによって、フォトバイオリアクタは、平板リアクタが成長させることができるよりもはるかに多くのバイオマスを、同じ大きさの土地にて成長させることができる。
【0038】
フォトバイオリアクタパネルを斜めにすることによる表面積の拡大の1つの当然の結果は、光がパネルに非直接的な角度で入射するため、光がより拡散される点にある。これが、拡散光システムは一般に光合成の支援において集中直接光よりも効率的であるため、微細藻類の成長において助けとなる(例えば、AltonらのGlobal Change Biology、12:776−87、2007;Smart, J.のApplied Ecology、11:997−1006、1974)。さらに、光合成および成長が過剰な直接光に応答して中断される光阻害の現象が、光の拡散ゆえに減少する。
【0039】
(水容器)
ある角度に配置されたフォトバイオリアクタパネルを、水容器に接触させて配置することができる。一例(これに限られるわけではないが)においては、フォトバイオリアクタチャンバが、外部の水がフォトバイオリアクタパネルを囲んでいる空間を満たすように、水容器に沈められる。この外側の容器は、温度の調節、フォトバイオリアクタパネルの構造的な支持、または光の拡散など、いくつかの目的を果たすことができる。
【0040】
外周の壁が、外部の容器を収容された状態に保つために、フォトバイオリアクタシステム全体を囲むことができる。周囲の壁に使用される典型的な材料(これに限られるわけではない)は、練り土であると考えられるが、これらに限られるわけではないが木材、コンクリート、セメント、れんが、熱硬化性プラスチック、または金属など、この技術分野において公知の任意の他の材料を使用することができる。
【0041】
ひとたび周囲の壁および容器の構築が完了すると、フォトバイオリアクタ内の地面全体を覆って、容器から地面への水の吸収を防止するために、底部ライナーを使用することができる。このライナーの典型的な材料(これに限られるわけではない)は、厚いプラスチックフィルムであると考えられるが、コンクリート、セメント、熱硬化性プラスチック、金属、または密封した粘土など、任意の他の公知の材料を使用することができる。
【0042】
殺菌成分を、汚染性の藻類、細菌、菌類、または微生物の種が外部の水に蔓延して、外部の水の光学的な透明度を低下させることがないように、外部の水容器へと加えてもよい。あるいは、外部の水容器の水を、汚染性の微生物を除去するために、大流量かつ大せん断のろ過ユニットによってろ過してもよい。
【0043】
(温度制御)
外部の容器の水は、フォトバイオリアクタシステムにおいて成長させられている光合成微生物の種および株にとって最適な一定の温度範囲の維持において、フォトバイオリアクタチャンバを助ける熱質量を提供する。水を加熱するために、近傍の発電所または工場などといった産業熱源からの低級廃熱を、外部の容器へと加えることができる。水を、ヒータと外部の容器との間で水を循環させる外部加熱システムを使用して、直接加熱してもよい。容器の水の冷却の1つの選択肢として、湖沼、河川、または海洋などといった既存の水域から低温の水を取り出すことが考えられる。新たな低温の水が外部の容器へと加えられるとき、容器内の温かい水が、水域へと戻される。
【0044】
外部容器の水の加熱および冷却の両者のための方法(これに限られるわけではない)として、外部容器の水を、地面の下方4フィート〜400フィートの間のレベルにおいてフォトバイオリアクタシステムの下方に掘られたパイプに通すことが考えられる。この範囲における地球の温度は、通常はおよそ華氏57°である。このシステムを、暑い日の水の冷却および周囲の温度が過剰に低くなったときの水の加熱の両方に使用することができる。あるいは、地表温度の差をヒートシンクとして使用し、ヒートポンプをフォトバイオリアクタシステムに接続することができる。
【0045】
プラスチックの上部層をフォトバイオリアクタシステムに追加し、外部の容器およびフォトバイオリアクタパネルを覆うことができる。この上部層は、プラスチックフィルムの比較的薄い層を備えることができる。この上部層を追加することで、気化による水の喪失が最小限にされる。この上部層は、封じ合わせられた2層のプラスチックフィルムを備えることができ、そのようなプラスチックフィルムからなる2層を、全体システムの温度調節の方法として、高温または低温の空気で膨張させることができる。さらに、この空気は、染料または人工の煙を含むことができ、空気の変色によって、大気からフォトバイオリアクタシステムへの熱伝達を減らすことができる。
【0046】
また、上部層に、光のスペクトルの紫外部分を阻止して、フォトバイオリアクタパネル内の光合成微生物およびプラスチックフィルムのUV起因の損傷を少なくする染料または他の添加剤を含浸させてもよい。あるいは、上部層が、光のスペクトルのうちの光合成に有効でない部分(例えば、緑色)の波長を光合成に有効な光波(赤色または青色)へとずらすコーティングを備えることができ、あるいは上部層に、そのような染料または他の添加剤を含浸させることができる。さらに、上部層は、日光からシステムへと進入する熱の量を少なくするために、赤外線を遮断するさらなるコーティングを備えることができ、あるいは上部層に、赤外線を遮断する添加剤を含浸させることができる。
【0047】
特定の実施の形態においては、インペラシステムを、水容器の底部に配置することができる。コロイド物質を水へと追加し、容器の底部に定着させることができる。太陽が天頂に達するときに、インペラを作動させて水容器内に乱流を生じさせ、コロイド物質を懸濁させることができる。次いで、この物質がゆっくりと凝集し、1日の最も明るい部分において太陽光の一部を遮断し、過剰な直射日光および/または熱からの藻類またはフォトバイオリアクタ材料の損傷を低減する。このコロイド物質を、例えば、光のスペクトルの赤外部分から最も光を反射させる赤色粘土材料で構成することができる。この方法で、高い日中温度の悪影響を、最小限のエネルギーの入力で最小にすることができる。
【0048】
(制御部およびセンサ)
好ましい実施の形態においては、藻類の生長に影響しうる種々の環境条件を監視するさまざまなセンサを、フォトバイオリアクタパネルのそれぞれの端部のセンサポートに配置することができる。使用されるセンサとして、溶存二酸化炭素センサ、溶存酸素センサ、流体温度センサ、画像取得ユニット、pHセンサ、分光測光濁度センサ、電導度センサ、溶存固体センサ、および蛍光分析センサを挙げることができる。上記センサの列挙は、これですべてではなく、この技術分野において公知の他のセンサも、使用することができる。そのような公知のセンサは、例えば、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、塩素、硝酸塩、などといった種々のイオン種の塩分または濃度を監視することができる。
【0049】
センサは、瞬時の環境測定値を提供する中央のコンピュータ化された制御ユニットへとデータを送ることができる。フォトバイオリアクタへのさまざまな入力(成長培地、二酸化炭素、他の栄養素、空気圧、ポンプ流量、酸またはアルカリ溶液、など)を、選択された環境測定値に応答して調節することができる。例えば、pHのレベルが、光合成微生物の成長に適さないアルカリ度のレベルまで上昇した場合に、追加の二酸化炭素を空気の流れへと加えて、成長培地をより酸性にすることができる。あるいは、過度の酸性を、COの入力を減らすことによって調節でき、あるいはアルカリ塩基を培地へと加えることによって調節できる。
【0050】
密封空気チューブへと送り込まれ、気泡としてフォトバイオリアクタパネルを通してスパージされる空気を、チッ素、大気、二酸化炭素、産業プロセスからの廃ガス、固定の燃焼室からの燃焼排気ガス、発電所煙道ガス、または任意の他の選択されたガス供給源で構成することができる。ガスの割合、圧力、および前処理を、フォトバイオリアクタシステム内で成長させられる光合成微生物の選択によって決定することができる。酸素を高い濃度で含んでいるフォトバイオリアクタパネルから送り出される排気を、外部のタンクに蓄えることができる。IGCCなどの他の産業プロセスにおいて使用するために、酸素を集めて販売することができる。
【0051】
(フォトバイオリアクタチャンバの別の設計)
別の実施の形態においては、フォトバイオリアクタチャンバが、可撓プラスチック(例えば、ポリエチレン)からなる2つの層を備えることができる。上側層を、波形(「アコーディオン様式」)に似た形状へと折り曲げることができる。プラスチックのそれぞれの折り目が、別個のフォトバイオリアクタチャンバである(図11)。折り曲げられた上側層を、プラスチックの下側層へと、2つの層を熱溶着させることによって取り付けることができるが、この技術分野において公知の任意の他のプラスチックシートの取り付け方法を利用することができる。これにより、切断図から、プラスチックの下側層に取り付けられた一連の突起が形成される(図11)。ひとたび成長培地で満たされ、外側を液体で囲まれると、突起が、おおむね三角形の形状をとり、そのような三角形の形状は、外側および内側の液体領域の圧力の均衡ゆえに比較的剛な状態を保つ。使用される材料ならびに特定の場所および種について選択される寸法に応じ、形成できる他の可能性の形状は、矩形、直線、台形、ドーム形、およびアーチ道形である。さらに、フォトバイオリアクタセクションまたは突起のそれぞれのフィンガの上部の小さな空気空間が、空気ポケットの浮力ゆえに、構造体に上方への引っ張りをもたらす。
【0052】
フォトバイオリアクタの寸法は、特定の場所の環境条件ならびに選択された藻類または藍色細菌の種に応じてさまざまであってよい。以下の典型的な寸法が、砂漠または他の乾燥領域への配置について与えられ、例えば、成長させられる種は、Nannochloropsis sp.、Nannochloropsis oculata、Nannochloropsis salina、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Chlorella protothecoides、およびChlorella ellipsoidea、ならびにDunaliella tertiolectaのいくつかの株である。それぞれのフォトバイオリアクタチャンバは、8インチの高さ(1インチの空気すき間高さおよび7インチのフォトバイオリアクタ液体高さを含む)、2インチの底部幅、および100mの長さを有することができる。この設計において、隣接するフィンガフォトバイオリアクタの溶着の継ぎ目が互いに触れており、幅が、底部の2インチからフィンガの上部の1インチへと先細りになっている。その結果、フォトバイオリアクタチャンバの断面が、三角形に類似すると考えられる。
【0053】
フォトバイオリアクタチャンバの設計の他の実施の形態は、図12に示されているように、斜めのチューブの溶着の代わりに、垂直なチューブの溶着を形成することである。さらに、垂直な設計は、フォトバイオリアクタチャンバの全体構造に剛性を追加する。
【0054】
フォトバイオリアクタの設計の別の代案の実施の形態は、外部の容器の底面に垂直に直立するプラスチックフィルム製フォトバイオリアクタチャンバのパネルを生成することである。これらのチャンバが、溶着、重量、およびプラスチックひもなどの方法(これに限られるわけではない)によって底面に固定される。これらのチャンバは、閉じた区画を形成するように接合されたプラスチックフィルムの2つの層を備えている。これらの袋の上部の気泡の正の浮力が、それらを直立した状態に保つ。この設計を水平方向に広げるために、より多くのフォトバイオリアクタチャンバが、図13Aに示されるとおり、第1のチャンバに平行に列に並べられる。
【0055】
この設計の1つの利点は、必要とされる溶着の数がより少なく、したがって溶着不良の可能性が少なくなるとともに、製造コストも低くなる点にある。図13Bに示されるとおり、パネルへの上部、下部、および側部の溶着部、ならびにスパージング空気チューブのための上部および下部の溶着部に加え、一連の間欠的な溶着部が、袋の長さ方向に延びている。
【0056】
フォトバイオリアクタチャンバの設計の別の代案の実施の形態は、図14に示されているように、プラスチックフィルムの2枚のシートを下部、上部、および両横において接合し、次いでチャンバに、袋の表面の全体にわたって交互のスポット溶着を使用する(「くぼみ」のある外観が生み出される)ことによって、剛構造をもたらすことである。
【0057】
この設計のもう1つの利点は、チューブ状の溶着部がないことで、培養物がフォトバイオリアクタシステムの全体により拡散できる点にある。これは、結果として、生物にとってより健康的な成長環境をもたらす。
【0058】
この設計は、第1の実施の形態において述べたパネルと同様に機能すると考えられるが、第1の実施の形態において述べた設計によって生み出される長い斜めのチューブに比べ、溶着部がより少ないと考えられる。スポット溶着のくぼみを配置することで、上昇する気泡の上方移動に対して妨害をもたらし、結果としてそれら気泡の滞在時間を長くして、ガス交換を最適化することができる。あるいは、スポット溶着のくぼみの配置を利用して、培地で満たされたときのパネルの形状を制御することができる。
【0059】
(植菌時の設計の利点)
従来からのフォトバイオリアクタの設計においては、接種のプロセスが、種々の問題に直面する可能性がある。例えば、少量の接種材料しか有さない培養物から出発すると、接種された所定の種が、細菌、菌類、原虫、または他の望ましくない藻類種によって打ち負かされてしまう可能性が大きくなり、あるいは藻類の増殖における最も深刻な問題の1つである光阻害につながる。しかしながら、大量の接種材料で出発すると、きわめて大きな成長フォトバイオリアクタ養育所が必要になり、システムのコストが大幅に増加する。
【0060】
可撓なフォトバイオリアクタチャンバの設計によれば、フォトバイオリアクタチャンバを、より小さな容積となるように、接種に先立って収縮させることができる。この状態において、少量の接種材料の添加により、システム内の所望の藻類の出発濃度が比例的に高くなる。培養物が成長して密度が高まるにつれて、さらなる成長培地をフォトバイオリアクタチャンバへと加えることができる。このようにして、フォトバイオリアクタチャンバが、培養物の成長につれて拡大できる。他の変種においては、システム内のフォトバイオリアクタチャンバの数を、培養物の成長につれて増やすことができる。
【0061】
これは、初期の指数関数的な成長段階において重要であろう。生物の集団は、一般的に、集団の成長において、新しい環境に順応するための遅滞期にて始まり、その後に指数関数的な成長期が続き、その後に集団の密度が比較的一定なレベルに保たれる静止期が続くS字曲線に従う。初期の遅滞期および指数関数的な成長期の初めの部分においては、培養物が細菌または他の望まれない種によって打ち負かされてしまう危険が大きい。したがって、接種プロセスを始めるためにより小さな容積を使用し、培養物の密度が高まるにつれて容積を拡大することで、所望の種がフォトバイオリアクタにおいて支配的となるように保証することができる。ひとたび高い密度が達成されると、他の種からの汚染および競合の危険は、はるかに低くなる。さらに、集団の成長につれてフォトバイオリアクタチャンバの容積を拡大することは、指数関数的な成長期を延長して、静止期の発生を遅らせるようにも機能し、藻類培養物の生産性を高めることができる。同様に、システム全体を段階的に増強して成長曲線を最大化するために、フォトバイオリアクタチャンバを、成長期において1つずつ追加することができる。
【0062】
(光合成微生物)
フォトバイオリアクタシステムは、種に依存しないように設計される。システムの設定、構造、寸法、サブシステム、および中身を、多数の種類の光合成微生物の成長を可能にするように調節することができる。典型的な生物は、光栄養(光合成)モードと従属栄養(外部の炭素源から栄養をとる)モードとの間を行き来することができる非運動性の微小緑藻類であるChlorella protothecoidesである。この微生物は、自身の細胞質に大量の中性脂肪を蓄積できる能力も有しており、これを、バイオ燃料の生産のための原材料として使用することが可能である。しかしながら、藻類および他の光合成微生物の多数の種が、発見および分析されており、別の実施の形態において、そのような公知の任意の種をバイオ燃料の生産を支援すべくフォトバイオリアクタにおいて成長させることができることを、当業者であれば理解できるであろう。典型的な種として、これらに限られるわけではないが、Nannochloropsis sp.、Nannochloropsis salina、Nannochloropsis occulata、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Botrycoccus braunii、Chlorella sp.、Chlorella ellipsoidea、Chlorella emersonii、Chlorella minutissima、Chlorella protothecoides、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella salina、Chlorella sorokiniana、Chlorella vulgaris、Chroomonas salina、Cyclotella cryptica、Cyclotella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella bardawil、Dunaliella tertiolecta、Euglena gracilis、Gymnodinium nelsoni、Haematococcus pluvialis、Isochrysis galbana、Monoraphidium minutum、Monoraphidium sp.、Nannochloris sp.、Neochloris oleoabundans、Nitzschia laevis、Onoraphidium sp.、Pavlova lutheri、Phaeodactylum tricornutum、Porphyridium cruentum、Scenedesmus obliquus、Scenedesmus quadricaula、Scenedesmus sp.、Skeletonema、Stichococcus bacillaris、Spirulina platensis、またはThalassiosira sp.が挙げられる。
【0063】
さまざまな成長培地が開発され、この技術分野において知られており、種々の実施の形態において、そのような公知の成長培地のいずれかを、好ましくは選択された藻類または微生物の種に合わせて最適化して、利用することができる。典型的な実施の形態において使用された培地は、Guillard f/2という培地(Guillard、1960、J.Protozool.7:262−68;Guillard、1975、In Smith and Chanley、Eds.Culture of Marine Invertegrate Animals、Plenum Press、New York;Guillard and Ryther、1962、Can.J.Microbiol.8:229−39)に変更を加えたものであり、22g/LのNaCl、16g/LのAquarium Synthetic Sea Salt(Instant Ocean Aquarium Salt、Aquarium Systems Inc.Mentor、OH)、420mg/LのNaNO、20mg/LのNaHPO・HO、4.36mg/LのNaEDTA、3.15mg/LのFeCl・6HO、180μg/LのMnCl・4HO、22μg/LのZnSO・7HO、10μg/LのCuSO・5HO、10μg/LのCoCl・6HO、6.3 10μg/LのNaMoO・2HO、100μg/Lのチアミン−HCl、0.5μg/Lのビオチン、および0.5μg/LのビタミンB12を含んでいる。この培地に、場合によってはNaHCOまたはトリス緩衝液を加え、ビタミン有りおよびビタミンなしで、場合によってはNaNOの代わりにKNOを加えて、Nannochloropsis sp.、Nannochloropsis oculata、Nannochloropsis salina、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Chlorella salina、およびDunaliella tertiolectaのいくつかの株の培養物の成長に使用した。藻類または他の微生物の培養に使用される他の培地組成物は、この技術分野において周知(例えば、Provasoliら、Archiv fur Mikrobiologie 25:392−428、1957;Harrison & Taylor、J.Phycol.16:28−35、1980;Kellerら、J.Phycol.23:633−38、1987を参照)であるが、これらに限られるわけではない。
【0064】
フォトバイオリアクタにおいて成長させた藻類または他の微生物を、同じユニットまたは低せん断のろ過ユニットにおいて収穫し、別のストレスリアクタ(光に暴露されても、暴露されなくてもよい)へと移すことができる。そのようなストレスバイオリアクタを、フォトバイオリアクタパネルの下方の袋に配置することができ、あるいはフォトバイオリアクタシステムの外部の別のバイオリアクタに配置してもよい。特定の実施の形態においては、藻類または他の微生物に、収穫およびバイオディーゼルへの変換に先立って、脂質の生成を増加させる手順を加えてもよい。例えば、Chlorella protothecoidesなどの通性従属栄養生物においては、例えば粉砕して乾燥させたトウモロコシの穀粒または他の任意の安価な炭水化物の供給源など、炭素基質を細胞へと加えることができる。この基質は、細胞における速やかな中性脂質の形成を促し、次いで細胞を、バイオ燃料の生産のために収穫することができる。他の場合には、藻類に、チッ素飢餓または他の栄養不足の状態など、脂質の生成を向上させるように設計された環境ストレス条件を加えることができる。枯渇した培地中のチッ素の量は、使用された培地およびストレスの対象となる藻類の種類に応じて、通常の量の0〜75%まで、さまざまであってよい。別の実施の形態においては、二酸化炭素の枯渇を、藻類にストレスを加えるために使用することができる。藻類の種々の種について、脂質の生成を向上させるために、さまざまな種類および組み合わせのストレス因子を使用することができる。
【0065】
チッ素の枯渇または制限の他にも、光、温度、二酸化炭素、リン酸塩、鉄、NaCl、硫黄、シリカ、およびモリブデン酸塩など、他にも多数のストレス因子が存在する。別の実施の形態は、培地のリサイクルおよびチッ素含有化合物の量が限られている成長培地との置き換えである。例えば、置き換えの成長培地は、脂質の生成および/または貯蔵油の蓄積のためのチッ素制限状態を引き起こすために、0〜75%までの任意のチッ素含有化合物を含むことができる。
【0066】
チッ素制限またはチッ素飢餓状の状態を達成する別の方法は、硝酸塩(NO)含有の化合物がチッ素の供給源として使用される場合に、成長培地中のモリブデン酸塩を制限することである。NOは、アミノ酸などの有機化合物へと吸収されるためには、NHへと還元されなければならない。NOが、最初に硝酸還元酵素(NR)によって亜硝酸塩(NO)へと変換され、次いで亜硝酸還元酵素(NiR)によってアンモニア(NH)へと迅速に変換される。モリブデン(Mo)は、NR酵素の共同因子である。Mo不足の結果の1つが、NR酵素の活性の低下であり、したがってチッ素の制限または飢餓である。
【0067】
バイオリアクタ内で脂質を生成するように藻類を刺激するための簡単な方法は、例えば成長につれて脂質を蓄積する種(Tetraselmis suecicaまたはNannochloropsisの種々の株など)を成長させることである。別の簡単な方法は、例えばこれらの種をCOによって制御されるpHでの定常状態へと成長させることである。最大の成長に達するや否や、さらなるCO制御がもたらされてはならず、藻類が、バイオディーゼルへと転換できる脂質を生成する。pHの上昇が、脂質生成の指標である。このプロセスを、1段階のバッチプロセスとして行うことができる。あるいは、一方のフォトバイオリアクタチャンバでの連続的または半連続的な成長と、他方のフォトバイオリアクタチャンバで生じるCOの添加の中断とを含む2段階のプロセスであってもよい。脂質の量は、0〜80%まで変化する。
【0068】
別の手法は、藻類バイオマスを収穫し、このバイオマスを沈降、凝集、または遠心分離によって脱水し、次いで成長培地をさまざまな量のチッ素または他の制限因子で置き換えることである。
【0069】
種々の実施の形態において、複数の光合成種をフォトバイオリアクタにおいて培養することができ、そのような種のそれぞれが、気候および環境条件がそのような種の成長に有利であるときに、培養物において支配的になる。例えば、Nannochloropsis sp.またはNannochloropsis oculataまたはNannochloropsis salinaまたはTetraselmis suecicaまたはTetraselmis chuii、ならびにChlorella salinaを、一緒に培養することができる。夏の月々の間は、太陽の照度および環境温度が最大であるとき、Tetraselmisが培養物において支配的になりうる。より穏やかな秋および春の月々の間は、Chlorella salina細胞が培養物において支配的になりうる。低温の冬の月々の間は、きわめて低い温度で成長できるというNannochloropsisの能力により、残りの種を打ち負かすことが可能になる。このように、それぞれの種が、1年のあらゆる時期に存在すると考えられるが、種々の種の割合は、季節によって変化することができる。
【0070】
(藻類の遺伝子工学)
特定の実施の形態においては、バイオディーゼルまたは他のバイオ燃料を生産するために有用な藻類について、脂質の生成を向上させ、あるいは藻類の培養、成長、収穫、または使用のための他の望ましい特徴をもたらす1つ以上の単離された核酸配列を含むように、遺伝子操作(遺伝子組み換え)を行うことができる。藻類の種を安定的に形質転換させる方法、ならびに有用な単離核酸を含む組成物が、この技術分野において周知であり、そのような方法および組成のいずれかを、本発明の実施において使用することができる。有用な典型的な形質転換方法として、微粒子銃、エレクトロポレーション、原形質融合、PEGを介したプロトプラスト形質転換、DNAコートしたシリコンカーバイドウィスカー、またはウィルスを介した形質転換の使用、あるいは藻細胞へと形質転換させるべきDNAを含んでいる溶液においてガラスビーズによってプロトプラストに渦を作る(vortexing)ことを挙げることができる(例えば、ここでの言及によって本明細書に援用されるSanfordら、1993、Meth.Enzymol.217:483−509;Dunahayら、1997、Meth.Molec.Biol.62:503−9;米国特許第5,270,175号;米国特許第5,661,017号を参照)。
【0071】
例えば、米国特許5,661,017号が、Bacillariophyceae、Chrysophyceae、Phaeophyceae、Xanthophyceae、Raphidophyceae、Prymnesiophyceae、Cryptophyceae、Cyclotella、Navicula、Cylindrotheca、Phaeodactylum、Amphora、Chaetoceros、Nitzschia、またはThalassiosiraなど、クロロフィルCを含んでいる藻類の形質転換を開示している。アセチル−CoAカルボキシラーゼなど、有用な核酸を含んでいる組成物も開示されている。
【0072】
種々の実施の形態において、形質転換された藻類の選択のために、選択可能なマーカーを単離した核酸またはベクターに組み込むことができる。有用な選択マーカーとして、これらに限られるわけではないが、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドアセチルトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、ブレオマイシン結合タンパク質、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ、ブロモキシニルニトリラーゼ、グリホサーテ耐性5−エノールピルビルシキマーテ−3−リン酸合成酵素、クリプトプルリン耐性リボソーマルタンパク質S14、エメチン耐性リボソーマルタンパク質S14、スルフォニウレア耐性アセトラクテート合成酵素、イミダゾリノン耐性アセトラクテート合成酵素、ストレプトマイシン耐性16SリボソーマルRNA、スペクチノマイシン耐性16SリボソーマルRNA、エリスロマイシン耐性23SリボソーマルRNA、またはメチルベンゾイミダゾール耐性チューブリンを挙げることができる。
【0073】
C.クリプティカアセチル−CoAカルボキシラーゼ5’非翻訳調節制御配列、C.クリプティカアセチル−CoAカルボキシラーゼ3’非翻訳調節制御配列、およびこれらの組み合わせなど、導入遺伝子の発現を促進する制御核酸配列が知られている。さらに、アルファ−チューブリン遺伝子または連動相手の種から構成的に発現される任意の他の遺伝子のプロモータを、高度の発現を達成するために、藻類へと形質転換される遺伝子の前に配置することができる。
【0074】
藻類の脂質の生成を規定する代謝経路は、これまでのところ完全に分析されているわけではない。特定の環境条件が、脂質の生成を促進するために、代謝におけるスイッチをトリガできることが明らかである。原理的には、トリガ機構を、転写因子、たんぱく質キナーゼまたはホスファターゼ、受容たんぱく質、シグナル変換たんぱく質、ホルモン、サイトカイン、または他の調節要素など、1つまたは少数の遺伝子またはたんぱく質の活性によって規定することができる。アセチル−CoAカルボキシラーゼなど、脂質の合成における速度制限段階を触媒する酵素による形質転換も、藻類における脂質の生成を促進すると示唆されている(例えば、Dunahayらの「Manipulation of microalgal lipid production using genetic engineering」、Applied Biochemistry and Biotechnology、Humana Press、Totowa NJ、2007を参照)。
【0075】
しかしながら、脂質の生成に関与する酵素のカスケードの全体を、バイオマスの成長のプロセスを低速にすることなく大量の脂質を生産できる「新規」な藻類生物を生成すべく変更することが、より効果的であるように見受けられる。
【0076】
(好ましい実施の形態)
種々の実施の形態において、本発明の方法、構成、および装置は、以下を含むことができる。
【0077】
二酸化炭素または内燃機関原動機からの排気ガスを加える外気の流れへと追加の導入口を、フォトバイオリアクタシステムへと組み込まれたコンピュータ制御のセンサネットワークに応答して開閉することができるフォトバイオリアクタ。
【0078】
フォトバイオリアクタのpHレベルを調節して微細藻類の成長にとって最適なレベルに保つための手段として、追加の二酸化炭素または内燃機関原動機からの排気ガスが、アルカリ度の上昇に応答して加えられるフォトバイオリアクタ。
【0079】
追加の二酸化炭素または内燃機関原動機からの排気ガスが、フォトバイオリアクタの培地の溶存二酸化炭素の所定の平衡に応答して加えられるフォトバイオリアクタ。
【0080】
以下のガス、すなわち発電プラントの煙道ガス、二酸化炭素、大気、チッ素、産業内燃チャンバの排気ガス、および/または他の産業バイオリアクタからの廃ガスの任意の組み合わせが、フォトバイオリアクタの培地を通してスパージされるフォトバイオリアクタ。
【0081】
フォトバイオリアクタシステムの上部層およびフォトバイオリアクタチャンバの上部層が、ガラスで作られているフォトバイオリアクタ。
【0082】
蛍光分析センサが、フォトバイオリアクタチャンバの内部に取り付けられ、この蛍光分析センサからのクロロフィル蛍光の測定値が、中央制御ユニットおよび/または分散制御ユニットへと送られるフォトバイオリアクタ。
【0083】
画像取得ユニットが、フォトバイオリアクタチャンバの内部に取り付けられ、画像が画像分析のために中央制御ユニットおよび/または分散制御ユニットへと送られるフォトバイオリアクタ。
【0084】
中央制御ユニットまたは分散制御ユニットが、フォトバイオリアクタチャンバ内の種々のセンサからのデータを受信し、操作者または自動フィードバックシステムに対して、フォトバイオリアクタシステム内の環境条件を変更するように知らせるフォトバイオリアクタ(例えば、フォトバイオリアクタの培地が低温になりすぎるときに温度を高め、フォトバイオリアクタの培地がアルカリ性になりすぎるときにpHを下げ、溶存二酸化炭素のレベルが低くなりすぎるときにフォトバイオリアクタの培地を通してスパージされる二酸化炭素の割合を増やす、など)。
【0085】
環境センサが、フォトバイオリアクタチャンバの各所に配置され、電気配線、無線送信機、および/または光ファイバーケーブルによって接続され、そのデータが、中央制御ユニットまたは分散制御ユニットへと送られるフォトバイオリアクタ。
【0086】
環境センサが、フィンガ状のフォトバイオリアクタチャンバの各所に配置されて、無線でデータを送信し、そのデータが、中央制御ユニットおよび/または分散制御ユニットへと送られるフォトバイオリアクタ。
【0087】
外側の水チャンバから液体を取り出し、フォトバイオリアクタシステムの外部の熱交換器において加熱または冷却を加え、次いで外側の水チャンバへと再び導入することによって、フォトバイオリアクタチャンバの内部の温度が調節されるフォトバイオリアクタ。
【0088】
フォトバイオリアクタシステムの外部の熱交換器によって加熱または冷却された熱交換流体を、外側の水チャンバ内に浮かんでいるパイプを通して流すことによって、温度が調節されるフォトバイオリアクタ。
【0089】
フォトバイオリアクタシステムの外部の熱交換器によって加熱または冷却された熱交換流体を、外側の水チャンバの底部のパイプを通して流すことによって、温度が調節されるフォトバイオリアクタ。
【0090】
フォトバイオリアクタシステムの外部の熱交換器によって加熱または冷却された熱交換を、液体で満たされた下方の袋の内部に浮かんでいるパイプに通すことによって、温度が調節されるフォトバイオリアクタ。
【0091】
余分な酸素および他の廃ガスが、フォトバイオリアクタチャンバの最上部の空気ポケットに集められ、次いで外部の空気ポンプによって取り出されて、高純度の酸素として販売するために外部に保管されるフォトバイオリアクタ。
【0092】
培地が、低せん断ポンプのみを使用して、システムへと送り込まれ、システムから汲み出されるフォトバイオリアクタ。
【0093】
培地から生物の代謝産物、無関係の微生物、および他の不純物をろ過するために、連続的または半連続的な方法で、毎日または同程度の頻度で、培地の最大で90%が取り出されるフォトバイオリアクタ。
【0094】
別個の培地リサイクルシステムが、培地をフォトバイオリアクタシステムへと戻す前に、培地から汚染物質をろ過し、望ましくない生物を殺傷し、代謝産物を適切なレベルへと調節するフォトバイオリアクタ。
【0095】
液体で満たされた外部の袋が、温度の制御および水平面の生成の目的のため、フォトバイオリアクタチャンバの下方に位置しているフォトバイオリアクタ。
【0096】
追加の袋が、フォトバイオリアクタシステムから収穫された微生物を移すことができる二次バイオリアクタとしても機能し、次いで追加の袋が、所望の微細藻類の従属栄養成長のための二次バイオリアクタ、または培養物の細胞への油の蓄積を生じさせるべく栄養の制限または枯渇を生じさせることができる二次バイオリアクタとして機能できるフォトバイオリアクタ。
【0097】
追加の袋が、フォトバイオリアクタシステムから収穫された微細藻類を移すことができるチャンバを収容しており、次いで、所望の培養物の従属栄養成長のための二次バイオリアクタ、または培養物の細胞への油の蓄積を生じさせるべく栄養の制限または枯渇を生じさせることができる二次バイオリアクタとして機能できるフォトバイオリアクタ。
【0098】
構造体の形状が、ガスの浮力によるよりもむしろ、静水圧の管理によって維持されるフォトバイオリアクタ。
【0099】
複数の可撓平行チューブのそれぞれを、別個のフォトバイオリアクタとして取り扱うことができるフォトバイオリアクタ。
【0100】
フォトバイオリアクタチャンバの一部またはすべてを、フォトバイオリアクタの見掛けの全長を増すために、直列に接続することができるフォトバイオリアクタ。
【0101】
フォトバイオリアクタチャンバを、隣接または近接したフォトバイオリアクタチャンバ間の外部の交差チューブまたは内部の通路を介して、直列に接続することができるフォトバイオリアクタ。
【0102】
フォトバイオリアクタチャンバを、外部の交差チューブおよび/または母管あるいは内部の通路または内部の母管を介して、並列に接続することができるフォトバイオリアクタ。
【0103】
培養物の取り出しおよび/または新鮮な培地の追加が、フォトバイオリアクタの長さに沿った特定の位置または個々の可撓フォトバイオリアクタチューブの長さに沿った特定の位置において行われるフォトバイオリアクタ。
【0104】
脂質含有量を増加させるべく栄養素ストレスを生じさせる目的のために、フォトバイオリアクタの長さに沿った特定の位置または個々の可撓フォトバイオリアクタチューブの長さに沿った特定の位置において、特定の栄養素が加えられ、あるいは異なる濃度で加えられるフォトバイオリアクタ。
【0105】
培養物が、空気のスパージングを伴わないかき混ぜ手段によって透光層を通して循環させられるフォトバイオリアクタ。
【0106】
新鮮な培地が、細胞の増殖時の培養物の希釈および一定の密度の維持のために、定期的な間隔で培養物へと加えられるフォトバイオリアクタ。
【0107】
成長段階のフォトバイオリアクタと、明示的にバイオ燃料の生成のための脂質の蓄積のためのストレス段階のバイオリアクタとを含んでいるフォトバイオリアクタ。
【0108】
ストレスバイオリアクタが、成長フォトバイオリアクタに隣接して位置しており、微細藻類の細胞の独立栄養培養のために日光を利用するフォトバイオリアクタ。
【0109】
成長およびストレスバイオリアクタが、ろ過装置によって隔てられた単一のチャネルからなっており、ポンプによって駆動される流れが、成長および脂質の蓄積という異なる段階を通して藻細胞を押し流し、すぐに収穫できるようになった藻細胞がこの連続システムの終端に到着するフォトバイオリアクタ。
【0110】
バイオリアクタチャネルのストレス段階部分が、チャネルのフォトバイオリアクタ部分の下方に位置しており、暗い従属栄養モードで操作されるフォトバイオリアクタ。
【0111】
バイオリアクタのストレス部分が、フォトバイオリアクタに隣接して置かれたタワー状の構造であり、暗い従属栄養モードで操作されるフォトバイオリアクタ。
【実施例】
【0112】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施の形態を実証するために用意されている。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において上手く機能することが本発明の発明者によって発見され、したがって本発明の実施のための好ましい態様を構成すると考えることができる技術を提示していることを、当業者であれば理解すべきである。しかしながら、本明細書の開示に照らし、本発明の技術的思想および技術的範囲から離れることなく、多数の変更が、本明細書に開示される特定の実施の形態において可能であって、依然として同様または類似の結果をもたらすことができることを、当業者であれば理解すべきである。
【0113】
実施例1:フォトバイオリアクタの構築および使用
フォトバイオリアクタの構築
典型的なフォトバイオリアクタを、設計および製作した。図2に示したように、典型的な実施の形態においては、高さ26cm、長さ20mのプラスチックフィルムのシートを、テーブルの上に広げて置いた。次いで、回転穿孔装置を、プラスチックシートの全長にわたってシートの中点上を転がした。これにより、プラスチックに直径0.25mmの孔を2cmごとに生成した。次いで、孔が折り目の5mm下方になるように、プラスチックシートを半分に折り曲げ、空気チューブを形成した。
【0114】
次いで、この空気チューブを、それぞれ高さ91cm、長さ20mであるプラスチックフィルムの2枚のシートの間に配置した。空気チューブプラスチックの底部を、2枚の大きなプラスチックフィルムのシートの底部に一致するように配置した。
【0115】
次の工程において、このプロセスのために特別に設計したインパルス加熱溶着装置を使用した。この装置は、上側プラテンおよび下側プラテンで構成されている(図3A)。上側プラテンが、上下に移動する一方で、下側プラテンは、静止したままである。プラスチックシートを、溶着装置へと手で送り込むことができ、溶着装置が、一度にフォトバイオリアクタシステムの76cmを溶着する。上側プラテンは、上部の水平方向の溶着部を生成する2つの69cmの水平加熱素子と、下部の水平方向の溶着部を生成する2つの69cmの水平加熱素子と、31°の角度に傾けられた5つの斜めの垂直加熱素子とを備えている。下側プラテンは、上側プラテンの上述の素子のそれぞれに整列させた対応する加熱素子を備えている。この溶着装置は、作動時に溶着素子へと等しい圧力を加える空気ピストンによって制御される。溶着装置は、溶着期間および溶着後の冷却期間の間、その圧力を保持する。次いで、圧力が解放され、プラテンが引き戻される。典型的な溶着時間は、使用される正確な材料および溶着装置の設定によるが、4〜10秒程度である。別の実施の形態においては、同様の装置を、手によるシートの送りではなく、自動送りを使用するように設計することができる。
【0116】
装置がシートを押すときに、フィルムのシートの底部から6.35cmの位置に、プラスチックフィルムの全長にわたって、水平方向の連続的な熱溶着が生成される。同時に、上側の水平方向の溶着部も、プラスチックシートの上部から19cmの位置に、袋の全長にわたって配置される。プラスチックシートの中央部が、この目的のための特別な溶着装置を使用して、開放端の斜めチューブへと順次に溶着される(図3B)。1つのプラテンに5つの平行な溶着素子を取り付けて構成されることで、溶着装置は、フォトバイオリアクタチャンバの生成のプロセスを高速化している。チューブインパルス溶着装置は、フォトバイオリアクタチャンバの上側または下側の溶着部のいずれにも達しない5つの平行かつ斜めの途中までの溶着部を形成する。斜めの途中までの溶着部を、プラスチックシートの上部から38cm、かつプラスチックシートの下部から18cmに位置させた。チューブ溶着部を、31°の角度に配置した。この加熱溶着装置によって合計26回のプレスを行い、フォトバイオリアクタチャンバの20mの全長に、合計で130の溶着部を形成した。
【0117】
このようにして、溶着装置を使用して、130のチューブ溶着部で構成される合計130本のチューブを形成した。フォトバイオリアクタの終端の垂直方向の端部が加えられるとき、さらに2つのチューブが生み出される。このようにして、典型的な実施の形態においては、長さ20mのフォトバイオリアクタチャンバが、132本の斜めチューブで構成されている。
【0118】
充てんおよび加圧されたときのリアクタの最適な形状をもたらすために、ジグザグ溶着装置(図4A)を使用し、外側のプラスチックシートおよび空気チューブの全長にわたって高さ3cmのジグザグ溶着部を形成した。最初の「ジグ」溶着部を、フォトバイオリアクタチャンバの全長にわたって形成した。この「ジグ」溶着部の上部は、プラスチックシートの下部から7.6cmの位置にて始まり、プラスチックシートの下部から6.6cmの位置で終わっている。次いで、この袋をひっくり返し、同じ溶着部を、同じ長さにわたって反対方向に走らせ、「ジグ」パターンに重なる「ザグ」パターンを形成した。ひとたび完成すると、それらはジグザグパターンのようである(図4C)。この溶着部を形成するために、作業者は、使用される材料および他の条件に応じて、4〜10秒間にわたって適切な圧力を加え、その後に同じ大きさの圧力を加えつつ同等の時間のあいだプラスチックに接触させなければならない。
【0119】
あるいは、ジグザグパターンを、ジグザグまたは同様のパターンが溶着ヘッドへと機械加工または形成されている一定温度の溶着装置を使用して、生成することも可能である。図4Aが、この例を示している。
【0120】
次いで、ジグザグ溶着装置を、プラスチックシートの上部から28cmの位置において袋の全長にわたって溶着部の「ジグ」パターンのみを形成すべく適用した。この溶着部は連続的でなく、したがって空気および液体が溶着部の間の空間を通過できるが、フォトバイオリアクタチャンバの最上部の空気ポケットに構造的な支持をもたらしている。
【0121】
次いで、7つのプラスチックバルクヘッド取り付け穴を、図5Aに示した位置においてフォトバイオリアクタに形成した。それぞれのバルクヘッド(図5C)が、32mmの内径を有している。
【0122】
次いで、プラスチックバルクヘッド(図5C)を、フォトバイオリアクタチャンバへと取り付けた。バルクヘッドを、ねじ山付きの部分が外部に現れるようにしてフォトバイオリアクタチャンバの内部に配置した。硬ワッシャを、柔らかい側がプラスチックに面するようにして、ねじ山付きの部分に配置した。次いで、プラスチックナットを、ねじ山へとしっかりとねじ込んだ。運搬および設置の際に塵埃および微生物がバルクヘッドに進入することがないように、開口にキャップを配置した。別の取り付け方法は、バルクヘッドをプラスチックフィルムへと直接に熱溶着させることである。
【0123】
次いで、空気取り出し部を、図5Aに示されているように、使用される材料に合わせた適切な時間および圧力に設定された直線リボンインパルス溶着機を使用して溶着した。図5Aに示されている場所において、外側のプラスチックシートに穴を形成し、この穴の縁を巡って高温の熱いにかわのビードを配置した。次いで、プレートポート(図5B)を、穴を覆って取り付け、にかわの一様な分布を保証すべく数秒にわたって動かぬように保持した。このプレートポートが、フォトバイオリアクタチャンバの空気取り出し口である。溶着および接着剤などといった他の固定方法も、プレートポートをプラスチックフィルムへと取り付けるために使用することが可能である。
【0124】
最終的な斜め溶着部を、この時点においてフォトバイオリアクタチャンバの終端に、使用される材料に合わせた適切な時間および圧力に設定されたリボン直線溶着機を使用して形成した。これらの最終的な溶着部によって、図6に示されるとおり、終端および最後の2つのチューブが形成されている。
【0125】
次いで、硬質プラスチックで構成された内径1cm、長さ10cmの空気導入チューブを、空気チューブへの入り口に取り付けた(図7)。これを行うために、プラスチックのフラップを、矩形の形でこの部位から切除した(この地点において、4層のプラスチックを切除)した(図7)。切除は、垂直方向の溶着部をわずかに超えて終わっている。空気導入硬質プラスチックチューブを、空気チューブへと7.5cm挿入した。充分な量の高温の熱いにかわを、硬質プラスチックチューブとフォトバイオリアクタチャンバとの間の境界へと塗布し、密封を保証すべく5秒間にわたって静かにその場所に保持した。
【0126】
次いで、図8に示されるとおり、フォトバイオリアクタの周囲の余分なプラスチックを切除した。これにより、1つの完成したフォトバイオリアクタチャンバがもたらされた。全体としてのフォトバイオリアクタシステムにおいて、一部のフォトバイオリアクタチャンバについてのみ、センサによる測定およびサンプルの収集のための7つのバルクヘッドが必要であることに、注意すべきである。大部分の袋は、空気導入チューブ、空気取り出し口のためのプレートポート、および2つのバルクヘッド接続具(1つは液体導入用であり、1つは液体排出用である)しか必要としない。
【0127】
フォトバイオリアクタチャンバをペアにし、それらを上部において接合するために、2つの袋の全長にわたって最終的な熱シールを走らせた(図9)。次いで、ペアにしたフォトバイオリアクタチャンバを、フォトバイオリアクタシステムに配置することができる。
【0128】
フォトバイオリアクタチャンバの材料は、可撓で、耐久性に富み、透明でなければならない。好ましい実施の形態においては、チャンバの材料が、ナイロンプラスチックフィルムからなる1つの層の各側に結合剤からなるタイ層および低密度ポリエチレン(LDPE)からなる層を貼り付けてなる多層複合ポリマーで構成されている。結合剤が、熱および圧力が加えられたときにLDPEおよびナイロンの両方に接着する。
【0129】
ナイロン−LDPEプラスチックフィルムの厚さは、光合成微生物の種、ならびに光サイクリング、せん断応力の制限、などに必要とされる乱流の対応するレベルに応じて、さまざまであってよい。LDPE−ナイロンフィルムの好ましい例は、厚さが1000分の3.5インチである。この厚さにおいて、フォトバイオリアクタチャンバ内の中程度の乱流が、フィルムの構造的な完全性にほとんど影響を及ぼさないと考えられる。典型的な実施の形態の実施において利用することができる他の厚さは。1000分の1.5インチ、1000分の2.5インチ、1000分の5インチ、1000分の7インチ、および1000分の10インチである。これらの厚さは、フォトバイオリアクタチャンバ内のさまざまな乱流のレベルにとって充分な構造的完全性をもたらす。
【0130】
使用可能なプラスチックフィルムの他の例は、単層LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、繊維強化LDPE、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、単層ナイロン、ポリエステル(PET)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVLC)、エチレンビニルアルコール(EVA)、ポリスチレン(PS)、およびこの技術分野において公知の他の任意の透明なプラスチックフィルムである。さらに、上述のポリマーフィルムの任意の組み合わせも、多層ハイブリッドポリマーを生成するために使用可能である。上述のフィルムの厚さは、フォトバイオリアクタシステムにおいて成長させられるべく選択された光合成微生物の種に応じて、さまざまであろう。好ましくは、選択される厚さは、フォトバイオリアクタの構築における袋の材料のコストを下げるために、構造的な完全性のために許容される最小限の厚さである。
【0131】
プラスチックフィルムを接合するための好ましい実施の形態は、使用される材料に合わせた適切な時間、圧力、および温度に設定された一定の熱の溶着装置を使用する。プレス時間は、プラスチックフィルムの厚さ、使用される材料、および層の数に依存して決まる。
【0132】
プラスチックフィルムを接合するために典型的な実施の形態において使用されるインパルス溶着装置は、厚さ1000分の1インチであった長さ68.5cmのニクロムリボンを走らせる30ボルトのインパルス溶着装置を含んでいる。1000分の5インチのナイロン−LDPE 5層ポリマーフィルムからなる2枚のシートを接合するための1つの典型的な設定(これに限られるわけではない)は、4〜10秒の期間にわたる1平方インチ当たり50ポンドの圧力であった。
【0133】
成長培地で満たされたとき、フォトバイオリアクタパネルは膨張し、平行かつ垂直である熱溶着部の間の領域が膨らみ、上部および下部が開いている一連のチューブが生じた。このようにして、フォトバイオリアクタパネルが、そこを通過する連続的な流れを有する一方で、熱溶着部および周囲の水の圧力に比べてより高いフォトバイオリアクタチャンバ内の圧力によってもたらされる構造的支持ゆえ、剛な構造も有する。
【0134】
成長培地を、最上部の熱溶着部の下方の「ジグ」熱溶着部をわずかに下回るレベルに維持した。空気を、成長培地が密封された空気チューブへと進入することがないようにしつつ、気泡をそれぞれの孔から押し出すために充分な圧力で、空気チューブへと送り込んだ。その結果、気泡が培地を通って上昇し、空気−液体の界面で破裂した。
【0135】
上部の空気ポケット(スパージング気泡が供給される)が、フォトバイオリアクタパネルの構造的な完全性を増す正の浮力をもたらしている。したがって、上部の空気ポケットの体積が、密封された空気チューブの体積よりも大きいことが重要であり、そうでない場合、空気チューブがパネルを浮かせようとする。外側の水容器が使用されない場合には、フォトバイオリアクタチャンバ内の成長培地の内部静水圧を、フォトバイオリアクタチャンバの構造的な剛性を保つために高めることができる。
【0136】
くぼみの形態であるさらなる熱溶着部を、上方へと上昇する気泡のためにより長い経路を生成するための手段として、平行かつ垂直であるチューブへと追加することができる。これは、気泡の保持を長くし、所与の量のスパージ空気当たりのガス交換を最大にするうえで役に立つ。
【0137】
所望の気泡の経路を生成する別の方法は、襞に似た変形をプラスチックに生じさせるために、チューブの外側にヒートガンを適用することである。これらの襞も、気泡の上昇を遅らせ、所与の量のスパージ空気当たりのガス交換の量を大きくする。この効果を、プラスチックフィルムに襞を真空形成することによって生み出すことも可能である。
【0138】
フォトバイオリアクタチャンバを、断面(図10)が三角形になるように配置されたペア(図9)へと組み合わせ、熱の絶縁および構造的な支持のために水容器の内部に配置した。水容器は、上述(段落0050、0051)のように外周壁によって囲まれている。ポンプ、センサ、および制御システムを、詳細な説明において上述したようにシステムへと統合した。
【0139】
実施例2.藻類の培養
実施例1に記載した典型的なフォトバイオリアクタに、Nannochloropsis occulata、Nannochloropsis sp.、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Chlorella salina、またはDunaliella tertiolectaを接種した。Dunaliella tertiolecta藻類培養物が、フォトバイオリアクタシステムにおいて培養され、成長した。最大で1mL当たり4500万個の細胞(1.5〜2.3g/L)という細胞の密度(これに限られるわけではないが)が、Dunaliella tertiolectaについて達成された。
【0140】
同様の特徴を有する別のフォトバイオリアクタにおいて成長させた藻類を収穫し、藻類から脂質を抽出した。トリグリセリドを、バッチエステル交換プロセスを使用してバイオディーゼルへと変換した。
【0141】
実施例3.栄養素の制限による脂質の生成の促進
Tetraselmis suecicaを、0.5g〜2gのNaHCO/Lを追加したf/2培地(pH7.2〜7.5)において5〜8日間にわたり、1mL当たり10〜62×10個という範囲の最大細胞密度まで増殖させた。乾燥重量は、CO(1〜2%)での連続的なかき混ぜのもとで、それぞれ1.4〜11g/Lであった。NaNOおよびNaHPO・HOを、必要に応じて加えた。最大細胞密度に達した後は、それ以上COを供給しなかった。中性脂肪が、最大細胞密度への到達およびCO供給の中断後の24hで形成された。pHは、7.5から10〜11へと上昇した。pHの上昇が、脂質の生成の指標である。
【0142】
24hの後の脂質形成の動態を、ナイルレッド(Nile Red)による蛍光測定を使用して監視した。藻類サンプルを、750nmの波長において0.1という光学密度まで希釈した。DMSO中の35μLのナイルレッドを、3.5mLの希釈藻類へと加え、1μg/mlという最終濃度にした。このサンプルを完全に混合し、Perkin Elmer LS55 Fluorometerを使用し、525nmの励起波長および540〜800nmの範囲の放射を使用して、室温において5分間のインキュベーション(他の種においては、より長いインキュベーション時間が必要かもしれない)の後に読み取った。中性脂肪は、580〜600nmにおいて放射を発する。蓄積された脂質の種類を、薄層クロマトグラフィーによって分析した。全体としての脂肪酸メチルエステルの量を、ガスクロマトグラフィーによって確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水容器によって囲まれた1つ以上の閉鎖フォトバイオリアクタチャンバを備えており、光合成微生物を成長させることができる、閉鎖系フォトバイオリアクタ。
【請求項2】
フォトバイオリアクタチャンバが、可撓であって透明であるプラスチックフィルムまたは複合フィルムを含んでいる、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項3】
フォトバイオリアクタチャンバへと拡散光をもたらすことによって光合成の効率を高めるように設計されている、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項4】
光へと暴露されるフォトバイオリアクタチャンバの表面積が、該フォトバイオリアクタによって覆われる地面の表面積よりも大きい、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項5】
フォトバイオリアクタチャンバへの構造的な支持が、水容器の水、フォトバイオリアクタチャンバ内の空気ポケットの正の浮力、ならびに/あるいはプラスチックフィルムまたは複合フィルムの構造的な熱溶着部によってもたらされる、請求項2に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項6】
藻類および成長培地をチャンバを通して循環させるための低せん断ポンプをさらに備えている、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項7】
低せん断フィルタをさらに備えている、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項8】
フォトバイオリアクタチャンバ内に成長培地および光合成微生物をさらに含んでいる、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項9】
チャンバが、互いにある角度で配置されて、上部および下部において隣のチャンバへと取り付けられ、断面図においてアコーディオン形状を生み出している、請求項5に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項10】
水容器からの水の喪失を少なくするために、水容器を囲む周壁と、水容器の下方の底部ライナーと、水容器の上方のプラスチックの上部層とをさらに備えている、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項11】
水容器の水が、フォトバイオリアクタチャンバの温度の変動を少なくするための熱質量をもたらしている、請求項10に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項12】
光合成微生物が、Nannochloropsis oculata、Nannochloropsis salina、Nannochloropsis sp.、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Botrycoccus braunii、Chlorella sp.、Chlorella ellipsoidea、Chlorella emersonii、Chlorella minutissima、Chlorella protothecoides、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella salina、Chlorella sorokiniana、Chlorella vulgaris、Chroomonas salina、Cyclotella cryptica、Cyclotella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella bardawil、Dunaliella tertiolecta、Euglena gracilis、Gymnodinium nelsoni、Haematococcus pluvialis、Isochrysis galbana、Monoraphidium minutum、Monoraphidium sp.、Nannochloris sp.、Neochloris oleoabundans、Nitzschia laevis、Onoraphidium sp.、Pavlova lutheri、Phaeodactylum tricornutum、Porphyridium cruentum、Scenedesmus obliquus、Scenedesmus quadricaula、Scenedesmus sp.、Skeletonema、Stichococcus bacillaris、Spirulina platensis、およびThalassiosira sp.からなる群より選択される微細藻類または藍色細菌である、請求項8に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項13】
フォトバイオリアクタチャンバが、互いに接合されたプラスチックフィルムの下部層および上部層を備え、正の浮力をもたらすためのチャンバの上部の空気ポケットを有しており、フォトバイオリアクタチャンバの形状が、構造的な張力によって維持される、請求項2に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項14】
空気ポケットが、光合成によって生成された酸素を集め、酸素豊富な空気が、発電プラントまたは燃焼室の燃焼の効率の向上をもたらすために集められる、請求項5に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項15】
プラスチックの上部層が、紫外光または赤外光の一部またはすべての透過を阻止する一方で、光合成を支援するように可視光の透過を許す染料、コーティング、または添加剤を含んでいる、請求項10に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項16】
1つ以上のセンサポートをさらに備えており、各センサポートが、溶存二酸化炭素センサ、溶存酸素センサ、pHセンサ、温度センサ、濁度センサ、溶存固体センサ、および蛍光分析センサからなる群より選択される1つ以上のセンサを備えており、1つ以上のセンサからの信号が、中央制御ユニットへと送られる、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項17】
中央制御ユニットが、センサ信号に応答してフォトバイオリアクタチャンバ内の1つ以上の環境条件を制御するために、1つ以上の制御ユニットの機能を調節する、請求項16に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項18】
収穫された微生物を移して、脂質の生成を促進するための条件へとさらすことができる二次バイオリアクタ
をさらに備えている、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項19】
フォトバイオリアクタチャンバ内の流体の量を、チャンバが新たな培養物で接種されるときに増加または減少させることができる、請求項1に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項20】
複数種の藻類が、フォトバイオリアクタチャンバ内に維持される、請求項12に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項21】
フォトバイオリアクタチャンバ内の圧力を、フォトバイオリアクタチャンバのサイズおよび形状を制御するように調節することができる、請求項2に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項22】
可撓であって透明であるプラスチックフィルムまたは複合フィルムで構成された1つ以上の閉鎖フォトバイオリアクタチャンバを備えており、プラスチックフィルムで構成された空気チューブが、チャンバへとスパージング気泡をもたらすために各フォトバイオリアクタチャンバの底部に位置している、閉鎖系フォトバイオリアクタ。
【請求項23】
空気チューブへと供給される空気が、大気二酸化炭素、二酸化炭素キャニスタ、発電プラントの排気ガス、または燃焼室の排気ガスから選択される供給元からの二酸化炭素を含んでいる、請求項22に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項24】
フォトバイオリアクタの成長培地から溶存酸素を取り除くために、空気チューブに酸素含有量が0〜2体積%の間であるガスが供給される、請求項22に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項25】
二酸化炭素の濃度を、フォトバイオリアクタチャンバの成長培地のpHを調節するように制御することができる、請求項23に記載のフォトバイオリアクタ。
【請求項26】
バイオ燃料の生成方法であって、
a.水容器によって囲まれた1つ以上の閉鎖フォトバイオリアクタチャンバを備えている閉鎖系フォトバイオリアクタの成長培地において、光合成微生物を成長させるステップ、
b.連続、半連続、またはバッチモードのプロセスにて、光合成微生物を収穫するステップ、および
c.光合成微生物からの脂質または炭水化物を、バイオ燃料へと変換するステップ
を含んでいる、方法。
【請求項27】
光合成微生物が、藻類である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
藻類に、脂質の生成を増すために環境ストレスが加えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
藻類に、脂質の生成を増すために、2つ以上の異なる環境ストレスの組み合わせが加えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
環境ストレスが、二酸化炭素の枯渇である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
二酸化炭素が、フォトバイオリアクタチャンバへと供給されない、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
環境ストレスが、チッ素の枯渇である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
環境ストレスが、光への暴露の減少または増加である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
光合成の効率を高めるためにフォトバイオリアクタチャンバへと拡散光をもたらすステップ
をさらに含んでいる、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
光合成微生物が、Nannochloropsis oculata、Nannochloropsis salina、Nannochloropsis sp.、Tetraselmis suecica、Tetraselmis chuii、Botrycoccus braunii、Chlorella sp.、Chlorella ellipsoidea、Chlorella emersonii、Chlorella minutissima、Chlorella protothecoides、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella salina、Chlorella sorokiniana、Chlorella vulgaris、Chroomonas salina、Cyclotella cryptica、Cyclotella sp.、Dunaliella salina、Dunaliella bardawil、Dunaliella tertiolecta、Euglena gracilis、Gymnodinium nelsoni、Haematococcus pluvialis、Isochrysis galbana、Monoraphidium minutum、Monoraphidium sp.、Nannochloris sp.、Neochloris oleoabundans、Nitzschia laevis、Onoraphidium sp.、Pavlova lutheri、Phaeodactylum tricornutum、Porphyridium cruentum、Scenedesmus obliquus、Scenedesmus quadricaula、Scenedesmus sp.、Skeletonema、Stichococcus bacillaris、Spirulina platensis、およびThalassiosira sp.からなる群より選択される微細藻類または藍色細菌である、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
光合成微生物が、Chlorella protothecoidesまたはTetraselmis suecicaである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
複数種の藻類が、フォトバイオリアクタチャンバ内に維持される、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
フォトバイオリアクタチャンバが、可撓であって透明であるプラスチックフィルムまたは複合フィルムを含んでいる、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
フォトバイオリアクタチャンバが、チャンバへとスパージング気泡をもたらすために、プラスチックフィルムで構成された空気チューブを各フォトバイオリアクタチャンバの底部に備えている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
空気チューブへと供給される空気が、大気二酸化炭素、二酸化炭素キャニスタ、発電プラントの排気ガス、または燃焼室の排気ガスから選択される供給元からの二酸化炭素を含んでいる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
二酸化炭素の濃度を、フォトバイオリアクタチャンバの成長培地のpHを調節するように制御することができる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
水容器の水が、フォトバイオリアクタチャンバの温度の変動を少なくするための熱質量をもたらしている、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
閉鎖系フォトバイオリアクタへの加熱または冷却の外部の供給元を用意するステップ
をさらに含んでいる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
空気チューブからの余剰ガスおよび光合成によって生成された酸素が、フォトバイオリアクタチャンバの上部の空気ポケットに集まる、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
発電プラントまたは燃焼室の燃焼の効率を向上させるために、酸素豊富なガスを空気ポケットから取り出すステップ
をさらに含んでいる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
閉鎖系フォトバイオリアクタの一端において、空気ポケットからガスを排出するステップ
をさらに含んでいる、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
成長培地の酸素濃度を下げるために、閉鎖系フォトバイオリアクタの全長にわたって空気ポケットからガスを排気するステップ
をさらに含んでいる、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
排気ガスが、水の中に排出される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
閉鎖系フォトバイオリアクタチャンバのガス圧を、水面を下回る排気ガスの排出の深さによって調節するステップ
をさらに含んでいる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
成長培地をフォトバイオリアクタチャンバを通してポンプで動かすステップ
をさらに含んでおり、
成長培地が、フォトバイオリアクタチャンバを通過する一方向の流れを生成するために、一端においてフォトバイオリアクタを出て、フォトバイオリアクタの他端へとポンプで動かされる、請求項26に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B−4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2010−514446(P2010−514446A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544166(P2009−544166)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/087476
【国際公開番号】WO2008/079724
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509181242)ソリックス バイオフューエルズ, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(592246587)コロラド ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (17)
【Fターム(参考)】