説明

充填バルブ

【課題】ガス詰め充填を行う充填バルブ1の液吐出口4aに、充填液の整流および異物混入防止用のスクリーン26を装着する。
【解決手段】バルブハウジング2内に形成された充填液通路4内にセンターロッド10を昇降可能に配置し、このロッド10の先端部に設けた弁体14と、充填液通路4の下端内面の弁座16とにより液バルブ18を構成する。バルブハウジング2の外周に昇降自在にびん口パッキンユニット30を嵌合し、その下端面に設けたびん口パッキン28で容器8内を密封する。ガス通路36から容器8内に加圧ガスを吹き込んだ後、液体を充填しつつ前記ガスを排出する。ロッド10の先端面24を円錐状にするとともに、その下側の液吐出口4aに同じ円錐状のスクリーン26を取り付ける。液バルブ18を閉じたときのロッド10の先端面24とスクリーン26との距離を接近させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器内に液体を充填する充填バルブに係り、特に、充填液通路の先端開口部にスクリーンを取り付けた充填バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
充填バルブによって容器内に液体を充填する際に、充填液通路の先端の液吐出口から流れ出る液体を整流して泡立ちを防止し、あるいは、充填液中に混入している異物が容器内に流入することを防止するために、充填ノズルの先端の液吐出口にメッシュ状のスクリーンを取り付けた充填バルブが従来から知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載された「袋体の内容物充填装置用のノズル」には、「ノズル10の先端部10aの吐出口14に網状体18を設けて該網状体18を通して液体の内容物をスタンディングパウチ24内に吐出させる」構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2に記載された「液だれ防止充填ノズル」には、「内部が充填液の通路となる筒状のホルダ10と、このホルダ10の先端部13内周に配置され充填停止時に多数の孔に液体を保持して液だれを防止する先端スクリーン20とを備え、……ホルダ本体内周面10aには、先端スクリーン20の上流側に5枚の中間スクリーン30と、一つの整流板40が直列に配置され」た構成が開示されている。
【0005】
ところで、炭酸入りの飲料を充填する場合には、びん口パッキンによって容器の口部を密封し、ガス通路から容器内に加圧ガスを供給し、続いて、充填ノズルから容器内に液体を充填しつつ、容器内の前記加圧ガスをガス通路等から外部に排出するようにしている。そして、所定量の液体を充填した後、容器の上部空間に残っている加圧ガスを放出するスニフト工程を行い、その後、びん口パッキンを容器の口部から離して充填を完了する。前記各特許文献に記載された発明は、いずれも無炭酸飲料の充填を行う充填ノズルに関するものであるが、このようなガス詰め充填の場合にも、異物の混入を防止するために、充填ノズルの先端にスクリーンを装着する必要性が高まっている。
【特許文献1】特開平9−118314号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2004−182245号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、前記特許文献1および特許文献2に記載された充填バルブに設けられているスクリーンを、前述のようなガス詰め充填を行う充填バルブに装着すると、液体の充填を停止した時点でスクリーンの上方に残留している液体が、スニフトを行った際に、スクリーンの下方に吸い出されて発泡してしまう。さらに、スクリーン上に残留している液体の量が多いと、次回の充填時に加圧ガスを吹き込む際に、前記残留液が容器内に吐出されて容器内での発泡の原因となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に充填液通路が形成されたバルブハウジングと、前記充填液通路内に移動可能に配置されるとともに、先端面が円錐状に形成されたセンターロッドと、このセンターロッドに設けられた弁体および前記充填液通路の内面に形成された弁座から成る液バルブと、前記センターロッドを移動させて前記液バルブを開閉する開閉手段と、前記バルブハウジングに設けられ、供給された容器の口部をシール可能なシール手段と、このシール手段と容器とを相対的に昇降させる昇降手段と、容器内に充填された充填液量を検出する充填量検出手段と、前記バルブハウジングに形成され、容器内部に加圧ガスを供給するガス通路と、前記センターロッドの先端面とほぼ同一の形状に形成されるとともに、前記弁体が弁座に着座した時に前記センターロッドの先端面と接近するように前記充填液通路の吐出口に設けられた多孔部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の充填バルブは、弁体が形成されたセンターロッドの先端面と、充填液通路の吐出口に取り付けた多孔部材とをほぼ同形状の円錐状にし、かつ、液バルブを閉鎖したときのセンターロッド先端面と多孔部材との位置をきわめて接近させるようにしたので、センターロッドの先端面とスクリーンとの間に残留する充填液の量を極めて少なくすることができ、従って、スニフトを行う際に残留液が発泡することなく、また、次の充填時に加圧ガスを吹き込む際に、スクリーン上に残留している液が容器内に吹き込まれることもないので、ガス詰め充填用の充填バルブにスクリーンを取り付けることが可能になり、さらに、スクリーンを取り付けた充填バルブを、無ガス充填とガス詰め充填に兼用することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
バルブハウジングの内部に形成された充填液通路内にセンターロッドを配置し、開閉手段によって移動させることにより、センターロッドに形成された弁体と充填液通路に形成された弁座とから成る液バルブを開閉する。前記センターロッドの先端面を円錐形状にするとともに、充填液通路の吐出口に前記センターロッドの先端面とほぼ同形状の多孔部材を取り付け、かつ、センターロッドを移動させて液バルブを閉じたときに、このロッドの先端面と多孔部材とが接近するように構成したことにより、びん口パッキンによって容器内を密封し、ガス通路から加圧ガスを供給した後、この加圧ガスを排出しつつ充填を行うガス詰め充填用の充填バルブにも、充填液の吐出口に多孔部材を取り付けることが可能になった。
【実施例1】
【0010】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る充填バルブの縦断面図、図2はこの充填バルブの要部の拡大図である。この充填バルブ(全体として符号1で示す)は、円筒状のバルブボディ2の内部に充填液通路4が形成されており、供給配管6を介して充填液タンク(図示せず)からこの充填液通路4内に送られてきた充填液が、充填液通路4の吐出口4aから吐出されて容器8(後に説明する図3および図4参照)内に充填される。供給配管6には流量計7が設けられており、容器8内に充填される液量を計量している。
【0011】
充填液通路4の内部には、昇降可能なセンターロッド10が挿通され、バルブボディ2の上方に取り付けた昇降用エアシリンダ(図示せず)によって昇降される。このセンターロッド10の下端部には、シール部材12が嵌着された弁体14が形成されており、この弁体14と充填液通路4の下端部内面に設けられた弁座16とにより、前記充填液通路4の連通遮断を行う液バルブ18が構成されている。前記昇降用エアシリンダが液バルブ18の開閉手段を構成しており、この昇降用エアシリンダの作動によって、センターロッド10が下降して弁体14が弁座16に着座しているときには、充填液通路4が閉鎖され、センターロッド10の上昇によって弁体14が弁座16から離座すると充填液通路4が開放して充填が行われる。
【0012】
前記供給配管6は、バルブハウジング2内に設けられている充填液通路4の上端部に接続されている。そして、センターロッド10の上部は、充填液通路4の上方のバルブハウジング2内部を貫通して上方の昇降用エアシリンダに連結されており、このセンターロッド10とバルブハウジング2との摺動部に、供給配管6から充填液通路4内に供給される充填液が接触しないように、充填液通路4の上端面とセンターロッド10の上部外周面との間にベローズ22が装着されている。
【0013】
前記センターロッド10の先端面(下端面)24は円錐状をしており、下方の充填液吐出口4a内に突出している。また、前記充填液通路4の下端部、つまり、液バルブ18よりも下方の液吐出口4aの内側に、容器8内に充填される液体を整流するとともに、異物の混入を防止するためのスクリーン(多孔部材)26が設けられている。このスクリーン26は、前記センターロッド10の先端面24の円錐形状とほぼ一致する形状の円錐形をしている。しかも、センターロッド10が下降して液バルブ18を閉じた時には、このセンターロッド10の円錐状先端面24とスクリーン26とが極めて接近した位置になるように、スクリーン26が前記バルブハウジング2に取り付けられている。従って、充填終了後に液バルブ18が閉じた時に、センターロッド10の先端面24とスクリーン26との間の空間に残留する充填液の量は、従来の構造と比較して極めて少量である。なお、センターロッド10が下降して液バルブ18を閉じた時の、センターロッド10の先端面24とスクリーン26との間隔は、1mm程度であることが好ましい。また、スクリーン26は前記バルブハウジング2に溶接により取り付けられている。
【0014】
この実施例に係る充填バルブ1は、炭酸飲料等の充填を行うガス詰め充填と、その他の無炭酸飲料の充填を行う無ガス充填とに兼用できるようになっており、ガス詰め充填時に容器8の口部8aを密封するためのびん口パッキン28を備えている。このびん口パッキン28について簡単に説明する。前記バルブハウジング2の下端部の外周に、円筒状のびん口パッキンユニット30が嵌合している。このびん口パッキンユニット30の内周面にはOリング32が装着されており、バルブハウジング2の外周面を気密を保持して摺動する。びん口パッキンユニット30の下端の開口部は小径になっており、この小径の開口部の周囲に環状のびん口パッキン28が取り付けられている。このびん口パッキン28は、液体の充填される容器8の口部8aの口径に合致する径を有している。びん口パッキンユニット30は、連結ロッド34を介して上方に設置されたエアシリンダ等の昇降手段(図示せず)によって昇降されるようになっている。この充填バルブ1によって炭酸飲料等のガス詰め充填を行う際には、前記昇降手段の作動によりびん口パッキンユニット30を下降させて、びん口パッキン28を下方に供給された容器8の口部8aに密着させて容器8内を密封する。
【0015】
バルブハウジング2の内部の、前記充填液通路4の外側には、このバルブハウジング2の下端面に開口する二本の気体通路36、38が設けられている。第1の気体通路36はガス通路であり、開閉弁40を介してガスの給排を行う。このガス通路36は、容器8内に液体を充填する前に加圧ガスを供給するカウンター通路、および容器8内へ液体を充填している際に、容器8内のガスを排出するガス排出通路として機能する。
【0016】
また、第2の気体通路38はスニフト通路であり、開閉弁42を介して、図示しないスニフトチャンバーに接続されている。このスニフト通路42は、容器8内への液体の充填が終了した後、密閉された容器8の充填液よりも上方の空間内に残留している加圧ガスを放出する。
【0017】
以上の構成に係る充填バルブ1の作動について説明する。図3は炭酸飲料等の充填を行う場合の作動であり、この場合には、びん口パッキン28を容器8の口部8aに密着させてシール充填を行う。充填バルブ1の下方に容器8が供給される時点では、この容器8と干渉しないように、図示しない昇降手段によってびん口パッキンユニット30を上昇させておく。充填バルブ1の下方に容器8が供給されると、前記昇降手段によってびん口パッキンユニット30を下降させてびん口パッキン28を容器8の口部8aに押し付けて容器8内を密封する。
【0018】
続いて、ガス通路36の開閉弁40を開放して加圧ガスを容器8内に供給する。その後、液バルブ開閉用のエアシリンダ(図示せず)を作動させてセンターロッド10を上昇させる。センターロッド10が上昇してこのロッド10の下端部寄りに設けられている弁体14が弁座16から離れて液バルブ18が開放すると(図3(a)の参照)、図示しない充填液タンクから給液配管6を介して充填液通路4内に送られてきていた液体が、開放した液バルブ18およびスクリーン26を通って容器8内に充填されるとともに、容器8内に充満していたガスが、前記ガス通路(ガス排出通路)36を通って排出される。前記供給配管6には流量計7が設けられており、この流量計7を通過する液体の量を検出している。流量計7が検出した液体の量が所定量に達すると、前記昇降用エアシリンダが作動してセンターロッド10を下降させ、センターロッド10の下端部の弁体14を弁座16に着座させて液バルブ18を閉じ、液体の充填を終了する(図3(b)の参照)。
【0019】
容器8内への液体の充填を終了した後、ガス通路36の開閉弁40を閉じ、スニフト通路38の開閉弁42を開放して、容器8の充填された液体よりも上部の空間に密封されている加圧ガスを徐々に放出する。この容器8上部の空間の圧力が低下することにより、液バルブ18が閉じた時点で昇降ロッド10の先端面24とスクリーン26との間に残留していた液体が容器8内に吸い出されるが、この実施例の構成では、その残留液が極めて少量なので発泡するおそれがない。従って、ガス詰め充填用の液バルブにスクリーンを装着することが可能になる。
【0020】
また、無炭酸飲料の場合には、びん口パッキン28によって容器8内を密封せずに充填をするノンシール充填を行う。この場合には、図示しない昇降手段によってびん口パッキンユニット30を上昇させて、びん口パッキン28を容器8の口部8aから離しておく。この状態で、昇降用エアシリンダによってセンターロッド10を上昇させて液バルブ18を開放する(図4(a)参照)。そして、所定量の液体の充填を行った後、センターロッド10を下降させて弁体14を弁座16に着座させて液バルブ18を閉じ充填を終了する(図4(a)参照)。このように本実施例によればスクリーン26を装着した充填バルブ1を、ノンガス充填とガス詰め充填に兼用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る充填バルブの縦断面図である。(実施例1)
【図2】前記充填バルブの要部の拡大図である。
【図3】ガス詰め充填を行う際の作動を説明する図であり、(a)図は液バルブの開放時、(b)図は液バルブの閉鎖時を示す。
【図4】ノンガス充填を行う際の作動を説明する図であり、(a)図は液バルブの開放時、(b)図は液バルブの閉鎖時を示す。
【符号の説明】
【0022】
2 バルブハウジング
4 充填液通路
4a 充填液通路の吐出口
7 充填量検出手段(流量計)
8 容器
8a 容器の口部
10 センターロッド
14 弁体
16 弁座
18 液バルブ
24 センターロッドの先端
26 多孔部材(スクリーン)
28 シール手段(びん口パッキン)
36 ガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に充填液通路が形成されたバルブハウジングと、前記充填液通路内に移動可能に配置されるとともに、先端面が円錐状に形成されたセンターロッドと、このセンターロッドに設けられた弁体および前記充填液通路の内面に形成された弁座から成る液バルブと、前記センターロッドを移動させて前記液バルブを開閉する開閉手段と、前記バルブハウジングに設けられ、供給された容器の口部をシール可能なシール手段と、このシール手段と容器とを相対的に昇降させる昇降手段と、容器内に充填された充填液量を検出する充填量検出手段と、前記バルブハウジングに形成され、容器内部に加圧ガスを供給するガス通路と、前記センターロッドの先端面とほぼ同一の形状に形成されるとともに、前記弁体が弁座に着座した時に前記センターロッドの先端面と接近するように前記充填液通路の吐出口に設けられた多孔部材とを備えた充填バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−290743(P2007−290743A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120487(P2006−120487)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】