説明

充電システム、受電装置を備えた電気機器、及び給電装置を備えた充電器

【課題】受電部及び電池を有する受電装置と給電部を有する給電装置とを用いて非接触で電力の授受を行う充電ユニットにおいて、受電装置の大型化を招くことなく、該受電装置を効率良く冷却可能な構成を得る。
【解決手段】充電システム(1)は、受電側コイル(11)(受電部)及び電池(12)を有する機器(3)(受電装置)と、該受電側コイル(11)に対して非接触で給電を行う給電側コイル(21)(給電部)を有する充電器(2)(給電装置)と、を備える。機器(3)に、該機器(3)内で発生した熱を充電器(2)に伝えるように、該充電器(2)と接触する部分に接触部(13a)(熱伝導部)を設ける。充電器(2)は、機器(3)の接触部(13a)と接触する接触部(23a)と、該接触部(23a)の熱を外部へ放熱するためのヒートシンク(24)(放熱部)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電部及び電池を有する受電装置と、該受電部に対して非接触で電力を供給する給電部を有する給電装置とを備えた充電システム、該受電装置を備えた電気機器、及び該給電装置を備えた充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受電部及び電池を有する受電装置と、該受電部に対して非接触で電力を供給する給電部を有する給電装置とを備えた充電システムが知られている。このような充電システムとしては、例えば特許文献1に開示されるように、送電装置(給電装置)から電子機器(受電装置)に非接触で電力を供給して、該電子機器内の電池を充電する構成が知られている。
【0003】
なお、前記特許文献1には、電子機器及び送電装置がそれぞれコイルを有していて、送電装置のコイルに電流を流した際に生じた磁場を利用して電子機器側のコイルに電流を流す、いわゆる電磁誘導によって、電池の充電を行う構成が開示されている。
【0004】
このような構成では、電子機器及び送電装置は、内部で熱が発生して高温になる。そのため、前記特許文献1に開示されている構成では、電子機器にヒートスプレッダを設ける一方、送電装置にヒートシンクを設けて、電子機器及び送電装置の内部の熱を外部に逃すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−272938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、受電装置側にも放熱用のヒートスプレッダを設けると、その分、機器が大型化してしまう。大型の機器であれば、ヒートスプレッダを設けても特に問題はないが、ICタグや補聴器のような小型の機器では、小型且つ軽量であることが要求されるため、ヒートスプレッダのような放熱部を設けることは難しい。
【0007】
しかしながら、上述のようにコイルを用いて電磁誘導により電力を授受する構成では、コイルによって機器内部の温度が上昇してしまうため、小型の機器でも冷却手段が必要になる。
【0008】
そのため、本発明では、受電部及び電池を有する受電装置と給電部を有する給電装置とを用いて非接触で電力の授受を行う充電ユニットにおいて、受電装置の大型化を招くことなく、該受電装置を効率良く冷却可能な構成を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる充電ユニットは、電力を受電するための受電部、及び該受電部によって受電した電力により充電される電池を有する受電装置と、該受電装置の受電部に対して非接触で給電を行う給電部を有する給電装置と、を備え、前記受電装置には、該受電装置内で発生した熱を前記給電装置に伝えるように、該給電装置と接触する部分に熱伝導部が設けられていて、前記給電装置は、前記受電装置の熱伝導部と接触する接触部と、該接触部に熱的に接続されていて、該接触部の熱を外部へ放熱するための放熱部とを有している(第1の構成)。
【0010】
以上の構成により、受電装置内の受電部等で発生した熱は、該受電装置の熱伝導部を介して、給電装置の接触部に伝わる。そして、該接触部に伝わった熱は、給電装置の放熱部から外部へ放熱される。これにより、受電装置内に放熱手段を設けなくても、該受電装置内の熱を、給電装置を介して外部へ放熱することができるため、受電装置の大型化を招くことなく、該受電装置の温度上昇を抑制することができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記受電部は、前記受電装置の熱伝導部に熱的に接続されていて、前記給電部は、前記給電装置の放熱部に熱的に接続されているのが好ましい(第2の構成)。
【0012】
これにより、受電部及び給電部で発生した熱を、それぞれ、受電装置の熱伝導部及び給電装置の放熱部に効率良く伝えることができる。したがって、受電部及び給電部を効率良く冷却することができる。
【0013】
前記第1または第2の構成において、前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、熱伝導率が1.0W/m・K以上の材料によって構成されているのが好ましい(第3の構成)。一般的に、熱伝導性樹脂の熱伝導率は1.0W/m・K以上であり、このような熱伝導率を有する材料によって受電装置の熱伝導部及び給電装置の接触部を構成することにより、該受電装置から給電装置に熱を効率良く伝えることができる。よって、受電装置内で発生した熱を給電装置から外部に効率良く放熱することが可能となる。
【0014】
前記第1から第3の構成のいずれか一つの構成において、前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、それぞれ、該受電装置及び給電装置の筐体の一部に設けられていて、前記熱伝導部及び接触部は、前記受電装置及び給電装置の筐体の他の部分に比べて熱伝導率が高い材料によって構成されているのが好ましい(第4の構成)。
【0015】
これにより、受電装置の熱伝導部及び給電装置の接触部のみが、熱伝導率の高い材料によって構成されるため、受電装置及び給電装置のそれ以外の部分を安価な通常の樹脂によって構成することができる。したがって、充電システム全体の製造コストの増大を抑制することができる。
【0016】
しかも、受電装置及び給電装置の一部が熱伝導率の高い材料によって構成されるため、当該一部から効率良く放熱されるとともに、それ以外の部分に熱が伝わるのを防止できる。したがって、上述の構成により、受電装置内の電池等の構成部品に熱が伝わるのを防止できる。
【0017】
前記第1から第4の構成のいずれか一つの構成において、前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、それぞれ、接触面の算術平均粗さが1μm以下であるのが好ましい(第5の構成)。こうすることで、受電装置の熱伝導部と給電装置の接触部との接触面積を大きくすることができ、該受電装置内の熱を給電装置側に効率良く伝えることができる。これにより、受電装置内の熱を、給電装置を介して外部に効率良く放熱することが可能になる。
【0018】
前記第1から第5の構成のいずれか一つの構成において、前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、少なくとも一方が熱伝導性のエラストマーによって構成されるのが好ましい(第6の構成)。このような構成にすることで、エラストマーによって構成された受電装置の熱伝導部及び給電装置の接触部の少なくとも一方が、容易に変形するため、該熱伝導部と接触部とをより密着させることができる。したがって、熱伝導部と接触部との間に形成される空気の層が小さくなる。これにより、受電装置側から給電装置側に熱を伝導する際に空気の層による影響を受けにくくなるため、受電装置から給電装置側に熱を効率良く伝えることができる。
【0019】
前記第1から第6の構成のいずれか一つの構成において、前記給電装置は、前記接触部の接触面に風を送るための送風部を有するのが好ましい(第7の構成)。こうすることで、給電装置の接触部の接触面を冷却することができる。これにより、受電装置から給電装置の接触部に伝わる熱をより効率良く外部へ放熱することができる。
【0020】
前記第1から第7の構成のいずれか一つの構成において、前記給電装置は、前記接触部の接触面に前記受電装置を吸着させるための吸着部を有するのが好ましい(第8の構成)。これにより、給電装置の接触部に対して受電装置の熱伝導部をより確実に密着させることができる。したがって、受電装置内で発生した熱を、熱伝導部及び接触部を介して給電装置の放熱部に、より確実に伝えることができ、受電装置の熱を外部へ効率良く放熱することができる。
【0021】
前記第1から第8の構成のいずれか一つの構成において、前記受電装置の受電部及び前記給電装置の給電部は、電磁誘導によって電力の授受を行うように、それぞれ、コイルによって構成されているのが好ましい(第9の構成)。
【0022】
このように、受電装置の受電部及び給電装置の給電部がそれぞれコイルによって構成されていて、電力の授受が電磁誘導によって行われる場合、コイルで熱が発生するため、受電装置内及び給電装置内の温度が上昇しやすい。このような構成において、上述の第1から第8の構成を適用することで、受電装置内の受電部で生じた熱を給電装置内の放熱部から外部に効率良く放熱することができる。また、給電装置内の給電部を構成するコイルで生じた熱も該給電装置内の放熱部から外部に放熱することができる。
【0023】
本発明の一実施形態にかかる電気機器は、請求項1から9のいずれか一つに記載の受電装置を備えている(第10の構成)。
【0024】
本発明の一実施形態にかかる充電器は、請求項1から9のいずれか一つに記載の給電装置を備えている(第11の構成)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態にかかる充電ユニットによれば、受電部及び電池を有する受電装置に熱伝導部を設けるとともに、該受電部に対して非接触で電力を供給する給電部を有する給電部に、該熱伝導部と接触する接触部と、該接触部に熱的に接続された放熱部とを設けた。これにより、受電装置の大型化を防止しつつ、該受電装置内で発生した熱を給電装置から外部へ効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施形態1にかかる充電システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1の変形例にかかる充電システムにおける機器の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、実施形態2にかかる充電システムにおける充電器の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態3にかかる充電システムの概略構成を示す図である。
【図5】図5は、充電器の概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1にかかる充電システム1の概略構成を示す図である。この充電システム1は、充電器2(給電装置)と、該充電器2によって供給される電力を電池4に充電する充電ユニット10を含む機器3(受電装置、電気機器)と備えている。この機器3は、例えば、ICタグや補聴器などのように、内部に電池を有する小型機器である。なお、図1では、充電器2及び機器3内の配線等の記載を省略するとともに、内部の構成を簡略化して示している。
【0029】
充電システム1は、充電器2と機器3側の充電ユニット10との間で、非接触で電力の送受電を行うように構成されている。具体的には、充電器2は、ACアダプター26を介して図示しない電源に接続された給電側コイル21(給電部)を有している一方、充電ユニット10は、電池4に接続される充電回路の一部を構成する受電側コイル11(受電部)を有している。この構成により、充電システム1は、電磁誘導を利用して、充電器2から充電ユニット10に電力を供給するように構成されている。ここで、非接触で電力の送受電を行うとは、2つの装置間で端子を介すことなく、電力の授受を行うことを意味する。
【0030】
詳しくは、充電器2は、給電側コイル21と、該給電側コイル21に流れる電流等を制御するための駆動回路22と、該給電側コイル21及び駆動回路22が収納される筐体23とを備えている。この筐体23は、主に、例えばポリカーボネート樹脂(PC)等の樹脂材料によって構成される。また、筐体23の一部には、後述するように、他の部分よりも熱伝導率の高い高熱伝導率樹脂が用いられている。給電側コイル21は、この高熱伝導率樹脂によって構成されている部分に対して熱的に接続されるように、筐体23内に配置されている。
【0031】
充電器2の筐体23内には、該充電器2で発生した熱等を放熱するためのヒートシンク24(放熱部)が設けられている。このヒートシンク24は、後述するように、充電器2の筐体23において高熱伝導率樹脂によって構成されている部分に対して熱的に接続されている。
【0032】
機器3は、受電側コイル11と、該受電側コイル11から電池4に流れる電流等を制御するための制御回路12と、該受電側コイル11及び制御回路12が収納される筐体13とを備えている。この筐体13も、上述の充電器2の筐体23と同様、例えばPC樹脂によって構成されていて、一部に、他の部分よりも熱伝導率の高い高熱伝導率樹脂が用いられている。なお、詳しくは後述するように、機器3の筐体13は、充電器2の筐体23と接触する部分が上述の高熱伝導率樹脂によって構成されている。また、受電側コイル11は、この高熱伝導率樹脂によって構成されている部分に対して熱的に接続されるように、筐体13内に配置されている。
【0033】
電池4は、特に図示しないが、例えば、有底円筒状の2つの部材を組み合わせることによって円柱状に形成されるケースを有している。このケース内には、平板状の正極及び負極が交互に複数積層されてなる電極体が収納されている。
【0034】
正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を、アルミニウム等の金属箔製の正極集電体の両面にそれぞれ設けたものである。詳しくは、正極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有酸化物である正極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む正極合剤を、アルミニウム箔などからなる正極集電体上に塗布して乾燥させることによって形成される。正極活物質であるリチウム含有酸化物としては、例えば、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物やLiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物等のリチウム複合酸化物を用いるのが好ましい。なお、正極活物質として、1種類の物質のみを用いてもよいし、2種類以上の物質を用いてもよい。また、正極活物質は、上述の物質のものに限られない。
【0035】
負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を、銅等の金属箔製の負極集電体の両面にそれぞれ設けたものである。詳しくは、負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む負極合剤を、銅箔などからなる負極集電体上に塗布して乾燥させることによって形成される。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料(黒鉛類、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類など)を用いるのが好ましい。負極活物質は、上述の物質のものに限られない。
【0036】
したがって、本実施形態における電池4は、リチウムイオンによって電子を正極と負極との間で移動させることにより充放電を行う、いわゆるリチウムイオン電池である。
【0037】
なお、各正極は、電池4のケースを構成する一方の部材に電気的に接続されている。一方、各負極は、電池4のケースを構成する他方の部材に電気的に接続されている。これにより、電池4の内部の電極体は、電池4のケースに対して電気的に接続されている。
【0038】
(冷却構造)
次に、上述のような構成を有する充電システム1の冷却構造について図1を用いて説明する。
【0039】
充電システム1では、充電器2の筐体23及び機器3の筐体13に、それぞれ、他の部分よりも熱伝導率の高い高熱伝導率材料によって構成された接触部23a,13aが形成されている。これらの接触部23a,13aは、それぞれ、筐体23,13の一部を構成している。なお、機器3の筐体13に設けられた接触部13aが、本発明の熱伝導部に対応する。
【0040】
既述のとおり、充電器2の給電側コイル21は、筐体23の接触部23aに対して熱的に接続されるように、該筐体23内に配置されている。また、機器3の受電側コイル11は、筐体13の接触部13aに対して熱的に接続されるように、該筐体13内に配置されている。これにより、充電器2の給電側コイル21で発生した熱は、筐体23の接触部23aに伝わるとともに、機器3の受電側コイル11で発生した熱は、筐体13の接触部13aに伝わる。
【0041】
ここで、上述の充電システム1では、機器3は、筐体13の接触部13aが充電器2における筐体23の接触部23aと当接するように、該充電器2上に載置される。これにより、充電器2の給電側コイル21の上方に機器3の受電側コイル11が位置することになり、充電器2から機器3側に効率良く電力を供給することができる。加えて、機器3で発生した熱を、該機器3の筐体13の接触部13aを介して充電器2の筐体23の接触部23aに効率良く伝えることができる。
【0042】
充電器2の筐体23内に配置されるヒートシンク24は、該筐体23の接触部23aに熱的に接続されている。これにより、該接触部23aの熱は、ヒートシンク24から外部へ放熱される。充電器2の筐体23の接触部23aには、該充電器2の給電側コイル21で発生した熱が伝わるとともに、機器3の受電側コイル11で発生した熱も該機器3の筐体13の接触部13aを介して伝わる。これらの熱が、筐体23の接触部23aに熱的に接続されたヒートシンク24を介して外部へ放熱される。
【0043】
充電器2の筐体23の接触部23a及び機器3の筐体13の接触部13aを構成する高熱伝導率樹脂は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)をベースとして、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(SiN)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、結晶性の二酸化ケイ素(SiO)または溶融性の二酸化ケイ素(SiO)等の高熱伝導率のフィラーを添加したものである。このようにPPS樹脂をベースとすることで、上述のようなフィラーを添加しても流動性が高いため、優れた成形性を有するとともに形成された樹脂も或る程度の強度を有する。
【0044】
ここで、上述の高熱伝導率樹脂は、熱伝導率が、ベース樹脂に絶縁性フィラーを添加した一般的な熱伝導性樹脂の熱伝導率(1.0W/m・K)の値以上であるのが好ましい。より好ましくは、高熱伝導率樹脂は、熱伝導率がガラスの熱伝導率(約1.5W/m・K)以上である。さらに好ましくは、熱伝導率が10W/m・K以上である。このように10W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂は、一般的に超高熱伝導性樹脂と呼ばれ、チタン(Ti)と同等以上の熱伝導性を有する。この超高熱伝導性樹脂は、内部に、Ag、Bi、Al、Mg、Zn、Sn等の合金からなる低融点合金によって構成される金属相を有し、該金属相が伝熱経路を構成している。なお、筐体13,23に使用するPC樹脂の熱伝導率は約0.2W/m・Kである。
【0045】
また、充電器2の筐体23の接触部23a及び機器3の筐体13の接触部13aは、それぞれ、接触面の表面粗さが算術平均粗さRaで1μm以下が好ましい。すなわち、接触面の表面粗さは、通常の接触面の表面粗さ(Raで1μmよりも大きい表面粗さ)ではなく、摺動面の表面粗さと同程度に設定されるのが好ましい。このような表面粗さにすることで、充電器2の接触部23aと機器3の接触部13aとの接触面積を増大させることができ、該機器3から充電器2に効率良く熱を伝えることができる。したがって、機器3で発生する熱を効率良く外部に放熱することができる。なお、接触面の表面粗さはRaで0.4μm以下がより好ましい。
【0046】
(実施形態1の効果)
以上より、この実施形態では、充電器2側のみに放熱手段としてのヒートシンク24を設けるとともに、該ヒートシンク24に充電器2及び機器3の熱を伝えるように構成した。これにより、機器3に放熱手段を設けることなく、該機器3内で発生する熱を外部に放熱することができる。したがって、機器3の大型化を抑制しつつ、該機器3の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
しかも、充電器2の筐体23の接触部23a及び機器3の筐体13の接触部13aは、高熱伝導率樹脂によって構成されるため、該接触部23a,13aによって効率良く熱を伝達することができるとともに、それ以外の部分に熱が伝わるのを防止できる。したがって、充電器2の筐体23および機器3の筐体13において、高熱伝導率樹脂によって構成された部分以外に熱が伝わって、充電器2や機器3内の構成部品が高温になるのを防止できる。
【0048】
(実施形態1の変形例)
図2に、実施形態1の変形例を示す。この変形例では、充電器2と機器3との接触部分だけではなく、該充電器2及び機器3の各筐体の一部を構成する部品全体が高熱伝導率樹脂によって形成されている。なお、図2には、一例として、機器3の筐体に適用した場合を示すが、充電器2の筐体にも同様に適用することができる。
【0049】
詳しくは、筐体16は、図2の上半分を構成する上部筐体14と、図2の下半分を構成する下部筐体15とからなる。すなわち、これらの上部筐体14と下部筐体15とを組み合わせることによって、筐体16が構成される。そして、充電器2の筐体23に接触する下部筐体15のみを、実施形態1で用いた高熱伝導率樹脂によって構成する。
【0050】
これにより、通常の樹脂(例えばPC樹脂)によって構成される上部筐体14と、高熱伝導率樹脂によって構成される下部筐体15とを組み合わせることにより、充電器2の筐体23に接触する部分が高熱伝導率樹脂によって構成される筐体16を容易に実現することができる。
【0051】
[実施形態2]
図3に、実施形態2にかかる充電システムの充電器30の概略構成を示す。この充電器30は、機器3との接触面に風を送る送風機構35を備えている点を除いて、上述の実施形態1と同じ構成を有する。したがって、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、機器3の構成は、上述の実施形態1と同一であるため、図示及び説明を省略する。
【0052】
具体的には、充電器30は、機器3が接触する筐体31の接触部31aに対して、風を送るための送風機構35(送風部)を有している。この送風機構35は、例えば、ファンなどのような送風手段によって構成される。送風機構35は、充電器30の筐体31内に配置されている。そのため、充電器30の筐体31には、接触部31aが設けられている面に、送風機構35から排出される風を該接触部31aに送るための吹き出し口31bが設けられている。具体的には、この吹き出し口31bは、筐体31に設けられた貫通穴31cと、該貫通穴31cの周縁部に筐体31の接触部31a側に向かって風を流すように設けられたガイド部31dとによって構成される。なお、図3において、風の流れを矢印で示す。
【0053】
(実施形態2の効果)
以上より、この実施形態によれば、充電器30に、機器3が接触する筐体31の接触部31aに風を送る送風機構35を設けたため、該接触部31aを効率良く冷却することができる。これにより、機器3や充電器30内で発生した熱を、充電器30内のヒートシンク24だけでなく、筐体31の接触部31aからも放熱することができる。したがって、機器3及び充電器30をより効率良く冷却することができる。
【0054】
[実施形態3]
図4に、実施形態3にかかる充電システム50の充電器40の概略構成を示す。この充電器40は、接触部41aに機器3を吸着させるための吸着機構45を備えている点を除いて、上述の実施形態1と同じ構成を有する。したがって、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、機器3の構成は、上述の実施形態1と同一であるため、説明を省略する。
【0055】
具体的には、図4に示すように、充電器40の筐体41内には、該筐体41の接触部41aに機器3を吸着させるための吸着機構45(吸着部)が設けられている。この吸着機構45は、例えばポンプ等によって構成される吸引部46と、該吸引46に接続された複数の吸引配管47とを備えている。各吸引配管47は、筐体41の接触部41aに設けられた複数の吸引口41bに繋がっている。図5に一例を示すように、吸引口41bは、平面視で、矩形状の接触部41aの四隅に設けられている。
【0056】
このような構成において、吸引部46が駆動すると、該吸引部46によって吸引配管47の内部の空気が吸引されるため、筐体41の接触部41aに設けられた複数の吸引口41bから吸引部46に向かって空気が吸引される。これにより、吸引口41bの周りに吸引力が生じるため、筐体41の接触部41a上に位置する機器3を、該接触部41a側(図4の白抜き矢印方向)に吸着させることができる。したがって、該機器3の筐体13の接触部13aと充電器40の筐体41の接触部41aとを密着させることができる。
【0057】
なお、吸着機構45の吸引部46は、機器3内の電池4に充電を行う際にのみ空気を吸引するように制御される。したがって、吸引部46は、機器3の電池4に対する充電が完了した場合には、動作を停止する。
【0058】
(実施形態3の効果)
以上より、この実施形態によれば、充電器40に、筐体41の接触部41aに機器3を吸着させるための吸着機構45を設けたため、該機器3の筐体13の接触部13aを充電器40の筐体41の接触部41aにより確実に密着させることができる。これにより、機器3で発生した熱を、該機器3の筐体13の接触部13a及び充電器40の筐体41の接触部41aを介して、該充電器40内のヒートシンク24に、より確実に伝えることができる。したがって、機器3内の熱を、充電器40側のヒートシンク24によってより効率良く外部に放熱することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0060】
前記各実施形態では、非接触で電力を授受する構成として、電磁誘導方式の構成について説明した。しかしながら、非接触で電力を授受できる構成であれば、電波方式など他の構成であってもよい。
【0061】
前記各実施形態では、充電器2,30,40の接触部23a,31a,41a及び機器3の接触部13aを、高熱伝導率樹脂によって構成している。しかしながら、機器3の熱を効率良く充電器2,30,40側に伝えることができる材料であれば、金属など他の材料によって接触部13a,23a,31a,41aを構成してもよい。
【0062】
前記各実施形態では、接触部13a,23a,31a,41aを、高熱伝導率樹脂によって構成している。しかしながら、接触部13a,23a,31a,41aを熱伝導性のエラストマーによって構成してもよい。この場合には、機器3を充電器2,30,40上に置いたときに、接触部13a,23a,31a,41aが変形するため、該機器3と充電器2,30,40とをより確実に密着させることができる。したがって、機器3の接触部13aと充電器2,30,40の接触部13a,23a,31a,41aとの間の空気層を小さくすることができ、熱伝導に対する該空気層の影響を小さくすることができる。よって、機器3の熱を、充電器2,30,40側に効率良く伝えて外部へ効率良く放熱することができる。なお、上述の熱伝導性のエラストマーとは、シリコン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム等に、酸化アルミや窒化ホウ素等の熱伝導物質が充填された材料である。
【0063】
前記各実施形態では、高熱伝導率樹脂によって、充電器2,30,40及び機器3の筐体23,31,41,13の一部分を構成している。しかしながら、高熱伝導率樹脂によって、筐体23,31,41,13全体を構成してもよい。
【0064】
前記各実施形態では、電池4をリチウムイオン電池として構成している。しかしながら、電池4は、充電可能な二次電池であれば、リチウムイオン電池以外の電池であってもよい。また、電池の形状もコイン状に限らず、円柱状や直方体状など、どのような形状であってもよい。
【0065】
前記実施形態2では、送風機構35としてファンを用いているが、この限りではなく、充電器30の接触部31aに対して風を送ることができる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0066】
前記実施形態3では、吸着機構45を、筐体41の接触部41aに設けられた吸引口41bから吸引部46によって空気を吸引する構成としている。しかしながら、例えば、接触部表面に機器3が吸着しやすい材料を設けたり、接触部と機器3との間に両者を吸着させるような材料を配置したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明による充電ユニットは、電池及び受電部を有する受電装置と、該受電部に非接触で電力を供給する給電部を有する給電装置とを備えた構成に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,50 充電システム、2,30,40 充電器(給電装置)、3 機器(電気機器)、4 電池、10 充電ユニット(受電装置)、11 受電側コイル(受電部)、13,23,31,41 筐体、13a 接触部(熱伝導部)、21 給電側コイル(給電部)、23a,31a,41a 接触部、24 ヒートシンク(放熱部)、31b 吹き出し口、35 送風機構(送風部)、45 吸着機構(吸着部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を受電するための受電部、及び該受電部によって受電した電力により充電される電池を有する受電装置と、
前記受電装置の受電部に対して非接触で給電を行う給電部を有する給電装置と、を備え、
前記受電装置には、該受電装置内で発生した熱を前記給電装置に伝えるように、該給電装置と接触する部分に熱伝導部が設けられていて、
前記給電装置は、前記受電装置の熱伝導部と接触する接触部と、該接触部に熱的に接続されていて、該接触部の熱を外部へ放熱するための放熱部とを有している、充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムにおいて、
前記受電部は、前記受電装置の熱伝導部に熱的に接続されていて、
前記給電部は、前記給電装置の放熱部に熱的に接続されている、充電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の充電システムにおいて、
前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、熱伝導率が1.0W/m・K以上の材料によって構成されている、充電システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、それぞれ、該受電装置及び給電装置の筐体の一部に設けられていて、
前記熱伝導部及び接触部は、前記受電装置及び給電装置の筐体における他の部分に比べて熱伝導率が高い材料によって構成されている、充電システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、それぞれ、接触面の算術平均粗さが1μm以下である、充電システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記受電装置の熱伝導部及び前記給電装置の接触部は、熱伝導性のエラストマーによって構成される、充電システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記給電装置は、前記接触部の接触面に風を送るための送風部を有する、充電システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記給電装置は、前記接触部の接触面上に前記受電装置を吸着させるための吸着部を有する、充電システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の充電システムにおいて、
前記受電装置の受電部及び前記給電装置の給電部は、電磁誘導によって電力の授受を行うように、それぞれ、コイルによって構成されている、充電システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の受電装置を備えている、電気機器。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一つに記載の給電装置を備えている、充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−130177(P2012−130177A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280302(P2010−280302)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】