説明

充電システムおよび電子機器

【課題】電子機器の内蔵電源の劣化度合を的確に推定することが可能な充電システムを提供する。
【解決手段】充電システム100は、充電可能な内蔵電源24を内蔵する電子機器1と、内蔵電源24に対して少なくとも充電電流が一定になるように充電を行う定電流充電を行い、電子機器1の内蔵電源24への充電を制御する充電制御回路80と、充電制御回路80を介して電子機器1の内蔵電源24に電力を供給する充電装置60と、内蔵電源24に充電されている充電電圧Vに基づいて内蔵電源24の劣化度合を推定する推定手段22とを備え、推定手段22は、充電制御回路80が定電流充電を行う際に、所定時間ΔTthが経過した時点での充電電圧Vの上昇分ΔVに基づいて内蔵電源24の容量Cを算出し、算出した容量Cの、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinに対する比C/Cinを算出して、内蔵電源24の劣化度合を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システムおよび電子機器に係り、特に充電装置で電子機器の内蔵電源を充電する充電システムや充電装置により内蔵電源が充電される電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に内蔵された充電可能な内蔵電源(バッテリや二次電池、蓄電デバイス等ともいう。)を充電するための充電制御回路を備えた電子機器や充電装置が種々開発されている(例えば特許文献1〜4等参照)。
【0003】
このような充電制御回路では、内蔵電源に一定の電流を供給して定電流充電を行ったり、一定の電圧を供給して定電圧充電を行ったり、或いはそれらの充電の仕方を組み合わせて充電が行われるようになっている。なお、充電制御回路が電子機器側に内蔵されている場合もあり、また、充電装置側に内蔵されている場合もある。
【0004】
ところで、上記のような内蔵電源が故障してしまうと、内蔵電源を内蔵する電子機器が動作しなくなったり、或いは、異常な動作をするようになったりする場合がある。そこで、内蔵電源の故障等を的確に検出するための技術が種々開発されている。
【0005】
例えば、特許文献5では、制御回路で、内蔵電源(蓄電部)を定電流充電する際に、内蔵電源に充電されている電圧が所定の電圧幅だけ変化するまでに要した時間を計測し、当該時間が予め設定された時間以下になる等した場合に、内蔵電源に故障等の異常が生じていると判断する蓄電装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献6では、電子機器の内蔵電源の充電時や放電時に、内蔵電源に充電されている電圧が全く或いはほとんど変化しなかったり、逆に異常に急激に変化したような場合に、故障を検知する故障検知手段を備えた蓄電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−77501号公報
【特許文献2】特開2008−104270号公報
【特許文献3】特開2007−306654号公報
【特許文献4】特開2006−33917号公報
【特許文献5】特開2009−92628号公報
【特許文献5】特開2005−253283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献5や特許文献6に記載された手法では、内蔵電源等に故障があるかないかを判断したり検知したりするだけであり、故障や使用不能状態にまでは至らないまでも、内蔵電源の劣化がどの程度進んでいるかを推定することができない。
【0009】
充電や放電が繰り返されて内蔵電源が経年的に劣化すると、内蔵電源に充電できる電気の量(すなわち内蔵電源から放電できる電気の量)が減り、1回の充電あたりの電子機器の駆動時間が短くなったり、1回の充電あたりに電子機器が行うことができる処理の量が低減する場合がある。
【0010】
このような場合、ユーザが電子機器の内蔵電源を頻繁に充電することが必要になる。また、電子機器を使用している最中に内蔵電源が消耗してしまい、目的の処理を行うことができなくなってしまう場合もある。これでは、電子機器がユーザにとって使い勝手が悪いものとなる。
【0011】
本発明は、上記の各問題点を鑑みてなされたものであり、電子機器の内蔵電源の劣化度合を的確に推定することが可能な充電システムおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題を解決するために、本発明の充電システムは、
充電可能な内蔵電源を内蔵する電子機器と、
前記内蔵電源に対して、少なくとも充電電流が一定になるように充電を行う定電流充電を行い、前記電子機器の前記内蔵電源への充電を制御する充電制御回路と、
前記充電制御回路を介して前記電子機器の前記内蔵電源に電力を供給する充電装置と、
前記内蔵電源に充電されている充電電圧に基づいて前記内蔵電源の劣化度合を推定する推定手段と、
を備え、
前記推定手段は、前記充電制御回路が定電流充電を行う際に、所定時間が経過した時点での前記充電電圧の上昇分に基づいて前記内蔵電源の容量を算出し、算出した前記容量の、前記内蔵電源が劣化していない状態での容量に対する比を算出して、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電子機器は、
充電可能な内蔵電源と、
前記内蔵電源に対して、少なくとも充電電流が一定になるように充電を行う定電流充電を行い、前記電子機器の前記内蔵電源への充電を制御する充電制御回路と、
前記充電制御回路を介して前記電子機器の前記内蔵電源に電力を供給する充電装置と、
前記内蔵電源に充電されている充電電圧に基づいて前記内蔵電源の劣化度合を推定する推定手段と、
を備える電子機器において、
前記推定手段は、前記充電制御回路が定電流充電を行う際に、所定時間が経過した時点での前記充電電圧の上昇分に基づいて前記内蔵電源の容量を算出し、算出した前記容量の、前記内蔵電源が劣化していない状態での容量に対する比を算出して、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のような方式の充電システムおよび電子機器によれば、放射線画像撮影装置等の電子機器の内蔵電源の劣化度合を的確に推定することが可能となる。そして、電子機器のユーザが内蔵電源の劣化度合を任意のタイミングで認知することが可能となるとともに、内蔵電源の劣化が進んだ場合には、電子機器側からユーザに内蔵電源の交換を的確に知らせること等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子機器の例としての放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図1の放射線画像撮影装置の回路構成を表すブロック図である。
【図4】充電制御回路の回路構成を表すブロック図である。
【図5】定電流充電および定電圧充電における充電電流および充電電圧の値の時間的な変化等を表すグラフである。
【図6】推定手段としての制御手段の制御構成を説明するためのブロック図である。
【図7】第1の実施形態における(A)電子機器の使用開始後、および(B)電子機器の工場出荷時等における充電時間と充電電圧との関係等を表すグラフである。
【図8】ケーブルを接続した状態の放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図9】第2の実施形態における(A)電子機器の工場出荷時等、および(B)電子機器の使用開始後における充電時間と充電電圧との関係等を表すグラフである。
【図10】第3の実施形態において電子機器の内蔵電源の故障検知処理で(A)内蔵電源に供給される電流、および(B)内蔵電源の充電電圧の時間的な推移を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る充電システムおよび電子機器の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
なお、以下では、電子機器が放射線画像撮影装置(Flat Panel Detector:FPD)であり、充電装置がクレードルである場合について説明するが、本発明は、この形態に限定されない。また、以下では、充電制御回路80(後述する図4参照)が、電子機器(放射線画像撮影装置1)に内蔵されている場合について説明するが、充電装置(クレードル)側に設けられていてもよい。
【0018】
[第1の実施の形態]
[電子機器の例としての放射線画像撮影装置の構成例について]
ここで、まず、電子機器の例として、放射線画像撮影装置1の構成例について簡単に説明する。図1は、放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
【0019】
放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されて構成されている。本実施形態では、筐体2は、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで形成されている。
【0020】
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、内蔵電源24(図2や後述する図3参照)の状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。なお、後述するように、本実施形態では、コネクタ39が後述するクレードル60のコネクタ62(後述する図4等参照)と接続することで、充電装置としてのクレードル60から放射線画像撮影装置1に電力が供給されて充電が行われるようになっている。
【0021】
また、図示を省略するが、本実施形態では、筐体2の反対側の蓋部材2Cに、放射線画像撮影装置1が外部装置と信号等の送受信を無線方式で行うためのアンテナ装置41(後述する図3参照)が、例えば蓋部材2Cに埋め込まれるようにして設けられている。
【0022】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や内蔵電源24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されており、センサパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0023】
図示を省略するが、基板4の検出部P上には、フォトダイオード等からなる複数の放射線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列されており、各放射線検出素子7にスイッチ手段としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8や走査線5、信号線6、バイアス線9等が接続されている。また、シンチレータ3が、基板4の検出部Pに対向するように設けられるようになっている。
【0024】
放射線画像撮影装置1の回路構成を、図3に示すブロック図を用いて説明する。本実施形態では、複数の放射線検出素子7が基板4上に二次元状に配列されて検出部Pが形成されている。また、各放射線検出素子7の第2電極7bにはそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。そして、バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧を印加するようになっている。
【0025】
走査駆動手段15では、電源回路15aからゲートドライバ15bに配線15cを介してオン電圧やオフ電圧が供給され、ゲートドライバ15bで走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて、各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えることで、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理等を行うようになっている。
【0026】
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されており、読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。
【0027】
そして、例えば、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理の際には、ゲートドライバ15bからオン電圧が印加された走査線5に接続されているTFT8がオン状態になり、オン状態になったTFT8に接続されている放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出され、放出された電荷が読み出し回路17の増幅回路18で電荷電圧変換される。
【0028】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路19で、放射線検出素子7から電荷が放出される前後の増幅回路18からの出力値の差分を算出し、算出した差分をアナログ値の画像データとして出力する。そして、出力されたアナログ値の画像データが、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて出力され、記憶手段23に順次保存される。このようにして、各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理が順次行われる。
【0029】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたマイクロコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。
【0030】
また、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、前述した電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、インジケータ40(図1参照)等も接続されている。
【0031】
また、制御手段22には、制御手段22や走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するための内蔵電源24が接続されている。本実施形態では、内蔵電源24として、リチウムイオンキャパシタ(LIC)が用いられているが、本発明はこれに限定されず、充電可能な内蔵電源であれば、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスやリチウムイオンバッテリ等のバッテリや二次電池等であってもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、内蔵電源24に充電されている充電電圧V等に基づいて内蔵電源24の劣化度合を推定する推定手段として機能するようになっているが、この点については後で説明する。
【0033】
[充電制御回路の構成について]
次に、本実施形態の放射線画像撮影装置1に設けられている充電制御回路80の構成等について説明する。図3では図示を省略したが、本実施形態では、内蔵電源24には、内蔵電源24への充電を制御する充電制御回路80が接続されている。図4は、充電制御回路80の回路構成を概略的に表すブロック図である。
【0034】
図4に示すように、本実施形態では、充電制御回路80は、主に、接続されたコネクタ39、62を介してクレードル60の定電圧電源61から供給された電力を放射線画像撮影装置1の内蔵電源24に供給する配線としての充電電流経路81と、内蔵電源24への充電を制御する充電制御部82とを備えて構成されている。また、本実施形態では、充電制御部82には、少なくとも充電電圧検出部83と、充電電流検出部84と、スイッチング制御部85とが設けられている。
【0035】
充電制御回路80では、充電電流経路81上には第1スイッチ素子86が、充電電流経路81から分岐してグランド(GND)に接続されている配線88上には第2スイッチ素子87がそれぞれ設けられている。そして、第1スイッチ素子86および第2スイッチ素子87は、それぞれ電界効果トランジスタ(Field effect transistor:FET)で構成されており、また、それぞれスイッチング制御部85によりそれらのオン/オフ動作が制御されるようになっている。
【0036】
また、充電電流経路81にはインダクタ(コイルともいう。)89が挿入されており、また、充電電流経路81とグランド(GND)との間にコンデンサ90が設けられている。そして、スイッチング制御部86による第1スイッチ素子87aや第2スイッチ素子87bのオン/オフにインダクタ89のインダクタンス(inductance)成分により蓄えられるエネルギを制御することにより、充電電流Iおよび充電電圧Vを制御する。コンデンサ90は、内蔵電源24への出力に対してローパスフィルタ状に機能して、充電電圧Vを平滑化するようになっている。
【0037】
充電電流経路81には、さらに充電電流検出用の抵抗部91が挿入されている。また、充電電流検出用の抵抗部91は、その両極が充電電流検出部84に接続されており、充電電流検出部84によって充電電流検出用の抵抗部91の両極間の電位差Δvが検出されるようになっている。そして、この電位差Δvが、Δv=IRの関係により充電電流経路81を流れる充電電流Iに相当する値として検出されるようになっている。
【0038】
また、充電電流経路81は、放射線画像撮影装置1の内蔵電源24の一方の充電端子に接続されており、内蔵電源24の他方の充電端子は、充電制御回路80のグランド(GND)に接続されている。また、充電制御回路80内では、充電電流経路81とグランド(GND)とが2つの抵抗92a、92bを介して接続されており、2つの抵抗92a、92bの間に接続された配線93が充電電圧検出部83に接続されている。そして、充電制御部82の充電電圧検出部83で、内蔵電源24に充電されている充電電圧Vが検出されるようになっている。
【0039】
そして、充電電圧検出部83で検出された内蔵電源24に充電されている充電電圧Vの情報や、充電電流検出部84で検出された充電電流検出用の抵抗部91の両極間の電位差Δvの情報(すなわち充電電流経路81を流れる充電電流Iの情報)が、充電制御部82のスイッチング制御部85に送られるようになっている。
【0040】
充電制御部82のスイッチング制御部85は、充電電圧検出部83からもたらされる内蔵電源24に充電されている充電電圧Vの情報や、充電電流検出部84からもたらされる充電電流検出用の抵抗部91の両極間の電位差Δvの情報(すなわち充電電流経路81を流れる充電電流Iの情報)に応じて、充電電流経路81を介して内蔵電源24に供給される充電電流Iを制御するようになっている。
【0041】
そして、スイッチング制御部85は、フィードバックされたそれらの情報に応じて第1スイッチ素子86および第2スイッチ素子87のオン/オフ動作を制御して、充電装置であるクレードル60の定電圧電源61から供給される電力の内蔵電源24への供給を制御するようになっている。
【0042】
[充電制御回路における内蔵電源の充電制御について]
本実施形態では、充電制御回路80は、電子機器である放射線画像撮影装置1の内蔵電源24の充電の仕方を、図5に示すように、充電電流Iが一定になるように充電を行う定電流充電を行った後、充電電圧Vが一定になるように充電を行う定電圧充電に切り替えるようになっている。
【0043】
具体的には、充電制御回路80のスイッチング制御部85は、充電電圧検出部83が検出した内蔵電源24に充電されている充電電圧V(図5の右側の目盛りおよび破線参照)が予め設定された目標電圧Vよりも小さい場合には、充電電流検出部84が検出する充電電流検出用の抵抗部91の両極間の電位差Δvが、設定された電流値(例えば10[A])に相当する電位差になるように、第1スイッチ素子86と第2スイッチ素子87のオン/オフ動作を制御して定電流充電を行う。
【0044】
そして、上記のようにして定電流充電を行い、充電電圧検出部83が検出した内蔵電源24の充電電圧Vが目標電圧Vに達すると、図5に示すように、スイッチング制御部85は、今度は、内蔵電源24に対する充電の仕方を定電圧充電に切り替える。
【0045】
上記のように定電流充電を行って、充電電圧検出部83が検出した内蔵電源24の充電電圧Vが目標電圧Vに達したとしても、内蔵電源24内部や充電電流経路81等の抵抗による電圧降下が存在するため、内蔵電源24の実際の充電電圧Vは、実際には目標電圧Vには達していない。
【0046】
そこで、スイッチング制御部85は、充電の仕方を切り替えた後の定電圧充電時には、充電電圧検出部83が検出する内蔵電源24の充電電圧Vが目標電圧Vを越えずに目標電圧Vを維持するように第1スイッチ素子86と第2スイッチ素子87のオン/オフ動作を制御しながら定電圧充電を行う。
【0047】
そして、スイッチング制御部85は、充電電流検出部84が検出する充電電流検出用の抵抗部91の両極間の電位差Δvが次第に減少し、充電電流経路81中を流れる充電電流Iが非常に小さくなってそれに対応する電位差Δvが予め設定された閾値Δvth以下になった時点で、内蔵電源24の充電を終了するようになっている(図5の時刻t1参照)。
【0048】
[推定手段による内蔵電源の劣化度合の推定処理について]
次に、推定手段による内蔵電源24の劣化度合の推定処理について説明する。また、それとあわせて、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1(電子機器)や充電システム100(図4や後述する図6参照)の作用について説明する。
【0049】
上記のような構成において、本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1(電子機器)の各機能部の動作を制御する制御手段22が、内蔵電源24に充電されている充電電圧V等に基づいて内蔵電源24の劣化度合を推定する推定手段としての機能を兼ねるように構成されている。以下、この点について説明する。
【0050】
なお、放射線画像撮影装置1(電子機器)の内蔵電源24の劣化の形態としては、主に、内蔵電源24の容量Cが減少していく場合と、内蔵電源24の内部抵抗が増大していく場合とがあるが、本発明では、内蔵電源24の容量Cの減少の度合を劣化度合として推定する場合を対象としている。
【0051】
また、本実施形態のように放射線画像撮影装置1の制御手段22が推定手段としての機能を兼ねるように構成する代わりに、例えば、充電制御回路80がCPUを搭載する等して設けることも可能であり、必ずしも制御手段22が推定手段としての機能を兼ねるように構成する必要はない。
【0052】
図6は、推定手段としての制御手段22の制御構成を説明するためのブロック図である。図3や図4では図示を省略したが、本実施形態での電子機器である放射線画像撮影装置1では、図6に示すように、内蔵電源24と制御手段22との間に放射線画像撮影装置1用の電源生成回路25が設けられている。
【0053】
電源生成回路25は、内蔵電源24から供給される電力を、制御手段22やセンサパネルSPにおける走査駆動手段15や読み出し回路17、バイアス電源14(図3参照)等の各機能部に供給する際に、各機能部で要求される適切な状態に電力を生成して供給するようになっている。
【0054】
そして、前述したように、充電制御回路80が充電装置であるクレードル60から供給された充電電流Iを内蔵電源24に供給して内蔵電源24を充電する際には、その充電電流Iの一部が電源生成回路25にも供給されるようになっている。そして、電源生成回路25は、供給された充電電流Iの一部を、制御手段22等の各機能部で必要な形の電流に変換して供給するようになっている。
【0055】
なお、以下では、電源生成回路25に供給される充電電流Iの一部を、充電の際に放電される電流という意味で放電電流Idという。また、充電制御回路80が定電流充電を行う際に予め設定される電流値(例えば10[A])を充電電流設定値Icsetという。
【0056】
このように定義した場合、定電流充電時に、内蔵電源24には、充電制御回路80から出力された充電電流設定値Icsetから放電電流Id分だけ減少した電流が供給される。そのため、内蔵電源24には、
Ic=Icset−Id …(1)
の電流Icが供給されることになる。
【0057】
また、その際、充電制御回路80から電源生成回路25に供給される放電電流Idの量は、充電時における放射線画像撮影装置1の各機能部の稼動状況によって変わり得る。しかし、放射線画像撮影装置1がクレードル60に挿入されて充電されている場合に充電に関与する機能部は決まっており、各機能部で消費される電力も同じ値になる。
【0058】
そのため、放射線画像撮影装置1をクレードル60で充電するごとに、放電電流Idは同じ値になるため、少なくともクレードル60で放射線画像撮影装置1の内蔵電源24を充電する場合、内蔵電源24に供給される上記の電流Icは、充電を行うごとに同じ値になる。
【0059】
なお、後述するように、放射線画像撮影装置1がクレードル60以外の充電装置により充電される場合もあり、各機能部の稼動状況も変わり得るため、充電に使用される充電装置や放射線画像撮影装置1の各機能部の稼動状況等に応じて上記の放電電流Idは変わり得る。しかし、上記と同様に、同じ充電装置を用い、放射線画像撮影装置1の各機能部の稼動状況が同じ状況であれば、放電電流Idの値は同じ値になり、内蔵電源24に供給される上記の電流Icも同じ値になる。
【0060】
一方、本実施形態では、図6に示すように、内蔵電源24に充電されている充電電圧Vの情報が、推定手段としての制御手段22に入力されるようになっている。なお、図6では、充電電圧Vの情報を内蔵電源24から直接入手する場合が示されているが、例えば、前述した充電制御回路80の充電電圧検出部83が検出した内蔵電源24の充電電圧Vの情報を、充電制御回路80から制御手段22に送信するように構成することも可能である。
【0061】
そして、制御手段22は、上記のように充電制御回路80が定電流充電を行う際に、所定時間ΔTthが経過した時点での上記の充電電圧Vの上昇分ΔVに基づいて、内蔵電源24の現状での容量Cを算出し、算出した容量Cの、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinに対する比C/Cinを算出して、内蔵電源24の劣化度合を推定するようになっている。
【0062】
なお、本実施形態では、制御手段22を構成するマイクロコンピュータでソフトウエア的に処理して内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成されているが、例えば、制御手段22のFPGAの部分に推定手段としての機能を有する回路を構築する等して、この推定処理をハードウエア的に行うように構成することも可能である。
【0063】
本実施形態では、この推定処理は、具体的には例えば以下のようにして行われる。
【0064】
すなわち、制御手段22は、放射線画像撮影装置1が充電装置であるクレードル60に挿入されて定電流充電が開始された時点での内蔵電源24の充電電圧Vを読み取って、充電電圧V1として記憶する。また、その時点で、経過時間ΔTのカウントをリセットした後、経過時間ΔTのカウントを開始する。
【0065】
そして、図7(A)に示すように、経過時間ΔTが所定時間ΔTthになった時点、すなわち所定時間ΔTthが経過した時点で、内蔵電源24に充電されている充電電圧Vを読み取って、充電電圧V2として記憶する。制御手段22は、この充電電圧V2を記憶すると、
ΔV=V2−V1 …(2)
の演算を行って、上記の充電電圧Vの上昇分ΔVを算出する。
【0066】
この所定時間ΔTthの間に内蔵電源24に供給された電流Icは、上記(1)式に示したように充電電流設定値Icsetから放電電流Id分だけ減少した電流Ic(すなわちIcset−Id)であるため、内蔵電源24には、上記の所定時間ΔTthの間に、
Q=Ic×ΔTth
=(Icset−Id)×ΔTth …(3)
の電荷Qが供給されることになる。
【0067】
そのため、C=Q/ΔVの関係から、この場合の内蔵電源24の容量Cは、
C=Ic×ΔTth/(V2−V1)
=(Icset−Id)×ΔTth/(V2−V1) …(4)
の演算を行うことにより算出することができる。
【0068】
そこで、制御手段22は、放射線画像撮影装置1をクレードル60に挿入して定電流充電を行う場合の充電電流設定値Icsetおよび放電電流Idの各値、或いはそれらの差分Icset−Idの値を予めメモリに記憶しておく。そして、上記の充電電圧V1、V2を読み取る前や後に、メモリから値Icset、Id或いは差分Icset−Idを読み出して、それらの値を上記(4)式に代入して、内蔵電源24の容量Cを算出するようになっている。
【0069】
一方、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを取得するために、推定手段としての制御手段22は、例えば放射線画像撮影装置1の工場出荷時や病院等の施設への導入時等に、上記の処理を行う。
【0070】
そして、図7(B)に示すように、放射線画像撮影装置1が充電装置であるクレードル60に挿入されて定電流充電が開始された時点での内蔵電源24の充電電圧V1inと、所定時間ΔTthが経過した時点での内蔵電源24に充電されている充電電圧V2inとを読み取り、それらの値と充電電流設定値Icset_inとに基づいて、
Cin=Icin×ΔTth/(V2in−V1in)
=(Icset_in−Idin)×ΔTth/(V2in−V1in) …(5)
の演算を行うことにより、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを算出する。
【0071】
また、制御手段22は、算出した容量Cinを不揮発性メモリに記憶しておく。或いは推定処理をソフトウエア的に行う場合には、予めそのためのプログラム中に上記の値等を書き込んでおく。
【0072】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1が施設に導入された後、上記のようにして、放射線画像撮影装置1が充電装置であるクレードル60に挿入されて定電流充電が行われるごとに推定処理を行い、内蔵電源24の現状での容量Cを算出する。そして、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを不揮発性メモリやプログラム中から読み出して、容量Cinに対する容量Cの比C/Cinを算出して、内蔵電源24の劣化度合を推定するようになっている。
【0073】
制御手段22は、例えば外部の処理装置等から内蔵電源24の劣化度合すなわち上記の比C/Cin(或いは例えばそれを百分率で表した割合)の送信要求があった場合には、その情報を当該処理装置等に送信する。また、放射線画像撮影装置1に表示部(不図示)を設けておき、表示部に、算出した比C/Cin或いはそれを百分率で表した割合等を表示するように構成することも可能である。
【0074】
また、例えば、内蔵電源24の劣化度合すなわち比C/Cinに閾値(例えば0.5(すなわち50%))を設けておき、比C/Cinが閾値以下になった場合(すなわち内蔵電源24の劣化が進んだ場合)に、例えばインジケータ40(図1参照)を特定の色や特定の仕方で発光させる等して警告したり、或いは、放射線画像撮影装置1に設けた表示部に、内蔵電源24を交換すべきこと等を表示するように構成することも可能である。
【0075】
なお、上記のように、放射線画像撮影装置1が充電装置であるクレードル60に挿入されて定電流充電が行われるごとに内蔵電源24の容量Cを算出する代わりに、例えば以下のように処理するように構成することも可能である。
【0076】
すなわち、予め工場出荷時等に推定処理を行う際に、充電電流設定値Icset_inを、放射線画像撮影装置1の施設への導入後に定電流充電を行う際の充電電流設定値Icsetと同じ値にして推定処理を行うようにすると、Icset_in=Icsetとなる。また、工場出荷時等と通常の使用時とで放射線画像撮影装置1における上記の放電電流Idの値が変わらないとすれば、Idin=Idとなる。
【0077】
そのため、上記(4)、(5)式から、上記の比C/Cinは、
C/Cin=(Icset−Id)×ΔTth/(V2−V1)
/{(Icset_in−Idin)×ΔTth/(V2in−V1in)}…(6)
∴C/Cin=(V2in−V1in)/(V2−V1) …(7)
となる。
【0078】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22に、工場出荷時等の充電電圧V1in、V2in或いはそれらの差分V2in−V1inを記憶させておく。そして、放射線画像撮影装置1がクレードル60に挿入されて定電流充電が行われるごとに、制御手段22で、定電流充電開始時の内蔵電源24の充電電圧V1と、所定時間ΔTth経過後の充電電圧V2とを検出して、それらの値と工場出荷時等の充電電圧V1in、V2in或いはそれらの差分V2in−V1inを上記(7)式に代入するように構成する。
【0079】
このように構成すれば、推定手段としての制御手段22が、推定処理において比C/Cinを算出する際に、内蔵電源24の容量Cを算出しなくても、検出した充電電圧V1、V2と記憶している工場出荷時等の充電電圧V1in、V2inを上記(7)式に代入するだけで比C/Cinを算出することが可能となる。そのため、上記のように構成することで、比C/Cinの算出処理を非常に容易に行うことが可能となる。
【0080】
なお、放射線画像撮影装置1に対する定電流充電が開始される時点での内蔵電源24の充電電圧V1が、既に上記の目標電圧Vに近い値である場合、上記の所定時間ΔTthが経過する前に、充電の仕方が定電流充電から定電圧充電に切り替わってしまい、少なくとも所定時間ΔTth経過後の充電電圧V2の情報が制御手段22に入力されなくなる。
【0081】
そのため、上記のように比C/Cinを算出して内蔵電源24の劣化度合を推定することができなくなる。そこで、放射線画像撮影装置1に対する定電流充電開始時点での内蔵電源24の充電電圧V1が所定の電圧値以上である場合には、上記の推定処理を行わないように構成することが可能である。
【0082】
ところで、上記の実施形態では、電子機器としての放射線画像撮影装置1を充電装置としてのクレードル60に挿入して充電する場合について説明したが、例えば、携帯電話を充電ホルダに装填して充電する場合のように、電子機器を充電装置に挿入したり装填したりして充電する場合にも全く同様に適用することができる。
【0083】
そして、この場合、本実施形態における「放射線画像撮影装置1の施設導入後の推定処理」は、ユーザによる使用開始後の携帯電話等の電子機器に対する推定処理と読み替えることができる。従って、以下では、「施設導入後」を「使用開始後」として説明する。
【0084】
[クレードル以外の充電装置で充電する場合について]
一方、電子機器が放射線画像撮影装置1である場合には、放射線画像撮影装置1をクレードル60に挿入して充電する場合だけでなく、例えば図8に示すように、放射線画像撮影装置1のコネクタ39に、ケーブルCaの先端に設けられたコネクタCを接続した状態で、ケーブルCaやコネクタC、39を介して図示しない外部の充電装置から電力を供給して放射線画像撮影装置1を充電する場合もある。
【0085】
そして、このようにして放射線画像撮影装置1にケーブルCaを接続した状態で内蔵電源24の充電を行う場合にも、上記と同様にして、推定手段としての制御手段22で推定処理を行い、比C/Cinを算出して内蔵電源24の劣化度合を推定することが可能である。
【0086】
しかし、上記のように放射線画像撮影装置1をクレードル60に挿入して充電を行う場合には、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影に用いられることはないが、放射線画像撮影装置1にケーブルCaを接続して充電を行う場合には、その状態で放射線画像撮影装置1を用いて放射線画像撮影が行われる場合がある点に注意する必要がある。
【0087】
この場合、例えば、図8に示した状態の放射線画像撮影装置1を図示しないブッキー撮影台に装填してブッキー撮影台の前部に患者を起立させたり、或いは放射線画像撮影装置1を図8に示した状態のまま用い、放射線入射面R上に患者の脚部等の撮影部位を載置する等した状態で、図示しない放射線源から放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0088】
その際、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて放射線画像撮影が行われ、放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7(図3参照)内での電荷の蓄積や画像データの読み出し処理が行われている最中にケーブルCaを介した充電が行われると、読み出される画像データにノイズが重畳される等の問題が生じる。
【0089】
そのため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1にケーブルCaを接続して充電を行っている際に、例えば図示しないコンソールから放射線画像撮影を開始する旨の指示等が送信されてきた場合には、充電制御回路80は充電を停止するようになっている。そして、制御手段22は、充電中に上記の推定処理を行っている最中に例えば上記の指示等が送信されてきて充電が停止された場合には、制御手段22は推定処理を停止し、その回の推定処理を終了するようになっている。
【0090】
すなわち、本実施形態では、撮影時には推定処理は行われず、非撮影時(放射線画像撮影装置1がクレードル60に挿入されている場合を含む。)にのみ、推定処理が行われるようになっている。
【0091】
なお、上記のように放射線画像撮影が開始される場合、放射線画像撮影装置1では、撮影前に、走査駆動手段15や読み出し回路17(図3参照)等の各機能部に電力が供給される。そして、各機能部は、撮影が的確に行われるようにするための所定の動作を行い、例えば各放射線検出素子7内に残存している電荷を除去する各放射線検出素子7のリセット処理等が行われる。
【0092】
このようにして、放射線画像撮影装置1は、放射線の照射を待つ待機状態となる。その際、この待機状態においても、上記のように実際に放射線源から放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるまでの間、すなわち待機状態においても、放射線画像撮影装置1の内蔵電源24に対する充電を行うように構成することも可能である。そして、この待機状態での充電の際にも、推定手段としての制御手段22で上記の推定処理を行うように構成することも可能である。
【0093】
一方、上記のように待機状態にある放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態が続くと、放射線画像撮影装置1では、走査駆動手段15等の各機能部に電力を供給する状態が続き、電力が無駄に消費されてしまう。
【0094】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、電力の消費状態として、上記のように各機能部に電力を供給して放射線の照射を待つ待機状態と、走査駆動手段15等には電力を供給せず、外部から信号を受信するアンテナ装置41(図3参照)や推定手段としての制御手段22等の必要な機能部にのみ電力を供給するスリープ状態(省電力状態等ともいう。)との間で遷移することができるように構成されている。
【0095】
そして、例えば外部装置から覚醒信号(wake up信号等ともいう。)やスリープ信号が送信されると、放射線画像撮影装置1はスリープ状態から待機状態、或いは待機状態からスリープ状態に遷移するようになっている。また、待機状態が所定時間継続した場合には、放射線画像撮影装置1は自動的に待機状態からスリープ状態に遷移するように構成されている。
【0096】
そして、このスリープ状態においても、放射線画像撮影装置1の内蔵電源24に対する充電を行うことができる。そのため、本実施形態では、推定手段としての制御手段22は、このスリープ状態での充電の際にも上記の推定処理を行うようになっている。
【0097】
このように、電子機器には、電力消費状態を、放射線画像撮影装置1における待機状態のように、その電子機器が機能している状態或いはユーザの要求等に基づいて即座に機能し得る状態としての覚醒(wake up)状態と、放射線画像撮影装置1におけるスリープ状態のように、内蔵電源24から必要な機能部にのみ電力を供給して他の機能部には電力を供給しないスリープ(sleep)状態との間で遷移させることが可能となるように構成されているものがある。
【0098】
そして、そのような電子機器が、覚醒状態に遷移している場合も、スリープ状態に遷移している場合も、いずれの場合でも内蔵電源24に対する充電を行うことができるように構成されている場合には、推定手段(例えば放射線画像撮影装置1の制御手段22)は、覚醒状態およびスリープ状態のいずれの状態においても、充電の際に上記の推定処理を行うことができる。
【0099】
[各充電装置や各状態ごとの比C/Cinの用い方について]
その際、上記のように、覚醒状態とスリープ状態とでは、通常、各機能部に供給される電流(電力)の値が比較的大きく変わる。そして、その場合、図6に示したように、定電流充電中に充電制御回路80から出力される充電電流設定値Icsetの電流のうち、電源生成回路25を介して各機能部に供給される電流、すなわち前述した放電電流Idの値が変わる。
【0100】
なお、以下、覚醒状態とスリープ状態の例として、本実施形態の放射線画像撮影装置1における待機状態およびスリープ状態について説明する。
【0101】
また、放射線画像撮影装置1がクレードル60に挿入されて定電流充電が行われる場合と、放射線画像撮影装置1がケーブルCaに接続された状態で定電流充電が行われる場合との間でも、放電電流Idの値が変わり得る。
【0102】
その際、放射線画像撮影装置1がいずれの状態で充電されていても、内蔵電源24の劣化度合が同じであれば、同じ値が算出されるはずである。
【0103】
しかし、発明者らの研究によれば、実際には、上記(4)式に基づいて算出される容量Cや上記(6)式に基づいて算出される比C/Cinの値は、内蔵電源24の充電の仕方に依存して多少変わる場合があることが分かっている。このような現象が生じる原因としては、例えば以下のような原因が考えられている。
【0104】
すなわち、充電制御回路80から内蔵電源24に電流Ic(=Icset−Id。上記(1)式参照)が供給されると、内蔵電源24内部で内部抵抗による電圧降下が発生する。そのため、内蔵電源24の実際の充電電圧は、制御手段22が検出する充電電圧Vから上記の電圧降下分だけ小さい値になる。そして、上記のように充電の仕方が変わると、放電電流Idの値が変わり、電流Icの値が変わる。そのため、内部抵抗による電圧降下の値が変わり、内蔵電源24の実際の充電電圧の値が変わる。
【0105】
一方で、制御手段22では、上記の各式から分かるように、充電制御回路80から内蔵電源24に供給される電流Icについては、充電電流設定値Icsetから放電電流Idを減算することで、充電の仕方の変化による放電電流Idの変化分が考慮されているが、充電の仕方の変化による電流Icの変化に起因する内蔵電源24内部での電圧降下分については考慮されていない。
【0106】
そのため、上記の各式に従って算出される容量Cや比C/Cinの値が、内蔵電源24の充電の仕方に依存して変わる場合があると考えられている。
【0107】
このような現象が生じることを回避するためには、内蔵電源24の容量Cや比C/Cinの算出において、内蔵電源24の内部抵抗による電圧降下分を加味するような演算式に基づいて算出を行うように構成することも可能である。
【0108】
しかし、前述したように、内蔵電源24の劣化の形態としては、本発明で扱う内蔵電源24の容量Cの減少だけでなく、内蔵電源24の内部抵抗が増大していく場合もある。そして、内蔵電源24の内部抵抗の変化を検出するためには、そのための手段や回路、機構等を新たに設けなければならなくなる虞れがある。
【0109】
そこで、例えば内蔵電源24の内部抵抗の値を仮に設定しておき、その仮の値に基づいて内蔵電源24の内部抵抗による電圧降下分を推定し、それを加味して、上記の比C/Cinすなわち内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成することが可能である。
【0110】
また、上記のように内蔵電源24の内部抵抗による電圧降下分を推定せずに、異なる複数種類の充電装置(すなわち例えばクレードル60やケーブルCaを介して接続される外部の充電装置)ごとや、電子機器の電力消費状態における各状態(覚醒状態やスリープ状態。本実施形態では放射線画像撮影装置1における待機状態やスリープ状態)ごとに、上記の比C/Cinを算出するように構成することも可能である。
【0111】
この場合、例えば、各充電装置や各状態ごとに算出した各比C/Cinの最低値やそれらの平均値等を、内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成することが可能である。
【0112】
一方、本実施形態のように、内蔵電源24としてリチウムイオンキャパシタを用いるように構成すると、リチウムイオンキャパシタの内部抵抗は数mΩと非常に小さいため、内蔵電源24の内部抵抗による電圧降下分の影響がほとんど現れなくなるといったメリットがある。
【0113】
そのため、推定処理において、各充電装置や各状態ごとに上記の比C/Cinを算出すると、算出した比C/Cinがほとんど同じ値になる。そのため、各充電装置や各状態ごとに算出された比C/Cinを区別せずに内蔵電源24の劣化度合を表す値として用いることが可能となる。
【0114】
[比C/Cinに重畳されるノイズに対する対応法について]
ところで、上記のように、本実施形態では電子機器(放射線画像撮影装置1)を充電しながら推定処理を行うため、定電流充電の開始時点に読み取られる充電電圧V1や所定時間ΔTthの経過時点に読み取られる充電電圧V2等には、充電装置(クレードル60や外部の充電装置)や充電制御回路80等で発生したノイズが重畳される。
【0115】
そのため、それらの値に基づいて算出される比C/Cinにもノイズが重畳される。なお、そのため、上記のように内蔵電源24の内部抵抗による電圧降下分の影響が現れる場合であっても、その電圧降下分による比C/Cinの差よりもノイズの方が大きくなる場合がある。少なくとも本実施形態のように放射線画像撮影装置1の内蔵電源24としてリチウムイオンキャパシタを用いる場合には、各充電装置や各状態ごとのリチウムイオンキャパシタの内部抵抗による電圧降下分の差は、充電装置や充電制御回路80等で発生したノイズにいわば埋もれてしまう。
【0116】
このように、算出される比C/Cinにもノイズが重畳されると、比C/Cinの経時的な低下傾向、すなわち内蔵電源24の劣化度合が経時的に低下していく傾向を正確に読み取ることができなくなる可能性がある。
【0117】
そこで、推定手段としての制御手段22は、例えば、推定処理を行って算出した現在の比C/Cinを含む過去の所定回数分(例えば10回分)の比C/Cinをメモリに保存しておき、それらの移動平均を算出して内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成することが可能である。
【0118】
具体的には、制御手段22は、過去の例えば10回分の推定処理で算出した比C/Cinをそれぞれメモリに保存しておく。すなわち、この場合、メモリに、10個のC/Cinが保存されている状態とする。そして、推定処理を行って比C/Cinを算出するごとに、算出した比C/Cinをメモリに保存するとともに、最も古い比C/Cinをメモリから削除する。
【0119】
そして、メモリ中に保存されている10個の比C/Cinの平均値(すなわち移動平均)を算出する。このようにして移動平均を算出するように構成することが可能である。なお、その際、例えば10個の比C/Cinを単純に平均化する代わりに、例えば、今回算出した比C/Cinの重みが大きくなるように重み付け平均を行うように構成することも可能である。
【0120】
このように、過去の所定回数分の比C/Cinの移動平均を内蔵電源24の劣化度合として算出することで、推定処理を行うごとに比C/Cinに重畳されるノイズによる比C/Cinのばらつきを平滑化することが可能となる。そして、比C/Cinのばらつきが平滑化されることにより、比C/Cinの経時的な低下傾向、すなわち内蔵電源24の劣化度合が経時的に低下していく傾向を正確に把握することが可能となる。
【0121】
そして、内蔵電源24の劣化度合の経時的な低下傾向を正確に把握して、内蔵電源24の劣化度合すなわち比C/Cinの移動平均が閾値以下になったか否かを判定する。
【0122】
このように構成することで、内蔵電源24の劣化があまり進んでいないにもかかわらず、算出された比C/Cinにノイズが重畳されていてたまたま閾値以下になったためにユーザに内蔵電源24を交換すべきことが警告される等の事態が生じることを防止することが可能となる。
【0123】
そして、ノイズの影響が確実に低減された比C/Cinの移動平均に基づいて、内蔵電源24が劣化しているか否かを的確に判定して、内蔵電源24が確実に劣化した状態になった場合に、ユーザに内蔵電源24を交換すべきこと等を知らせることが可能となる。
【0124】
以上のように、本実施形態に係る充電システム100や電子機器(放射線画像撮影装置1)によれば、推定手段(制御手段22)は、充電制御回路80が定電流充電を行う際に、所定時間ΔTthが経過した時点での充電電圧Vの上昇分V2−V1に基づいて内蔵電源24の容量Cを算出し、算出した容量Cの、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinに対する比C/Cinを算出して内蔵電源24の劣化度合を推定する。
【0125】
そのため、電子機器(放射線画像撮影装置1)の内蔵電源24の劣化度合を的確に推定することが可能となる。そして、電子機器のユーザが内蔵電源24の劣化度合を任意のタイミングで認知することが可能となるとともに、内蔵電源24の劣化が進んだ場合には、電子機器側からユーザに内蔵電源24の交換を的確に知らせること等が可能となる。
【0126】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、上記(6)式に示されるように、推定処理で比C/Cinを算出する際に、除算を複数回(上記(6)式の場合には3回)行うことが必要となる。しかし、よく知られているように、加算や減算、乗算の処理に比べて、除算を行う処理には時間がかかる。そのため、上記のように除算を複数回行うと、比C/Cinの算出処理に要する時間が長くなるという問題がある。
【0127】
そこで、第1の実施形態では、例えば、電子機器である放射線画像撮影装置1の使用開始後(施設導入後)の充電の際に行われる通常の推定処理において、定電流充電が開始された後の所定時間ΔTthを、工場出荷時等の内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを取得する際の所定時間ΔTthと同じ時間になるようにして推定処理を行う場合を例示した。
【0128】
このように構成すると、上記(6)式において分母と分子のΔTthが同一となるため、前述した他の条件を満たすように構成することで、上記(7)式に示したように推定処理における比C/Cinの算出処理において除算の演算を1回だけ行えばよくなる。そのため、比C/Cinの算出処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0129】
しかし、推定処理を以下のようにして行うように構成すれば、比C/Cinの算出処理や推定処理をさらに短い時間で行うことが可能となる。第2の実施形態では、このように構成された推定処理について説明する。
【0130】
なお、推定処理の仕方以外の構成や機能等については、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。また、本実施形態では、工場出荷時等の内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを取得する際の所定時間ΔTthを、ΔTth_inと表す。また、この場合、上記(5)式は、
Cin=(Icset_in−Idin)×ΔTth_in/(V2in−V1in) …(8)
と表される。
【0131】
本実施形態では、推定処理を行う際に、工場出荷時等の推定処理と、使用開始後の通常の推定処理とで、上記のように所定時間ΔTthを同一とする代わりに、定電流充電が開始されてから所定時間ΔTth、ΔTth_inが経過した後の内蔵電源24の充電電圧Vの上昇分ΔV=V2−V1が同一になるようにして推定処理を行うようになっている。
【0132】
すなわち、上記(6)式において、
V2−V1=V2in−V1in …(9)
となるようにして推定処理を行う。そして、この場合も、少なくとも同じ充電装置を用いて同じ状態で充電を行った場合、Icset_in=IcsetおよびIdin=Idが成り立つ。
【0133】
そのため、この場合、比C/Cinは、上記(4)式と(8)式とに基づいて、
C/Cin=(Icset−Id)×ΔTth/(V2−V1)
/{(Icset_in−Idin)×ΔTth_in/(V2in−V1in)}
∴C/Cin=ΔTth/ΔTth_in …(10)
となる。
【0134】
このように、上記のように定電流充電時の充電電圧Vの上昇分ΔV=V2−V1が、工場出荷時等の推定処理における上昇分ΔVin=V2in−V1inと同じになるようにして推定処理を行うように構成すると、比C/Cinを、上記の上昇分まで充電電圧Vが上昇するために要する上記の所定時間ΔTthとΔTth_inとの比として算出することが可能となる。
【0135】
そのため、比C/Cinの算出処理が非常に容易になるとともに、除算の演算を1回だけ行えばよくなるため、比C/Cinの算出処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0136】
この場合の推定処理における具体的な構成としては、推定手段(放射線画像撮影装置1の制御手段22)は、図9(A)に示すように、工場出荷時等に行われた推定処理における充電電圧Vの上昇分ΔVin=V2in−V1inの値と所定時間ΔTth_inとを不揮発性のメモリに記憶したり、プログラム中に書き込んだりしておく。
【0137】
そして、電子機器(放射線画像撮影装置1)の使用開始後の推定処理においては、推定手段は、まず、工場出荷時等に行われた推定処理における充電電圧Vの上昇分ΔVin=V2in−V1inの値を読み出す。そして、定電流充電が開始された時点で、内蔵電源24の充電電圧Vを読み取って充電電圧V1として記憶し、経過時間ΔTのカウントをリセットして経過時間ΔTのカウントを開始する。
【0138】
なお、本実施形態では、推定手段は、所定時間(例えば1クロック)が経過するごとに2進数で表されるカウント数をメモリ上でインクリメントしていくことで、経過時間ΔTをカウント数として読み取るように構成されている。
【0139】
そして、図9(B)に示すように、充電電圧Vの上昇分ΔV=V2−V1が上記の上昇分ΔVin=V2in−V1inになった時点で、経過時間ΔTすなわち使用開始後の所定時間ΔTthに相当するカウント数を読み取る。そして、上記(10)式に従って比C/Cinを算出するように構成される。
【0140】
また、本実施形態では、さらに、上記のように工場出荷時等に内蔵電源24が劣化していない状態で推定処理を行う際に、所定時間Δtth_inに相当するカウント数が2(nは自然数)となるようにして推定処理を行うようになっている。このように構成することで、比C/Cinの算出処理に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
【0141】
このように構成すると、上記の(10)式におけるΔTthのΔTth_in(すなわち2)による除算処理を、レジスタ上でΔTthに相当するカウント数を右にnビットシフトすることによって行うことが可能となる。具体的には、推定手段は、上記のように使用開始後の推定処理で所定時間ΔTthに相当するカウント数を読み取ると、そのカウント数をレジスタに入力し、そのカウント数をレジスタ上で右にnビットシフトさせて、比C/Cinを算出する。
【0142】
そのため、上記(10)式に基づいて実際に除算演算を行わなくてもよく、レジスタ上で所定時間ΔTthに相当するカウント数を右にnビットシフトさせるだけで上記(10)式の演算を行ったことになる。そのため、実際に除算演算を行う必要がなくなり、比C/Cinの算出処理に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
【0143】
なお、例えば、比C/Cinを百分率(単位は%)の形で算出するように構成する場合には、推定手段は、まず、使用開始後の推定処理で読み取った所定時間ΔTthに相当するカウント数を100倍してレジスタに入力する。そして、レジスタ上で、100倍したカウント数を右にnビットシフトするように構成される。このように構成すれば、レジスタ上で右にnビットシフトさせるだけで、比C/Cinを百分率の形で非常に短時間に算出することが可能となる。
【0144】
また、上記のように所定時間ΔTthに相当するカウント数やそれを100倍した数をレジスタ上で右にnビットシフトさせる代わりに、小数点の位置を左にnビットシフトさせるように構成することも可能である。
【0145】
以上のように、本実施形態に係る充電システム100や電子機器(放射線画像撮影装置1)によれば、第1の実施形態の場合と同様の優れた効果を発揮することが可能となるとともに、比C/Cinの算出処理や内蔵電源24の劣化度合の推定処理を、非常に短時間で行うことが可能となる。
【0146】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、過去の所定回数分の比C/Cinから算出した移動平均に基づいて内蔵電源の劣化度合を推定するように構成する等の種々の変形(改良)が可能である。
【0147】
[第3の実施の形態]
ところで、電子機器(放射線画像撮影装置1)の内蔵電源24に対する定電流充電を行う際に、内蔵電源24が故障しているか否かを調べるために、例えば図10(A)に示すように、充電制御回路80から内蔵電源24に対して低い値の定電流I1を流して定電流充電を行いながら、その間にパルス状に高い値の定電流I2を数回供給して内蔵電源24の故障検知処理を行うように構成されている場合がある。
【0148】
このように構成されている場合、この故障検知処理の際に内蔵電源24に対して供給されるパルス状の定電流を利用して推定処理を行い、比C/Cinを算出して内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成することが可能である。
【0149】
この場合、図10(A)に示したように高い値の定電流をパルス状に供給すると、内蔵電源24の充電電圧Vは、図10(B)に示すように上昇していく。
【0150】
そして、内蔵電源24に供給される電流が低い電流I1から高い電流I2に切り替わる瞬間の充電電圧VをVn−1とし、その時点で内蔵電源24に蓄えられている電荷量をQn−1、内蔵電源24の内部抵抗をr、容量をCとすると、それらと電流I1との間には、
n−1=Qn−1/C+r×I1 …(11)
の関係が成り立っている。
【0151】
また、内蔵電源24に供給される電流が低い電流I1から高い電流I2に切り替えられた後、所定時間Δtが経過した時点での充電電圧VをVとし、その時点で内蔵電源24に蓄えられている電荷量をQとすると、
=Qn−1+I2×Δt …(12)
=Q/C+r×I2 …(13)
の関係が成り立つ。
【0152】
そこで、所定時間Δt間の充電電圧Vの上昇分ΔVを計算すると、上記の(11)式から(13)式を用いて、
ΔV=V−Vn−1
=(Q/C+r×I2)−(Qn−1/C+r×I1)
=(Q−Qn−1)/C+r×(I2−I1)
=(Qn−1+I2×Δt−Qn−1)/C+r×(I2−I1)
∴ΔV=I2×Δt/C+r×(I2−I1) …(14)
が成り立つ。
【0153】
そのため、内蔵電源14の容量Cは、上記(14)式を変形して、
C=I2×Δt/{ΔV−r×(I2−I1)} …(15)
として算出することができる。
【0154】
この場合、定電流I1、I2の値や所定時間Δtは既知であるため、内蔵電源24の内部抵抗rが既知であれば、検出された充電電圧Vn−1およびVから上昇分ΔVを算出して上記(15)式に代入することにより、内蔵電源24の容量Cを算出することができる。
【0155】
また、本実施形態のように、内蔵電源24としてリチウムイオンキャパシタを用いる場合、前述したように、リチウムイオンキャパシタの内部抵抗rは数mΩと非常に小さい。そのため、上記(15)式においてr≒0と見なすことで、内蔵電源24の容量Cは、定電流I2と所定時間Δtと充電電圧Vの上昇分ΔVとを用いて、
C=I2×Δt/ΔV …(16)
の演算を行うことで算出することが可能となる。
【0156】
また、図10(A)に示したように、この処理では高い値の定電流I2がパルス状に複数回繰り返して供給されるため、図10(B)に示すように、充電電圧Vの上昇分ΔVを複数回検出することが可能となる。そのため、複数回分の上昇分ΔVの平均値を算出して上記(16)式に適用し、或いは、各回ごとに上昇分ΔVに基づいて容量Cを算出してそれらの平均値を算出することで、内蔵電源24の容量Cをより的確に算出することが可能となる。
【0157】
また、この場合、工場出荷時等に同様の処理を行って、内蔵電源24が劣化していない状態での内蔵電源24の容量Cinを算出しておく。なお、この場合、内蔵電源24の容量Cinは、例えば第1の実施形態や第2の実施形態で算出された容量Cinを用いたり、或いは、内蔵電源24の容量Cinとして適切な値を予め設定しておくように構成することも可能である。
【0158】
そして、比C/Cinを算出して、内蔵電源24の劣化度合を推定するように構成することが可能である。
【0159】
以上のように、本実施形態に係る充電システム100や電子機器(放射線画像撮影装置1)によれば、第1の実施形態や第2の実施形態の場合と同様の優れた効果を発揮することが可能となるとともに、内蔵電源24の故障検知処理の際に内蔵電源24に対して供給されるパルス状の定電流を利用して推定処理を行うことが可能となる。
【0160】
なお、本実施形態においても、第1、第2の実施形態の場合と同様に、過去の所定回数分の比C/Cinから算出した移動平均に基づいて内蔵電源の劣化度合を推定するように構成する等の種々の変形(改良)が可能である。
【0161】
また、上記の第1〜第3の実施形態では、推定処理における比C/Cinの算出処理をより簡単に行うための種々のパターンを示したが(上記の(7)、(10)、(15)、(16)式参照)、本発明はこれらの場合に限定されない。
【0162】
すなわち、工場出荷時等の推定処理における充電電流設定値Icset_in、放電電流Idin、所定時間ΔTth_in、充電電圧Vの値V1in、V2inを上記(8)式に代入すれば、内蔵電源24が劣化していない状態での容量Cinを算出することができる。また、電子機器(放射線画像撮影装置1)の使用開始後の推定処理における充電電流設定値Icset、放電電流Id、所定時間ΔTth、充電電圧Vの値V1、V2を上記(4)式に代入すれば、電子機器の使用状態における容量Cを算出することができる。
【0163】
そして、
C/Cin=(Icset−Id)×ΔTth/(V2−V1)
/{(Icset_in−Idin)×ΔTth_in/(V2in−V1in)}…(17)
の演算を行うことで、上記の比C/Cinを算出することができる。
【0164】
さらに、上記の各実施形態では、主に、電子機器が放射線画像撮影装置1である場合について説明したが、この他にも、充電可能な内蔵電源24を内蔵する電子機器であれば、ノート型パソコンや携帯電話、携帯情報端末等の種々の電子機器についても、本発明を適用することが可能である。また、それらの電子機器を充電装置で充電する充電システムについても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 放射線画像撮影装置(電子機器)
22 制御手段(推定手段)
24 内蔵電源
60 クレードル(充電装置)
80 充電制御回路
100 充電システム
C 容量
Cin 内蔵電源が劣化していない状態での容量
C/Cin 比(内蔵電源の劣化度合)
V 充電電圧
Δt 所定時間
ΔTth 所定時間
ΔTth_in 所定時間
ΔV、V2−V1 充電電圧の上昇分
ΔVin、V2in−V1in 充電電圧の上昇分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な内蔵電源を内蔵する電子機器と、
前記内蔵電源に対して、少なくとも充電電流が一定になるように充電を行う定電流充電を行い、前記電子機器の前記内蔵電源への充電を制御する充電制御回路と、
前記充電制御回路を介して前記電子機器の前記内蔵電源に電力を供給する充電装置と、
前記内蔵電源に充電されている充電電圧に基づいて前記内蔵電源の劣化度合を推定する推定手段と、
を備え、
前記推定手段は、前記充電制御回路が定電流充電を行う際に、所定時間が経過した時点での前記充電電圧の上昇分に基づいて前記内蔵電源の容量を算出し、算出した前記容量の、前記内蔵電源が劣化していない状態での容量に対する比を算出して、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記推定手段は、前記内蔵電源の容量を算出する際の前記所定時間を、前記内蔵電源が劣化していない状態で前記内蔵電源の容量を算出した際の前記所定時間と同じ時間として推定処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記推定手段は、
前記内蔵電源の容量を算出する際の前記充電電圧の上昇分を、前記内蔵電源が劣化していない状態で前記内蔵電源の容量を算出した際の前記充電電圧の上昇分と同じ上昇分になるようにして推定処理を行い、
前記内蔵電源が劣化していない状態で前記内蔵電源の容量を算出する際に、前記所定時間に相当するカウント数が2(nは自然数)となるようにして推定処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項4】
前記充電装置を複数種類備え、
前記推定手段は、前記充電装置ごとに前記比を算出し、前記充電装置ごとの前記比に基づいて、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項5】
前記電子機器は、電力消費状態として複数の状態の間を遷移することが可能とされており、
前記推定手段は、前記電子機器の前記電力消費状態における前記状態ごとに前記比を算出し、前記状態ごとの前記比に基づいて、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項6】
前記推定手段は、前記比の、現在の前記比を含む過去の所定回数分の前記比の移動平均を算出し、前記移動平均に基づいて前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項7】
前記推定手段は、前記充電制御回路が定電流充電を行う時点での前記内蔵電源の前記充電電圧が所定の電圧値以上である場合には、前記推定処理を行わないことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項8】
前記電子機器の各機能部の動作を制御する制御手段が、前記推定手段としての機能を兼ねるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項9】
前記充電制御回路は、前記電子機器に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項10】
前記充電制御回路は、前記充電装置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項11】
前記内蔵電源は、リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項12】
前記電子機器は、放射線画像撮影装置であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項13】
前記推定手段は、電子機器である前記放射線画像撮影装置に放射線が照射されて放射線画像撮影が行われている間は、前記推定処理を行わないことを特徴とする請求項12に記載の充電システム。
【請求項14】
前記充電装置は、クレードルであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の充電システム。
【請求項15】
充電可能な内蔵電源と、
前記内蔵電源に対して、少なくとも充電電流が一定になるように充電を行う定電流充電を行い、前記電子機器の前記内蔵電源への充電を制御する充電制御回路と、
前記充電制御回路を介して前記電子機器の前記内蔵電源に電力を供給する充電装置と、
前記内蔵電源に充電されている充電電圧に基づいて前記内蔵電源の劣化度合を推定する推定手段と、
を備える電子機器において、
前記推定手段は、前記充電制御回路が定電流充電を行う際に、所定時間が経過した時点での前記充電電圧の上昇分に基づいて前記内蔵電源の容量を算出し、算出した前記容量の、前記内蔵電源が劣化していない状態での容量に対する比を算出して、前記内蔵電源の劣化度合を推定することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−235551(P2012−235551A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100583(P2011−100583)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】