説明

充電式の電気機器

【課題】多孔質膜の透孔を設けることなく機器本体を密閉構造として防水性を図り漏電による感電事故や短絡による故障の発生を防ぐばかりか、蓄電池から発生する水素ガスによる爆発が生じることのない充電式の電気機器とする。
【解決手段】密閉した機器本体11内に蓄電池4を収容した充電式の電気機器1において、機器本体11内に水素吸蔵合金7を封入し、機器本体11を密閉空間に形成することにより防水構造として水や水蒸気が進入するのを防止し、機器本体11の内部に収容される蓄電池4、モーター3、基板5などの電気部品や電子部品などの水分による劣化や事故を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気髭剃器、電動歯ブラシ、携帯電話、懐中電灯等のように機器本体に蓄電池を内蔵した充電式の電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気髭剃器、電動歯ブラシ、各種の美顔器などの電気機器は、手で持って使用する場合が多いことから電気コードが接続されていると不便であり或いは機能を発揮できないこと、更には一次電池と異なり充電して繰り返し使えることとからゴミの減量化や資源の保全の面から機器本体に蓄電池(二次電池)を内蔵した充電式のものが用いられている。
【0003】
ところで、電気髭剃器、電動歯ブラシ等の電気機器は使用環境の特性から使用時に水滴などがかかることがあり、電気部品や電子部品を内蔵する機器本体を密閉構造として防水性を図り水分が原因となる漏電、感電事故、故障等の発生を防いでいる。
【0004】
一方、機器本体に内蔵される蓄電池はその特性上、例えば電池が劣化したり、過充電の場合などに水素ガスを発生させるおそれがあり、発生した水素ガスがモータやスイッチなどの電気機器または電子機器で生じる電気スパークなどにより点火して思わぬ爆発事故を起こすおそれもある。
【0005】
そこで、これらの問題を解決した電気機器が例えば特開平5−168776号公報、特開平8−315864号公報などに提示されている。これらの公報に提示されている電子機器は例えば図4に示した電子機器1(電動歯ブラシ)のように、密封状態に形成された機器本体11の一部に水分を透過させないが、気体を通過させる多孔質膜21を張設したガス抜き孔2を設置して発生する水素ガスを排出するようにしている。
【0006】
しかしながら、前述の多孔質膜21は液体は通過させないが、水蒸気は通過させてしまうことから、多孔質膜21を通過した水蒸気が液密状態の電気機器本体において冷却により凝縮して(所謂、結露現象)水となり機器本体11に内蔵している例えばモーター3、蓄電池4などの電気部品や回路基板5に配置したスイッチや各種の電子部品などに錆や劣化などの悪影響を与えることになる。
【0007】
特に、近頃、蓄電池4として、エネルギー密度が大きく高効率放電特性を有するとともに、メモリー効果が殆どなくて使い勝手がよいことからニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池が多く用いられるようになった。しかしながら、これらのニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池は劣化したり、過充電の場合などに水素ガスを発生させるという問題がある。
【特許文献1】特開平5−168776号公報
【特許文献2】特開平8−315864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたのであり、問題点を解決するためになされたものであり、従来のように多孔質膜の透孔を設けることなく機器本体を密閉構造として防水性を図り漏電による感電事故や短絡による故障の発生を防ぐばかりか、蓄電池から発生する水素ガスによる爆発が生じることのない充電式の電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、密閉した機器本体内に蓄電池を収容した充電式の電気機器において、前記機器本体内に水素吸蔵合金を封入したことを特徴とする。
【0010】
機器本体を密閉空間に形成することにより防水構造として水や水蒸気が進入するのを防止し、機器本体の内部に収容される蓄電池、モーター、スイッチ、基板などの電気部品や電子部品などの水分による劣化や事故を防止する。
【0011】
一方、前記密閉状態の機器本体内において、蓄電池から水素ガスが発生した場合には機器本体内に配置した水素吸蔵合金により、金属水素化物を形成させて吸蔵する。
【0012】
また、本発明は、前記蓄電池として有能であるが水素ガスの発生し易いニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池である場合などに特に有用であり、前記機器本体内に水素ガス検知器が配置されているとともに前記水素ガス検知器からの検知信号による水素ガスの存在を表示する表示部が前記機器本体内の外表面の一部に設置されている場合には、万一、吸蔵合金の吸蔵能力を超えて遊離の水素ガスが貯留している場合にも確認でき、きわめて安全であり、前記機器本体の一部に開閉蓋を有する外気に通じる開閉口を設けた場合には、前記密閉状態の空間に過剰に発生した水素ガスや前記水素吸蔵合金から放出させた水素ガスを排出することもできる。
【0013】
更に、前記水素ガス検知器が、ファイバーグレーテングとこのファイバーグレーテングの少なくとも一部におけるグレーテング周期を変える水素吸蔵合金からなる伸縮部材を有している場合には、前記伸縮部材として本発明の水素吸蔵合金を併用させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、機器本体を密閉状態にすることにより、機器本体の内部に水や水蒸気が進入するのを防止して収容される蓄電池、モーター、スイッチ、基板などの電気或いは電子部品の水分による劣化や事故を防止する。特に、従来のように多孔質膜の透孔を設けることがないので水蒸気も浸入せず完全な防水生を得ることができる。一方、蓄電池から水素ガスが発生したとしても水素吸蔵合金が吸蔵処理するので安全である。更に、機器本体に加工をする必要がなく、機器本体内に水素吸蔵合金を配置するだけの簡単な構造でよく、生産性に優れているばかりか経済的にも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明を充電式の電気機器1として電動歯ブラシについて実施した場合の最良の実施の形態を示すものであり、全体の構成は従来から実施されている図2に示した従来の電動歯ブラシと同様に、密封状態として防水生を付与した機器本体11内に例えばブラシ部6に振動を与えるためのモーター3、電源となる例えばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池からなる蓄電池4などの電気部品およびスイッチ51表示灯52,53や各種の電子部品などを配置した回路基板5等が内蔵されている。
【0017】
また、特に、機器本体11内には水素吸蔵合金7が配置されている。この水素吸蔵合金7は、例えば、希土類系合金、マグネシウム・ニッケル系合金、チタン系合金など従来周知のものを用いることができ、使用する機器や蓄電池などの水素発生量や価格などに応じて適宜のものを必要量だけ配置する。
【0018】
尚、図面中、符合8は機器本体11に気密状態で収容された蓄電池4を非接触で充電するための電磁誘導方式の充電器であり、機器本体11を充電器8に差し込むことにより充電器8内に配置した充電制御回路(図示せず)と第1電磁コイル82からの電磁誘導によって電気エネルギー(電磁エネルギー)が機器本体11内に配置した第2コイルに伝送され、充電回路(図示せず)で整流されて蓄電池4に充電される。
【0019】
以上の構成を有する本実施の形態は、機器本体11が密封構造であることから、水蒸気を含めて水分の浸入が防止される。従って、機器本体11に水がかかったりしても内蔵されている電気部品や電子部品が水によって短絡したり損傷したりする心配が全くない。
【0020】
また、万一、蓄電池4が劣化したり過充電などにより蓄電池4から水素ガスが発生したとしても機器本体11内に配置した水素吸蔵合金7により吸蔵されてしまうので爆発したりする心配がない。
【0021】
因みに、1cc当たりの水素吸蔵合金の水素の量は、希土類系合金やマグネシウム・ニッケル系合金の場合でほぼ1.3L、チタン系合金の場合でほぼ2.5Lと言われており、蓄電池4の水素ガスの吸収量に合わせて所望の種類のものを所定量だけ配置すればよい。
【0022】
また、図2は本発明の異なる実施の形態についての要部を示すものであり、前記図1に示した実施の形態と同様に機器本体11が密封状態にあり、その機器本体11の一部(例えば基板5)に水素ガス検知器9が配置されている。
【0023】
この水素ガス検知器9は、例えば半導体式など従来周知のものを利用することができ、機器本体11に内蔵の蓄電池4を電源にすることができる。本実施の形態によれば水素ガス検知器9を備えたので、もしも水素吸蔵合金7が機能しなかったり、吸蔵量を超えている場合、或いは一旦吸蔵下水素ガスが離脱した場合などのように機器本体手11内に存在する水素ガスを検知するので事前に危険を回避することができる。尚、検知結果は出力手段(図示せず)により音声や視覚により知らせることが可能であり、例えば前記回路基板5に配置した表示灯52、53などを利用することができる。
【0024】
また、水素ガス検知器がファイバー式である場合(図示せず)には、ファイバーグレーテングの少なくとも一部におけるグレーテング周期を変える伸縮部材を前記水素吸蔵用の水素吸蔵合金7と兼用することもできることからスペース並びに経済面等でも有利である。
【0025】
更に、図2中、符合10は本体機器11の一部に形成した開閉蓋101を有する外気に通じる開閉口であり、常時はバネ102によって開閉蓋101を閉じる方向に付勢しており、必要なとき、例えば、機器本体11内に水素ガスが溜まっているときなどの場合に開閉蓋101を押圧して開閉口10を一時的に開放して機器本体11内の水素ガスを外に逃がすことができる。
【0026】
従って、機器本体11内の水素ガスが水素吸蔵合金7により吸蔵できない場合、或いは吸蔵容量を超えた場合などに有効である。殊に、水素吸蔵合金7の水素ガス吸蔵容量は、温度や圧力などの環境条件により変化するので例えば機器本体11内の温度を変化させて吸蔵している水素ガスを遊離させて水素吸蔵合金7を再生させることもできる。
【0027】
また、図3は本発明の更に異なる実施の4形態を示すものであり、前記図2に示した実施例と同じく機器本体11内に水素ガスが溜まっているときなどの場合に開閉蓋101を押圧して開閉口10を一時的に開放して機器本体11内の水素ガスを外に逃がすことができるものであるが、開閉蓋101をバネ102によって常時、開閉口10へと付勢しており、水素ガスが発生して機器本体1内の圧力が上昇したとき開閉蓋101がバネ102の付勢力に抗して移動して開閉口10を自動的に開放するものであり、機器本体1内の圧力が上昇したとき自動的に作用するのできわめて便利且つ安全である。
【0028】
尚、前記実施の形態は電気機器1として電動歯ブラシについて本発明を実施した場合を示したが、電気髭剃器など他の充電式の電気機器についても全く同様にして実施することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明における最適な実施形態の一例を示すものであり、(a)は正面図、(b)縦断面図。
【図2】本発明における異なる実施形態の一例を示す一部を拡大した縦断面図。
【図3】本発明における更に異なる実施形態の一例を示す一部を拡大した縦断面図。
【図4】従来例を示すものであり、(a)は正面図、(b)は縦断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 電気機器、4 蓄電池、7 水素吸蔵合金、9 水素ガス検知器、10 開閉口、11 機器本体、101 開閉蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉した機器本体内に蓄電池を収容した充電式の電気機器において、前記機器本体内に水素吸蔵合金を封入したことを特徴とする充電式の電気機器。
【請求項2】
前記蓄電池がニッケル水素電池又はニッケルカドミウム電池である請求項1に記載の充電式の電気機器。
【請求項3】
前記機器本体内に水素ガス検知器が配置されているとともに前記水素ガス検知器からの検知信号による水素ガスの存在を表示する表示部が前記機器本体内の外表面の一部に設置されている請求項1または2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記水素ガス検知器が、ファイバーグレーテングとこのファイバーグレーテングの少なくとも一部におけるグレーテング周期を変える水素吸蔵合金からなる伸縮部材を有している請求項3に記載の充電式の電気機器。
【請求項5】
前記機器本体の一部に開閉蓋を有する外気に通じる開閉口を設けた請求項1,2,3または4に記載の充電式の電気機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−206648(P2008−206648A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45322(P2007−45322)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000213817)朝日医理科株式会社 (13)
【Fターム(参考)】