説明

充電池で利用される高容量の活物質を含む相互接続された中空ナノ構造

【解決手段】 リチウムイオン電池等の蓄電池で利用される電極層および関連製造技術を提供する。当該電極層は、シリコン、スズ、およびゲルマニウム等の高容量の電気化学的活物質を含む相互接続された複数の中空ナノ構造を備える。所定の実施形態によると、製造方法は、複数のテンプレート構造の周囲にナノスケールコーティングを形成する段階と、複数のテンプレート構造の少なくとも一部を除去および/または縮小して複数の孔隙を形成する段階とを備える。当該孔隙は、電池のサイクルの間にナノ構造の活物質が膨張して入り込むための空間を提供する。このような構成によって、粉状化の危険性が低減し、ナノ構造間の電気接触が維持される。また、電解質との間のイオン輸送に利用可能な表面積が非常に大きくなる。ナノ構造は、ナノスケールのシェルを有するが、ほかの寸法についてはこれより大幅に大きいとしてもよい。ナノ構造同士は、2つの近接したテンプレート構造の周囲に形成されたコーティングが重複する場合には、ナノスケールコーティングを形成している間に相互接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日、発明の名称:「電池の電極用のコアシェル型の高容量ナノワイヤ」)による恩恵を主張する。当該仮特許出願の内容は全て、参照により本願に組み込まれる。本願はまた、米国仮特許出願第61/183,529号(出願日:2009年6月2日、発明の名称:「電池の電極を製造するためのエレクトロスピニング法(静電紡糸法)」)による恩恵を主張する。当該仮特許出願の内容は全て、参照により本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
高容量の電気化学的活物質は、電池の材料として望ましい。しかし、電池サイクルにおける体積変化が大きく、例えば、リチオ化の際に膨張し、非リチオ化の際に縮小してしまうという問題がある。例えばシリコンは、理論上の容量を約4200mAh/gとするリチオ化、つまり、Li4.4Siの生成の際に、400%も膨張してしまう。このような大きさで体積変化が発生すると、活物質構造の粉状化、電気接続の断続、および容量低下といった問題が発生してしまう。
【0003】
このような問題は、一部については、高容量の活物質から所定の種類のナノ構造を形成することで対処可能である。ナノ構造は、少なくとも1つの寸法がナノ単位であり、このナノ単位の寸法に沿った膨張/縮小は、より大きい寸法に沿った膨張/縮小に比べると、損傷は少ない傾向がある。このためナノ構造は、電池サイクル中にほとんど損傷を受けない。しかし、電池の電極層において、活物質の装着を適切なものとしつつ、複数のナノ構造を集積化するのは困難である。この集積化では、多くのサイクルにわたって電気接続および機械的支持性を構築および維持する処理が行なわれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
リチウムイオン電池等の蓄電池で利用される電極層、および、関連製造技術を提供する。このような電極層では、高容量の電気化学的活物質、例えば、シリコン、スズおよびゲルマニウムを含む中空ナノ構造が相互接続されている。所定の実施形態に係る製造技術は、ナノスケールのコーティングを複数のテンプレート構造の周囲に形成する段階と、当該構造の少なくとも一部を除去することによって、および/または、当該構造を縮小させることによって、空洞を形成する段階とを含む。この空洞によって、ナノ構造の活物質が電池サイクル中に膨張した際に入り込む空間が得られる。このような構成によって、粉状化の危険性を小さくすることができると共にナノ構造間の電気接触を維持することができる。また、電解質との間でのイオン流通に利用され得る表面積を非常に大きくすることができる。ナノ構造は、ナノスケールのシェルを含むが、他の寸法についてはこれよりはるかに大きいとしてよい。2つの近接したテンプレート構造の周囲に形成したナノスケールのコーティングが互いに重複する場合には、ナノスケールのコーティングを形成する際にナノ構造を相互接続することが可能である。所定の実施形態によると、電極層はさらに、導電基板を含む。当該導電基板も、ナノ構造に相互接続されているとしてよい。
【0005】
所定の実施形態によると、相互接続された中空ナノ構造を含む電極層を用意する方法を提供する。ナノ構造は、高容量の電気化学的活物質を含む。複数のテンプレート構造を有するテンプレートを受け取る段階と、複数のテンプレート構造の周囲に高容量の電気化学的活物質のナノスケールテンプレートコーティングを形成する段階と、テンプレートの少なくとも一部を除去および/または縮小して、電極層を形成する段階とを備えるとしてよい。テンプレートは、エレクトロスピニング法を用いて製造されるとしてよい。例えば、ポリマー材料を用いてエレクトロスピニング法を実行して、長さが少なくとも約5マイクロメータであるテンプレートナノファイバーを形成する。テンプレートは、ポリアクリルナイトライド(PAN)、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、および/または、ポリビニルを含むとしてよい。所定の実施形態によると、テンプレートは、厚みが約10マイクロメートルと150マイクロメートルとの間であり、孔隙率が約20%と80%との間である層として形成される。
【0006】
所定の実施形態に係る方法は、テンプレートを押圧することによって、テンプレートを熱的に安定化させることによって、および/または、テンプレートを炭化させることによって、テンプレートを前処理する段階を備える。例えば、テンプレートの熱的安定化処理は、テンプレートを、アルゴン雰囲気において、約摂氏150度と摂氏250度との間の温度まで、少なくとも約2時間にわたって、加熱することを含むとしてよい。所定の実施形態に係る方法は、テンプレートに隣接した導電基板の表面に高容量の電気化学的活物質のナノスケール基板コーティングを形成する段階をさらに備える。ナノスケールテンプレートコーティングおよびナノスケール基板コーティングは、部分的に重複することによって、導電基板と、相互接続された複数の中空ナノ構造とを互いに相互接続しているとしてよい。
【0007】
所定の実施形態によると、テンプレートの周囲にナノスケールテンプレートコーティングを形成する段階は、例えば、初期成膜段階およびバルク成膜段階という2つの成膜段階を有する。初期成膜段階は、テンプレートの形状が大きく歪むことは回避されるような初期処理条件で実行されるとしてよい。バルク成膜段階は、初期処理条件とは異なるバルク処理条件で実行される。バルク処理条件は、バルク成膜段階の方がナノスケールテンプレートコーティングの成膜速度が速くなるように設定されているとしてよい。
【0008】
所定の実施形態によると、テンプレートの少なくとも一部の除去または縮小は、複数のテンプレート構造の周囲にナノスケールテンプレートコーティングを形成する間に行われる。テンプレートの一部の除去または縮小は、少なくとも約摂氏300度の温度で酸化剤が存在する中でのテンプレートの焼成、テンプレートの化学的エッチング、および、テンプレートのアニーリングのうち1以上の処理を実行することを含むとしてよい。
【0009】
所定の実施形態に係る方法は、相互接続された複数の中空ナノ構造の上方に第2のコーティングを形成する段階をさらに備えるとしてよい。第2のコーティングは、電極層の導電率を高め、電極層の固体電解質界面(SEI)特性を改善し、および/または、相互接続された複数の中空ナノ構造の構造変化を制限するとしてよい。
【0010】
所定の実施形態に係る、蓄電池で利用される電極層は、アスペクト比が少なくとも約4であり、長さが少なくとも約5マイクロメートルであり、シェルの厚みが約100ナノメートル未満である相互接続された複数の中空ナノ構造を備える。当該ナノ構造は、1以上の高容量の電気化学的活物質を含むとしてよい。相互接続された複数の中空ナノ構造は、高容量の電気化学的活物質が蓄電池のサイクルにおいて膨張して入り込むための空間を提供する複数の内部空隙を形成する。複数の内部空隙は実質的に、蓄電池の電解質には到達不可能であるとしてよい。所定の実施形態によると、電極層は、活物質の重量に応じて、少なくとも100サイクル経過した後でも、少なくとも約2000mAh/gという安定したエネルギー容量を実現する。電極層はさらに、2つ以上の中空ナノ構造を相互接続する複数の結合構造をさらに備えるとしてよい。複数の結合構造は、高容量の電気化学的活物質、金属、および、ポリマーバインダのうち1以上の材料を含むとしてよい。
【0011】
所定の実施形態に係る電極層は、導電基板を備える。相互接続された中空ナノ構造および導電基板の一部を、追加の接合構造で相互接続するとしてよい。所定の実施形態によると、活物質は、シリコン、スズ、および/または、ゲルマニウムを含む。電極層はさらに、相互接続された中空ナノ構造の外側表面を実質的に被覆している外側層を備えるとしてよい。外側層は、炭素、チタン、シリコン、アルミニウム、および/または、銅を含むとしてよい。所定の実施形態によると、電極層は、孔隙率が約20%と80%との間である。所定の実施形態によると、蓄電池はリチウムイオン電池であり、電極層の活物質は負極活物質である。
【0012】
所定の実施形態に係るリチウムイオン電池は、アスペクト比が少なくとも約4であり、長さが少なくとも約5マイクロメートルであり、シェルの厚みが約100ナノメートル未満である、相互接続された複数の中空ナノ構造を有する電極層を備える。複数の中空ナノ構造は、1以上の高容量の電気化学的活物質を含むとしてよい。複数の中空ナノ構造は、高容量の電気化学的活物質が蓄電池のサイクルにおいて膨張して入り込むための空間を提供する複数の内部空隙を形成する。
【0013】
さらに、リチウムイオン電池等の電池で利用される電気化学的活物質を含む電極組立体が提供される。さらに、当該電極組立体の製造方法が提供される。所定の実施形態に係る製造方法では、1以上のエレクトロスピニング処理を行なう。例えば、導電基板上にファイバーの層を成膜するエレクトロスピニング処理を行う。このファイバーは、1以上の電気化学的活物質を含むとしてよい。同じ実施形態または別の実施形態では、このファイバまたは同様のファイバは、1以上の電気化学的活物質を成膜するためのテンプレートとして利用され得る。活物質の例を一部挙げると、シリコン、スズ、および/または、ゲルマニウムがある。さらに、第1の活物質を含むコアと、第2の活物質を含むシェルまたは任意で第2のシェル(周囲を取り囲むように設けられる内側シェル)とを備える電極ファイバーが提供される。第2の活物質は、電気化学的に第1の活物質とは反対の特性を持つ(例えば、コアは負極活物質を含み、シェルは正極活物質を含む。1以上のシェルは、セパレータおよび/または電解質として機能し得る。
【0014】
所定の実施形態によると、電気化学的活物質を含む電極組立体の製造方法が提供される。電極組立体は、リチウムイオン電池等の電池で利用可能である。当該方法は、第1の面および第2の面を有する薄膜基板を用意する段階と、エレクトロスピニング法で形成された第1のファイバを有する第1の層を、エレクトロスピニング成膜法を用いて第1の面に成膜する段階とを備える。エレクトロスピニング法で形成されるファイバは、1以上の電気化学的活物質を含む。当該方法はさらに、エレクトロスピニング成膜法を用いて、エレクトロスピニング法で形成された第2のファイバを含む第2の層を成膜する段階を備えるとしてよい。所定の実施形態によると、当該方法では、アニーリング、仮焼、炭化、焼結、押圧、および、冷却といった処理のうち1以上を実行する。
【0015】
所定の実施形態によると、基板の第2の面上に第2の層を成膜する。第1の層および第2の層は、厚みが略同じであってよく、組成が略同じであってよい。所定の実施形態によると、第1の層は負極活物質を含む。第2の層は、正極活物質を含むとしてよい。さらに、薄膜基板は、透過性膜を含むとしてよく、例えば、電池用セパレータ、電池用電解質、または、電池用のセパレータおよび電解質の組み合わせを含むとしてよい。所定の実施形態によると、第1の層および/または第2の層は、複数の別個のパッチを含み、当該パッチは、パッチ同士の間では基板の第1の面および/または第2の面の一部が露出するように基板上に配置されている。この複数の別個のパッチは、2つの機械的停止部および/または一の電気遮蔽部を用いて形成されるとしてよい。
【0016】
所定の実施形態によると、第2の層は、第1の層の上方に成膜される。当該方法はさらに、エレクトロスピニング法で形成された第3のファイバを含む第3の層を第2の層の上方に成膜する段階と、エレクトロスピニング法で形成された第4のファイバを含む第4の層を第3の層の上方に成膜する段階と、第1の層を基板から分離して4つの層、つまり、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層を含む積層体を形成する段階とを備えるとしてよい。第1の層は、1以上の電気化学的活物質を含む、エレクトロスピニング法で形成されるファイバを含む。エレクトロスピニング法で形成される第3のファイバは、異なる活物質を含む。例えば、第1の層が正極活物質を含む一方、第3の層が負極活物質を含むとしてよく、またはこの逆であってもよい。第4の層および第2の層は、厚みが略同じであってよく、組成が略同じであってよく、電池用セパレータ、電池用電解質、または、電池用のセパレータおよび電解質の組み合わせを含むとしてよい。当該方法はさらに、4つの層を有する積層体を巻回してジェリーロール部を形成して、ジェリーロール部を電池筐体内に配置する段階を備えるとしてよい。
【0017】
所定の実施形態に係る電極組立体は、電解質材料を含む。同じ実施形態または他の実施形態では、第1の層のエレクトロスピニング法で形成されるファイバは、2つのファイバー群を含み、第1のファイバー群が一の電気化学的活物質を含み、第2のファイバー群が別の電気化学的活物質を含む。電気化学的活物質の例としては、シリコン、ゲルマニウム、および、スズが挙げられる。具体的な例としては、電気化学的活物質は、シリコンナノワイヤを含む。所定の実施形態によると、エレクトロスピニング法で形成されるファイバの層を成膜するために用いられる基板は、銅箔、ステンレススチール箔、アルミニウム箔、チタン箔、マイラー(登録商標)フィルム、ポリマー紙、カーボンファイバ紙、および、カーボンファイバメッシュといった複数の種類のうち1種類以上の一続きで断続していない箔である。所定の実施形態によると、第1の層を成膜する段階は、液体状の前躯体をエレクトロスピニングノズルから供給する段階を有する。液体状の前躯体は、ポリマーをベースとして活物質の粒子を含む。
【0018】
所定の実施形態に係る電極層の製造方法は、エレクトロスピニング法で形成されたファイバを含む第1の層を成膜する段階を備える。当該ファイバは、コアシェル型構造を持ち、1以上の電気化学的活物質を含む。当該方法では、第1の層に対して処理を施して、エレクトロスピニング法で形成されるファイバの形状および/または組成を変化させて電極層を形成するとしてよい。処理によって、固体であるコアは中空円筒体に変化する。処理としては、エレクトロスピニング法で形成されたファイバから溶媒を乾燥させる処理、および/または、アニーリング、仮焼、炭化、焼結、押圧および/または冷却等の1以上の成膜後処理が含まれるとしてよい。
【0019】
所定の実施形態に係る、電極層の製造方法では、エレクトロスピニング法で形成されたファイバを含む第1の層を成膜する。エレクトロスピニング法で形成されたファイバは、ポリマー材料を含むとしてよい。当該方法ではさらに、エレクトロスピニング法で形成されたファイバの周囲にアモルファスシリコンコーティングを形成して、第1の層を処理して、電極層を形成するとしてよい。エレクトロスピニング法で形成されたファイバは、電気化学的活物質を含むとしてよい。
【0020】
所定の実施形態に係る、電池の電極で利用される電極用ファイバは、第1の電気化学的活物質を有するコアと、コアの周囲に形成されているシェルと、シェルの周囲に形成されており、第1の活物質と反対の電気化学的特性を持つ第2の電気化学的活物質を含む第2のシェルとを備える。内側シェルは、セパレータ材料および/または電解質材料を含むとしてよく、コアと第2のシェルとの間を電子的に絶縁する機能を持つとしてよい。シェルはさらに、コアと第2のシェルとの間で電気化学的活性イオンを輸送するように構成されているとしてよい。
【0021】
本発明の上記およびその他の側面は、図面を参照しつつさらに以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】所定の実施形態に係る、高容量の電気化学的活物質を含む相互接続された中空ナノ構造を持つ電極層を用意する方法を説明するための処理フローチャートである。
【0023】
【図2A】所定の実施形態に係る、基板および複数のテンプレートパッチを備える組立体を示す概略斜視図である。
【0024】
【図2B】所定の実施形態に係る、基板および複数のテンプレート構造を備える組立体を示す概略側面図である。
【0025】
【図3A】所定の実施形態に係る、高容量の材料を含むナノスケールコーティングを形成する前の、基板に近接して、且つ、互いに近接して設けられている2つのテンプレート構造を備えるテンプレートを示す概略図である。
【0026】
【図3B】所定の実施形態に係る、2つの結合構造を含む、2つのテンプレートの周囲および基板表面上に形成されている、相互接続された中空ナノ構造を備える電極層を示す概略図である。
【0027】
【図4】所定の実施形態に係る電極層製造プロセスの3つの異なる段階における構造の様子を一例として示す概略図である。
【0028】
【図5A】所定の実施形態に係る電極構成例を示す概略上面図である。
【図5B】所定の実施形態に係る電極構成例を示す概略側面図である。
【0029】
【図6A】所定の実施形態に係る円形に巻いた構成のセルの例を示す概略上面図である。
【図6B】所定の実施形態に係る円形に巻いた構成のセルの例を示す概略斜視図である。
【0030】
【図7】所定の実施形態に係る角柱状に巻いた構成のセルの一例を示す概略上面図である。
【0031】
【図8A】所定の実施形態に係る複数の電極および複数のセパレータシートから構成される積層体の一例を示す概略上面図である。
【図8B】所定の実施形態に係る複数の電極および複数のセパレータシートから構成される積層体の一例を示す概略斜視図である。
【0032】
【図9】実施形態に係る巻いた構成のセルの例を示す概略断面図である。
【0033】
【図10】電気化学セルを製造する一般的なプロセスの一例を示す図である。
【0034】
【図11】所定の実施形態に係る電極を構成する1以上の層を成膜するためのエレクトロスピニングデバイスの一例を示す図である。
【0035】
【図12】所定の実施形態に係る電極を構成する1以上の層を成膜するためのエレクトロスピニング装置の一例を示す図である。
【0036】
【図13】所定の実施形態に係る電極を構成する1以上の層を成膜する一般的なプロセスの一例を示す図である。
【0037】
【図14A】エレクトロスピニングノズルから射出した電池用ファイバの一例を示す図である。
【0038】
【図14B】所定の実施形態に係る電池用ファイバの例を2つ示す図である。
【0039】
【図15A】所定の実施形態に係る、基板および4つの電池層を備えるパッチを示す上面図である。
【図15B】所定の実施形態に係る、基板および4つの電池層を備えるパッチを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の説明では、本発明を完全に理解していただくべく具体的且つ詳細な内容を数多く記載する。本発明は、以下に記載する具体的且つ詳細な内容の一部または全てを採用することなく実施するとしてもよい。また、公知の加工処理については、本発明を不要にあいまいにすることを避けるべく、詳細な説明を省略している。具体的な実施形態に基づき本発明を説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではないと理解されたい。
【0041】
<序論>
高容量の電気化学的活物質から、蓄電池で利用されるナノ構造を形成することができる。ナノ構造は、大構造に比べると、電池サイクルにおける劣化が非常に遅い傾向にある。これは、ナノ構造は粉状化されにくいので、電極の導電性電流コレクタとの電気接触が維持されるためである。しかし、活物質の装着を適切なものとしつつナノ構造を備える電極活性層を製造するのは困難である。例えば、複数のナノ構造を機械的に配置して、支持して、そして電気的に相互接続すること、および、その後にこの配置および相互接続を多数のサイクルにわたって維持することは困難である。例えば、直径が0.05〜0.10マイクロメートルに過ぎない固体ナノ粒子は、通常は50〜100マイクロメートルの厚みを持つ活性層である基板に対する導電性を確保するためには、多くの電気接続および中間構造を利用しなければならない。例えば、ナノ粒子と導電性添加剤との間を直接接触させることによって形成される初期電気接続は、リチオ化/充電中にナノ粒子が膨張すると、失われてしまうことが多い。ナノ粒子は、膨張すると、他の構成要素から離れてしまう。非リチオ化/放電中にナノ粒子が縮小すると、多くの初期接続は失われてしまう場合があり、実質的には「不活性」粒子となる、「接続されていない」活性粒子が発生してしまう。別の種類のナノ構造として、ナノフィルムが挙げられる。ナノフィルムは通常、厚みが0.1〜0.25マイクロメートル未満であるので、電極表面の単位面積当たりに含有可能な活物質の量が非常に少量になってしまい、大半の電池用途としては適切な容量が得られない。
【0042】
本明細書に開示する相互接続された中空ナノ構造では、上述したナノ構造が持つ幾つかの有益な特性を組み合わせて、従来の固体構造では実現し得なかった新しい特性および機能を実現する。電池の電極で利用される中空シリコンナノ構造の一例を、図3Bに示す。当該中空ナノ構造は、ナノスケールのシェルを備えるが、他の寸法ははるかに大きくするとしてもよい。例えば、ナノチューブは、内径を最高で5マイクロメータとして、長さを最高で50マイクロメータ、時にはこれより長くするとしてもよい。このように比較的大きなナノチューブであっても、ナノスケールシェルが薄いので、リチオ化/非リチオ化のサイクルで大規模な粉状化を引き起こすことはない。このようなナノチューブには、活物質が拡大した際に収容され得る空隙が内側に設けられているいずれの特定の理論にも限定されることはないが、アモルファスシリコン等の高容量の材料は、中空構造に配置される場合には、他のナノ構造に配置される場合とは、膨張/縮小挙動が異なると考えられている。この相違点が意外なことに、新型ナノ構造の電池サイクル中の安定性に貢献することが分かっている。これは、新型電極層が組み込まれた電池のサイクル寿命が並外れて長いことから明らかである。例えば、実験結果によると、140サイクルを超えても2000mAh/g以上の安定した容量が得られることが分かった。
【0043】
相互接続された中空ナノ構造は、テンプレート構造の周囲に高容量の材料を含むコーティングを形成することによって、用意できる。所定の実施形態によると、複数のテンプレート構造が、互いに対して、または、基板に対して比較的近接した位置に配置される場合、コーティング層同士が重複して、結合構造が形成される。この後、テンプレートは、一部または全体を除去および/または縮小させて、ナノ構造の内部に空洞を形成する。電極層および製造方法は、上記およびその他の側面について以下でより詳細に説明する。
【0044】
<プロセス>
図1は、所定の実施形態に係る、高容量の電気化学的活物質を含む相互接続された中空ナノ構造を持つ電極層を用意する方法を説明するためのプロセスフローチャートである。プロセス100は、処理102において複数のテンプレート構造を備えるテンプレートを受け取ることから開始されるとしてよい。テンプレート構造の例としては、高アスペクト比(例えば、少なくとも約4、10または50)のファイバおよび中空の管(例えば、カーボンナノチューブ)、粒子(例えば、略円形の粒子)、薄片、粒子または球体、および、その他の種類のテンプレート構造が挙げられる。テンプレートは一般的に、後に中空ナノ構造へと変形し得る高容量材料のコーティングを形成する上で適切な表面を提供するのであればどのような形状を持つとしてよい。テンプレート構造の主要断面寸法(例えば、ファイバおよび粒子の直径)は、約1ナノメートルと5000ナノメートルとの間であってよく、より具体的には、約10ナノメートルと1000ナノメートルとの間であってよく、さらに具体的には100ナノメートルと500ナノメートルとの間であってよい。特定の実施形態によると、テンプレートは、複数のランダムに配向されたファイバを備える。ファイバは、直線状であってもよいし(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ)、または、曲線状であってもよい(例えば、エレクトロスピニング法で形成されるポリマーファイバ)。ファイバは、長さが平均で少なくとも約100ナノメートルであってよく、より具体的には、少なくとも約1マイクロメートルであってよく、または、少なくとも約50マイクロメートルであってもよい。
【0045】
ファイバまたはその他のテンプレート構造はそれぞれ、各テンプレート構造にコーティング層が成膜される際に、当該コーティング層のうち少なくとも一部が重複して結合構造が形成されるように、互いに比較的近接して配置されるとしてよい。言い換えると、テンプレート構造間の距離は、少なくとも一部について、コーティング層の厚みの2倍未満でなければならない。一部のテンプレート構造は、互いに直接接触しているとしてもよい。例えば、ランダムに配向された複数のファイバの層は、各ファイバが他のファイバとの間で少なくとも2つの接触点を持つテンプレートとして利用され得る。
【0046】
所定の実施形態によると、テンプレートは、孔隙率が約20%と80%との間であり、より具体的には、約50%と70%との間である。成膜する層の厚みを大きくするためには、および/または、(例えば、電解質のマイグレーションを改善するために)孔隙率が高い電極層を形成するためには、孔隙率を高くする必要があるとしてよい。テンプレートの孔隙率は、他の要因にも左右される電極層の孔隙率とは区別すべきである。所定の実施形態によると、複数のテンプレート構造が、別の共通要素、例えば、電流コレクタ基板等の基板に取着されている。このような実施形態では、複数のテンプレート構造は、互いに接触することなく存在し得る。例えば、金属シリサイドナノワイヤは、金属基板上に形成して、テンプレートとして利用可能である。このようなテンプレートの例は、米国仮特許出願第61/310,183号(発明の名称:「電気化学的に活性のシリサイド含有構造」、出願日:2010年3月3日)に記載されている。当該仮特許出願は、参照により本願に組み込まれる。尚、このようなテンプレートであっても、テンプレート構造間で偶発的に接触している箇所が幾つかあるとしてよい。
【0047】
テンプレートは、少なくとも初期段階は、高容量のコーティングを形成する際の処理条件に対する耐性を持つ必要がある。テンプレートは、陥没、縮小、および/または、その他の形状の歪みはある程度まで許容され得るが、形成されたコーティングに対して初期段階では機械的支持力を提供可能である必要がある。最終的に中空ナノ構造が形成できなくなるまで大きく形状が歪むことは回避しなければならない。このために、ロバスト性のテンプレート材料(例えば、耐熱性材料)を選択するか、または、特定の方法でコーティング条件を制御するとしてよい。これについては以下で詳細に説明する。
【0048】
テンプレート材料の例としては、さまざまなポリマー材料(例えば、ポリアクリルナイトライド(PAN)(酸化PANファイバとして)、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンおよびポリビニル)、炭素をベースとする材料(例えば、グラファイト、コークス、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ)、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム)、金属酸化物、および、金属シリサイドが挙げられる。エレクトロスピニング法で形成されるファイバまたは任意のその他の形態として提供され得るテンプレート材料は、米国仮特許出願第61/183,529号(発明の名称:「電池の電極を製造するためのエレクトロスピニング法」、出願日:2009年6月2日)に記載されている。当該仮出願は、参照により本願に組み込まれる。
【0049】
テンプレートが形成する層は、厚みが約1マイクロメートルと300マイクロメートルとの間、より具体的には、約10マイクロメートルと150マイクロメートルとの間、さらに具体的には約50マイクロメートルと100マイクロメートルとの間であるとしてよい。この層は後に、電極層の境界を画定する層になるとしてよい。テンプレートの層は、後に形成される電極の寸法(例えば、長さおよび/または幅)を画定する独立したパッチとして形成されるとしてよい。この例については、図2Aを参照しつつさらに後述する。
【0050】
所定の実施形態によると、テンプレート層は、コーティング前に、基板層に隣接して配置される。基板層は、例えば、厚みが約5マイクロメートルと50マイクロメートルとの間、より具体的には、約10マイクロメートルと30マイクロメートルとの間である薄箔であってよい。他の実施形態によると、基板層は、メッシュ、穿孔処理されたシート、発泡体等である。このような実施形態によると、テンプレートは、基板層の内部に配置されるとしてよい。例えば、テンプレート構造はメッシュワイヤから延伸する樹状突起である。基板材料の例としては、銅、コーティング有りの金属酸化物およびコーティング無しの金属酸化物、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、ニッケル、クロム、タングステン、金属窒化物、金属炭化物、炭素、カーボンファイバ、グラファイト、グラフェン、カーボンメッシュ、導電ポリマー、または、これらの材料を組み合わせた多層構造が挙げられる。所定の実施形態によると、基板は、複数の機能層および/または保護層を有するとしてよい。例えば、触媒層、拡散バリア層、および/または、接着層を有するとしてよい。これらの層のさまざまな例は、米国仮特許出願第61/260,297号(発明の名称:「電極の製造で利用される中間層」、出願日:2009年11月11日)に記載されている。当該仮出願は、参照により本願に組み込まれる。
【0051】
図2Aは、所定の実施形態に係る、基板202および複数のテンプレートパッチ204を備える組立体200を示す概略斜視図である。組立体200は、例えば、基板202上にテンプレートファイバをエレクトロスピニング法で直接形成することで、または、事前にエレクトロスピニング法で形成されたファイバを基板202上に成膜することで、形成されるとしてよい。テンプレートパッチが基板の両面に設けられる場合がある。活性層の配置のさまざまな例については、電極および電池に関連して以下で説明する。所定の実施形態によると、テンプレートパッチ204の長さは、最終製品である電池用電極の長さまたは幅に対応する。支持基板202は、製造工程の後の段階で、切断して複数のテンプレートパッチを電極毎に分割するとしてもよい。
【0052】
図2Bは、所定の実施形態に係る、基板212および複数のテンプレート構造214を備える組立体210を示す概略側面図である。テンプレート構造214の一部は、基板に根付いた構成とすることが出来、これによってテンプレートと基板212との間を機械的に接続することができる。テンプレートの一部が電極層に残る場合には、このように基板に根付いた構成を採用することによって、少なくともある程度は、電極層に対する機械的支持および/または導通状態が得られることにつながるとしてよい。基板に根付く構成は、米国特許出願第12/437,529号(発明の名称:「ナノ構造を備える蓄電池用電極」、出願日:2009年5月7日)に記載されているようにさまざまな形態を取り得る。当該出願は、参照により本願に組み込まれる。一部の実施形態によると、テンプレートは基板に結合されていない。図3Aおよび図3Bに関連付けて後述するように、活物質コーティングを形成することによって基板に結合されるとしてよい。他の結合処理および/または他の材料を利用するとしてもよい。例えば、基板上に接着層を形成して、活物質構造と基板との接着度を高めることができる。他の実施形態によると、テンプレート構造214は、例えば、バインダを用いて一時的に基板212上で支持される。バインダは、後に、高容量の材料をコーティングを形成する前または形成中に除去される。他の例を挙げると、テンプレート構造214は、静電力または磁力を利用して基板212上に支持される。
【0053】
図1に戻って、受け取ったテンプレートは、高容量コーティングを形成する前に、処理104において前処理が施されるとしてよい。前処理の例としては、テンプレート構造同士を相互接続する処理、テンプレートを基板に取着する処理、テンプレートを所定の所望の形状にする処理および/またはテンプレートの孔隙率を所定の所望の水準にする処理、テンプレートを熱的に安定化させる処理、テンプレートの組成を変更する(例えば、ポリマーを炭化する)処理および導電率を変更する処理、および、その他のさまざまな目的のために実行される処理が挙げられる。所定の実施形態によると、テンプレートを押圧して、テンプレートの孔隙率を低減するか、または、目標とする厚みを実現する。これは、例えば、結果として得られる中空ナノ構造間の相互接続をより強固にするためである。ポリマーをベースとするテンプレートは、押圧時に少なくとも約摂氏100度まで、より具体的には少なくとも約摂氏150度まで加熱するとしてよい。
【0054】
同じ実施形態または別の実施形態によると、ポリマーをベースとするテンプレートは、処理104において、熱的に安定化されるとしてよい。例えば、ポリマーをベースとするテンプレート構造は、約摂氏100度と摂氏300度との間の温度まで、より具体的には、約摂氏150度と摂氏250度との間の温度まで、約1時間と48時間との間の期間にわたって、より具体的には、約12時間と28時間との間の期間にわたって、不活性雰囲気(例えばアルゴン雰囲気)において加熱することができる。所定の実施形態によると、酸化剤をチャンバに追加して、酸化物層を形成する(例えば、酸化PANを形成する)としてよく、さらにテンプレート構造の一部を完全に焼成してテンプレート構造の寸法および/または組成を変化させるとしてよい。
【0055】
ポリマーをベースとするテンプレートはさらに、部分的または全体的に、熱分解または炭化するとしてよい。例えば、炭化することによって、その後の処理のための熱安定性および表面特性の改善につながるとしてよい。所定の実施形態によると、テンプレートを炭化するためには、約摂氏300度と摂氏2000度との間の温度まで、より具体的には約摂氏500度と1700度との間の温度まで、約0.25時間と4時間との間の期間、より具体的には、約0.5時間と2時間との間の期間にわたってテンプレートを加熱する。炭化または熱分解は、さまざまな環境で実行するとしてよいが、通常は不活性環境または還元環境である。
【0056】
プロセス100では続いて、処理106において、1以上の高容量の活物質を含むナノスケールコーティングをテンプレートの周囲に形成するとしてよい。当該コーティングは、平均して、厚みが約5ナノメートルと1000ナノメートルとの間であってよく、より具体的には約10ナノメートルと500ナノメートルとの間であってよく、さらに、約20ナノメートルと100ナノメートルとの間であってよい。この厚みは、少なくとも部分的に、コーティングされた材料の組成、および、コーティングされた材料によって形成されたシェルの断面寸法(例えば、直径)によって決まるとしてよく、そして、上述したようにテンプレートの寸法によって決まるとしてよい。
【0057】
高容量の活物質は、理論上のリチオ化能力が少なくとも約600mAh/gである任意の電気化学的活物質と定義される。このような材料の例としては、シリコン含有材料(例えば、結晶性シリコン、アモルファスシリコン、その他のシリサイド、酸化シリコン、亜酸化シリコン、酸窒化シリコン)、スズ含有材料(例えば、スズ、酸化スズ)、ゲルマニウム、炭素含有材料、金属水素化物(例えば、MgH)、金属シリサイド、金属リン化物および金属窒化物が挙げられる。他の例としては、炭素−シリコンの混合材料(例えば、炭素でコーティングされたシリコン、シリコンでコーティングされた炭素、シリコンがドーピングされた炭素、炭素がドーピングされたシリコン、および、炭素およびシリコンを含む合金)、炭素−ゲルマニウムの混合材料(例えば、炭素でコーティングされたゲルマニウム、ゲルマニウムでコーティングされた炭素、ゲルマニウムがドーピングされた炭素、炭素がドーピングされたゲルマニウム)、および、炭素−スズの混合材料(例えば、炭素でコーティングされたスズ、スズでコーティングされた炭素、スズがドーピングされた炭素、および炭素がドーピングされたスズ)が挙げられる。所定の実施形態によると、コーティングは、理論上のリチオ化能力が上記の値に満たない活物質を含むとしてよい。このような活物質は、高容量の活物質と組み合わせて用いることも、また単体で用いることもできる。
【0058】
この方法を用いて、負極層および正極層の両方を形成するとしてよい。正極用の電気化学的活物質の例としては、さまざまなリチウム金属酸化物(例えば、LiCoO、LeFePO、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiCoAl、LiFe(SO)、フッ化炭素、フッ化鉄(FeF)等の金属フッ化物、金属酸化物、硫黄およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、このような正極活物質および負極活物質にドーピングを行なったもの、および、非化学量論的なものも利用し得る。ドーパントの例としては、周期表の第III族および第V族の元素(例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、およびビスマス)およびその他の適切なドーパント(例えば、硫黄およびセレニウム)が挙げられる。
【0059】
所定の実施形態によると、当該コーティングは、結合構造を複数形成する。結合構造において、互いに近接しているテンプレート構造を被覆している少なくとも2つのコーティング層が重複している。また、コーティングは、テンプレートの近傍に基板が設けられていれば、基板上にも成膜されるとしてよい。この場合、基板界面でも結合構造が形成され得る。言い換えると、コーティングは、複数のテンプレート構造の周囲に形成されている複数の層と、そして、所定の実施形態では、さらに基板表面上に形成される層とから構成される相互接続網として説明できる。テンプレートの周囲に形成された層は、最終的に得られることになる相互接続された中空ナノ構造のシェルまたはシェルの一部を形成する。このプロセスおよび対応する構造の具体例は、図3Aおよび図3Bを参照しつつより詳細に以下で説明する。
【0060】
図3Aは、基板302と、2つのテンプレート構造304aおよび304bとを備える初期の組立体301を示す図であり、テンプレート構造の周囲に活物質のコーティングを形成する前の様子を示す図である。所定の実施形態によると、この組立体301がテンプレートとして提供される。テンプレート構造304aおよび304bは、両者間の間隙が可変であるものとして、且つ、下側のテンプレート構造304aと基板302との間の間隙が可変であるものとして図示されている。一部の領域において、この間隙が高容量のコーティングの厚みの2倍未満であり、その位置において結合構造が形成されることになる。
【0061】
図3Bは、306a、306b、および306cの3層から構成される高容量のコーティングを形成した後の、処理後の組立体303を示す図である。元のテンプレート構造304aおよび304bは、処理後の組立体303に存在するとしてもよいし、存在しないとしてもよい。このコーティング層は、2つの結合構造308および310を形成するものとして図示されている。具体的に説明すると、結合構造308は、層306aと306bとが重複する箇所に形成されている。上述したように、テンプレート構造304aおよび304bは、この箇所において、離間距離がコーティングの厚みの2倍未満であった。同様に、結合構造310は、下側のテンプレート構造304aと基板302との間の距離に起因して、層306aと306cとが重複する箇所にも形成された。このような結合構造308および310によって、最終的に得られる中空ナノ構造に対する機械的な支持が得られると同時に、リチオ化箇所と基板302との間に電子の経路が得られる。
【0062】
所定の実施形態(不図示)によると、テンプレートは、少なくとも2種類の異なるテンプレート構造を備えるとしてよい。ある種類のテンプレート構造は、コーティングに利用可能な表面積が大きいものであってよく、つまり、面状テンプレート構造であってよい。このような面状テンプレート構造は、十分な表面積が得られるように、サイズが相対的に大きく、アスペクト比も相対的に高く、テンプレート中で主流となっている。別の種類のテンプレート構造は、主に電極層内で形成される結合構造の数を多くするために用いられるとしてよく、つまり、相互接続用テンプレート構造であってよい。相互接続用テンプレート構造は一般的に、面状テンプレート構造の間にはまるように、相対的にサイズが小さく、アスペクト比も低いとしてよい。例えば、ナノファイバとナノ粒子とを組み合わせて複合テンプレートとして利用して、上記の効果を実現するとしてよい。
【0063】
高容量のコーティングは、さまざまな成膜技術を用いて形成するとしてよい。例えば、プラズマ化学気相成長(PECVD)法およびサーマル化学気相成長(CVD)法を含むCVD法、電気メッキ法、無電解メッキ、および/または、溶媒成膜技術等を用いるとしてよい。以下では、PECVD法の例をより詳細に説明する。テンプレートは、約摂氏200度と摂氏400度との間の温度まで、具体的には、約摂氏250度と摂氏350度との間の温度まで加熱される。処理チャンバには、シリコン含有先駆体(例えば、シラン)と、1以上のキャリアガス(例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム、および、二酸化炭素)とを含む処理ガスを導入する。具体例では、シランおよびヘリウムの組み合わせを、シラン濃度を約5%と20%との間、より具体的には、約8%と15%との間に設定して、用いる。処理ガスはさらに、ホスフィン等のドーパント含有材料を含むとしてよい。チャンバ内圧力は、約0.1Torrから10Torrの間、より具体的には、約0.5Torrと2Torrとの間の圧力で維持されるとしてよい。シラン分解を促進するために、チャンバ内でプラズマを生成するとしてもよい。プラズマを利用することで、テンプレート温度を低減させることにつながるとしてよい。これは、テンプレートの一体性を保持する上で重要である。所定の実施形態では、パルス状PECVD法を利用する。
【0064】
以下で説明するプロセスパラメータ(つまり、RF電力および流量)は、サーフィス・テクノロジー・システムズ(Surface Technology Systems)社(英国、ニューポート)製のSTS MESC Multiplex CVDシステムについて設定されるパラメータである。このシステムは、直径が最大で4インチまでのテンプレート/基板を処理することが出来る。当業者におかれては、こういったプロセスパラメータはチャンバの種類および基板サイズを変化させるとそれに合わせて増減させることが出来ると理解されたい。RF電力は、約10Wと100Wとの間の電力に維持されるとしてよく、処理ガスの流量は総合的に見て、約200sccmと1000sccmとの間、より具体的には、約400sccmと700sccmとの間の流量に維持されるとしてよい。
【0065】
具体的な一実施形態によると、アモルファスシリコンのコーティングの形成は、圧力を約1Torrに維持した処理チャンバで実行する。処理ガスは、約50sccmのシランと、約500sccmのヘリウムを含む。活物質にドーピングを実行する場合には、15%のホスフィンを約50sccmで処理ガスに追加するとしてよい。基板温度は、約摂氏300度で維持する。RF電力レベルは、約50ワットに設定される。
【0066】
上述したように、テンプレート構造、特に、ポリマーをベースとしたテンプレート構造の形状が大きく歪むのを避けるべく、処理106の少なくとも初期において処理条件を制御することが必要になる場合がある。コーティング形成処理のある時点において、最初に形成したコーティングをそれ以降の機械的支持力として利用することが可能となり、それ以降は形状の歪みを懸念することなく処理条件は調整することができる。例えば、処理条件は、コーティングの成膜速度を高めるように調整されるとしてよい。
【0067】
所定の実施形態によると、処理106では、処理条件が異なる2つ以上の段階を実行する。例えば、初期成膜段階およびバルク成膜段階である。第1の段階および第2の段階とも呼ぶ。一例を挙げると、高容量のコーティングの形成は、低温で開始され、処理106のある時点において温度を上げる。処理条件の変更は、漸次的に行なうとしてもよいし、または、階段状に行なうとしてもよい。処理条件の変更は、コーティングのうち少なくとも約10%が形成された時点において実施するとしてもよいし、または、より具体的には、コーティング層の少なくとも約25%または少なくとも約50%が形成された時点で実施するとしてもよい(例えば、コーティングの厚みまたは重量に応じて決まる)。所定の実施形態によると、約摂氏250度未満まで、より具体的には、約摂氏200度未満まで、さらに約摂氏150度未満まで、テンプレートを加熱すると、初期成膜段階を実行する。そして、温度を、少なくとも約摂氏150度、より具体的には、少なくとも約摂氏200度、または少なくとも約摂氏250度まで上昇させるとしてよい。初期成膜段階は一般的に、テンプレートの物理的一体性が維持される条件下で実行する。このような実施形態によると、コーティングの自己支持が可能となるまで、この条件を維持する。その時点を過ぎると、より積極的な条件を利用して、例えば、成膜速度を上げるとしてよい。バルク成膜段階では、テンプレートの物理的一体性を懸念することなく、より積極的な条件を利用できる。尚、多くの実施形態において、テンプレートは大部分が犠牲的に利用される。活物質の形状を画定するための役割を果たした後は、利用されない。
【0068】
図4は、所定の実施形態に係る電極層製造プロセスの3つの異なる段階における構造の様子を一例として示す概略図である。同図では、テンプレートが変形する例を示している。より具体的には、コーティング処理においてテンプレートの一部を除去する場合を示している。尚、テンプレートは一般的に、一部または全体を、コーティング形成中に、削除および/または縮小させることが可能である。これに代えて、テンプレートは、コーティング形成処理では処理を行なわず、完全にそのまま残されるとしてもよい。このような後者の実施形態では、その後の処理で、テンプレートを少なくとも部分的に、または、完全に除去および/または縮小させる。尚、テンプレートの形状を変化させることに加えて、または、それに代えて、さらに処理106またはその後の処理において、テンプレートの組成を変化させる、例えば、炭化させるとしてよい。
【0069】
第1の段階401では、コーティングが無いテンプレート構造402を図示している。この段階は、処理106を開始する前に見られるとしてよい。テンプレート構造402は、図4に示すように固体であってよく、または、中空であってよい(不図示)。第2の段階403では、同じテンプレート構造402に対して、高容量の活物質が構造402の周囲に形成されて薄いコーティング404が設けられた様子を図示している。上述したように、処理条件は、テンプレート構造402の形状がこの段階で大きく変形しないように選択されるとしてよい。この段階403において、最初に形成されたコーティング404は、テンプレート402からの支持の有無に関わらず、自身を支持するのに十分な強度を持つとしてよい。このため、この時点において処理条件を変更することができる。新しい処理条件によって、テンプレートが除去および/または縮小されるとしてよい。この結果、残ったテンプレート構造408内には、第3の段階405で示すように、空隙410が形成される。コーティングの大半は、第2の段階と第3の段階との間で形成されるとしてよく、これによって最終的にコーティング406が形成されるとしてよい。
【0070】
図1に戻って、プロセス100は続いて、処理108において、電極層からテンプレート材料を部分的または完全に除去および/または縮小するとしてよい。この処理は任意である。上述したように、除去および/または縮小は、処理106のコーティング形成でも実行するとしてよい。所定の実施形態によると、追加で除去および/または縮小を実行する必要はない。他の実施形態では、除去および/または縮小は、処理106で行なわれて、処理108でも再度行なわれる。さらに別の実施形態では、除去および/または縮小は、処理108でのみ実行されて、処理106ではテンプレートは処理を行なわずそのままとする。例えば、アモルファスシリコン層を形成するために用いられる金属テンプレートは、当該アモルファスシリコン層を形成する処理には影響を受けず、後にエッチングで除去されるとしてよい。
【0071】
処理108で利用される除去/縮小方法は、部分的に、テンプレートおよびコーティングの材料に応じて決まる。例えば、ポリマーテンプレートは、高温で、例えば、少なくとも約摂氏300度、より具体的には少なくとも約摂氏400度、またはさらに少なくとも約摂氏500度に加熱することによって、完全焼成またはアニーリングすることができる。テンプレート材料のうち十分な量を完全焼成するためには、少なくとも約1時間、より具体的には、少なくとも約4時間かかるとしてよい。所定の実施形態によると、テンプレート(例えば、金属テンプレート)は化学エッチングで除去する。例えば、酸化シリコンのコアテンプレートは、フッ化水素(HF)酸溶液を用いたエッチングで除去されるとしてよい。一般的に、酸性溶液を用いたエッチングで、初期テンプレートとして用いられているさまざまな金属ファイバまたはシリサイドファイバを除去することができる。
【0072】
所定の実施形態によると、略全てのテンプレート材料をナノチューブ構造から除去する。他の実施形態では、テンプレート材料の一部を残す。尚、このように残った材料は最初のテンプレート材料とは組成が異なる場合がある(例えば、ポリマーは炭素に変化し得る等)。同じ実施形態または他の実施形態では、残ったテンプレート材料またはその派生物は、電極層の重量の約25%未満、より具体的には、約10%未満を占めている。このような残った材料は、電極層の導電率および電気化学的容量の改善、望ましくないSEI層形成からの保護、構造変化(例えば、体積膨張)の抑制、および、その他の目的で利用されるとしてよい。
【0073】
プロセス100は続いて、処理110において、相互接続された複数の中空ナノ構造の上に第2のコーティングを形成するとしてよい。第2のコーティングは、ナノ構造の外側表面上に形成されるとしてよく、このために外側コーティングと呼ぶとしてよい。一般的に、第2のコーティングは、炭素、金属(例えば、銅、チタン)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化シリコン)、および、金属窒化物、および、金属炭化物を含むとしてよい。所定の実施形態によると、外側コーティングの炭素含有率は、少なくとも約50%であり、より具体的な実施形態では、少なくとも約90%または少なくとも約99%である。所定の実施形態によると、外側コーティングは、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、金属酸化物(例えば、酸化チタン)、および/またはその他の材料を含むとしてよい。外側コーティングは、相互接続された複数の中空ナノ構造の露出面(例えば、外側表面全体、または、内側表面および外側表面の両方)を略全面にわたってコーティングするとしてよい。所定の実施形態によると、外側コーティングの厚みは、約1ナノメートルと100ナノメートルとの間であり、より具体的な実施形態では約2ナノメートルと50ナノメートルとの間である。具体的に説明すると、外側コーティングは、高容量のコーティングが電解質溶液と直接接触しないように(そして、問題となるSEI層を形成しないように)抑制しつつも、電気活性イオンは高容量のコーティングとの間で輸送されるようにするために用いられ得る。
【0074】
外側コーティングを形成する方法では、炭素をベースとする小分子(例えば、糖類)またはポリマーを成膜した後にアニーリングを実行するとしてよい。別の方法では、炭素をベースとする気体の熱分解を実行するとしてよい(例えば、アセチレンを用いる)。例えば、炭素含有外側コーティングは、メタン、エタン、または、任意のその他の適切な炭素含有前躯体を、ニッケル、クロム、モリブデンまたは任意のその他の適切な触媒(または、全く触媒を用いないとしてもよい)の上を通過させて、ナノ構造上に炭素の層を成膜することによって、形成するとしてよい。他の方法としては、ナノ構造を有機媒体でコーティングして、有機媒体を後で焼成して炭素残留物を残す方法が挙げられる。例えば、相互接続された複数のナノ構造を、グルコース溶液またはポリマー溶液に浸漬するとしてよい。当該溶液をナノワイヤメッシュに入り込ませた後で、当該溶液から引き出して焼成する。グルコースの場合、ナノ構造上に炭素残留物が残る。酸化チタン等の酸化物を含む外側コーティングの形成は、ベース材料(例えば、チタン)を溶液から成膜することから開始されるとしてよい。この場合、原子層堆積(ALD)法または金属メッキ法を用いるとしてよい。その後、例えば、高温で成膜物を酸化剤に暴露することによって、ベース材料の酸化物を形成する。酸化シリコンは、例えば、CVD、ALD、またはその他の成膜方法を利用する処理108および/またはその他のコーティング処理において、形成することができる。
【0075】
図1に具体的に図示されているプロセス100が含むその他の処理は、電極層を押圧する処理、電極層を機能化する処理、および、電極層から電池用電極を形成する処理を含むとしてよい。さらに下流の処理を、電極および電池の構成に関連付けて以下で説明する。
【0076】
<電極層の例>
上述したプロセスを利用して、高容量の活物質を含む相互接続された複数の中空ナノ構造の電極層を用意することが出来る。中空ナノ構造は、中空の球体、管、またはその他の形状を持つとしてよく、左右対称および左右非対称のどちらであってもよい。中空ナノ構造の空隙の最大内側断面寸法(例えば、円形構造の内径)は、約1ナノメートルと1000ナノメートルとの間であってよく、より具体的には、約5ナノメートルと500ナノメートルとの間であってよく、または約10ナノメートルと100ナノメートルとの間であってよい。空隙によって、活物質が膨張した際に入り込む空間が得られ、他のナノ構造にとって大きな障害となったり(例えば、押しのけたり)当該ナノ構造自体を粉状化させたりという事態を回避する。具体的な実施形態によると、中空のナノ構造のうち一部または全て(例えば、少なくとも約50%)は、断面寸法および/または空隙の開口サイズが小さ過ぎて、当該電極層を電池に組み込んでも電解質が入り込まず、空隙を充填することもない。このため、中空ナノ構造の空隙は、少なくとも通常の電池動作の間は、実質的に電解質が無い状態を維持するとしてよい。
【0077】
所定の実施形態によると、中空ナノ構造は、シェルの厚みが所定の値を取る。ナノ構造の他の寸法は十分に大きく(例えば、数マイクロメートルおよびミリメートルであってもよい)してよいが、シェルの厚みは一般的に、約1000ナノメートル未満である。上述したように、シェルを薄くすることによって、サイクル中の高容量の活物質の粉状化を最小限に抑え得る。所定の実施形態によると、シェルの厚みは、平均して約5ナノメートルと1000ナノメートルとの間であってよく、より具体的には約10ナノメートルと500ナノメートルとの間であってよく、さらに約50ナノメートルと250ナノメートルとの間であってもよい。電極層の孔隙率は、ナノ構造の空隙も含めて、約20%と90%との間であってよい。より具体的な実施形態では、孔隙率は約40%と80%との間である。
【0078】
所定の実施形態によると、ナノ構造の形状は略管状である。このようなナノチューブは、長さが少なくとも約100ナノメートルであってよく、より具体的には少なくとも約1マイクロメートルであってよく、さらに、少なくとも約50マイクロメートルであってよい。ナノチューブは、長さ方向に沿って、結合構造を持つとしてよい。結合構造は、隣接するナノ構造同士を物理的または金属で結合する。結合構造は通常、隣接するナノ構造同士の間に直接電子をやり取りする経路を提供し、隣接するナノ構造同士の間に導電経路を設けるための外部導電部(例えば、カーボンブラック)を必要としない。
【0079】
電極層は、導電基板に固定されるとしてもよい。所定の実施形態によると、導電基板の各面に2つの電極層が設けられている。さまざまな基板の例を上述している。電極層は、活性層と呼ばれることもあり、電池の正極または負極として、または、固体電解質として利用可能である。この構成については以下でさらに説明する。
【0080】
このような新型の電極層が組み込まれた蓄電池は、少なくとも約2000mAh/gという安定した電気化学容量を、(電極層の活物質の総重量に応じて変わるが)少なくとも100サイクルにわたって、維持することが可能である。同じ実施形態または他の実施形態によると、電池は、少なくとも約700mAh/gという安定した電気化学容量を少なくとも約100サイクルにわたって維持することが可能である。
【0081】
<電極および電池の構成>
上述した電極層は、電池用の正極および/または負極を形成するために利用することができる。電池用電極から通常、積層体またはジェリーロール型部材が形成される。図5Aは、所定の実施形態に係る、正極502と、負極504と、2個のシート状のセパレータ506aおよび506bとを備える整列積層体を示す側面図である。正極502は、正極層502aおよび正極用非コーティング基板部分502bを有するとしてよい。同様に、負極504も、負極層504aおよび負極用非コーティング基板部分504bを有するとしてよい。多くの実施形態によると、負極層504aの露出領域は、正極層502aの露出領域よりわずかに大きくなっている。これは、負極層504aの挿入材料によって正極層502aから放出されるリチウムイオンを捕獲するためである。一実施形態によると、負極層504aは、1以上の方向(通常は全方向)において、正極層502aよりも、少なくとも約0.25mmと5mmとの間の長さ分だけ大きくなる。より具体的な実施形態によると、負極層は、1以上の方向において、約1mmと2mmとの間の長さ分だけ正極層よりも大きくなる。所定の実施形態によると、シート状のセパレータ506aおよび506bの端縁は、少なくとも負極層504aの外縁を超えて延在しており、電極を他の電池構成要素から絶縁する。正極用非コーティング部分502bは、正極への接続を構築するために用いられるとしてよく、負極504および/またはシート状のセパレータ506aおよび506bを超えて延在するとしてよい。同様に、負極用非コーティング部分504bは、負極への接続を構築するために用いられるとしてよく、正極502および/またはシート状のセパレータ506aおよび506bを超えて延在するとしてよい。
【0082】
図5Bは、整列積層体の上面図である。正極502は、2つの正極層512aおよび512bが平坦な正極電流コレクタ502bの互いに対向する面に設けられているものとして図示されている。同様に、負極504は、2つの負極層514aおよび514bが平坦な負極電流コレクタの互いに対向する面に設けられているものとして図示されている。正極層512a、対応するシート状セパレータ506a、および、対応する負極層514aの間に間隙がある場合には通常、特に蓄電池の最初のサイクルの後は、最小限から存在しない程度の大きさである。電極およびセパレータは、ジェリーロール型部材としてきつく巻回されているか、または、積層体を構成している。積層体は、ぴったりとした筐体に挿入される。電極およびセパレータは、電解質が導入された後に筐体内で膨張する傾向があり、初期のサイクルで、リチウムイオンが2つの電極の間をセパレータを貫通して循環することによって、間隙または乾燥領域が無くなる。
【0083】
巻回式が一般的な構成である。複数の細長い電極を2枚のシート状のセパレータと共に巻回して、ジェリーロール体とも呼ばれる中間組立体を形成する。中間組立体は、曲線状の筐体、通常は円筒状の筐体の内側寸法に合った形状およびサイズを持つ。図6Aは、正極606および負極604を備えるジェリーロール体を示す上面図である。電極間の白い部分はシート状のセパレータを表すジェリーロール体は筐体602に挿入される。一部の実施形態によると、ジェリーロール体は、中心にマンドレル608が挿入されているとしてよく、マンドレル608によって最初に巻回する際の直径を画定して、内側の巻きが中央軸領域を形成しないようにする。マンドレル608は、導電材料を材料とするとしてよく、一部の実施形態では、電池端子の一部であってよい。図6Bは、正極用タブ612および負極用タブ614が延伸しているジェリーロール体を示す斜視図である。これらのタブは、電極基板のうち非コーティング部分に溶接されているとしてよい。
【0084】
電極の長さおよび幅は、蓄電池全体の寸法、ならびに、電極層および電流コレクタの厚みに応じて決まる。例えば、直径が18mmで長さが65mmである従来の18650電池は、電極の長さが約300mmと1000mmとの間であるとしてよい。低レート/高容量の目的に合わせて短くした電極では、厚みが大きく、巻き数が少なくなる。
【0085】
電極がサイクル時に膨張して筐体に圧力をかけるので、一部のリチウムイオン電池では円筒形状が望ましいとしてよい。円形の筐体は、十分な圧力を維持しつつも十分に薄くするとしてよい。角柱形状の電池も同様に巻回するとしてよいが、この場合は筐体が内圧から長辺に沿って屈曲してしまう場合がある。また、電池の各部分で圧力が一定にならない場合があり、角柱形状の電池では角が空いたままとなる場合もある。リチウムイオン電池で空いた部分があるのは望ましくない。これは、電極が膨張するとこの空いた部分に不均一に押し込まれてしまうためである。また、電解質が集まって電極間の空いた部分に乾燥領域が出来てしまい、電極間のリチウムイオンの輸送に悪影響が出てしまう場合がある。しかし、矩形形状因子が支配的な所定の用途では、角柱形状の電池が適切である。一部の実施形態によると、角柱形状の電池は、矩形の電極およびシート状セパレータの積層体を利用して、巻回型の角柱形状の電池が持つ問題の一部を回避する。
【0086】
図7は、巻回型の角柱形状のジェリーロール体を示す上面図である。ジェリーロール体は、正極704および「負極706を備える。電極間の白い部分は、シート状のセパレータを表している。ジェリーロール体は、矩形角柱形状の筐体に挿入されている。図6Aおよび図6Bに示す円筒形状のジェリーロール体とは違って、角柱形状のジェリーロール体は、ジェリーロール体の中央にある平坦幅広部分から巻回を開始している。一実施形態によると、ジェリーロール体は、中央にマンドレル(不図示)が配置され、マンドレルに電極およびセパレータを巻きつけるとしてもよい。
【0087】
図8Aは、正極および負極が交互に設けられると共に電極間にはセパレータが設けられているセットを複数(801a、801b、および801c)備える積層型電池を示す側面図である。積層型電池の利点の1つとして、積層体をどのような形状にも出来るという点が挙げられ、特に角柱形状の電池に適している。しかし、積層型電池は通常、正極及び負極の電極群を複数設けることが必要となり、電極のアラインメントが複雑になる。電流コレクタタブは通常、各電極から延伸して電池端子につながる総合電流コレクタに接続される。
【0088】
上述したように電極を配置すると、電池に電解質を充填する。リチウムイオン電池の電解質は、液体、固体、またはゲルであってよい。電解質が固体であるリチウムイオン電池は、リチウムポリマー電池とも呼ばれる。
【0089】
通常の液体の電解質は、1以上の溶媒および1以上の塩を含み、そのうち少なくとも1つがリチウムを含む。最初の充電サイクル(形成サイクルとも呼ばれる)において、電解質に含まれる有機溶媒が部分的に負極表面上で分解されて、固体電解質界面(solid electrolyte interphase:SEI)層が形成される。この界面は通常、電気絶縁性であるがイオン伝導性は持ち、リチウムイオンは通過させることができる。この界面はさらに、その後の充電サブサイクルにおいて電解質が分解しないように抑制する。
【0090】
一部のリチウムイオン電池に適した非水系の溶媒の例を幾つか挙げると、環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC))、ラクトン(例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)およびα−アンゲリカラクトン(AGL))、直鎖カーボネート(例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(NBC)、および、ジブチルカーボネート(DBC))、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン、および、1,2−ジブトキシエタン)、亜硝酸塩(例えば、アセトニトリルおよびアジポニトリル)、直鎖エステル(例えば、プロピオン酸メチル、ピバル酸メチル、ピバル酸ブチル、ピバル酸オクチル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、有機リン酸塩(例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリオクチル)、および、S=O基を含む有機化合物(例えば、ジメチルスルホンおよびジビニルスルホン)、ならびに、これらの組み合わせがある。
【0091】
非水系の溶媒は、組み合わせて利用することができる。組み合わせの例を挙げると、環状カーボネート−直鎖カーボネート、環状カーボネート−ラクトン、環状カーボネート−ラクトン−直鎖カーボネート、環状カーボネート−直鎖カーボネート−ラクトン、環状カーボネート−直鎖カーボネート−エーテル、および、環状カーボネート−直鎖カーボネート−直鎖エステルといった組み合わせがある。一実施形態によると、環状カーボネートと直鎖エステルとを組み合わせるとしてよい。さらに、環状カーボネートと、ラクトンおよび直鎖エステルとを組み合わせるとしてよい。具体的な実施形態によると、環状カーボネートと直鎖エステルとの体積比率は、約1:9と10:0との間であり、2:8から7:3の間であることが好ましい。
【0092】
液体状の電解質に用いられる塩は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiCFSO、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C、LiPF(iso−C)、環状アルキル基を含むリチウム塩(例えば、(CF(SO2xLiおよび(CF(SO2xLi))、ならびに、これらの組み合わせのうち1以上を含むとしてよい。一般的な組み合わせとしては、LiPFおよびLiBF、LiPFおよびLiN(CFSO、LiBFおよびLiN(CFSOが挙げられる。
【0093】
一実施形態によると、非水系溶媒(1種類または複数種類の組み合わせ)における塩の総濃度は、少なくとも約0.3Mであり、より具体的な実施形態では、少なくとも約0.7Mである。濃度の上限は、溶解度の上限によって決まるとしてよいが、約2.5M以下になるとしてよい。より具体的な実施形態では、約1.5M以下である。
【0094】
固体状の電解質は通常、セパレータとしても機能するので、セパレータを省略する。固体状の電解質は、電気絶縁性およびイオン伝導性を持ち、電気化学的に安定している。固体状の電解質を用いる構成の場合、上述した液体状の電解質を用いる電池と同様に、リチウム含有塩を用いるが、有機溶媒に溶解されるのではなく、固体ポリマー複合体の内部に保持される。固体ポリマー電解質の例としては、電解質の塩のリチウムイオンが結合可能で伝導時に移動する孤立電子対を持つ原子を含むモノマーから用意されるイオン伝導性ポリマーが挙げられるとしてよく、例えば、フッ化ポリビニリデン(PVDF)または塩化ポリビニリデンまたはその派生物のコポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロ−エチレン)、または、ポリ(フッ素化エチレン−プロピレン)、酸化ポリエチレン(PEO)およびオキシメチレンが結合されたPEO、三官能性ウレタンで架橋されたPEO−PPO−PEO、ポリ(ビス(メトキシ−エトキシ−エトキシド))−ホスファゼン(MEEP)、二官能基ウレタンで架橋されたトリオール型PEO、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート−コ−アルカリ金属メタクリレート、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PNMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサンおよびこれらのコポリマーおよび派生物、アクリレートをベースにするポリマー、その他の同様の無溶媒ポリマー、上記のポリマーを凝縮または架橋して組み合わせて形成した別のポリマー、および、上記のポリマーのうち任意のものを物理的に混合したものが挙げられるとしてよい。これ以外にも比較的低導電性のポリマーを上記のポリマーと組み合わせて用いて、薄型積層体の強度を上げるとしてもよい。例えば、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)、硫化ポリフェニレン(PPS)、および、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。
【0095】
図9は、一実施形態に係る巻回型で円筒形状の電池を示す断面図である。ジェリーロール体は、らせん状に巻き回した正極902と、負極904と、2つのシート状のセパレータ906とを備える。ジェリーロール体は電池筐体916に挿入されており、キャップ918およびガスケット920を用いて電池を封止している。尚、所定の実施形態では、後続の処理(つまり、処理208)を完了するまでは電池を封止しないことに留意されたい。キャップ912または筐体916が安全装置を有する場合がある。例えば、電池内で圧力が過剰な水準まで高まると壊れて開く安全弁または破裂弁を用いるとしてよい。所定の実施形態によると、一方向気体放出弁を設けて、正極材料が活性化される際に放出される酸素を放出する。また、正温度係数(PTC)装置をキャップ918の導電経路に組み込んで、電池で短絡が発生した場合の損傷を低減するとしてよい。キャップ918の外面を正の端子として利用するとしてよく、電池筐体916の外面を負の端子として利用するとしてよい。別の実施形態によると、電池の極性を逆にして、キャップ918の外面を負の端子として利用し、電池筐体916の外面を正の端子として利用するとしてよい。タブ908および910は、正極および負極と、対応する端子との間を接続するために用いられるとしてよい。内部短絡が発生しないように抑制するべく、適切な絶縁性を持つガスケット914および912を挿入するとしてよい。例えば、内部絶縁のためにKapton(登録商標)膜を用いるとしてよい。製造時には、キャップ918を筐体916に圧着して電池を封止するとしてよい。しかし、この処理を実行する前に、電解質(不図示)を追加してジェリーロール体の多孔質空間を充填する。
【0096】
リチウムイオン電池では剛性が高い筐体を必要とするのが普通であるが、リチウムポリマー電池は可撓性の箔(ポリマー積層体)のような筐体にパッケージングするとしてよい。この筐体の材料としてはさまざまな材料を選択し得る。リチウムイオン電池の場合、Ti−6−4、その他のTi合金、Al、Al合金、および、300シリーズのステンレススチールが正側の導電筐体部分および終端キャップに適した材料であるとしてよく、市販の純チタン、Ti合金、Cu、Al、Al合金、Ni、Pbおよびステンレススチールが負側の導電筐体部分および終端キャップに適した材料であるとしてよい。
【0097】
金属シリサイドは、上述した電池での利用に加えて、燃料電池(例えば、負極、正極、および、電解質)、ヘテロ接合太陽電池用活物質、さまざまな形態の電流コレクタ、および/または、吸収性コーティングでも利用され得る。これらの用途には、金属シリサイド構造の広い表面積、シリサイド材料の高い導電率、および、高速且つ低コストの成膜技術といった特徴から利点を得るものもある。
【0098】
<エレクトロスピニング法>
電気化学電池を製造する通常のプロセス1000を図10に示す。当該プロセスでは、2種類の電極を用意するための複数の処理が実行された後、2種類の電極を組み合わせて電池を完成させる。製造プロセスのうち電極準備段階1200は特に、労働集約的な段階である。通常、当該プロセスは、活物質を混合してスラリーを形成すること(ブロック1002および1102)から開始され、このスラリーを対応する基板にコーティングする(ブロック1004および1104)。コーティングされたスラリーを焼成して、溶媒を蒸発させて、固体コーティングを形成する(ブロック1006および1106)。コーティング処理および焼成処理を、各電極の他方の面について繰り返す。この後、電極に対して押圧処理(ブロック1008および1108)およびスリット形成処理(ブロック1100および1200)を実行するとしてよい。その後、正極および負極を積層または巻回して(ブロック1202)、電気接続部を取着して、電極組立体を筐体内に配置することによって、動作可能な電池を製造し(ブロック1204)、その後で電解質を充填し、封止を行い、形成用の充電/放電サイクルを実行する(つまり、電池を形成する)(ブロック1206)。
【0099】
図示したプロセスには、活物質を用意するための上流処理、例えば、所望のサイズおよび組成を持つ構造(例えば、粒子、ファイバ)を形成する処理は含んでいない。このような処理のために、電池製造プロセスの電極用意段階1200がさらに複雑になってしまう。また、所定の材料および形状(例えば、長いファイバ)は、従来の加工技術では加工が容易ではない。
【0100】
所定の例では、図10に図示した処理以外の処理を用いて電極を用意する。例えば、基板に根付いたナノワイヤは、前躯体材料から、基板に直接成膜するとしてよい。このような処理の一部は、米国特許出願第12/437,529号(出願日:2009年5月7日)、米国特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日)に記載している。両特許文献の内容は、活物質および電極構造、ならびに、対応する製造プロセスを説明するために、参照により本願に組み込まれる。
【0101】
ナノ構造、より具体的には、ナノファイバとして形成される活物質は、独特な予想外の電気化学特性を示し、所定の電極での利用が非常に望ましいとしてよい。例えば、シリコンナノワイヤは、繰り返し特性が良好な高容量のアノードへのリチウム挿入時にシリコン破壊限界を超える応力レベルが加えられることなく形成することができる。また、粒子に代えて長尺状構造(1つの寸法が、他の2つの寸法よりも大幅に大きい構造)を利用することで、所定の電気的特性および機械的特性を始めとする他の特性を改善することができる。
【0102】
<エレクトロスピニング装置>
エレクトロスピニング技術を適宜変更することによって電気化学電池用の活物質および電極の製造に利用できることは予想外の発見であった。エレクトロスピニング処理では、電荷を利用して、粘性材料または粘弾性材料等の液体状前躯体の液体流を薄く形成する。液体状前躯体は後に、固化してファイバとなる。エレクトロスピニング処理は、エレクトロスプレー処理および従来の解決方法である乾式紡糸(ドライスピニング)と、所定の特徴が共通している。エレクトロスピニングでは、溶解した前躯体および融解した前躯体の両方を利用するとしてよい。
【0103】
図11は、所定の実施形態に係るエレクトロスピニングデバイス2000の一例を示す図である。当該エレクトロスピニングデバイスは、液体状前躯体2004を保持するための容器2002を備えるとしてよい。容器2002は、シリンジ、供給管、または、その他の任意の適切な容器であってよい。容器2002には、液体状前躯体が補充される。所与の機構(不図示)を用いて、液体状前躯体2004の組成、濃度、粘度およびその他のパラメータを適切な値にするとしてよい。容器2002は、容器2002から液体流を薄く出すための1以上のノズル2006を有しているとしてよい。各ノズル2006は、固化するとファイバになる液体状前躯体の液体流をそれぞれ別個に出す。所定の実施形態によると、さらに以下で説明するが、液体流および結果的に生成されるファイバは、複数の材料がさまざまに組み合わせられているとしてよい。例えば、コアシェル構造を含むとしてよい。このようなプロセスでは特別な複合型の同軸ノズルを利用する。
【0104】
ノズルの構成は、放出する液体流および結果的に得られるファイバの寸法、断面プロフィール、および、その他のパラメータを左右する。エレクトロスピニング処理で制御され得るノズルの構成以外の処理パラメータとしては、ポリマー分子の重量、分子の重量分布および構造、ポリマー溶液特性(例えば、粘度、伝導率、誘電率、表面張力)、電位、流量、濃度、針と基板との間の距離、外囲温度、および、湿度等が挙げられる。上記のパラメータのうち一部については、さらに後述する。
【0105】
一部の実施形態によると、ファイバは、コレクタプレートに当たる際の衝撃による平坦化、または、屈曲可能なポリマー皮膜を形成することによって、平坦化構造/帯状構造を形成するとしてよい。平坦化形状の場合のポリマーおよび溶媒の例として、ポリビニルアルコールおよび水、ポリエーテルイミドおよびヘキサフルオロ−2−プロパノール、ナイロン−6およびヘキサフルオロ−2−プロパノール、ポリスチレンおよびジメチル−ホルムアミドまたはテトラヒドロフランが挙げられる。さらに所定のポリマー(例えば、フッ化ポリビニリデン、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルイミド)は、液体流が不安定なので、分岐状構造を形成することが可能である。
【0106】
ノズル数を始めとするさまざまな要因によって、成膜速度が決まる。可動ウェブ全体にわたって設けられた複数のノズルを用いて、適切な成膜速度を実現すると共にウェブ全体でのナノファイバの分布を均一化するとしてよい。所定の実施形態によると、ノズル数は、約1個と1000個との間であってよく、より具体的には10個と200個との間であってよく、より具体的には50個と150個との間であってよい。ノズル数を多くすると(直径が同じと仮定する場合)出力が増加し、高速ウェブ成膜処理で求められる要件を満たすが、一部の実施形態によると、ファイバの数が多くなると各ファイバの配置が難しくなるという問題があるとしてよい。例えば、後述する電池用ファイバの実施形態では、各ファイバを成膜後に別個に取り扱うが、このために並行処理で利用するノズル数に制限が課されてしまう。
【0107】
所定の実施形態によると、ノズル2006は、金属針である。ノズルは一般的に、導電材料から形成されている。ノズルの内径は通常、所望されるファイバ直径および上記の所定の処理パラメータ(例えば、粘度、表面張力、印加電圧、距離)に応じて決まる。ノズル構成の他のパラメータとして、先端形状が挙げられる。例えば、平坦な先端であってよい。上記のパラメータは、先端の終端において液体流が形成するテイラーコーンが、結果的に得られるファイバが途切れないような円滑な液体流を提供できるように、選択されて組み合わせられる。
【0108】
ノズル2006は、電源2008(例えば、5−50kV)に接続されている。電源2008はさらに、導電材料から形成されているコレクタプレート2100に接続されている。コレクタプレート2100は、回転ドラム、可動ウェブ、またはその他の形状を持つとしてよい。ノズル2006に対してコレクタプレート2100を移動させることによって、ファイバの分布および回収を均一化する。所定の実施形態によると、ノズル2006およびコレクタプレート2100は両方を移動させるとしてもよい。
【0109】
所定の実施形態によると、ノズルアレイのうち1以上のノズルは、残りのノズルがそれぞれ液体流を出していても、液体流を止める(つまり、オフにする)としてよい。このためには、オフに制御する必要がある所定のノズルに印加される電圧をオフに制御するとしてよい。ノズルアレイにおいて、面上のファイバの分布を所望の値とするためには、液体流を適宜オン/オフ制御するとしてよい。
【0110】
コレクタプレート2100とノズル2006との間に印加される電圧が十分に高くなると、液体状前躯体2004の液体流がノズル2006から引き出されるとしてよい(つまり、静電力が表面張力を上回ることになる)。最初に、液滴がノズルに形成される。この液滴が延びて最終的に臨界点で噴出して液体流が形成される。噴出時点での液体の形状は、テイラーコーンと呼ばれることもある。
【0111】
電圧は、ノズル先端において液体状前躯体の表面張力を克服するために、且つ、液体を引き出して液体流を形成するために十分高いレベルでなければならない。同時に、コレクタプレートに対して液体流が途切れず出て行くように、移動中の液体流内では静電力が表面張力を上回らないことが一般的には好ましい。前躯体の液体流はプレートに向かって加速されることによって、延びて薄くなるとしてよい。また、液体流は、液体流内の静電反発力によって生じる「泡立て」処理によって延伸されるとしてよい。液体流内の静電反発力は、最初は少し屈曲させる程度であるが、コレクタに向かうにつれて大きくなる。
【0112】
エレクトロスピニング処理で一般的に考慮されるパラメータを以下に列挙する。液体状前躯体に含まれるポリマーの平均分子重量(ポリマーの分子重量の分布および構造特性を含む)、溶液特性(例えば、粘度、伝導率および表面張力)、電位、流量、ノズルとコレクタプレートとの間の距離、外囲条件(温度、湿度および気流)、コレクタの動き等を考慮する。
【0113】
図12は、移動中のウェブ基板上に電極材料の層を1以上エレクトロスピニング法で成膜する装置2200の一例を示す図である。装置2200は、基板ウェブ2206を成膜領域に供給する巻き出しロール2202と、層が成膜された後の基板を回収する巻き取りロール2204とを備える。基板ウェブ2206は、システムコントローラ2208に制御される所定の速度で成膜領域を通過するように移動する。所定の実施形態によると、基板ウェブの速度は、約1メートル/分と100メートル/分との間であり、より具体的には約2メートル/分と30メートル/分との間である。
【0114】
装置2200は、1以上のエレクトロスピニング部(構成要素2208および2302)と、1以上の成膜後処理部(構成要素2300および2304)とを備えるとしてよい。図2では、基板の互いに対向する面上にファイバを成膜する2つのエレクトロスピニング部と、2つの成膜後処理部とを備える装置を図示しているが、両構成要素の数および構成は任意であると理解されたい。さらに詳細な内容については図13を参照しつつ後述する。
【0115】
エレクトロスピニング部(構成要素2208および2302)は、1以上のファイバを基板2206に成膜する。所定の実施形態によると、成膜されたファイバは、電極と共に活性層を形成する。エレクトロスピニング部は、基板のウェブ全体にわたって、且つ、基板のウェブに沿って、層が均一になるように構成されている。例えば、エレクトロスピニング部は、基板の幅方向に移動するノズルを有するとしてよい。また、同図に示す装置は、基板上に成膜したファイバの量を測定する(例えば、レーザ後方散乱、ベータ線貫通、ガンマ線後方散乱)センサが、基板上のさまざまな箇所に備えられているとしてよく、これに応じて成膜パラメータを調整するとしてよい。
【0116】
成膜後処理部(構成要素2300および2304)は、成膜されたファイバを新しい物質に変換するために用いられるとしてよく、成膜されたファイバの形状および/または機能を変化させるとしてよい。例えば、成膜後処理部は、成膜されたポリマー状のファイバをセラミックファイバに変換し、残りの溶媒を蒸発させ、成膜された層の分布を変化させ、および/または、成膜された層を押圧し、その他の効果を得るための焼結を実行するために用いられるとしてよい。成膜後処理のさらに詳細については、図13を参照しつつ後述する。
【0117】
基板2206は、金属箔であってよい。この場合、図12に図示しているシステムコントローラ2306の一部である電源の一の接点は、基板2206に電気的に結合される。例えば、成膜領域と対応するノズルとの間に十分な電圧勾配が形成されるように、成膜領域の下方に電気ブラシが設けられる。一部の実施形態では、ロールのうち一方を用いて電源に対して接触するとしてよい。複数のエレクトロスピニング部をサポートするための基板に対する接触点は1つで十分であるとしてよい。
【0118】
他の実施形態によると、基板2206は絶縁材料である。例えば、電源は、基板2206の後方に配置されている導電部材(例えば、プレート、ロール)に取着されているとしてよい。
【0119】
エレクトロスピニング法は通常、ファイバがランダムに配向されている不織布としてファイバを成膜する。所定の実施形態によると、エレクトロスピニング装置のコレクタは、成膜されたファイバを一軸方向に整列させるための、絶縁間隙等の特別なフィーチャを含む。
【0120】
システムコントローラ2306はさらに、成膜処理を行うエレクトロスピニング部の処理パラメータを制御するために利用されるとしてよい。このような処理パラメータの一部は、図11に関連付けて上述している。エレクトロスピニング処理およびエレクトロスピニング装置のさらに詳細な内容については、米国特許第6,713,011号(発行日:2004年3月30日、Chu,B他)、Ramakrishna,S.、「Electrospinning and Nanofibers(エレクトロスピニングおよびナノファイバ)」、2005年出版、ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co.)、および、Andrady,A.、「Science and Technology of Polymer Nanofibers(ポリマーナノファイバの科学技術)」、2008年出版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley&Sons)に記載されている。これらの文献は、上記の詳細な内容を説明するために参照により本願に組み込まれる。
【0121】
<プロセス>
図13は、所定の実施形態に係る、1以上の層(例えば、アノード−セパレータ−カソード等の複数の電極層、1層の複合層、または、これら2つの組み合わせ)を成膜する一般的なプロセスの一例を示す図である。当該プロセスは、基板を成膜領域に供給することから開始されるとしてよい(ブロック3002)。成膜領域は通常、コレクタによって画定される。コレクタは、基板自体であってもよいし、または、基板の下方に位置するエレクトロスピニング装置の別の構成要素であってもよい(後者の場合、基板は絶縁材料で形成される)。基板がコレクタとして機能する場合(つまり、基板とノズルとの間に電圧が印加される場合)、成膜領域は、機械的な止め具(例えば、ファイバが成膜領域外に成膜されないようにするための壁)または電気的なシールド(例えば、ノズルと基板との間の電界を整形し直すためのバイアスリング)によって、画定されるとしてよい。
【0122】
基板は、独立したプレートまたは連続したウェブであってよい。所定の実施形態によると、基板は中間担体である(例えば、箔であって、当該箔に成膜したファイバを後で除去する)。他の実施形態によると、基板は、成膜されたファイバを取り外し不能に取着する電極の一部である。例えば、活性層間に配置されている電極の電流コレクタ、既に成膜された活性層、または、任意のその他の構成要素である。基板は、金属箔(例えば、銅箔、ステンレススチール箔、アルミニウム箔、チタン箔)、ポリマー箔(例えば、Mylar(登録商標)フィルム)、ポリマー紙(仮焼後に炭素に変換され得る)、カーボンファイバ紙、カーボンファイバメッシュ等であってよい。基板の厚みは、約1μmと1000μmとの間であってよく、より具体的な実施形態では、約5μmと100μmとの間である。
【0123】
当該プロセスでは続いて、基板表面にエレクトロスピニング法でファイバを形成して、1以上の電極層を形成する(ブロック3004)。エレクトロスピニング法の具体的な詳細については、図11に関連して上述している。一実施形態によると、ファイバの層を基板上に成膜すると、当該プロセスでは続いて、ファイバの層にのみ実行される別の処理を行う。別の実施形態によると、次の処理に進む前に、基板の互いに対向する面にそれぞれファイバの層を成膜して、ファイバの層を2層成膜する。これら2層のうち、例えば、一方の層は、アノード活物質層であってよく、他方の層は、カソード活物質層であってよい。成膜された層は、アニーリング等の後処理が必要な場合がある。一例を挙げると、一方の面に成膜された層は、他方の面に層を成膜する前にアニーリング等の処理を実行するとしてよい。別の例を挙げると、両方の層を成膜した後で、一緒に処理する。アニーリングの具体的な詳細については、処理3006に関連付けて説明する。基板の同じ面に、2つの別個の層を成膜する場合がある。これは、例えば、第1の層がアノード層またはカソード層であって、第2の層がセパレータ層である場合である。
【0124】
一般的に、一の電池層(例えば、セパレータ層、アノード層、または、カソード層)を成膜してから、別の層を成膜する処理に進む。例えば、アノード層を成膜した後で、セパレータ層を成膜して、その後にカソード層を成膜する。このように成膜することで、アノードとカソードとの間で電気的短絡が発生しないように抑制する。所定の実施形態は、本明細書では「電池用ファイバ」と呼び、上記または下記で説明しているが、ファイバから成るある構成要素(つまり、セパレータコア)が絶縁体として機能するので、上記の成膜方法は一般的には利用されないとしてよい。
【0125】
所定の実施形態によると、電池は、構成要素が異なるファイバをさらに2種類含むとしてよく、これらのファイバによって複合電極層と呼ばれるものが形成される。これらの複数種類のファイバは、1回の処理で成膜するとしてもよいし、または、一連の逐次処理で成膜するとしてもよい。例えば、一の成膜領域の上方に設けられている複数のノズルは、複数の異なる材料を射出する複数のノズルを含むとしてよい。層の組成は、所与のノズルをオフに制御することで、または、上述した手順に従って制御するとしてよい。例えば、アノード層は、1回の処理で成膜されるシリコンナノファイバおよびカーボンナノファイバを含むとしてよい。
【0126】
基板上に成膜されるファイバの配向は、電界を利用して制御するとしてよい。例えば、印加電圧を変更することで、バイアスリング、および、電界を変更するためのその他のエレクトロスピニング装置の構成要素に電圧を印加することで制御するとしてよい。成膜処理中のファイバの配向によって、成膜される層の密度、孔隙率、架橋およびその他のパラメータが決まる。所定の実施形態によると、これらのパラメータは1以上の成膜後処理で変更される。
【0127】
当該プロセスは、処理3004で1以上の層が成膜された後、成膜した層をさらに処理するための処理を任意で行うとしてもよい(処理3006)。例えば、成膜した層を、アニーリング、仮焼、焼結、冷却等により、新しい材料に変換するとしてよい。セラミックファイバを生成するために用いられる一例を挙げると、約摂氏300度と摂氏700度との間の温度で、約1時間と24時間との間の期間にわたって、焼結を実行する。他の実施形態によると、成膜後処理(ブロック3006)は、例えば、ローラ型プレス機を通過させることによって、または、所定期間にわたって2枚のプレートの間に載置することによって、成膜した層を押圧する処理を含むとしてよい。所定の実施形態によると、プレス機は、約摂氏30度と摂氏300度との間の温度、より具体的には、約摂氏50度と摂氏150度との間の温度まで加熱されるとしてよい。
【0128】
他の実施形態によると、成膜後処理(ブロック3006)は、エレクトロスピニング法で形成されたファイバの上に別の材料を成膜する処理を含む。例えば、処理3004においてエレクトロスピニング法で形成されたカーボンファイバに、アモルファスシリコンをコーティングして、「コアシェル」構造を形成するとしてよい。コアシェル構造のさらに詳細な内容については、上述した米国特許出願第61/181,637号に記載されている。尚、この参考文献に記載されている多くのコア材料はエレクトロスピニング法を用いて成膜されることに留意されたい。所定の実施形態によると、1以上のシェル材料は、コアと共に、エレクトロスピニング法を用いて形成するとしてよい。成膜後処理は、エレクトロスピニング法で利用する材料に応じて決まる。そのような材料については、対応する成膜後処理と共にさらに後述する。
【0129】
処理3004および、任意で、処理3006は、さらに成膜する必要がある層があれば、繰り返し実行されるとしてよい(判断ブロック3008)。例えば、第1のサイクル(処理3004および、任意で、処理3006を含む)は、セパレータの層を成膜するために用いられるとしてよい。このサイクルはこの後、繰り返し実行してアノード材料層、別のセパレータ層、および、カソード材料層を成膜するとしてよい。これらの層もまた、電池層と呼ぶ。この処理において成膜されたこれら4つの電池層によって、セパレータ−アノード−セパレータ−カソード積層体が形成され、この後でジェリーロール体または積層体に加工されるとしてよい。
【0130】
一実施形態によると、上述したサイクルを繰り返し実行することで、積層可能な電池(アノード−セパレータ−カソード積層体を1以上含む)を製造するとしてよい。電池を構成する層は、所望の数に到達するまで成膜されるとしてよい。このような構成とすることによって、一意的な形状因子が定義されている電池を作成することが出来ると共に、積層体を配置する際および取り扱う際に通常用いられる所与の機械的処理を省略することが可能になる。
【0131】
所定の実施形態によると、一の電池層を、1回の成膜処理ではなく、多段階プロセスまたは周期的プロセスで成膜するとしてもよい。例えば、サブ層を成膜すると、成膜処理を続行する前に、中間処理(例えば、アニーリング、別の材料をファイバにコーティング、押圧)を行う必要がある場合がある。
【0132】
基板上に全てのエレクトロスピニング層を成膜すると、所定の実施形態では1層のみから構成される、積層体全体に成膜後処理を実行するとしてよい(ブロック3010)。この処理は、任意であり、一部の実施形態では、処理3004および、任意で、処理3006が完了した直後から積層体を電池用電極として利用可能であるとしてよい。この処理の形態は、一部を処理3006に関連して既に上述している。この処理によって、エレクトロスピニング層同士の間の機械的接触および電気的接触を高めるとしてよい。
【0133】
所定の実施形態によると、積層体は、複数の電池層を備え、例えば、アノード−セパレータ、カソード−セパレータ、アノード−セパレータ−カソード、アノード−セパレータ−カソード−セパレータという構造を持つとしてよい。積層体全体に対して、アニーリング等の1以上の成膜後処理を実行する。アニーリングは、約摂氏300度と摂氏700度との間の温度で実行され、積層体を構成する材料を電池としての利用に望ましい材料に変換するとしてよい。例えば、セパレータ層を、セラミック等の無機材料に変換するとしてよい。
【0134】
一部の実施形態によると、基板を積層体から除去するとしてよい(ブロック3012)。この処理は、任意であり、一部の実施形態によると、積層体は基板と共に電極材料として利用するとしてよい。例えば、金属箔を基板として利用して、活物質を金属箔の表面上に成膜する。金属箔は、再生品である電極に電極コレクタとして残るとしてよい。
【0135】
<電池層の例>
材料は、液体状でエレクトロスピニング装置に供給される。例えば、ベースであるポリマーおよび溶媒を含む溶液、または、融液として供給される。ポリマーの例としては、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド−6、ポリ(ベンズイミダゾール)、ポリカーボネート、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)トリブロックコポリマー、ポリスルホン、ビスフェノールA、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ウレタン尿素)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、分解性ポリエステルウレタン、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリジオキサノン、ポリグリコリド、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)、フィブリノゲン分角、ゼラチン、小麦グルテンが挙げられる。溶媒の例としては、ギ酸、ヘキサフルオロ−−2−プロパノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トリクロロエタン、水、トリフルオロ酢酸、t−ブチル酢酸、クロロベンゼン、エチル酢酸、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、イソプロピルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、含水トリエタノールアミン、塩化メチレン、トリフルオロエタノールが挙げられる。
【0136】
一実施形態によると、エレクトロスピニングで利用される液体状の前駆体は、ベースとなるポリマーおよび棒状または長尺状の小さい粒子を含むスラリーである。この粒子は、エレクトロスピニング装置のノズルを通過するために十分小さくなければならない。例えば、円形の粒子は、約1μm未満、より具体的には、約100nm未満であるとしてよい。長尺状の粒子(例えば、ナノワイヤ)の直径は、約5nmと1000nmとの間であってよく、より具体的には、約10nmと300nmとの間であってよい。長尺状の粒子の長さは、約10μm未満であってよく、より具体的には約5μm未満であってよく、さらに約1μm未満であってよい。所定の実施形態では、長尺状の粒子は、米国特許出願第12/437,529号(出願日:2009年5月7日)および米国特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日)に記載しているようなナノ構造および/またはナノワイヤである。両出願は、説明のために参照により本願に組み込まれる。これらの材料は、ポリマー基材と組み合わせるとしてよい。ポリマー基材の例は上記の通りである。具体例では、ナノワイヤは、ポリマー基材と組み合わせる前に、炭素でコーティングされるとしてよい。
【0137】
別の例では、コアおよび1以上のシェルを、1回のエレクトロスピニング処理で形成するとしてよい。例えば、2種類以上の異なる材料を一の特殊なノズルを用いて同時にスピニング法で形成して、ノズルが退避すると同時にコアシェル構造が形成されるとしてよい。このような実施形態の具体例は、「電池ファイバ」と呼ばれ、以下で説明する。他の例は、活物質のコア(例えば、シリコン)および炭素のシェル、炭素のコアおよび活物質のシェル、および、炭素のコア−活物質の内側シェル−炭素の外側シェルを含むとしてよい。このような構造の一部では、コアの直径が約200nm未満であるとしてよい。炭素の外側シェルの厚みは、約50nm未満であってよい。このような構造の具体例は、米国特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日)に記載されている。当該特許文献の内容は全て、このような多層構造を説明するために、参照により本願に組み込まれる。上記のようなファイバは、エレクトロスピニング処理を1回行った後、上述した1以上の成膜後処理(例えば、仮焼、焼結、アニーリング、冷却、または、炭化)を実行することによって生成されるとしてよい。
【0138】
所定の実施形態によると、均質なファイバをエレクトロスピニング法で形成した後、当該ファイバの材料の一部のみが変換されて、組成、形状構造等の特性が異なるコアおよびシェルを形成するように処理されるとしてよい。
【0139】
正極活物質層のエレクトロスピニングに用いられる材料の例としては、LiCoO−MgO、チタン酸リチウム(LTO)等が挙げられる。例えば、LTOファイバは、ポリマー混合物においてチタンテトライソプロポキシドおよび水酸化リチウムを前駆体として用いることで生成され得る。この結果得られるポリマーファイバを、仮焼または焼結して、カーボンファイバの骨格を生成するとしてよい。ファイバにおいて、チタン前駆体は、水酸化リチウムと反応して、LTOナノ粒子を生成する。この方法を用いて、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムマンガン等の他のカソード用酸化物、および、酸化アルミニウムおよび二酸化シリコン等の無機セパレータ用酸化物を生成することができる。さらに、エレクトロスピニング法を利用して、LiFePOファイバを生成するとしてよい。尚、A123・コーポレーション社が推進しているようなさまざまなドープされたLiFePOファイバを含むとしてよい。例えば、ナノ粒子またはナノワイヤを用いた合成前の活物質を、ポリマー溶液と混合させて、ナノ材料/ポリマー懸濁液(スラリーまたはペーストとも呼ぶ)を形成することができる。このような混合溶液を用いてエレクトロスピニング法を実行することで、ナノ粒子またはナノワイヤが埋め込まれているポリマーファイバが生成され得る。炭化工程は、有機ポリマーを炭素に変換するために必要な工程であるとしてよい。
【0140】
負極活物質層をエレクトロスピニング法で形成する場合に用いられる材料の例としては、シリコン、炭素、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム、酸化スズ、Si前駆体としてのアルコキシシラン等が挙げられる。所定の実施形態によると、このような材料を、シリコンのコア/炭素のシェル、炭素のコア/シリコンのシェル、または、炭素のコア/シリコンの内側シェル/炭素の外側シェルといったコアシェル構造に編成する。同じ実施形態または他の実施形態では、層(例えば、コア、シェル)の全体または一部が、炭素およびシリコン等、複数の材料を混合させた材料で形成されているとしてよい。例えば、炭素と酸化チタンとを混合させるとしてよい。
【0141】
正極活物質および負極活物質の他の例は、米国特許出願第12/437,529号(出願日:2009年5月7日)および米国特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日)に記載されている。両出願の内容は全て、正極活物質および負極活物質を説明するために、参照により本願に組み込まれる。
【0142】
エレクトロスピニング法でセパレータ層を形成する際に利用される材料の例としては、PVDF、ポリプロピレン、無機材料(SiO、Al、TiO)、有機修飾セラミック(シリコーンおよび有機ポリマーで修飾されたAl、Si、TiおよびZrの酸化物を含む)等が挙げられる。セパレータの材料として無機材料を用いることで、セパレータの材料と他の層(例えば、カソードおよびアノード)の材料とを組み合わせることが可能となり、積層体全体を共に処理することが可能となる。これは、このような無機材料が、仮焼、焼結、アニーリング、および、炭化の際の高温に暴露されても、(ある程度までは)イオン伝導性を取得および保持し続けるためである。
【0143】
エレクトロスピニング法を利用して成膜が可能な材料および成膜後に行われる処理の例を幾つか以下の表1に示す。
【表1】

【0144】
所定の実施形態によると、エレクトロスピニング法で形成されるファイバは、直径がナノスケールである(例えば、約1000ナノメートル未満、または、約500ナノメートル未満、または約100ナノメートル未満である)。同じ実施形態または他の実施形態によると、エレクトロスピニング法で形成されるファイバは、比較的長い(例えば、少なくとも約10ミリメートル、または少なくとも約1センチメートル、または少なくとも約1メートル)。
【0145】
<電池用ファイバ>
電池用ファイバは、複数のシェルおよび、可能であれば、コアを含むファイバであって、少なくとも2つの構成要素(一のコアおよび一のシェル、または、2つのシェル)がコアによって互いから電気的に分離されている。電気的に分離するために用いられるコアは、セパレータとして機能し、分離の対象となった2つの構成要素の間でイオンが移動できるように構成されている必要がある。分離されている構成要素のうち一方は、アノード活物質を含み、他方は、カソード活物質を含む。所定の実施形態によると、(分離されている2つの構成要素のうち)内側の構成要素がアノード活物質を含み、他の例では、外側の構成要素がアノード活物質を含む。
【0146】
分離されている構成要素は、電流コレクタにファイバの長さ方向に沿って電子を渡すために十分な導電性を持つ。ファイバのアノード部に一の電流コレクタが取り付けられており、別の電流コレクタがカソード部に取り付けられている。これらの構成要素を含む内側シェルまたは延長コアにまたは外側シェルに接続が形成されるとしてよい。ファイバは、ノズルの対応する部分をオンまたはオフに制御するによって、所定の長さに形成されるとしてよい(例えば、100μmから100mm、より具体的には1mmと50mmとの間の長さ)。これについては、さらに後述する。さらに、一の電気接続を構築するために必要な延長コアまたは内側シェルは、ノズルの複数の異なる部分を同期させることによって形成されるとしてよい。
【0147】
図14Aは、エレクトロスピニングノズル4010から射出された電池用ファイバ4016を示す図である。ノズル4010は、コア、および、このコアの周囲に少なくとも2つのシェルを射出液体流で形成する。例えば、ノズル4010は、一組となっている3つの同心菅を有するとしてよい。内側の菅は、電池用ファイバのコアを形成するための材料4011を供給するとしてよい。所定の実施形態によると、コアは、溶媒を乾燥させて成膜後処理を実行した後は、中空の円筒になるとしてよい。他の実施形態によると、内側の菅は、材料を供給せず、結果的に得られる電池用ファイバはコアが無いものとなるとしてもよい。ノズル4010の内側から2番目の管は、電池用ファイバ4016の最も内側のシェルの材料4012を搬送する。次の管は、次のシェルの材料4014を搬送する。ノズルはさらに多くの管を有する構成であってもよいと理解されたい。所定の管、通常は外側の管は、複数の材料(例えば、4011、4012、4014)の噴流が組み合わせられると、ファイバの外側の境界を形成するために内側の管よりも大きく突出しているとしてよい(不図示)。さらに、管は、長くなるほど、複数の材料の噴流をまとめるために、開放端に向かうにつれてわずかにテーパー状になっているとしてよい。同じ実施形態または他の実施形態によると、複数の層を組み合わせて1つの部材を形成するべく、所望の特性(表面張力、粘度)を持つポリマーを複数選択して、複数の材料がいっしょに「壊れる」ように乾燥プロセスを制御して、ノズル4010の複数の管の間で電圧勾配を構築する。
【0148】
図14Bは、所定の実施形態に係る電池用ファイバの例を2つ示す図である。電池用ファイバ4030は、一組の同心円状の円形の円筒を形成しているコア4032、内側シェル4034、および、外側シェル4036を備えるものとして図示している。同心円状の円形ではなく、または、完全に閉じた形状を形成している他の形状も可能であると理解されたい。例えば、コアシェル構造では、コアのうち1以上が必ずしも内側のコアまたはシェルを被覆していないとしてもよい。コアシェル構造の他の形状および形態は、米国特許出願第61/181,637号(出願日:2009年5月27日)に記載されている。
【0149】
上述したように、電池用ファイバでは、少なくとも2つの構成要素が電気的に分離している。例えば、電池用ファイバ4030は、アノード材料のコア4032、セパレータ材料の内側シェル4034、および、カソード材料の外側シェル4036を備えるとしてよい。こういった材料の多くについては上述している。さらに、より多くのシェルを追加で設けているとしてもよく、コアシェル構造の他の構成要素は、アノード材料、セパレータ材料、およびカソード材料を含む。所定の実施形態によると、電池用ファイバは、アノード層−セパレータ層−カソード層の組み合わせを複数備えるとしてよく、例えば、アノードのコア−セパレータのシェル1−カソードのシェル2−セパレータのシェル3−アノードのシェル4を備えるとしてよい。
【0150】
所定の実施形態によると、ファイバのうち1以上の内側の層は、電気接続および機械的接続を形成するために延伸しており、層間を絶縁する。例えば、図14Bに、シェル4034が一端においてシェル4036を超えて延伸している電池用ファイバを図示している。コア4032はさらに延伸している。ファイバの両端でこのような構成をとる同様の例もあると留意されたい。コア4032がアノード材料を含み、内側シェル4034がセパレータ材料を含み、外側シェルがカソード材料を含む例では、コアの延長部分を用いてコア4032(およびアノード)に対する電気接続を形成するとしてよい。さらに、セパレータ(内側シェル4034)がカソード(外側シェル4036)を超えて延伸していることによって、ナノワイヤのカソードとアノードとの間の電気的絶縁を確実なものとなる。
【0151】
所定の例では、電池用ファイバは平坦部分を含むとしてよく、例えば、図14Bに示す矩形のコアシェル型ファイバ4040がその例である。この種の電池用ファイバの平坦部分は、液体流(例えば、ノズルで画定される液体流)を形成する際に形成されるか、コレクタで回収される際に平坦化されるか(例えば、衝撃または回収後に押圧することによって平坦化)、または、続いて成膜後処理を行う際に平坦化されるとしてよい。所定の実施形態によると(不図示)、平坦な電池用ナノファイバは、巻回してジェリーロール体とするか、または、積層することができる。
【0152】
<パッチ状の成膜>
図15Aおよび図15Bは、所定の実施形態に係る、基板5002と、4つの電池層(5004、5006、5007および5008)とを有するパッチを示す上面図および側面図である。このようなパッチは、上述したエレクトロスピニング処理を用いて基板上に電池層を成膜する際に形成するとしてよい。各電池層は、電極層であってよい。例えば、電池層5008がカソード材料を含み、電池層5004および5007がセパレータ材料を含み、電池層5006がカソード材料を含むとしてよい。パッチは、基板上に形成されるとしてよいが、スリットを形成して基板5002を除去すると、その他の電極構成要素またはセパレータ構成要素をさらに形成することなく、長尺状部材をすぐに巻回してジェリーロール体を形成するように形成するとしてよい。その他の実施形態によると、セパレータの層等の他の材料を巻回プロセスに追加するとしてよい。
【0153】
図15Aおよび図15Bに示すような多層電極構造では、カソード材料を含む層およびアノード材料を含む層は、電気化学電池の端子と電気接続を形成する必要がある。このような電気接続を形成するためには、各層が、積層体を越えて延伸している延長部分を持つ必要がある。図15Aおよび図15Bに示すように、電池層5008は延長部分5010を持ち、電池層5006は延長部分5012を持つ。このような延長部分は、積層体の他の層を対応する領域に成膜しないことによって、形成し得る。例えば、連続ウェブ成膜プロセスでは、他の層のファイバがこの領域に入ってこないようにエレクトロスピニング処理を制御しなければならない。上述したように、エレクトロスピニング処理は、対応するノズルに対する電圧をオフに制御することによって、または、他の方法で停止させるとしてよい。複数の異なる層を成膜する複数のノズルの動作は、所望の構造を得るために(そして、所定の層については開放延長端を得るために)同期させる。また、さまざまなセンサを利用して、既に成膜された層の端縁を検出して、端縁の位置に基づいて次の層を成膜するためのノズルを駆動するとしてもよい。
【0154】
<結論>
上記の本発明の説明では分かりやすいようにある程度詳細な内容を記載したが、特許請求の範囲において変更および変形を実施し得ることは明らかである。尚、本発明に係るプロセス、システムおよび装置を実現する方法は他にも多く存在する。したがって、上述した実施形態は、本発明を限定するものではなく例示するものと考えられたく、本発明は本明細書に記載した詳細な内容に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高容量の電気化学的活物質を含む相互接続された複数の中空ナノ構造の電極層を用意する方法であって、
複数のテンプレート構造を有するテンプレートを受け取る段階と、
前記複数のテンプレート構造の周囲に前記高容量の電気化学的活物質のナノスケールテンプレートコーティングを形成する段階と、
前記テンプレートの少なくとも一部の除去および縮小の少なくとも一方を行って、前記高容量の電気化学的活物質を含む前記相互接続された複数の中空ナノ構造の前記電極層を形成する段階と
を備える方法。
【請求項2】
前記テンプレートを受け取る段階は、ポリマー材料をエレクトロスピニング法で形成して、長さが少なくとも約5マイクロメートルである複数のテンプレートナノファイバを形成する段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートは、ポリアクリルナイトライド(PAN)、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、および、ポリビニルから成る群から選択される1以上のポリマー材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テンプレートは、厚みが約10マイクロメートルと150マイクロメートルとの間であり、孔隙率が約20%と80%との間である層として形成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テンプレートを押圧すること、前記テンプレートを熱的に安定化させること、および前記テンプレートを炭化させることの少なくとも1つによって、前記テンプレートを前処理する段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレートを熱的に安定化させることは、前記テンプレートを、アルゴン雰囲気において、約摂氏150度と摂氏250度との間の温度まで、少なくとも約2時間にわたって、加熱することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートに隣接した導電基板の表面に前記高容量の電気化学的活物質のナノスケール基板コーティングを形成する段階をさらに備え、
前記ナノスケールテンプレートコーティングおよび前記ナノスケール基板コーティングは、部分的に重複することによって、前記導電基板と、前記相互接続された複数の中空ナノ構造とを互いに相互接続している請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のテンプレート構造の周囲に前記高容量の電気化学的活物質の前記ナノスケールテンプレートコーティングを形成する段階は、
初期処理条件で実行される初期成膜段階と、
前記初期処理条件とは異なるバルク処理条件で実行されるバルク成膜段階と
を有し、
前記初期成膜段階では、前記テンプレートの形状が大きく歪むことは回避され、
前記バルク処理条件は、前記バルク成膜段階の方が前記ナノスケールテンプレートコーティングの成膜速度が速くなるように設定されている請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記テンプレートの少なくとも一部の除去または縮小は、前記複数のテンプレート構造の周囲に前記高容量の電気化学的活物質の前記ナノスケールテンプレートコーティングを形成する間に行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記テンプレートの一部の除去または縮小は、少なくとも約摂氏300度の温度で酸化剤が存在する中での前記テンプレートの焼成、前記テンプレートの化学エッチング、および、前記テンプレートのアニーリングから成る群から選択される1以上の処理を実行することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記相互接続された複数の中空ナノ構造の上方に第2のコーティングを形成する段階をさらに備え、
前記第2のコーティングは、前記電極層の導電率を高める、前記電極層の固体電解質界面(SEI)特性の改善、および前記相互接続された複数の中空ナノ構造の構造変化の制限の少なくとも一方を行う請求項1に記載の方法。
【請求項12】
蓄電池で利用される電極層であって、
アスペクト比が少なくとも約4であり、長さが少なくとも約5マイクロメートルであり、シェルの厚みが約100ナノメートル未満であり、高容量の電気化学的活物質を含む相互接続された複数の中空ナノ構造を備え、
前記相互接続された複数の中空ナノ構造は、前記高容量の電気化学的活物質が前記蓄電池のサイクルにおいて膨張して入り込むための空間を提供する複数の内部空隙を形成する電極層。
【請求項13】
前記複数の内部空隙は実質的に、前記蓄電池の電解質には到達不可能である請求項12に記載の電極層。
【請求項14】
前記電極層は、前記高容量の電気化学的活物質の重量に応じて、少なくとも100サイクル経過した後でも、少なくとも約2000mAh/gという安定したエネルギー容量を実現する請求項12に記載の電極層。
【請求項15】
2つ以上の相互接続された中空ナノ構造を相互接続する複数の結合構造をさらに備え、
前記複数の結合構造は、前記高容量の電気化学的活物質、金属、および、ポリマーバインダから成る群から選択される1以上の材料を含む請求項12に記載の電極層。
【請求項16】
導電基板をさらに備え、
追加で設けられる結合構造が、1以上の相互接続された中空ナノ構造と、前記導電基板とを相互接続する請求項15に記載の電極層。
【請求項17】
前記高容量の電気化学的活物質は、シリコン、スズ、および、ゲルマニウムから成る群から選択される1以上の材料を含む請求項12に記載の電極層。
【請求項18】
前記相互接続された複数の中空ナノ構造の外側表面を実質的に被覆する外側層をさらに備え、
前記外側層は、炭素、チタン、シリコン、アルミニウム、および、銅から成る群から選択される1以上の材料を含む請求項12に記載の電極層。
【請求項19】
前記電極層は、孔隙率が約20%と80%との間である請求項12に記載の電極層。
【請求項20】
前記蓄電池は、リチウムイオン電池であり、前記高容量の電気化学的活物質は負極活物質である請求項12に記載の電極層。
【請求項21】
アスペクト比が少なくとも約4であり、長さが少なくとも約5マイクロメートルであり、シェルの厚みが約100ナノメートル未満であり、高容量電気化学的活物質を含む相互接続された複数の中空ナノ構造を有する電極層を備え、
前記相互接続された複数の中空ナノ構造は、前記高容量電気化学的活物質が蓄電池のサイクルにおいて膨張して入り込むための空間を提供する複数の内部空隙を形成するリチウムイオン電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2012−528464(P2012−528464A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513226(P2012−513226)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036237
【国際公開番号】WO2010/138619
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511261330)アンプリウス、インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】