説明

充電装置、及びサーバ

【課題】ドライバや同乗者を待たせることなく、電気自動車等の故障を早期に発見することができる充電装置等を提供する。
【解決手段】充電装置10は、充電車両50への充電開始時に充電時間を検出すると共に、充電車両50のから、該充電車両50の型式や車両状態等を示す車両情報を取得し、さらに、サーバ40、或いは、当該充電装置10に設けられた診断情報DB104から、該型式に対応する複数の診断情報を取得する。そして、充電装置10を制御するプログラムである診断制御部101により、充電時間内に充電車両50の状態に応じた故障診断が行われるよう、車両状態に応じて診断情報が選択され、充電が開始されると、該プログラムである診断実施部102により、選択された診断情報に従って故障診断が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより走行する車両に該モータの電源として搭載されたバッテリに対し充電を行う充電装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両と情報センタとの間で無線通信を行い、該車両の故障診断を行うリモート故障診断システムが知られている。特許文献1に記載のリモート故障診断システムでは、車両から情報センタに対し故障情報が通知され、情報センタにて、故障情報に基づき車両の故障診断手順が選定される。そして、選定された故障診断手順が情報センタから車両に通知され、車両では、情報センタから受け取った故障診断手順に従い自車両の故障診断が行われる。このような構成によれば、車両から情報センタに故障情報を通知する回数や、情報センタから車両に故障診断手順を通知する回数を1回にすることができ、車両と情報センタとの間の通信負荷を抑えつつ、精度良く車両の故障診断を行うことができる。
【0003】
また、バッテリ(二次電池)を電源とするモータから駆動力を得る電気自動車や、モータとエンジンとから駆動力を得ると共に、外部から該モータの電源となるバッテリへの充電が可能なハイブリッド車が知られている。このような電気自動車等は、その走行距離等に応じた頻度でバッテリへの充電を行う必要がある。このため、バッテリに充電を行う期間に、特許文献1に記載のリモート故障診断システム等を利用して故障診断を行うことで、走行距離等に応じた頻度で故障診断を行うことができるため、電気自動車等の故障を早期に発見できると考えられる。
【0004】
これに対し、特許文献2には、ロボットへの充電を行っている最中にロボットの故障診断を行う充電ステーションについて記載されている。特許文献2に記載の発明を電気自動車等のバッテリを充電する充電装置に適用することにより、電気自動車等への充電時間を利用して故障診断を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−64651号公報
【特許文献2】特開2008−178959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の充電ステーションでは、故障診断に時間を要する場合には、充電終了後も故障診断が継続して行われてしまう可能性があり、このような場合には、先を急ぐ電気自動車等のドライバや同乗者を待たせてしまうおそれがある。
【0007】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ドライバや同乗者を待たせることなく、電気自動車等の故障を早期に発見することができる充電装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みてなされた請求項1に記載の充電装置は、モータにより走行する車両に該モータの電源として搭載されたバッテリに対し、該車両の外部から充電を行うよう構成されている。そして、バッテリへの充電の所要時間である充電時間を検出する充電時間検出手段と、バッテリへの充電を開始した後から充電時間が経過するまでの充電期間内に、充電が行われている車両に搭載されている車載装置と通信を行うことで、該車両の故障診断を行う故障診断手段と、を備える。
【0009】
なお、充電時間検出手段は、例えば、充電を行う車両に搭載されたECUと通信を行い、該ECUからモータの電源となっているバッテリの残量を取得し、バッテリの残量に基づき充電時間を算出しても良い。また、これ以外にも、例えば、ECUと通信を行い、該ECUにてバッテリの残量等に基づき算出された充電時間を取得しても良いし、バッテリの電圧を測定すると共に、測定値からバッテリの残量を検出し、検出した残量に基づき充電時間を算出しても良い。
【0010】
このような構成によれば、車両に駆動力を提供するモータの電源であるバッテリへの充電が行われる度に故障診断が行われるため、車両の走行距離等に応じた頻度で故障診断を行うことができ、早期に故障を発見することができる。また、この故障診断は、車両のバッテリへの充電時間内に行われるため、車両のドライバや同乗者に対し、故障診断のための時間をとらせることは無い。
【0011】
したがって、請求項1に記載の充電装置によれば、ドライバや同乗者を待たせることなく、電気自動車等の故障を早期に発見することができる。
また、上述したリモート故障診断システムを利用し、電気自動車等の運転が行われない期間等に情報センタとの間で無線通信を行い、電気自動車等の故障診断を行うといった場合には、故障診断によりモータの電源となるバッテリに蓄えられた電力が消費されてしまい、電気自動車等が走行可能な距離が低下してしまうおそれがある。さらに、電気自動車等が位置する場所によっては、情報センタとの間で良好な無線通信を行うことができない場合もあり、このような場合には、電気自動車等と情報センタとの間で必要な情報の送受信ができず、故障診断の実施が制限されてしまい、その結果、故障の発見が遅れてしまうおそれがある。
【0012】
これに対し、請求項1に記載の充電装置によれば、バッテリに蓄えられた電力を消費すること無く電気自動車等の故障診断を行うことができ、故障診断により電気自動車等が走行可能な距離が低下してしまうことは無い。
【0013】
また、充電装置が、電気自動車等への充電を行う充電スタンドや自宅等に据え付けられている場合には、容易に、充電装置と情報サーバとの間の通信状態を良好に保つことができる。このため、故障診断の実施が制限されることが無くなり、故障の発見が遅れることを防ぐことができる。
【0014】
また、故障診断の対象となる車両の種類に応じて、故障診断の内容が異なるという場合が考えられる。
そこで、請求項2に記載の充電装置は、車両の種別を検出する車両種別検出手段と、外部に設置されたサーバと通信を行う充電装置側通信手段と、充電装置側通信手段を介して、サーバから、車両種別検出手段により検出された車両の種別に応じた故障診断の手順に関する情報である診断情報を取得する取得手段と、をさらに備える。そして、故障診断手段は、充電期間内に、取得手段により取得された診断情報に従い、充電が行われる車両の種別に応じた故障診断を行う。
【0015】
こうすることにより、充電を行う電気自動車等の種類に応じた内容の故障診断を行うことができ、より精度良く故障を検出することができる。また、故障診断に用いられる診断情報がサーバから取得されるため、例えば、新型の電気自動車等に充電を行う場合であっても、対応する診断情報を取得し、適切な内容の故障診断を行うことができる。また、何らかの理由により診断情報が更新された場合であっても、更新後の診断情報に従った故障診断を行うことができる。
【0016】
また、走行距離や使用年数等といった電気自動車等の状態に応じて、実施すべき故障診断の内容が異なるという場合が考えられる。
そこで、請求項3に記載の充電装置では、取得手段は、サーバから、特定の種別の車両について、内容の異なる複数の診断情報を取得し、車両の状態を検出する状態検出手段と、取得手段により取得された車両の種別についての複数の診断情報のうち、状態検出手段により検出された該車両の状態に応じた1または複数の診断情報を選択する選択手段と、さらに備える。そして、故障診断手段は、充電期間内に、選択手段により選択された診断情報に従い故障診断を行う。
【0017】
こうすることにより、充電を行う電気自動車等の状態に応じた内容の故障診断を行うことができ、より確実に故障を検出することが可能となる。
また、本願発明の充電装置は、電気自動車等への充電時間という限られた時間内に故障診断を行うため、運転に支障をきたすような重大な故障を早期に発見するためには、充電時間に応じて故障診断の内容を適切に設定する必要がある。
【0018】
そこで、請求項4に記載の充電装置では、それぞれの診断情報には、優先度と、該診断情報に従い行われる故障診断の所要時間が設定されており、選択手段は、充電を行う車両の状態に応じて選択した診断情報の中から、さらに、設定された所要時間の総和が充電時間以下となる範囲で、設定された優先度の高いものから順に診断情報を選択する。
【0019】
こうすることにより、充電時間が短い場合であっても重要度の高い故障診断を行うことができ、運転に支障をきたすような重大な故障を早期に発見することができる。
また、次のようにして診断情報の選択を行うことで、充電時間内に電気自動車等の故障診断を行っても良い。
【0020】
すなわち、請求項5に記載されているように、充電装置は、外部に設置されたサーバと通信を行う充電装置側通信手段と、充電装置側通信手段を介して、サーバから、故障診断の手順に関する情報であって、当該情報に従い故障診断が行われると共に、該故障診断の所要時間が設定されている診断情報を複数取得する取得手段と、取得手段が取得した複数の診断情報の中から、設定された所要時間の総和が充電時間以下となる範囲で診断情報を選択する選択手段と、をさらに備えても良い。そして、故障診断手段は、充電期間内に、選択手段により選択された診断情報に従い故障診断を行っても良い。
【0021】
こうすることにより、充電時間中に故障診断が終了するように故障診断の内容を設定することができる。
また、次のようにして、上述した充電装置に診断情報を提供するサーバを構成しても良い。
【0022】
すなわち、請求項6に記載されているように、モータにより走行する車両に該モータの電源として搭載されたバッテリに対し、該車両の外部から充電を行うと共に、該充電が行われている充電期間内に該車両の故障診断を行う充電装置と通信を行うサーバであって、充電装置と通信を行うサーバ側通信手段と、サーバ側通信手段を介して、充電装置に対し、故障診断の手順に関する情報である診断情報を送信する送信手段と、を備えることを特徴とするサーバを構成しても良い。
【0023】
このようなサーバを上述した充電装置と組み合わせて用いることにより、該充電装置に対し、より適切な内容の故障診断を実施させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】充電装置,サーバ,充電が行われる電気自動車等(充電車両)に搭載された車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】サーバの構成と、充電装置を制御するプログラムの構成を示すブロック図である。
【図3】サーバ,充電車両,充電装置を制御するプログラムの各部位についてのクラス図である。
【図4】充電が行われる際の処理を示すタイミングチャートである。
【図5】診断情報の属性情報等を示す表である。
【図6】診断情報選択処理についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0026】
[構成の説明]
本実施形態の充電装置は、モータにより走行する電気自動車に該モータの電源として搭載されたバッテリ(二次電池)や、モータとエンジンとにより走行するハイブリッド車に該モータの電源として搭載されたバッテリに充電を行うよう構成されている。
【0027】
また、この充電装置は、外部に設置されたサーバと通信を行い、充電を行う電気自動車等(以後、充電車両と記載)の故障診断を行うための情報である診断情報を取得する。そして、バッテリへの充電を行っている際に、取得した診断情報に基づき充電車両の故障診断を行うよう構成されている。
【0028】
なお、本実施形態の充電装置は、電気自動車等のバッテリの充電を行うための施設である充電スタンドに設けられ、産業用として供給される電力により充電を行うよう構成されていても良いし、或いは、家庭用の電源から電力を得て充電を行うよう構成されていても良い。
【0029】
図1には、本実施形態の充電装置10と、充電車両に搭載される車載システム20と、充電装置10に診断情報を提供するサーバ40とを示すブロック図が記載されている。
充電装置10は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、ROMに記憶されたプログラムに従い当該充電装置10を統括制御する制御部11と、フラッシュメモリ等といった記憶保持動作が不要なデバイスから構成され、各種情報を記憶することができる記憶部12と、LCD等から構成され、各種画像を表示する表示部13等を備える。また、充電車両に搭載されたバッテリに充電を行う充電部14と、インターネット30を介してサーバ40と通信を行うサーバ通信部15と、ケーブル等により充電車両の車内LAN25に接続され、該車内LAN25に接続された各種ECUと通信を行う車内LAN通信部16等を備える。
【0030】
また、車載システム20は、車内LAN25に接続されたAECU23,BECU24等の各種ECUや、車内LAN25に接続され、充電車両に駆動力を提供するモータに電力を供給するバッテリ21を制御するバッテリECU22を備える。
【0031】
また、サーバ40は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のコンピュータを中心に構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムに従い当該サーバ40を統括制御する制御部41と、HDD等といった記憶保持動作が不要なデバイスから構成され、各種情報を記憶することができる記憶部42と、インターネット30を介して充電装置10と通信を行う通信部43とを備える。
【0032】
なお、充電装置10は、充電車両の車内LAN25を介して各ECUと通信を行うことで、充電車両の故障診断を行うよう構成されている。より詳しくは、ECUにコマンドを送信して自己診断を実施させると共に、診断結果を取得するといった方法や、ECUにコマンドを送信して診断処理を実行させると共に、該診断処理の実行結果を取得し、実行結果に基づき故障の有無を判定するといった方法が考えられる。また、故障検出時に故障コードを生成して記憶する機能や、所定の条件成立時に各種センサ値や出力値等を示す動作情報を生成して記憶する機能を有するECUが知られているが、このようなECUから故障コードや動作情報を取得すると共に、該動作情報に基づき故障の有無を判定するといった方法も考えられる。
【0033】
また、診断情報は、充電車両の型式毎に設けられており、対応する型式の充電車両における故障診断の対象となるECUや、該ECUに対してどのような手順で故障診断を行うか等を示す情報として構成されている。より詳しくは、診断情報は、例えば、故障診断の対象となるECUに対しどのような順序でどのようなコマンドを送信するかという点や、どのような故障コード或いは動作情報を取得するかという点や、上述の診断処理の実行結果や動作情報に基づき故障の有無を判定する際の閾値等を示すものとして構成されていても良い。
【0034】
また、特定の型式の充電車両に対して内容の異なる複数の診断情報が設けられている場合もあり、このような場合には、充電車両の車両状態(例えば、走行距離,走行頻度,ECUでどのような故障コードが検出されたか,どのような場所を走行したか等)や充電時間に応じて1または複数の診断情報が選択され、選択された診断情報に従い故障診断が行われる。
【0035】
次に、サーバ40の構成や、充電装置10を制御するプログラムの構成について、図2に記載のブロック図を用いて説明する。
図2に記載されているように、サーバ40には、診断情報が蓄積された診断情報DB44と、充電装置10による充電車両50の診断結果を蓄積するための診断結果DB45としての機能が設けられている。
【0036】
診断情報DB44には、充電装置10による充電が可能な充電車両50の各型式と、該型式の充電車両50について設けられた全ての診断情報が対応付けられた状態で登録されている。なお、サーバ40の制御部41は、診断情報DB44において特定の型式に対応する診断情報が更新された場合には、通信部43を介して、充電装置10に対し、その旨を通知するよう構成されている。
【0037】
また、診断結果DB45には、充電装置10から得られた診断結果と、該診断結果に係る故障診断が行われた充電車両50に固有に設けられた識別情報とが対応付けられた状態で登録されている。
【0038】
一方、充電装置10を制御するプログラムとして、充電車両50の故障診断を行う故障診断部100と、サーバ通信部15によりサーバ40と通信を行う通信部110と、充電部14を制御し、充電車両50に搭載されたバッテリ21への充電を行う充電制御部120と、表示部13に診断結果等を表示する表示制御部130等が設けられている。
【0039】
なお、以下では、充電装置10のプログラムの一部である故障診断部100や通信部110等が処理を行うといった記載がなされているが、これは、言うまでも無く、該プログラムにより動作する制御部11により処理が行われるということを意味する。
【0040】
充電制御部120は、車内LAN通信部16を介して充電車両50に搭載された車載システム20を構成するバッテリECU22等と通信を行い、バッテリ残量を取得すると共に、該バッテリ残量に基づき充電に要する時間(充電時間)を検出する。
【0041】
また、故障診断部100は、過去に充電を行った充電車両50の型式と、該型式の充電車両50に対応する全ての診断情報とが対応付けられた状態で登録されている診断情報DB104と、診断情報DB104を管理する診断情報管理部103と、故障診断を行う診断制御部101,診断実施部102を備える。
【0042】
診断情報管理部103は、充電開始時に、診断制御部101から充電車両50の型式を示す情報を取得する。そして、該型式に対応する診断情報が診断情報DB104に登録されていない場合や、サーバ40にて該診断情報が更新されている場合には、通信部110を介してサーバ40に問い合わせを行い、サーバ40から該型式に対応する診断情報を取得し、取得した診断情報を診断制御部101に提供すると共に、型式と取得した診断情報とを診断情報DB104に登録する。一方、該型式に対応する診断情報が診断情報DB104に登録されている場合や、サーバ40にて該診断情報の更新が行われていない場合には、対応する診断情報を診断情報DB104から読み出し、診断制御部101に提供する。
【0043】
また、診断制御部101は、充電開始時に、診断実施部102から、充電車両50の型式,該充電車両50に固有に割り当てられた識別情報,該充電車両50の車両状態等を示す車両情報を取得すると共に、充電制御部120から充電時間を取得する。さらに、車両情報が示す型式に対応する診断情報を診断情報管理部103から取得すると共に、車両情報が示す充電車両50の車両状態と充電時間とに基づき、取得した診断情報のうちのいずれかを選択し、選択した診断情報を診断実施部102に提供する。
【0044】
そして、故障診断が終了した際には、診断実施部102から診断結果を取得し、表示制御部130に対し該診断結果の表示を行わせる。
また、診断実施部102は、充電開始時には、車内LAN通信部16を介して充電車両50に搭載された車載システム20を構成する各ECUと通信を行って車両情報を取得すると共に、該車両情報を診断制御部101に提供する。その後、診断制御部101から診断情報を取得し、該診断情報に従い、充電制御部120により充電が行われている際に、充電車両50に対する故障診断を行う。
【0045】
そして、故障診断が終了すると、診断実施部102は、診断結果を診断制御部101に提供すると共に、診断結果と、充電車両50の識別情報とを通信部110を介してサーバ40に送信し、診断結果DB45に該識別情報と該診断結果とを登録する。
【0046】
[動作の説明]
次に、充電車両50への充電中に充電装置10にて行われる処理について、図3,4を用いて説明する。
【0047】
図3には、サーバ40,充電車両50と、診断制御部101,診断実施部102,診断情報管理部103,通信部110,充電制御部120,表示制御部130をクラスとして表したクラス図が記載されている(各クラスの概要については既に説明したため、説明を省略する)。また、図4には、充電装置10による充電が行われる際に、各クラスでどのような処理が行われるかを示すタイミングチャートが記載されている。
【0048】
なお、図3,4では、装置であるサーバ40等と、プログラムである診断制御部101等がクラスとして描かれており、クラスで実行される“充電処理”や“充電時間取得処理”等が、“充電()”や“充電時間取得()”といった形式で記載されている。また、図3では、各クラスに対応するブロックにおける“+”は、複数のクラスが実行可能な処理であることを示し、“−”は、他のクラスから実行不可能な処理であることを示している。
【0049】
充電装置10による充電が開始に先立ち、充電部14と充電車両50のバッテリ21とが専用ケーブルにより接続されると共に、車内LAN通信部16が専用のケーブルにより充電車両50の車内LAN25に接続される。そして、充電制御部120は、車内LAN25を介して充電車両50のバッテリECU22からバッテリ残量を取得し、該バッテリ残量に基づき、充電時間を算出する。
【0050】
なお、充電制御部120は、バッテリECU22から、該ECUで検出された充電時間を取得しても良い。また、車内LAN25を介して得られた情報により充電時間を特定するのではなく、充電部14を介してバッテリ21の電圧を検出すると共に、該電圧に基づきバッテリ残量を推定し、該バッテリ残量から充電時間を算出しても良い。
【0051】
その後、充電制御部120は充電処理を実行し(S205)、充電部14によるバッテリ21への充電が開始される。
充電が開始されると、診断制御部101は、充電車両50の型式,識別情報,車両状態等を示す車両情報を取得する車両情報取得処理を実行する(S210)。これにより、診断実施部102にて、充電車両50の車載システム20を構成する各ECUとの通信を行うことで車両情報が取得され、該車両情報が診断制御部101に提供される。
【0052】
また、診断制御部101は、充電制御部120から充電時間を取得する充電時間取得処理を実行し(S215)、さらに、診断情報管理部103に対し充電車両50の型式に対応する診断情報の取得を指示する診断情報取得処理を実行する(S220)。
【0053】
診断情報の取得が指示された診断情報管理部103では、充電車両50の型式に対応する診断情報が診断情報DB104に登録されているか否かや、該型式に対応する診断情報が更新された旨の通知をサーバ40から受け取ったか否かを判定する。そして、該診断情報が診断情報DB104に登録されていない場合や、該通知を受け取った場合には、通信部110に対し、充電車両50の型式に対応する診断情報をサーバ40から取得することを指示する診断情報問合せ送信要求処理を実行する(S225)。
【0054】
そして、サーバ40からの診断情報の取得を指示された通信部110は、充電車両50の型式に対応する診断情報の送信をサーバ40に指示する診断情報問合せ処理を実行する(S230)。
【0055】
また、診断情報の送信を指示されたサーバ40では、制御部41が、診断情報DB44から充電車両50の型式に対応する診断情報を読み出し、該診断情報を充電装置10に送信する(S235)。
【0056】
その後、通信部110は、サーバ40から受信した診断情報を診断情報管理部103に渡すと共に(S240)、診断情報を受け取った診断情報管理部103は、該診断情報と充電車両50の型式とを診断情報DB104に登録する(或いは、既に登録されている該型式に対応する診断情報を更新する)診断情報DB更新処理を実行する(S245)。そして、診断情報管理部103は、該診断情報を診断制御部101に渡す(S250)。
【0057】
なお、充電車両50の型式に対応する診断情報が診断情報DB104に既に登録されており、該型式に対応する診断情報が更新された旨の通知をサーバ40から受け取っていない場合には、診断情報管理部103は、該型式に対応する診断情報を診断情報DB104から読み出し、診断制御部101に渡す。
【0058】
そして、診断情報を受け取った診断制御部101は、充電時間内に故障診断を終了可能となるよう、充電車両50の車両状態に応じて該診断情報のうちのいずれかを選択する診断情報選択処理を実行する(S255)。なお、診断情報選択処理の詳細については、後述する。
【0059】
その後、診断制御部101は、選択した診断情報に従った故障診断を診断実施部102に実施させる診断実施処理を実行し(S260)、これに応じて、診断実施部102は、選択された診断情報に従い、充電車両50の車載システム20を構成するECUと通信を行うことで、充電車両50の故障診断を行う(S265)。なお、故障診断の際には、ECUによりなされた自己診断による診断結果や、診断実施部102からの指示によりECUにて行われた診断処理の実行結果や、ECUにおいて過去に検出された故障コードや動作情報等が、充電車両50(詳しくは、充電車両50に搭載されたECU)から診断実施部102に送信される(S270)。また、診断実施部102では、診断処理の実行結果,故障コード,動作状態に基づき充電車両50の故障診断が行われ、該故障診断による診断結果や、ECUの自己診断による診断結果が診断制御部101に渡される(S275)。
【0060】
診断結果を受け取った診断制御部101は、表示制御部130により診断結果を表示させる診断結果表示処理を実行する(S280)。なお、診断結果をドライバ等に通知する方法は、これに限定されることは無く、例えば、診断制御部101は、音声により診断結果を通知しても良い。また、例えば、PC等で診断結果を表示するためのデータを生成し、該データを電子メールにより充電車両50のドライバのメールアドレス宛に送信することで、診断結果を通知しても良い。
【0061】
また、図4には記載されていないが、診断制御部101は、この後、診断結果送信要求処理(図3参照)を実行し、診断結果と充電車両50の識別情報を通信部110に渡す。そして、診断結果等を受け取った通信部110は、診断結果更新処理(図3参照)を実行することでこれらをサーバ40に送信し、充電車両50の識別情報と診断結果とを診断結果DB45に登録する。
【0062】
次に、充電時間内に故障診断が終了するよう、充電車両50の型式に対応する診断情報のうち、充電車両50の車両状態に応じた診断情報を選択する診断情報選択処理について説明する。
【0063】
既に述べたように、本実施形態では、充電車両50の型式毎に1または複数の診断情報が設けられており、各診断情報の一部として、該診断情報に従った故障診断を実施する条件等を示す属性情報が設けられている。
【0064】
図5(a)には、一例として、型式Aの充電車両50に対応して設けられた各診断情報についての属性情報の構成を示す表が記載されており、該表の各項目は、属性情報を構成する各情報を示している。該表が示すように、属性情報は、診断情報を識別するための「診断情報ID」と、診断情報選択処理にて診断情報が選択される条件である「実施条件」と、診断情報に従った故障診断の所要時間を示す「所要時間」と、診断情報を選択する際の優先度を示す「優先度」等の情報から構成されている。なお、「優先度」が示す数値が低い程、優先度が高くなる。
【0065】
また、本実施形態では、各型式に対応する診断情報についての属性情報における「実施条件」として共通して用いられる基本条件が複数設けられている。図5(b)の表は、これらの基本条件を示しており、該表は、各基本条件を識別する「基本条件ID」と、各基本条件の内容を示す「内容」という項目を有している。
【0066】
そして、属性情報における「実施条件」は、いずれか一つ基本条件、或いは、複数の基本条件の組合せにより、診断情報が選択される条件を示している。具体的には、図5(a)の表において、「診断情報ID」が“2”である属性情報に関しては、「実施条件」は、“基本条件Aの成立”により診断情報が選択されることを示しており、「診断情報ID」が“1”である属性情報に関しては、「実施条件」は、“基本条件Bまたは基本条件Eの成立”により診断情報が選択されることを示している。無論、これに限定されることは無く、例えば、“基本条件A及び基本条件Cの成立”を「実施条件」としても良いし、“基本条件A及び基本条件Cの成立、若しくは、基本条件Bの成立”といった具合に、三つ以上の基本条件の組合せにより実施条件を構成しても良い。
【0067】
次に、診断情報選択処理の具体的内容について、図6に記載のフローチャートを用いて説明する。
S305では、診断制御部101は、充電車両50の型式に対応する全ての診断情報について、「実施条件」の成立についての判定がなされたか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S305:Yes)、S325に処理を移行し、否定判定の場合には(S305:No)、判定がなされていないいずれかの診断情報を選択し、S310に処理を移行する。
【0068】
S310では、診断制御部101は、車両情報が示す充電車両50の車両状態に基づき、選択中の診断情報についての「実施条件」が成立しているか否かを判定する。そして、肯定判定の場合には(S310:Yes)、S315に処理を移行し、否定判定の場合には(S310:No)、S320に処理を移行する。
【0069】
S315では、診断制御部101は、選択中の診断情報を予備リストに登録し、S305に処理を移行する。
また、S320では、診断制御部101は、選択中の診断情報を無効とし、S305に処理を移行する。
【0070】
一方、全診断情報について「実施条件」の成立についての判定がなされた場合に移行するS325では、診断制御部101は、予備リストに登録された診断情報を各診断情報の「優先度」順にソートし、S330に処理を移行する。
【0071】
S330では、診断制御部101は、「優先度」が最も高い診断情報を実施リストに登録し、S335に処理を移行する。
S335では、診断制御部101は、実施リストに登録された全診断情報の「所要時間」の総和を、これらの診断情報に基づく故障診断が行われた際の総所要時間として算出し、S340に処理を移行する。
【0072】
S340では、診断制御部101は、総所要時間は充電車両50の充電時間以下であるか否かを判定し、肯定判定の場合には(S340:Yes)、S345に処理を移行し、否定判定の場合には(S340:No)、S355に処理を移行する。
【0073】
S345では、診断制御部101は、実施リストに新たに登録した診断情報を予備リストから削除し、S350に処理を移行する。
S350では、診断制御部101は、予備リストに登録されている診断情報が有るか否かを判定し、肯定判定の場合には(S350:Yes)、S330に処理を移行し、否定判定の場合には(S350:No)、本処理を終了する。
【0074】
一方、故障診断の総所要時間が充電時間を超えてしまう場合に移行するS355では、診断制御部101は、実施リストに登録されている各診断情報が「優先度」の高い診断情報か否かを判定する。具体的には、例えば、実施リストに最後に登録した診断情報の「優先度」が所定値以下である場合には、実施リストに登録されている各診断情報の「優先度」が高いと判定しても良い。そして、肯定判定の場合には(S355:Yes)、S360に処理を移行し、否定判定の場合には(S355:No)、S370に処理を移行する。
【0075】
S360では、診断制御部101は、表示制御部130を介して、ユーザに対し、所要時間が充電時間を超える故障診断を行うか否かを問い合わせる。そして、図示しない操作部を介してユーザから該故障診断を行う旨の指示を受け付けた場合には(S365:Yes)、本処理を終了し、該故障診断を行う旨の指示を受け付けなかった場合には(S365:No)、S370に処理を移行する。
【0076】
S370では、診断制御部101は、最後に登録した診断情報を実施リストから削除し、本処理を終了する。
なお、本処理により実施リストに登録された診断情報が、診断実施部102による故障診断に用いられる診断情報となる。
【0077】
[効果]
本実施形態の充電装置10によれば、充電車両50のバッテリ21への充電が行われる度に充電車両50の故障診断が行われるため、充電車両50の走行距離等に応じた頻度で故障診断を行うことができ、早期に故障を発見することができる。また、この故障診断は、充電車両50のバッテリ21への充電時間内に行われるため、充電車両50のドライバや同乗者に対し、故障診断のための時間をとらせることは無い。
【0078】
したがって、本実施形態の充電装置10によれば、ドライバや同乗者を待たせることなく、充電車両50の故障を早期に発見することができる。
[他の実施形態]
(1)本実施形態の充電装置10は、充電車両50の車内LAN25に専用ケーブルにより接続され、車内LAN25を介してECUと通信を行うことで、充電車両50の故障診断を行う。しかしながら、例えば、充電車両50の車載システム20を構成するいずれかのECUを、他のECUに対して故障診断を指示する故障診断用ECUとして構成しても良い。そして、充電装置10は、故障診断用ECUと無線通信を行い、故障診断用ECUに本実施形態と同様にして故障診断を行わせると共に、故障診断用ECUから診断結果等を取得することで、充電車両50の故障診断を行っても良い。こうすることにより、専用ケーブルにより充電装置10と車内LAN25とを接続する手間を省くことができ、より容易に充電車両50の故障診断を行うことができる。
【0079】
(2)また、本実施形態では、充電車両50の型式毎に診断情報が設けられているが、これに限定されることは無い。具体的には、例えば、充電車両50のメーカ毎に診断情報が設けられていても良いし、複数種類の型式からなるグループ毎に診断情報が設けられていても良い。このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0080】
(3)また、本実施形態では、充電装置10では、充電時間内に故障診断が終了するよう診断情報の選択が行われる。しかしながら、充電装置10は、例えば、充電時間を考慮することなく設けられた診断情報に従い故障診断を行うと共に、充電時間が経過した時点で故障診断を中断しても良い。このような構成を有する場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0081】
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
【0082】
充電装置10のサーバ通信部15が充電装置側通信手段に相当する。
また、充電装置10を制御するプログラムにおける診断制御部101が選択手段に、診断実施部102が故障診断手段,状態検出手段,車両種別検出手段に、通信部110,診断情報管理部103が取得手段に、充電制御部120が充電時間検出手段に相当する。
【0083】
また、サーバ40の制御部41が送信手段に、通信部43がサーバ側通信手段に相当する。
【符号の説明】
【0084】
10…充電装置、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…充電部、15…サーバ通信部、16…車内LAN通信部、20…車載システム、21…バッテリ、22…バッテリECU、23…AECU、24…BECU、25…車内LAN、30…インターネット、40…サーバ、41…制御部、42…記憶部、43…通信部、44…診断情報DB、45…診断結果DB、50…充電車両、100…故障診断部、101…診断制御部、102…診断実施部、103…診断情報管理部、104…診断情報DB、110…通信部、120…充電制御部、130…表示制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより走行する車両に該モータの電源として搭載されたバッテリに対し、該車両の外部から充電を行う充電装置であって、
前記バッテリへの充電の所要時間である充電時間を検出する充電時間検出手段と、
前記バッテリへの充電を開始した後から前記充電時間が経過するまでの充電期間内に、充電が行われている前記車両に搭載されている車載装置と通信を行うことで、該車両の故障診断を行う故障診断手段と、
を備えることを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充電装置において、
前記車両の種別を検出する車両種別検出手段と、
外部に設置されたサーバと通信を行う充電装置側通信手段と、
前記充電装置側通信手段を介して、前記サーバから、前記車両種別検出手段により検出された前記車両の種別に応じた前記故障診断の手順に関する情報である診断情報を取得する取得手段と、
をさらに備え、
前記故障診断手段は、前記充電期間内に、前記取得手段により取得された前記診断情報に従い、充電が行われる前記車両の種別に応じた前記故障診断を行うこと、
を特徴とする充電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の充電装置であって、
前記取得手段は、前記サーバから、特定の種別の前記車両について、内容の異なる複数の前記診断情報を取得し、
前記車両の状態を検出する状態検出手段と、
前記取得手段により取得された前記車両の種別についての複数の前記診断情報のうち、前記状態検出手段により検出された該車両の状態に応じた1または複数の前記診断情報を選択する選択手段と、
さらに備え、
前記故障診断手段は、前記充電期間内に、前記選択手段により選択された前記診断情報に従い前記故障診断を行うこと、
を特徴とする充電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の充電装置において、
それぞれの前記診断情報には、優先度と、該診断情報に従い行われる前記故障診断の所要時間が設定されており、
前記選択手段は、充電を行う前記車両の状態に応じて選択した前記診断情報の中から、さらに、設定された前記所要時間の総和が前記充電時間以下となる範囲で、設定された前記優先度の高いものから順に前記診断情報を選択すること、
を特徴とする充電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の充電装置において、
外部に設置されたサーバと通信を行う充電装置側通信手段と、
前記充電装置側通信手段を介して、前記サーバから、前記故障診断の手順に関する情報であって、当該情報に従い前記故障診断が行われると共に、該故障診断の所要時間が設定されている診断情報を複数取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した複数の前記診断情報の中から、設定された前記所要時間の総和が前記充電時間以下となる範囲で前記診断情報を選択する選択手段と、
をさらに備え、
前記故障診断手段は、前記充電期間内に、前記選択手段により選択された前記診断情報に従い前記故障診断を行うこと、
を特徴とする充電装置。
【請求項6】
モータにより走行する車両に該モータの電源として搭載されたバッテリに対し、該車両の外部から充電を行うと共に、該充電が行われている充電期間内に該車両の故障診断を行う充電装置と通信を行うサーバであって、
前記充電装置と通信を行うサーバ側通信手段と、
前記サーバ側通信手段を介して、前記充電装置に対し、前記故障診断の手順に関する情報である診断情報を送信する送信手段と、
を備えることを特徴とするサーバ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−247308(P2012−247308A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119356(P2011−119356)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】