先端閉塞杭及び先端閉塞杭構成用掘削ヘッド
【課題】杭本体の外周に突設される排出翼(螺旋翼)が取り込める土砂の量を稼ぎながらも、削孔の断面を拡大することがなく、また掘削土砂を孔壁の安定のために利用可能な機能を先端閉塞杭に与える。
【解決手段】杭本体11の先端にこの先端を閉塞する閉塞板2が固定され、閉塞板2の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃3が突設された先端閉塞杭において、杭本体11の先端の端面を周方向に複数の区間に区分し、この区分された各区間における端面に、杭本体11の回転時の前方側から後方側へかけて杭本体11の先端側から上端側へ向かう傾斜を付け、この複数の区間毎に閉塞板2を固定する。
【解決手段】杭本体11の先端にこの先端を閉塞する閉塞板2が固定され、閉塞板2の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃3が突設された先端閉塞杭において、杭本体11の先端の端面を周方向に複数の区間に区分し、この区分された各区間における端面に、杭本体11の回転時の前方側から後方側へかけて杭本体11の先端側から上端側へ向かう傾斜を付け、この複数の区間毎に閉塞板2を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転を伴う圧入により地中に貫入させられる先端閉塞杭、及びその一部を構成する先端閉塞杭構成用掘削ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば埋立地や盛土した地盤のような支持力の小さい地盤上に、木造住宅等のような中低層建物等の構造物を構築する場合、構造物の不同沈下を防止する上で、基礎の下に支持層に到達する杭、または地中で地盤との摩擦力により支持力を得る杭を打設、もしくは圧入する、または構築する必要がある。
【0003】
杭として既製杭が使用される場合、杭は振動や騒音等の近隣地域への影響を低減する観点から、主に回転圧入により地中に挿入される。また掘進に伴う排土量を抑制する上では、先端開放型の杭の使用が適するが、杭を貫入した後の地盤支持力を高めることを目的とする場合には、杭本体が先端で支持力を得られる先端閉塞杭が適する。
【0004】
先端閉塞杭の場合には、貫入時に先端を閉塞している板が地盤から直接の抵抗を受けるため、杭本体の外周に貫入を助けるための案内翼を突設することが不可欠になる(特許文献1〜4参照)。杭本体外周の案内翼は杭本体の貫入時に、回転に伴う地中への貫入を促す目的で突設されるのに対し、杭本体先端の掘削刃は地盤を切削するために突設されることから、案内翼と掘削刃は機能が相違するため、それぞれは独立し、分離して突設されることが多い。
【0005】
このように案内翼と掘削刃が分離して突設された場合、掘削刃と案内翼が不連続になるため、案内翼に、掘削刃が切削した土砂を杭本体の先端部分(孔底)から杭本体の周囲(孔壁)へ排除し、孔壁に押し付ける機能を持たせることができない。掘削した土砂が孔底に留まれば、土砂が掘削刃に付着し易く、掘削刃による掘削を阻害することになるから、掘削効率を低下させる原因になる。案内翼は掘削刃が掘削した土砂の周辺地盤を切り込みながら地中に入り込むため、本来、掘削刃が掘削した土砂を上方へ排除する機能を有していない。
【0006】
これに対し、案内翼を掘削刃に連続するように突設すれば、掘削刃が掘削した土砂を、案内翼を利用して杭本体の掘進と共に杭本体の周面に押し上げ、孔底から排除することができなくはないと考えられる(特許文献5、6参照)。
【0007】
特許文献5では杭本体2外周面のスパイラル状の杭掘進羽根4の先端(下端)が杭本体2の先端に突設された掘削羽根5に連続するように杭掘進羽根4を形成することにより(請求項2、図1、図3)、掘削羽根5の先端が掘削した土砂をその上から杭掘進羽根4に導き、孔底から排除することを意図している(段落0036)。
【0008】
しかしながら、中空の杭本体の開放端面を閉塞する管閉塞壁52を杭本体の先端より上方に寄った内部に固定し、この管閉塞壁52の下端に掘削羽根5を形成しているため(段落0022、図2)、杭本体の端面は先端位置では完全には閉塞していない。従って掘削羽根5はそれが掘削した土砂を管閉塞壁52まで誘導し、管閉塞壁52から杭本体先端までの空間に土砂を充填させることになるため(段落0030)、土砂を孔底から杭本体の外周に有効に排除することができるとは言えない。
【0009】
特許文献5ではソイルセメントの球根に杭本体の先端を定着させる関係で(段落0030)、管閉塞壁52以下の空間に積極的に土砂を入り込ませることをしているため、杭本体の内部に土砂が全く入らないことを意図している訳ではない。杭本体の内部に土砂を取り込む分、土砂は少なくとも孔底から排除されるが、孔壁に押し付けられることがないため、土砂を孔壁の安定のために利用することにはならない。
【0010】
また特許文献1〜5のように杭本体の外周面に突設されるスパイラル状の羽根が板状である限り、仮に掘削羽根からスパイラル羽根にまで一部の土砂が誘導されたとしても、土砂はスパイラル羽根の上端まで到達した時点で孔底に落下するため、土砂は孔底から一時的に排除されるに過ぎない。
【0011】
特許文献6のように杭本体の先端位置から周面にまで螺旋翼を連続させて形成し、その先端(下端)に掘削爪を突設した場合には、掘削刃が掘削した土砂を螺旋翼に載せて杭本体の周面側に排出することも可能である。但し、螺旋翼が杭本体の先端位置から取り込める土砂の量は杭本体の周面から螺旋翼の外周位置までの、半径方向の距離によって決まるから、螺旋翼が孔底から排除できる土砂の量を稼ぐには螺旋翼自体の幅(杭本体周面から突出幅)を拡大する必要がある。
【0012】
【特許文献1】特開平8−209690号公報(請求項5、段落0006、図1、図5)
【特許文献2】特開2001−3357号公報(請求項1、段落0011〜0012、図1)
【特許文献3】特開2005−220662号公報(請求項1、段落0013、図7、図8)
【特許文献4】特開2005−315050号公報(請求項1、段落0008、図1〜図3)
【特許文献5】特開2002−021067号公報(請求項1、段落0019〜0030、0036、図1〜図3)
【特許文献6】特開2004−11241号公報(図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、螺旋翼の幅を拡大することは、削孔径(削孔の断面)に対する杭本体の径(杭本体の断面)の比率を小さくすることになり、それだけ杭本体の周辺地盤を掘削により緩めることになるため、杭本体の削孔内での安定性を損ない、引き抜き力と水平力に対する抵抗力を低下させる結果を招く。
【0014】
本発明は上記背景より、杭本体の外周に突設される排出翼(螺旋翼)が取り込める土砂の量を稼ぎながらも、削孔の断面を拡大することがなく、また掘削土砂を孔壁の安定のために利用可能な機能を有する先端閉塞杭とその一部を構成する掘削ヘッドを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の先端閉塞杭は、杭本体の先端にこの先端を閉塞する閉塞板が固定され、この閉塞板の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃が突設された先端閉塞杭において、
前記杭本体の先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、前記杭本体の回転時の前方側から後方側へかけて前記杭本体の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板が固定されていることを構成要件とする。閉塞板は杭本体の先端が区分された区間数分、杭本体に固定される。
【0016】
。
杭本体には主に中空の既製杭が使用されるが、杭本体の先端は閉塞されるため、必ずしも杭本体が中空である必要はない。掘削刃が閉塞板の中央部以外に、中央部付近から突設されることがあるのは、閉塞板の中央部に気体や液体を吐出する吐出口が形成されることがあることによる(請求項4)。
【0017】
前記のように掘削刃と排出翼(螺旋翼)が連続している、または連続的に形成されている場合には、掘削刃が掘削し、杭本体の周方向に隣接する排出翼間の領域に存在する土砂は掘削刃と排出翼の側面に押されながら、杭本体の掘進と共に杭本体に対して上昇しようとする。このとき、杭本体は軸回りに回転しているため、排出翼間の土砂はその後方側に位置する排出翼の前方の側面に塞き止められ、そのまま回転の向きに押し出される。排出翼が土砂を塞き止め、押し出す(掻き集める)量は回転時の前方側を向いた側面の、杭本体周面(閉塞板表面)からの高さが大きい程、大きい。
【0018】
そこで、請求項1に記載のように杭本体先端の端面を波形の形状にし、その形状に合わせて杭本体に複数枚の閉塞板を固定し、この複数枚の閉塞板に傾斜を付けることで、掘削刃と排出翼の前方側を向いた側面の閉塞板からの高さを稼ぐことが可能になる。掘削刃と排出翼が連続する場合、両者間には明確な境界が表れないこともあるため、以下では掘削刃と排出翼を合わせて単にブレードと呼ぶこともある。
【0019】
請求項1では、杭本体先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、各区間の端面が前方側から後方側へかけて杭本体の上端側へ傾斜することで、杭本体の全体ではその先端の端面は図2−(b)に示すようにラチェットの歯のような波形の形状になる。この波形を形成する各区間の端面毎に閉塞板が固定されることで、掘削刃と排出翼のない状態では図2−(a)、図3−(b)に示すように複数枚の閉塞板が杭本体の断面上の中心部で互いに会しながら、半径方向に次第に段差が付く異なる面を構成する。
【0020】
複数枚の閉塞板は平面であるか、曲面であるかを問わず、曲面の場合には主に杭本体の先端側が凸に湾曲する形状になる。杭本体先端の端面が複数の区間に区分されず、傾斜もしない場合には、杭本体先端の端面には円板形、もしくは円錐形、あるいは円錐台形等の1枚以上、または1個以上の閉塞板が固定される。
【0021】
各閉塞板が回転時の前方側から後方側へかけて杭本体の先端側から上端側へ向かって傾斜することで、杭本体の周方向に隣接する排出翼(ブレード)と閉塞板に挟まれた領域においては閉塞板の厚さ方向にブレードを見たとき、図2−(b)に示すように回転時に後方を向く側面の奥行きH1より前方を向く側面の奥行き(深さ)H2が大きくなる。図2−(b)中の矢印は杭本体の回転の向きを示す。
【0022】
杭本体の回転による複数枚の排出翼が一定の深度を掘削している削孔内では、隣接するブレード間に存在する土砂はその後方に位置する排出翼(ブレード)の、回転時の前方を向く側面に押される。従って請求項1では前方の側面と後方の側面の、閉塞板からの高さが等しい場合との対比では、排出翼(ブレード)による土砂を掻き集める効果が大きくなる。
【0023】
上記のように土砂の排出翼上への誘導効果はブレード(掘削刃と排出翼)の前方側の側面の閉塞板からの高さ(奥行き)が大きい程、大きい。従って各閉塞板の水平に対する傾斜角度が大きい程、すなわち区分された杭本体先端の端面の傾斜が大きい程、土砂の誘導効果が高まり、ブレードが抱え込み得る土砂の量が多くなるため、掘削土砂を排出翼の上方へ押し上げ、孔壁に押し付ける効果が向上する。
【0024】
杭本体の回転時に前方側を向くブレードの側面が掻き集めた土砂は杭本体の掘進に伴い、その側面に誘導されてブレード(排出翼)の上方へ移動し、排出翼の上端から落下する。落下と同時に、その位置を通過するブレード(排出翼)の孔壁側の表面が孔壁に押し付ける働きをするため、掘削刃が掘削した土砂の多くは孔底にまで落下する以前に孔壁に圧密させられる。ここで、例えば排出翼として板厚に対する幅の比率が小さいフラットバー形状の板を使用すれば、土砂が排出翼の上端から落下するときに、排出翼の孔壁側を向いた表面が落下した土砂を孔壁との間に挟み込み、孔壁に押し付けるため、孔壁は掘削した土砂によって圧密され、崩落に対する安定性を確保する。
【0025】
掘削刃が掘削した土砂が孔壁に圧密されることで、削孔の断面が杭本体の断面より格別大きくなることがなく、杭本体が地中に定着された状態で引き抜き力を受けたときに周囲の孔壁が杭本体との間で摩擦力を発揮し、杭本体を拘束するため、杭本体の引き抜きに対する安定性が確保される。また杭本体の周面と周囲の孔壁との間に距離が抑えられることで、杭本体が水平力を受けたときの転倒に対する安定性も確保される。
【0026】
掘削刃が掘削した土砂が排出翼上へ送り込まれ、孔壁に押し付けられることで、杭本体の掘進に伴う排出土の量が削減され、先端閉塞杭でありながら、無排土で杭本体を貫入させることが可能である。また土砂の孔壁への圧密により杭の安定性が確保されることで、杭を安定させる上で、必ずしも貫入後の杭本体の先端位置にモルタルやセメントミルク等の固化剤液を注入する必要がないため、固化剤液を使用しない場合には産業廃棄物の発生も回避される。
【0027】
本発明では地盤中に杭本体を貫入させるのみによって杭本体自身を地中で安定させることが可能であるから、本発明の先端閉塞杭の用途は広く、建物や鉄塔等の上部構造を支持するための支持杭としての他、斜面の安定化のための地盤アンカー(アースアンカー)等としても先端閉塞杭を使用することが可能である。先端閉塞杭が地盤アンカーとして使用される場合には、支持杭として使用される場合より杭本体の径(断面)が小さくなるため、掘削刃と排出翼は杭本体に対して2本以上、突設されればよい。掘削刃と排出翼が2本の場合には、閉塞板も2枚、接合されればよい。
【0028】
請求項2では請求項1において各掘削刃から杭本体の外周面にかけて連続的に杭本体の軸に対して傾斜した排出翼を突設することにより、掘削刃が掘削した土砂の排出翼への誘導を円滑に行うことを可能にする。「連続的に」とは、掘削刃と排出翼が完全に連続していることの他、不連続状態であっても、掘削刃が掘削した土砂を掘削に伴って排出翼上に載せることができる程度の不連続状態を含むことを言う。
【0029】
掘削刃は閉塞板の中央部やその付近から閉塞板の周囲まで突設され、杭本体の軸に直交する断面上、杭本体先端の全断面が包囲される領域を網羅する。排出翼は掘削刃の上端位置から杭本体の周面にまで突設され、掘削刃に実質的に連続することで、見かけ上は掘削刃と排出翼が1本化したブレードとして挙動し、地盤掘削の機能と土砂の杭本体外周への排出の機能を発揮する。排出翼はまた、上記のようにその上を上昇する土砂を落下させた後、孔壁側の(孔壁を向く)表面において回転により孔壁に押し付ける機能も発揮する。掘削刃から排出翼へ移行する部分、または排出翼と、鉛直方向(杭本体の軸)とのなす角度が小さい程、掘進時に排出翼が受ける抵抗が小さくなるため、杭本体の貫入性がよくなる。
【0030】
請求項2では掘削刃と排出翼が実質的に連続していることで、掘削刃が掘削した土砂を杭本体の掘進に伴い、掘削刃の側面と排出翼の側面が杭本体に対し、相対的に上方へ押し上げ、杭本体の周面にまで排除することが可能になる。杭本体の先端は閉塞板で閉塞されているため、掘削刃が掘削した土砂が杭本体に内部に入り込むことはなく、杭本体はその先端位置において全断面分の支持力を地盤から得る。
【0031】
掘削された土砂が杭本体の内部に入り込まないことで、杭本体の掘進時には土砂は杭本体の外周に回り込まざるを得ない。このため、土砂はブレード(排出翼)から孔壁に押し付けられる作用を受けることで孔壁の一部に取り込まれ、孔壁の保護のために利用されることになる。掘削刃と排出翼が完全に連続しない(不連続である)場合、その不連続部分から多少の土砂が漏れることがあるが、ここでの土砂の漏れは排出翼への排出量の調節にもなるため、排出翼への土砂の排出効果が格別低下することはない。
【0032】
また上記のように掘削刃と排出翼を合わせたブレードが杭本体の先端位置から外周面まで実質的に連続することで、掘削刃が切削した土砂が杭本体の回転による掘進に伴い、ブレードの上面に沿って掘削刃から排出翼上まで運ばれるため、ブレードが地盤中で掘削した土砂から受ける抵抗も小さく、貫入性が向上する。
【0033】
貫入中の杭本体の先端位置から掘削土砂が杭本体の周面に送り込まれ、杭本体の貫入性が向上することで、地上において杭本体に回転力と圧力を与える杭打ち機に必要とされる能力が軽減される。この結果、杭本体(先端閉塞杭)の貫入を完了させるまでに要する杭打ち機の動力が小さくて済み、それに使用される燃料が少なくて済むため、杭打ち機が発生する二酸化炭素量が低減される上、杭打ち機に付随する設備の簡素化と施工コストの低減も図られる。
【0034】
ブレードが切削した土砂は杭本体の回転を伴う貫入に伴い、ブレードの上面に沿って杭本体に対して相対的に上方へ移動しようとする。ブレード上に留まる土砂は下方から押し上げられる土砂に押されることによりブレードの上端部から落下しようとするが、土砂の粘性が高ければ、落下するまでの間にブレード上で圧密され、塊りになる可能性がある。
【0035】
例えば特許文献1〜5のようにブレードの水平に対する傾斜が緩い場合には、ブレード上の土砂の落下が促されないことから、土砂が圧密されたときに、ブレードの先端部から上端部までの区間において土砂がブレード上に留まろうとし、塊りになって落下しようとすることがある。圧密されないとしても、ブレード上の土砂は下方からの土砂に押されて落下するだけであるから、掘削孔内における土砂は単に緩められるに過ぎない。土砂が粘性土であれば、粘性によって土砂がブレードに付着した状態を維持し易いため、ブレード上に堆積し易く、土砂をブレードから自然に落下させることが難しい。
【0036】
ブレード上での掘削土砂の圧密の発生は、図6に示すようにブレードをその長さ方向の中間部で上に凸に屈曲、もしくは湾曲させることで回避することが可能である。この場合、ブレードの中間部の位置を挟んで杭本体の材軸に対する傾斜角度が相違するため、角度が変化した上側寄りの部分においてブレード上に載った土砂を杭本体の回転に伴ってブレード上から自然に落下させることが可能になる。ブレードの中間部が上に凸に屈曲等することで、ブレード上に載った土砂が粘性土の場合を含め、ブレードに付着した状態から杭本体の回転中に分離し易くなるため、付着した状態を維持しにくく、結果的にブレード上から落下し易くなることによる。
【0037】
ブレード上から落下するとき、土砂は遠心力を受けて杭本体の孔壁寄りの位置から落下するが、図6の場合にはブレードから落下した後にその位置を通過するブレードの表面(孔壁側の面)によって孔壁側へ押し付けられ易くなるため、孔壁が固められ、孔壁の安定性が確保され易い。
【0038】
また図6に示すようにブレードの、杭本体に対して孔壁側に位置する部分を杭本体の周方向に見たとき、孔壁側が凸となるように幅方向に屈曲、もしくは湾曲させれば、ブレード上の土砂をブレードの屈曲等した部分から孔壁側へ落下させ易くなるため、ブレード上への土砂の堆積を回避し易くなる。この場合、幅方向に屈曲等し、孔壁に面する部分がその形状によりブレードから落下した土砂を杭本体の回転に伴い、孔壁に押し付ける効果を発揮するため、ブレードは孔壁を安定させ、その崩落を防止することに寄与する。ブレード上から落下した土砂を孔壁に押し付ける機能は孔壁側が凸となった部分(孔壁側の表面)が果たす。
【0039】
特許文献1〜5のようにブレードが平坦な板である場合、ブレード上に載った土砂の落下が促されないため、前記のように切削土砂が順次送り込まれることで、ブレード上で次第に圧密され、その土砂が杭本体の回転時に抵抗になる可能性がある。これに対し、ブレードに上記の形状を与えることで、切削土砂の落下が促されるため、ブレード上での圧密の可能性が低下し、切削土砂の圧密による抵抗の発生が回避、もしくは緩和される。
【0040】
またブレードの上面に沿って杭本体の周面にまで上昇し、排出翼の上端から落下する土砂は杭本体の回転時に孔壁に密着する排出翼の孔壁側の表面によって孔壁に押し付けられるため、孔壁の一部として削孔の半径方向に圧密されることになる。この土砂の孔壁への圧密効果は上記のように排出翼の上端寄りの部分を上に凸に屈曲等させると共に、幅方向にも屈曲等させることで向上するが、前記のように排出翼をプレート(平坦な板)状ではなく、板厚に対する幅の比率が小さいフラットバー形状にすることによっても得られる。排出翼がフラットバー形状であれば、プレートである場合との対比では排出翼の孔壁に面する(対向する)表面の領域が拡大するため、土砂の押し付け効果が高まることによる。
【0041】
請求項1では杭本体の周方向に隣接する2枚の閉塞板間に段差が付くことに伴い、杭本体の回転時にこの段差に空隙が形成され、この空隙から土砂が進入する可能性がある。この問題に対しては、請求項3に記載のように掘削刃が杭本体の周方向に隣接する閉塞板の境界に位置し、隣接する閉塞板間の空隙を閉塞することで、または掘削刃とは別の板が空隙を塞ぐことによって回避される。
【0042】
掘削刃が掘削した土砂の排出翼上への排出効果は請求項4に記載のように閉塞板の中央部、もしくはその付近に、杭本体の内部を通じて供給される気体、もしくは液体を吐出する吐出口が形成されていることで、向上する。この場合、吐出口から空気や水等の気体や液体を孔壁に向けて吐出、もしくは噴出することができ、この気体や液体が杭本体の降下時に図9に示すように削孔内で循環することにより土砂に鉛直方向上向きの流れを発生させるため、土砂を上方へ押し上げ、隣接する排出翼間に誘導することが可能になる。図9中、先端閉塞杭の先端部分の矢印は掘削刃が掘削した土砂の動きを示す。
【0043】
吐出口から空気等の気体を吐出させることは、杭本体(先端閉塞杭)の掘進が進み、例えば掘削土砂が掘削刃から排出翼上へ排出されにくく、土砂が孔底に溜まり易くなったような場合、すなわち土砂が杭本体先端位置を閉塞状態にするような場合に、杭本体先端位置における土砂を上方へ排出し、杭本体の貫入性を確保する目的で行われる。
【0044】
請求項4では杭本体の内部を通じ、必要により固化剤液を供給することもできるため、杭本体を定着させるべき深度において吐出口からセメントミルク等の固化剤液(根固め液)を吐出し、孔底に球根を形成することで、杭本体の定着状態での安定性を確保することが可能である。この場合、固化剤液の硬化によって杭本体の掘削刃と排出翼が固化剤中に定着されるため、杭本体の定着状態での引き抜きと転倒に対する安定性が向上する。
【0045】
本発明では掘削土砂を孔壁に圧密させる効果により地上への掘削土砂の排出量が少ない上、削孔内での杭本体(先端閉塞杭)の安定性が確保されていることから、セメントミルク等の固化剤液を吐出する場合にも、少なくとも杭本体の先端位置に吐出し、充填させれば十分な支持力を得ることができるため、削孔内の全長に亘って固化剤液を注入する必要がない。従って地上に固化剤液を横溢させずに済むため、地上に産業廃棄物が発生する事態は回避される。
【0046】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の先端閉塞杭は杭本体の先端に、杭の先端側の一部を構成する掘削ヘッドが装着されることによっても構成される。この掘削ヘッドは請求項5に記載のように杭本体に外接する外接管と、この外接管の先端を閉塞する複数枚の閉塞板とを有し、この閉塞板から外接管にかけて複数本の掘削刃が突設されることにより製作される。閉塞板と掘削刃は請求項1〜4のいずれかにおける閉塞板と掘削刃と同一の機能を有する。請求項2に記載の先端閉塞杭を構成する場合には、各掘削刃から外接管の外周面にかけて連続的に杭本体の軸に対して傾斜した排出翼が突設される
【0047】
請求項5に記載の掘削ヘッドは杭本体に外接する外接管を有することから、杭本体が中空杭であるか、中実杭であるかを問わずに杭本体に装着され、鋼管杭の他、コンクリート杭にも適用される。掘削ヘッドは請求項1〜請求項4のいずれかの要件を備えるため、それぞれの要件に応じた利点を引き継ぐ。
【発明の効果】
【0048】
杭本体に複数枚の閉塞板を固定し、この複数枚の閉塞板に傾斜を付けることで、掘削刃と排出翼の前方側を向いた側面の、閉塞板からの高さを稼ぐことができるため、閉塞板からの高さが等しい場合との対比では、排出翼による土砂を掻き集める効果が大きくなり、掘削土砂を排出翼の上方へ押し上げ、孔壁に押し付ける効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0050】
図1は杭本体11の先端にこの先端を閉塞する閉塞板2が固定され、閉塞板2の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃3が突設された先端閉塞杭1の先端部分の構成例を示す。
【0051】
杭本体11には主に中空の既製杭として鋼管が使用される。但し、閉塞板2は杭本体11の先端に固定され、この閉塞板2に掘削刃3が突設されることと、排出翼4が掘削刃3に連続して溶接等により接合されることが可能であるため、杭本体11にはプレストレスコンクリート杭(PHC杭)等、コンクリート杭の使用も可能である。排出翼4を掘削刃3に連続させる場合には、掘削刃3と排出翼4をブレード5として一体的に製作することもある。以下、掘削刃3と排出翼4を合わせてブレード5と呼ぶこともある。
【0052】
図2−(a)に示すように杭本体11の先端の端面は周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、杭本体11の回転時の前方側から後方側へかけて杭本体11の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板2が固定される。杭本体11端面の傾斜は例えば図3−(a)の形状に鋼管を切り欠くことにより、または図3−(a)の形状に加工した鋼材を未加工の鋼管に溶接することにより形成される。
【0053】
図面では杭本体11を周方向に3区間に区分しているが、2区間に区分することもあれば、4区間以上に区分することもある。3区間に区分した場合、杭本体11には3枚の閉塞板2が固定され、2区間に区分した場合には2枚の閉塞板2が固定される。掘削刃3と排出翼4の突設本数は基本的に杭本体11の区分数に従うが、必ずしもその必要はない。
【0054】
図示するように杭本体11を3区間に区分した場合には、連続する3本の掘削刃と排出翼4(ブレード5)が突設されるが、掘削刃3と排出翼4の突設本数は杭本体11の区分数より少ない場合も多い場合もある。杭本体11の回転時の前方側は杭本体11を側面から見た図1における左側であり、後方側は右側になる。図面では杭本体11を軸の回りに時計回りに回転させる場合を示しているが、逆回りに回転する場合には杭本体11の先端の傾斜の向きは逆になる。
【0055】
複数に区分された区間の先端の端面は図3−(a)に示すようにラチェットの歯のような形状になっており、各区間の端面に図2−(a)のように閉塞板2が溶接等により接合され、その区間の開放面を閉塞する。閉塞板3は平坦な板の場合と曲面をなす板の場合があり、いずれの場合も平面形状は扇形をする。
【0056】
杭本体11の先端部分を便宜的に展開して示せば、図2−(b)に示すように鋸刃状になる。図2−(b)は展開した杭本体11を外側から見た様子を示している。図2では杭本体11の端面と掘削刃3及び排出翼4の関係も示している。図2の杭本体11と複数枚の閉塞板3、及び1枚のブレード5(掘削刃3と排出翼4)を図3−(a)〜(c)に分解して示す。複数枚の閉塞板3は図3−(b)に示すように杭本体11の断面上の中心部、もしくはその付近において交わるように、あるいは接するように組み合わせられる。
【0057】
掘削刃3は図1、図2に示すように複数枚の閉塞板2が集合した部分から、閉塞板3の縁、または杭本体11の周面までの間に突設される。排出翼4はこの掘削刃3の端部から杭本体11の先端より上方位置まで突設されるが、掘削刃3と排出翼4が連続する場合には両者の接合部分に必ずしも明確な境界が表れないこともある。図面では掘削刃3が硬質地盤にも対応できるように、掘削刃3に肉厚の大きい板を使用していることに伴い、相対的に排出翼4の肉厚が掘削刃3より小さくなっている。
【0058】
図2−(a)に示すように杭本体11の端面に複数枚の閉塞板3のみが接合された状態のとき、隣接する閉塞板3、3間に段差が生まれ、空隙が発生するが、この空隙は両閉塞板3、3の境界に配置されるブレード5によって、またはブレード5とは別の、もしくはブレード5の一部を構成する閉塞用の板によって塞がれる。ブレード5は杭本体11回転時の後方側に位置する閉塞板3の端面と、鋼管を切り欠いた状態にある杭本体11の側面に接触した状態で、杭本体11に、または杭本体11と閉塞板3に溶接等により接合される。
【0059】
杭本体11の周方向に隣接する区間の境界における段差はそのまま、図2−(b)に示すようにブレード5の前方側の側面における閉塞板3表面からの距離H2と、後方側の側面における閉塞板3表面からの距離H1との差になる。この距離の差(H2−H1)が大きい程、杭本体11の回転を伴う掘進時にブレード5が抱え込む土砂の量が増大する。
【0060】
図2−(b)に示すように先端の端面に閉塞板3とブレード5が接合された杭本体11が矢印の向きに回転するとき、ある閉塞板3の下に存在する土砂は杭本体11に対して回転の後方へ移動し、後方側に位置するブレード5に一旦、塞き止められる。ここで、ブレード5の前方側の側面と閉塞板3表面との間の距離H2が後方側の閉塞板3表面との間の距離H1より大きいことで、ブレード5は多量の土砂を塞き止める能力を有している。ブレード5に塞き止められた土砂は杭本体11の回転に伴い、ブレード5(掘削刃3と排出翼4)に沿って杭本体11に対して上昇し、排出翼4の上端まで移動させられる。
【0061】
排出翼4の上端まで移動した土砂は排出翼4の上端位置から落下するが、その位置を通過するブレード5の孔壁10側の表面が落下した土砂を孔壁10に押し付ける働きをするため、土砂は孔壁10を保護するために利用される。ブレード5の孔壁10側表面が落下した土砂を孔壁10に押し付ける効果は排出翼4自体がフラットバーから成形されることにより、または図6に示すように排出翼4の上側部分が上に凸に屈曲、もしくは湾曲することにより向上する。排出翼4がフラットバー形状の場合と、図6に示すように上側部分が屈曲等した場合のいずれも、排出翼4の孔壁10側の表面が土砂の押し付け部4aとして機能する。
【0062】
閉塞板2と掘削刃3、及び排出翼4を有する杭本体11を先端側から見たとき、複数本の掘削刃3は図5、図7に示すように杭本体11の中心部から放射状に、杭本体11の周面にかけて突設され、その上端に連続するように排出翼4が杭本体11の周面に突設される。複数本の掘削刃3は基本的に図5に示すように杭本体11の中心部から半径方向を向くが、必ずしもその必要はなく、図7に示すように半径方向に対し、杭本体11の回転時の後方側に傾斜することもある。連続する掘削刃3と排出翼4が図7のように杭本体11の回転時の後方側へ傾斜している場合には、掘削刃3と排出翼4を合わせたブレード5の上面に土砂が載り易くなるため、排出翼4上への土砂の誘導効果が高い。
【0063】
また図1、図4に示すように杭本体11の立面上、掘削刃3と排出翼4(ブレード5)が鉛直方向に近い角度で傾斜している場合には、これらが孔壁10から受ける抵抗を小さくすることができるため、杭本体11の掘進時の貫入性が良好になる。
【0064】
掘削刃3と排出翼4は連続するか、僅かな空隙を空けて連続的に形成される。図面では掘削刃3と排出翼4を連続させているが、排出翼4が抱え込む土砂の量を調節するような場合に、両者間に空隙が形成される。
【0065】
掘削刃3は杭本体11の先端が地盤に直接当たる範囲、すなわち削孔の断面を包囲する領域に突設され、図2−(a)、図5に示すように複数枚の閉塞板2が集合した中心部から杭本体11の周面までの区間に突設される。この掘削刃3の上端位置から杭本体11の周面にかけて排出翼4が突設される。
【0066】
掘削刃3は閉塞板2、または閉塞板2と杭本体11に、排出翼4は杭本体11、または掘削刃3と杭本体11にそれぞれ溶接やボルト等により接合される。掘削刃3と排出翼4が連続する場合には、両者間に明確な境界が表れないが、排出翼4は掘削刃3が掘削した土砂を杭本体11の掘進と共に上方へ押し上げた後、排出翼4上に存在する土砂を落下させ、杭本体11の回転と共に孔壁10に押し付ける働きをする。
【0067】
排出翼4がその上方へ掘削土砂を誘導する働きをする上では、図6に示すように排出翼4は掘削刃3寄りの部分から上端にかけ、水平に対する傾斜が緩くなるように湾曲、もしくは屈曲する。また排出翼4がその上方まで誘導した土砂を孔壁10に押し付ける機能を有効に発揮させる上では、排出翼4自体が幅方向に湾曲、もしくは屈曲することが適切である。排出翼4を幅方向に湾曲等させない場合には、排出翼4には板厚に対する幅の比率が比較的小さい鋼材の使用が適する。
【0068】
図4、図5は先端閉塞杭1の全体を示すが、先端閉塞杭1の埋設深度が大きい場合には先端閉塞杭1は溶接等によって継ぎ足されながら地中に挿入される。杭本体11にコンクリート杭が使用される場合には、継手の部分に、溶接用に図10に示すような鋼製のバンドプレート6が装着される。
【0069】
先端閉塞杭1は上端の周囲が直接、または図10、図12に示すように先端閉塞杭1(31)の内部に固定されるロッド7が杭打ち機のチャックに把持された状態で回転力と圧力を与えられることにより地中に挿入される。ロッド7はチャックに把持される他、先端閉塞杭1(31)の先端に気体や液体を供給するために利用される。ロッド7がチャックに把持される場合、ロッド7にはチャックに把持され易い六角等の角軸が使用される。
【0070】
図10は杭本体30が、頂部にバンドプレート6を固定したコンクリート杭であり、先端部に後述の掘削ヘッド20を装着した様子を示している。バンドプレート6は例えばその内周面に突設されたアンカーがコンクリート杭中に埋設されることにより固定される。ロッド7は先端閉塞杭構1(31)を目標の深度に到達させ、定着させた後には、逆向きに回転させられることで、引き抜かれる。
【0071】
図6〜図8は図1に示す先端閉塞杭1の変形例を、図9はその掘進時の様子を示す。ここでは掘削刃3と排出翼4(ブレード5)に板厚に対する幅の比率が小さいフラットバーを使用し、排出翼4上を移動する土砂の落下と孔壁10への圧密効果を高めるために、ブレード5をその長さ方向の中間部で上に凸に屈曲、もしくは湾曲させると共に、孔壁10側が凸となるように幅方向に屈曲、もしくは湾曲させ、押し付け部4aを形成している。
【0072】
また掘削刃3の孔壁10側の表面にV字状の溝を形成し、掘削刃3が多数の歯を有する形状にすることで、硬質地盤に対する掘削刃3の切削効果を高めている。図7は図6に示す先端閉塞杭1の先端側の面を、図8は図6の軸に平行な断面を示す。前記のように図9における先端閉塞杭1先端部分の矢印は土砂の動きを示す。
【0073】
図4、図5に示すように複数枚の閉塞板2が会する(接する)、杭本体11の断面上の中心部には掘削刃3による掘削を補うための筒状の、または板状の先端ビット8が突設される。杭本体11の断面上の中心部付近に気体やセメントミルク等の液体を吐出するための、ロッド7の内部に連続する吐出口9を形成する場合には、閉塞板2、または先端ビット8に吐出口9が形成される。図12は後述のように杭本体30の先端に掘削ヘッド20を装着した先端閉塞杭31を示しているが、先端閉塞杭1の先端に吐出口9を形成する場合も図12と同様になる。
【0074】
吐出口9は図12に示すように杭本体30(杭本体11)の断面上の中心部に固定されるロッド7の内部に形成された供給路7aに連通し、吐出口9にはこの供給管7aを通じて地上から気体や液体が供給される。気体や液体は先端閉塞杭1の降下時に吐出口9から吐出させられることから、吐出口9は原則的に杭本体11の軸に直交する断面上は半径方向に、立面上は例えば鉛直方向下向きに対して30°〜60°程度、傾斜した方向、すなわち削孔の先端位置から孔壁10側へ寄った方向に向けられる。
【0075】
図10、図11は杭本体30の先端に先端閉塞杭構成用の掘削ヘッド20を装着し、前記の先端閉塞杭1と同一の機能を持たせた先端閉塞杭31の構成例を示す。掘削ヘッド20は杭本体30がコンクリート杭等である場合のように、杭本体30の先端に直接、閉塞板2と掘削刃3、及び排出翼4を接合できない場合に、杭本体30に組み合わせられて使用される。
【0076】
掘削ヘッド20は図12に示すようにその断面上の中心部に、杭本体30との接続のためのスリーブ21を持ち、杭本体30に対してはその内部に固定されたロッド7の下端部に接合されることにより固定される。スリーブ21は例えばスリーブ21の内周面に形成された雌ねじがロッド7の下端部に形成された雄ねじに螺合することによりロッド7に接続される。ロッド7は掘削ヘッド20のスリーブ21に螺合により接続されることで、掘削ヘッド20に対して着脱自在になり、先端閉塞杭31の貫入終了後に回収可能になっている。図12−(a)は図10に示す先端閉塞杭31の杭本体30と掘削ヘッド20の関係を示す。(b)は(a)を先端(底面)側から見た様子を示す。
【0077】
図12はスリーブ21が掘削ヘッド20の先端位置からロッド7との接続位置まで連続している場合を示すが、スリーブ21は図13、図14に示すように掘削ヘッド20の先端部分と、雌ねじを有する、ロッド7との接続部分に分割されることもある。
【0078】
掘削ヘッド20は杭本体30に外接し、杭本体11の先端部に相当する外接管22と、この外接管22の先端を閉塞する複数枚の閉塞板23とを有し、この閉塞板23から外接管22にかけて複数本の掘削刃24が突設され、この各掘削刃24から外接管22の外周面にかけて連続的に杭本体30の軸に対して傾斜した排出翼25が突設される。
【0079】
外接管22の先端は前記した先端閉塞杭1の杭本体11の先端部と同様、ラチェットの歯のような形状(鋸刃状)に形成され、その傾斜が付いた複数の区間の端面に複数枚の閉塞板23が固定される。隣接する閉塞板23、23間には傾斜が付くため、先端閉塞杭1と同様に排出翼25による掘削土砂の掻き集め(抱え込み)効果が発揮される。
【0080】
スリーブ21は閉塞板23に溶接等により接合されることにより掘削ヘッド20の中心部に固定される。また図10、図11に示すように複数枚の閉塞板23が会する(接する)、外接管22の断面上の中心部には掘削刃24による掘削を補うための筒状の、または板状の先端ビット27が突設される。
【0081】
スリーブ21の軸方向中間部の位置には外接管22内に挿入される杭本体30の先端が突き当たり、掘削ヘッド20を杭本体30に対して位置決めするための支持板26が固定される。支持板26は外接管22、もしくはスリーブ21に溶接される等によりいずれかに固定される。
【0082】
外接管22の断面上の中心部付近に気体やセメントミルク等の液体を吐出するための吐出口28を形成する場合には、閉塞板23に、または図12〜図14に示すように先端ビット27に吐出口28が形成される。吐出口28は杭本体30の断面上の中心部に固定されるロッド7の内部に形成された供給路7aに連通する。
【0083】
掘削ヘッド20は前記の先端閉塞杭1の先端部分と同様、閉塞板23と掘削刃24、及び排出翼25を備えているため、掘削ヘッド20が装着された先端閉塞杭構31は先端閉塞杭1と同じ機能を有し、先端閉塞杭1と全く同様に取り扱われる。
【0084】
図13〜図16は杭本体30に図10、図11に示す掘削ヘッド20を装着した先端閉塞杭構31の他の構成例を示す。ここでは杭本体30にコンクリート杭を使用しているが、杭本体30には鋼管杭も使用される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】先端閉塞杭の先端部の外観を示した立面図である。
【図2】(a)は杭本体先端の形状とこの先端に固定される閉塞板の関係を示した斜視図、(b)は(a)に示す杭本体を展開した状態の外観を示した展開図である。
【図3】(a)は図2−(a)に示す閉塞板付き杭本体の内、杭本体のみを示した斜視図、(b)は閉塞板のみを示した斜視図、(c)はブレード(掘削刃と排出翼)のみを示した斜視図である。
【図4】先端閉塞杭の製作例を示した立面図である。
【図5】図4に示す先端閉塞杭を先端側から見た斜視図である。
【図6】先端閉塞杭の他の製作例を示した立面図である。
【図7】図6の底面図である。
【図8】図6の縦断面図である。
【図9】図6に示す先端閉塞杭の施工時の様子を示した立面図である。
【図10】杭本体に掘削ヘッドを装着した先端閉塞杭の構成例を示した立面図である。
【図11】図10に示す先端閉塞杭を先端側から見た斜視図である。
【図12】(a)は図10に示す形態の先端閉塞杭の内部を示した立面図、(b)は(a)の底面図である。
【図13】図10に示す先端閉塞杭の変形例を示した立面図である。
【図14】図13の縦断面図である。
【図15】図13の底面図である。
【図16】図13に示す先端閉塞杭の施工時の様子を示した立面図である。
【符号の説明】
【0086】
1……先端閉塞杭、11……杭本体、
2……閉塞板、3……掘削刃、4……排出翼、4a……押し付け部、5……ブレード、
6……バンドプレート、7……ロッド、7a……供給路、
8……先端ビット、9……吐出口、
10……孔壁、
20……掘削ヘッド、21……スリーブ、22……外接管、23……閉塞板、24……掘削刃、25……排出翼、26……支持板、27……先端ビット、28……吐出口、
30……杭本体、31……先端閉塞杭。
【技術分野】
【0001】
本発明は回転を伴う圧入により地中に貫入させられる先端閉塞杭、及びその一部を構成する先端閉塞杭構成用掘削ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば埋立地や盛土した地盤のような支持力の小さい地盤上に、木造住宅等のような中低層建物等の構造物を構築する場合、構造物の不同沈下を防止する上で、基礎の下に支持層に到達する杭、または地中で地盤との摩擦力により支持力を得る杭を打設、もしくは圧入する、または構築する必要がある。
【0003】
杭として既製杭が使用される場合、杭は振動や騒音等の近隣地域への影響を低減する観点から、主に回転圧入により地中に挿入される。また掘進に伴う排土量を抑制する上では、先端開放型の杭の使用が適するが、杭を貫入した後の地盤支持力を高めることを目的とする場合には、杭本体が先端で支持力を得られる先端閉塞杭が適する。
【0004】
先端閉塞杭の場合には、貫入時に先端を閉塞している板が地盤から直接の抵抗を受けるため、杭本体の外周に貫入を助けるための案内翼を突設することが不可欠になる(特許文献1〜4参照)。杭本体外周の案内翼は杭本体の貫入時に、回転に伴う地中への貫入を促す目的で突設されるのに対し、杭本体先端の掘削刃は地盤を切削するために突設されることから、案内翼と掘削刃は機能が相違するため、それぞれは独立し、分離して突設されることが多い。
【0005】
このように案内翼と掘削刃が分離して突設された場合、掘削刃と案内翼が不連続になるため、案内翼に、掘削刃が切削した土砂を杭本体の先端部分(孔底)から杭本体の周囲(孔壁)へ排除し、孔壁に押し付ける機能を持たせることができない。掘削した土砂が孔底に留まれば、土砂が掘削刃に付着し易く、掘削刃による掘削を阻害することになるから、掘削効率を低下させる原因になる。案内翼は掘削刃が掘削した土砂の周辺地盤を切り込みながら地中に入り込むため、本来、掘削刃が掘削した土砂を上方へ排除する機能を有していない。
【0006】
これに対し、案内翼を掘削刃に連続するように突設すれば、掘削刃が掘削した土砂を、案内翼を利用して杭本体の掘進と共に杭本体の周面に押し上げ、孔底から排除することができなくはないと考えられる(特許文献5、6参照)。
【0007】
特許文献5では杭本体2外周面のスパイラル状の杭掘進羽根4の先端(下端)が杭本体2の先端に突設された掘削羽根5に連続するように杭掘進羽根4を形成することにより(請求項2、図1、図3)、掘削羽根5の先端が掘削した土砂をその上から杭掘進羽根4に導き、孔底から排除することを意図している(段落0036)。
【0008】
しかしながら、中空の杭本体の開放端面を閉塞する管閉塞壁52を杭本体の先端より上方に寄った内部に固定し、この管閉塞壁52の下端に掘削羽根5を形成しているため(段落0022、図2)、杭本体の端面は先端位置では完全には閉塞していない。従って掘削羽根5はそれが掘削した土砂を管閉塞壁52まで誘導し、管閉塞壁52から杭本体先端までの空間に土砂を充填させることになるため(段落0030)、土砂を孔底から杭本体の外周に有効に排除することができるとは言えない。
【0009】
特許文献5ではソイルセメントの球根に杭本体の先端を定着させる関係で(段落0030)、管閉塞壁52以下の空間に積極的に土砂を入り込ませることをしているため、杭本体の内部に土砂が全く入らないことを意図している訳ではない。杭本体の内部に土砂を取り込む分、土砂は少なくとも孔底から排除されるが、孔壁に押し付けられることがないため、土砂を孔壁の安定のために利用することにはならない。
【0010】
また特許文献1〜5のように杭本体の外周面に突設されるスパイラル状の羽根が板状である限り、仮に掘削羽根からスパイラル羽根にまで一部の土砂が誘導されたとしても、土砂はスパイラル羽根の上端まで到達した時点で孔底に落下するため、土砂は孔底から一時的に排除されるに過ぎない。
【0011】
特許文献6のように杭本体の先端位置から周面にまで螺旋翼を連続させて形成し、その先端(下端)に掘削爪を突設した場合には、掘削刃が掘削した土砂を螺旋翼に載せて杭本体の周面側に排出することも可能である。但し、螺旋翼が杭本体の先端位置から取り込める土砂の量は杭本体の周面から螺旋翼の外周位置までの、半径方向の距離によって決まるから、螺旋翼が孔底から排除できる土砂の量を稼ぐには螺旋翼自体の幅(杭本体周面から突出幅)を拡大する必要がある。
【0012】
【特許文献1】特開平8−209690号公報(請求項5、段落0006、図1、図5)
【特許文献2】特開2001−3357号公報(請求項1、段落0011〜0012、図1)
【特許文献3】特開2005−220662号公報(請求項1、段落0013、図7、図8)
【特許文献4】特開2005−315050号公報(請求項1、段落0008、図1〜図3)
【特許文献5】特開2002−021067号公報(請求項1、段落0019〜0030、0036、図1〜図3)
【特許文献6】特開2004−11241号公報(図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、螺旋翼の幅を拡大することは、削孔径(削孔の断面)に対する杭本体の径(杭本体の断面)の比率を小さくすることになり、それだけ杭本体の周辺地盤を掘削により緩めることになるため、杭本体の削孔内での安定性を損ない、引き抜き力と水平力に対する抵抗力を低下させる結果を招く。
【0014】
本発明は上記背景より、杭本体の外周に突設される排出翼(螺旋翼)が取り込める土砂の量を稼ぎながらも、削孔の断面を拡大することがなく、また掘削土砂を孔壁の安定のために利用可能な機能を有する先端閉塞杭とその一部を構成する掘削ヘッドを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の先端閉塞杭は、杭本体の先端にこの先端を閉塞する閉塞板が固定され、この閉塞板の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃が突設された先端閉塞杭において、
前記杭本体の先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、前記杭本体の回転時の前方側から後方側へかけて前記杭本体の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板が固定されていることを構成要件とする。閉塞板は杭本体の先端が区分された区間数分、杭本体に固定される。
【0016】
。
杭本体には主に中空の既製杭が使用されるが、杭本体の先端は閉塞されるため、必ずしも杭本体が中空である必要はない。掘削刃が閉塞板の中央部以外に、中央部付近から突設されることがあるのは、閉塞板の中央部に気体や液体を吐出する吐出口が形成されることがあることによる(請求項4)。
【0017】
前記のように掘削刃と排出翼(螺旋翼)が連続している、または連続的に形成されている場合には、掘削刃が掘削し、杭本体の周方向に隣接する排出翼間の領域に存在する土砂は掘削刃と排出翼の側面に押されながら、杭本体の掘進と共に杭本体に対して上昇しようとする。このとき、杭本体は軸回りに回転しているため、排出翼間の土砂はその後方側に位置する排出翼の前方の側面に塞き止められ、そのまま回転の向きに押し出される。排出翼が土砂を塞き止め、押し出す(掻き集める)量は回転時の前方側を向いた側面の、杭本体周面(閉塞板表面)からの高さが大きい程、大きい。
【0018】
そこで、請求項1に記載のように杭本体先端の端面を波形の形状にし、その形状に合わせて杭本体に複数枚の閉塞板を固定し、この複数枚の閉塞板に傾斜を付けることで、掘削刃と排出翼の前方側を向いた側面の閉塞板からの高さを稼ぐことが可能になる。掘削刃と排出翼が連続する場合、両者間には明確な境界が表れないこともあるため、以下では掘削刃と排出翼を合わせて単にブレードと呼ぶこともある。
【0019】
請求項1では、杭本体先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、各区間の端面が前方側から後方側へかけて杭本体の上端側へ傾斜することで、杭本体の全体ではその先端の端面は図2−(b)に示すようにラチェットの歯のような波形の形状になる。この波形を形成する各区間の端面毎に閉塞板が固定されることで、掘削刃と排出翼のない状態では図2−(a)、図3−(b)に示すように複数枚の閉塞板が杭本体の断面上の中心部で互いに会しながら、半径方向に次第に段差が付く異なる面を構成する。
【0020】
複数枚の閉塞板は平面であるか、曲面であるかを問わず、曲面の場合には主に杭本体の先端側が凸に湾曲する形状になる。杭本体先端の端面が複数の区間に区分されず、傾斜もしない場合には、杭本体先端の端面には円板形、もしくは円錐形、あるいは円錐台形等の1枚以上、または1個以上の閉塞板が固定される。
【0021】
各閉塞板が回転時の前方側から後方側へかけて杭本体の先端側から上端側へ向かって傾斜することで、杭本体の周方向に隣接する排出翼(ブレード)と閉塞板に挟まれた領域においては閉塞板の厚さ方向にブレードを見たとき、図2−(b)に示すように回転時に後方を向く側面の奥行きH1より前方を向く側面の奥行き(深さ)H2が大きくなる。図2−(b)中の矢印は杭本体の回転の向きを示す。
【0022】
杭本体の回転による複数枚の排出翼が一定の深度を掘削している削孔内では、隣接するブレード間に存在する土砂はその後方に位置する排出翼(ブレード)の、回転時の前方を向く側面に押される。従って請求項1では前方の側面と後方の側面の、閉塞板からの高さが等しい場合との対比では、排出翼(ブレード)による土砂を掻き集める効果が大きくなる。
【0023】
上記のように土砂の排出翼上への誘導効果はブレード(掘削刃と排出翼)の前方側の側面の閉塞板からの高さ(奥行き)が大きい程、大きい。従って各閉塞板の水平に対する傾斜角度が大きい程、すなわち区分された杭本体先端の端面の傾斜が大きい程、土砂の誘導効果が高まり、ブレードが抱え込み得る土砂の量が多くなるため、掘削土砂を排出翼の上方へ押し上げ、孔壁に押し付ける効果が向上する。
【0024】
杭本体の回転時に前方側を向くブレードの側面が掻き集めた土砂は杭本体の掘進に伴い、その側面に誘導されてブレード(排出翼)の上方へ移動し、排出翼の上端から落下する。落下と同時に、その位置を通過するブレード(排出翼)の孔壁側の表面が孔壁に押し付ける働きをするため、掘削刃が掘削した土砂の多くは孔底にまで落下する以前に孔壁に圧密させられる。ここで、例えば排出翼として板厚に対する幅の比率が小さいフラットバー形状の板を使用すれば、土砂が排出翼の上端から落下するときに、排出翼の孔壁側を向いた表面が落下した土砂を孔壁との間に挟み込み、孔壁に押し付けるため、孔壁は掘削した土砂によって圧密され、崩落に対する安定性を確保する。
【0025】
掘削刃が掘削した土砂が孔壁に圧密されることで、削孔の断面が杭本体の断面より格別大きくなることがなく、杭本体が地中に定着された状態で引き抜き力を受けたときに周囲の孔壁が杭本体との間で摩擦力を発揮し、杭本体を拘束するため、杭本体の引き抜きに対する安定性が確保される。また杭本体の周面と周囲の孔壁との間に距離が抑えられることで、杭本体が水平力を受けたときの転倒に対する安定性も確保される。
【0026】
掘削刃が掘削した土砂が排出翼上へ送り込まれ、孔壁に押し付けられることで、杭本体の掘進に伴う排出土の量が削減され、先端閉塞杭でありながら、無排土で杭本体を貫入させることが可能である。また土砂の孔壁への圧密により杭の安定性が確保されることで、杭を安定させる上で、必ずしも貫入後の杭本体の先端位置にモルタルやセメントミルク等の固化剤液を注入する必要がないため、固化剤液を使用しない場合には産業廃棄物の発生も回避される。
【0027】
本発明では地盤中に杭本体を貫入させるのみによって杭本体自身を地中で安定させることが可能であるから、本発明の先端閉塞杭の用途は広く、建物や鉄塔等の上部構造を支持するための支持杭としての他、斜面の安定化のための地盤アンカー(アースアンカー)等としても先端閉塞杭を使用することが可能である。先端閉塞杭が地盤アンカーとして使用される場合には、支持杭として使用される場合より杭本体の径(断面)が小さくなるため、掘削刃と排出翼は杭本体に対して2本以上、突設されればよい。掘削刃と排出翼が2本の場合には、閉塞板も2枚、接合されればよい。
【0028】
請求項2では請求項1において各掘削刃から杭本体の外周面にかけて連続的に杭本体の軸に対して傾斜した排出翼を突設することにより、掘削刃が掘削した土砂の排出翼への誘導を円滑に行うことを可能にする。「連続的に」とは、掘削刃と排出翼が完全に連続していることの他、不連続状態であっても、掘削刃が掘削した土砂を掘削に伴って排出翼上に載せることができる程度の不連続状態を含むことを言う。
【0029】
掘削刃は閉塞板の中央部やその付近から閉塞板の周囲まで突設され、杭本体の軸に直交する断面上、杭本体先端の全断面が包囲される領域を網羅する。排出翼は掘削刃の上端位置から杭本体の周面にまで突設され、掘削刃に実質的に連続することで、見かけ上は掘削刃と排出翼が1本化したブレードとして挙動し、地盤掘削の機能と土砂の杭本体外周への排出の機能を発揮する。排出翼はまた、上記のようにその上を上昇する土砂を落下させた後、孔壁側の(孔壁を向く)表面において回転により孔壁に押し付ける機能も発揮する。掘削刃から排出翼へ移行する部分、または排出翼と、鉛直方向(杭本体の軸)とのなす角度が小さい程、掘進時に排出翼が受ける抵抗が小さくなるため、杭本体の貫入性がよくなる。
【0030】
請求項2では掘削刃と排出翼が実質的に連続していることで、掘削刃が掘削した土砂を杭本体の掘進に伴い、掘削刃の側面と排出翼の側面が杭本体に対し、相対的に上方へ押し上げ、杭本体の周面にまで排除することが可能になる。杭本体の先端は閉塞板で閉塞されているため、掘削刃が掘削した土砂が杭本体に内部に入り込むことはなく、杭本体はその先端位置において全断面分の支持力を地盤から得る。
【0031】
掘削された土砂が杭本体の内部に入り込まないことで、杭本体の掘進時には土砂は杭本体の外周に回り込まざるを得ない。このため、土砂はブレード(排出翼)から孔壁に押し付けられる作用を受けることで孔壁の一部に取り込まれ、孔壁の保護のために利用されることになる。掘削刃と排出翼が完全に連続しない(不連続である)場合、その不連続部分から多少の土砂が漏れることがあるが、ここでの土砂の漏れは排出翼への排出量の調節にもなるため、排出翼への土砂の排出効果が格別低下することはない。
【0032】
また上記のように掘削刃と排出翼を合わせたブレードが杭本体の先端位置から外周面まで実質的に連続することで、掘削刃が切削した土砂が杭本体の回転による掘進に伴い、ブレードの上面に沿って掘削刃から排出翼上まで運ばれるため、ブレードが地盤中で掘削した土砂から受ける抵抗も小さく、貫入性が向上する。
【0033】
貫入中の杭本体の先端位置から掘削土砂が杭本体の周面に送り込まれ、杭本体の貫入性が向上することで、地上において杭本体に回転力と圧力を与える杭打ち機に必要とされる能力が軽減される。この結果、杭本体(先端閉塞杭)の貫入を完了させるまでに要する杭打ち機の動力が小さくて済み、それに使用される燃料が少なくて済むため、杭打ち機が発生する二酸化炭素量が低減される上、杭打ち機に付随する設備の簡素化と施工コストの低減も図られる。
【0034】
ブレードが切削した土砂は杭本体の回転を伴う貫入に伴い、ブレードの上面に沿って杭本体に対して相対的に上方へ移動しようとする。ブレード上に留まる土砂は下方から押し上げられる土砂に押されることによりブレードの上端部から落下しようとするが、土砂の粘性が高ければ、落下するまでの間にブレード上で圧密され、塊りになる可能性がある。
【0035】
例えば特許文献1〜5のようにブレードの水平に対する傾斜が緩い場合には、ブレード上の土砂の落下が促されないことから、土砂が圧密されたときに、ブレードの先端部から上端部までの区間において土砂がブレード上に留まろうとし、塊りになって落下しようとすることがある。圧密されないとしても、ブレード上の土砂は下方からの土砂に押されて落下するだけであるから、掘削孔内における土砂は単に緩められるに過ぎない。土砂が粘性土であれば、粘性によって土砂がブレードに付着した状態を維持し易いため、ブレード上に堆積し易く、土砂をブレードから自然に落下させることが難しい。
【0036】
ブレード上での掘削土砂の圧密の発生は、図6に示すようにブレードをその長さ方向の中間部で上に凸に屈曲、もしくは湾曲させることで回避することが可能である。この場合、ブレードの中間部の位置を挟んで杭本体の材軸に対する傾斜角度が相違するため、角度が変化した上側寄りの部分においてブレード上に載った土砂を杭本体の回転に伴ってブレード上から自然に落下させることが可能になる。ブレードの中間部が上に凸に屈曲等することで、ブレード上に載った土砂が粘性土の場合を含め、ブレードに付着した状態から杭本体の回転中に分離し易くなるため、付着した状態を維持しにくく、結果的にブレード上から落下し易くなることによる。
【0037】
ブレード上から落下するとき、土砂は遠心力を受けて杭本体の孔壁寄りの位置から落下するが、図6の場合にはブレードから落下した後にその位置を通過するブレードの表面(孔壁側の面)によって孔壁側へ押し付けられ易くなるため、孔壁が固められ、孔壁の安定性が確保され易い。
【0038】
また図6に示すようにブレードの、杭本体に対して孔壁側に位置する部分を杭本体の周方向に見たとき、孔壁側が凸となるように幅方向に屈曲、もしくは湾曲させれば、ブレード上の土砂をブレードの屈曲等した部分から孔壁側へ落下させ易くなるため、ブレード上への土砂の堆積を回避し易くなる。この場合、幅方向に屈曲等し、孔壁に面する部分がその形状によりブレードから落下した土砂を杭本体の回転に伴い、孔壁に押し付ける効果を発揮するため、ブレードは孔壁を安定させ、その崩落を防止することに寄与する。ブレード上から落下した土砂を孔壁に押し付ける機能は孔壁側が凸となった部分(孔壁側の表面)が果たす。
【0039】
特許文献1〜5のようにブレードが平坦な板である場合、ブレード上に載った土砂の落下が促されないため、前記のように切削土砂が順次送り込まれることで、ブレード上で次第に圧密され、その土砂が杭本体の回転時に抵抗になる可能性がある。これに対し、ブレードに上記の形状を与えることで、切削土砂の落下が促されるため、ブレード上での圧密の可能性が低下し、切削土砂の圧密による抵抗の発生が回避、もしくは緩和される。
【0040】
またブレードの上面に沿って杭本体の周面にまで上昇し、排出翼の上端から落下する土砂は杭本体の回転時に孔壁に密着する排出翼の孔壁側の表面によって孔壁に押し付けられるため、孔壁の一部として削孔の半径方向に圧密されることになる。この土砂の孔壁への圧密効果は上記のように排出翼の上端寄りの部分を上に凸に屈曲等させると共に、幅方向にも屈曲等させることで向上するが、前記のように排出翼をプレート(平坦な板)状ではなく、板厚に対する幅の比率が小さいフラットバー形状にすることによっても得られる。排出翼がフラットバー形状であれば、プレートである場合との対比では排出翼の孔壁に面する(対向する)表面の領域が拡大するため、土砂の押し付け効果が高まることによる。
【0041】
請求項1では杭本体の周方向に隣接する2枚の閉塞板間に段差が付くことに伴い、杭本体の回転時にこの段差に空隙が形成され、この空隙から土砂が進入する可能性がある。この問題に対しては、請求項3に記載のように掘削刃が杭本体の周方向に隣接する閉塞板の境界に位置し、隣接する閉塞板間の空隙を閉塞することで、または掘削刃とは別の板が空隙を塞ぐことによって回避される。
【0042】
掘削刃が掘削した土砂の排出翼上への排出効果は請求項4に記載のように閉塞板の中央部、もしくはその付近に、杭本体の内部を通じて供給される気体、もしくは液体を吐出する吐出口が形成されていることで、向上する。この場合、吐出口から空気や水等の気体や液体を孔壁に向けて吐出、もしくは噴出することができ、この気体や液体が杭本体の降下時に図9に示すように削孔内で循環することにより土砂に鉛直方向上向きの流れを発生させるため、土砂を上方へ押し上げ、隣接する排出翼間に誘導することが可能になる。図9中、先端閉塞杭の先端部分の矢印は掘削刃が掘削した土砂の動きを示す。
【0043】
吐出口から空気等の気体を吐出させることは、杭本体(先端閉塞杭)の掘進が進み、例えば掘削土砂が掘削刃から排出翼上へ排出されにくく、土砂が孔底に溜まり易くなったような場合、すなわち土砂が杭本体先端位置を閉塞状態にするような場合に、杭本体先端位置における土砂を上方へ排出し、杭本体の貫入性を確保する目的で行われる。
【0044】
請求項4では杭本体の内部を通じ、必要により固化剤液を供給することもできるため、杭本体を定着させるべき深度において吐出口からセメントミルク等の固化剤液(根固め液)を吐出し、孔底に球根を形成することで、杭本体の定着状態での安定性を確保することが可能である。この場合、固化剤液の硬化によって杭本体の掘削刃と排出翼が固化剤中に定着されるため、杭本体の定着状態での引き抜きと転倒に対する安定性が向上する。
【0045】
本発明では掘削土砂を孔壁に圧密させる効果により地上への掘削土砂の排出量が少ない上、削孔内での杭本体(先端閉塞杭)の安定性が確保されていることから、セメントミルク等の固化剤液を吐出する場合にも、少なくとも杭本体の先端位置に吐出し、充填させれば十分な支持力を得ることができるため、削孔内の全長に亘って固化剤液を注入する必要がない。従って地上に固化剤液を横溢させずに済むため、地上に産業廃棄物が発生する事態は回避される。
【0046】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の先端閉塞杭は杭本体の先端に、杭の先端側の一部を構成する掘削ヘッドが装着されることによっても構成される。この掘削ヘッドは請求項5に記載のように杭本体に外接する外接管と、この外接管の先端を閉塞する複数枚の閉塞板とを有し、この閉塞板から外接管にかけて複数本の掘削刃が突設されることにより製作される。閉塞板と掘削刃は請求項1〜4のいずれかにおける閉塞板と掘削刃と同一の機能を有する。請求項2に記載の先端閉塞杭を構成する場合には、各掘削刃から外接管の外周面にかけて連続的に杭本体の軸に対して傾斜した排出翼が突設される
【0047】
請求項5に記載の掘削ヘッドは杭本体に外接する外接管を有することから、杭本体が中空杭であるか、中実杭であるかを問わずに杭本体に装着され、鋼管杭の他、コンクリート杭にも適用される。掘削ヘッドは請求項1〜請求項4のいずれかの要件を備えるため、それぞれの要件に応じた利点を引き継ぐ。
【発明の効果】
【0048】
杭本体に複数枚の閉塞板を固定し、この複数枚の閉塞板に傾斜を付けることで、掘削刃と排出翼の前方側を向いた側面の、閉塞板からの高さを稼ぐことができるため、閉塞板からの高さが等しい場合との対比では、排出翼による土砂を掻き集める効果が大きくなり、掘削土砂を排出翼の上方へ押し上げ、孔壁に押し付ける効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0050】
図1は杭本体11の先端にこの先端を閉塞する閉塞板2が固定され、閉塞板2の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃3が突設された先端閉塞杭1の先端部分の構成例を示す。
【0051】
杭本体11には主に中空の既製杭として鋼管が使用される。但し、閉塞板2は杭本体11の先端に固定され、この閉塞板2に掘削刃3が突設されることと、排出翼4が掘削刃3に連続して溶接等により接合されることが可能であるため、杭本体11にはプレストレスコンクリート杭(PHC杭)等、コンクリート杭の使用も可能である。排出翼4を掘削刃3に連続させる場合には、掘削刃3と排出翼4をブレード5として一体的に製作することもある。以下、掘削刃3と排出翼4を合わせてブレード5と呼ぶこともある。
【0052】
図2−(a)に示すように杭本体11の先端の端面は周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、杭本体11の回転時の前方側から後方側へかけて杭本体11の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板2が固定される。杭本体11端面の傾斜は例えば図3−(a)の形状に鋼管を切り欠くことにより、または図3−(a)の形状に加工した鋼材を未加工の鋼管に溶接することにより形成される。
【0053】
図面では杭本体11を周方向に3区間に区分しているが、2区間に区分することもあれば、4区間以上に区分することもある。3区間に区分した場合、杭本体11には3枚の閉塞板2が固定され、2区間に区分した場合には2枚の閉塞板2が固定される。掘削刃3と排出翼4の突設本数は基本的に杭本体11の区分数に従うが、必ずしもその必要はない。
【0054】
図示するように杭本体11を3区間に区分した場合には、連続する3本の掘削刃と排出翼4(ブレード5)が突設されるが、掘削刃3と排出翼4の突設本数は杭本体11の区分数より少ない場合も多い場合もある。杭本体11の回転時の前方側は杭本体11を側面から見た図1における左側であり、後方側は右側になる。図面では杭本体11を軸の回りに時計回りに回転させる場合を示しているが、逆回りに回転する場合には杭本体11の先端の傾斜の向きは逆になる。
【0055】
複数に区分された区間の先端の端面は図3−(a)に示すようにラチェットの歯のような形状になっており、各区間の端面に図2−(a)のように閉塞板2が溶接等により接合され、その区間の開放面を閉塞する。閉塞板3は平坦な板の場合と曲面をなす板の場合があり、いずれの場合も平面形状は扇形をする。
【0056】
杭本体11の先端部分を便宜的に展開して示せば、図2−(b)に示すように鋸刃状になる。図2−(b)は展開した杭本体11を外側から見た様子を示している。図2では杭本体11の端面と掘削刃3及び排出翼4の関係も示している。図2の杭本体11と複数枚の閉塞板3、及び1枚のブレード5(掘削刃3と排出翼4)を図3−(a)〜(c)に分解して示す。複数枚の閉塞板3は図3−(b)に示すように杭本体11の断面上の中心部、もしくはその付近において交わるように、あるいは接するように組み合わせられる。
【0057】
掘削刃3は図1、図2に示すように複数枚の閉塞板2が集合した部分から、閉塞板3の縁、または杭本体11の周面までの間に突設される。排出翼4はこの掘削刃3の端部から杭本体11の先端より上方位置まで突設されるが、掘削刃3と排出翼4が連続する場合には両者の接合部分に必ずしも明確な境界が表れないこともある。図面では掘削刃3が硬質地盤にも対応できるように、掘削刃3に肉厚の大きい板を使用していることに伴い、相対的に排出翼4の肉厚が掘削刃3より小さくなっている。
【0058】
図2−(a)に示すように杭本体11の端面に複数枚の閉塞板3のみが接合された状態のとき、隣接する閉塞板3、3間に段差が生まれ、空隙が発生するが、この空隙は両閉塞板3、3の境界に配置されるブレード5によって、またはブレード5とは別の、もしくはブレード5の一部を構成する閉塞用の板によって塞がれる。ブレード5は杭本体11回転時の後方側に位置する閉塞板3の端面と、鋼管を切り欠いた状態にある杭本体11の側面に接触した状態で、杭本体11に、または杭本体11と閉塞板3に溶接等により接合される。
【0059】
杭本体11の周方向に隣接する区間の境界における段差はそのまま、図2−(b)に示すようにブレード5の前方側の側面における閉塞板3表面からの距離H2と、後方側の側面における閉塞板3表面からの距離H1との差になる。この距離の差(H2−H1)が大きい程、杭本体11の回転を伴う掘進時にブレード5が抱え込む土砂の量が増大する。
【0060】
図2−(b)に示すように先端の端面に閉塞板3とブレード5が接合された杭本体11が矢印の向きに回転するとき、ある閉塞板3の下に存在する土砂は杭本体11に対して回転の後方へ移動し、後方側に位置するブレード5に一旦、塞き止められる。ここで、ブレード5の前方側の側面と閉塞板3表面との間の距離H2が後方側の閉塞板3表面との間の距離H1より大きいことで、ブレード5は多量の土砂を塞き止める能力を有している。ブレード5に塞き止められた土砂は杭本体11の回転に伴い、ブレード5(掘削刃3と排出翼4)に沿って杭本体11に対して上昇し、排出翼4の上端まで移動させられる。
【0061】
排出翼4の上端まで移動した土砂は排出翼4の上端位置から落下するが、その位置を通過するブレード5の孔壁10側の表面が落下した土砂を孔壁10に押し付ける働きをするため、土砂は孔壁10を保護するために利用される。ブレード5の孔壁10側表面が落下した土砂を孔壁10に押し付ける効果は排出翼4自体がフラットバーから成形されることにより、または図6に示すように排出翼4の上側部分が上に凸に屈曲、もしくは湾曲することにより向上する。排出翼4がフラットバー形状の場合と、図6に示すように上側部分が屈曲等した場合のいずれも、排出翼4の孔壁10側の表面が土砂の押し付け部4aとして機能する。
【0062】
閉塞板2と掘削刃3、及び排出翼4を有する杭本体11を先端側から見たとき、複数本の掘削刃3は図5、図7に示すように杭本体11の中心部から放射状に、杭本体11の周面にかけて突設され、その上端に連続するように排出翼4が杭本体11の周面に突設される。複数本の掘削刃3は基本的に図5に示すように杭本体11の中心部から半径方向を向くが、必ずしもその必要はなく、図7に示すように半径方向に対し、杭本体11の回転時の後方側に傾斜することもある。連続する掘削刃3と排出翼4が図7のように杭本体11の回転時の後方側へ傾斜している場合には、掘削刃3と排出翼4を合わせたブレード5の上面に土砂が載り易くなるため、排出翼4上への土砂の誘導効果が高い。
【0063】
また図1、図4に示すように杭本体11の立面上、掘削刃3と排出翼4(ブレード5)が鉛直方向に近い角度で傾斜している場合には、これらが孔壁10から受ける抵抗を小さくすることができるため、杭本体11の掘進時の貫入性が良好になる。
【0064】
掘削刃3と排出翼4は連続するか、僅かな空隙を空けて連続的に形成される。図面では掘削刃3と排出翼4を連続させているが、排出翼4が抱え込む土砂の量を調節するような場合に、両者間に空隙が形成される。
【0065】
掘削刃3は杭本体11の先端が地盤に直接当たる範囲、すなわち削孔の断面を包囲する領域に突設され、図2−(a)、図5に示すように複数枚の閉塞板2が集合した中心部から杭本体11の周面までの区間に突設される。この掘削刃3の上端位置から杭本体11の周面にかけて排出翼4が突設される。
【0066】
掘削刃3は閉塞板2、または閉塞板2と杭本体11に、排出翼4は杭本体11、または掘削刃3と杭本体11にそれぞれ溶接やボルト等により接合される。掘削刃3と排出翼4が連続する場合には、両者間に明確な境界が表れないが、排出翼4は掘削刃3が掘削した土砂を杭本体11の掘進と共に上方へ押し上げた後、排出翼4上に存在する土砂を落下させ、杭本体11の回転と共に孔壁10に押し付ける働きをする。
【0067】
排出翼4がその上方へ掘削土砂を誘導する働きをする上では、図6に示すように排出翼4は掘削刃3寄りの部分から上端にかけ、水平に対する傾斜が緩くなるように湾曲、もしくは屈曲する。また排出翼4がその上方まで誘導した土砂を孔壁10に押し付ける機能を有効に発揮させる上では、排出翼4自体が幅方向に湾曲、もしくは屈曲することが適切である。排出翼4を幅方向に湾曲等させない場合には、排出翼4には板厚に対する幅の比率が比較的小さい鋼材の使用が適する。
【0068】
図4、図5は先端閉塞杭1の全体を示すが、先端閉塞杭1の埋設深度が大きい場合には先端閉塞杭1は溶接等によって継ぎ足されながら地中に挿入される。杭本体11にコンクリート杭が使用される場合には、継手の部分に、溶接用に図10に示すような鋼製のバンドプレート6が装着される。
【0069】
先端閉塞杭1は上端の周囲が直接、または図10、図12に示すように先端閉塞杭1(31)の内部に固定されるロッド7が杭打ち機のチャックに把持された状態で回転力と圧力を与えられることにより地中に挿入される。ロッド7はチャックに把持される他、先端閉塞杭1(31)の先端に気体や液体を供給するために利用される。ロッド7がチャックに把持される場合、ロッド7にはチャックに把持され易い六角等の角軸が使用される。
【0070】
図10は杭本体30が、頂部にバンドプレート6を固定したコンクリート杭であり、先端部に後述の掘削ヘッド20を装着した様子を示している。バンドプレート6は例えばその内周面に突設されたアンカーがコンクリート杭中に埋設されることにより固定される。ロッド7は先端閉塞杭構1(31)を目標の深度に到達させ、定着させた後には、逆向きに回転させられることで、引き抜かれる。
【0071】
図6〜図8は図1に示す先端閉塞杭1の変形例を、図9はその掘進時の様子を示す。ここでは掘削刃3と排出翼4(ブレード5)に板厚に対する幅の比率が小さいフラットバーを使用し、排出翼4上を移動する土砂の落下と孔壁10への圧密効果を高めるために、ブレード5をその長さ方向の中間部で上に凸に屈曲、もしくは湾曲させると共に、孔壁10側が凸となるように幅方向に屈曲、もしくは湾曲させ、押し付け部4aを形成している。
【0072】
また掘削刃3の孔壁10側の表面にV字状の溝を形成し、掘削刃3が多数の歯を有する形状にすることで、硬質地盤に対する掘削刃3の切削効果を高めている。図7は図6に示す先端閉塞杭1の先端側の面を、図8は図6の軸に平行な断面を示す。前記のように図9における先端閉塞杭1先端部分の矢印は土砂の動きを示す。
【0073】
図4、図5に示すように複数枚の閉塞板2が会する(接する)、杭本体11の断面上の中心部には掘削刃3による掘削を補うための筒状の、または板状の先端ビット8が突設される。杭本体11の断面上の中心部付近に気体やセメントミルク等の液体を吐出するための、ロッド7の内部に連続する吐出口9を形成する場合には、閉塞板2、または先端ビット8に吐出口9が形成される。図12は後述のように杭本体30の先端に掘削ヘッド20を装着した先端閉塞杭31を示しているが、先端閉塞杭1の先端に吐出口9を形成する場合も図12と同様になる。
【0074】
吐出口9は図12に示すように杭本体30(杭本体11)の断面上の中心部に固定されるロッド7の内部に形成された供給路7aに連通し、吐出口9にはこの供給管7aを通じて地上から気体や液体が供給される。気体や液体は先端閉塞杭1の降下時に吐出口9から吐出させられることから、吐出口9は原則的に杭本体11の軸に直交する断面上は半径方向に、立面上は例えば鉛直方向下向きに対して30°〜60°程度、傾斜した方向、すなわち削孔の先端位置から孔壁10側へ寄った方向に向けられる。
【0075】
図10、図11は杭本体30の先端に先端閉塞杭構成用の掘削ヘッド20を装着し、前記の先端閉塞杭1と同一の機能を持たせた先端閉塞杭31の構成例を示す。掘削ヘッド20は杭本体30がコンクリート杭等である場合のように、杭本体30の先端に直接、閉塞板2と掘削刃3、及び排出翼4を接合できない場合に、杭本体30に組み合わせられて使用される。
【0076】
掘削ヘッド20は図12に示すようにその断面上の中心部に、杭本体30との接続のためのスリーブ21を持ち、杭本体30に対してはその内部に固定されたロッド7の下端部に接合されることにより固定される。スリーブ21は例えばスリーブ21の内周面に形成された雌ねじがロッド7の下端部に形成された雄ねじに螺合することによりロッド7に接続される。ロッド7は掘削ヘッド20のスリーブ21に螺合により接続されることで、掘削ヘッド20に対して着脱自在になり、先端閉塞杭31の貫入終了後に回収可能になっている。図12−(a)は図10に示す先端閉塞杭31の杭本体30と掘削ヘッド20の関係を示す。(b)は(a)を先端(底面)側から見た様子を示す。
【0077】
図12はスリーブ21が掘削ヘッド20の先端位置からロッド7との接続位置まで連続している場合を示すが、スリーブ21は図13、図14に示すように掘削ヘッド20の先端部分と、雌ねじを有する、ロッド7との接続部分に分割されることもある。
【0078】
掘削ヘッド20は杭本体30に外接し、杭本体11の先端部に相当する外接管22と、この外接管22の先端を閉塞する複数枚の閉塞板23とを有し、この閉塞板23から外接管22にかけて複数本の掘削刃24が突設され、この各掘削刃24から外接管22の外周面にかけて連続的に杭本体30の軸に対して傾斜した排出翼25が突設される。
【0079】
外接管22の先端は前記した先端閉塞杭1の杭本体11の先端部と同様、ラチェットの歯のような形状(鋸刃状)に形成され、その傾斜が付いた複数の区間の端面に複数枚の閉塞板23が固定される。隣接する閉塞板23、23間には傾斜が付くため、先端閉塞杭1と同様に排出翼25による掘削土砂の掻き集め(抱え込み)効果が発揮される。
【0080】
スリーブ21は閉塞板23に溶接等により接合されることにより掘削ヘッド20の中心部に固定される。また図10、図11に示すように複数枚の閉塞板23が会する(接する)、外接管22の断面上の中心部には掘削刃24による掘削を補うための筒状の、または板状の先端ビット27が突設される。
【0081】
スリーブ21の軸方向中間部の位置には外接管22内に挿入される杭本体30の先端が突き当たり、掘削ヘッド20を杭本体30に対して位置決めするための支持板26が固定される。支持板26は外接管22、もしくはスリーブ21に溶接される等によりいずれかに固定される。
【0082】
外接管22の断面上の中心部付近に気体やセメントミルク等の液体を吐出するための吐出口28を形成する場合には、閉塞板23に、または図12〜図14に示すように先端ビット27に吐出口28が形成される。吐出口28は杭本体30の断面上の中心部に固定されるロッド7の内部に形成された供給路7aに連通する。
【0083】
掘削ヘッド20は前記の先端閉塞杭1の先端部分と同様、閉塞板23と掘削刃24、及び排出翼25を備えているため、掘削ヘッド20が装着された先端閉塞杭構31は先端閉塞杭1と同じ機能を有し、先端閉塞杭1と全く同様に取り扱われる。
【0084】
図13〜図16は杭本体30に図10、図11に示す掘削ヘッド20を装着した先端閉塞杭構31の他の構成例を示す。ここでは杭本体30にコンクリート杭を使用しているが、杭本体30には鋼管杭も使用される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】先端閉塞杭の先端部の外観を示した立面図である。
【図2】(a)は杭本体先端の形状とこの先端に固定される閉塞板の関係を示した斜視図、(b)は(a)に示す杭本体を展開した状態の外観を示した展開図である。
【図3】(a)は図2−(a)に示す閉塞板付き杭本体の内、杭本体のみを示した斜視図、(b)は閉塞板のみを示した斜視図、(c)はブレード(掘削刃と排出翼)のみを示した斜視図である。
【図4】先端閉塞杭の製作例を示した立面図である。
【図5】図4に示す先端閉塞杭を先端側から見た斜視図である。
【図6】先端閉塞杭の他の製作例を示した立面図である。
【図7】図6の底面図である。
【図8】図6の縦断面図である。
【図9】図6に示す先端閉塞杭の施工時の様子を示した立面図である。
【図10】杭本体に掘削ヘッドを装着した先端閉塞杭の構成例を示した立面図である。
【図11】図10に示す先端閉塞杭を先端側から見た斜視図である。
【図12】(a)は図10に示す形態の先端閉塞杭の内部を示した立面図、(b)は(a)の底面図である。
【図13】図10に示す先端閉塞杭の変形例を示した立面図である。
【図14】図13の縦断面図である。
【図15】図13の底面図である。
【図16】図13に示す先端閉塞杭の施工時の様子を示した立面図である。
【符号の説明】
【0086】
1……先端閉塞杭、11……杭本体、
2……閉塞板、3……掘削刃、4……排出翼、4a……押し付け部、5……ブレード、
6……バンドプレート、7……ロッド、7a……供給路、
8……先端ビット、9……吐出口、
10……孔壁、
20……掘削ヘッド、21……スリーブ、22……外接管、23……閉塞板、24……掘削刃、25……排出翼、26……支持板、27……先端ビット、28……吐出口、
30……杭本体、31……先端閉塞杭。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭本体の先端にこの先端を閉塞する閉塞板が固定され、この閉塞板の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃が突設された先端閉塞杭において、
前記杭本体の先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、前記杭本体の回転時の前方側から後方側へかけて前記杭本体の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板が固定されていることを特徴とする先端閉塞杭。
【請求項2】
前記各掘削刃から前記杭本体の外周面にかけて連続的に前記杭本体の軸に対して傾斜した排出翼が突設されていることを特徴とする請求項1に記載の先端閉塞杭。
【請求項3】
前記掘削刃は前記杭本体の周方向に隣接する閉塞板の境界に位置し、隣接する閉塞板間の空隙を閉塞していることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の先端閉塞杭。
【請求項4】
前記閉塞板の中央部、もしくはその付近に、前記杭本体の内部を通じて供給される気体、もしくは液体を吐出する吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の先端閉塞杭。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の先端閉塞杭の先端側の一部を構成する掘削ヘッドであり、杭本体に外接する外接管と、この外接管の先端を閉塞する複数枚の閉塞板とを有し、この閉塞板から前記外接管にかけて複数本の掘削刃が突設されていることを特徴とする先端閉塞杭構成用掘削ヘッド。
【請求項1】
杭本体の先端にこの先端を閉塞する閉塞板が固定され、この閉塞板の中央部、もしくはその付近からその周囲にかけて複数本の掘削刃が突設された先端閉塞杭において、
前記杭本体の先端の端面が周方向に複数の区間に区分され、この区分された各区間における端面に、前記杭本体の回転時の前方側から後方側へかけて前記杭本体の先端側から上端側へ向かう傾斜が付けられ、この複数の区間毎に閉塞板が固定されていることを特徴とする先端閉塞杭。
【請求項2】
前記各掘削刃から前記杭本体の外周面にかけて連続的に前記杭本体の軸に対して傾斜した排出翼が突設されていることを特徴とする請求項1に記載の先端閉塞杭。
【請求項3】
前記掘削刃は前記杭本体の周方向に隣接する閉塞板の境界に位置し、隣接する閉塞板間の空隙を閉塞していることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の先端閉塞杭。
【請求項4】
前記閉塞板の中央部、もしくはその付近に、前記杭本体の内部を通じて供給される気体、もしくは液体を吐出する吐出口が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の先端閉塞杭。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の先端閉塞杭の先端側の一部を構成する掘削ヘッドであり、杭本体に外接する外接管と、この外接管の先端を閉塞する複数枚の閉塞板とを有し、この閉塞板から前記外接管にかけて複数本の掘削刃が突設されていることを特徴とする先端閉塞杭構成用掘削ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−267123(P2008−267123A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52063(P2008−52063)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(305039943)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(305039943)
【Fターム(参考)】
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