説明

光カードを用いた情報管理方法

【課題】光カードを用いた安全性の高いプリペイドカード認証システムを提案すること。
【解決手段】一枚毎に異なる光導波路パターン107が作り込まれた光カード101を製造し、各光カード101の発行時に、各光カード101の光導波路パターン107とカード所有者情報とを対応付けした形態のデータベース106を作成し、発行された光カード101の使用時には、当該光カード101の光導波路パターン107を読み取り、読み取った光導波路パターン107に対応付けされている情報をデータベース106から読み出し、所定の照合作業を行う。光カード101の製造工程では、光が透過可能な第1プラスチック素材からなるシートの表面に、レーザー加工によって所定深さの溝を所定間隔で形成し、光屈折率が異なる第2プラスチック素材からなる層を、各溝に充填すると共に前記表面に積層して、各溝の間に光導波路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光カードを用いてプリペイドカードシステム、キャッシュカードシステムを構築するために用いるのに適した光カードを用いた情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリペイドカード、キャッシュカードなどのようなカード情報を用いた情報管理方法においては、磁気ストライプが印刷されている磁気カード、ICチップが内蔵されているICカード、あるいは、これらを組み合わせた複合カードが使用されている。これらの情報管理用のカードは、磁気あるいは電気的に情報を記憶し、あるいは、情報の書き換えが行われる。したがって、記憶情報をなんらかの方法で読み取ることができれば、簡単に、カードを複製することが可能である。
【0003】
例えば、銀行カードの場合には、認証用の暗証番号、パスワードなどを知ることができれば、違法に複製したカードを用いて管理情報を簡単に読み取ることができ、また、それを改ざんすることもできる。すなわち、預金の引き出しが勝手に行われてしまうおそれがある。また、プリペイドカードの場合には、既に使い終わったカードの記憶情報を書き換えて不正使用が行われるおそれがある。
【0004】
カードを違法に複製できないようにするためには、電気、磁気などによって情報を記憶する代わりに、換言すると、ソフト的に情報をカードに記憶する代わりに、機械的(ハード的)に情報をカードに記憶させることが有効である。このためには、光導波路をカードに内蔵させ、そこに情報を記憶させることが有効である。このような光導波路内蔵カードとしては、次の特許文献に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開昭47−6702号公報
【特許文献2】特開昭55−135979号公報
【特許文献3】実開昭60−164065号公報
【特許文献4】特開平3−176812号公報
【特許文献5】特開平8−63563号公報
【特許文献6】特許第2682542号公報
【特許文献7】特許第2737841号公報
【特許文献8】特開平8−155765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献に開示されている光導波路内蔵カード、すなわち、光カードは、いずれも光ファイバケーブルを平面方向に多数本配列して接着接合した構造のものである。また、光ファイバケーブルからなる光カードを製造した後に、すなわち、同一構造の光カードを製造した後に、各光カードの光ファイバケーブルを選択的にパンチングなどの方法により光不透過状態にして、光学的に各光カードに情報を担持させるようにしている。
【0006】
しかしながら、従来構造の光カードは精度良く平面状に光ファイバケーブルを配列できず、また、きわめて高価になってしまう、などの数々の製造上の問題点がある。このために、実用化されていないのが現状である。
【0007】
本件出願人は、この点に鑑みて、PCT/JP03/15496(平成16年7月28日出願)などにおいて、実用化可能な構造の光カードを提案している。
【0008】
本発明の課題は、本件出願人が提案している光カードをプリペイドカード、キャッシュカードなどとして用いて、セキュリティが非常に高い光カードを用いた情報管理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の光カードを用いた情報管理方法は、
一枚毎に異なる光導波路パターンが作り込まれた光カードを製造し、
各光カードをカード使用希望者に発行する際に、各光カードの光導波路パターンとカード使用者情報などの第1情報とを対応付けした形態のデータベースを作成し、
発行された光カードの使用時には、当該光カードの光導波路パターンを読み取り、読み取った光導波路パターンに対応付けされている第1情報を、前記データベースから読み出し、所定の照合作業を行うようになっており、
前記光カードの製造工程では、光が透過可能な第1プラスチック素材からなるシートの表面に、レーザー加工によって所定深さの溝を所定間隔で形成し、光屈折率が異なる第2プラスチック素材からなる層を、各溝に充填すると共に前記表面に積層して、各溝の間に光導波路を形成し、
前記光導波路パターンを、各光導波路の光透過特性の組み合わせのパターンとしたことを特徴としている。
【0010】
本発明では、一枚ずつ異なる構造の光カードが製造され、これを用いて情報が管理される。したがって、同一構造のカードを製造し、電気的、磁気的、あるいは熱的に情報を書き込む場合に比べて、カード自体の製造が困難であり、また、そのための設備投資も膨大となるので、本発明の光カードが違法に複製される可能性は殆どありえない。
【0011】
ここで、本発明は、前記光導波路パターンとして、各光導波路を選択的に光不透過状態に設定することにより規定される光透過不透過のパターンを採用し、前記光カードの製造工程においては、前記溝の形成時に、前記シートにおける光不透過状態に設定される光導波路に対応する溝間の部分に、両側の溝に亘る所定深さの遮光溝をレーザー加工によって1本あるいは複数本形成することを特徴としている。
【0012】
レーザー加工を採用することにより、光導波路パターンが異なる光カードを、実質的に工程数を増加させることなく、したがって、製造コストの増加を招くことなく、製造することができる。
【0013】
また、本発明では、前記光カードに、電気的、磁気的あるいは熱的に書き換え可能な記憶領域を作成し、
前記光カードの発行時には、当該記憶領域に第2情報を書き込むと共に、当該第2情報を前記第1情報と共に前記データベースに登録し、
発行された光カードの使用時には、前記光導波路パターンと共に前記記憶領域に書き込まれている記憶情報を読み取り、
読み取られた光導波路パターンに対応付けされている第1情報および第2情報を前記データベースから読み出して、前記記憶情報と前記第2情報の照合作業を行い、
前記記憶情報と前記第2情報が一致していない場合には、光カードの使用を許可しないことを特徴としている。
【0014】
例えば、光カードをプリペイドカードとして用いると、その記憶情報が電気的あるいは磁気的に改ざんされたとしても、光導波路パターンに基づきデータベースに登録されている第2情報と照合されるので、そのような改ざんによる不正使用を阻止できる。また、記憶領域に書き込まれている情報を書き換えることにより、光カードを繰り返し使用することができる。したがって、実際上のカード一枚当たりの単価を従来の使い捨てのプリペイドカードなどと同程度まで低減可能である。
【0015】
次に、光カードに形成する前記記憶領域は、磁気記憶領域、ICメモリ、および、情報を熱転写可能なリライト記録領域のうち少なくとも一方とすることができる。
【0016】
また、一般的には、前記第1情報は、光カードの使用者を特定するための顧客情報である。
【0017】
さらに、プリペイドカードとして用いる場合、前記第2情報は、プリペイド金額などを表す度数であり、前記光カードの使用時には、使用金額などに応じて度数の減算処理を行い、残りの度数となるように前記記憶領域の前記第2情報の書き換え処理、および前記データベースの書き換え処理を行うようにすればよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光カードを用いた情報管理方法では、使用する光カードとして、あらかじめ各カードに固有の光導波路パターンが作り込まれたものを用いるようにしている。また、レーザー加工によってプラスチック製のシートに溝を切ることにより、光導波路パターンを作り込むようにしている。
【0019】
本発明によれば、同一構造の光カードは一枚しか発行されないので、同一構造のカードを多数枚複製して、電気的あるいは磁気的に情報を書き込むことによりカードを偽造することが実際上不可能である。よって、カード複製による不正行為に対する安全性の高い情報管理方法を実現できる。
【0020】
また、各光カードの光導波路パターンに基づき顧客情報などのデータベースを構築しておくことにより、プリペイド金額情報などを違法に書き換えることによるカードの不正使用を確実に防止できる。
【0021】
さらに、本発明では、光カードには顧客情報などは記憶されないので、カードから個人情報が盗まれるおそれがないので、安全である。
【0022】
これに加えて、プリペイドカードなどとして用いる場合には、繰り返し使用することにより、カード一枚当たりの単価を従来の磁気式のプリペイドカードなどと同程度まで低減できるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を適用したプリペイドカード認証システムを説明する。
【0024】
図1は本例のプリペイドカード認証システムを示す全体構成図である。プリペイドカード認証システム100は、光カード101と、光カード101に対して情報の読み出しおよび書き込み動作を行うカード・リーダ・ライタ102と、カード情報を管理する管理装置103とを有している。管理装置103はプリペイドカードである光カード101の発行および管理を行うカード管理会社104に設置されている。
【0025】
管理装置103は通信回線105を介して、カード使用場所に設置されている複数台のカード・リーダ・ライタ102に接続されている。また、管理装置103は、コンピュータを中心に構成されており、周辺機器として入力装置、表示装置、プリンタ、外部記憶装置などが接続されている。さらに、管理装置103は管理データベース106を備えている。
【0026】
光カード101には、カード固有の情報(カードID)が、光導波路パターン107の形態で予め作り込まれている。すなわち、N本の光導波路(Nは正の整数)が形成されており、各光導波路の光透過特性が予め定められた規則に基づき設定することにより、カードIDが書き込まれている。本例では、光透過特性として、光透過および不透過の2値が採用されている。したがって、書き込み可能な情報の種類は2のN乗個である。このような光導波路パターンがどのような規則に基づき情報を表すのかは管理装置103に保持されている。すなわち、変換規則108が管理装置103に保持されている。また、光カード101の裏面には、磁気ストライプ109が印刷されており、ここには、プリペイド金額あるいは度数109aが書き換え可能な状態で書き込まれる。
【0027】
管理装置103の管理データベース106には、光カード101のカードID110と、当該光カード101の所有者に関する情報(第1情報)111およびプリペイド金額の残金あるいは残り度数(第2情報)112とが、対応付けした形態で登録されている。
【0028】
この構成のプリペイドカード認証システム100に用いる光カード101は、光カード製造元113において一枚毎に異なる光導波路パターン107が作り込まれた状態で製造される。管理会社104は、各光カード101をカード使用希望者に発行する際に、各光カード101の光導波路パターン107に対応するカードID情報110と、カード所有者情報である第1情報111とを対応付けした形態のデータベース106を作成する。また、磁気ストライプ109にプリペイド金額あるいは度数109aを書き込む。書き込まれたプリペイド金額あるいは度数も、第2情報112として、データベース106に登録される。
【0029】
光カード101の所有者114が当該光カード101を使用する際には、カード・リーダ・ライタ102に光カード101を挿入する。カード・リーダ・ライタ102は、挿入された光カード101の光導波路パターン107を読み取る。また、磁気ストライプ109の記憶情報109aを読み取る。すなわち、カード・リーダ・ライタ102は、読み取りヘッドとして、発光素子列および受光素子列からなる光導波路パターンの読み取りヘッド115と、磁気ストライプの記憶情報を読み取るための磁気ヘッド116とを備えている。これらのヘッド構成は公知のものを用いることができるので、それらの詳細な説明は省略する。
【0030】
カード・リーダ・ライタ102で読み取られた情報はカード管理装置103に送信され、当該カード管理装置103のデコーダ117において光導波路パターン107が変換規則108にしたがってデコードされて、光カード101のカードID110に変換される。カード管理装置103の処理部118では、カードID110を用いて、管理データベース106を検索して、カードID110に対応する第1情報(顧客情報)111および第2情報(プリペイド金額あるいは度数)112を読み出す。一致する情報が存在しない場合には不正カードであると判断してその使用を許可しない。一致する情報が存在する場合には、登録されている第2情報112を、光カード101から読み出された記憶情報109aと照合する。一致する場合にはカード使用を許可し、一致しない場合には磁気ストライプ109の記憶情報109aが不正に改ざんされたものと判断して使用を許可しない。
【0031】
使用が許可された光カード101を用いて、例えば電話が使用され、あるいは、チケットが購入された後は、使用金額あるいは使用度数を、光カード101に記憶されていた金額あるいは度数109aから減算し、減算後の残り金額あるいは残り度数を、データベース106に登録すると共に、光カード101の磁気ストライプ109の記憶情報109aを更新して、当該残り金額あるいは度数となるようにする。
【0032】
このような処理が終了した後は、光カード101がカード・リーダ・ライタ102から排出されて、カード所有者114に返却される。残り金額あるいは度数が零になった後は、例えば、カード・リーダ・ライタ102に付設されている入金装置119において入金処理を行うことにより、同一の光カード101を繰り返し使用することができる。
【0033】
(光カードの構造および製造方法)
次に、本例で使用する光カード101の構造および製造方法の一例を説明する。本例の光カード101は、光が透過可能な第1プラスチック素材からなるシートの表面に、レーザー加工によって所定深さの溝を所定間隔で形成し、光屈折率が異なる第2プラスチック素材からなる層を、各溝に充填すると共に前記表面に積層して、各溝の間に光導波路を形成し、光導波路パターンとして、各光導波路を選択的に光不透過状態に設定することにより規定される光透過不透過のパターンを採用し、光カードの製造工程においては、溝の形成時に、シートにおける光不透過状態に設定される光導波路に対応する溝間の部分に、両側の溝に亘る所定深さの遮光溝をレーザー加工によって1本あるいは複数本形成してある。
【0034】
図2(a)および(b)は、本例の光カードを示す斜視図および内部構造を示す説明図であり、図3は光カードの本体シートを示す平面図である。
【0035】
光カード101は長方形の薄い二層構造の光シート体からなり、光シート体は、一定厚さの本体シート2と、本体シート2の表面2aに、一定厚さの接着剤層3(表面保護層)を介して積層接着された一定厚さの表面保護シート4とを備えている。本体シート2は、一定厚さのコア層2Aと、コア層2Aの表面側に一体形成されている(コア層の屈折率よりも低い屈折率を備えた)低屈折率の表面層2Bと、コア層2Aの裏面側に一体形成されている低屈折率の裏面層2Cとからなるプラスチック製のシートである。
【0036】
本体シート2の表面2aには、一定の間隔でシート短辺方向に延びる多数本の第1のV溝5が形成されている。各第1のV溝5の両端5a、5bはそれぞれ本体シート2の長辺側のシート端面2c、2dに露出している。各第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート2の厚さの約70〜80%の範囲内の値とされている。したがって、本体シート2の表面層2Bは各第1のV溝5によって完全に分断されているが、裏面層2Cの一部は、第1のV溝5によって分断されずに連続状態のまま残っている。
【0037】
第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート2の曲げ強度などを所定以上に保持でき、また、連続した部分を介しての光の漏れ量が実用上、支障を来たすことのない範囲とする必要がある。典型的には、本体シート厚さの70〜80%の範囲内とすればよいが、本体シートの素材の特性(光学特性や機械的特性など)に応じて、65%程度あるいは90%程度でも良い場合もある。
【0038】
各第1のV溝5の間に形成された本体シート2の区画部分6(1)、6(2)、6(3)・・・・6(n)(n:正の整数)のうち、例えば、区画部分6(1)、6(3)・・・には、隣接する第1のV溝5の間に架け渡されるように、これらの第1のV溝5に直交する方向に第2のV溝(遮光溝)7が形成されている。
【0039】
各区画部分6(n)は、その表面側が、本体シート2の表面層2Bと、この表面に積層されていると共に溝5に充填されている接着剤層3によって覆われている。また、それらの裏面側は、分断されずに連続した状態で残っている本体シート2の裏面層2Cの部分によって覆われている。換言すると、表面層2Bおよび接着剤層3は区画部分6(n)の表面側を覆う表面側クラッド層として機能し、連続状態で残っている裏面層2Cの部分は裏面側クラッド層として機能する。
【0040】
よって、遮光用の第2のV溝7が形成されていない区画部分6(2)、6(4)・・・は光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光を他方のシート端面2dに導く。これに対して、遮光用の第2のV溝7が形成されている区画部分6(1)、6(3)・・・は非光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光は、遮光用の第2のV溝7によって通過が遮られ、他方のシート端面2dまで導かれることがない。
【0041】
したがって、光導波路および非光導波路を所定の配列パターンに従って形成しておき、検出光をシート端面2cから各区画部分6(1)〜6(n)に入射し、他方のシート端面2dの側に設置した光検出器によって各区画部分6(1)〜6(n)からの射出光の有無を検出すれば、光カード101に形成されている光導波路パターン107を読み取ることができる。
【0042】
本例では、本体シート2はPETシートであり、その表面部分および裏面部分には熱処理が施されて、中心部分とは光学特性が異なっている。例えば、東洋紡株式会社製造のものを用いることができる。接着剤層3としては、クラッド層として機能するようにPETシートの中心部分とは屈折率が異なり、また、使用光を吸収可能な特性を備えた紫外線硬化型レジンを用いている。さらに、第1のV溝5は1mmピッチで形成されており、両側の傾斜面のなす角度が約60度であり、その深さは先に述べたように本体シート2の厚さの70〜80%とされている。第1のV溝5が浅すぎると、その下側の連続している部分を介して、隣接する区画部分6(n)の間で光の漏洩が発生するので好ましくない。第1のV溝5が深すぎると、本体シート2の曲げ強度が低下してしまうので好ましくない。
【0043】
第1のV溝5に直交している第2のV溝7も同一寸法であり、非光導波路として機能する各区画部分6(1)、6(3)・・・において、シート端面2cの側に2mmピッチで5本形成され、他方のシート端面2dの側に同じく2mmピッチで5本形成されている。このように各区画部分6(1)、6(3)・・・における両端側に複数本の第2のV溝7を形成しておくと、入射光を完全に遮断可能な非光導波路を形成できる。すなわち、シート端面2cから入射した光は最初の5本の第2のV溝7で拡散して殆ど減衰し、次の5本の第2のV溝7によって完全に遮断される。
【0044】
このように、本例の光カード101では、高価な光ファイバを用いることなく、光導波路および非光導波路を形成できるので、廉価に製造できる。また、光ファイバを平面方向に等ピッチで接着固定した構成のメモリカードに比べて、簡単かつ精度良く光導波路および非光導波路を形成できる。
【0045】
特に、本例では、表裏両面に低屈折率の層が一体形成された本体シート2を用いると共に、第1のV溝5の深さを本体シート2の厚さの70〜80%程度としてある。したがって、本体シート2の裏面層2Cをクラッド層としてそのまま利用できるので、本体シート2の裏面側にクラッド層を別途形成する必要がない。よって、製造工程を簡略化でき、製造コストを低減できるという利点が得られる。
【0046】
ここで、光カード101の製造に当たっては、本体シート素材20(第1プラスチック素材からなるシート)を用意する。次に、本体シート素材20の表面20aに第1のV溝5および遮光用の第2のV溝7をレーザー加工により彫りこむことにより、光導波路および非光導波路として機能する区画部分6(1)〜6(n)を備えた本体シート2を製造する。
【0047】
この後は、本体シート2の表面2aに紫外線硬化型レジン3a(第2プラスチック素材)を塗布する。紫外線硬化型レジン3aは本体シート2の表面2aに形成されているV溝5、7に充填された状態で、当該本体シート2の表面2aに一定の厚さとなるように塗布される。次に、その上に半透明な表面保護シート4を積層する。しかる後に、表面保護シート4の表面側から紫外線を照射する。紫外線が表面保護シート4を透過して紫外線硬化型レジン3aに照射するので、当該紫外線硬化型レジン3aが硬化して、接着剤層3が形成され、この接着剤層3aを介して、本体シート2の表面側に表面保護シート4が積層接着された状態になる。このようにして、光カード101が完成する。
【0048】
このように、本例の光カード101では、表面および裏面に高屈折率の表面層および裏面層が一体形成された構成の本体シート2を用いると共に、接着剤層3を紫外線硬化型レジンを用いて形成している。したがって、製造工程においては、本体シート2の表面2aの側から、V溝5、7の形成と、紫外線硬化型レジンの塗布および紫外線照射による硬化作業を行うことができる。よって、少ない工程で光カード101を製造することができ、また、製造コストも低減できる。さらには、レーザー加工により溝を形成しているので、任意の部位に非光導波路を形成することが簡単かつ、工程を増やすことなくできる。
【0049】
また、本例では本体シート2として、表面および裏面に高屈折率の部分を備えたものを用いている。この代わりに、裏面側にのみ高屈折率の部分が形成されたPETシートなどのプラスチックシートを用いることも可能である。
【0050】
(光カードの別の実施形態)
次に、上記構成の光カード101は、第1の溝5が本体シート2の厚さよりも浅く、その本体シート2の裏面側の部分が連続したまま残っている。この部分を通って不要な光が隣接する区画部分6(n)に漏れることを確実に防止するためには、図5に示すように、光カード101の裏面側に不要光遮断の溝を形成することが望ましい。
【0051】
すなわち、図5に示す光カード101Aにおいては、その本体シート2の裏面2bにおいて、表面側の第1の溝5の隣接位置において溝5に平行に延びる第3のV溝8が形成されている。第3のV溝8の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝8の深さが設定されている。すなわち、本体シート2の側方から見た場合に、双方の溝の底部分が重なる状態に形成されている。また、第3のV溝8には接着剤8aが充填されている。接着剤8aは、使用光を吸収可能であり、しかも、本体シートのコア層2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものである。接着剤8aの代わりに、光カード101Aの仕上げ工程において本体シート2の裏面2bに所定の印刷を行うために用いるインクを用いて、第3の溝8を充填してもよい。この場合においても、使用するインクとしては、使用光を吸収可能であると共に、コア層2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものを用いればよい。
【0052】
ここで、図5(b)において実線のV溝8および想像線のV溝8Aで示すように、第1のV溝5の両側に第3のV溝を形成してもよい。なお、第2のV溝7と第3のV溝8は交差して、交差部分においては本体シート2に貫通部分が形成される。この貫通部分は接着剤層3が充填されて封止されることになる。これ以外の構成は図2、3に示す光カード101と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0053】
次に、光カード101において、その裏面側から不要光が光導波路に侵入することを確実に防止するためには、図6に示すように、光カード101の裏面に、第1の溝5に交差する状態に1本、好ましくは複数本の溝を形成することが望ましい。すなわち、図6の光カード101Bでは、その本体シート2の裏面2bにおいて、その長辺側の端面2a、2bの側に、それぞれ3本ずつの第3のV溝9を形成してある。この場合においても、第3のV溝9の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝9の深さを設定する。また、第3の溝9には接着剤9aが充填される。接着剤9aの光学特性は上記の接着剤8aと同様であり、接着剤9aの代わりに裏面仕上げ用のインクを用いても良い。第1のV溝5と第3のV溝9の交差部分では、本体シート2に貫通部分が形成されるが、この貫通部分には接着剤層3あるいは裏面側から充填した接着剤9aが充填されて封鎖される。これらのV溝9を形成しておくことにより、裏面2bからの不要光の侵入を確実に阻止することが可能である。なお、これ以外の光カード101Bの構成は図2、3の光カード101と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0054】
一方、光カード101における本体シート2では、区画部分を非光導波路6(1)、6(3)・・・とするために形成した第2のV溝7の下側部分も繋がっている。この部分を光が通ってしまうことを確実に防止するためには、図7に示すように、本体シート2の裏面2bの側に、第2の溝7の隣接位置に第3の溝10を形成しておくことが望ましい。この場合においても、第3のV溝10の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝10の深さを設定する。また、図7(c)に示すように、各第3のV溝10は、隣接するV溝5の間に形成する。溝10には接着剤10aが充填される。接着剤10の光学特性は上記の接着剤8a、9aと同様であり、接着剤10aの代わりに、裏面仕上げ用のインクを充填してもよい。これらのV溝10を形成しておくことにより、第2のV溝7の下側を光が通過してしまうことを確実に阻止することが可能である。第3のV溝10を、各第2のV溝7の両側に形成してもよい、なお、これ以外の光カード101Cの構成は図2、3の光カード101と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0055】
ここで、上記の図5、図6および図7の構成の2つ、あるいは全てを組み合わせた構成を採用して、不要光の侵入を防止するようにしてもよいことは勿論である。
【0056】
図8は、図6に示す構成の光カード101Bの本体シート2を3層に積層した構成を示してある。この多層本体シート50は、図6の本体シート2を接着層51を挟み積層接着したものである。この多層本体シート50の上面52には表面保護層53を介して、表面保護シート4が積層接着されて、多層光カードが得られる。
【0057】
光カードを多層構成とすることにより、多段の光導波路および非光導波路を備えた、記憶容量が大きくセキュリティの高い光カードを実現できる。
【0058】
図9には上記の光カード101、101A、101Bあるいは101Cを用いた複合メモリカードの構成例を示してある。図に示す複合メモリカード40は、光カード1(101A、101B、101C)の本体シートと表面保護シートの間にCPU付きICチップ41が埋設された構造のものである。この複合メモリカード40は、記憶情報の多い電子マネーカード、保険証、運転免許証などとして用いることができる。
【0059】
また、磁気記録領域、ICチップのほかに、リライト記録領域をカード表面に形成しておくこともできる。リライト記録領域は、有機低分子物質および赤外線吸収材などが分散された層からなる。有機低分子物質には加熱されると結晶状態が変化するものが選ばれているので、加熱により可視情報を当該リライト記録領域に記録できる。換言すると、熱転写することができる。リライト記録領域を備えた光カードを用いる場合には、カード・リーダ・ライタとして、熱転写用の書き込みヘッドと、情報読取用の画像読取ヘッドとを備えたものを用いればよい。
【0060】
なお、上記の例は本発明に用いることのできる光カードの一例を示すものであり、本発明の光シート体および製造方法、並びに、光カードの構成は、上記の例の形状、構造、素材に限定されるものではない。例えば、光シート体としては長方形輪郭ではなく、円形あるいは多角形輪郭であってもよい。また、V溝の代わりに、U溝などの異なる断面形状の溝を用いることもできる。さらに、接着剤層として、紫外線硬化型接着剤以外の接着剤を用いることも可能である。さらにまた、本体シートの素材としてPET以外の樹脂を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用した光カード認証システムを示す全体構成図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明を適用した光カードを示す斜視図および内部構造を示す説明図である。
【図3】図2の本体シートの平面図である。
【図4】V溝を形成するために用いるロータリダイを示す説明図である。
【図5】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図および部分断面図である。
【図6】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図および裏面図である。
【図7】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図、そのb−b線で切断した部分を示す部分断面図、およびc−c線で切断した部分を示す部分断面図である。
【図8】本発明を適用した多層光カードを示す説明図である。
【図9】本発明による複合メモリカードの例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
101、101A、101B、101C 光カード
2 本体シート
2a 本体シートの表面
2b 本体シートの裏面
2c、2d 本体シートの端面
2A コア層
2B 表面層
2C 裏面層
3 接着剤層
4 表面保護シート
5 第1のV溝
7 第2のV溝
8、9、10 第3のV溝
8a、9a、10a 接着剤
5a、5b V溝の端
6(n) 区画部分
100 光カード認証システム
102 カード・リーダ・ライタ
103 カード管理装置
106 管理データベース
107 光導波路パターン
108 変換規則
109 磁気ストライプ
109a 記憶情報
111 第1情報
112 第2情報
115、116 ヘッド
117 デコーダ
118 処理部
119 入金装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚毎に異なる光導波路パターンが作り込まれた光カードを製造し、
各光カードをカード使用希望者に発行する際に、各光カードの光導波路パターンとカード使用者情報などの第1情報とを対応付けした形態のデータベースを作成し、
発行された光カードの使用時には、当該光カードの光導波路パターンを読み取り、読み取った光導波路パターンに対応付けされている第1情報を、前記データベースから読み出し、所定の照合作業を行うようになっており、
前記光カードの製造工程では、光が透過可能な第1プラスチック素材からなるシートの表面に、レーザー加工によって所定深さの溝を所定間隔で形成し、光屈折率が異なる第2プラスチック素材からなる層を、各溝に充填すると共に前記表面に積層して、各溝の間に光導波路を形成し、
前記光導波路パターンを、各光導波路の光透過特性の組み合わせのパターンとしたことを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記光導波路パターンとして、各光導波路を選択的に光不透過状態に設定することにより規定される光透過不透過のパターンを採用し、
前記光カードの製造工程においては、前記溝の形成時に、前記シートにおける光不透過状態に設定される光導波路に対応する溝間の部分に、両側の溝に亘る所定深さの遮光溝をレーザー加工によって1本あるいは複数本形成することを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記光カードに、電気的、磁気的あるいは熱的に書き換え可能な記憶領域を作成し、
前記光カードの発行時には、当該記憶領域に第2情報を書き込むと共に、当該第2情報を前記第1情報と共に前記データベースに登録し、
発行された光カードの使用時には、前記光導波路パターンと共に前記記憶領域に書き込まれている記憶情報を読み取り、
読み取られた光導波路パターンに対応付けされている第1情報および第2情報を前記データベースから読み出して、前記記憶情報と前記第2情報の照合作業を行い、
前記記憶情報と前記第2情報が一致していない場合には、光カードの使用を許可しないことを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記記憶領域は、磁気記憶領域、ICメモリ、および、情報を熱転写可能なリライト記録層のうち少なくとも一方であることを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1情報は、光カードの使用者を特定するための顧客情報であることを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のうちのいずれかの項において、
前記第2情報は、プリペイド金額などを表す度数であり、
前記光カードの使用時には、使用金額などに応じて度数の減算処理を行い、残りの度数となるように前記記憶領域の前記第2情報の書き換え処理、および前記データベースの書き換え処理を行うことを特徴とする光カードを用いた情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−301971(P2006−301971A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122842(P2005−122842)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【Fターム(参考)】