説明

光クロック信号抽出装置及び光クロック信号抽出方法

【課題】入力光信号の偏光方向に依存せず光クロック信号を抽出する。
【解決手段】第1変換手段30と第2変換手段52とを具える光クロック信号抽出装置である。第1変換手段は、第1光変換器12と、波長λ2の連続波光源16とを具え、波長λ1の入力光信号100と、波長λ2の連続波光200とが第1光変換器に入力されて、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号220を生成して出力する。第2変換手段は、第2光変換器18を具えており、第2光変換器に中間生成光信号が入力されて、波長λ3の光クロック信号320を、第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力する。入力光信号は、第1光変換器の端面L1から入力され、波長λ2の連続波光は、第1光変換器の端面R1から第1光変換器に入力される。中間生成光信号は、第1光変換器の端面L1から出力されて、第2光変換器の端面L2に入力される。第2光変換器からは、光クロック信号が端面R2から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長距離大容量光ファイバ通信システムの光中継器等に用いられる光クロック信号抽出装置に関し、特に、電子デバイスの上限動作速度を超える高速光クロック信号を抽出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークは、伝送の長距離化及び大容量化が進められている。伝送の長距離化にともなって、光伝送路における光損失、光増幅器の多段使用によるS/N比の低下、及び光ファイバの群速度分散や光ファイバ中での非線形光学効果による波形歪が発生すること等により、光信号の品質が劣化することが問題となる。周波数波形歪及び時間波形歪の発生は、伝送容量が大きくなるほど、顕著な問題となる。
【0003】
そのため、光伝送路の途中に数十から数百キロメートルの間隔で中継器を設けて、この中継器において光信号の周波数波形及び時間波形を元の形状に戻す、いわゆる光信号の再生が行われている。この中継器の主要な役割の一つがクロック信号抽出である。クロック信号抽出とは、時間波形が歪んだ光パルスからなる光信号、いわゆる品質の劣化した光信号から、そのビットレートに対応する周波数のパルス出力(あるいは正弦波出力)信号を生成することである。
【0004】
クロック信号としては、電気信号として抽出される場合と光信号として抽出される場合があるが、以後、特にいずれの形で抽出されるかを明示する必要があるときに限り、それぞれ電気クロック信号及び光クロック信号と書き分けることもある。また、光信号のビットレートに対応する周波数とは、光信号のビットレートがfである場合にfの周波数を指すものとする。例えば、光信号のビットレートがf Gbit/sである場合にf GHzの周波数を指すものとする。以後、光信号のビットレートに対応する周波数をビットレート周波数ということもある。ここでは、ビットレートをGbit/sで表し、周波数がGHzで表される例を取り上げたが、以後の説明は、これらの単位表記には係わりなく成立する。したがって、以後の説明においては、特に必要な場合を除き、単位表記を省略することもある。
【0005】
クロック信号抽出方法として従来知られた一般的な手法の一つは、品質の劣化した光信号をフォトダイオード等に入力させて光電変換し、そのフォトダイオードからの出力電気信号をバンドパスフィルタによってフィルタリングすることによって、入力光信号のビットレートに対応する周波数成分のみを抽出する方法である。以後、品質が劣化した光信号を含めて、クロック信号を抽出する対象となる光信号を入力光信号というものとする。
【0006】
フォトダイオード及びバンドパスフィルタを用いて電気クロック信号を生成し、この電気クロック信号を用いて半導体レーザ等の光パルスレーザ装置を動作させることによって光パルス列が生成される。この光パルス列は、繰り返し周波数が入力光信号のビットレート周波数に相当する周期で光パルスが時間軸上に並んだ光パルスの列である。以後の説明において、光信号とは、2値デジタル信号であるRZ(Return to Zero)信号として生成された信号を指すものとする。この光信号は、時間軸上に規則正しく一定の周期間隔で並ぶ光パルスの列を、光変調して生成された信号である。一方、光パルス列との表現は、時間軸上で規則正しい一定の周期間隔で並ぶ光パルスの総体を指すものとして用いる。
【0007】
一般に、フォトダイオードの光電変換特性はその偏波依存性が小さいので、入力光信号の偏光面に時間的な揺らぎが存在しても、フォトダイオードを利用することによって安定してクロック信号を抽出することができる。
【0008】
一方、光通信ネットワークの伝送容量を大きくするための技術として、光時分割多重(Optical Time Division Multiplexing)等の多重伝送技術が研究されている。多重信号のビットレートは、その多重されている1チャンネル当たりのビットレートのチャンネル数倍となるので、非常に大きなビットレートとなる。以後、多重信号のビットレートを伝送レート、1チャンネル当たりのビットレートをベースレートということもある。
【0009】
多重信号のビットレートが40 Gbit/sを超えると、電子デバイスではクロック信号を抽出することが困難となる。これは、40 Gbit/s以上のビットレートの光信号に対しても動作するフォトダイオード、及び40 GHz以上の電気信号に対しても動作する電気狭帯域フィルタが開発されていないためである。
【0010】
そのため、高速光信号からクロック信号を抽出するためには、光電変換を行わず直接光クロック信号を抽出する方法が用いられる。以後、光電変換を行わず直接光クロック信号を抽出する方法を、全光クロック信号抽出方法ということもある。
【0011】
全光クロック信号抽出方法として、モード同期レーザを利用する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、セルフパルセーションレーザ等、自励光パルス発生レーザを利用する方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0012】
これらいずれの方法においても、入力光信号のビットレートに近い繰り返し周波数で光パルスを発生するモード同期レーザあるいはセルフパルセーションレーザに入力光信号を入力し、同期レーザあるいはセルフパルセーションレーザからの出力光パルスを、入力光信号のビットレートに同期させることによって、光クロック信号を抽出している。
【0013】
これらの方法の利点は、上述したように、電子デバイスでは実現不可能である高速のクロック信号を、光クロック信号として抽出することができる点にある。例えば、160 Gbit/sの光信号から光クロック信号の抽出に成功した例が報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】T. Ono, T. Shimizu, Y. Yano, and H. Yokoyama, "Optical clock extraction from 10-Gbit/s data pulses by using monolithic mode-locked laser diodes," OFC'95 Technical Digest, ThL4.
【非特許文献2】M. Jinno and T. Matsumoto, "All-optical timing extraction using a 1.5 μm self pulsating multielectrode DFB LD," Electron. Lett., vol. 24, No. 23 pp. 1426-1427, 1988.
【非特許文献3】S. Arahira, S. Sasaki, K. Tachibana, Y. Ogawa, "All-optical 160-Gb/s clock extraction with a mode-locked laser diode module," IEEE Photon. Technol. Lett. vol. 16, No. 6, pp. 1558-1560, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来の全光クロック信号抽出方法には、次に述べる問題点がある。すなわち、光クロック信号抽出のための動作が、入力光信号の偏光方向に依存する点である。モード同期レーザやセルフパルセーションレーザによって、光クロック信号を抽出するには、入力光信号の偏光方向と、これらのレーザの発振光の偏光方向とを一致させる必要がある。
【0015】
このため、入力光信号の偏光方向が何らかの原因で変動すると、光クロック信号を安定して抽出することができなくなる。一般に、入力光信号は、偏光方向の保存が保障されないシングルモード光ファイバを伝播して光中継器等に入力される。したがって、光中継器等に入力される入力光信号の偏光方向は、時間的に変化することを前提として、偏光方向が変動しても安定して光クロック信号を抽出することが可能である方法を検討する必要がある。
【0016】
そこで、この発明は、入力光信号の偏光方向に依存することなく光クロック信号が抽出できる光クロック信号抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、第1発明の光クロック信号抽出装置は、第1変換手段と第2変換手段とを具えている。第1変換手段は、第1光変換器と、波長λ2の連続波光源とを具えている。第1光変換器には、ビットレートf(例えば、f Gbit/s)であって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光とが入力される。そして、第1光変換器は、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する。第2変換手段は、第2光変換器を具えており、この第2光変換器に中間生成光信号を入力させて、繰り返し周波数f(例えば、f GHz)であって波長λ3の光クロック信号を、第2光変換器の受動モード同期動作によって生成してこの第2変換手段から出力する。
【0018】
第2発明の光クロック信号抽出装置は、上述の第1発明の光クロック信号抽出装置と第1変換手段が異なる。第2発明の光クロック信号抽出装置における、第1変換手段は、第1光変換器と、波長λ2の連続波光源とに加えて、更に波長λ4の連続波光源を具える。第1光変換器は、ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光と、波長λ4の連続波光とが入力されて、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成してこの第1光変換器から出力する。
【0019】
第1及び第2発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層がバルク結晶によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存である半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier: SOA)とするのが好適である。
【0020】
また、第1及び第2発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存であるSOAとするのが好適である。
【0021】
また、第1発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存である可飽和吸収体とするのが好適である。
【0022】
また、第1発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存である電界吸収型光変調器(EAM: Electro-absorption Modulator)とするのが好適である。
【0023】
第1及び第2発明の光クロック信号抽出装置において、第2光変換器を利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザとするのが好適である。
【0024】
上述の第1発明の光クロック信号抽出装置によれば、以下に説明する、第1変換ステップと第2変換ステップとを実現できる。第1変換ステップは、ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光とを第1光変換器に入力し、入力光信号と波長λ2の連続波光とによって発現する相互利得変調効果によって、しかも入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力するステップである。第2変換ステップは、この中間生成光信号を第2光変換器に入力し、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力するステップである。
【0025】
また、上述の第2発明の光クロック信号抽出装置によれば、以下に説明する第1変換ステップを実現できる。第1変換ステップは、ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光と、波長λ4の連続波光とを第1光変換器に入力し、波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光と、波長λ4の連続波光とによって発現する相互利得変調効果によって、しかも入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する第1変換ステップである。第2変換ステップは、第1発明の光クロック信号抽出装置によって実現される第2変換ステップと同一である。
【0026】
また、第2光変換器として利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザを用いれば、受動モード同期半導体レーザの発振縦モードのいずれか1つを、中間生成光信号の波長であるλ2に近い値に設定して第2変換ステップを実行することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光とが第1光変換器に入力されると、相互利得変調(XGM: Cross Gain Modulation)効果によって、繰り返し周波数fであって波長λ2の中間生成光信号が生成される(第1変換ステップ)。詳細は後述するが、XGM効果とは、入力光信号を構成する光パルスが第1光変換器に入力されると、この光パルスによって第1光変換器の利得が減少するために、第1光変換器の利得が、入力光信号を構成する光パルスの時間軸上における配置関係を反映して、変調される現象である。この現象は、光パルスが存在することで第1光変換器の利得が減少し、及び光パルスが存在しなければその利得が回復する、ことによって生じる。
【0028】
すなわち、波長λ1の入力光信号である光パルス信号と、波長λ2の連続波光とが第1光変換器内で共存するように、第1光変換器に入力されると、入力光信号である光パルス信号によって第1光変換器の利得が変調される。このように第1光変換器の利得が変調されることによって、波長λ2の連続波光の強度が変調される。したがって、入力光信号と、波長λ2の連続波光が変調された結果として生成される波長λ2の中間生成光信号とは、論理反転している。すなわち、入力光信号を構成する光パルスが存在する時間帯には、中間生成光信号の光パルスは不存在であり、逆に入力光信号を構成する光パルスが不存在の時間帯には中間生成光信号の光パルスは存在する。
【0029】
第1光変換器は、入力光信号の偏光方向に無依存で相互利得変調効果によって、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力するので、入力光信号が伝送路の状態等の時間変動によって伝播中にその偏光方向が変動したとしても、中間生成光信号は安定して生成される。
【0030】
第2光変換器に中間生成光信号が入力されると、受動モード同期動作によって、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号が生成される(第2変換ステップ)。第1光変換器と第2光変換器とは同一の筺体内に収めることが可能であるので、第1光変換器から出力される中間生成光信号の偏光方向を保存したまま、第2光変換器に入力させることは容易に実現できる。例えば、第1光変換器と第2光変換器とを偏波面保存光ファイバ等の偏光方向を一定に保ちつつ伝播させる光部品を利用することで実現可能である。
【0031】
したがって、第1発明の光クロック信号抽出装置によれば、入力光信号の偏光方向に依存することなく中間生成光信号が生成され、この中間生成光信号はその偏光方向を一定に保って第2光変換器に入力されるので、第2光変換器では、安定して受動モード同期動作を実現可能であり、第2光変換器によって、光クロック信号が入力光信号の偏光方向に依存することなく抽出される。
【0032】
第1及び第2発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層がバルク結晶によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施されたSOAとすることによって、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存とすることができる。これは、SOAを構成するために利用されるInPやGaAs等やこれらの混晶であるIII-V族半導体バルク結晶においては、その利得が、偏光方向に依存しないことが知られており、SOAに具える光導波路を利得領域に採用することによって、その光導波路における利得が偏光方向に依存しないようにすることが可能であることに由来する。
【0033】
また、第1及び第2発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施されたSOAとすることによって、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存とすることができる。これは、伸張歪が導入された量子井戸構造によって形成される光導波路を利得領域に採用することによって、その光導波路における利得が、偏光方向に依存しないようにすることが可能であることに由来する。
【0034】
第2発明の光クロック信号抽出装置によれば、第1変換ステップにおいて波長λ2の連続波光に加えて更に波長λ4の連続波光も第1光変換器に入力される。第1光変換器としてSOAを利用し、このSOAに波長λ2の連続波光に加えて更に波長λ4の連続波光を供給することによって、詳細は後述するが、次の効果が得られる。SOAの活性領域において、波長λ4の連続波光が供給されることによって、誘導放出が増強される。このことによって、キャリア密度の回復速度を増大させることが可能となる。その結果、よりビットレートの高い入力光信号から中間生成光信号を生成すること(第1変換ステップ)が可能となり、その結果、よりビットレートの高い入力光信号から光クロック信号を抽出することが可能となる。
【0035】
第1発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存である可飽和吸収体とすれば、相互吸収変調(XAM: cross absorption modulation)効果によって中間生成光信号を生成することができる。
【0036】
また、第1発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器を、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、かつ入射端及び出射端には無反射コーティングが施された、しかも増幅率が入力光信号の偏光方向に無依存であるEAMとすることによって、上述した可飽和吸収体と同様に、XAM効果によって中間生成光信号を生成することができる。
【0037】
XAM効果は、負の光学利得(すなわち、光吸収)を利用して入力光信号によって、連続波光が変調される効果である。XAM効果と、上述したXGM効果とを比較するとその物理的なメカニズムは異なるが、入力光信号によって連続波光が変調されるという点では共通する。すなわち、連続波光を入力光信号によって変調する手段としては、XAM効果及びXGM効果のいずれを利用することも可能である。また、詳細は後述するが、XAM効果を利用して、第1変換ステップを実現するほうが、より高速動作が可能となる。
【0038】
第2光変換器として利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザを用い、受動モード同期半導体レーザの発振縦モードのいずれか1つを、中間生成光信号の波長であるλ2に近い値に設定して第2変換ステップを実行することによって、時間ジッタが低減されるとともに、より高感度で光クロック信号の抽出が可能となる。すなわち、入力光信号の強度が弱い場合や、SOAの利得が小さい場合、波長λ2の連続波光の強度が弱い場合等の、中間生成光信号が弱い場合であっても、効率よく光クロック信号を抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、その重複する説明を省略することもある。以下に示す図においては、光ファイバ等の光経路を太線で示し、電気信号が伝送される経路を細線で示してある。またこれら太線および細線に付された番号は、経路そのものを指示するほか、混乱の生じない範囲で、それぞれの経路を伝播する光パルス信号あるいは電気信号を意味する場合もある。
【0040】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、第1発明の光クロック信号抽出装置を実現するための第1の実施の形態について説明する。第1発明の光クロック信号抽出装置は、第1変換手段30と第2変換手段52とを具えている。第1変換手段30は、第1光変換器12と、波長λ2の連続波光源16とを具えている。第1光変換器12には、ビットレートfであって波長λ1の入力光信号100と、波長λ2の連続波光200とが入力される。第1光変換器12には、入力光信号100と波長λ2の連続波光200とによって発現する相互利得変調効果によって、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号220を生成する。
【0041】
第2変換手段52は、第2光変換器18を具えている。この第2光変換器18には、中間生成光信号112が入力されて、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号320が、第2光変換器18の受動モード同期動作によって生成されて、この第2光変換器18から出力される。
【0042】
入力光信号100は、光経路20を伝播して光サーキュレータ10のポートaから入力されてポートbから出力され、入力光信号110として光経路22を伝播して第1変換手段30の第1光変換器12の端面L1から入力される。第1光変換器12と波長λ2の連続波光源16との間には、連続波光源16への戻り光を遮断するために光アイソレータ14が設置されている。連続波光源16から出力される波長λ2の連続波光200は、光経路26を伝播して光アイソレータ14を介して連続波光210として、光経路24を伝播して第1光変換器12の端面R1から第1光変換器12に入力される。
【0043】
ここでは、第1光変換器12には、活性層がバルク結晶あるいは伸張歪量子井戸構造によって形成されたSOAを利用する。このSOAは、光が入出射する両端面(端面R1及び端面L1)をそれぞれSiNxOy(ただし、x及びyは、組成比を表すパラメータである。)材料で無反射コーディング処理が施されている。
【0044】
第1光変換器12において生成される波長λ2の中間生成光信号220は、第1光変換器12の端面L1から出力されて、光経路22を伝播して光サーキュレータ10のポートbに入力されて、ポートcから中間生成光信号112として出力される。ポートcから出力された中間生成光信号112は、光経路28を伝播して第2変換手段52に入力される。
【0045】
第2変換手段52は、第2光変換器18と、光バンドパスフィルタ36と、第2光変換器18からの戻り光を遮断するための光アイソレータ32と、光バンドパスフィルタ36からの戻り光を遮断するための光アイソレータ34とを具える。光アイソレータ32及び34は、必ずしも具える必要はないが、第2光変換器18あるいは光バンドパスフィルタ36からの戻り光を遮断することによって、第1光変換器12及び第2光変換器18の動作の安定性が保証される。
【0046】
中間生成光信号112は、光経路28を伝播して光アイソレータ32を通過して中間生成光信号114として光経路40を伝播して、端面L2から第2光変換器18に入力される。ここでは、第2光変換器18として、利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザを利用する。
【0047】
第2光変換器18からは、波長λ3の光クロック信号300が端面R2から出力される。光クロック信号300は、光経路42を伝播して光アイソレータ34を介して、光クロック信号310として光経路44を伝播して光バンドパスフィルタ36に入力される。光バンドパスフィルタ36は、その透過波長がλ3であり、特に、波長λ1及びλ2の光成分を遮断することを目的として設置されている。光バンドパスフィルタ36からは、波長λ3の光クロック信号320が出力されて、光経路37に入力されて外部に出力される。
【0048】
上述の光経路20、22、24、26、28、37、40、42及び44は、光ファイバやレンズ等の結合光学系によって適宜構成できる。特に、連続波光源16の出力端から光経路26、24、22及び28に至る一連の光経路の途中に偏波面コントローラを配置するか、または光経路26、24、22及び28に至る一連の光経路を偏波面保存光ファイバで構成する。この理由は、第2光変換器18として受動モード同期半導体レーザを利用している関係で、この受動モード同期半導体レーザの端面L2から入力される中間生成光信号114の偏光方向と第2光変換器18を構成する受動モード同期半導体レーザの発振光の偏光方向とを一致させるためである。
【0049】
第1変換手段30と第2変換手段52とは、一つの筺体に一体化して作り込むことが可能であって、そのため、上述の光経路20、22、24、26、28、37、40、42及び44の全長は、それぞれ長くとも10 cm程度である。したがって、偏波面コントローラあるいは、偏波面保存光ファイバを利用することで、受動モード同期半導体レーザの端面L2から入力される中間生成光信号114の偏光方向と、受動モード同期半導体レーザの発振光の偏光方向とを容易に一致させることができる。
【0050】
<第2の実施の形態>
図2を参照して、第1発明の光クロック信号抽出装置を実現するための上述の第1の実施の形態とは別形態を、第2の実施の形態として説明する。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なるのは、第2変換手段の構成である。第1変換手段の構成は、第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0051】
第2の実施の形態における第2変換手段54は、光サーキュレータ38、第2光変換器18及び光バンドパスフィルタ36を具えている。第2光変換器18及び光バンドパスフィルタ36は、第1の実施の形態と同一のものを利用できる。
【0052】
図2において、光サーキュレータ10は、第1の実施の形態で利用されたものと同一の光サーキュレータが利用されるが、ここでは混乱を避けるために便宜上、光サーキュレータ10の3つのポートをa1、b1、c1とし、光サーキュレータ38の3つのポートをa2、b2、c2と区別して記載する。
【0053】
光サーキュレータ10のポートc1から出力された中間生成光信号112は、光サーキュレータ38のポートa2に入力されてポートb2から出力され、光経路23を伝播して第2光変換器18に入力される。第2光変換器18から出力される波長λ3の光クロック信号300は、光経路23を伝播して光サーキュレータ38のポートb2に入力されて、ポートc2から光クロック信号330として出力される。光クロック信号330は、光経路50を伝播して光バンドパスフィルタ36に入力されて、光バンドパスフィルタ36からは、波長λ3の光クロック信号340が出力されて、光経路51に入力されて外部に出力される。
【0054】
第1発明の光クロック信号抽出装置を実現するために、上述の第1の実施の形態を採るか、あるいは第2の実施の形態を採るかは、第1発明の光クロック信号抽出装置が利用される形態、すなわち、設計上の事情によって決定される事項である。
【0055】
<受動モード同期半導体レーザ>
第2光変換器18として利用して好適な受動モード同期半導体レーザの構造及びその動作について図3を参照して説明する。もちろん、第2光変換器18として利用して好適な受動モード同期半導体レーザは、図3に示すものに限定されることはなく、受動導波路領域やブラッグ回折領域等を更に集積化されたタイプ、あるいは利得領域や可飽和吸収領域を更に分割したタイプの受動モード同期半導体レーザ等を利用することも可能である。以後、受動モード同期半導体レーザ(passive mode-locked laser diode:MLLD)を、MLLDと略記することもある。
【0056】
図3は、2電極型受動モード同期半導体レーザの、光導波路方向に対して垂直側面方向から見た概略的断面構成図である。図3に示すMLLDは、反転分布が形成される利得領域80と、光強度を変調する機能を有する可飽和吸収領域82とを含み、利得領域80と可飽和吸収領域82とが、直列に配置された半導体レーザである。利得領域80と可飽和吸収領域82とは、図3に示すように、モノリシックに形成されている。利得領域80には、n側共通電極62と利得領域のp側電極74とを介して定電流源78によって電流注入がなされる。可飽和吸収領域82には、n側共通電極62と可飽和吸収領域のp側電極72とを介して定電圧源76によって逆バイアス電圧が印加される。
【0057】
利得領域80に電流注入がなされ、可飽和吸収領域82に逆バイアス電圧が印加されることによって、受動モード同期動作が生じ、MLLDの共振器周回周波数の自然数倍に近似する周波数の光パルス列が生成される。ここで、MLLDの共振器周回周波数の自然数倍に近似する周波数とは、MLLDの共振器周回周波数の自然数倍の周波数と光パルス列の周波数との差が、MLLDの共振器周回周波数と比較して無視できる程度に小さいことを意味する。
【0058】
入力光信号の波長λ1と連続波光の波長λ2との関係は、後述するように、波長λ1の入力光信号が第1光変換器12に入力されることによって、波長λ2の連続波光が変調を受けることが可能である関係を満たすように設定する必要がある。すなわち、波長λ1と波長λ2の両方が共に第1光変換器12の利得帯域内であることが必要である。一方、連続波光の波長λ2と、MLLDの発振スペクトルとの関係は、λ2がMLLDの複数の縦モードのうちの一つの縦モードに対応する波長と近似的に等しい関係となるように設定する必要がある。ここで、近似的に等しいとは、MLLDの縦モードのうちの一つの縦モードと波長λ2との差が、縦モード間隔と比較して無視できる程度に小さいことを意味する。
【0059】
利得領域80に内在する光導波路66(以後、「利得領域80の光導波路66」ということもある。)及び可飽和吸収領域82に内在する光導波路68(以後、「可飽和吸収領域82の光導波路68」ということもある。)は、共に共通の第1クラッド層64と第2クラッド層70とに挟まれて構成されている。ここでは、第1クラッド層64をn型クラッド層とし、第2クラッド層70をp型クラッド層としてある。光導波路66及び光導波路68を構成する結晶材料は、MLLDに、入力される入力光信号の波長によって決定される。例えば、この入力光信号の波長が1.5 μm帯であれば、InP系半導体バルク結晶材料あるいはInP系半導体結晶材料による量子井戸構造が使われる。
【0060】
ここで、入力光信号の偏光の状態について次のように定義する。すなわち、光導波路66及び光導波路68を導波する光の偏光面(光の電場ベクトルの振動面)の方向が、これらの光導波路の幅方向に平行な方向である場合をTE偏光、厚み方向(図1では上下方向)に平行な方向である場合をTM偏光とする。
【0061】
また、利得領域80の光導波路66は、バルク結晶あるいは伸張歪が導入された量子井戸構造で形成されているものとし、MLLDの発振光の偏光状態は、TE偏光であると想定して以下説明する。以後、発振光がTE偏光であるレーザ発振動作をTEモード動作といい、光導波路66及び光導波路68における発振光の導波モードをTEモードということもある。同様に、発振光がTM偏光であるレーザ発振動作をTMモード動作といい、光導波路66及び光導波路68における発振光の導波モードをTMモードということもある。
【0062】
<光クロック信号抽出動作>
第1発明の光クロック信号抽出装置の動作原理について、(A)第1変換ステップ及び(B)第2変換ステップに分けてそれぞれ説明する。
【0063】
(A)第1変換ステップ
第1変換ステップは、入力光信号と、連続波光とを第1光変換器に入力して、入力光信号と連続波光とによって発現する相互利得変調効果によって、中間生成光信号を入力光信号の偏光方向に無依存で生成して、第1光変換器から出力するステップである。ここでは、第1光変換器としてSOAを利用する場合を例にとって説明する。
【0064】
第1光変換器として利用可能である光素子としては、後述するようにSOA以外にも、可飽和吸収体による光学素子あるいはEAM等を利用することが可能である。
【0065】
SOAに波長λ1の入力光信号が入力されると、この入力光信号によって誘導放出が増強されるために、SOAにおけるキャリア密度が減少する。この結果、SOAの光学利得が減少する。SOAに入力された入力光信号がRZ信号である場合に、入力光信号を構成する光パルスがSOAに入力された瞬間にSOAの光学利得が減少し、光パルスがSOAに入力されない瞬間にはSOAの光学利得はそのまま維持される。すなわちSOAの光学利得及びキャリア密度は、入力光信号のRZ信号パターンと反転したパターンに変調される。
【0066】
このことを具体的に説明すると次のようになる。例えば、波長λ1の入力光信号のRZ信号パターンが(1, 1, 0, 0, 0, 1, 1, 1, 0, ...)である場合を例にとって説明する。ここで、「1」とあるビットには光パルスが存在し、「0」とあるビットには光パルスが存在しない。一方、SOAの光学利得が減少している場合を「0」として表現し、光学利得がそのまま維持されている場合を「1」として表現すると、SOAの光学利得は、上述のRZ信号パターンにおいて「0」とある部分が「1」となり、「1」とある部分が「0」となる。したがって、光学利得のパターンは、上述のRZ信号パターンと同様の様式で表現すると(0, 0, 1, 1, 1, 0, 0, 0, 1, ...)となる。このように、「0」とある部分が「1」となり、「1」とある部分が「0」となる、いわゆる論理反転された変調が行われる。
【0067】
光学利得に対して、上述のような入力光信号のRZ信号パターンと論理反転された変調が行われているSOAに、入力光信号の波長とは異なる波長λ2の連続波光が入力されると、この連続波光に上述の光学利得の変調が転化されて、波長λ2の中間生成光信号が生成されてSOAから出力される。すなわち、SOAの光学利得が減少している場合(「0」で表現される場合)には、波長λ2の連続波光は吸収を受ける。一方、SOAの光学利得がそのまま維持されている場合(「1」で表現される場合)には、波長λ2の連続波光は吸収されずに増幅される。この結果、波長λ1の入力光信号のRZ信号パターンと波長λ2の中間生成光信号とは、論理反転された関係になるが、入力光信号のRZ信号パターンが波長λ2の中間生成光信号としてコピーされたものとして生成される。
【0068】
上述のように、入力光信号のRZ信号パターンが、波長λ2の連続波光と相互作用して、波長λ2の中間生成光信号としてコピーされて生成される現象は、相互利得変調(Cross Gain Modulation: XGM)効果と呼ばれている。以後の説明において、相互利得変調をXGMと略記することもある。XGM効果は、光通信システム等において各種のアプリケーションを実現するために必要とされる波長変換を実現する一手段として、広く利用されている。
【0069】
第1変換ステップは、XGM効果を利用して、波長λ1の入力光信号のRZ信号パターンを連続波光に転化して、波長λ2の中間生成光信号を生成するステップであると言い換えることができる。入力光信号の波長λ1についての条件は、SOAのキャリア密度を変調することが可能である波長帯域に存在していることである。また、連続波光の波長λ2についての条件は、入力光信号によって引き起こされるキャリア密度の変調に伴って、光学利得の変化が発生する波長帯域に存在していることである。より具体的に説明すると、波長λ1と波長λ2とが、共にSOAの有する利得帯域内に存在することが条件となる。
【0070】
波長λ2の中間生成光信号の信号パターンは、入力光信号のRZ信号パターンと論理反転の関係にあるが、第1発明の光クロック信号抽出装置によって最終的に生成されて出力されるのは、時間軸上に規則正しく一定の時間間隔で並ぶ光パルス列である光クロック信号である。したがって、この論理反転の関係にあることについては、光クロック信号を抽出するという目的を果たす上で、なんら問題とはならない。
【0071】
図1及び図2において、中間生成光信号220がSOA 12から出力されて伝播する光経路22は、中間生成光信号220が図中左向きに伝播するのに対して、同時にSOA 12から反射して出力される入力光信号成分も同時に図中左向きに伝播する。このため、中間生成光信号220と、SOA 12から反射して出力される入力光信号成分とが干渉して、反射された入力光信号成分がこの干渉による揺らぎ成分を有して第2光変換器18を構成する受動モード同期半導体レーザに入力されることになる。強度が揺らいだ入力光信号成分が受動モード同期半導体レーザに入力されることは、受動モード同期半導体レーザの動作に不安定を生じる原因となり好ましくない。したがって、中間生成光信号220は、入力光信号成分とは干渉しない構成とするのが好ましい。
【0072】
そのために、図1及び図2に示す第1発明の光クロック信号抽出装置では、SOA 12の対向する端面(それぞれ、端面L1及び端面R1)が無反射膜コーティング処理が施されている。すなわち、図1及び図2に示す第1発明の光クロック信号抽出装置は、入力光信号110と波長λ2の連続波光210は、それぞれSOA 12の対向する無反射膜コーティング処理が施されている端面(それぞれ、端面L1及び端面R1)からSOA 12に入力される構成となっている。したがって、SOAの端面L1からは、中間生成光信号220のみが光経路22に対して左向きに出力され、光経路22に対して左向きに伝播する入力光信号成分が存在しない。したがって、中間生成光信号220は入力光信号110とは干渉せず、上述の強度が揺らいだ入力光信号が受動モード同期半導体レーザに入力されるという問題が生じない。
【0073】
第1変換ステップにおいて重要な点は、XGM効果を入力光信号110の偏光方向に依存することなく発現させることである。入力光信号の偏光方向に依存することなくXGM効果が発現するSOAは、従来知られているように、その活性層(すなわち、光増幅領域)をバルク結晶あるいは伸張歪を導入された多重量子井戸で形成することによって容易に実現される。すなわち、第1光変換器として、活性層がバルク結晶あるいは、伸張歪量子井戸構造によって形成された半導体光増幅器を利用することによって、入力光信号の偏光方向に無依存でXGM効果を発現させることが可能であり、第1変換ステップを実現できる。
【0074】
図4(A)及び(B)を参照して、入力光信号100及び110と中間生成光信号220、112及び120の偏光方向について説明する。また、図4(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、入力光信号100及び110、中間生成光信号220、112及び120及び光クロック信号300の時間波形の説明に供する図である。なお、図4(C)は、主に第2変換ステップの説明において参照する。
【0075】
図4(A)、(B)及び(C)の横軸は時間を任意スケールで示してあり、TE偏光成分及びTM偏光成分の強度を、それぞれ横軸(時間軸)に対して直交する方向にとってその斜視図の形式で示してある。
【0076】
入力光信号100及び110は偏光方向が定まっていないので、図4(A)に示すように、TE偏光成分及びTM偏光成分の両方の成分が含まれている。入力光信号はRZ信号であるので、時間軸上で光パルスが存在する場所(時間スロットと呼ばれることもある。)と光パルスが存在しない時間スロットとがある。図中においては、光パルスの存在する時間スロットに「1」と示してあり、光パルスの存在しない時間スロットに「0」と示してある。すなわち、入力光信号として、仮に、(1, 1, 0, 1, 1, 0, 1)というRZ信号を想定して描いてある。
【0077】
中間生成光信号220、112及び120は、MLLDの発振光の偏光方向と等しい偏光方向となるように、図4(B)に示すように、TE成分のみから成っている。また、中間生成光信号220、112及び120は、入力光信号のRZ信号パターンと論理反転された関係にあるので、(0, 0, 1, 0, 0, 1, 0)というRZ信号である。
【0078】
(B)第2変換ステップ
第2変換ステップは、中間生成光信号を第2光変換器に入力して、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、この第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力するステップである。ここでは、第2光変換器としてMLLDを利用する場合を例にとって説明する。
【0079】
中間生成光信号をMLLD 18に入力する際には、MLLD 18の発振光の偏光方向と合致させることが必要となる。ここで、中間生成光信号とは、具体的には、図1に示す光クロック信号抽出装置においては光アイソレータ32から出力される中間生成光信号114を指し、一方、図2に示す光クロック信号抽出装置においては光サーキュレータ38のポートb2から出力される中間生成光信号120を指す。
【0080】
中間生成光信号の偏光方向とMLLD 18の発振光の偏光方向を合致させるために、上述したように、SOA 12から光サーキュレータ等を介してMLLD 18に至る光経路は、この光経路を伝播する光の偏光方向が維持される光学系で形成される。
【0081】
中間生成光信号がMLLD 18の発振光の偏光方向と合致した状態でMLLD 18に入力されると、受動モード同期動作が発現し、MLLD 18で光クロック信号300が生成されて出力される。
【0082】
MLLD 18で生成される波長λ3の光クロック信号300は、MLLD 18の発振光の偏光方向と一致しているので、図4(C)に示すように、TE成分のみからなる光パルス列となる。また、波長λ2の中間生成光信号の信号パターンと、入力光信号のRZ信号パターンとは互いに論理反転の関係にあり、そのため、両者共に光パルスが存在しない時間スロットが存在している。これに対して、MLLDによって生成される光クロック信号は、図4(C)に示すように、時間軸上に規則正しく一定の時間間隔で並ぶ光パルス列である。
【0083】
中間生成光信号は、SOA 12において入力光信号100の偏光方向に依存することなく生成され、上述のように偏光方向が維持される光学系で形成された光経路を伝播して、MLLD 18に入力される。したがって、MLLD 18に入力される中間生成光信号は、入力光信号100の偏光方向がどのように変化したとしても、常にその偏光方向(ここではTE偏光)が一定に保たれている。このことによって、入力光信号100の偏光方向がどのように変化したとしても、MLLD 18によって安定して光クロック信号300が抽出される。
【0084】
第2変換ステップにおいて重要なことは、MLLD 18の共振器内部で発現する共振器効果による多重変調効果が積極的に利用される点である。この多重変調効果によって次の2点が利点として実現される。まず、第1点は、入力光信号の強度が弱くても光クロック信号の抽出が可能となることである。また、第2点は、第1変換ステップが実行される際に生じるパターン効果を吸収することが可能となることである。以下において、これら2点について詳細に説明する。
【0085】
まず、共振器効果による多重変調効果について説明する。中間生成光信号から光クロック信号が抽出される原理は、可飽和吸収領域の光吸収係数が入力光信号を構成する光パルスによって変調され、MLLDの繰り返し周波数が入力光信号のビットレートに相当する周波数にロックされることにある。中間生成光信号が、MLLDに入力されると、中間生成光信号を構成する光パルスが、MLLDの共振器端面(図1及び図2において端面L2及び端面R2が相当する。)で反射されることによって、MLLDの共振器を周回する。すなわち、中間生成光信号を構成する光パルスは、複数回MLLDの可飽和吸収領域を通過することになり、その通過するたびにこの可飽和吸収領域の光吸収係数を変調する。
【0086】
MLLDに入力される中間生成光信号の波長(ここでは、λ2)が、MLLDの共振条件を満足する波長である場合を想定する。このとき、MLLDの可飽和吸収領域に到達した中間生成光信号を構成する光パルスのうちの一つと、この光パルスが入力される以前にMLLDに入力された中間生成光信号を構成する光パルスのうちの一つであって既にMLLDの共振器を複数回周回してこの可飽和吸収領域に到達した光パルスとは、互いに同位相である。すなわち、両光パルスは可飽和吸収領域において干渉してその強度が強められる。この結果、可飽和吸収領域が実際に感受する光パルスの強度は、単一の光パルスの光強度よりも強いものとなり、可飽和吸収領域の光吸収係数はより一層強く変調されることになる。
【0087】
一方、MLLDに入力される中間生成光信号の波長(ここでは、λ2)が、MLLDの共振条件を満足しない波長である場合は、上述した両光パルスが可飽和吸収領域において同位相とはならない。その結果、可飽和吸収領域の光吸収係数の変調効果は小さなものとなる。一方、中間生成光信号の波長がMLLDの共振条件を満足する波長である場合には、中間生成光信号の強度が弱くても、MLLDの受動モード同期動作が実現できることとなる。このことは、入力光信号の強度が弱くその結果中間生成光信号の強度も弱い場合であっても、光クロック信号が安定して抽出できるという優れた効果が発揮されることを意味している。
【0088】
以上説明したことをまとめると、次のようになる。すなわち、第2変換ステップを、利得領域と可飽和吸収領域とを具えるMLLDによって実現する方法において、MLLDの発振縦モードのいずれか1つが、中間生成光信号の波長であるλ2に近い値に設定して光クロック信号抽出方法を実行することによって、より高感度で光クロック信号の抽出が可能となる。すなわち、入力光信号の強度が弱い場合であっても、効率よく光クロック信号を抽出することが可能となる。また、後述するように、抽出される光クロック信号の時間ジッタの低減にも有効である。
【0089】
ここで、MLLDの発振縦モードのいずれか1つが、中間生成光信号の波長であるλ2に近い値である(近似的に等しい値である)との具体的意味は、MLLDの可飽和吸収領域において上述の光パルス同士が互いに同位相であるとみなせる程度、すなわち、多重変調効果の発現が認められる程度にλ2がMLLDの発振縦モードのいずれか1つに近い値であることを意味する。言い換えると、MLLDの発振縦モードのいずれか1つが、中間生成光信号の波長であるλ2に近似的に等しい値であるとは、MLLDの縦モードのうちの一つの縦モードと波長λ2との差が、縦モード間隔と比較して無視できる程度に小さいことを意味する。
【0090】
この光クロック信号抽出装置の発明者は、上述の共振効果を確かめるために、次の実験を行った。すなわち、同一組成の圧縮歪量子井戸によって構成される利得領域及び可飽和吸収領域を有する従来型のMLLD(この実験において利用したMLLDの繰り返し周波数は40 GHzである。)に、このMLLDの繰り返し周波数40 GHzと近似的に一致する繰り返し周波数を有する、低ジッタなマスター光パルス列をこのMLLDに注入して、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタが低減化されることを確かめる実験を行った。この実験において、マスター光パルス列の中心波長を変化させて、この変化に伴って、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタの大きさの変化を観測した。なお、マスター光パルス列の偏光方向は、MLLDの発振光の偏光方向と等しいTE偏光になるように調整して実験を行った。
【0091】
図5と図6(A)及び(B)を参照して、この実験結果を説明する。図5は、時間ジッタ特性の説明に供するための、波長デチューニングと縦モード間隔との比に対する時間ジッタの特性を示す図であり、図6(A)及び(B)は、受動モード同期の動作原理の説明に供する図である。図5に示すグラフの横軸は、波長デチューニングを縦モード間隔で割った値を示しており、縦軸は、時間ジッタの大きさをps(ピコ秒)単位で目盛って示してある。波長デチューニングとは、MLLDの中心波長とマスター光パルス列の中心波長との差である。図5の横軸に示されている波長デチューニング量を縦モード間隔で除した量が整数値をとるとき、マスター光パルス列はMLLDの共振条件を満足することを意味する。
【0092】
図6(A)及び(B)において、横軸は波長を任意スケールで目盛って示してある。また、縦軸は省略してあるが、縦軸方向に光強度を任意スケールで示してある。
【0093】
図6(A)は、MLLDの発振スペクトル、すなわち縦モードがマスター光パルス列の光スペクトルと不一致の状態である場合を示している。また、図6(B)は、MLLDの縦モードがマスター光パルス列の光スペクトルと一致した状態である場合を示している。図5において、Aで示す観測値は、MLLDの発振スペクトルとマスター光パルス列の光スペクトルとが不一致の状態、すなわち図6(A)に示す関係となっている場合に観測された時間ジッタの値である。また、Bで示す観測値は、MLLDの発振スペクトルとマスター光パルス列の光スペクトルとが一致の状態、すなわち図6(B)に示す関係となっている場合に観測された時間ジッタの値である。
【0094】
以上説明した実験結果から、マスター光パルス列の波長がMLLDの共振器波長、すなわち隣接する縦モードの中間位置にあって、MLLDの発振スペクトルと一致しない場合(Aで示す観測値)、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタが極大となることがわかる。この場合には、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタを低減するために必要とされる、MLLDに注入するマスター光パルスの強度がもっとも大きくなる。
【0095】
一方、マスター光パルス列の波長がMLLDの発振スペクトルと一致する場合(Bで示す観測値)、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタが極小となり、時間ジッタを低減するために必要とされる、MLLDに注入するマスター光パルスの強度がもっとも小さくてすむことを意味している。
【0096】
以上説明した実験結果から、MLLDの共振器におけるマスター光パルス列(すなわち、注入光)の共振効果を利用することによって、MLLDから出力される光パルス列の時間ジッタを低減するために必要とされる注入光の強度を低減できることがわかる。共振効果を発現させるための条件を満足させるためには、中間生成光信号の波長(すなわち、中間生成光信号の波長スペクトル)を、MLLDの発振縦モードのいずれか1つと近似的に一致させればよい。
【0097】
第1発明の光クロック信号抽出装置においては、MLLDに注入されるマスター光パルス列に相当する注入光は中間生成光信号であり、その信号の波長は、第1変換手段に具えられる連続波光源(ここでは、波長λ2を出力する連続波光源16)の出力波長によって一義的に確定する。第1変換手段に具えられる連続波光源は、装置内に設置される半導体レーザ等の光源であり、その波長はMLLDの発振縦モードのいずれか1つと一致するように設定することは容易にできることである。
【0098】
また、第2光変換器として利用されるMLLDにおける共振条件は、入力光信号の波長(ここでは、λ1)には依存しない。すなわち、光ファイバ伝送路を長距離伝送されて光クロック信号抽出装置に入力される入力光信号の波長がλ1から変化したとしても、MLLDにおける共振条件は、第1変換手段に具えられる連続波光源の波長(ここでは、λ2)によって規定されるために、光クロック信号の抽出動作には影響を与えない。
【0099】
次に、図7(A1)から(B3)を参照して、第1変換ステップが実行される際に生じるパターン効果の吸収作用について説明する。図7(A1)から(A3)は、SOA内のキャリア密度の回復速度が入力光信号のビットレートと比較して十分な速さである場合(すなわち、SOAの応答速度が速い場合)を示しており、図7(B1)から(B3)は、SOA内のキャリア密度の回復速度が入力光信号のビットレートと比較して遅い場合(すなわち、SOAの応答速度が遅い場合)を示している。図7(A1)から(B3)において、横軸は全て時間軸であり、時間を任意スケールで示してある。図7(A1)及び(B1)は入力光信号の時間波形を示しており、縦軸方向は省略して描いてあるが、光強度を任意スケールで示してある。図7(A2)及び(B2)はSOA内のキャリア密度の時間変化を示しており、縦軸方向は省略して描いてあるが、キャリア密度を任意スケールで示してある。図7(A3)及び(B3)は中間生成光信号の時間波形を示しており、縦軸方向は省略して描いてあるが、光強度を任意スケールで示してある。
【0100】
第1変換ステップにおいて、中間生成光信号は、SOA内でXGM効果によって生成される。このXGM効果の応答速度は、入力光信号を構成する光パルスがSOAに入力された後、キャリア密度の回復する速度によって支配される。キャリア密度の回復速度は、SOA内でのバンド間遷移に基づくキャリア寿命によって支配され、このキャリア寿命は、数百ps(ピコ秒)から数ns(ナノ秒)程度である。
【0101】
入力光信号のビットレートがSOAのキャリア寿命に対して十分に遅い場合、SOAに入力光信号を構成する光パルスが入力されて、続いて入力される光パルスが入力されるまでの間に、SOAのキャリア密度は、光パルスが入力される前の状態まで回復する。すなわち、SOAの光学利得は、光パルスの入力の前後において、光パルスが入力されていないときのSOAの光学利得である元の非飽和レベルまで常に回復する。
【0102】
この場合には、入力光信号であるRZ信号のパターン履歴に依存することなく、SOAの光学利得は、時間軸上における光パルスの存在及び非存在に対して常に一定の値をとる。このことによって、図7(A1)から(A3)に示すように、入力光信号を構成する光パルス(図7(A1)に示す。)に対応して、中間生成光信号の時間波形(図7(A3)に示す。)が常に正確に論理反転したパターンとして生成されている。
【0103】
一方、入力光信号のビットレートがSOAのキャリア寿命に対して十分に早い場合、SOAに入力光信号を構成する光パルスが入力されて、続いて入力される光パルスが入力されるまでの間に、SOAのキャリア密度は、光パルスが入力される前の状態にまでには回復しない。SOAのキャリア密度の回復の度合いは、入力光信号であるRZ信号のパターン履歴に大きく依存する。
【0104】
例えば、「1」が連続して入力(光パルスが連続して入力)されると、キャリア密度が低い状態にあるSOAに、続いて光パルスが入力されることとなる。逆に「0」が連続して入力、すなわち、光パルスが連続して入力されない場合には、「0」につづいて入力される「1」を意味する光パルスは、キャリア密度が回復した状態にあるSOAに入力されることとなる。このように、SOAの光学利得は、RZ信号のパターン履歴に依存して一定値を取らない。このようにSOAの光学利得がRZ信号のパターン履歴に依存する現象をパターン効果と言う。
【0105】
パターン効果が発現すると、中間生成光信号を構成する光パルスの強度にばらつきが生じる。その結果、中間生成光信号消光比が小さくなり、第2変換手段において実行される光パルス生成ステップ(第2変換ステップ)に悪影響を与える。
【0106】
しかしながら、この発明の発明者は、MLLDを用いて光クロック信号の抽出を行う方式を採用することによって、上述のパターン効果を吸収できることを既に確かめている(非特許文献3参照)。以下、パターン効果の吸収についての実験結果を説明する。この実験では、繰り返し周波数が160 GHzのMLLDを利用して、160 Gbit/sの全光クロック信号抽出方法を試みた。図8に、この実験の光クロック信号の抽出実験に用いた装置の概略的ブロック構成図を示す。
【0107】
まず、繰り返し周波数が40 GHzのMLLD(能動モード同期半導体レーザ) 400と、EAM 402とを用いて、40 Gbit/sの擬似RZ信号403を生成した。この40 Gbit/sの光パルス列をエルビウム添加光増幅器(EDFA: Erbium-doped Fiber Amplifier)404によって増幅した後、光バンドパスフィルタ406及び偏波面コントローラ408を介して、ガラス基板を用いて形成された光時分割多重(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)回路410によって4多重(すなわち、4逓倍)して、160 Gbit/sの光パルス列411を生成した。
【0108】
光パルス列411を、光アイソレータ412を介して160 GHzのMLLD(受動モード同期半導体レーザ) 414の片側端面(図示を省略)から入力し、もう一方の端面(図示を省略)から出力される160 Gbit/sの光パルス列415(160 GHzの光クロック信号に対応する)を、光アイソレータ416を介してサンプリングオシロスコープ418で観測した。
【0109】
ここで、OTDM回路410から出力される光パルス列411(多重化信号)に対して、これを構成する光パルスのピーク強度、及び時間ジッタに相当する光パルスの時間軸上での位置にばらつきが生じるように意図的にOTDM回路410を設定した。また、光パルス列411を構成する光パルスのパルス幅を4 psに設定した。一方、光パルス列411のタイムスロットを6.3 psに設定した。光パルスのパルス幅と光パルス列のタイムスロットの両者の値(それぞれ、4 ps及び6.3 ps)は、干渉の効果が現れるためには十分接近した値である。このように、光パルス間の干渉の影響が現れる程度に、光パルス列411を構成する光パルスのパルス幅(4 ps)を広く設定した。
【0110】
基準周波数信号発生器422から39.67137 GHzの正弦波信号423aがパルスパターンジェネレータ420に供給され、パルスパターンジェネレータ420からトリガー信号422aがサンプリングオシロスコープ418に供給される。また、パルスパターンジェネレータ420からEAM 402に対しては、擬似ランダムデータ422b(通常の光通信におけるRZ信号に相当する。)が供給される。一方、基準周波数信号発生器422から39.67137 GHzの正弦波信号423bが電気増幅器424を介してMLLD 400に供給される。これによって、MLLD 400から、基準周波数信号発生器422から39.67137 GHzの正弦波信号423aおよび423bに同期した光パルス列401が生成されて出力される。光パルス列401は、EAM 402に入力されて擬似RZ信号403が生成されて出力される。擬似RZ信号403を、上述したように、OTDM回路410によって4多重(すなわち、4逓倍)して、160 Gbit/sの光パルス列411を生成した。
【0111】
図9(A)及び(B)を参照して、パターン効果の吸収についての実験結果を説明する。図9(A)は、入力光信号に相当する光パルス列411の時間波形を示し、図9(B)は、再生された光クロック信号に相当する光パルス列415の時間波形を示す図である。図9(A)及び(B)の横軸は時間軸であり一目盛りが6.3 psに相当する間隔である。また、図9(A)及び(B)の縦軸は光強度を任意スケールで目盛って示してある。
【0112】
図9(A)に示す入力光信号に相当する光パルス列411の時間波形は、上述したように、その光パルス強度はばらついており、また時間ジッタも存在する。しかしながら、MLLD 414によって光パルス列411から抽出された光クロック信号に相当する光パルス列415は、それを構成する光パルスのピーク強度はそろっている上に、時間ジッタも存在していない。すなわち、光パルス列415を構成する光パルスのピーク位置は時間軸上で等間隔に並んでいることが見て取れる。図9(A)及び(B)に示す実験結果から、MLLDを用いて光パルス信号の抽出を行う方式を採用することによって、パターン効果を吸収できることが確かめられた。
【0113】
以上の結果は、上述した共振器効果と同様に、MLLD内での多重変調効果によって、説明することができる。すなわち、MLLDの共振器中を周回する光パルスによる多重変調効果によって、MLLDの可飽和吸収領域の光吸収係数の変調量が時間的に平均化される。この結果、入力される光パルスの時間間隔及びそのピーク強度にばらつきがあっても、これらのばらつきは時間平均されて実質的にばらつきが存在しない状態へと補正される。
【0114】
以上説明したように、パターン効果によって入力される光パルスの時間間隔及びそのピーク強度にばらつきがあっても、MLLDにおいては、このばらつきが吸収され、等しいピーク強度の光パルスが等間隔で並ぶ光パルス列が生成されて出力される。この結果、SOAの応答速度よりも高速であるビットレートの入力光信号に対しても、光クロック信号を抽出することが可能であることを示している。
【0115】
波長変換それ自体を実現することを目的として利用されるSOAが適応可能なビットレートは、概ね10 Gbit/sから高くとも40 Gbit/sであり、SOAのキャリア寿命で律速される範囲の値である。第1発明の光クロック信号抽出装置によれば、このように既に製造方法が確立されているSOAを利用しても、SOAのキャリア寿命で律速される以上の高いビットレートの入力光信号からも、光パルス信号を抽出することが可能である。
【0116】
また、従来方式(例えば、非特許文献1及び3に開示された方式)のように、入力光信号を直接MLLDに入力して、MLLD内での共振による多重変調効果を利用して、弱い入力光信号から光クロック信号を抽出すると、次の問題が生じる。すなわち、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)光通信システムにおいて、光クロック信号を抽出する場合に発生する問題である。WDMシステムにおいて、各チャンネルに割り当てられる波長は、任意の波長を勝手に割り当てることは許されず、統一規格に従った波長グリットに対応していなければならない。
【0117】
この発明に即して具体的に説明すると、MLLDから出力される光クロック信号の波長λ3は、この波長グリットに一致している必要がある。仮に入力光信号の波長λ1と光クロック信号の波長λ3とが同一であれば、当然にこの波長グリットに一致すべきであるという条件を満たす。しかしながら、λ1≠λ3である場合には、波長λ3が波長グリットに一致するとは限らない。
【0118】
WDMシステムにおいては、チャンネル間の光信号同士の干渉を起こさせないために、波長グリッドの間隔とビットレート周波数とは一致しないように設定されている。例えば、ビットレートが39.81312 GHzであり、波長グリッドの間隔は50 GHzである等である。すなわち、波長グリッドの間隔がビットレート周波数の整数倍であるという単純な関係は成立していない。したがって、従来方式に従って、光クロック信号を抽出する場合であって、λ1≠λ3である場合には、MLLDの共振による多重変調効果を利用しようとすると、WDM光通信システムがλ1波長グリッドを満たして設定されていることから、MLLDの固有の発振波長λ3は波長グリッドを満たすことはできない。上述したようにλ1とλ3との比は整数比とならなければならないからである。
【0119】
一方、第1発明の光クロック信号抽出装置によれば、第1変換手段を介していることによって、この第1変換手段によって、中間生成光信号の波長λ2をλ1と整数比となるように設定することによって、λ1≠λ3である場合であっても、抽出される光クロック信号の波長λ3を波長グリットに一致させることが可能となる。すなわち、第1発明の光クロック信号抽出装置は、WDM光通信システムに利用するためにも好適な装置であるといえる。
【0120】
<第1光変換器>
第1発明の光クロック信号抽出装置は、その構成要素である第1光変換器としてSOAの代わりに可飽和吸収体あるいはEAMを利用しても実現させることが可能である。可飽和吸収体あるいはEAMとしては、例えば、図3を参照して説明したMLLDの可飽和吸収領域を利用することができる。ここで、可飽和吸収体あるいはEAMとして機能する光導波路を、バルク結晶あるいは伸張歪量子井戸を用いて形成することによって、後述する相互吸収変調効果(XAM: cross absorption modulation)が入力光信号の偏光方向に無依存に発現するようにすることが好適である。
【0121】
図1及び図2に示した光パルス信号抽出装置においては、第1光変換器であるSOA内で発現するXGMを利用して中間生成光信号(波長λ2)を生成している。すなわち、SOA内で正の利得が入力光信号によって変調される現象を利用して、波長λ2の連続波光を元にして中間生成光信号を生成している。
【0122】
これに対して、第1光変換器を可飽和吸収体あるいはEAMを利用して実現する場合には、XAMが利用されて中間生成光信号(波長λ2)が生成される。この場合には、可飽和吸収体あるいはEAMの負の利得、すなわち、光吸収係数が入力光信号によって変調される現象を利用して、波長λ2の連続波光から中間生成光信号を生成する。ただし、XAMを利用して中間生成光信号を生成する場合には、入力光信号であるRZ信号パターンと生成される中間生成光信号のパターンとは、論理反転された関係とはならず、同一論理の関係となる。しかしながら、ここでも既述したように、入力光信号であるRZ信号パターンと生成される中間生成光信号のパターンとが、論理反転の関係であろうと同一論理の関係であろうと、光クロック信号を抽出するという目的を果たす上で、なんら問題とはならない。
【0123】
第1光変換器としてSOAの代わりに可飽和吸収体あるいはEAMを利用して実現させる利点は、第1光変換器をSOAで実現される場合と比較して、より一層高速な入力光信号から光クロック信号を抽出することが可能となることである。
【0124】
既に説明したように、SOAを利用して第1光変換器を実現した場合であっても、SOAの応答速度よりも高速なビットレートの入力光信号から光クロック信号を抽出可能であるが、その程度には限界がある。SOAの応答速度が入力光信号のビットレート周波数と比較して極端に遅い場合には、SOAのキャリア密度変調の度合いが非常に小さくなり、SOAから出力される中間生成光信号は、連続波光に近い時間波形を有する信号となる。このように連続波光に近い時間波形を有する中間生成光信号をMLLDに入力しても、受動モード同期動作を発現させることができない。すなわち、MLLDにおいて、光クロック信号抽出動作である光パルス生成ステップ(第2変換ステップ)が実現されない。光クロック信号抽出動作をMLLDにおいて高速に実現するためには、第1光変換器として、一層高速な素子が必要となる。
【0125】
第1光変換器としてSOAの代わりに、可飽和吸収体あるいはEAMを利用すれば、その動作速度を一層高速化することが可能である。このように高速化が可能である理由は、可飽和吸収体あるいはEAMの動作速度は、入力光信号を構成する光パルスが入力されることによって生じたキャリアが、可飽和吸収体あるいはEAMに印加されている逆バイアス電圧によって引き抜かれる速度によって決まることにある。すなわち、このキャリアが引き抜かれる速度は、バンド間遷移によるキャリアの寿命に比べて非常に高速であり、数psから遅くとも数十psである。この速度は、上述した、SOA内でのバンド間遷移に基づくキャリア寿命である数百ps(ピコ秒)から数ns(ナノ秒)程度と比べて十分に高速である。この結果、第1光変換器としてSOAの代わりに可飽和吸収体あるいはEAMを利用することによって、より一層高速なビットレートの入力光信号から光クロック信号を抽出可能となる。
【0126】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態として、第2発明の光クロック信号抽出装置及び光クロック信号抽出方法について、図10を参照して説明する。図10は、この光クロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【0127】
第2発明の光クロック信号抽出装置は、上述の第1発明の光クロック信号抽出装置と第1変換手段が異なる。第1変換手段が具える第1光変換器としては、SOAが利用できるが、第1発明の光クロック信号抽出装置の場合と異なり、可飽和吸収体あるいはEAMを利用することはできない。すなわち、第2発明の光クロック信号抽出方法においては、第1変換ステップを、XAMによってではなく、XGMを利用して実現する。
【0128】
第1変換ステップを、XGMを利用して実現すると、上述したようにXAMを利用して実現する場合と比較して、その速度が遅くなる。しかしながら、後述するように、波長λ2の連続波光だけでなく波長λ4の連続波光も同時に第1光変換器であるSOAに入力することによって、SOAの応答速度を向上させることが可能となる。
【0129】
第2発明の光クロック信号抽出装置における、第1変換手段56は、第1光変換器12(ここでは、SOA)と、波長λ2の連続波光源16とに加えて、更に波長λ4の連続波光源50を具えている。ビットレートfであって波長λ1の入力光信号100と、波長λ2の連続波光200と、波長λ4の連続波光58とが第1光変換器12に入力されて、入力光信号110と波長λ2の連続波光210及び波長λ4の連続波光58とによって発現する相互利得変調効果によって、しかも入力光信号110の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号220を生成して出力する。図10に示す第2発明の光クロック信号抽出装置では、連続波光源50から出力される波長λ4の連続波光58は、光経路48を伝播して光カプラ46を介して、第1光変換器12に入力される。
【0130】
光サーキュレータ10及び光アイソレータ14は、第1発明で利用されたものと同一であるのでその説明を省略する。また、第2変換手段52についても、第1発明で利用されたものと同一であるのでその説明を省略する。
【0131】
第2発明の光クロック信号抽出装置においても、その動作は第1発明の光クロック信号抽出装置と同様に、第1変換ステップ及び第2変換ステップを経て、光クロック信号が抽出されるという動作原理で動作する点では共通する。異なる点は、第1変換ステップにおいて、第1光変換器12に入力される連続波光が1種類ではなく、波長λ2の連続波光に波長λ4の連続波光を加えて2種類とする点である。このようにすることによって、第1光変換器12に入力される連続波光が1種類である場合と比較して、第1光変換器12を構成するSOAにおける誘導放出を増強することができ、キャリアの回復速度を高速化することが可能である。この結果、上述したように、SOAの応答速度を向上させることが可能となる。
【0132】
SOAにおける誘導放出が、1種類ではなく、波長λ2の連続波光に波長λ4の連続波光を加えて2種類とすることによって増強できるという事実は、文献(R. J. Manning, D. A. O. Davies, D. Cotter, and J. K. Lucek, "Enhanced recovery rates in semiconductor laser amplifiers using optical pumping, "Electron. Lett. vol. 30, No. 10, pp. 787-788, 1994.)に開示さてれている。
【0133】
このように、第1変換手段としてSOAを利用して構成し、このSOAに入力する連続波光を波長の異なる2種とすることによって、第1変換ステップの動作が高速化されるので、高速な入力光信号からも光クロック信号を抽出することが可能となる。第2発明の光クロック信号抽出装置は、第1発明の光クロック信号抽出装置において、第1光変換器として可飽和吸収体あるいはEAMを利用して実現されたように、光クロック信号の抽出動作を高速化できる。この点では、両者共に同一の利点を有している。
【0134】
しかしながら、第2発明の光クロック信号抽出装置においては、誘導放出の効果があくまでも利用されているのに対して、第1発明の光クロック信号抽出装置において可飽和吸収体あるいはEAMを用いた場合には、光吸収効果が利用されている。この結果、誘導放出の効果が利用される第2発明の光クロック信号抽出装置においては、第1変換手段において生成される中間生成光信号を十分な強度を持って生成することが容易である。その一方で、第2発明の光クロック信号抽出装置においては、1種類余計に連続波光源を用意する必要がある。したがって、第1あるいは第2発明の光クロック信号抽出装置のいずれを採用するかは、光クロック信号抽出の機能が組み込まれるシステム設計上の考慮事項である。
【0135】
以上の説明においては、MLLDの発振光の偏波モードをTE偏光であるものとして説明したが、MLLDの発振光の偏波モードがTM偏光である場合であっても、中間生成光信号の偏波モードをTM偏光とすることによって、同様に第1及び第2の光クロック信号抽出方法を実現することが可能であることは明らかである。中間生成光信号の偏波モードをTM偏光とするには、光経路28を偏波面保存光ファイバで形成し、その導波モードがMLLDに入力される際にTM偏光となるように設置すればよい。このように偏波面保存光ファイバを設置することは、当業者にとって容易なことである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第1の実施の形態の光クロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【図2】第2の実施の形態の光クロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【図3】受動モード同期半導体レーザの概略的断面構成図である。
【図4】入力光信号、中間生成光信号及び光クロック信号の時間波形の説明に供する図である。
【図5】波長デチューニングとモード間隔との比に対する時間ジッタの特性を示す図である。
【図6】受動モード同期の動作原理の説明に供する図である。
【図7】パターン効果の説明に供する図である。
【図8】光クロック信号の抽出実験に用いた装置の概略的ブロック構成図である。
【図9】入力光信号及び光クロック信号の時間波形を示す図である。
【図10】第3の実施の形態の光クロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【符号の説明】
【0137】
10、38:光サーキュレータ
12:第1光変換器
14、32、34、412、416:光アイソレータ
16、50:連続波光源
18、414:第2光変換器
30、56:第1変換手段
36、406:光バンドパスフィルタ
46:光カプラ
52、54:第2変換手段
62:n側共通電極
64:第1クラッド層
66:利得領域の光導波路
68:可飽和吸収領域の光導波路
70:第2クラッド層
72:可飽和吸収領域のp側電極
74:利得領域のp側電極
76:定電圧源
78:定電流源
80:利得領域
82:可飽和吸収領域
400:能動モード同期半導体レーザ
402:電界吸収型光変調器(EAM)
404:光増幅器
408:偏波面コントローラ
410:OTDM回路
418:サンプリングオシロスコープ
420:パルスパターンジェネレータ
422:基準周波数信号発生器
424:電気増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光変換器と、波長λ2の連続波光源とを具え、
ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光とが前記第1光変換器に入力されて、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する第1変換手段と、
第2光変換器を具え、
該第2光変換器に、前記中間生成光信号が入力されて、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、該第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力する第2変換手段と
を具えることを特徴とする光クロック信号抽出装置。
【請求項2】
前記第1光変換器が、活性層がバルク結晶によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項3】
前記第1光変換器が、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項4】
前記第1光変換器が、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である可飽和吸収体であることを特徴とする請求項1に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項5】
前記第1光変換器が、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である電界吸収型光変調器であることを特徴とする請求項1に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項6】
第1光変換器と、波長λ2の連続波光源と、波長λ4の連続波光源とを具え、
ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光と、波長λ4の連続波光とが前記第1光変換器に入力されて、入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する第1変換手段と、
第2光変換器を具え、
該第2光変換器に、前記中間生成光信号が入力されて、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、該第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力する第2変換手段と
を具えることを特徴とする光クロック信号抽出装置。
【請求項7】
前記第1光変換器が、活性層がバルク結晶によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である半導体光増幅器であることを特徴とする請求項6に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項8】
前記第1光変換器が、活性層が伸張歪量子井戸構造によって形成され、増幅率が前記入力光信号の偏光方向に無依存である半導体光増幅器であることを特徴とする請求項6に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項9】
前記第2光変換器が、利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光クロック信号抽出装置。
【請求項10】
ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光とを第1光変換器に入力して、前記入力光信号と前記連続波光とによって発現する相互利得変調効果によって、しかも入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する第1変換ステップと、
前記中間生成光信号を第2光変換器に入力して、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、該第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力する第2変換ステップと
を含むことを特徴とする光クロック信号抽出方法。
【請求項11】
ビットレートfであって波長λ1の入力光信号と、波長λ2の連続波光と、波長λ4の連続波光とを第1光変換器に入力して、前記入力光信号の偏光方向に無依存で、波長λ2の中間生成光信号を生成して出力する第1変換ステップと、
前記中間生成光信号を第2光変換器に入力して、繰り返し周波数fであって波長λ3の光クロック信号を、該第2光変換器の受動モード同期動作によって生成して出力する第2変換ステップと
を含むことを特徴とする光クロック信号抽出方法。
【請求項12】
前記第2変換ステップが、利得領域と可飽和吸収領域とを具える受動モード同期半導体レーザを用いて、該受動モード同期半導体レーザの発振縦モードのいずれか1つを、前記中間生成光信号の波長であるλ2に近い値に設定されて実行されることを特徴とする請求項10又は11に記載の光クロック信号抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−221198(P2007−221198A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36128(P2006−36128)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】