説明

光コネクタおよび光コネクタ装置

【課題】従来よりも小型化が容易な光コネクタを提供すること。
【解決手段】
本発明の光コネクタ100は、光学部材101を保持するハウジング103と、ハウジング103にスライド可能に保持されたスライダ105と、スライダ105に開閉可能に設けられ、開閉により光学部材101を外部と露出/遮断するシャッタ107と、スライダ105をハウジング103から離れる向きに押圧するスライダ側コイルバネ109を有し、スライダ側コイルバネ109は、シャッタ107の幅方向に配置され、スライダ105がスライダ側コイルバネ109の弾性力により、ハウジング103から離れる向き(A1の向き)に移動することによりシャッタ107が閉じ、スライダ105がスライダ側コイルバネ109の弾性力に逆らって、ハウジング103に近づく向きに移動することによりシャッタ107が開くように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタおよび光コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタは複数の光ファイバ間の接続に用いられるコネクタであるが、光コネクタには、一方の光ファイバのみが接続された状態で、接続された光ファイバの先端が外部に露出しないようにするため、シャッタを設けた構造がある。
【0003】
これは、一方の光ファイバのみが接続された状態で、接続された光ファイバの先端が露出していると、露出した光ファイバの先端にゴミが付着する恐れがあることと、光ファイバの先端から照射された光が作業者の目を傷つけるのを防ぐためである。
【0004】
このようなシャッタを設けた構造としては、例えば特許文献1記載の構造が知られている。
【0005】
特許文献1の光コネクタ1は、図10〜図13に示すように、コネクタハウジング20と、コネクタハウジング20の内部に固定されたスリーブ30と、コネクタハウジング20内でスライド移動可能な可動部40、及び、これを付勢する可動バネ60を有している。
【0006】
また、図11に示すように、可動部40にはスリーブ30を開閉するためシャッタ50が保持ピン54を中心に回動自在に取り付けられており、図12に示すように、可動部40と可動バネ60は、矩形断面の収納部24に収納され、シャッタ50は押さえバネ56によって、スリーブ30のスリーブ端面32側に常時付勢された状態となっている。
【0007】
図12に示すシャッタ50が閉じた状態から、光ファイバが結合された図示しないプラグハウジングを、光コネクタ1のコネクタハウジング20に嵌入すると、可動部40の前側側壁42が、図示しないプラグハウジングの前側側壁と当接し、可動部40は、可動バネ60の弾力に抗して、収納部24の内部方向、即ち、後方側へと移動する。
【0008】
可動部40の移動に伴って、可動部40に固定された保持ピン54もまた、コネクタハウジング20の後方側へと移動される。
【0009】
シャッタ50は、その一部においてスリーブ端面32と当接している。そのため、保持ピン54の移動に伴い、シャッタ50は、当接部34を支点として、押さえバネ56の弾性力に抗して可動部40側の内壁側へ向かって回転し、可動部の枠内46に収納される。シャッタ50のこの回転により、図13に示すように、スリーブ端面32を覆っていたシャッタ50が開く。
【0010】
このように、光コネクタ1は、プラグハウジングの嵌入に連動して自動的にシャッタ50が開くようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−42353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のような構造では、可動部40と可動バネ60が嵌合方向に直列配置されているため、コネクタハウジング20の全長は、少なくとも可動部40の長さと可動バネ60の長さの合計以上としなければならず、コネクタの小型化が困難であるという問題があった。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、従来よりも小型化が容易な光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明によれば、光学部材を保持するハウジングと、前記ハウジングにスライド可能に保持されたスライダと、前記スライダに開閉可能に設けられ、開閉により前記光学部材を外部と露出/遮断するシャッタと、前記スライダを前記ハウジングから離れる向きに押圧する弾性部材と、を有し、前記弾性部材が少なくとも一つ前記シャッタの幅方向に配置され、前記スライダが前記弾性部材の弾性力により、前記ハウジングから離れる向きに移動することにより前記シャッタが閉じ、前記スライダが前記弾性部材の弾性力に逆らって、前記ハウジングに近づく向きに移動することにより前記シャッタが開くように構成したことを特徴とする光コネクタが得られる。
【0015】
前記シャッタは、前記光学部材を覆う板状の正面板と、前記正面板の両端に設けられた側面板と、前記側面板に、前記正面板の両端よりも前記ハウジング側で、かつハウジングの下部側にずらして設けられ、前記スライダに回転可能に保持された回転軸と、を有し、前記回転軸を中心に回転することにより、前記シャッタが開閉するのが望ましい。
【0016】
また、前記スライダは、前記シャッタの前記回転軸を挟み込んで保持する一対の保持部を有し、前記回転軸は長円形状(楕円形状もしくはトラック形状)を有するのが望ましい。
【0017】
さらに、前記ハウジングは、コの字型の平面形状を有する本体を有し、前記本体のコの字の内側の対向面には、互いに対向するように設けられ、前記スライド方向と平行なガイド面と、前記ガイド面から落ち込むような当接部を有するスライド部を有し、前記シャッタの前記側面板は、閉じた状態で前記当接部と係合する係合部を有し、前記スライダが前記弾性部材の弾性力に逆らって、前記ハウジングに近づく向きに移動することにより、前記係合部が前記当接部から離れて前記ガイド面に乗り上げて移動することにより、前記シャッタが前記回転軸を中心に回転して開くのが望ましい。
【0018】
一方、前記スライダは、板状の底板と、底板の両側面に設けられ、少なくとも前記ハウジングのコの字の正面と対向する面が開放され、前記コの字の両端の2辺に相当する部分を覆うような箱型の形状を有する一対のスライド固定部を有し、一対の前記スライド固定部は、互いに対向する面にスリットが形成され、前記スリットの両側面が一対の前記保持部を構成していることが望ましい。
【0019】
さらに、前記ハウジングは、前記コの字の両端の2辺に相当する部分の一方に設けられたガイドピンと、前記コの字の両端の2辺に相当する部分の他方に設けられ、ガイドピンと係合可能なガイドピン受と、を有し、前記スライダは、一対の前記スライド固定部の一方に設けられ、前記ガイドピン受が挿通されるガイドピン受貫通孔と、一対の前記スライド固定部の他方に設けられ、前記ガイドピンが挿通され前記ガイドピン受貫通孔の径より小さい径のガイドピン貫通孔と、を有し、前記スライダが移動した際に、前記ガイドピン受及び前記ガイドピンが前記ガイドピン受貫通孔及び前記ガイドピン貫通孔からそれぞれ露出するのが望ましい。
【0020】
また、前記シャッタの前記正面板は、前記回転軸を中心とする円弧に沿うような側面形状を有し、前記円弧の半径は、前記回転軸と前記ハウジングの上面との距離以下であるのが望ましい。
【0021】
さらに、前記弾性部材はコイルバネであり、その両端が、前記ハウジングの前記コの字の両端の2辺に相当する部分の少なくとも一方と、前記スライド固定部の少なくとも一方に接触するように設けられ、前記スライド固定部を前記ハウジングから離れる向きに押圧していることが望ましい。
【0022】
また、前記ハウジングは、前記シャッタが閉じたとき、前記シャッタの前記側面板と突き当たる係止部を有することが望ましい。
【0023】
さらに前記光コネクタは、前記弾性部材を一対有し、一対の前記弾性部材が前記シャッタの幅方向に並列配置されるのが望ましい。
【0024】
また、本発明の別の観点によれば、前記光コネクタを2つ有し、2つの前記光コネクタのうち、一方の前記光コネクタの前記スライダから露出した前記ガイドピン受が、他方の前記光コネクタの前記スライド固定部の前記ガイドピン貫通孔の周囲と当接して、前記ガイドピン受が前記スライド固定部を押圧することによって、光コネクタの前記スライダが移動し、2つの前記光コネクタが接続された構成を有することを特徴とする光コネクタ装置が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来よりも小型化が容易な光コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(a)は本実施形態に係る光コネクタ100を示す斜視図であって、図1(b)は図1(a)の平面図である。
【図2】光コネクタ100の分解斜視図である。
【図3】図3(a)は図1(b)の3a−3a断面図、図3(b)は図1(b)の3b−3b断面図、図3(c)は図1(b)の3c−3c断面図である。
【図4】光コネクタ100同士を嵌合する際の手順を示す図であって、図4(a)は嵌合前の状態を示す平面図、図4(b)は図4(a)の側面図である。
【図5】光コネクタ100同士が嵌合する際の手順を示す図であって、図5(a)は嵌合後の状態を示す平面図、図5(b)は図5(a)の5b−5b断面図である。
【図6】光コネクタ100同士が嵌合する際の手順を示す斜視図であって、図6(a)はシャッタ107が閉じた状態を示す図、図6(b)はシャッタ107が途中まで開いた状態を示す図、図6(c)はシャッタ107が完全に開いた状態を示す図であり、一方の光コネクタは図示していない。
【図7】図1の3a−3a断面図であって、図7(a)は図6(a)に対応する状態、図7(b)は図6(b)に対応する状態、図7(c)は図6(c)に対応する状態を示す図である。
【図8】図1の3b−3b断面図であって、図8(a)は図6(a)に対応する状態、図8(b)は図6(b)に対応する状態、図8(c)は図6(c)に対応する状態を示す図である。
【図9】図1の3c−3c断面図であって、図9(a)は図6(a)に対応する状態、図9(b)は図6(b)に対応する状態、図9(c)は図6(c)に対応する状態を示す図である。
【図10】従来技術の光コネクタ1を示す斜視図である。
【図11】図10の可動部40付近の部材を示す斜視図である。
【図12】図10の12−12断面図である。
【図13】図12の状態からシャッタ50が開いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明に好適な実施形態について詳細に説明する。
【0028】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る光コネクタ100の概略について説明する。
【0029】
図1および図2に示すように、光コネクタ100は、光ファイバ187と結合される光学部材101、光学部材101を移動可能に保持するハウジング103、ハウジング103にスライド可能に保持されたスライダ105、スライダ105に開閉可能に設けられ、開閉により光学部材101を外部と露出/遮断するシャッタ107、シャッタ107の幅方向に並列配置され、スライダ105をハウジング103から離れる向き(図1のA1の向き)、すなわち、接続相手側に向けて押圧するスライダ側コイルバネ109を有している。
【0030】
また、光コネクタ100は、光学部材101の後方に設けられ、ハウジング103に固定された保護ブーツ173、保護ブーツ173と光学部材101の間に設けられ、光学部材101を押圧するブーツ側コイルバネ179を有している。
【0031】
図1〜図3を参照して、光コネクタ100の各構成部材について、より詳細に説明する。
【0032】
光学部材101は光ファイバ187と結合される部材であり、図1では扁平な箱型の形状を有している。図2に示すように、箱型の1つの面は光ファイバ187が挿入される光ファイバ挿入面111を形成し、光ファイバ挿入面111と対向する面は、他の光コネクタの光学部材と接続される接続面113を形成している。
【0033】
図2では、接続面113は、嵌合の際の位置合わせ用に設けられる接続面凸部115と接続面凹部117を有している。
【0034】
ハウジング103は、光学部材101、スライダ105、スライダ側コイルバネ109、ブーツ側コイルバネ179、および保護ブーツ173を保持する絶縁部材であり、図1および図2に示すように、平面形状がコの字型の扁平な箱型の本体119と、本体119のコの字を構成する3辺のうち、2辺を結合する1辺に相当する部分の、コの字の内側から突出した扁平な箱型の光学部材収納部121を有している。また、コの字を構成する3辺のうち、対向する2辺に相当する部分は箱型の両端箱型部123、125を形成している。
【0035】
なお、光学部材収納部121は、内部に光学部材101が収納される部分であり、その扁平方向の高さは本体119の高さよりも低く、本体119との間に高さ方向のギャップを生じている。詳細は後述するが、シャッタ107が開いた状態では、図5に示すように、シャッタ107が、このギャップの部分を移動する。
【0036】
そこで、以下の説明では、各部材について、シャッタ107が開く際にシャッタ107が覆う側の面およびこの面と同じ向きの面を「上面」、上面と反対側の面を「下面」、光学部材収納部121が突出した側の面を「正面」、正面と反対側の面を「背面」、残りの面を「側面」と称し、光学部材収納部121が突出した方向(即ち「正面」の法線ベクトルの方向)を「突出方向」と称す。
【0037】
さらに、ハウジング103は、両端箱型部123、125の正面123a、125aに、スライダ側コイルバネ109を収納するための凹形状の弾性部材収納凹部127、129が形成されている。
【0038】
弾性部材収納凹部127、129の底面からは、正面123a、125a側に向けて突出した、スライダ側コイルバネ109を保持し、かつ他の光コネクタと嵌合するための円柱状のガイドピン131およびガイドピン受133がそれぞれ設けられている。
【0039】
なお、ガイドピン受133の正面には、ガイドピン131(またはガイドピン131に相当する相手側光コネクタの部材)が挿入される凹形状のガイドピン挿入穴135が設けられており、ガイドピン受133はガイドピン131よりも径が大きい。
【0040】
また、ハウジング103の両端箱型部123、125の上面123b、125bには、スライダ105の抜け止めのためのスライダ抜止突起137が設けられている。なお、光学部材収納部121の下面にも、図3(c)に示すように、スライダ105の抜け止めのための凹部121aが設けられている。
【0041】
さらに、ハウジング103の両端箱型部123、125の「コの字」の内側に相当する側面には、図3に示すように、互いに対向するようにして突出方向に平行な棒状のスライド用突起139が設けられており、スライド用突起139の先端近傍には、上面から落ち込むようにシャッタ固定溝141が設けられている。スライド用突起139には、シャッタ固定溝141よりも前方側に前方側が高くなるように斜めに形成された係止部139aが形成されている。また、スライド用突起139の上面はガイド面140を形成している。
【0042】
スライダ105はシャッタ107を保持し、スライドによりハウジング103と協働してシャッタ107を開閉する部材であり、図2に示すように、光学部材収納部121の底面に対応した寸法・形状を有する板状の底板143と、底板143の両側面に設けられ、少なくともハウジング103と対向する面が開放され、ハウジング103の両端箱型部123、125を覆うような箱型の形状を有するスライド固定部145、147を有している。
【0043】
スライド固定部145、147の開放端と対向する面である正面150、152にはそれぞれガイドピン131およびガイドピン受133が突出するためのガイドピン貫通孔149およびガイドピン受貫通孔151が設けられている。ガイドピン貫通孔149およびガイドピン受貫通孔151はそれぞれ、ガイドピン131およびガイドピン受133に対応した寸法を有しているため、ガイドピン貫通孔149はガイドピン受貫通孔151よりも径が小さい。
【0044】
また、スライド固定部145、147の、底板143と接続され、互いに対向する内側面には、底板143から立ち上がるように設けられたスリット153が形成されており、スリット153の両側面にはシャッタ107を保持する窪み状の回転軸保持部157、159が形成されている。
【0045】
さらに、スライド固定部145、147の上面162、164にはハウジング103のスライダ抜止突起137と係合する長穴161、163が、突出方向に沿って設けられている。
【0046】
また、図3(c)に示すように、底板143には、スライド固定部145、147側に立ち上がるようにして切り曲げられ、光学部材収納部121の凹部121aと係合する、スライダ105の抜け止めのための切り曲げ部144が設けられている。
【0047】
シャッタ107は開閉により、光学部材101を外部と露出/遮断する部材であり、図2および図3に示すように、光学部材101の接続面113を覆うように形成された板状の正面板165と、正面板165の両側端に設けられ、正面板165の開閉方向に平行な平面を有する側面板167と、側面板167に、正面板165の両端よりもハウジング103側で、かつハウジング103の下部側にずらして設けられ、ハウジング103の回転軸保持部157、159に挟み込まれるように回転可能に保持された長円状(楕円状またはトラック状)の回転軸169とを有している。なお、回転軸169はスライド固定部145、147側に向けて側面板167から突出形成されている。
【0048】
より詳細には、シャッタ107の正面板165は、図3(b)に示すように、回転軸169を中心とした円弧170に沿うような形状(ここでは多角形状)を有しており、この円弧170の半径は、回転軸169とハウジング103の上面との距離以下になっている。これらのことにより、図8(c)に示すように、シャッタ107の正面板165の上面がハウジング103の上面とほぼ同一面となり、ハウジング103から突出しないような構成となっている。
【0049】
また、回転軸169の平面形状は前述のように長円であり、シャッタ107が閉じた状態で、回転軸保持部157、159と短軸が接触するように配置されている。
【0050】
このように、回転軸169を長円にすることにより、真円にする場合と比べて、回転軸保持部157、159に押圧された状態では、外力により容易に滑って回転することはない。
【0051】
一方、シャッタ107の側面板167の端部(回転軸169の下側の端部)は係合部171を形成しており、係合部171は、シャッタ107が閉じた状態でハウジング103のスライド用突起139のシャッタ固定溝141に係合している。
【0052】
保護ブーツ173は、他の光コネクタとの嵌合時に、光学部材101を、ブーツ側コイルバネ179を介して保持することにより抜け止めとして作用する部材であり、図2では2つのブロック状の部材である上側ブーツ175と下側ブーツ177を上下に組み合わせた形状を有している。
【0053】
上側ブーツ175と下側ブーツ177は、正面側に形成されブーツ側コイルバネ179が挿入されるブーツ側凹部181と、正面から背面に貫通して形成され光ファイバ187を通すためのブーツ側貫通孔183が内側の面(組み合わされる面)に設けられており、外側の面には、ハウジング103と嵌合するブーツ側突起185が設けられている。
【0054】
スライダ側コイルバネ109はスライダ105をハウジング103から離れる向き(図1のA1の向き)に押圧する弾性部材であり、ハウジング103の弾性部材収納凹部127、129およびスライダ105のスライド固定部145、147内に収納可能な寸法・形状を有している。
【0055】
スライダ側コイルバネ109はその一端がハウジング103の弾性部材収納凹部127、129の底面に接触し、他端がスライド固定部145、147の正面150、152の内側に接触するように、押し縮められた状態で弾性部材収納凹部127、129(スライド固定部145、147)に収納されており、その弾性復元力によってスライダ105をハウジング103から離れる向き(図1のA1の向き)に常時押圧している。
【0056】
次に、光コネクタ100の組み立ての手順について説明する。
【0057】
まず、シャッタ107をスライダ105に組み付ける。
【0058】
具体的には、シャッタ107の正面板165の内側の面(円弧170の内側に相当する部分)が、スライダ105の底板143と対向する位置で、回転軸169をスライド固定部145、147のスリット153に圧入し、回転軸保持部157、159に係合させる。
【0059】
次に、スライダ105をハウジング103に組み付ける。
【0060】
具体的には、まずハウジング103の弾性部材収納凹部127、129にスライダ側コイルバネ109を挿入し、この状態でスライド固定部145、147の開放面をハウジング103の両端箱型部123、125の正面123a、125aと対向させ、かつ両端箱型部123、125の上面123b、125bとスライド固定部145、147の上面162、164が同じ向きになるようにして、弾性部材収納凹部127、129をスライド固定部145、147に挿入する。
【0061】
すると、ハウジング103上面のスライダ抜止突起137がスライド固定部145、147の上面162、164を乗り越えて長穴161、163に係合され、ハウジング103の両端箱型部123、125がスライド固定部145、147に覆われるようにして両者が係合する。
【0062】
また、底板143の切り曲げ部144が光学部材収納部121の下面を乗り越えて凹部121aと係合する。
【0063】
さらに、シャッタ107の係合部171をハウジング103のスライド用突起139のシャッタ固定溝141に係合させる。
【0064】
この状態では、シャッタ107は閉じた状態となる。
【0065】
また、スライダ105はスライダ側コイルバネ109によってハウジング103から離れる向き(図1のA1の向き)に押圧されているが、スライダ抜止突起137が長穴161、163と係合しており、また、切り曲げ部144が凹部121aの側面と係合しているため、スライダ105がハウジング103から抜けることはない。
【0066】
次に、光ファイバ187が装着された光学部材101を、ハウジング103の背面から、接続面113が正面を向くようにして光学部材収納部121内に挿入する。
【0067】
次に、上側ブーツ175と下側ブーツ177を上下に組み合わせて保護ブーツ173を組み立て、ブーツ側凹部181にブーツ側コイルバネ179を挿入する。
【0068】
最後に、保護ブーツ173をハウジング103の背面から挿入して、ブーツ側コイルバネ179を光学部材101の背面に突き当て、さらにブーツ側突起185をハウジング103内部の図示しない凹部に係合させて固定する。
【0069】
このようにして、図1に示すような光コネクタ100が組み立てられる。
【0070】
なお、組み立ての際には、光学部材101を光学部材収納部121に収納した後に、スライダ105をハウジング103に組みつけてもよい。
【0071】
次に、光コネクタ100を他のコネクタと係合・離脱する際の動作、特にスライダ105とシャッタ107の動作について図4〜図9を参照して説明する。
【0072】
ここでは、光コネクタ100同士を係合させて、図5に示すような光コネクタ装置200とする際の動作を例に説明する。
【0073】
まず、図4に示すように、光コネクタ100同士を、シャッタ107が閉じた状態(図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)の状態)で、スライダ105同士が対向するように、かつガイドピン受133とガイドピン131同士が対向するように配置する。
【0074】
次に、この状態から光コネクタ100同士を図4のA1、A2の向きにそれぞれ移動させ、スライダ105同士を突き合わせる。
【0075】
すると、スライダ105はスライダ側コイルバネ109の弾性力に逆らってハウジング103に近づく向きにスライドする。
【0076】
この際、シャッタ107はスライダ105に保持されているため、スライダ105と共に移動するが、この際、係合部171は、スライド用突起139のシャッタ固定溝141の端部に押されるため、回転軸169を中心にして図8(b)のB1の向きに回転しつつ、シャッタ固定溝141からスライド用突起139のガイド面140に乗り上げる。
【0077】
これにより、図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)に示すように、シャッタ107が開き始め、光学部材101の接続面113が露出し始める。
【0078】
さらに、この際、図6(b)に示すように、ガイドピン受133がスライダ105から露出し、対向するガイドピン131もガイドピン貫通孔149から露出してガイドピン受133のガイドピン挿入穴135に挿入される。
【0079】
ここで、ガイドピン貫通孔149の径はガイドピン受133の径よりも小さいため、ガイドピン受133がスライダ105から露出した後は、ガイドピン受133がスライダ105(スライド固定部145のガイドピン貫通孔149の周囲)と当接し、押圧する。
【0080】
そのため、仮に光コネクタ100同士のスライダ側コイルバネ109のバネ定数が異なり、スライダ側コイルバネ109同士の変形量が異なる場合であっても、確実にスライダ105をスライドさせることができる。
【0081】
さらに押圧を続け、スライダ105がハウジング103に突き当たるとシャッタ107が接続面113から離れるため、図6(c)、図7(c)、図8(c)、図9(c)に示すように、接続面113同士が完全に露出し、突き当たる。
【0082】
突き当たった接続面113同士はブーツ側コイルバネ179の弾性力により密着する。
【0083】
これにより、図5に示すように光コネクタ100同士が接続し、光コネクタ装置200となる。
【0084】
なお、この際の回転軸169の(閉じた状態からの)回転角度は50°程度である。
【0085】
ここで、前述のように、光コネクタ100はスライダ105とスライダ側コイルバネ109が並列配置されているため、スライダ105とスライダ側コイルバネ109を直列に配置する場合と比較して光コネクタ100はスライド量が少なく、小型化が容易である。
【0086】
また、光コネクタ100はシャッタ107の回転軸169が、正面板165の両端よりもハウジング103側で、かつハウジング103の下部側にずらして設けられており、正面板165は、回転軸169を中心とした円弧170に沿うような形状となっている。
【0087】
そのため、正面板165の端部に回転軸169を設ける場合と比べ、シャッタ107の開閉の際の回転角度が小さくなり、(90°未満になり)シャッタ107のスライド方向の移動量が小さくなるため、より光コネクタの小型化が容易である。
【0088】
さらに、光コネクタ100はシャッタ107の回転軸169が長円である。
【0089】
そのため、シャッタ107が開いた状態、閉じた状態のいずれにおいても、回転軸保持部157、159内で回転軸169が滑らないため、シャッタ107の開閉状態を保持するためのバネ等の部材が不要となり、更なる小型化が可能である。
【0090】
なお、光コネクタ100同士の接続を解除して離脱する場合は、接続した状態で、係合時とは逆向きの力を光コネクタ100に加える。
【0091】
すると、まず光学部材101の接続面113同士が離れ、次いでガイドピン受133が相手側のガイドピン131およびスライダ105から離れるため、スライダ105はスライダ側コイルバネ109の弾性力によりハウジング103から離れる向き(図1のA1の向き)に移動する。
【0092】
この際、シャッタ107は、係合部171が、ハウジング103のスライド用突起139のガイド面140上をスライドしながらスライダ105と共に図1のA1の向きに移動し、係合部171がシャッタ固定溝141に達するとシャッタ固定溝141に落ちこむ。
【0093】
この際、回転軸169は回転軸保持部157、159によって長軸方向が上を向くように押圧される、すなわちスリット153の構成によって、回転軸169に弾性力が加わり、シャッタ107が閉じる方向に付勢されるため、図8(b)のB2の向きに回転してシャッタ107が閉じる。なお、ハウジング103のスライド用突起139は、シャッタ固定溝141よりも端部側の部分がガイド面140よりも高い係止部139aを有しているため、シャッタ107がシャッタ固定溝141に落ち込むとシャッタ107の側面板167は係止部139aに突き当たり、それ以上回転しない。
【0094】
最後に、ハウジング103のスライダ抜止突起137がスライダ105の長穴161、163に突き当たり、底板143の切り曲げ部144が光学部材収納部121の凹部121aと係合すると、スライダ105の移動が停止し、係合前の状態に戻る。
【0095】
以上が光コネクタ100を他のコネクタ(接続相手側)と係合・離脱する際の動作である。
【0096】
このように本実施形態によれば、光コネクタ100は、光学部材101を移動可能に保持するハウジング103、ハウジング103にスライド可能に保持されたスライダ105、スライダ105に開閉可能に設けられ、開閉により光学部材101を外部と露出/遮断するシャッタ107、シャッタ107の幅方向に並列配置され、スライダ105をハウジング103から離れる向きに押圧するスライダ側コイルバネ109を有している。
【0097】
そのため、スライダ105とスライダ側コイルバネ109を直列に配置する場合と比較して光コネクタ100はシャッタ107の開閉時のスライド量が少なく、小型化が容易である。
【0098】
また、本実施形態によれば、光コネクタ100は、シャッタ107の回転軸169が、正面板165の両端よりもハウジング103側で、かつハウジングの下部側にずらして設けられており、正面板165は、回転軸169を中心とした円弧170に沿うような形状となっている。
【0099】
そのため、正面板165の端部に回転軸169を設ける場合と比べ、シャッタ107の開閉の際の回転角度が小さくなり、シャッタ107の開閉時のスライド方向の移動量が小さくなるため、より光コネクタの小型化が容易である。
【0100】
さらに、本実施形態によれば、光コネクタ100はシャッタ107の回転軸169が長円であり、かつシャッタ107が閉じた状態では係合部171がシャッタ固定溝141に係合している。
【0101】
そのため、シャッタ107の開閉状態の保持や、回転の際の回転力の付与のためのバネ等の部材が不要となり、更なる小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は当該実施形態に限定されない。
【0103】
当業者であれば、本発明の技術的範囲内において各種の変形例および改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明の範囲に含まれるものと了解される。
【0104】
例えば、上述した実施形態では、光コネクタ100の接続対象として、同一の構造の光コネクタ100を挙げたが、光コネクタ100の接続対象は何らこれに限定されることはなく、スライダ105を押圧可能で、かつ光学部材101の接続面113と光学的に接続可能な構造を持ったものであれば、光コネクタ100と接続することができる。
【0105】
また、上述した実施形態では、スライダ側コイルバネ109が2つ設けられているが、かならずしも2つ必要なわけではなく、少なくともガイドピン131が設けられた側に1つ設けられていればよい。
【0106】
上述した実施形態では、スライド部139は突起形状(スライド用突起)であるが、シャッタ107の側面板167あるいは係合部171が通過可能な溝形状の構造であっても良い。また、当接部141をシャッタ固定溝の一部として用いたが、溝である必要はなくスライド部139の端面を当接部141として用いても良い。溝に形成しない場合には係止部139aの構成は必要ではなく、シャッタ107の下部がスライダ105の底板143と当接するように構成すれば良い。すなわち、係止部139aはあっても無くてもどちらでも良い。
【符号の説明】
【0107】
100 光コネクタ
101 光学部材
103 ハウジング
105 スライダ
107 シャッタ
109 スライダ側コイルバネ(弾性部材)
111 光ファイバ挿入面
113 接続面
115 接続面凸部
117 接続面凹部
119 本体
121 光学部材収納部
121a 凹部
123 両端箱型部
123a 正面
123b 上面
125 両端箱型部
125a 正面
125b 上面
127 弾性部材収納凹部
129 弾性部材収納凹部
131 ガイドピン
133 ガイドピン受
135 ガイドピン挿入穴
137 スライダ抜止突起
139 スライド用突起(スライド部)
139a 係止部
140 ガイド面
141 シャッタ固定溝(当接部)
143 底板
144 切り曲げ部
145 スライド固定部
147 スライド固定部
149 ガイドピン貫通孔
150 正面
151 ガイドピン受貫通孔
152 正面
153 スリット
157 回転軸保持部(保持部)
159 回転軸保持部(保持部)
161 長穴
162 上面
163 長穴
164 上面
165 正面板
167 側面板
169 回転軸
170 円弧
171 係合部
173 保護ブーツ
175 上側ブーツ
177 下側ブーツ
179 ブーツ側コイルバネ
181 ブーツ側凹部
183 ブーツ側貫通孔
185 ブーツ側突起
187 光ファイバ
200 光コネクタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材を保持するハウジングと、
前記ハウジングにスライド可能に保持されたスライダと、
前記スライダに開閉可能に設けられ、開閉により前記光学部材を外部と露出/遮断するシャッタと、
前記スライダを前記ハウジングから離れる向きに押圧する弾性部材と、
を有し、
前記弾性部材が少なくとも一つ前記シャッタの幅方向に配置され、
前記スライダが前記弾性部材の弾性力により、前記ハウジングから離れる向きに移動することにより前記シャッタが閉じ、
前記スライダが前記弾性部材の弾性力に逆らって、前記ハウジングに近づく向きに移動することにより前記シャッタが開くように構成したことを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記シャッタは、
前記光学部材を覆う板状の正面板と、
前記正面板の両端に設けられた側面板と、
前記側面板に、前記正面板の両端よりも前記ハウジング側で、かつハウジングの下部側にずらして設けられ、前記スライダに回転可能に保持された回転軸と、
を有し、
前記回転軸を中心に回転することにより、前記シャッタが開閉することを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記スライダは、
前記シャッタの前記回転軸を挟み込んで保持する一対の保持部を有し、
前記回転軸は長円形状を有することを特徴とする請求項2記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記回転軸は、楕円形状もしくはトラック形状を有することを特徴とする請求項3記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、コの字型の平面形状を有する本体を有し、前記本体のコの字の内側の対向面には、互いに対向するように設けられ、前記スライド方向と平行なガイド面と、前記ガイド面から落ち込むような当接部を有するスライド部を有し、
前記シャッタの前記側面板は、閉じた状態で前記当接部と係合する係合部を有し、
前記スライダが前記弾性部材の弾性力に逆らって、前記ハウジングに近づく向きに移動することにより、前記係合部が前記当接部から離れて前記ガイド面に乗り上げて移動することにより、前記シャッタが前記回転軸を中心に回転して開くことを特徴とする請求項3または4のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記スライダは、板状の底板と、底板の両側面に設けられ、少なくとも前記ハウジングのコの字の正面と対向する面が開放され、前記コの字の両端の2辺に相当する部分を覆うような箱型の形状を有する一対のスライド固定部を有し、
一対の前記スライド固定部は、互いに対向する面にスリットが形成され、前記スリットの両側面が一対の前記保持部を構成していることを特徴とする請求項5記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングは、
前記コの字の両端の2辺に相当する部分の一方に設けられたガイドピンと、
前記コの字の両端の2辺に相当する部分の他方に設けられ、ガイドピンと係合可能なガイドピン受と、
を有し、
前記スライダは、
一対の前記スライド固定部の一方に設けられ、前記ガイドピン受が挿通されるガイドピン受貫通孔と、
一対の前記スライド固定部の他方に設けられ、前記ガイドピンが挿通され前記ガイドピン受貫通孔の径より小さい径のガイドピン貫通孔と、
を有し、
前記スライダが移動した際に、前記ガイドピン受及び前記ガイドピンが前記ガイドピン受貫通孔及び前記ガイドピン貫通孔からそれぞれ露出することを特徴とする請求項6記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記シャッタの前記正面板は、前記回転軸を中心とする円弧に沿うような側面形状を有し、前記円弧の半径は、前記回転軸と前記ハウジングの上面との距離以下であることを特徴とする請求項6または7のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記弾性部材はコイルバネであり、その両端が、前記ハウジングの前記コの字の両端の2辺に相当する部分の少なくとも一方と、前記スライド固定部の少なくとも一方に接触するように設けられ、前記スライド固定部を前記ハウジングから離れる向きに押圧していることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記シャッタが閉じたとき、前記シャッタの前記側面板と突き当たる係止部を有することを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項11】
前記弾性部材を一対有し、一対の前記弾性部材が前記シャッタの幅方向に並列配置されたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項12】
請求項7に記載の光コネクタを2つ有し、
2つの前記光コネクタのうち、一方の前記光コネクタの前記スライダから露出した前記ガイドピン受が、他方の前記光コネクタの前記スライド固定部の前記ガイドピン貫通孔の周囲と当接して、前記ガイドピン受が前記スライド固定部を押圧することによって、光コネクタの前記スライダが移動し、2つの前記光コネクタが接続された構成を有することを特徴とする光コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−185316(P2012−185316A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48214(P2011−48214)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】