説明

光スイッチ素子及びその光スイッチ素子からなる光スイッチ

【課題】従来は、光学部品点数が多いという課題があった。
【解決手段】 第1に、光路の角度を変えるための固定反射素子と、前記固定反射素子へ光路を平行移動し更に前記固定反射素子により角度を変えた光路を平行移動するためのするための1対の平行反射面を持つ可動光路平行移動素子を、夫々形成し、前記可動光路平行移動素子を、駆動手段を用いて光路上に出し入れすることにより、光路を切り替える光スイッチ素子において、前記可動光路平行移動素子を、平行四辺形の四角柱プリズムにした光スイッチ素子で、第2に、第1において、固定反射素子に入射する光路と、前記固定反射素子によって反射した光路のなす角を鋭角にした光スイッチ素子で、第3、第4としては、夫々、第1と第2の光スイッチ素子N個を、1列またはM列に配置した(1×NまたはM×N)光スイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路を切り替えるための光スイッチに使用され、光学素子と駆動装置の厳しい加工精度並びに位置角度決めにおける従来の厳しい精度要求に対して、大幅な精度緩和を可能にし、かつ光学部品点数が少なくて実装面積を小さくすることができ、結果として、低コストかつ低損失で、歩留りの高い光スイッチ素子及びその光スイッチ素子からなる光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光スイッチ1″は、図4に示すように、基盤7″には入力コリメータ16″と出力コリメータ17″が配置され、駆動ソレノイド5″を上下させて、可動反射ミラー9″を入力光路と出力光路の交差部に出し入れすることにより光スイッチ動作を行う(例えば、非特許文献1参照)。このような従来の光スイッチ1″の欠点は、図から明らかなように可動反射ミラー9″のような反射素子を動かすために、可動反射ミラー9″や駆動装置5″に加工精度や位置角度決めに極めて厳しい精度が要求されるという欠点があった。
【0003】
【非特許文献1】山本尚生、他2名、「10×10マトリクス光スイッチの試作」電子通信学会論文誌 '81/12 VOLJ64ーC NO12.P819〜826
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、我々が先に出願した特願2003−287166号公報に示すように、従来、可動であった反射素子を固定にし、位置角度決めの精度が緩い光路平行移動素子を可動にすることにより、殆ど上記従来技術の課題を解決することが可能になったが、光学部品点数が多いという課題は残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するために、鋭意検討した結果、
第1実施例としては、光路の角度を変えるための固定反射素子と、前記固定反射素子へ光路を平行移動し更に前記固定反射素子により角度を変えた光路を平行移動するためのするための1対の平行反射面を持つ可動光路平行移動素子を、それぞれ形成し、前記可動光路平行移動素子を、駆動手段を用いて光路上に出し入れすることにより、光路を切り替える光スイッチ素子において、前記可動光路平行移動素子を、平行四辺形の四角柱プリズムにした光スイッチ素子で、
第2実施例としては、第1実施例において、固定反射素子に入射する光路と、前記固定反射素子によって反射した光路のなす角を鋭角にしたことにより、光入出力を同じ側から実装することが可能になり、実装面積を小さくすることができる光スイッチ素子で、
第3実施例としては、第1実施例と第2実施例の光スイッチ素子N個を、1列に配置した1×N光スイッチで、
第4実施例としては、第1実施例と第2実施例の光スイッチ素子N個を、M列にしてマトリクス状に配置したM×N光スイッチである。
【発明の効果】
【0006】
光学素子と駆動装置の厳しい加工精度と位置角度決めにおける従来の厳しい精度要求に対して、大幅な精度緩和を可能にし、かつ光学部品点数が少なくて実装面積を小さくすることができ、結果として、低コストかつ低損失で、歩留りの高い光スイッチを提供することが可能になる。
という優れた効果があるので、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の光スイッチ素子1の実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
始めに、第1実施例は、光路の角度を変えるための固定反射素子と、前記固定反射素子へ光路を平行移動し更に前記固定反射素子により角度を変えた光路を平行移動するためのするための1対の平行反射面を持つ可動光路平行移動素子を、それぞれ形成し、前記可動光路平行移動素子を、駆動手段を用いて光路上に出し入れすることにより、光路を切り替える光スイッチ素子において、前記可動光路平行移動素子を、平行四辺形の四角柱プリズムにした光スイッチ素子である。光路2がプリズム3やミラー4を通過した状態の説明図を図1(イ)に、光路2が、プリズム3やミラー4を通過しないで直進した状態の説明図を図1(ロ)に示す。図から明らかなように、本発明の光スイッチ素子1は、光路を平行移動する可動平行四辺形プリズム3と、光路を直角に曲げる固定反射ミラー4と、可動平行四辺形プリズム3を動かす駆動ソレノイド5と、可動平行四辺形プリズム3に駆動ソレノイド5の動力を伝えるシャフト8と、固定反射ミラー4を固定する基盤7のそれぞれで構成される。このような構成であるので、光路2は、可動平行四辺形プリズム3によって平行移動し、固定反射ミラー4に入力され、角度を変えた後、再び可動平行四辺形プリズム3に入力され、可動平行四辺形プリズム3によって光路を平行移動して出力される。また、駆動装置として、駆動ソレノイド5を用いたが、別の駆動手段でも良い。また、本実施例では、可動平行四辺形プリズム3の移動方向は、上下方向で説明しているが、横方向もしくは回転移動でも構わない。
【実施例2】
【0009】
第2実施例としては、図1(イ)、(ロ)に示すように、第1実施例において、固定反射素子に入射する光路と、前記固定反射素子によって反射した光路のなす角を鋭角にしたことにより、光入出力を同じ側から実装することが可能になり、実装面積を小さくすることができる光スイッチ素子である。
【実施例3】
【0010】
第3実施例としては、第1と第2の光スイッチ素子N個を、1列に配置した1×N光スイッチである。図において、本発明光スイッチ素子1が4個並んだ1×4光スイッチにおいて、入力コリメータ16から出た光路2が4個ある本発明光スイッチ素子1の1つによって出力コリメータ17へ入る状態の説明図を図1(ハ)に示す。図から明らかなように、本発明の1×N光スイッチは、1列に並んだ本発明光スイッチ素子1と、1列の入力コリメータ16と、N本の出力コリメータ17から構成される。このような構成であるので、入力コリメータ16から出た光路2は、光路2上に可動平行四辺形プリズム3がない光スイッチ素子1を通過し、光路2上に可動平行四辺形プリズム3がある光スイッチ素子1によって進路が変わり、出力コリメータ17へ挿入される。また、入力コリメータ16と出力コリメータ17は同じ側に実装できるため、実装面積を小さくすることができる。
【実施例4】
【0011】
第4実施例としては、第1と第2の光スイッチ素子N個を、M列にしてマトリクス状に配置したM×N光スイッチである。本発明光スイッチ素子1が2×2のマトリクス状に4個並んだ2×2光スイッチにおいて、入力コリメータ16から出たそれぞれの光路2が、本発明光スイッチ素子1によって、出力コリメータ17に挿入される状態の説明図を図1(二)、(ホ)にそれぞれ示す。図から明らかなように、本発明のM×N光スイッチは、M×Nのマトリクス上に並んだ本発明光スイッチ素子1と、M列の入力コリメータ16と、N本の出力コリメータ17から構成される。このような構成であるので、M列の入力コリメータ16とN本の出力コリメータ17の光路の交差部にある光スイッチ素子1の可動平行四辺形プリズム3が光路上に移動することにより、その対応する入力コリメータ16から出た光が、その対応する出力コリメータ17へ挿入される。また、入力コリメータ16と出力コリメータ17は同じ側に実装できるため、実装面積を小さくすることができる。
【0012】
次に、本発明スイッチ素子1の可動部に使用される1対の平行反射面を持つ光路平行移動素子として平行四辺形プリズムを例に挙げ、この平行四辺形プリズムの位置ずれについての説明図を図2(イ)に示す。図において、本発明の可動部で用いている平行四辺形プリズムの位置ずれなし状態12での光路10と、位置ずれあり状態13での光路11を示す。このように、平行四辺形プリズムの位置がずれを起こしても、平行四辺形プリズムに入出力される光路に位置ずれや角度ずれはほとんど生じない。また、これはすべての方向の位置ずれについても同様である。
続いて、本発明の可動部に使用される平行四辺形プリズムの角度ずれについての説明図を図2(ロ)に示す。図において、本発明の可動部で用いている平行四辺形プリズムの角度ずれなし状態14での光路10と、位置ずれあり状態15での光路11を示す。このように、光路平行移動移動素子の角度がずれを起こしても、平行四辺形プリズムに入出力される光路に位置ずれや角度ずれはほとんど生じない。また、これはすべての方向の角度ずれについても同様である。
以上のように、本発明の可動部に使用される1対以上の平行反射面持つ光路平行移動素子は、従来の可動部に用いられる反射素子に比べて、可動時における位置及び角度精度が大幅に緩くなっている。
【0013】
本発明スイッチ素子1の実施例では、固定反射ミラーと可動平行四辺形プリズム3を代表例に取り説明したが、固定反射ミラー4は、必ずしもミラーである必要はなく、例えば、ペンタプリズムや波長分波フィルタのように、光路の角度を変えるものであれば構わない。また、可動平行四辺形プリズム3は、必ずしもプリズムである必要はなく、例えば、2枚のミラーを平行に対面配置したもののように、光路を平行に移動するものであれば構わない。この様に本発明は各種の変形を含むものであることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0014】
光路を切り替えるために用いる光スイッチに使用され、従来の厳しい精度要求に対して、大幅な精度緩和を可能にし、かつ光学部品の削減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(イ)は、本発明の第1、第2実施例の光スイッチ素子1で、光路2が、プリズム3やミラー4を通過した状態の説明図で、(ロ)は、本発明の第1、第2実施例の光スイッチ素子1で、光路2が、プリズム3やミラー4を通過しないで直進した状態の説明図で、(ハ)は、本発明の第3実施例の1×N光スイッチ1Aで、N個の光スイッチ素子1を1列に配置した状態の説明図で、(ニ)は、本発明の第4実施例のM×N光スイッチ1Bで、内側同士及び外側同士の入出力コリメータがつながった状態の説明図で、(ホ)は、本発明の第4実施例のM×N光スイッチ1Bで、手前同士及び奥同士の入出力コリメータがつながった状態の説明図である。
【図2】(イ)は、本発明の可動部に使用される光路平行移動素子の位置ずれについての説明図で、(ロ)は、本発明の可動部に使用される光路平行移動素子の角度ずれについての説明図である。
【図3】(イ)は、我々が先に出願した光スイッチ素子1′の実施例で、光路2′が、プリズム3′やミラー4′を通過した状態の説明図で、(ロ)は、我々が先に出願した光スイッチ素子1′の実施例で、光路2′が、プリズム3′やミラー4′を通過しないで、直進した状態の説明図である。
【図4】従来の光スイッチ素子1″の実施例で、光路2″が、可動反射ミラー9″を通過した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0016】
1 本発明の光スイッチ素子
1A 本発明の1×N光スイッチ
1B 本発明のM×N光スイッチ
2 光路
3 可動平行四辺形プリズム
4 固定反射ミラー
5 駆動ソレノイド
7 基盤
8 シャフト
10 光学素子が所定の位置及び角度にあるときの光路
11 光学素子が所定の位置または角度にないときの光路
12 位置または角度ずれなし可動平行四辺形プリズム
13 位置または角度ずれあり可動平行四辺形プリズム
1′ 我々が既に出願した光スイッチ素子
2′ 光路
3A′可動第1光路平行移動プリズム
3B′可動第2光路平行移動プリズム
4′ 固定反射ミラー
5′ 駆動ソレノイド
6′ 可動ブロック
7′ 基盤
8′ シャフト
1″ 従来の光スイッチ素子
2″ 光路
5″ 駆動ソレノイド
7″ 基盤
8″ シャフト
9″ 可動反射ミラー
16″入力コリメータ
17″出力コリメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路の角度を変えるための固定反射素子と、前記固定反射素子へ光路を平行移動し更に前記固定反射素子により角度を変えた光路を平行移動するためのするための1対の平行反射面を持つ可動光路平行移動素子を、それぞれ形成し、前記可動光路平行移動素子を、駆動手段を用いて光路上に出し入れすることにより、光路を切り替える光スイッチ素子において、前記可動光路平行移動素子を、平行四辺形の四角柱プリズムにしたことを特徴とする光スイッチ素子。
【請求項2】
請求項1において、固定反射素子に入射する光路と、前記固定反射素子によって反射した光路のなす角を鋭角にしたことを特徴とする光スイッチ素子。
【請求項3】
請求項1と請求項2の光スイッチ素子N個を、1列に配置したことを特徴とする1×N光スイッチ。
【請求項4】
請求項1と請求項2の光スイッチ素子N個を、M列にしてマトリクス状に配置したことを特徴とするM×N光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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