説明

光ディスクシステムの信号処理装置

【課題】光ディスク再生処理に適した光ディスクシステムの信号処理装置を提供する。
【解決手段】アナログ信号処理部とデジタル信号処理部とを有した光ディスクシステムの信号処理装置において、前記アナログ信号処理部は、光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを、所定の基準レベルへと一致させるべく可変利得に基づいて増幅する利得可変増幅部を有しており、前記デジタル信号処理部は、前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号をサンプリングしてA/D変換を行うA/D変換部と、前記A/D変換後の光検出信号のレベルと前記基準レベルとの比較を行う比較部と、前記比較の結果に応じてカウンタクロックをもとにカウントアップ又はカウントダウンを行うカウンタによって構成され、前記カウンタのカウント値に基づいて前記可変利得を調整する利得調整部と、を有しており、前記A/D変換におけるサンプリング周波数と前記カウンタクロックのクロック周波数の比率を可変させること、とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクシステムの信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光源・レンズ・光検出器等を組み合わせた光学系を利用して、光ディスクへの情報の記録又は再生を行う装置である。この光ピックアップによって光ディスクから得られる信号(以下、『光検出信号』と称する。)は、光ディスクの反射率等の特性ばらつき、光ピックアップの光検出器を含めた光学系の製造ばらつき、記録・再生・消去の動作モードの違いに基づく光量変化等によってレベル変動が生じ得る。このため、光ディスク記録又は再生を行う光ディスクシステムでは、通常、光検出信号のレベルを所定の基準レベルへと一致させるべくAGC(Auto Gain Control)回路(例えば、以下に示す特許文献1参照。)が設けられる。
【0003】
図7は、従来のAGC回路40を有する光ディスクシステムの構成を示す図である。光ディスク10上に記録された情報が光ピックアップ20によってレーザ光の戻り光として読み出され、さらに光電変換することによって光検出信号が得られる。この光検出信号は、DSP50における様々な光ディスク再生処理(デコード処理、サーボ処理等)を行うための信号源となり、この光検出信号からはRF信号、FE(Focus Error)信号、TE(Tracking Error)信号等が生成されることとなる。
【0004】
なお、光ピックアップ20によって検出された段階での光検出信号のレベルは微小であるため、前段増幅器30によって後段のDSP(Digital Signal Processor)50等が取り扱い可能なレベルにまで増幅される。そして、前段増幅器30によって増幅された光検出信号がAGC回路40へと供給されてレベル変動が吸収される。この結果、略一定なレベルに安定化した光検出信号がDSP50へと供給され、光ディスク10に応じたデコード処理が施された後に、スピーカ60等へ再生信号(オーディオ信号、CD−ROM信号、ビデオ信号等)が出力されるのである。
【0005】
なお、AGC回路40は、制御電圧に応じた可変利得によって光検出信号を増幅又は減衰するVCA(Voltage Control Amplifier)41と、VCA41の出力を検波する検波器42と、検波器42において検波されたVCA41の出力を所定の基準レベルへと一致させるべくVCA41への制御電圧を生成してVCA41へと供給するVCA制御回路43と、を有したアナログ回路によって構成される。また、VCA制御回路43における基準レベルは、通常、電源電圧VCCを所定分圧した内部生成電圧が用いられる。
【特許文献1】特許第3272003号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図7に示したAGC回路40のような光検出信号のレベルを安定化させる従来の仕組みでは、光ディスクや光ピックアップの環境条件等による特性ばらつきや、光ディスク上の汚れや傷などによる反射光量の変化など、様々なノイズ要因によって光検出信号の予期せぬレベル変動が生じ得る。しかし、従来の仕組みでは、アナログ回路構成によって仕様が固定された状態にあるため、光検出信号の予期せぬレベル変動に対処できる程の柔軟性に乏しく、この結果として、光検出信号を用いた光ディスク再生処理が適切に行えないという課題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための主たる本発明は、アナログ信号処理部とデジタル信号処理部とを有した光ディスクシステムの信号処理装置において、前記アナログ信号処理部は、光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを、所定の基準レベルへと一致させるべく可変利得に基づいて増幅する利得可変増幅部を有しており、前記デジタル信号処理部は、前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号をサンプリングしてA/D変換を行うA/D変換部と、前記A/D変換後の光検出信号のレベルと前記基準レベルとの比較を行う比較部と、前記比較の結果に応じてカウンタクロックをもとにカウントアップ又はカウントダウンを行うカウンタによって構成され、前記カウンタのカウント値に基づいて前記可変利得を調整する利得調整部と、を有しており、前記A/D変換におけるサンプリング周波数と前記カウンタクロックのクロック周波数の比率を可変させること、とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ディスク再生処理に適した光ディスクシステムの信号処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<光ディスクシステム>
図1をもとに、本発明の一実施形態にかかる光ディスクシステムの構成/動作を説明する。
CD規格(CD−ROM、CD−R/RW等)やDVD規格(DVD±R/RW、DVD−RAM)等に準拠した光ディスク10に対して記録/再生を行う光ディスクシステムは、光ピックアップ20と、光ディスク用信号処理LSI70と、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する。)200と、フォーカス/トラッキング/スピンドル等の各種サーボ制御用アクチュエータ及びそのドライバ回路(いずれも不図示)と、スピーカ60等の再生出力装置、によって構成される。
【0010】
光ピックアップ20は、光源・レンズ・光検出器等を組み合わせた光学系を利用して、光ディスク10への情報の記録/再生を行う装置である。この光ピックアップ20によって、光ディスク10上に記録された情報がレーザ光の戻り光として読み出され、さらに光電変換することによって光検出信号が得られる。なお、この光検出信号は、デジタル信号処理部90における様々な再生系のデジタル処理を行うための信号源となり、この光検出信号からRF信号、FE信号、TE信号等が生成される。
【0011】
マイコン200は、光ディスクシステム全体の制御を司るものである。マイコン200は、特に、VCA82出力の安定化の判定基準となる基準レベルを格納する基準レベル・レジスタ201と、光ディスク用信号処理LSI70における各種タイミングを制御するためのタイミング制御部202、を有する。
【0012】
なお、タイミング制御部202において制御される光ディスク用信号処理LSI70内部のタイミング信号の例としては、VCA82への制御電圧を生成すべくVCA制御部95に供給されるカウンタクロックや、A/D変換部94におけるサンプリングを制御するためのA/Dサンプリング制御信号や、D/A変換部93におけるサンプリングを制御するためのD/Aサンプリング制御信号等、とする。すなわち、タイミング制御部202は、前述したようなタイミング信号を制御するための情報(以下、タイミング制御情報と称する。)を、マイコンインタフェース部97を介してタイミング信号生成部96へと供給するのである。
【0013】
光ディスク用信号処理LSI70は、アナログ信号処理部80及びデジタル信号処理部90をCMOSプロセス技術によって1チップのCMOSデバイスに集積化した集積回路のことである。なお、アナログ信号処理部80とデジタル信号処理部90をそれぞれ別個のチップとして実施してもよいが、図1に示すように1チップ化することによって、低消費電力化、チップ面積の削減、コストダウン等が図られる。
【0014】
アナログ信号処理部80は、光ピックアップ20において検出された光検出信号の波形整形や、光ピックアップ20のレーザ発光出力のAPC(Automatic Power Control)等といったアナログ信号処理を行う。なお、図1に示すアナログ信号処理部80は、特に、光検出信号のレベル変動を補償(吸収)するための仕組みとして、前段増幅部81、VCA82、ピークレベル検出部83、デコーダ84、を有することとする。
【0015】
前段増幅部81は、光ピックアップ20とVCA82との間、すなわちVCA82の前段に設けられ、光ピックアップ20によって光ディスク10から得られる光検出信号のレベルを、光ディスク用信号処理LSI70が取り扱い可能なレベルにまで増幅するものである。
VCA82は、制御電圧に応じた可変利得によって光検出信号のレベルを増幅又は減衰する。なお、VCA82は本発明に係る『利得可変増幅部』の一実施形態である。
ピークレベル検出部83は、VCA82出力のピークレベルを検出する。なお、ピークレベル検出部83以外にも、VCA82出力のボトムレベルを検出する仕組みや、VCA82出力のピークレベルからボトムレベルでの差分レベルである波高レベルを検出する仕組みを採用しても勿論よい。
デコーダ84は、VCA制御部95から出力される制御信号をデコードして、VCA82を制御するための制御電圧を生成するものである。
【0016】
デジタル信号処理部90は、EFM又はEFMPLUS復調や誤り訂正等のデコード処理やフォーカス/トラッキング等のサーボ制御等といった再生系のデジタル信号処理や、EFM変調や誤り訂正符号化等のエンコード処理やライトストラテジ制御等といった記録系のデジタル信号処理を行う。なお、デジタル信号処理部90の機能は、所謂DSPのハードウェアや、DSPのMAC(Multiply and Accumulation)を利用したDSP専用プログラムとして実施される。
【0017】
デジタル信号処理部90は、特に、再生系のデジタル信号処理を行う仕組みとして、波形整形部91、デコード処理部92、D/A変換部93を有しており、光検出信号のレベル変動を吸収するための仕組みとして、A/D変換部94、VCA制御部95を有しており、さらに、タイミング信号生成部96、マイコン200との信号の授受を行うマイコンインタフェース部97、を有することとする。
【0018】
まず、デジタル信号処理部90における再生系のデジタル信号処理を行う仕組みについて説明する。波形整形部91は、VCA82出力を2値化することによってEFM又はEFMPLUS信号へと変換する。デコード処理部92は、EFM又はEFMPLUS信号に対して光ディスク10の規格に応じた所定のデコード処理を施す。このデコード処理によって得られる再生信号として、例えば、Lch/Rchのオーディオ信号が、D/A変換部93によってアナログ信号へ変換されてスピーカ60へと出力される。
【0019】
つぎに、デジタル信号処理部90における光検出信号のレベル変動を吸収するための仕組みについて説明する。まず、VCA制御部95では、マイコン200によって基準レベルが予め設定された場合とする。また、A/D変換部94では、ピークレベル検出部83において検出されたVCA82出力のピークレベルが、マイコン200から供給されたA/Dサンプリング制御信号に基づいてサンプリングされるとともに、所定の量子化数に基づいて量子化が行われることとなる。なお、以下の説明では、特に断らない限り、「VCA82出力のピークレベル」とは、A/D変換部94においてサンプリング及び量子化された後のVCA82出力のピークレベルのこととする。
【0020】
ここで、VCA制御部95は、VCA82出力のピークレベルが基準レベル以下であるときにはVCA82に供給する制御電圧を1ステップ上昇させ、VCA82出力のピークレベルが基準レベルを超えるときにはVCA82に供給する制御電圧を1ステップ降下させる。このようなVCA制御を繰り返し行うことによって、光検出信号のレベル変動が吸収されるのである。
【0021】
つぎに、タイミング信号生成部96について説明する。タイミング信号生成部96は、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して供給されたタイミング制御情報に基づいて光ディスク用信号処理LSI70内部の各種タイミング信号を生成するものである。なお、タイミング信号生成部96において生成されるタイミング信号としては、前述したように、VCA制御部95へと供給されるカウンタクロック、A/D変換部94におけるサンプリングを制御するためのA/Dサンプリング制御信号等である。
【0022】
ここで、タイミング信号生成部96において生成されるカウンタクロックとしては、予め定められた複数のカウンタ周波数のいずれか一つが任意に設定されることとする。この場合、タイミング信号生成部96は、例えば、電圧制御発振器と、分周数を設定可能な分周器と、位相比較器等によって構成される周知なPLL回路によって構成され、PLL回路の電圧制御発振器の発振出力からカウンタクロックが得られることとなる。すなわち、PLL回路の分周器における分周数を可変させることで、カウンタクロックのクロック周波数(以下、カウンタクロック周波数と称する。)を任意に設定することができるのである。
【0023】
また、タイミング信号生成部96において生成されるA/Dサンプリング制御信号としては、所定のサンプリング周波数が任意に設定されることとする。
【0024】
<VCA制御部>
図3を適宜参照しつつ、図2をもとに、本発明の一実施形態に係るVCA制御部95の構成/動作について説明する。なお、VCA制御部95は本発明に係る『利得調整部』の一実施形態である
図2に示すように、VCA制御部95は、比較部951、カウンタ952によって構成される。
比較部951は、A/D変換部94から供給されたVCA82出力のピークレベルと、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して供給された基準レベルと、の比較を行う。比較部951は、図3に示すように、VCA82出力のピークレベルが基準レベル以下である場合にはカウンタ952をカウントアップモードとさせるためのHレベルを出力する。一方、VCA82出力のピークレベルが基準レベルを超える場合にはカウンタ952をカウントダウンモードとさせるためのLレベルを出力する。
カウンタ952は、アップ/ダウンカウンタによって構成されており、比較部951出力を入力するためのU/D端子、タイミング信号生成部96から出力されたカウンタクロックを入力するためのCLK端子、カウントアップ/ダウンさせたカウント値を出力するためのQ端子を有する。
カウンタ952は、図3に示すように、比較部951の出力に基づいて、カウントアップ/カウントダウンのいずれかの動作モードとなる。すなわち、カウンタ952は、比較部951の出力がLレベルの場合にはカウントダウンを行い、比較部951の出力がHレベルの場合にはカウントアップを行う。
【0025】
<カウンタクロック周波数とサンプリング周波数の関係>
本発明では、例えば、マイコン200のタイミング制御部202によって、カウンタ952におけるカウンタクロック周波数とA/D変換部94におけるサンプリング周波数との比率を任意に可変させることとする。この場合の光ディスク用信号処理LSI70の動作について、図4、図5、図6に示す具体例をもとに説明する。
【0026】
なお、図4はカウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定した場合であり、図5はカウンタクロック周波数をサンプリング周波数より低い周波数に設定した場合であり、図6はカウンタクロック周波数をサンプリング周波数より高い周波数に設定した場合である。また、図4、図5、図6の図中において、(a)はピークレベル検出部83の出力波形、(b)はA/D変換部94のサンプリング制御信号の波形、(c)は比較部951の出力波形、(d)はカウンタ952のカウンタクロックの波形、(e)はカウンタ952の出力波形を示すこととする。
【0027】
<<カウンタクロック周波数 = サンプリング周波数>>
図4をもとに、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定した場合を説明する。
【0028】
光ピックアップ20によって光ディスク10から情報が読み出された信号のVCA82出力のピークレベルが“A”だったとする。このとき、VCA制御が開始すると、ピークレベル検出部83において検出されるVCA82出力のピークレベルが段階的に上昇し始める。このとき、A/D変換部94では、VCA82出力のピークレベルが、A/Dサンプリング制御信号によって定まるサンプリングポイント毎にサンプリング及び量子化が行われる。また、比較部951では、A/D変換部94と同期して、当該サンプリングポイント毎にVCA82出力のピークレベルと基準レベルとの比較が行われる。
【0029】
カウンタ952では、比較部951における比較結果に基づいて、各サンプリングポイントから若干位相が遅れたサンプリング周波数と同一周波数のカウンタクロックによってカウントアップ又はカウントダウンが行われる。なお、カウンタ952をA/D変換部94及び比較部951と同期させる、すなわちカウンタクロックとA/Dサンプリング制御信号の位相を確実に合わせるべく調整してもよい。このことによって、VCA制御による光検出信号のレベル変化の応答性が向上することとなる。
【0030】
ところで、サンプリングポイントA〜Dでは、VCA82出力のサンプリングされたピークレベルが基準レベル以下であるため、比較部951出力はHレベルを継続する。すなわち、サンプリングポイントA〜Dにおけるサンプリングでは、カウンタ952のカウント値がカウンタクロックによってカウントアップを継続することとなる。
【0031】
サンプリングポイントEでは、VCA82出力のサンプリングされたピークレベルが基準レベルを超えるため、比較部951の出力がHレベルからLレベルへと切り替わり、当該サンプリング周期内のカウンタクロックによってカウンタ952のカウント値がカウントダウンする。サンプリングポイントFでは、VCA82出力のサンプリングされたピークレベルが基準レベル以下となるため、比較部951の出力がLレベルからHレベルへと切り替わり、当該サンプリング周期内のカウンタクロックによってカウンタ952のカウント値がカウントアップする。
【0032】
サンプリングポイントGでは、VCA82出力のサンプリングされたピークレベルが基準レベルを超えるため、比較部951の出力がHレベルからLレベルへと切り替わり、当該サンプリング周期内のカウンタクロックによってカウンタ952のカウント値がカウントダウンする。以後、VCA82出力のサンプリングされたピークレベルが基準レベルを超えた状態を継続するため、カウンタクロックによるカウンタ952のカウント値のカウントダウンが継続することとなる。
【0033】
<<カウンタクロック周波数 < サンプリング周波数>>
図5をもとに、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より低い周波数に設定した場合の例として、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数の「1/2倍」に設定した場合について説明する。
【0034】
図5に示すように、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数の「1/2倍」に設定した場合、A/D変換部94における「2回」のサンプリングに対して、カウンタ952においてカウントアップ又はカウントダウンが「1回」しか行われないこととなる。このため、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定した場合と比較すると、VCA制御による光検出信号のレベル変化の応答性は遅くなる。
【0035】
そこで、例えば、ノイズに起因して光検出信号のピークレベルが突発的であり急峻なパルス状の変化を生じる場合には、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より低い周波数へと意図的に設定することが好ましい。すなわち、VCA82出力のノイズに起因したピークレベルに基づいてカウンタ952が動作する機会、すなわちノイズに追従してVCA制御が行われる機会が減少するのである。
【0036】
<<カウンタクロック周波数 > サンプリング周波数>>
図6をもとに、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より高い周波数に設定した場合の例として、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数の「2倍」に設定した場合について説明する。
【0037】
図6に示すように、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数の「2倍」に設定した場合、A/D変換部94における「1回」のサンプリングに対して、カウンタ952においてカウントアップ又はカウントダウンが「2回」も行われることとなる。つまり、カウンタ952のカウント値の変化量、ひいてはカウンタ952のカウント値に基づいてVCA82に供給される制御電圧の変化量が「2倍」となる。また、言い換えると、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定した場合と比較して、VCA制御における光検出信号のレベル調整の分解能が「1/2倍」となる。
【0038】
すなわち、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定した場合と比較すると、VCA制御による光検出信号のレベル設定精度は悪化し、且つ、VCA制御による光検出信号のレベル変化の応答性は速くなるのである。そこで、例えば、VCA制御を開始した時点において、光検出信号のレベル設定精度は無視し、光検出信号のレベルを急速に目的とする基準レベルへと近づけたい場合には、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より高い周波数へと意図的に設定することが好ましいのである。
【0039】
<効果の実例>
前述した実施形態において、カウンタクロック周波数とサンプリング周波数の比率を可変させるという単純な仕組みによって、例えば、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より低い周波数に設定する場合に、VCA制御による光検出信号のレベル変化の応答性を意図的に遅くすることができ、逆に、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数より高い周波数に設定する場合、VCA制御による光検出信号のレベル設定の精度を意図的に悪くすることができる。すなわち、カウンタクロック周波数とサンプリング周波数の比率を可変させることで、VCA制御による光検出信号のレベル変化の振る舞いを意図的に可変させることができる。また、この結果として、VCA制御による光検出信号のレベル調整の柔軟性を向上させるとともに、VCA制御による光検出信号のレベル調整を適切且つ容易に行うことができる。
【0040】
また、前述した実施形態において、カウンタクロック周波数をサンプリング周波数と等しく設定することによって、VCA82において、光検出信号のレベル設定精度とレベル変化の応答性をバランスよく且つ容易に向上させることができる。
【0041】
また、前述した実施形態において、カウンタクロック周波数のみを可変させる仕組みを採用することによって、サンプリング周波数とカウンタクロック周波数の比率の調整を容易に実現することができる。
【0042】
また、前述した実施形態において、マイコン200のタイミング制御部202によって、光ディスクシステムの仕様に応じた適切なカウンタクロック周波数を容易に設定することができる。
【0043】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ディスクシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるVCA制御部の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるVCA制御部の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるデジタル信号処理部の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるデジタル信号処理部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるデジタル信号処理部の動作を説明するための図である。
【図7】従来の光ディスクシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 光ディスク 20 光ピックアップ
30 前段増幅器 40 AGC回路
41 VCA 42 検波器
43 VCA制御回路 50 DSP
60 スピーカ 70 光ディスク用信号処理LSI
80 アナログ信号処理部 81 前段増幅部
82 VCA 83 ピークレベル検出部
84 デコーダ 90 デジタル信号処理部
91 波形整形部 92 デコード処理部
93 D/A変換部 94 A/D変換部
95 VCA制御部
951 比較部 952 カウンタ
96 タイミング信号生成部 97 マイコンインタフェース部
200 マイコン 201 基準レベル・レジスタ
202 タイミング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号処理部とデジタル信号処理部とを有した光ディスクシステムの信号処理装置において、
前記アナログ信号処理部は、
光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを、所定の基準レベルへと一致させるべく可変利得に基づいて増幅する利得可変増幅部を有しており、
前記デジタル信号処理部は、
前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号をサンプリングしてA/D変換を行うA/D変換部と、
前記A/D変換後の光検出信号のレベルと前記基準レベルとの比較を行う比較部と、
前記比較の結果に応じてカウンタクロックをもとにカウントアップ又はカウントダウンを行うカウンタによって構成され、前記カウンタのカウント値に基づいて前記可変利得を調整する利得調整部と、を有しており、
前記A/D変換におけるサンプリング周波数と前記カウンタクロックのクロック周波数の比率を可変させること、
を特徴とする光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項2】
前記カウンタクロックのクロック周波数を、前記A/D変換におけるサンプリング周波数と等しく設定すること、を特徴とする請求項1に記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項3】
予め定められた前記A/D変換におけるサンプリング周波数に対して、前記カウンタクロックのクロック周波数のみを可変させること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項4】
前記信号処理装置は、光ディスクシステムを統括制御するマイクロコンピュータと接続されており、前記マイクロコンピュータによって可変なクロック周波数を有した前記カウンタクロックが前記利得調整部に供給されること、を特徴とする請求項3に記載の光ディスクシステムの信号処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−24272(P2006−24272A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201034(P2004−201034)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】