光ディスク再生装置および光ディスク再生方法
【課題】多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供する。
【解決手段】光ディスク再生装置100において、光源10は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する。回折型光学素子20は、光源10から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる。ここで回折型光学素子20は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
【解決手段】光ディスク再生装置100において、光源10は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する。回折型光学素子20は、光源10から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる。ここで回折型光学素子20は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置および光ディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Blu−ray(登録商標)に代表されるように、波長405nm帯の青紫色レーザービームを用いて、高密度光情報記録媒体に記録または再生を行う光ディスク装置の民生用機器の商品化が活発に行われている。また、様々な分野でデジタル化が進み、デジタルデータが加速度的に増えている。特に学術、研究分野や法曹分野、図書館等での用途においては、データのアーカイブのために1枚あたり1TB程度の超大容量の光ディスクシステムの開発が望まれている。このようなニーズのひとつの答えとして、高NA(Number of Aperture;開口数)レンズと多層の記録層を使う超大容量の光ディスクシステムが考えられる。具体的には、例えばBlu−rayと同様の技術を用いて、1層25GBの記憶容量の記録層を例えば40層重ねて1TBとすることが考えられる。
【0003】
記録層が多層になると、光ディスクの表面からの深さが異なる複数の記録層において記録または再生することが必要となる。これに関し、特許文献1に記載の光ディスクの記録再生装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−159808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来技術は、例えばCD(Compact Disc)とDVD(Digital Versatile Disc)のように、異なるフォーマットの記録または再生を前提としている。このため、ふたつの焦点を形成する光束の開口数は異なり、それによって形成される光スポットのサイズも異なるので、一方のフォーマットを記録または再生するための光スポットで、他方のフォーマットの記録および再生をすることはできない。
【0006】
また、ひとつのフォーマットで非常に厚い記録層およびカバー層厚を持つディスクでは、コリメーターを移動することでレンズの球面収差補正をおこなっても、十分に補正をしきれない。このため全ての記録層に対して良好な光スポットを形成することは困難である。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のある態様は光ディスク再生装置である。この装置は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する光源と、前記光源から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる回折型光学素子とを備える。ここで前記回折型光学素子は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
本発明のさらに別の態様は光ディスク再生方法である。この方法は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を光源から出射するステップと、出射された光から、第1光スポットおよび第2光スポットを光軸上の異なる位置に生じさせるステップであって、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る光学装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)および(b)は、実施の形態に係る回折型光学素子および光ディスクの構造を模式的に示す図である。
【図3】表1に記載の非球面レンズの収差を補正するために必要な位相差を示す図である。
【図4】図4(a)および(b)は、光スポットに設計基準位置を示す図である。
【図5】図5(a)および(b)は、光スポットの設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。
【図6】図6(a)は、光スポットが第1記録層グループの最表層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。図6(b)は、光スポットが第1記録層グループの最深層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。
【図7】図7(a)は、光スポットが第2記録層グループの最表層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。図7(b)は、光スポットが第2記録層グループの最深層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。
【図8】図8(a)および(b)は、ふたつの光スポットの距離が短い場合の、再生時の状態の一例を示す図である。
【図9】図9は、第1記録層グループの厚さと第2記録層グループの厚さとが等しい厚さのときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図9(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図9(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図10】図10は、第1記録層グループの厚さが第2記録層グループの厚さよりも厚いときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図10(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図10(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図11】図11は、第1記録層グループの厚さよりも第2記録層グループの厚さの方厚いときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図11(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図11(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図12】光ディスクの記録層の厚さの総計と、残留収差との関係を示す図である。
【図13】光ディスクの記録層の厚さの総計と、位相差係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態1に係る光ディスク再生装置100の全体構成を模式的に示す図である。光ディスク再生装置100は、光源10、プリズム12、検出器14、コリメータレンズ16、立ち上げミラー18、回折型光学素子20、光学素子駆動部21、およびコリメータレンズ駆動部22を含む。なお、以下の説明において、Blu−ray規格に対応した光学装置、光ディスク、および光ディスク再生方法を例に説明するが、本発明はこれに限定されず、種々の光ディスク、その光ディスクに対応した光学装置、及びその光ディスクの再生方法でもよい。例えば、CDやDVDでもよい。また、記録済みディスクでもよいし、追記型ディスクや書き換え型ディスクでもよい。
【0013】
光源10は、例えばBlu−rayディスクに代表される光ディスク24に記録/再生(記録または再生)するための高密度記録用の青色光源である。光源10は、例えば波長405nm帯のレーザーを出射する青色LD(Laser Diode)を用いて実現できる。光源10より出射した光ビームは、プリズム12を透過後コリメータレンズ16、回折型光学素子20を通って光ディスク24内の記録層に集光する。なお、立ち上げミラー18は光源10より出射した光ビームの光路を変更するものである。
【0014】
光ディスク24内の記録層で反射した光は、再び回折型光学素子20、コリメータレンズ16を透過後プリズム12で反射され、検出器14に入射する。検出器14は、例えばフォトダイオードであり、検出器14に入射した光は光電変換されて電気信号として検出される。
【0015】
またコリメータレンズ16は、コリメータレンズ駆動部22によって光軸方向に自在に移動できる。これにより回折型光学素子20に対し平行、収束、発散の任意の状態で入射光を制御することができる。コリメータレンズ駆動部22は、Blu−rayディスク用の光学装置に一般的に用いられる駆動機構を用いて実現できる。回折型光学素子20を移動するための光学素子駆動部21も同様に、従来の光学装置で一般的に用いられる駆動機構を用いて実現できる。
【0016】
図2(a)は、本実施の形態に係る回折型光学素子20および光ディスク24の構造を模式的に示す図である。
【0017】
光ディスク24は、例えば一つの記録層はBlu−rayディスクと同じフォーマットで、これを40層重ねて1TBのデータを記録できるように構成されている。より具体的には、光ディスク24は、ディスクの表層側、すなわち回折型光学素子20からの光が入射される側の面に存在する、厚さが100マイクロメートルのカバー層26と、隣接する記録層間の距離が5マイクロメートルとなるよう記録層を40層重ね、全体として200マイクロメートルの厚さとなる記録層群36と、ディスク基板32とを含む。以下説明の便宜上、光ディスク24における光源10からの光が入射される側を「表層側」とよび、その反対側を「深層側」と呼ぶことにする。
【0018】
回折型光学素子20は、第1面34および第2面38とを有する複合レンズの対物レンズを用いることができる。回折型光学素子20は、例えばBlu−rayディスクと同じ0.85の開口数を持つ。第1面34は、回折型光学素子20における収差を補正し、かつ入射された光を光軸上の異なる位置に収束してふたつのスポットを同時に生成するために、表面に回折構造を持つ。
【0019】
第1面34の回折構造は、回折型光学素子20に入射した光によって、ほぼ同じ大きさの二つの光スポットを形成するように構成されている。この二つの光スポットの位置は、回折型光学素子20に入射した光を、ほぼ同じ開口数で、かつ、それぞれの集光位置の深さに応じて球面収差が補正された状態で集光した際の焦点の位置に形成される。
【0020】
ここで、回折型光学素子20によって形成される二つの光スポットのうち、深層側に形成されるスポットを第1光スポット42と呼び、表層側に形成されるスポットを第2光スポット40と呼ぶことにする。また、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第1光スポット42が記録、再生する記録層群を第1記録層グループ28と呼ぶことにする。同様に、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第2光スポット40が記録、再生する記録層群を第2記録層グループ30と呼ぶことにする。さらに、本実施の形態において、第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とを合わせて記録層群36と総称することとする。
【0021】
第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とは、回折型光学素子20の回折構造などを考慮して実験により定めればよい。本実施の形態では、例えば光ディスク24の表層からの深さが100マイクロメートルから200マイクロメートルの範囲に設けた20層の記録層を第1記録層グループ28とし、200マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲に設けた20層の記録層を第2記録層グループ30としているが、これに限定されるものではない。また、本実施の形態では、記録層群36は、光ディスク24の表層からの深さが100マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲に設けられているものとする。
【0022】
回折型光学素子20を、フォーカシングに用いる光学素子駆動部21を使って光軸方向に動かし、これにより、第1光スポット42を用いて第1記録層グループ28のデータの記録/再生を行い、第2光スポット40を用いて第2記録層グループ30のデータの記録/再生を行うことができる。このとき回折型光学素子20を深さ方向に移動することによって光スポットが設計の際に基準とする位置(以下、「設計基準位置」という。)からずれると球面収差が発生するが、コリメータレンズ16を移動して回折型光学素子20に入射する入射光束の平行度を変える、いわゆる有限補正によって球面収差を補正することができる。なお、本実施形態においては、第1光スポット42の位置と第2光スポット40の位置とを結ぶ直線と、光ディスク24の記録層とが直交するように、回折型光学素子20から光ディスク24へと光を出射するものとする。つまり、回折型光学素子20が出射する光の光軸と、光ディスク24の記録層を構成する面とが直交することとなる。
【0023】
なお、第1面34の表面に回折構造が付加されている場合に限らず、第1面34とは別体の回折素子44を第1面34´の近傍に配置した構造であってもよい。このような回折型光学素子20の別の構造を図2(b)に模式的に示す。このように、回折型光学素子20とは、図2(a)に示すように第1面34に回折構造が付加された回折型光学素子20でもよいし、図2(b)に示すように第1面34´と回折素子44が別体の回折型光学素子20でもよい。
【0024】
回折型光学素子20が有する回折構造について説明する。本実施の形態に係る回折構造は、回折型光学素子20に入射された光から+1次回折光と−1次回折光とのふたつの回折光を発生させるとともに、復号レンズである回折型光学素子20の球面収差を補正する。なお、一例として、回折型光学素子20の対物レンズが下記表1に示す非球面係数を持った非球面レンズであるとする。また、第1面34および第2面38の円錐係数はそれぞれ、−1.119、−75.264であるとする。
【0025】
【表1】
【0026】
図3は、表1に記載の非球面レンズの収差を補正するために必要な位相差を示す図である。図3において、横軸は半径を1とする規格化された半径ρであり、縦軸は位相差φである。位相差の単位は光の波長λである。実施の形態に係る回折構造は、光の回折作用を利用して図3に記載の位相差を補正するように設計されており、具体的には同心円状のバイナリ構造となっている。
【0027】
図3に示す位相差φを規格化半径ρの多項式でフィッティングすると、以下の式(1)を得る。
φ=aρ2+bρ4+cρ6+dρ8+eρ10+fρ12+gρ14+hρ16 (1)
式(1)におけるa、b、c、d、e、f、g、およびhはρの各次数における位相差係数と呼ばれ、それらは下記の表2の値となる。
【0028】
【表2】
【0029】
回折構造の深さおよびピッチを変更すると、それによって生じる位相差も変更される。そこで、式(1)または表2に示すように、修正すべき位相差が数式を用いて定式化できれば、そのような位相差を生じさせる回折構造を設計することができる。実施の形態に係る回折構造は、例えば最外周においては18波長分の位相差を補正のために付加することになる。なお、各次数における位相差係数と回折構造とは、おおむね次のような関係がある。すなわち、位相差係数の2次の係数を変更することにより、回折光が収束する位置を制御することができる。また、位相差係数4次および6次の係数を変更することで、球面収差を制御することができる。このように、各次数における位相差係数を変更することで回折構造によって生じる位相差を設計することができる。
【0030】
回折構造に光が入射すると、回折作用によって+1次の回折光と、−1次の回折光とが生じる。実施の形態に係る回折型光学素子20では、+1次の回折光は入射光の光軸に対して拡散する方向に回折し、反対に−1次の回折光は収束する方向に回折する。このため、+1次の回折光は回折作用が無い場合よりも、回折型光学素子20から見て遠方に焦点をむすび、−1次の回折光は回折作用が無い場合よりも、回折型光学素子20から見て手前に焦点をむすぶ。
【0031】
上述したとおり、実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、回折型光学素子20による+1次の回折光を第1記録層グループ28の記録/再生のための第1光スポット42の生成に用い、−1次の回折光を第2記録層グループ30の記録/再生のための第2光スポット40の生成に用いる。なお、この回折次数もこの組み合わせである必要はなく、第1光スポット42を形成する焦点を−1次光、第2光スポット40を形成する焦点を+1次光で生成するように設計しても、上記の位相係数の符号が反対になるだけで、同様の効果を得られる。
【0032】
図4(a)は、第1光スポット42の設計基準位置を示す図である。図4(a)に示すように、回折型光学素子20は、コリメータレンズ16を調整して回折型光学素子20に平行光を入射したときに、第1光スポット42が第1記録層グループ28の中心となるように構成されている。実施の形態においては、カバー層26の厚さが100マイクロメートル、第1記録層グループ28の厚さが100マイクロメートルであるから、第1光スポット42の設計基準位置は、光ディスク24の表層から150マイクロメートルの位置となる。
【0033】
図4(b)は、第2光スポットの設計基準位置を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20は、コリメータレンズ16を調整して回折型光学素子20に平行光を入射したときに、第2光スポット40が第2記録層グループ30の中心となるように構成されている。実施の形態においては、カバー層26の厚さが100マイクロメートル、第1記録層グループ28の厚さが100マイクロメートル、第2記録層グループ30の厚さが100マイクロメートルであるから、第2光スポット40の設計基準位置は、光ディスク24の表層から250マイクロメートルの位置となる。
【0034】
このように構成することにより、一方の光スポットが光ディスク24のいずれかの記録層の位置にあるときに、他方の光スポットは光ディスク24のいずれの記録層にも位置していないような光スポットの位置関係となる。これにより他方の光スポットによるクロストークを防ぎ、安定した記録/再生が可能となる。
【0035】
表1に記載の非球面レンズと表2に記載の回折構造とを持たせた回折型光学素子20による、光ディスク24再生時の面構造を表3および表4に示す。
【0036】
表3は、第1光スポット42が第1記録層グループ28のデータを再生するときの面構成を示す。
【表3】
【0037】
表4は、第2光スポット40が第2記録層グループ30のデータを再生するときの面構成を示す。
【表4】
【0038】
表3および表4より、第1光スポット42が第1記録層グループ28のデータを再生するとき、および第2光スポット40が第2記録層グループ30のデータを再生するときのいずれの状態でも、面の形状や回折面の位相差係数は同じである。ただし、回折面の次数は+1と−1と異なっており、それにしたがって第1光スポット42の位置は第2光スポット40の位置より深層側にできていることがわかる。
【0039】
図5(a)は、第1光スポット42の設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。図5(a)は、第1光スポット42が設計基準位置にあるときは収差がほぼ0であることを示している。
【0040】
図5(b)は、第2光スポット40の設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。図5(b)より、第1光スポット42の場合と同様に、第2光スポット40が設計基準位置にあるときは収差がほぼ0であることが分かる。
【0041】
図6(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最表層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。具体的には、第1光スポット42によって、設計基準位置よりも表層側の位置である、光ディスク24の表層から0.1ミリメートルの位置にある記録層のデータを再生するときの縦収差の状態を示す。この場合、コリメータレンズ16の位置を調整することで回折型光学素子20に収束光を入射し、球面収差を補正する。図6(a)に示すように、第1光スポット42が設計基準位置にある場合(図5(a)に示す場合)よりは大きな縦収差が発生しているが、十分に再生可能な範囲である。
【0042】
図6(b)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最深層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。具体的には、第1光スポット42によって、設計基準位置よりも深層側の位置である、光ディスク24の表層から0.2ミリメートルの位置の記録層のデータを再生するときの縦収差の状態を示す。この場合、コリメータレンズ16の位置を調整することで回折型光学素子20に拡散光を入射して、球面収差を補正する。図6(b)に示すように、第1光スポット42が設計基準位置にある場合(図5(a)に示す場合)よりは大きな縦収差が発生しているが、十分に再生可能な範囲である。
【0043】
図7(a)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最表層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20に収束光を入射して球面収差を補正する。第2光スポット40が設計基準位置にある場合よりは大きな縦収差が発生しているが、光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安である70mλrmsは下回っており、十分に再生可能である。
【0044】
図7(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最深層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20に拡散光を入射して球面収差を補正する。第2光スポット40が設計基準位置にある場合よりは大きな縦収差が発生しているが、光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安は下回っており、再生可能な範囲内である。
【0045】
次に、第1光スポット42と第2光スポット40との距離Lについて説明する。
【0046】
上述したとおり、本実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、光ディスク24の深層側に生成される第1光スポット42を用いて光ディスク24の表層側に存在する第1記録層グループ28の記録/再生を行い、かつ光ディスク24の表層側に生成される第2光スポット40を用いて光ディスク24の深層側に存在する第2記録層グループ30の記録/再生を行うことにより、記録/再生に関与していない光スポットは光ディスク24の記録層に当たらないようになっている。しかし、第1光スポット42と第2光スポット40との距離Lが短い場合、例えば第1光スポット42が第1記録層グループ28の深層側に存在する記録層のデータの記録、再生を行っているときや、第2光スポット40が第2記録層グループ30の表層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに、記録/再生を行っていない他方の光スポットが記録層に当たる場合もありうる。
【0047】
図8(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の深層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに第2光スポット40が第1記録層グループ28の記録層に当たっている様子を示す図である。図8(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の表層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに第1光スポット42が第2記録層グループ30の記録層に当たっている様子を示す図である。図8(a)や図8(b)に示す状態が起こると、クロストークが発生するため問題となる。
【0048】
このような状態を回避するためには、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lを以下ように設定すればよい。すなわち、第1記録層グループ28の厚さをT1とし、第2記録層グループ30の厚さをT2としたとき、T1、T2およびLとの関係が下記式(2)を満たすようにする。
L=(T1+T2)/2+|T1−T2|/2+α (2)
ここで、記録層グループの厚さTは、記録層の数をn、記録層1層分の厚さをβとしたときに、T=n×βと定義する。
【0049】
上記式(2)において、αはクロストークを防止するために定められた基準距離であり、この距離は記録層群36の厚さやレーザーの波長等を考慮して実験により定めればよい。ここで、第1光スポット42と第2光スポット40との距離が近い方が、回折型光学素子20による光学的な球面収差の補正がしやすいことも考慮すると、αの値の一例として記録層1層分〜3層分の厚さとするとよく、望ましくは記録層1層分の厚さβとするとよい。一般に、多層の記録層を持つ光ディスクにおける記録層1層分の厚さは、その厚さ分の距離があればクロストークが発生しないように設計されているからである。
【0050】
以上のように設定することにより、一つの光スポットが記録層グループの最深層を再生している場合でも最表層を再生している場合でも、もう一つのスポットが記録層に当たることはなく、クロストークを防ぐことができる。以下このことについて、図9、図10、および図11を参照しながら、式(2)を具体的に説明する。
【0051】
図9は、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さのときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とがそれぞれ4層の場合を図示している。図9(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図9(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0052】
第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さTのとき、上記の式(2)は、以下の式(2.1)となる。
L=(T+T)/2+|T−T|/2+α=T+α (2.1)
【0053】
図9(a)に示すように、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい場合に、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するとき、第2光スポット40は、第1記録層グループ28から記録層1層分の厚さβだけ表層側に離れた位置に存在することになる。前述したとおり、記録層1層分の厚さβは、その厚さ分の距離があればクロストークが発生しないような厚さに設計されている。このため、第2光スポット40によるクロストークの発生は防止できる。ゆえに、上記の式(2.1)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0054】
図9(b)に示すように、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい場合に、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するとき、第1光スポット42は、第2記録層グループ30とディスク基板32との境界に存在することになる。このため、第1光スポット42によるクロストークは発生しない。ゆえに、上記の式(2.1)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0055】
以上まとめると、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さTである場合、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔L≧Tとすれば、クロストークは発生しない。
【0056】
図10は、第1記録層グループ28の厚さT1が第2記録層グループ30の厚さT2よりも厚いときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28が5層であり、第2記録層グループ30が3層の場合を図示している。図10(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図10(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0057】
第1記録層グループ28の厚さT1が第2記録層グループ30の厚さT2よりも厚いため、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときに、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが十分に離れていないと、クロストークが発生しうる。そこで、図10(a)に示すように、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときに、第2光スポット40が第1記録層グループ28の表層側から、記録層1層分の厚さβ以上離れるようにすればよい。より具体的には、上記の式(2)においてT1>T2を仮定すれば、下記の式(2.2)を得る。
L=(T1+T2)/2+|T1−T2|/2+α
=(T1+T2)/2+(T1−T2)/2+α
=T1+α (2.2)
【0058】
図10(a)に示すように、間隔Lが第1記録層グループ28の厚さT1だけ離れていれば、第2光スポット40が第1記録層グループ28の表層側から、記録層1層分の厚さβ離れることになる。したがって、上記の式(2.2)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0059】
図10(b)は、L=T1の場合において、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図10(b)に示すように、第1光スポット42はディスク基板32内に位置することになるため、クロストークは発生しない。
【0060】
図11は、第1記録層グループ28の厚さT1よりも第2記録層グループ30の厚さT2の方厚いときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28が3層であり、第2記録層グループ30が5層の場合を図示している。図11(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図11(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0061】
第2記録層グループ30の厚さT2が第1記録層グループ28の厚さT1よりも厚いため、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときに、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが十分に離れていないと、クロストークが発生しうる。そこで、図11(a)に示すように、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときに、第1光スポット42が第2記録層グループ30とディスク基板32との境界かそれよりも深層側に位置するようにすればよい。より具体的には、上記の式(2)においてT1<T2を仮定すれば、下記式(2.3)を得る。
L=(T1+T2)/2+(T2−T1)/2+α
=T2+α (2.3)
【0062】
図11(a)に示すように、間隔Lが第2記録層グループ30の厚さT2だけ離れていれば、第1光スポット42が第2記録層グループ30とディスク基板32との境界に位置することになる。したがって、上記の式(2.3)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0063】
図11(b)は、L=T2の場合において、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図11(b)に示すように、第2光スポット40は、第2記録層グループ30の表層側に記録層1層分の厚さβ分よりも離れるため、クロストークは発生しない。
【0064】
以上をまとめると、クロストークの発生を抑制するために、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが満たすべき条件は、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのうち厚い方の厚さをmax(T1,T2)と表すとすると、
L≧max(T1,T2) (3)
となる。
【0065】
式(3)において、等号が間隔Lが満たすべき下限値であり、上記式(2)においてα=0とした場合に相当する。このことは、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔がLである場合、クロストークを抑制しつつ、光ディスク24を記録/再生可能な記録層群36の厚さの最大値は、T1=T2=Lのとき、すなわち2Lであることを意味する。
【0066】
ここで、記録層群36のそれぞれの記録層に物理的な相違はなく、前述したように、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第1光スポット42が記録/再生する記録層群を第1記録層グループ28と定義し、第2光スポット40が記録、再生する記録層群を第2記録層グループ30と定義するものである。したがって、回折型光学素子20を光軸方向に動かす光学素子駆動部21を制御することで、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とは制御可能である。
【0067】
第1光スポット42と第2光スポット40との間隔Lが固定されており、かつ記録層群36の厚さが2L以下であることを前提とする場合、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか一方の厚さがL以下となるように光学素子駆動部21を制御すること、換言すると、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか厚い方の厚さ以上に間隔Lが離れるように光学素子駆動部21を制御することが可能である。光学素子駆動部21をこのように制御することにより、クロストークの発生を抑制しつつ、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することができる。
【0068】
第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが異なるように光学素子駆動部21を制御する場合には、間隔Lが、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか厚い方の厚さ以上離れていれば、クロストークを抑制しつつ記録/再生が可能である。
【0069】
以上、光ディスク再生装置100の回折型光学素子20周辺の構成に的を絞って本発明に係る実施の形態を説明したが、これを搭載する光ディスクシステムは、ディスクを保持して回転、駆動する駆動機構、光ヘッドをディスクの半径方向に移動させるヘッド送り機構、光ヘッドによってディスクから読み出された信号を復号し、復号データのデスクランブル処理、誤り訂正などを通じてデータを再生し、上位装置に転送し、上位装置より転送されたデータを光ヘッド装置によってディスクに記録するために符号化し、スクランブル処理、誤り訂正符号の付加などの信号処理を行う手段、トラッキングサーボ、フォーカシングサーボ、ディスクモータの回転のサーボなどを行うサーボ手段などを備えるが、これらの部分は公知の技術を用いることができ、本発明の要旨ではないので、詳細な説明を省いた。
【0070】
以上説明したように、実施の形態に係る光ディスク再生装置100によれば、多数の記録層を持つ情報記録媒体である光ディスク24のそれぞれの記録層において記録または再生をする技術を提供することができる。単純なバイナリ構造の回折型光学素子20は球面収差の補正された同一の開口数の光スポットを光軸上の異なる位置に同時に出現させるため、例えば液晶素子をアクチュエータに搭載して球面収差を補正するような方法と比較して、製造コストの点で有利である。液晶素子を用いる場合は照射光とディスクからの反射光で偏光の方向が90度変わるため、液晶素子を2枚搭載する必要があるからである。またアクチュエータに液晶素子駆動用の線を複数とおす必要があり、アクチュエータの動作に不利になる。
【0071】
さらに、実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、光ディスク24の表層側に存在する第1記録層グループ28の記録/再生に光ディスク24の深層側に生成される第1光スポット42を利用し、光ディスク24の深層側に存在する第2記録層グループ30の記録/再生に光ディスクの表層側に生成される第2光スポット40を利用するため、光ディスクの表層部と深層部とに存在する記録層群に同時に光スポットが当たることがなく、クロストークを抑制することができる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能である。例えば、記録層群を三つ以上に分けた場合も、記録層群の総厚の中央付近で分けて、表層側を光源から遠い位置に存在する光スポットで再生し、深層側を光源側に存在する光スポットで再生すれば、本発明と同様である。また、より高次の回折次数の光スポットを使ったり、0次光と±1次光の三つの光スポットを光軸方向に生じさせて、そのうちの二つの光スポットを使ったりするなどの変形例も考えられるが、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
また、光ディスク24の表層より100マイクロメートル〜200マイクロメートルの位置に5マイクロメートル間隔の記録層20層からなる第1記録層グループ28を配置し、光ディスク24の表層より200マイクロメートル〜300マイクロメートルの位置に5マイクロメートル間隔の記録層20層からなる第2記録層グループ30を配置する場合について説明したが、各記録層グループの厚さは100マイクロメートルに限られない。ただし、記録層の厚さの総計は240マイクロメートル以下であることがより望ましい。以下、その理由について説明する。
【0074】
図12は、光ディスク24の記録層の厚さの総計、すなわち第1記録層グループ28の厚さと第2記録層グループ30の厚さとの合計と、波面の残留収差との関係を示す図である。図12は、光ディスク24のカバー層26の厚さを100マイクロメートルとして、そこからの記録層の厚さの総計が横軸、コリメータレンズ16を調整して収差補正を行ったときに、残留する収差量が縦軸となっている。図12より、記録層の厚さの総計が240マイクロメートルとなると、残留波面収差が光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安である70mλrmsを超える。したがって、記録層の厚さの総計は240マイクロメートル以下であることが望ましい。
【0075】
図13は、光ディスク24の記録層の厚さの総計と、位相差係数との関係を示す図である。図13は、記録層の厚さの総計が横軸、そのときの位相差係数の値が縦軸となっている。残留波面収差が70mλrmsを超える、記録層の厚さの総計が240マイクロメートルの場合には、2次の位相差係数の値が100となる。したがって、2次の位相差係数は100より大きな値であることが望ましい。また図13より、記録層の厚さの総計と2次の位相差係数との関係は、以下の式(4)となることが望ましい。
2次の位相差係数の変化量/記録層の厚さの総計の変化量=−9.8 (4)
【符号の説明】
【0076】
10 光源、 12 プリズム、 14 検出器、 16 コリメータレンズ、 18 ミラー、 20 回折型光学素子、 21 光学素子駆動部、 22 コリメータレンズ駆動部、 24 光ディスク、 26 カバー層、 28 第1記録層グループ、 30 第2記録層グループ、 32 ディスク基板、 34 第1面、 36 記録層群、 38 第2面、 40 第2光スポット、 42 第1光スポット、 44 回折素子、 100 光ディスク再生装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置および光ディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Blu−ray(登録商標)に代表されるように、波長405nm帯の青紫色レーザービームを用いて、高密度光情報記録媒体に記録または再生を行う光ディスク装置の民生用機器の商品化が活発に行われている。また、様々な分野でデジタル化が進み、デジタルデータが加速度的に増えている。特に学術、研究分野や法曹分野、図書館等での用途においては、データのアーカイブのために1枚あたり1TB程度の超大容量の光ディスクシステムの開発が望まれている。このようなニーズのひとつの答えとして、高NA(Number of Aperture;開口数)レンズと多層の記録層を使う超大容量の光ディスクシステムが考えられる。具体的には、例えばBlu−rayと同様の技術を用いて、1層25GBの記憶容量の記録層を例えば40層重ねて1TBとすることが考えられる。
【0003】
記録層が多層になると、光ディスクの表面からの深さが異なる複数の記録層において記録または再生することが必要となる。これに関し、特許文献1に記載の光ディスクの記録再生装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−159808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来技術は、例えばCD(Compact Disc)とDVD(Digital Versatile Disc)のように、異なるフォーマットの記録または再生を前提としている。このため、ふたつの焦点を形成する光束の開口数は異なり、それによって形成される光スポットのサイズも異なるので、一方のフォーマットを記録または再生するための光スポットで、他方のフォーマットの記録および再生をすることはできない。
【0006】
また、ひとつのフォーマットで非常に厚い記録層およびカバー層厚を持つディスクでは、コリメーターを移動することでレンズの球面収差補正をおこなっても、十分に補正をしきれない。このため全ての記録層に対して良好な光スポットを形成することは困難である。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のある態様は光ディスク再生装置である。この装置は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する光源と、前記光源から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる回折型光学素子とを備える。ここで前記回折型光学素子は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
本発明のさらに別の態様は光ディスク再生方法である。この方法は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を光源から出射するステップと、出射された光から、第1光スポットおよび第2光スポットを光軸上の異なる位置に生じさせるステップであって、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る光学装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)および(b)は、実施の形態に係る回折型光学素子および光ディスクの構造を模式的に示す図である。
【図3】表1に記載の非球面レンズの収差を補正するために必要な位相差を示す図である。
【図4】図4(a)および(b)は、光スポットに設計基準位置を示す図である。
【図5】図5(a)および(b)は、光スポットの設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。
【図6】図6(a)は、光スポットが第1記録層グループの最表層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。図6(b)は、光スポットが第1記録層グループの最深層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。
【図7】図7(a)は、光スポットが第2記録層グループの最表層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。図7(b)は、光スポットが第2記録層グループの最深層位置の再生時の縦収差の状態を示す図である。
【図8】図8(a)および(b)は、ふたつの光スポットの距離が短い場合の、再生時の状態の一例を示す図である。
【図9】図9は、第1記録層グループの厚さと第2記録層グループの厚さとが等しい厚さのときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図9(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図9(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図10】図10は、第1記録層グループの厚さが第2記録層グループの厚さよりも厚いときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図10(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図10(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図11】図11は、第1記録層グループの厚さよりも第2記録層グループの厚さの方厚いときに、第1光スポットと第2光スポットとが取るべき位置関係の一例を示す図である。図11(a)は、第1光スポットが第1記録層グループの最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図11(b)は、第2光スポットが第2記録層グループの最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【図12】光ディスクの記録層の厚さの総計と、残留収差との関係を示す図である。
【図13】光ディスクの記録層の厚さの総計と、位相差係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態1に係る光ディスク再生装置100の全体構成を模式的に示す図である。光ディスク再生装置100は、光源10、プリズム12、検出器14、コリメータレンズ16、立ち上げミラー18、回折型光学素子20、光学素子駆動部21、およびコリメータレンズ駆動部22を含む。なお、以下の説明において、Blu−ray規格に対応した光学装置、光ディスク、および光ディスク再生方法を例に説明するが、本発明はこれに限定されず、種々の光ディスク、その光ディスクに対応した光学装置、及びその光ディスクの再生方法でもよい。例えば、CDやDVDでもよい。また、記録済みディスクでもよいし、追記型ディスクや書き換え型ディスクでもよい。
【0013】
光源10は、例えばBlu−rayディスクに代表される光ディスク24に記録/再生(記録または再生)するための高密度記録用の青色光源である。光源10は、例えば波長405nm帯のレーザーを出射する青色LD(Laser Diode)を用いて実現できる。光源10より出射した光ビームは、プリズム12を透過後コリメータレンズ16、回折型光学素子20を通って光ディスク24内の記録層に集光する。なお、立ち上げミラー18は光源10より出射した光ビームの光路を変更するものである。
【0014】
光ディスク24内の記録層で反射した光は、再び回折型光学素子20、コリメータレンズ16を透過後プリズム12で反射され、検出器14に入射する。検出器14は、例えばフォトダイオードであり、検出器14に入射した光は光電変換されて電気信号として検出される。
【0015】
またコリメータレンズ16は、コリメータレンズ駆動部22によって光軸方向に自在に移動できる。これにより回折型光学素子20に対し平行、収束、発散の任意の状態で入射光を制御することができる。コリメータレンズ駆動部22は、Blu−rayディスク用の光学装置に一般的に用いられる駆動機構を用いて実現できる。回折型光学素子20を移動するための光学素子駆動部21も同様に、従来の光学装置で一般的に用いられる駆動機構を用いて実現できる。
【0016】
図2(a)は、本実施の形態に係る回折型光学素子20および光ディスク24の構造を模式的に示す図である。
【0017】
光ディスク24は、例えば一つの記録層はBlu−rayディスクと同じフォーマットで、これを40層重ねて1TBのデータを記録できるように構成されている。より具体的には、光ディスク24は、ディスクの表層側、すなわち回折型光学素子20からの光が入射される側の面に存在する、厚さが100マイクロメートルのカバー層26と、隣接する記録層間の距離が5マイクロメートルとなるよう記録層を40層重ね、全体として200マイクロメートルの厚さとなる記録層群36と、ディスク基板32とを含む。以下説明の便宜上、光ディスク24における光源10からの光が入射される側を「表層側」とよび、その反対側を「深層側」と呼ぶことにする。
【0018】
回折型光学素子20は、第1面34および第2面38とを有する複合レンズの対物レンズを用いることができる。回折型光学素子20は、例えばBlu−rayディスクと同じ0.85の開口数を持つ。第1面34は、回折型光学素子20における収差を補正し、かつ入射された光を光軸上の異なる位置に収束してふたつのスポットを同時に生成するために、表面に回折構造を持つ。
【0019】
第1面34の回折構造は、回折型光学素子20に入射した光によって、ほぼ同じ大きさの二つの光スポットを形成するように構成されている。この二つの光スポットの位置は、回折型光学素子20に入射した光を、ほぼ同じ開口数で、かつ、それぞれの集光位置の深さに応じて球面収差が補正された状態で集光した際の焦点の位置に形成される。
【0020】
ここで、回折型光学素子20によって形成される二つの光スポットのうち、深層側に形成されるスポットを第1光スポット42と呼び、表層側に形成されるスポットを第2光スポット40と呼ぶことにする。また、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第1光スポット42が記録、再生する記録層群を第1記録層グループ28と呼ぶことにする。同様に、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第2光スポット40が記録、再生する記録層群を第2記録層グループ30と呼ぶことにする。さらに、本実施の形態において、第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とを合わせて記録層群36と総称することとする。
【0021】
第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とは、回折型光学素子20の回折構造などを考慮して実験により定めればよい。本実施の形態では、例えば光ディスク24の表層からの深さが100マイクロメートルから200マイクロメートルの範囲に設けた20層の記録層を第1記録層グループ28とし、200マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲に設けた20層の記録層を第2記録層グループ30としているが、これに限定されるものではない。また、本実施の形態では、記録層群36は、光ディスク24の表層からの深さが100マイクロメートルから300マイクロメートルの範囲に設けられているものとする。
【0022】
回折型光学素子20を、フォーカシングに用いる光学素子駆動部21を使って光軸方向に動かし、これにより、第1光スポット42を用いて第1記録層グループ28のデータの記録/再生を行い、第2光スポット40を用いて第2記録層グループ30のデータの記録/再生を行うことができる。このとき回折型光学素子20を深さ方向に移動することによって光スポットが設計の際に基準とする位置(以下、「設計基準位置」という。)からずれると球面収差が発生するが、コリメータレンズ16を移動して回折型光学素子20に入射する入射光束の平行度を変える、いわゆる有限補正によって球面収差を補正することができる。なお、本実施形態においては、第1光スポット42の位置と第2光スポット40の位置とを結ぶ直線と、光ディスク24の記録層とが直交するように、回折型光学素子20から光ディスク24へと光を出射するものとする。つまり、回折型光学素子20が出射する光の光軸と、光ディスク24の記録層を構成する面とが直交することとなる。
【0023】
なお、第1面34の表面に回折構造が付加されている場合に限らず、第1面34とは別体の回折素子44を第1面34´の近傍に配置した構造であってもよい。このような回折型光学素子20の別の構造を図2(b)に模式的に示す。このように、回折型光学素子20とは、図2(a)に示すように第1面34に回折構造が付加された回折型光学素子20でもよいし、図2(b)に示すように第1面34´と回折素子44が別体の回折型光学素子20でもよい。
【0024】
回折型光学素子20が有する回折構造について説明する。本実施の形態に係る回折構造は、回折型光学素子20に入射された光から+1次回折光と−1次回折光とのふたつの回折光を発生させるとともに、復号レンズである回折型光学素子20の球面収差を補正する。なお、一例として、回折型光学素子20の対物レンズが下記表1に示す非球面係数を持った非球面レンズであるとする。また、第1面34および第2面38の円錐係数はそれぞれ、−1.119、−75.264であるとする。
【0025】
【表1】
【0026】
図3は、表1に記載の非球面レンズの収差を補正するために必要な位相差を示す図である。図3において、横軸は半径を1とする規格化された半径ρであり、縦軸は位相差φである。位相差の単位は光の波長λである。実施の形態に係る回折構造は、光の回折作用を利用して図3に記載の位相差を補正するように設計されており、具体的には同心円状のバイナリ構造となっている。
【0027】
図3に示す位相差φを規格化半径ρの多項式でフィッティングすると、以下の式(1)を得る。
φ=aρ2+bρ4+cρ6+dρ8+eρ10+fρ12+gρ14+hρ16 (1)
式(1)におけるa、b、c、d、e、f、g、およびhはρの各次数における位相差係数と呼ばれ、それらは下記の表2の値となる。
【0028】
【表2】
【0029】
回折構造の深さおよびピッチを変更すると、それによって生じる位相差も変更される。そこで、式(1)または表2に示すように、修正すべき位相差が数式を用いて定式化できれば、そのような位相差を生じさせる回折構造を設計することができる。実施の形態に係る回折構造は、例えば最外周においては18波長分の位相差を補正のために付加することになる。なお、各次数における位相差係数と回折構造とは、おおむね次のような関係がある。すなわち、位相差係数の2次の係数を変更することにより、回折光が収束する位置を制御することができる。また、位相差係数4次および6次の係数を変更することで、球面収差を制御することができる。このように、各次数における位相差係数を変更することで回折構造によって生じる位相差を設計することができる。
【0030】
回折構造に光が入射すると、回折作用によって+1次の回折光と、−1次の回折光とが生じる。実施の形態に係る回折型光学素子20では、+1次の回折光は入射光の光軸に対して拡散する方向に回折し、反対に−1次の回折光は収束する方向に回折する。このため、+1次の回折光は回折作用が無い場合よりも、回折型光学素子20から見て遠方に焦点をむすび、−1次の回折光は回折作用が無い場合よりも、回折型光学素子20から見て手前に焦点をむすぶ。
【0031】
上述したとおり、実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、回折型光学素子20による+1次の回折光を第1記録層グループ28の記録/再生のための第1光スポット42の生成に用い、−1次の回折光を第2記録層グループ30の記録/再生のための第2光スポット40の生成に用いる。なお、この回折次数もこの組み合わせである必要はなく、第1光スポット42を形成する焦点を−1次光、第2光スポット40を形成する焦点を+1次光で生成するように設計しても、上記の位相係数の符号が反対になるだけで、同様の効果を得られる。
【0032】
図4(a)は、第1光スポット42の設計基準位置を示す図である。図4(a)に示すように、回折型光学素子20は、コリメータレンズ16を調整して回折型光学素子20に平行光を入射したときに、第1光スポット42が第1記録層グループ28の中心となるように構成されている。実施の形態においては、カバー層26の厚さが100マイクロメートル、第1記録層グループ28の厚さが100マイクロメートルであるから、第1光スポット42の設計基準位置は、光ディスク24の表層から150マイクロメートルの位置となる。
【0033】
図4(b)は、第2光スポットの設計基準位置を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20は、コリメータレンズ16を調整して回折型光学素子20に平行光を入射したときに、第2光スポット40が第2記録層グループ30の中心となるように構成されている。実施の形態においては、カバー層26の厚さが100マイクロメートル、第1記録層グループ28の厚さが100マイクロメートル、第2記録層グループ30の厚さが100マイクロメートルであるから、第2光スポット40の設計基準位置は、光ディスク24の表層から250マイクロメートルの位置となる。
【0034】
このように構成することにより、一方の光スポットが光ディスク24のいずれかの記録層の位置にあるときに、他方の光スポットは光ディスク24のいずれの記録層にも位置していないような光スポットの位置関係となる。これにより他方の光スポットによるクロストークを防ぎ、安定した記録/再生が可能となる。
【0035】
表1に記載の非球面レンズと表2に記載の回折構造とを持たせた回折型光学素子20による、光ディスク24再生時の面構造を表3および表4に示す。
【0036】
表3は、第1光スポット42が第1記録層グループ28のデータを再生するときの面構成を示す。
【表3】
【0037】
表4は、第2光スポット40が第2記録層グループ30のデータを再生するときの面構成を示す。
【表4】
【0038】
表3および表4より、第1光スポット42が第1記録層グループ28のデータを再生するとき、および第2光スポット40が第2記録層グループ30のデータを再生するときのいずれの状態でも、面の形状や回折面の位相差係数は同じである。ただし、回折面の次数は+1と−1と異なっており、それにしたがって第1光スポット42の位置は第2光スポット40の位置より深層側にできていることがわかる。
【0039】
図5(a)は、第1光スポット42の設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。図5(a)は、第1光スポット42が設計基準位置にあるときは収差がほぼ0であることを示している。
【0040】
図5(b)は、第2光スポット40の設計基準位置における縦収差の状態を示す図である。図5(b)より、第1光スポット42の場合と同様に、第2光スポット40が設計基準位置にあるときは収差がほぼ0であることが分かる。
【0041】
図6(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最表層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。具体的には、第1光スポット42によって、設計基準位置よりも表層側の位置である、光ディスク24の表層から0.1ミリメートルの位置にある記録層のデータを再生するときの縦収差の状態を示す。この場合、コリメータレンズ16の位置を調整することで回折型光学素子20に収束光を入射し、球面収差を補正する。図6(a)に示すように、第1光スポット42が設計基準位置にある場合(図5(a)に示す場合)よりは大きな縦収差が発生しているが、十分に再生可能な範囲である。
【0042】
図6(b)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最深層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。具体的には、第1光スポット42によって、設計基準位置よりも深層側の位置である、光ディスク24の表層から0.2ミリメートルの位置の記録層のデータを再生するときの縦収差の状態を示す。この場合、コリメータレンズ16の位置を調整することで回折型光学素子20に拡散光を入射して、球面収差を補正する。図6(b)に示すように、第1光スポット42が設計基準位置にある場合(図5(a)に示す場合)よりは大きな縦収差が発生しているが、十分に再生可能な範囲である。
【0043】
図7(a)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最表層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20に収束光を入射して球面収差を補正する。第2光スポット40が設計基準位置にある場合よりは大きな縦収差が発生しているが、光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安である70mλrmsは下回っており、十分に再生可能である。
【0044】
図7(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最深層側にあるときの縦収差の状態を示す図である。第1光スポット42の場合と同様に、回折型光学素子20に拡散光を入射して球面収差を補正する。第2光スポット40が設計基準位置にある場合よりは大きな縦収差が発生しているが、光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安は下回っており、再生可能な範囲内である。
【0045】
次に、第1光スポット42と第2光スポット40との距離Lについて説明する。
【0046】
上述したとおり、本実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、光ディスク24の深層側に生成される第1光スポット42を用いて光ディスク24の表層側に存在する第1記録層グループ28の記録/再生を行い、かつ光ディスク24の表層側に生成される第2光スポット40を用いて光ディスク24の深層側に存在する第2記録層グループ30の記録/再生を行うことにより、記録/再生に関与していない光スポットは光ディスク24の記録層に当たらないようになっている。しかし、第1光スポット42と第2光スポット40との距離Lが短い場合、例えば第1光スポット42が第1記録層グループ28の深層側に存在する記録層のデータの記録、再生を行っているときや、第2光スポット40が第2記録層グループ30の表層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに、記録/再生を行っていない他方の光スポットが記録層に当たる場合もありうる。
【0047】
図8(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の深層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに第2光スポット40が第1記録層グループ28の記録層に当たっている様子を示す図である。図8(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の表層側に存在する記録層のデータの記録/再生を行っているときに第1光スポット42が第2記録層グループ30の記録層に当たっている様子を示す図である。図8(a)や図8(b)に示す状態が起こると、クロストークが発生するため問題となる。
【0048】
このような状態を回避するためには、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lを以下ように設定すればよい。すなわち、第1記録層グループ28の厚さをT1とし、第2記録層グループ30の厚さをT2としたとき、T1、T2およびLとの関係が下記式(2)を満たすようにする。
L=(T1+T2)/2+|T1−T2|/2+α (2)
ここで、記録層グループの厚さTは、記録層の数をn、記録層1層分の厚さをβとしたときに、T=n×βと定義する。
【0049】
上記式(2)において、αはクロストークを防止するために定められた基準距離であり、この距離は記録層群36の厚さやレーザーの波長等を考慮して実験により定めればよい。ここで、第1光スポット42と第2光スポット40との距離が近い方が、回折型光学素子20による光学的な球面収差の補正がしやすいことも考慮すると、αの値の一例として記録層1層分〜3層分の厚さとするとよく、望ましくは記録層1層分の厚さβとするとよい。一般に、多層の記録層を持つ光ディスクにおける記録層1層分の厚さは、その厚さ分の距離があればクロストークが発生しないように設計されているからである。
【0050】
以上のように設定することにより、一つの光スポットが記録層グループの最深層を再生している場合でも最表層を再生している場合でも、もう一つのスポットが記録層に当たることはなく、クロストークを防ぐことができる。以下このことについて、図9、図10、および図11を参照しながら、式(2)を具体的に説明する。
【0051】
図9は、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さのときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28と第2記録層グループ30とがそれぞれ4層の場合を図示している。図9(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図9(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0052】
第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さTのとき、上記の式(2)は、以下の式(2.1)となる。
L=(T+T)/2+|T−T|/2+α=T+α (2.1)
【0053】
図9(a)に示すように、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい場合に、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するとき、第2光スポット40は、第1記録層グループ28から記録層1層分の厚さβだけ表層側に離れた位置に存在することになる。前述したとおり、記録層1層分の厚さβは、その厚さ分の距離があればクロストークが発生しないような厚さに設計されている。このため、第2光スポット40によるクロストークの発生は防止できる。ゆえに、上記の式(2.1)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0054】
図9(b)に示すように、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい場合に、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するとき、第1光スポット42は、第2記録層グループ30とディスク基板32との境界に存在することになる。このため、第1光スポット42によるクロストークは発生しない。ゆえに、上記の式(2.1)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0055】
以上まとめると、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが等しい厚さTである場合、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔L≧Tとすれば、クロストークは発生しない。
【0056】
図10は、第1記録層グループ28の厚さT1が第2記録層グループ30の厚さT2よりも厚いときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28が5層であり、第2記録層グループ30が3層の場合を図示している。図10(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図10(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0057】
第1記録層グループ28の厚さT1が第2記録層グループ30の厚さT2よりも厚いため、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときに、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが十分に離れていないと、クロストークが発生しうる。そこで、図10(a)に示すように、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときに、第2光スポット40が第1記録層グループ28の表層側から、記録層1層分の厚さβ以上離れるようにすればよい。より具体的には、上記の式(2)においてT1>T2を仮定すれば、下記の式(2.2)を得る。
L=(T1+T2)/2+|T1−T2|/2+α
=(T1+T2)/2+(T1−T2)/2+α
=T1+α (2.2)
【0058】
図10(a)に示すように、間隔Lが第1記録層グループ28の厚さT1だけ離れていれば、第2光スポット40が第1記録層グループ28の表層側から、記録層1層分の厚さβ離れることになる。したがって、上記の式(2.2)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0059】
図10(b)は、L=T1の場合において、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図10(b)に示すように、第1光スポット42はディスク基板32内に位置することになるため、クロストークは発生しない。
【0060】
図11は、第1記録層グループ28の厚さT1よりも第2記録層グループ30の厚さT2の方厚いときに、第1光スポット42と第2光スポット40とが取るべき位置関係の一例を示す図である。説明の便宜上、第1記録層グループ28が3層であり、第2記録層グループ30が5層の場合を図示している。図11(a)は、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も深層側を記録/再生するときの位置関係を示し、図11(b)は、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。
【0061】
第2記録層グループ30の厚さT2が第1記録層グループ28の厚さT1よりも厚いため、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときに、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが十分に離れていないと、クロストークが発生しうる。そこで、図11(a)に示すように、第2光スポット40が第2記録層グループ30の最も表層側を記録/再生するときに、第1光スポット42が第2記録層グループ30とディスク基板32との境界かそれよりも深層側に位置するようにすればよい。より具体的には、上記の式(2)においてT1<T2を仮定すれば、下記式(2.3)を得る。
L=(T1+T2)/2+(T2−T1)/2+α
=T2+α (2.3)
【0062】
図11(a)に示すように、間隔Lが第2記録層グループ30の厚さT2だけ離れていれば、第1光スポット42が第2記録層グループ30とディスク基板32との境界に位置することになる。したがって、上記の式(2.3)において、α=0としてもクロストークの発生は防止できる。
【0063】
図11(b)は、L=T2の場合において、第1光スポット42が第1記録層グループ28の最も表層側を記録/再生するときの位置関係を示す。図11(b)に示すように、第2光スポット40は、第2記録層グループ30の表層側に記録層1層分の厚さβ分よりも離れるため、クロストークは発生しない。
【0064】
以上をまとめると、クロストークの発生を抑制するために、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔Lが満たすべき条件は、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのうち厚い方の厚さをmax(T1,T2)と表すとすると、
L≧max(T1,T2) (3)
となる。
【0065】
式(3)において、等号が間隔Lが満たすべき下限値であり、上記式(2)においてα=0とした場合に相当する。このことは、第1光スポット42と第2光スポット40との光軸方向の間隔がLである場合、クロストークを抑制しつつ、光ディスク24を記録/再生可能な記録層群36の厚さの最大値は、T1=T2=Lのとき、すなわち2Lであることを意味する。
【0066】
ここで、記録層群36のそれぞれの記録層に物理的な相違はなく、前述したように、光ディスク24に設けられている複数の記録層のうち、第1光スポット42が記録/再生する記録層群を第1記録層グループ28と定義し、第2光スポット40が記録、再生する記録層群を第2記録層グループ30と定義するものである。したがって、回折型光学素子20を光軸方向に動かす光学素子駆動部21を制御することで、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とは制御可能である。
【0067】
第1光スポット42と第2光スポット40との間隔Lが固定されており、かつ記録層群36の厚さが2L以下であることを前提とする場合、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか一方の厚さがL以下となるように光学素子駆動部21を制御すること、換言すると、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか厚い方の厚さ以上に間隔Lが離れるように光学素子駆動部21を制御することが可能である。光学素子駆動部21をこのように制御することにより、クロストークの発生を抑制しつつ、多数の記録層を持つ情報記録媒体のそれぞれの記録層において良好に記録または再生する技術を提供することができる。
【0068】
第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とが異なるように光学素子駆動部21を制御する場合には、間隔Lが、第1記録層グループ28の厚さT1と第2記録層グループ30の厚さT2とのいずれか厚い方の厚さ以上離れていれば、クロストークを抑制しつつ記録/再生が可能である。
【0069】
以上、光ディスク再生装置100の回折型光学素子20周辺の構成に的を絞って本発明に係る実施の形態を説明したが、これを搭載する光ディスクシステムは、ディスクを保持して回転、駆動する駆動機構、光ヘッドをディスクの半径方向に移動させるヘッド送り機構、光ヘッドによってディスクから読み出された信号を復号し、復号データのデスクランブル処理、誤り訂正などを通じてデータを再生し、上位装置に転送し、上位装置より転送されたデータを光ヘッド装置によってディスクに記録するために符号化し、スクランブル処理、誤り訂正符号の付加などの信号処理を行う手段、トラッキングサーボ、フォーカシングサーボ、ディスクモータの回転のサーボなどを行うサーボ手段などを備えるが、これらの部分は公知の技術を用いることができ、本発明の要旨ではないので、詳細な説明を省いた。
【0070】
以上説明したように、実施の形態に係る光ディスク再生装置100によれば、多数の記録層を持つ情報記録媒体である光ディスク24のそれぞれの記録層において記録または再生をする技術を提供することができる。単純なバイナリ構造の回折型光学素子20は球面収差の補正された同一の開口数の光スポットを光軸上の異なる位置に同時に出現させるため、例えば液晶素子をアクチュエータに搭載して球面収差を補正するような方法と比較して、製造コストの点で有利である。液晶素子を用いる場合は照射光とディスクからの反射光で偏光の方向が90度変わるため、液晶素子を2枚搭載する必要があるからである。またアクチュエータに液晶素子駆動用の線を複数とおす必要があり、アクチュエータの動作に不利になる。
【0071】
さらに、実施の形態に係る光ディスク再生装置100は、光ディスク24の表層側に存在する第1記録層グループ28の記録/再生に光ディスク24の深層側に生成される第1光スポット42を利用し、光ディスク24の深層側に存在する第2記録層グループ30の記録/再生に光ディスクの表層側に生成される第2光スポット40を利用するため、光ディスクの表層部と深層部とに存在する記録層群に同時に光スポットが当たることがなく、クロストークを抑制することができる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能である。例えば、記録層群を三つ以上に分けた場合も、記録層群の総厚の中央付近で分けて、表層側を光源から遠い位置に存在する光スポットで再生し、深層側を光源側に存在する光スポットで再生すれば、本発明と同様である。また、より高次の回折次数の光スポットを使ったり、0次光と±1次光の三つの光スポットを光軸方向に生じさせて、そのうちの二つの光スポットを使ったりするなどの変形例も考えられるが、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0073】
また、光ディスク24の表層より100マイクロメートル〜200マイクロメートルの位置に5マイクロメートル間隔の記録層20層からなる第1記録層グループ28を配置し、光ディスク24の表層より200マイクロメートル〜300マイクロメートルの位置に5マイクロメートル間隔の記録層20層からなる第2記録層グループ30を配置する場合について説明したが、各記録層グループの厚さは100マイクロメートルに限られない。ただし、記録層の厚さの総計は240マイクロメートル以下であることがより望ましい。以下、その理由について説明する。
【0074】
図12は、光ディスク24の記録層の厚さの総計、すなわち第1記録層グループ28の厚さと第2記録層グループ30の厚さとの合計と、波面の残留収差との関係を示す図である。図12は、光ディスク24のカバー層26の厚さを100マイクロメートルとして、そこからの記録層の厚さの総計が横軸、コリメータレンズ16を調整して収差補正を行ったときに、残留する収差量が縦軸となっている。図12より、記録層の厚さの総計が240マイクロメートルとなると、残留波面収差が光ディスク24を再生することができる波面収差量の目安である70mλrmsを超える。したがって、記録層の厚さの総計は240マイクロメートル以下であることが望ましい。
【0075】
図13は、光ディスク24の記録層の厚さの総計と、位相差係数との関係を示す図である。図13は、記録層の厚さの総計が横軸、そのときの位相差係数の値が縦軸となっている。残留波面収差が70mλrmsを超える、記録層の厚さの総計が240マイクロメートルの場合には、2次の位相差係数の値が100となる。したがって、2次の位相差係数は100より大きな値であることが望ましい。また図13より、記録層の厚さの総計と2次の位相差係数との関係は、以下の式(4)となることが望ましい。
2次の位相差係数の変化量/記録層の厚さの総計の変化量=−9.8 (4)
【符号の説明】
【0076】
10 光源、 12 プリズム、 14 検出器、 16 コリメータレンズ、 18 ミラー、 20 回折型光学素子、 21 光学素子駆動部、 22 コリメータレンズ駆動部、 24 光ディスク、 26 カバー層、 28 第1記録層グループ、 30 第2記録層グループ、 32 ディスク基板、 34 第1面、 36 記録層群、 38 第2面、 40 第2光スポット、 42 第1光スポット、 44 回折素子、 100 光ディスク再生装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する光源と、
前記光源から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる回折型光学素子とを備え、
前記回折型光学素子は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせることを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記回折型光学素子は、第1光スポットが再生する記録層の厚さと第2光スポットが再生する記録層の厚さとが等しい場合、第1光スポットと第2光スポットとを、再生対象の光ディスクの記録層の厚さの2分の1以上離して生じさせることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記回折型光学素子によって生じた前記第1光スポット及び前記第2光スポットの位置を変更するために前記回折型光学素子を移動させる光学素子駆動部をさらに備え、
前記光学素子駆動部は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する場合において前記光源側に存在する記録層のデータを再生するときは、前記第1光スポット及び前記第2光スポットのうちの前記光源から遠い方のスポットを前記光源側に存在する記録層に移動させ、前記光源から遠い位置に存在する記録層のデータを再生するときは、前記光源側のスポットを前記光源から遠い位置に存在する記録層に移動させるように前記回折型光学素子を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記光学素子駆動部は、第1光スポット及び第2光スポットのうちの第1光スポットが再生する記録層群の厚さと、第2光スポットが再生する記録層群の厚さとの、いずれか厚い方の厚さが、第1光スポットと第2光スポットとの距離以下となるように光学素子駆動部21を移動させることを特徴とする請求項3に記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
第1光スポットと第2光スポットとの距離Lは、再生対象の光ディスクの記録層のうち、第1光スポットが再生する記録層群の厚さをT1、第2光スポットが再生する記録層群の厚さをT2としたとき、
L≧(T1+T2)/2+|T1−T2|/2
を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の光ディスク再生装置。
【請求項6】
前記第1光スポットと第2光スポットとの開口数は略同一であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の光ディスク再生装置。
【請求項7】
記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を光源から出射するステップと、
出射された光から、第1光スポットおよび第2光スポットを光軸上の異なる位置に生じさせるステップであって、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせるステップとを含むことを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項1】
記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を出射する光源と、
前記光源から出射された光から、第1光スポットと第2光スポットとを光軸上の異なる位置に生じさせる回折型光学素子とを備え、
前記回折型光学素子は、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせることを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記回折型光学素子は、第1光スポットが再生する記録層の厚さと第2光スポットが再生する記録層の厚さとが等しい場合、第1光スポットと第2光スポットとを、再生対象の光ディスクの記録層の厚さの2分の1以上離して生じさせることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記回折型光学素子によって生じた前記第1光スポット及び前記第2光スポットの位置を変更するために前記回折型光学素子を移動させる光学素子駆動部をさらに備え、
前記光学素子駆動部は、記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する場合において前記光源側に存在する記録層のデータを再生するときは、前記第1光スポット及び前記第2光スポットのうちの前記光源から遠い方のスポットを前記光源側に存在する記録層に移動させ、前記光源から遠い位置に存在する記録層のデータを再生するときは、前記光源側のスポットを前記光源から遠い位置に存在する記録層に移動させるように前記回折型光学素子を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記光学素子駆動部は、第1光スポット及び第2光スポットのうちの第1光スポットが再生する記録層群の厚さと、第2光スポットが再生する記録層群の厚さとの、いずれか厚い方の厚さが、第1光スポットと第2光スポットとの距離以下となるように光学素子駆動部21を移動させることを特徴とする請求項3に記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
第1光スポットと第2光スポットとの距離Lは、再生対象の光ディスクの記録層のうち、第1光スポットが再生する記録層群の厚さをT1、第2光スポットが再生する記録層群の厚さをT2としたとき、
L≧(T1+T2)/2+|T1−T2|/2
を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の光ディスク再生装置。
【請求項6】
前記第1光スポットと第2光スポットとの開口数は略同一であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の光ディスク再生装置。
【請求項7】
記録層を少なくとも2層積層させた光ディスクの記録層のデータを再生する光を光源から出射するステップと、
出射された光から、第1光スポットおよび第2光スポットを光軸上の異なる位置に生じさせるステップであって、第1光スポットと第2光スポットとを、第1光スポットが再生する記録層の厚さ、及び、第2光スポットが再生する記録層の厚さのいずれか厚い方の厚さ以上離して生じさせるステップとを含むことを特徴とする光ディスク再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−4130(P2013−4130A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132619(P2011−132619)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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