説明

光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法および光ピックアップ制御装置

【課題】光ディスクにおける光ピックアップのアクセス動作(トラックジャンプ)において、光スポットが傷位置へ突入すると、同じ位置へアクセス動作を繰り返したり、大きくサーボが外れて再生を継続できなくなる。
【解決手段】光ピックアップ3による光ディスク1上の目的アドレスに対するアクセス動作中に光ピックアップ3による光電変換信号から生成したRF信号の2値化を通じて光ディスク1における傷を検出するステップ(S30)と、傷検出が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの光ピックアップ3の位置を正常領域として記憶するステップ(S80)と、傷検出が活性化された場合に光ピックアップ3を過去の正常領域へ戻すステップ(S50)と、戻し位置のアドレスから所定の値だけ目的アドレスを移動して光ピックアップ3をアクセスさせるステップ(S60)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCDプレーヤなどの光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法および光ピックアップ制御装置にかかわり、特にはアクセス動作(トラックジャンプ)時の傷や埃の影響を最小限に抑えるとともにアクセス動作を速やかに実行するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、図5、図6に基づいて、従来の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法・装置について説明する。
【0003】
図5は従来の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置の構成を示すブロック図である。図5において、1は光ディスク、2は光ディスク1を駆動回転するスピンドルモータ、3は光ディスク1の記録トラックに記録されている情報を光学的に読み出し光電変換して光電変換信号を生成出力する光ピックアップ、4は光ピックアップ3による光電変換信号を増幅しRF(高周波)信号を生成するRF信号生成部、5はRF信号生成部4からRF信号を入力して光ピックアップ3のビームスポットの記録トラックからのずれを示すトラッキングエラーを検出するとともに傷検出部7からの傷検出信号によりサーボ制御の演算を実施するサーボ制御部、6はサーボ制御部5からトラッキングエラーを含むサーボ制御信号を入力しトラッキングエラーを打ち消すようにトラッキングドライブ信号を生成して光ピックアップ3をトラックに追従させるドライブ信号出力部、7はRF信号生成部4によるRF信号をある一定の電位を基準に2値化して光ディスク1における傷を検出し傷検出信号を生成する傷検出部、8は再生情報を記憶する記憶部である。
【0004】
図6は傷検出部7においてRF信号の2値化によって傷を検出する際の動作を示す波形図である。Sr はRF信号、Sc は傷検出信号である。傷検出信号Sc は、RF信号Sr の電圧振幅を所定の基準値Vthと比較し、RF信号Sr が基準値Vthを下回るときに傷検出信号Sc が活性化される。
【0005】
光ピックアップ3のアクセス(JUMP)動作時に傷検出部7が光ディスク1上の傷や埃を検出すると、傷検出信号Sc が活性化され、この活性化された傷検出信号Sc を入力したサーボ制御部5がトラッキングエラー信号をミュートしたりホールドすることにより、サーボ動作が大きく乱れることを防ぐ。また、SUBQデータの連続性から傷を検出し、光ピックアップ3を先に飛ばすことにより、同じ位置への繰り返しのアクセスを防ぐ。すなわち、信号処理によって出力されるサブコードデータのうちQコードデータから与えられる時間情報の連続性をチェックし、その時間情報が進行方向に対して一定時間更新されないときにロックドループが発生していると判断し、トラックジャンプにより傷位置を飛び越させることにより、ロックドループから復帰させる。
【0006】
また、特許文献1に記載の光ディスク装置では、再生連続性に支障を来たすような傷を再生したときに、その傷の位置と範囲を記憶し、次回の再生時には、あらかじめ記憶している傷部分に光ピックアップが到達したときにトラックジャンプを行い、サーボ動作の乱れを回避する。
【0007】
本発明者が特許文献2に開示した光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置は、光ピックアップのビームスポットの傷部分に対する初回の突入時でも、サーボ動作の大きな乱れ、ひいては再生不能状態に陥ることを回避できるようにしたものである。
【0008】
特許文献2の光ピックアップ制御装置は、傷検出手段による傷検出信号の持続時間を測定し、その傷検出持続時間を所定の時間閾値と比較して、傷検出持続時間が時間閾値以下のときは再生動作を継続する傷検出持続時間測定手段と、傷検出持続時間が時間閾値を超えるときは光ピックアップのトラックジャンプのための制御信号を生成してサーボ制御手段に出力するトラックジャンプ制御手段とを備えている。
【0009】
この構成において、光ピックアップのビームスポットが記録トラックに追従しているサーボ動作の最中において、ビームスポットが傷部分に到達すると、RF信号生成手段によるRF信号の振幅が低下する。傷検出手段は、RF信号を入力し、RF信号の振幅が所定値以下に減少すると、傷検出信号を活性化させる。傷検出信号を入力する傷検出持続時間測定手段は、傷検出信号の持続時間を監視し、この傷検出持続時間の情報をトラックジャンプ制御手段に与える。傷サイズが相対的に小さくて傷検出持続時間が所定の時間閾値以下のときには、再生動作を継続する。一方、傷サイズが相対的に大きくて傷検出持続時間が所定の時間閾値を超えるときには、トラックジャンプ制御手段は、トラックジャンプ制御信号を生成してサーボ制御手段に出力する。トラックジャンプ制御信号を受けたサーボ制御手段は、ドライブ信号出力手段を制御し、光ピックアップにトラックジャンプを行わせる。そして、この結果、光ピックアップが傷部分の領域外に至ると、再生動作を再開する。
【特許文献1】特開平8−111028号公報
【特許文献2】特開2008−52774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1の技術においては、光ピックアップのビームスポットの傷通過に起因してサーボ動作の乱れ(傷により進めない状態)が一度検出された場合に、次回の再生時にトラックジャンプを行うもので、初回の傷突入時には対応することができず、サーボの大きな乱れが発生する可能性がある。
【0011】
特許文献2の技術の場合には、光ピックアップのビームスポットが初回に傷部分に達したときからトラックジャンプが実行される。したがって、傷部分への初回の突入時でもサーボ動作の大きな乱れは発生させずにすむ。しかし、傷サイズを見るために傷検出信号の持続時間を監視することから、傷突入後に一定以上の時間待ちを余儀なくされ、トラックジャンプ動作に移るまでに時間がかかるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、光ピックアップのビームスポットの傷部分に対する初回の突入時でも、サーボ動作の大きな乱れ、ひいては再生不能状態に陥ることを回避し、さらに傷突入後直ちにトラックジャンプ動作に移行して迅速なアクセス動作を実現できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法は、
光ピックアップによる光ディスク上の目的アドレスに対するアクセス動作中に前記光ピックアップによる光電変換信号から生成したRF信号の2値化を通じて光ディスクにおける傷を検出するステップと、
前記傷検出が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶するステップと、
前記傷検出が活性化された場合に前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップと、
戻し位置のアドレスから所定の値だけ前記目的アドレスを移動して前記光ピックアップをアクセスさせるステップとを含むものである。
【0014】
また、上記の光ピックアップ制御方法に対応する本発明による光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置は、
光ディスクの記録トラックに記録されている情報を光学的に読み出し光電変換して光電変換信号を生成する光ピックアップと、
前記光ピックアップによる前記光電変換信号からRF信号を生成するRF信号生成手段と、
前記RF信号生成手段による前記RF信号を2値化して前記光ディスクにおける傷を検出し傷検出信号を生成する傷検出手段と、
前記RF信号生成手段による前記RF信号から前記光ピックアップのビームスポットの前記記録トラックからのずれを示すトラッキングエラーを検出しサーボ制御信号を生成するとともに、前記傷検出手段による前記傷検出信号が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶させるサーボ制御手段と、
前記傷検出手段による前記傷検出信号が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶する記憶手段と、
前記サーボ制御手段による前記サーボ制御信号を入力し前記トラッキングエラーを打ち消すようにトラッキングドライブ信号を生成して前記光ピックアップをトラックに追従させるドライブ信号出力手段とを備え、
前記サーボ制御手段は、前記傷検出手段による前記傷検出信号が活性状態のときに、前記記憶手段から過去の正常領域を読み出し、前記サーボ制御信号として前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻した上で、戻し位置のアドレスから所定の値だけ前記目的アドレスを移動して前記光ピックアップを移動後の目的アドレスにアクセスさせるサーボ制御信号を生成するように構成されているものである。
【0015】
上記の構成において、光ピックアップが目的アドレスに対するアクセス動作中にビームスポットが傷部分に到達することがなければ、RF信号生成手段によるRF信号の振幅低下はなく、傷検出信号は活性化されないで、サーボ制御手段は、このときアクセス動作が正常に終了すると、そのときの光ピックアップの位置を正常領域として記憶手段に記憶させる。アクセス動作中にビームスポットが傷部分に到達すれば、傷検出信号が活性化され、サーボ制御手段は、記憶手段から過去の正常領域を読み出し、サーボ制御信号として光ピックアップを過去の正常領域へ戻した上で、戻し位置のアドレスから所定の値だけ前記目的アドレスを移動して光ピックアップを移動後の目的アドレスにアクセスさせるサーボ制御信号を生成する。過去の正常領域は、傷検出前にアクセス動作が問題なく行えていたアドレスを含むものであり、その正常領域のアドレスから所定の値だけ目的アドレスを移動して更新後の目的アドレスを求め、その更新後の目的アドレスへ光ピックアップをジャンプさせるように制御する。
【0016】
アクセス動作中における過去の正常領域なるものは、光ピックアップが初回に傷突入する以前から捕捉され、記憶手段に記憶されている。この「光ピックアップが初回に傷突入する以前から捕捉され記憶手段に記憶されている過去の正常領域」を利用してトラックジャンプを制御する点が本発明のポイントである。過去の正常領域における戻し位置のアドレスは、初回傷突入以前から分かっていて、その精度は高い。この精度の高い戻し位置のアドレスを基準として、所定の値だけ目的アドレスを移動して更新後の目的アドレスを求めるのであるから、更新後の目的アドレスも精度の高いものとなる。よって、傷を避けてのトラックジャンプは正しく行われることになる。以上により、光ピックアップのビームスポットの傷部分に対する初回の突入時でも、同じ位置へアクセス動作し続けるロックドループ現象などサーボ動作の大きな乱れが回避され、ひいては再生不能状態に陥ることが回避される。
【0017】
特に、傷検出に伴う過去の正常領域への戻し動作は、傷検出後、直ちに実行することができるものであり、特許文献2の場合のように、傷検出信号の持続時間を監視するための、傷突入後の一定以上の時間待ちは不要であり、トラックジャンプ動作の高速性が確保される。
【0018】
上記の光ピックアップ制御方法において、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、前記光ピックアップによる再生が正常かを判断し、再生が正常であればアクセス動作を終了し、再生が正常でなければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップへ移行するステップを含むという態様がある。
【0019】
この光ピックアップ制御方法に対応する光ピックアップ制御装置として、上記の構成の光ピックアップ制御装置において、前記サーボ制御手段は、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、前記光ピックアップによる再生が正常かを判断し、再生が正常であればアクセス動作を終了させるサーボ制御信号を生成し、再生が正常でなければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すサーボ制御信号を生成するという態様がある。
【0020】
この態様によれば、アクセス動作で傷を検出しても再生に影響を与えない程度の比較的小さな傷であれば、光ピックアップを過去の正常領域へ戻したのちトラックジャンプさせるという制御は行うことなく、アクセス動作を終了させて、そのまま再生動作へと進めることが可能となる。
【0021】
また上記の光ピックアップ制御方法において、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、現在の光ピックアップの位置が目的アドレスを基準に所定の範囲内にあるかを判断し、所定の範囲内にあればアクセス動作を終了し、所定の範囲内になければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップへ移行するステップを含むという態様がある。
【0022】
この光ピックアップ制御方法に対応する光ピックアップ制御装置として、前記サーボ制御手段は、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、現在の光ピックアップの位置が目的アドレスを基準に所定の範囲内にあるかを判断し、所定の範囲内にあればアクセス動作を終了させるサーボ制御信号を生成し、所定の範囲内になければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すサーボ制御信号を生成するという態様がある。
【0023】
この態様によれば、光ディスクにおける光ピックアップのアクセス動作時に傷を検出したが、目的アドレスから予め決定しておいた範囲内にあれば、光ピックアップを過去の正常領域へ戻したのちトラックジャンプさせるという制御は行うことなく、アクセス動作を終了させて、そのまま再生動作へと進めるが、目的アドレスから予め決定しておいた範囲以上離れている場合には、光ピックアップを過去の正常領域へ戻したのちトラックジャンプさせるという制御を実施する。光ピックアップが突入した傷が再生可能な傷であっても、目的アドレスから許容できる範囲外へのアクセス動作となっているときは、そのアクセス動作がそのまま終了してしまうといったことを避けることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光ディスク再生で光ピックアップのアクセス動作を行った際に、光ピックアップのビームスポットの傷部分に対する初回の突入時でも、同じ位置へアクセス動作し続けるロックドループ現象などサーボ動作の大きな乱れ、ひいては再生不能状態に陥ることを回避できるのはもちろん、さらに傷突入後直ちにトラックジャンプ動作に移行するので迅速なアクセス動作を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかわる光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態の光ピックアップ制御装置は、図5に示した従来技術と同様の構成となっている。
【0027】
本実施の形態においては、サーボ制御部5は、再生中やアクセス動作中において、サーボの外れやCRC(Cyclic Redundancy Check)エラーが発生していなければ、アクセス動作が正常に終了したときの問題がないSUBQ情報(アドレス)を常時的に取得して記憶部8に記憶させるように構成されている。この場合、取得毎に更新し、前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスを記憶させておく。なお、記憶したアドレスは、光ディスク1を交換した時点でクリアされるようになっている。
【0028】
光ディスク1上の任意のアドレスに対するアクセス動作を実施するに際して、サーボ制御部5から出力されたサーボ制御信号はドライブ信号出力部6にて増幅され、光ピックアップ3に対するドライブ信号として出力される。これによって制御された光ピックアップ3は、目的アドレスへジャンプされる。
【0029】
アクセス動作時のジャンプ着地時に、サーボ制御部5は、傷検出部7からの傷検出信号Sc の“H”,“L”により傷上かどうかを確認し、傷上でなければ目的アドレスか否かを確認する。
【0030】
傷上の場合は、記憶部8から前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスを読み出し、そのアドレスへ戻すためのサーボ制御信号を出力する。このサーボ制御信号がドライブ信号出力部6にて増幅されドライブ信号として光ピックアップ3に供給され、前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスへの光ピックアップ3のアクセス動作が行われる。そして、前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスに戻ったら、サーボ制御部5は、目的アドレスから、予め設定しておいたトラック本数(N本)分先のアドレスへアクセスさせるためのサーボ制御信号を出力し、ドライブ信号出力部6より増幅して出力するドライブ信号により、光ピックアップ3を制御し、更新後の目的アドレスへのアクセス動作(トラックジャンプ)を実施する。
【0031】
以上の動作を、目的アドレスへのアクセス動作が終了するか、タイムアウトが発生するまで繰り返す。振動発生時等、アクセス動作が終了できない場合もあるため、アクセス動作開始からの時間に応じて、タイムアウトを設ける。
【0032】
次に、上記の光ピックアップ制御装置の動作を図2のフローチャートに従って説明する。
【0033】
ステップS10において、光ディスク1における光ピックアップ3のアクセス動作(トラックジャンプ)を行う。
【0034】
次いでステップS20において、タイムアウトではないか否を判断し、タイムアウトでなければステップS30に進み、タイムアウトしたときはステップS70に進む。
【0035】
未だタイムアウトしておらず、ステップS30に進んだときは、傷検出信号Sc の“H”,“L”の状態に基づいて光ピックアップ3のスポットが傷上でないかどうかを確認し、傷上でなければステップS40に進み、傷上であればステップS50に進む。
【0036】
傷検出信号Sc が“L”レベルで傷上でなく、ステップS40に進んだときは、光ピックアップ3のスポットが目的アドレスに達したか否かを確認し、目的アドレスに達していないときはステップS10に戻り、目的アドレスに達したときはステップS80に進む。ステップS80では、アクセス動作が正常に終了したときの問題がないSUBQ情報(アドレス)を取得して記憶部8に記憶させ、次いで図2のルーチンを抜けてアクセス動作を終了して次の所定の処理へ進む。
【0037】
一方、ステップS30の判断で傷検出信号Sc が“H”レベルで傷上であり、ステップS50に進んだときは、記憶部8から前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスを読み出し、該当のアドレスへ戻す制御信号を出力し、ドライブ信号出力部6により増幅して出力するドライブ信号により、光ピックアップ3を制御し、前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスへのアクセス動作を実施する。
【0038】
次いでステップS60において、目的アドレスを予め決定しておいたアドレス分だけ変化させた上で、ステップS10に進む。これ以降、ステップS20からステップS30と進み、状況によってはステップS50からステップS60、ステップS10、ステップS20、ステップS30を繰り返し、また別の状況によってはタイムアウトしてステップS20からステップS70へ進んでアクセス動作を終了し、またはステップS20、ステップS30からステップS40へ進み、光ピックアップ3のスポットが目的アドレスに到達すれば、ステップS80でアクセス動作が正常に終了したときの問題がないSUBQ情報(アドレス)を取得して記憶部8に記憶させる。そして、図2のルーチンを抜けてアクセス動作を終了して次の所定の処理へ進む。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、アクセス動作時に傷を検出した場合、記憶部8に記憶している前回アクセス動作が正常に終了したときのアドレスへ光ピックアップ3のスポットを一旦戻し、予め決定しておいた値分だけ目的アドレスを変更し、再度、アクセス動作を実行するので、傷によりアクセス動作が終了できず同じ場所へトラックジャンプを繰り返す動作(ロックドループ現象)や、アクセス動作直後に同じ場所への引き込みを繰り返す状態に陥ることを防ぐことができる。すなわち、サーボが大きく乱れ、再生不能状態に陥ることを防ぐことができる。
【0040】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における光ディスク制御装置の動作を示すフローチャートである。図3において、実施の形態1の図2におけるのと同じステップ番号は同一の処理内容を示している。本実施の形態においては、ステップS30とステップS50の間にステップS42が追加されている。このステップS42は、光ディスク1における光ピックアップ3のアクセス動作時に傷を検出した場合に(ステップS30でYesの場合に)、再生が可能か否かを判断する処理を示している。再生が不可能のときは実施の形態1の場合と同様にステップS50に進むが、再生が可能であれば、ステップS80を経てこのフローを抜けてアクセス動作を終了する。その他のステップについては、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
本実施の形態は、傷を検出した状態でも、再生が可能である場合は、アクセス動作を終了するもので、再生に影響を与えない程度の比較的小さな傷であれば、光ピックアップ3を過去の正常領域へ戻したのちトラックジャンプさせるという制御は行うことなく、アクセス動作を終了させて、そのまま再生動作へと進めることができるようにしたものである。
【0042】
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3における光ディスク制御装置の動作を示すフローチャートである。図4において、実施の形態2の図3におけるのと同じステップ番号は同一の処理内容を示している。本実施の形態においては、ステップS42の次にステップS44が追加されている。このステップS44は、光ディスク1における光ピックアップ3のアクセス動作時に傷を検出し(ステップS30でYes)、再生が可能な場合に(ステップS42でYes)、光ピックアップ3のスポットが目的アドレスから許容できる範囲内にアクセス動作ができているかを判断する処理を示している。目的アドレスから許容できる範囲内にアクセス動作ができているときは実施の形態2の場合と同様に、ステップS80を経てこのフローを抜けてアクセス動作を終了するが、目的アドレスから許容できる範囲の外となっているときは、再生が不可能の場合と同様にステップS50に進むようになっている。その他のステップについては、実施の形態2と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
本実施の形態は、傷が検出されたが再生が可能である場合に、さらに、目的アドレスから許容できる範囲内かどうかを判断することにより、傷があっても再生できるが、目的アドレスから大きく離れた位置でアクセス動作が終了してしまうということを防ぐことができる。
【0044】
なお、上記の実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3のいずれにおいても、ステップS50では、戻りアドレスとして、前回再生およびアクセス動作が正常に終了したアドレスに限らず、初回問題がなかったアドレスや他の戻り先アドレスを選択することもできる。
【0045】
また、ステップS60では、前回問題がなかったアドレスから再度アクセス動作を行う際に変更する目的アドレスについて、再生条件やディスク内容などによって複数の値からの選択または計算により設定値を変化させる方法もある。
また、ステップS80に至ったとき、上記では、アクセス動作が正常に終了したときの問題がないSUBQ情報(アドレス)を取得して記憶部8に記憶させる、としたが、そのように処理する必要は絶対的なものではない。取得するか否かを、ステップS30での傷検出の有無や、目的アドレスとアクセス完了位置の差、サーボ状態、アクセス動作完了までのリトライ回数や時間等、他の条件に応じて決めるのでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の技術は、光ピックアップのアクセス動作においてビームスポットの傷部分に対する初回の突入時でも同じ位置へアクセス動作し続けるロックドループ現象などサーボ動作の大きな乱れを回避でき、さらに傷突入後直ちにトラックジャンプ動作に移行するので、迅速なアクセス動作が要求される高記録密度または高速回転の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法・制御装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における光ピックアップ制御装置の動作を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態2における光ピックアップ制御装置の動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態3における光ピックアップ制御装置の動作を示すフローチャート
【図5】従来の技術における光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置の構成を示すブロック図
【図6】傷検出部においてRF信号の2値化によって傷を検出する際の動作を示す波形図
【符号の説明】
【0048】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
3 光ピックアップ
4 RF信号生成部
5 サーボ制御部
6 ドライブ信号出力部
7 傷検出部
8 記憶部
Sr RF信号
Sc 傷検出信号
S10 アクセス動作
S20 タイムアウト判断処理
S30 傷検出処理
S40 目的アドレス到達判断処理
S42 再生状態判断処理
S44 目的アドレス許容範囲内判断処理
S50 前回再生可能位置へのアクセス処理
S60 目的アドレス変更処理
S70 エラー処理
S80 SUBQ(サブコードQデータ)記憶処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップによる光ディスク上の目的アドレスに対するアクセス動作中に前記光ピックアップによる光電変換信号から生成したRF信号の2値化を通じて光ディスクにおける傷を検出するステップと、
前記傷検出が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶するステップと、
前記傷検出が活性化された場合に前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップと、
戻し位置のアドレスから所定の値だけ前記目的アドレスを移動して前記光ピックアップをアクセスさせるステップとを含む光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法。
【請求項2】
さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、前記光ピックアップによる再生が正常かを判断し、再生が正常であればアクセス動作を終了し、再生が正常でなければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップへ移行するステップを含む請求項1に記載の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法。
【請求項3】
さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、現在の光ピックアップの位置が目的アドレスを基準に所定の範囲内にあるかを判断し、所定の範囲内にあればアクセス動作を終了し、所定の範囲内になければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すステップへ移行するステップを含む請求項1または請求項2に記載の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御方法。
【請求項4】
光ディスクの記録トラックに記録されている情報を光学的に読み出し光電変換して光電変換信号を生成する光ピックアップと、
前記光ピックアップによる前記光電変換信号からRF信号を生成するRF信号生成手段と、
前記RF信号生成手段による前記RF信号を2値化して前記光ディスクにおける傷を検出し傷検出信号を生成する傷検出手段と、
前記RF信号生成手段による前記RF信号から前記光ピックアップのビームスポットの前記記録トラックからのずれを示すトラッキングエラーを検出しサーボ制御信号を生成するとともに、前記傷検出手段による前記傷検出信号が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶させるサーボ制御手段と、
前記傷検出手段による前記傷検出信号が非活性の状態でアクセス動作が正常に終了したときの前記光ピックアップの位置を正常領域として記憶する記憶手段と、
前記サーボ制御手段による前記サーボ制御信号を入力し前記トラッキングエラーを打ち消すようにトラッキングドライブ信号を生成して前記光ピックアップをトラックに追従させるドライブ信号出力手段とを備え、
前記サーボ制御手段は、前記傷検出手段による前記傷検出信号が活性状態のときに、前記記憶手段から過去の正常領域を読み出し、前記サーボ制御信号として前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻した上で、戻し位置のアドレスから所定の値だけ前記目的アドレスを移動して前記光ピックアップを移動後の目的アドレスにアクセスさせるサーボ制御信号を生成するように構成されている光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置。
【請求項5】
前記サーボ制御手段は、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、前記光ピックアップによる再生が正常かを判断し、再生が正常であればアクセス動作を終了させるサーボ制御信号を生成し、再生が正常でなければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すサーボ制御信号を生成する請求項4に記載の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置。
【請求項6】
前記サーボ制御手段は、さらに、アクセス動作中に傷検出が活性化された場合に、現在の光ピックアップの位置が目的アドレスを基準に所定の範囲内にあるかを判断し、所定の範囲内にあればアクセス動作を終了させるサーボ制御信号を生成し、所定の範囲内になければ前記光ピックアップを前記過去の正常領域へ戻すサーボ制御信号を生成する請求項4または請求項5に記載の光ディスク再生装置における光ピックアップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−211838(P2010−211838A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53708(P2009−53708)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】