説明

光ディスク再生装置

【課題】ピックアップの構成部品であるトラッキングアクチュエータやフォーカスアクチュエータの層間短絡の発生を予防検知して信頼性の向上をはかる。
【解決手段】制御手段(サーボ制御用DSP6)が、トラッキングサーボを制御するトラッキングエラー信号(TE)、もしくはフォーカスサーボを制御するフォーカスエラー信号(FE)に基づいて層間短絡評価値を求め、この層間短絡評価値があらかじめ定めた閾値を超えたときに再生動作を停止させる制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)やCD(Compact Disc)等、光ディスクに記録されたデータを再生する光ディスク再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVDやCD等、光ディスクに記録されたデータを再生する光ディスク再生装置は、ピックアップを目標とするトラックへ移動させる粗駆動制御と、トラッキングアクチュエータを光ディスクの半径方向のトラックに追従させるトラッキングサーボ、およびフォーカスアクチュエータを光ディスクの垂直方向の面ぶれに対して追従させるフォーカスサーボによる微細駆動制御の2種類のピックアップ駆動制御を行う。
ピックアップを介して読み出されたRF(Radio Frequency)信号は再生系に出力され、復調、およびD/A(Digital/Analog)変換後、所望の映像や音声として出力される。
【0003】
ところで、ピックアップの構成部品であるトラッキングアクチュエータやフォーカスアクチュエータに使用されるコイルは、ある程度の纏まりを複数個重ねて鉄心の間に収められており、換言すれば、コイルの層が重なった状態になっている。
上記したピックアップは、フォーカスアクチュエータおよびトラッキングアクチュエータの配置が非常に接近しているために、フォーカスおよびトラッキングのいずれか一方でも追従のための動作が頻繁に発生した場合、これらアクチュエータに必要以上に負担がかかって層間短絡が発生し易くなり、また、双方のアクチュエータが互いに発熱することで層間短絡の発生確率を上げることが知られている。
【0004】
上記したコイルの層間短絡を防止するための技術として、従来、トルクセンサにおいて、物体に使用するトルクの変化に対応してインダクタンスが変化するコイルを複数備え、複数のコイル間で検出したトルク差が所定の値以上であるときに層間短絡が発生したものとして検知する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、コイルに流れる電流を検出し、マイコンが検出した電流値から算出したインピーダンスと、正常時におけるインピーダンスの基準値とを比較し、その差から層間短絡の有無を判定する技術(例えば、特許文献2参照)、あるいは、発電機回転中に回転子インピーダンスを測定し、回転子において層間短絡の有無と層間短絡が発生したコイル数を判定する技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−136366号公報(段落「0005」〜段落「0008」、図3)
【特許文献2】特開平8−40656号公報(段落「0005」〜段落「0006」、図1)
【特許文献3】特開平11−326469号公報(段落「0012」〜段落「0014」、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1〜特許文献3に開示された技術は、いずれも層間短絡が発生したか否かを判定する技術であって、どのモータのトルクが減少したかを検知する考えに基づいてなされたアイデアである。したがって、層間短絡の発生を予防検知して信頼性の向上をはかる技術については開示されていない。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ピックアップの構成部品であるトラッキングアクチュエータやフォーカスアクチュエータの層間短絡の発生を予防検知して信頼性の向上をはかった光ディスク再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかわる光ディスク再生装置は、トラッキングサーボを制御するトラッキングエラー信号、もしくはフォーカスサーボを制御するフォーカスエラー信号に基づいて層間短絡評価値を求め、この層間短絡評価値があらかじめ定めた閾値を超えたとき、再生動作を停止させる制御手段、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、トラッキングエラー信号もしくはフォーカスエラー信号に基づいて層間短絡評価値を求め、この層間短絡評価値があらかじめ定めた閾値を超えたときに再生動作を停止させることで、ピックアップを構成するトラッキングアクチュエータやフォーカスアキチュエータにおける層間短絡の発生を予防検知することができ、信頼性の向上をはかった光ディスク再生装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1にかかわる光ディスク再生装置の内部構成を示すブロック図である。
図1において、符号1は、デジタルデータが記録される光ディスクであり、符号2は、光ディスク1を回転させるスピンドルモータである。また、符号3は、光ディスク1上に記録されたデータを読取るピックアップであり、光ディスク1の記録面に対し垂直方向に微細動作を行うフォーカスアクチュエータ31と、光ディスク1の記録面の半径方向に微細動作を行うトラッキングアクチュエータ32と、光ディスク1の記録面からデータを読取って再生信号を生成する再生信号生成部33とから構成される。
【0011】
符号4は、後述するサーボ処理DSP6の制御の下で上記したスピンドルモータ2およびピックアップ3の駆動制御を行うモータ駆動部であり、フォーカスアクチュエータ駆動部41と、トラッキングアクチュータ駆動部42と、スレッドモータ駆動部43と、スピンドルモータ駆動部44とで構成される。
また、符号5は、再生信号生成部33により出力される信号のフィルタリングを行い、データを抽出する波形等化器であり、ここで抽出されたデータは、図示せぬ再生系へ出力される。
【0012】
符号6は、本発明の制御手段としてのサーボ処理DSP(Digital Signal Processor)であり、トラッキングアクチュエータ32を光ディスク1において半径方向に移動させることによりトラックに追従させるトラッキングサーボと、フォーカスアクチュエータ31を光ディスク1において垂直方向に移動させることにより面ぶれに対して追従させるフォーカスサーボとによりピックアップ3の構成部品であるトラッキングアクチュエータ32とフォーカスアクチュエータ31の駆動制御を行う。
サーボ処理DSP6は、後述する制御マイコン7によるパラメータ設定に従い、上記したフォーカスアクチュエータ31、トラッキングアクチュエータ32等ピックアップ3の構成部品の他に、ピックアップ3を目的トラックにシークするスレッドモータ(図示省略)、および光ディスク1を回転させるスピンドルモータ2のサーボ制御をも実行する。このため、サーボ処理DSP6は、トラッキングエラー生成部61と、フォーカスエラー生成部62と、フォーカス制御部63と、トラッキング制御部64と、スレッドモータ制御部65と、スピンドルモータ制御部66等各制御ブロックで構成される。
【0013】
なお、サーボ処理DSP6は、実際は、上記した各制御ブロックの動作を制御するために、制御マイコン7により制御パラメータが設定されるレジスタ群、および演算に用いられるアキュレームレータの集合により構成される。
【0014】
トラッキングエラー生成部61は、再生制御信号生成部33からの出力信号を基にトラッキングエラー信号(TE)を生成してトラッキング制御部64へ出力する。また、トラッキング制御部64は、トラッキングエラー生成部61により出力されるトラッキングエラー信号(TE)と、後述する制御マイコン7により出力される利得データとを乗算することによりトラッキングアクチュエータ32を駆動するトラッキングアクチュエータ駆動制御信号を生成してトラッキングアクチュエータ駆動部42に出力する。
【0015】
一方、フォーカスエラー生成部62は、再生制御信号生成部33からの出力信号を基にフォーカスエラー信号(FE)を生成してフォーカス制御部63へ出力する。
フォーカス制御部63は、フォーカスエラー生成部62により出力されるフォーカスエラー信号(FE)と、後述する制御マイコン7により出力される利得データとを乗算することによりフォーカスアクチュエータ31を駆動するフォーカスアクチュエータ駆動制御信号を生成してフォーカスアクチュエータ駆動部41に出力する。
なお、フォーカスアクチュエータ駆動部41、およびトラッキングアクチュエータ駆動部42は、それぞれ、フォーカスアクチュエータ駆動制御信号、トラッキングアクチュエータ駆動制御信号を得て、それぞれのアクチュエータ31、32に印加する電圧を生成し、フォーカスアクチュエータ31、トラッキングアクチュエータ32を駆動する。
【0016】
スレッドモータ制御部65は、トラッキング制御部64による演算結果を積分してスレッドモータ制御信号を生成し、スレッドモータ駆動部43へ出力する。スレッドモータ駆動部43は、スレッドモータ制御部65により生成されるスレッドモータ制御信号に基づきスレッドモータに印加する電圧を生成する。
また、スピンドルモータ制御部66は、スピンドルモータの制御信号を生成してスピンドルモータ駆動部44に出力する。スピンドルモータ駆動部44は、スピンドルモータ制御部66により生成されたスピンドルモータの制御信号に基づきスピンドルモータ2に印加するための電圧を生成する。
【0017】
なお、符号8は、サーミスタ等の温度センサであり、光ディスク装置内部の温度を計測して制御マイコン7に出力する。制御マイコン7は、温度センサ8から取得される温度情報から雷蔵ROMあるいはRAMに記録されたテーブルを索引し、温度情報毎あらかじめ定義された層間短絡閾値をサーボ処理DSP6に出力する。詳細は後述する。
また、制御マイコン7は、サーボ処理DSP6の各制御ブロック61〜66に変数を含む各種パラメータの設定を行い、必要なシーケンスの制御を行う。
【0018】
図2は、この発明の実施の形態1にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
以下、図2に示すフローチャートを参照しながら、図1に示す実施の形態2にかかわる光ディスク再生装置の動作について説明する。
【0019】
まず、サーボ処理DSP6は、層間短絡が発生する可能性のある判断基準値としての閾値(以下、層間短絡閾値という)を設定する(ステップST201)。ここでは、層間短絡閾値(SIKII)を“A”とし、後述する層間短絡評価値sk(nT)が、層間短絡閾値(SIKII)“A”以上の値となったときに、該当するアクチュエータ(フォーカスアクチュエータ31またはトラッキングアクチュエータ32)に層間短絡が発生する可能性があるものとみなす。
フォーカス制御部63は、フォーカスエラー制御部62により生成されたフォーカスエラー信号(FE)の時系列データ(離散的データ:x(nT))をT時間間隔で取込む(ステップST202)。次に、フォーカス制御部63は、フォーカスアクチュエータ31の位相余裕、およびゲイン余裕を確保した状態で、ピックアップ3を合焦点に移動させるための制御を実行するために以下のデジタル演算処理を実行する。
【0020】
すなわち、フォーカス制御部63は、フォーカスアクチュエータ駆動部41において離散系時システムをh(nT)、離散的データx(nT)としたときのフォーカス制御値y(nT)を以下の演算式(1)を実行することにより生成する(ステップST203)。
【0021】
【数1】

【0022】
次に、フォーカス制御部63は、生成したフォーカス制御値y(nT)の絶対値を層間短絡評価値sk(nT)として求め(ステップST204)、当該層間短絡評価値sk(nT)と、先に設定した層間短絡閾値(SKII)“A”とを比較する(ステップST205)。
ここで、フォーカス制御部63は、層間短絡閾値(SKII)より層間評価値sk(nT)の方が大きい場合にフォーカスアクチュエータ31に層間短絡が発生する可能性があると判定し、ピックアップ3の駆動を停止し、再生停止処理を実行する(ステップST206)。なお、層間短絡評価値sk(nT)が層間短絡閾値(SKII)より小さい場合は、層間短絡が発生する可能性がないと判定してステップST202の処理に戻り、引続き、層間短絡評価値sk(nT)の監視を継続する。
【0023】
なお、上記した実施の形態1では、フォーカス制御信号(FE)を層間短絡の制御に適用する例についてのみ説明したが、トラッキング制御(TE)を間短絡の制御に適用しても同様の作用効果が得られる。但し、この場合の制御主体は、トラッキング制御部64になる。ここでは、DVDやCD等、光ディスク1においてピックアップ3の構成部品であるフォーカスアクチュエータ31およびトラッキングアクチュエータ32の変位が大きいとき、すなわち、フォーカスアクチュエータ31およびトラッキングアクチュエータ32の制御値が大きいときに層間短絡が発生することを利用し、フォーカスアクチュエータ31もしくはトラッキングアクチュエータ32の制御値から層間短絡評価値を算出した。
この発明の実施の形態1によれば、層間短絡評価値は大きいほど、層間短絡が発生する可能性が高いことを意味するため、層間短絡が発生する値に至る前にピックアップ3の駆動を停止させ、再生停止処理を実行することで、層間短絡の発生を未然に防ぐことができる。また、このとき、サーボ処理DSP6が扱うデジタル値から、演算により算出された値と閾値とを比較するため、付加回路を必要とすることなく、安価に層間短絡の保護を行うことができる。
【0024】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2にかかわる光ディスク制御装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
図2に示す実施の形態1との差異は、サーボ処理用DSP6(フォーカス制御部63またはトラッキング制御部64)が、フォーカスエラー信号(FE)、もしくはトラッキングエラー信号(TE)にデジタル演算を施すことにより生成される値を所定回数分加算した値、ここでは50回が、あらかじめ設定された層間短絡閾値(SIKII)を超えたときにピックアップ3の駆動を停止していることにある。すなわち、ステップST304の処理において、フォーカス制御値y(nT)の絶対値をsk(nT)とし、n=0〜50までの加算を実行し、その結果を層間評価値sk(nT)としてステップST301で設定された層間短絡閾値Bと比較している。他の処理は図2に示す実施の形態1と同じである。
【0025】
上記した実施の形態2によれば、層間短絡評価値として、フォーカス制御値もしくはトラッキング評価値を複数回加算した値を用いることにより、これら制御値のばらつきを排除することが可能になり、層間短絡の発生の危険性があるタイミングを正確に算出することができ、過検知による幣害の発生機会を減少させる効果が得られる。
【0026】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3にかかわる光ディスク制御装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
図3に示す実施の形態2との差異は、サーボ処理用DSP6(フォーカス制御部63またはトラッキング制御部64)が、フォーカスエラー信号(FE)もしくはトラッキングエラー信号(TE)にデジタル演算を施すことにより生成される値を二乗した値が層間短絡閾値“C”を超えたときにピックアップ3の駆動を停止する制御を行うことにある。すなわち、ステップST404の処理において、フォーカス制御値y(nT)の2乗を演算し、n=0〜50までの加算を実行し、その結果を層間評価値sk(nT)としてステップST401で設定された層間短絡閾値Cと比較している。他の処理は図3に示す実施の形態2と同じである。
【0027】
上記した実施の形態3によれば、層間短絡評価値として、フォーカス制御値もしくはトラッキング評価値の2乗を複数回数加算した値を用いることにより、これら制御値のばらつきを、さらに排除することが可能になり、層間短絡の発生の危険性があるタイミングを一層正確に算出することができ、過検知による弊害の発生機会をさらに減少させる効果がある。
【0028】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4にかかわる光ディスク制御装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
図4に示す実施の形態3との差異は、サーボ処理用DSP6(フォーカス制御部63またはトラッキング制御部64)が、フォーカスエラー信号もしくはトラッキングエラー信号にデジタル演算を施すことにより生成される値と、当該値をN回加算して得られる値と、当該値を二乗して得られる値のそれぞれが連続して層間短絡閾値“B”を超えたときにピックアップ3の駆動を停止する制御を行うことにある。
【0029】
すなわち、ステップST506の処理において、加算回数(変数KAI)が“6”であるか否かを判定し、加算回数が6回に達していると判定された場合にはステップST507の再生停止処理へ、加算回数が6回に達していない場合は、回数(変数KAI)を+1更新して通過回数をカウントしてステップST502の処理に戻る(ステップST509)。
一方、ステップST508では、ステップST505で、層間短絡評価値sk(nT)が、層間短絡閾値(SIKII)Bより小さいときは、変数KAIを“0”に設定して、ステップST502の処理に戻る。これら一連の処理で、層間短絡評価値sk(nT)が、6回連続して層間短絡閾値“B”以上の値となるときに再生を停止させている。他の処理は図4に示す実施の形態3と同じである。
【0030】
層間短絡は、大電流が流れた場合に短時間で発生するモードと、ある程度低い電流値で長時間流れた場合に発生するモードとがある。上記した実施の形態4によれば、後者の発生確率が支配的であるとき、層間短絡評価値が複数回連続した場合に対応する閾値を設けることで、ピックアップ3におけるアクチュエータの層間短絡の発生モデルに即した保護が可能となるという効果が得られる。
【0031】
実施の形態5.
図6、図7は、この発明の実施の形態5にかかわる光ディスク制御装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
まず、サーボ処理DSP6は、層間短絡が発生する可能性のある判断基準値としての層間短絡閾値(SIKII)を設定する(ステップST601)。ここでは、層間短絡閾値(SIKII)を“B”とし、後述する層間短絡評価値sk(nT)が、層間短絡閾値“B”以上の値となったときに、ピックアップ3の構成部品であるフォーカスアクチュエータ31またはトラッキングアクチュエータ32に層間短絡が発生する可能性があるものとみなす。
【0032】
次に、フォーカス制御部63は、フォーカスエラー制御部62により生成されたフォーカスエラー信号(FE)の時系列データ(離散的データ:x(nT))をT時間間隔で取込む(ステップST602)。また、トラッキング制御部64は、トラッキングエラー生成部61により生成されたトラッキングエラー信号の時系列データ(離散的データ:xt(nT))をT時間間隔で取込む(ステップST603)。
続いて、フォーカス制御部63は、フォーカスアクチュエータ駆動部41において、離散系時システムをh(nT)、離散的データxt(nT)としたときのフォーカス制御値y(nT)を、実施の形態1で用いた演算式(1)を演算することにより生成する(ステップST604)。また、トラッキング制御部64は、トラッキングアクチュエータ駆動部42において、離散系時システムをht(nT)、離散的データxt(nT)としたときのトラッキング制御値yt(nT)を以下の演算式(2)を演算することにより生成する(ステップST605)。
【0033】
【数2】

【0034】
次に、フォーカス制御部63は、ステップST604で生成したフォーカス制御値y(nT)の絶対値をN(50)回繰り返し加算して層間短絡評価値sk(nT)として算出し(ステップST606)、また、トラッキング制御部64は、ステップST605で生成したトラッキング制御値yt(nT)の絶対値を求め、これをN(50)回繰り返し加算し、層間短絡評価値skt(nT)として算出する(ステップST607)。
続いて、サーボ処理DSP6は、上記により算出された層間短絡評価値sk(nT)とskt(nT)を加算した値と、先に設定された閾値(SIKII)“B”とを比較し(図7のステップST608)、層間短絡評価値sk(nT)+skt(nT)が閾値(SIKII)“B”以上の値となったときに更に、層間短絡評価値sk(nT)+skt(nT)が6回連続して閾値(SIKII)“B”を超えたか否かを判定し(ステップST610)、超えたと判定されたときにピックアップ3の駆動を停止する(ステップST610)。
【0035】
なお、図7のステップST609の処理において、加算回数が6回に達していない場合は変数(KAI)を+1更新して図6のステップST602の処理に戻る(ステップST612)。また、ステップST608で層間短絡評価値sk(nT)+skt(nT)が層間短絡閾値(SIKII)“B”より小さいときは、変数(KAI)を“0”として、ステップST502の処理に戻る(ステップST611)。
これら一連の処理で、層間短絡評価値sk(nT)+skt(nT)が、6回連続して層間短絡閾値(SIKII)“B”以上の値となったときに、ピックアップ3の駆動を停止させることにより再生停止処理を実行している(ステップST610)。
【0036】
上記した実施の形態5によれば、層間短絡評価値として、フォーカス及びトラッキング制御値を合算し、これを層間短絡閾値と比較することにより、ピックアップ3における層間短絡の発生モデルに則した保護が可能になる。
【0037】
実施の形態6.
図8、図9は、この発明の実施の形態6にかかわる光ディスク制御装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
図6、図7に示す実施の形態5との差異は、温度センサ8により、トラッキングアクチュエータもしくはフォーカスアクチュエータが搭載されるピックアップ3近傍の温度を測定し、制御マイコン7により取込まれる温度情報により、サーボ処理DSP6が、ピックアップ3の駆動停止制御を行うときに使用していた層間短絡閾値(SIKII)を変更することにある。
【0038】
具体的には、制御マイコン7が、温度センサ8により計測され、取込まれる温度に対応して用意される層間短絡閾値の補正係数を内蔵のデータテーブル(ROMまたはRAM)から取得し、サーボ処理DSP6に出力する(図8のステップST802)。
このことにより、サーボ処理DSP6は、層間短絡閾値(SIKII.HOSEI)を設定するが、ここでは、“P.SHIKII”とし、図9のステップST810において、層間短絡評価値sk(nT)+skt(nT)が、閾値“P.SHIKII”以上の値となり、かつ、ステップST811において、6回連続して閾値“P.SIKII”を超えたと判定されたときに、フォーカスアクチュエータ31およびトラッキングアクチュエータ32に層間短絡が発生する可能性があるものとみなし、ピックアップ3の駆動を停止して再生停止処理を実行する(ステップST812)。他の処理は、図6、図7に示す実施の形態5と同様である。
【0039】
層間短絡は周囲温度が高いほど発生しやすいが、この発明の実施の形態6によれば、層間短絡評価値の閾値を周囲温度で補正することにより、層間短絡の発生モデルに則したピックアップ3の保護が可能となる。
また上記説明ではデータテーブルで温度補正を行う例を示したが温度をパラソータとする補正式を用いても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
以上説明のように、この発明は、トラッキングサーボを制御するトラッキングエラー信号、もしくはフォーカスサーボを制御するフォーカスエラー信号に基づいて層間短絡評価値を求め、この層間短絡評価値があらかじめ定めた閾値を超えたとき、再生動作を停止させることで、ピックアップ3を構成するトラッキングアクチュエータ32やフォーカスアクチュエータ31の層間短絡の発生を未然に防ぐことができる。また、このとき、サーボ処理DSP6が扱うデジタル値から、演算により算出された層間短絡評価値と閾値とを比較するため、付加回路を必要とすることなく、安価に層間短絡の保護を行うことができる。
更に、層間短絡評価値として、フォーカス制御値もしくはトラッキング制御値を複数回加算した値を用いることにより、あるいは、フォーカス制御値もしくはトラッキング制御値の2乗を複数回数加算した値を用いることにより、さらにはこれら組み合わせを用いることで、制御値のばらつきを排除することが可能になり、層間短絡の発生の危険性があるタイミングを正確に算出することができ、過検知による幣害の発生機会を減少させる効果が得られる。
【0041】
なお、層間短絡には、大電流が流れた場合に短時間で発生するモードと、ある程度低い電流値で長時間流れた場合に発生するモードとがある。後者の発生確率が支配的であるとき、層間短絡評価値が複数回連続した場合に対応する閾値を設けることで、ピックアップ3におけるアクチュエータの層間短絡の発生モデルに即した保護が可能になる。
また、層間短絡評価値として、フォーカス及びトラッキング制御値を合算し、これを層間短絡閾値と比較することにより、ピックアップ3における層間短絡の発生モデルに則した保護が可能になる。さらに、層間短絡は周囲温度が高いほど発生しやすいが、層間短絡評価値の閾値を周囲温度で補正することによりピックアップの保護の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態1にかかわる光ディスク再生装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態3にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態4にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態5にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態5にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態6にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態6にかかわる光ディスク再生装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 光ディスク、2 スピンドルモータ、3 ピックアップ、4 モータ駆動部、5 波形等化器、6 サーボ処理DSP、7 制御マイコン、8 温度センサ、31 フォーカスアクチュエータ、32 トラッキングアクチュエータ、33 再生制御信号生成部、41 フォーカスアクチュエータ駆動部、42 トラッキングアクチュエータ駆動部、43 スレッドモータ駆動部、44 スピンドルモータ駆動部、61 トラッキングエラー生成部、62 フォーカスエラー生成部、63 フォーカス制御部、64 トラッキング制御部、65 スレッドモータ制御部、66 スピンドルモータ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラッキングアクチュエータを光ディスクの半径方向のトラックに追従させるトラッキングサーボと、フォーカスアクチュエータを前記光ディスクの垂直方向の面ぶれに対して追従させるフォーカスサーボとによりピックアップの駆動制御を行い、前記光ディスクに記録されたデータの再生を行う光ディスク再生装置であって、
前記トラッキングサーボを制御するトラッキングエラー信号、もしくは前記フォーカスサーボを制御するフォーカスエラー信号に基づいて層間短絡評価値を求め、前記層間短絡評価値があらかじめ定めた閾値を超えたときに再生動作を停止させる制御手段、
を備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記トラッキングエラー信号もしくは前記フォーカスエラー信号の時系列データを所定時間間隔で取込み、前記トラッキングアクチュエータもしくは前記フォーカスアクチュエータの位相余裕およびゲイン余裕を確保した状態で前記ピックアップを目的位置に移動させるためのデジタル演算を実行してトラッキング制御値もしくはフォーカス制御値を求め、当該トラッキング制御値もしくはフォーカス制御値に基づき前記層間短絡評価値を求めることを特徴とする請求項1記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記トラッキング制御値もしくはフォーカス制御値を所定回数分加算することにより前記層間短絡評価値を求めることを特徴とする請求項2記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記トラッキング制御値もしくはフォーカス制御値を二乗して前記層間短絡評価値を求めることを特徴とする請求項2または請求項3記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記トラッキング制御値もしくはフォーカス制御値を所定回数分加算して得られる層間短絡評価値または、前記トラッキング制御値もしくはフォーカス制御値を二乗して得られる層間短絡評価値が、所定回数連続して前記閾値を超えたときに、前記再生動作を停止させることを特徴とする請求項1記載の光ディスク再生装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記トラッキング制御値をもとにして得られたトラッキング層間短絡評価値と
前記フォーカス制御値をもとにして得られたフォーカス層間短絡評価値との和を
再生装置の層間短絡評価値として求めることを特徴とする請求項1記載の光ディスク再生装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記トラッキングアクチュエータ、もしくはフォーカスアクチュエータが搭載される前記ピックアップ近傍の温度を測定し、取込まれる温度情報により、前記閾値を変更することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の光ディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−299482(P2007−299482A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127704(P2006−127704)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】