説明

光ディスク用硬化性樹脂組成物および光ディスク

【課題】基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが10〜150μmである保護層(透明カバー層)とを有する光ディスク(例えばブルーレイディスク)において、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性、凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れた光ディスク用硬化性樹脂組成物、およびそれを保護層として用いた光ディスクを提供すること。
【解決手段】基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが20〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、硬化性樹脂組成物中に、(a)硬化物のガラス転移温度が−10〜45℃で、25℃における弾性率が50〜900MPaであるラジカル重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマー20〜60質量%と、(b)平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類を30〜80質量%、および、(c)光重合開始剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク用硬化性樹脂組成物および光ディスクに関するものである。より詳しくは、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが20〜150μmである保護層とを有する光ディスク(例えばブルーレイディスク)において、該光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクは、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性)や保護層を押し込んだ後の凹み永久変形量が小さいことに優れたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質のデジタルハイビジョン放送が始まったことで、フルハイビジョン対応の高画質で大画面の液晶やプラズマテレビが普及されるようになった。しかし、従来の光記録媒体であるDVD(digital versatile disc)は記録容量が小さいので、高品位の動画像を長時間録画することができなかった。これに応えるために、DVDの5倍以上もの記録容量を有する新しい光記録媒体の規格として青色レーザー光で情報を記録・再生するブルーレイディスクが開発、販売されるようになった。
【0003】
この新規格では、光記録媒体の大容量化のために波長405nmの青色レーザー光の採用や記録・再生光学系対物レンズの開口数(NA)を0.85に大きくして、記録・再生時のレーザービームスポット径をDVDよりも約0.44倍まで小さくし、また、信号が記録されるトラックピッチ(間隔)を約0.43倍に狭くすることで、5倍以上もの大記録容量化が実現されている。
【0004】
また大容量化の技術としてもう1つ採用されている技術を以下に説明する。それは、レーザー入射側から見たディスク表面には反射膜や記録層を保護するために保護層が施されているが、この保護層の厚み(ディスク表面と信号の記録面との距離)が、DVDでは約600μmであったが、ブルーレイディスクでは約100μmとかなり薄くしている。このように、ブルーレイディスクは保護層厚みを薄くすることで、ディスクの反り等による傾きで生じるレーザービームスポットの歪(ボケ)を抑え、信頼性の高い記録・再生が実現できるようにしている。
特許文献1には、保護層(光透過膜)の厚みムラが情報の記録、再生に大きな問題を与えるため、保護層厚みには高い均一性が求められることが記載されている。また、特許文献2には、保護層(透明カバー層)厚みが100μm±2μmに制御される必要性が記載されている。また、特許文献3には、記録媒体に生じた凹み等の傷(永久的な変形)が原因でレーザースポット位置が変動し、情報の記録、再生に問題が起きる可能性があることが記載されている。なお、長期安定した情報の記録、再生の観点から、記録媒体保存時において、保護層厚みの変化が小さいことが望まれる。特許文献4には同じく記録再生に支障をきたすことのないように保護層(光透過層)に傷や変形が生じることを防止する技術が記載されている。変形量を測定する手法として微小なダイヤモンド圧子を押し込みながら変形中の荷重と変位を測定する方法が採用されている。
また、特許文献5や特許文献6には、高温・高湿環境下や低温環境下に保存した場合、光記録媒体に反りが発生すると駆動装置への装填に支障が生じることや、捻りを伴う反りが発生すると読み取りエラーが生じるので、種々環境下で発生する反りが少ない光記録媒体が求められていることが記載されている。
保護層の形成方法として主に2つの方法が挙げられる。ポリカーボネート製のシートを紫外線硬化型の接着剤で貼り合わせるシート接着法と紫外線硬化型の樹脂をスピンコートで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるスピンコート法ある。現在はコストの面からスピンコート法が主流になっている。しかし、紫外線硬化型の樹脂を用いて保護層を形成すると、上述の膜厚均一性が求められことに加えて、主に紫外線硬化型の樹脂の硬化収縮によって光記録媒体に反りが生じるという問題が起こる。このため、予め記録媒体基板を硬化収縮で生じる反りとは反対方向に反りを形成させて紫外線硬化型樹脂を塗布・硬化させる方法が行われる場合や、再生・記録装置での補正等が行われる場合があるが、許容範囲(補正可能な範囲)を超えた反りの場合は、光記録媒体への正確なデーター記録や再生ができなくなる場合や、再生・記録装置への出し入れができなくなる場合がある。また、この反りは初期の反りが小さいことが求められるだけでなく、長期安定性を確認する試験時(高温環境下や低温環境下での保存試験)においても反りが増加しない(反り変化量が小さい)ことが求められる。
【0005】
また、特許文献7には、透明性、耐摩耗性、機械特性に優れた保護層(光透過層)を有する光ディスクとするために、保護層の引張弾性率が特定の範囲とすることが望ましいことが記載されている。特許文献8には、紫外線照射して得られる硬化塗膜の環境変化に対する寸法安定性に優れた光記録媒体が開示されている。しがしながら、反射膜上に保護層(光透過層)を有する光ディスク(例えば、ブルーレーザー光により情報の読み取りを行うブルーレイディスク)において、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性)や保護層を押し込んだ後の凹みによる永久変形量が小さくするためには、更なる改良の検討が必要であった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−351102号公報
【特許文献2】特開2007−115356号公報
【特許文献3】特開2008−126518号公報
【特許文献4】特開2000−322768号公報
【特許文献5】特開2002−157782号公報
【特許文献6】特開2003−132596号公報
【特許文献7】特開2003−263780号公報
【特許文献8】特開2007−213744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが20〜150μmである保護層(透明カバー層)とを有する光ディスク(例えば、ブルーレーザー光により情報の読み取りを行うブルーレイディスク)において、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性)や凹み等の永久変形量が小さいことに優れた光ディスク用硬化性樹脂組成物、またこれを保護層として用いた光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、光ディスク用硬化性樹脂性組成物(以下、単に「組成物」と略する場合がある)において、使用するラジカル重合性のオリゴマーおよび/またはポリマー、(メタ)アクリル酸エステル類を特定することで、透明性が高く、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性)や保護層を押し込んだ後の凹み等の永久変形量が小さいことに優れた光ディスクが得られることを見出して本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の光ディスク用硬化性樹脂性組成物は、基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが20〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、硬化性樹脂組成物中に、(a)硬化物のガラス転移温度が−10〜45℃で、25℃における弾性率が50〜900MPaであるラジカル重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマー20〜60質量%と、(b)(a)以外の平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類を30〜80質量%、および、(c)光重合開始剤とを含有することを特徴としている。
【0010】
前記(メタ)アクリル酸エステル類として分子量が550以上であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジアクリレートを使用していることことが好ましい。
【0011】
また、本発明の硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が800以上3500mPa・s以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の光ディスクは、上記光ディスク用硬化性樹脂性組成物を硬化させてなる保護層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、該光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクは、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性)や保護層を押し込んだ後の凹み等の永久変形量が小さいことに優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
≪光ディスク用硬化性樹脂組成物≫
<(a)ラジカル重合性を有するオリゴマーおよび/またはポリマー>
本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物は、(a)硬化物のガラス転移温度が−10〜45℃で、25℃における弾性率が50〜900MPaであるラジカル重合性基を有するオリゴマーおよび/またはポリマー(以下単にラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーと称する場合がある)を硬化性樹脂組成物中に20〜70質量%含有するものであるが、これらの成分は、それぞれ1種又は2種以上含有することができる。ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーの硬化物は、保護層を作成する際に採用する光重合開始剤をオリゴマー/ポリマーに添加・混合し、後述の硬化条件で作成することが好ましい。オリゴマー/ポリマーを硬化させて得られる硬化物は、ガラス点移転温度が−10〜45℃である。この好ましくは−10〜40℃、最も好ましくは−5〜40℃である。ガラス点移転温度は、動的粘弾性測定により得られた値であり、最大tanδ値の温度を採用する。なお、測定条件としては、引っ張りモード、周波数1Hz、クランプ距離25mm、振幅0.1%、昇温速度5℃/分を採用する。ガラス点移転温度が45℃よりも大きい場合には、光ディスクの反りが大きくなる場合がある。また、−10℃よりも小さい場合には、光ディスクに凹みが付いたりする場合があり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。また、オリゴマー/ポリマーの硬化物の弾性率は、同様に得られた硬化物を用いて動的粘弾性測定により得られた値25℃における貯蔵弾性率Eの値である。硬化物の弾性率は、50〜900MPaである。好ましくは50〜850MPa、よりこの好ましくは55〜850MPa、最も好ましくは55〜800MPaである。弾性率が50MPaより小さい場合には、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。特に、保護層を押し込むと凹みが付いたりする。また、弾性率が900MPaより大きい場合では、得られる光ディスクの反りが増大したり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0015】
ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーとは、熱およびまたは紫外線、電子線、ガンマー線等の活性エネルギー線により硬化するものをいう。ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーとしては、飽和若しくは又は不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるウレタンポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート;ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類等とカチオン重合性化合物(例えば、ビニルエーテル類、アルキレンオキサイド類、グリシジルエーテル類等)との反応によって得られる(メタ)アクリロイル基ペンダントポリマー;デンドリマー、ハイパーブランチポリマーなどの多分岐型反応性(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。イオン重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマーとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール(例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はビスフェノール化合物等)又はそのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるノボラック型エポキシ樹脂類(例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂等)、トリスフェノールメタントリグリジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(商品名、ダイセル化学工業社製)等の脂環式エポキシ樹脂;多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等)そのアルキレンサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られる脂肪族エポキシ樹脂。これらの中でもウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基ペンダントポリマーが好ましい。
【0016】
特にウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合にはイソシアナート成分として脂環骨格または芳香環骨格を有する多価イソシアナートが好ましく、特に好ましくは脂環骨格を有する2価のイソシアナートである。脂環骨格を有する2価のイソシアナートとしてはイソホロンジイソシアナートが挙げられる。多価アルコール成分としてオキシアルキレン骨格を有する多価アルコールが好ましく、2価アルコールがさらに好ましい。オキシアルキレン骨格を有する2価アルコールとしてはオリゴエチレングリコール、オリゴプロピレングリコール、オリゴブチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが挙げられ、オリゴエチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが特に好ましい。オキシアルキレン骨格の繰り返し数は4〜12が好ましく、6〜10がさらに好ましい。水酸基含有(メタ)アクリレート成分は水酸基含有アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート等が挙げられ、これらの中でも2−ヒドロキシエチルアクリレートが特に好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートは組成中にイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有しても良い。イソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合の好ましいイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分は上述と同様である。ウレタン(メタ)アクリレートは原料組成100重量部中に原料イソシアナート成分が15〜30重量部、原料多価アルコール成分が45〜65重量部、原料水酸基含有(メタ)アクリレート成分が5〜40重量部であることが好ましく、原料イソシアナート成分が18〜25重量部、原料多価アルコール成分が50〜60重量部、原料水酸基含有(メタ)アクリレート成分が15〜32重量部であることがより好ましい。またイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合には多価アルコール成分を有するウレタン(メタ)アクリレートとの合計として100重量部に対し、1〜20重量部配合することが好ましく、5〜15重量部であることが特に好ましい。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレートの合成方法は特に制限されないが、例えば原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法;原料イソシアネート成分、原料水酸基含有(メタ)アクリレート、および多価アルコール成分を一括に仕込んで反応させる方法;原料イソシアネート成分および多価アルコール成分を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法が挙げられる。これらの中でも原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法を用いることにより、上記イソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートをも同時に合成することができるため、生産性が向上するため特に好ましい。なお原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法を採用する場合にも原料水酸基含有(メタ)アクリレートを初期添加と後段添加に分割し、多価アルコール成分添加後に一部の原料水酸基含有(メタ)アクリレートを分割添加することも好ましい。
【0018】
ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の合計量に対して、20〜60質量%である。より好ましく25〜55質量%である。合計含有量が20質量%未満であれば、光ディスクの長期保存安定性に劣る場合がある。
【0019】
物性上、高硬度が必要な場合には、前記(a)ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーとしては、下記式(1):
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有することもできる。
【0022】
<ビニル系重合体>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、低分子量成分が増加すると硬化膜層の強度が低下することがある。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1000〜20000、さらに好ましくは1500〜10000の範囲内である。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)が500未満であると、硬化速度の低下や硬化物の強度低下を生じることがある。また20000を超えると基材との濡れ性の低下、組成物を調整する際に混合時間の延長、粘度が高くなり塗工時の作業性の低下、さらには、例えばプラスチック基材に塗布し硬化させて得られた積層体の反りが大きくなる場合がある。ここで、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/minの条件下で、東ソー株式会社製のカラム TSK−gel SuperHM−H 2本、TSK−gel SuperH2000 1本を用い、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0023】
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、固体状のモノマー含有量が多い重合体の場合を除き、液状粘性体として得ることができる。液状粘性体であれば、(メタ)アクリレート系モノマー等への溶解性が良いので、組成物を調整する際に作業効率の向上化が図れる。
【0024】
上記式(1)において、Rで表される炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基などが挙げられる。Rで表される置換基は、上記式(1)中にm個存在するが、同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
上記式(1)において、mは正の整数、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。
【0026】
<ビニル系重合体の調製>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、下記式(2):
【0027】
【化2】

【0028】
[式中、R、Rおよびmは上記式(1)と同意義である]
で示される異種重合性モノマーを、従来から知られているカチオン重合により調整することが可能であり、又、特開2006−241189号明細書に記載された方法でリビングカチオン重合することにより、容易に調製することもできる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。後者の場合、得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0029】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。これらの異種重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適である。
【0030】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが1である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−ハロゲノエチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。また、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが2である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−(2−ハロゲノエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。
【0031】
上記式(1)で示されるビニル系重合体がカチオン重合可能なモノマーに由来する構造単位を有する共重合体である場合、かかる共重合体は、上記式(2)で示される異種重合性モノマーと、カチオン重合可能なモノマーとを、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合することにより、容易に調製することができる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0032】
カチオン重合可能なモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジヒドロフランなどのビニルエーテル化合物;スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;イソプロペニルスチレン、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチルなどのジビニル化合物やトリビニル化合物;などが挙げられる。これらのカチオン重合可能なモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合可能なモノマーのうち、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジヒドロフラン、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物が好適である。
【0033】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、ラジカル重合性またはアニオン重合性の(メタ)アクリロイル基と、カチオン重合性のビニルエーテル基とを同時に有するので、重合方法を選択することにより、(メタ)アクリロイル基またはビニルエーテル基をペンダント基として有する重合体が得られる。本発明では、上記式(2)で示される異種重合性モノマーのビニルエーテル基を、単独で、あるいは、カチオン重合可能なモノマーと共に、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合させることにより、(メタ)アクリルロイル基をペンダント基として有する上記式(1)で示されるビニル系重合体が得られる。
【0034】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーと、カチオン重合可能なモノマーとをカチオン重合あるいはリビングカチオン重合する場合、モノマーのモル比(カチオン重合可能なモノマー/上記式(2)で示される異種重合性モノマー)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜8、さらに好ましくは0.8〜5の範囲内である。上記式(2)で示される異種重合性モノマーは上記共重合比に調整することによって、硬化性に優れ、硬化物の架橋密度が高く表面硬度に優れた組成物を得ることができる。
【0035】
<(b)(メタ)アクリル酸エステル類>
本発明の組成物は、前記(a)ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマーに加えて、(b)(a)以外の平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類(以下単に(メタ)アクリル酸エステル類と称する場合がある)を30〜80質量%必須成分として含有する。(メタ)アクリル酸エステル類を含むことにより、液粘度や硬化物の物性を調節することができるという効果を奏する。
【0036】
(b)(メタ)アクリル酸エステル類としては、少なくとも1つ以上のラジカル重合性基有するもので、(メタ)アクリル酸エステル類の合計に対する平均アクリル当量が280〜500となるように使用すれば、特に限定されるものではない。本発明の平均アクリル当量は、次のように計算する。(メタ)アクリロイル基が1つの場合は、分子量の値をアクリロイル基数をMxとする。(メタ)アクリロイル基が2つ以上の場合は、(メタ)アクリル酸エステル類の分子量÷(メタ)アクリロイル基数をMxとする。(メタ)アクリル酸エステル類の合計量総和をA(質量部)、(メタ)アクリル酸エステルXの量をAx(質量部)とする。平均アクリル当量は、Mx×Ax÷Aの総和で求める。平均アクリル当量は、280〜500である。好ましくは280〜450、最も好ましくは280〜400である。平均アクリル当量が280よりも小さい場合には、光ディスクの反りが大きくなる場合がある。また、500よりも大きい場合には、光ディスクに凹みが付いたりする場合があり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の1官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−メンタンー1,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−2,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−3,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.2]−オクタン−1−メチル−4−イソプロピル−5,6−ジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、などの(メタ)アクリル酸系誘導体;メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレートなどのエーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、などの1,3−ジオキソラン系モノマー;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリル酸エステル類のうち、分子量が550以上の(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、より好ましくは580以上、さらに好ましくは600以上である。分子量の上限は特に限定はされないが、好ましくは10万以下、より好ましくは5万以下、さらに好ましくは1万以下、最も好ましくは5000以下である。(メタ)アクリル酸エステル類はビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートが硬化性良好で好適に使用できる。
【0037】
2官能以上の(メタ)アクリル系エステル化合物は代表的には直鎖または分岐を有するアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく使用される。直鎖アルキレン基の場合には炭素数は4以上が好ましく、6以上がより好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートは貯蔵弾性率を調整するに有用である。また分岐を有するアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートはネオペンチルグリコール骨格を有することが好ましく、より好ましくはさらにヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル骨格を有する。
エーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体は貯蔵弾性率の調整に有用である。エーテル構造が増加すると貯蔵弾性率が下がり、アクリル基量が増加すると貯蔵弾性率が上がる効果を有する。エーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体は好ましくは2官能または3官能のアクリレートであり、エーテル構造は好ましくはオキシアルキレン骨格を有する2価アルコール部位を有する。オキシアルキレン骨格を有する2価アルコールとしてはオリゴエチレングリコール、オリゴプロピレングリコール、オリゴブチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが挙げられ、オリゴエチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが特に好ましい。(メタ)アクリル系誘導体中のオキシアルキレン骨格の繰り返し数は4〜16が好ましく、6〜14がさらに好ましい。これらの中でも特にビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
さらに、通常使用されるポリカーボネート基板との密着性が良好な点からは、異種重合性モノマーが好適に使用でき、中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適に使用できる。
平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類の配合量は、硬化性組成物の合計量に対して、30〜80質量%である。好ましくは35〜80質量%、より好ましくは35〜75質量%である。配合量が80質量%を超えると、硬化収縮率や内部歪が大きくなり、例えば光ディスクの反りが大きくなる場合や保護層にヒビや割れを生じることがある。配合量が30質量%よりも小さい場合には、光ディスクに凹みが付いたりする場合があり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
<(c)光重合開始剤>
本発明の組成物は、前記(a)ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマー、(b)(a)以外の(メタ)アクリル酸エステル類に加えて、(c)光重合開始剤を必須成分として含有する。光重合開始剤を含むことにより、光照射により、すみやかに硬化させることができるという効果を奏する。
【0039】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;などが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光ラジカル重合開始剤のうち、アセトフェノン類が好適であり、具体的には1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンが好適である。その中でも、光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクの耐久性を向上させ、耐熱試験時の反りの増加を抑制するとの理由から、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}が特に好適である。
【0040】
<(a),(b),(c)以外の成分>
本発明の組成物は、前記(a)ラジカル重合基含有オリゴマー/ポリマー、(b)(a)以外の平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類、および、(c)光重合開始剤に加えて、紫外線吸収剤、熱重合開始剤を含んでもよい。紫外線吸収剤を含む場合には、組成物のリサイクル性を高めること、硬化速度を調整し光ディスクの反りを小さくすること等ができるという効果を奏する。
【0041】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、無機酸化物系紫外線吸収剤等が挙げられる。具体的には、フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸グリコール、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジメチルPABA(para-aminobenzoic acid)オクチル、ジメチルPABAエチルヘキシル等、従来公知の紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、後述の実施例のように、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「TINUBIN PS」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、2−{2−ヒドロキシ−4−(1−オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル}−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名「TINUBIN 479」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA93」、大塚化学株式会社製)、オクチル−3−{3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−yl)フェニル}プロピオン酸・2−エチルヘキシル−3−{3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−yl)フェニル}プロピオン酸(商品名「TINUBIN 109」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)であることが好ましい。
【0042】
紫外線吸収剤の添加量は、硬化性樹脂組成物全体に対して、0.03〜0.4質量部であり、好ましくは0.03〜0.3質量部であり、最も好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0043】
熱重合開始剤としては、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤が好適である。熱重合開始剤を含む場合には、組成物を紫外線で硬化させる場合に発生する熱を利用し、さらに硬化を進めることができるという効果を奏する。
【0044】
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセテートペルオキシド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシン酸ペルオキシド、m−トルオイルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ブチルペルオキシマレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5、6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ系開始剤;などが挙げられる。これらの熱ラジカル開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱ラジカル開始剤のうち、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシドなどの金属石鹸および/またはアミン化合物などの触媒作用により効率的にラジカルを発生させることができる化合物や2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好適である。
【0045】
熱重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%以上、さらに好ましくは0.05〜3質量%の範囲内である。熱重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0046】
本発明の組成物には、光励起により生じた励起状態から光重合開始剤に励起エネルギーを移し、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。これらの光増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
光増感剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光増感剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0048】
本発明の組成物には、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光重合促進剤を用いることができる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合促進剤のうち、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好適である。
【0049】
光重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0050】
本発明の組成物は、必要に応じて表面機能調整剤を含有してもよい。表面調整剤を添加することによって、耐指紋除去性が良好になる。表面機能調整剤は、一般的には、フッ素系化合物やシリコーン系化合物が用いられ、本発明では用途に応じ、ポリエーテル変性フッ素系化合物、反応性基(例えば(メタ)アクリレート)を有するポリエーテル変性フッ素系化合物、非反応性シリコーン、反応性(例えば(メタ)アクリレート)シリコーン、高分子シリコーン、マクロモノマー系シリコーンのいずれも用いることができる。
【0051】
本発明の組成物は、さらに必要に応じて、添加物として、無機充填剤、低収縮化剤(反応性オリゴマーまたはポリマー、非反応性オリゴマーまたはポリマー)、着色顔料、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、近赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤などを添加することができる。これらの添加物の存在は、特に本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
添加物の配合量は、添加物の種類や使用目的、組成物の用途や使用方法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、無機充填剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲内である。低収縮化剤、着色顔料、可塑剤または援変化剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%の範囲内である。重合禁止剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤または援変助剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜3質量%の範囲内である。
【0053】
<組成物の製造方法、および、その硬化方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、公知の方法により混合・攪拌することにより得ることができる。本発明の組成物の粘度は、25℃において800mPa・S以上3500mPa・S以下であることが好ましい。より好ましくは1000mPa・S以上2500mPa・S以下である。ここで、粘度は温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業株式会社製)を用いて算出した値である。粘度が800mPa・s〜3500mPa・s範囲外になれば、保護層の厚みが100μm±2μmに制御できない場合があり、詳細には、中心部の保護層の厚みがより薄くなる場合や、端部の保護層の厚みが厚くなる場合がある。
【0054】
本発明の組成物は、紫外線を照射することにより硬化させることができる。ここでいう硬化とは、流動性のない状態のことをいう。使用する紫外線の波長としては、150〜450nmの範囲内であればよい。このような波長を発する光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜3J/cm、より好ましくは0.2〜2.0J/cm、さらに好ましくは0.3〜1.0J/cmの範囲内である。
【0055】
光照射による硬化と共に加熱による硬化を行う場合には、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などを用いればよい。加熱温度は、基材の種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃の範囲内である。加熱時間は、塗布面積などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜24時間、より好ましくは10分間〜12時間、さらに好ましくは30分間〜6時間の範囲内である。
【0056】
光照射による硬化と共に電子線照射による硬化を行う場合には、加速電圧が好ましくは0〜500kV、より好ましくは20〜300kV、さらに好ましくは30〜200kVの範囲内である電子線を用いればよい。また、照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、さらに好ましくは4〜200kGyの範囲内である。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、(A)100μmの厚さでの405nmにおける光線透過率が85%以上である。より好ましくは88%以上、さらに好ましくは89%以上である。光線透過率は、得られた硬化物を用いて分光光度計により測定した値である。本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、ラジカル重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマー、(メタ)アクリル酸エステル類、光重合開始剤を含有し、所定の硬化条件や方法により十分な硬化を行うことで上記光線透過率を達成することができた。光線透過率が85%より低いと透明性に劣るために、記録された情報の読み出し時にエラーが増加する場合がある。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、70℃のオーブン中で100時間保持させた場合の質量減量(以下単に質量減少と称する場合がある。)が、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。さらに、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましくは、0.1質量%以上1.0質量%以下が最も好ましい。測定する硬化物の厚みは、100μ±2μmのものを採用する。質量減少の原因は未反応の(メタ)アクリル酸エステル類成分や開始剤の残渣およびその分解生成物、あるいは低分子量の添加剤が原因と考えられるが、ラジカル重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマー、(メタ)アクリル酸エステル類、光重合開始剤を含有し、所定の硬化条件や方法により十分な硬化を行うことで、上述の範囲にすることが可能となる。質量減少が0.1質量%より少なくするためには硬化物の乾燥(減圧)工程などが必要でコストアップとなり、2.0質量%より大きい場合には揮発成分の硬化物表面へのブリードアウトや、保護層の厚み変化により記録された情報の読み出し時にエラーが増加する場合や、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。すなわち質量減量は0.2質量%以上2.0質量%以下にすることで、例えば、光ディスクでは経時的な表面精度の低下が少なく保存安定性が向上したのみならず、自動車内等での使用や保存が可能となる。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、25℃における貯蔵弾性率Eが10MPa以上150MPa以下であることが好ましい。より好ましくは10MPa以上120MPa以下、最も好ましくは20MPa以上100MPa以下である。貯蔵弾性率Eは、前記と同様に得られた硬化物を用いて動的粘弾性測定により得られた値である。前記硬化性樹脂組成物を所定の硬化条件や硬化方法により十分に硬化することで、貯蔵弾性率E10MPa以上150MPa以下の硬化物を得ることができた。貯蔵弾性率Eが10MPaより小さい場合には、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。特に、凹みが付いたりする。また、貯蔵弾性率が150MPaより大きい場合では、得られる光ディスクの反りが増大したり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、25℃における損失正接tanδは0.10以上0.70以下が好ましい。より好ましくは0.10以上0.60以下、最も好ましくは0.10以上0.40以下である。損失正接tanδは、貯蔵弾性率Eと同様に動的粘弾性測定により得られた値である。なお、測定条件も同様条件を採用する。損失正接tanδが0.70よりも大きい場合には、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。特に、凹みが付いたりする。また、0.10よりも小さい場合には、得られる光ディスクの反りが増大したり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下であることが好ましい。より好ましくは5℃以上30℃以下、最も好ましくは10℃以上30℃以下である。ガラス点移転温度は、貯蔵弾性率Eと同様に動的粘弾性測定により得られた値であり、最大tanδ値の温度を採用する。なお、測定条件は、貯蔵弾性率Eと同様条件を採用する。ガラス点移転温度が30℃よりも大きい場合には、光ディスクの反りが大きくなる場合がある。また、0℃よりも小さい場合には、光ディスクに凹みが付いたりする場合があり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、20〜150μmの厚さを有している。この厚さは、好ましくは、20〜120μmであることが好ましく、30〜105μmであることがより好ましい。つまり、本発明の組成物から得られる硬化物の厚さの上限値は、150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは105μm以下である。一方、下限値は、20μm以上、好ましくは30μm以上である。
【0062】
≪光ディスク≫
本発明の光ディスクは、基板上に形成された反射膜上に、本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物を硬化させてなる保護層を有することで得られる。本発明における光ディスクの製造方法のうち、保護層の製造方法以外は、従来公知の光ディスクの製造方法を用いる。また、本発明において、反射膜上とは、反射膜に直接保護層を積層する形態だけでなく、反射膜上に記録層や誘電体層等の機能層が積層され、その機能層上に保護層が積層される形態も意味する。又、ディスクの記録容量を上げるために、情報記録層を2層以上の多層構造を有するディスクが作成されている。この情報記録層の間には透明な紫外線硬化型樹脂を紫外線にて硬化させた中間層が形成されている。本発明の組成物は、光ディスク中の保護層形成に好適であるが、この中間層用の紫外線硬化型樹脂として用いてもよい。本発明の光ディスクとしては、例えば、ブルーレイディスク等が挙げられる。ブルーレイディスク向けの保護層は、一般的には、低反り性(低収縮性)、透明性(光透過性)、ポリカーボネート基板との密着性、低腐食性、リサイクル性、速硬化性(生産性)、寸法安定性(促進試験時の反りの変化、残膜性、凹み等の永久変形量が小さいこと)等の特性が要求されている。本発明の光ディスクは、上記特性を全て満たしているものである。なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
本発明において、更なる性能向上が必要な場合は、保護層の上に、帯電防止層、撥水層、撥油層、ハードコート層等の層を形成してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例および比較例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
≪評価方法≫
<粘度>
得られた硬化性樹脂組成物を、温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて測定した値を採用した。
<保護層の透明性>
得られた基体/保護層の積層体から保護層(組成物の硬化膜)のみを所定の寸法で剥がし取り、405nmにおける光線透過率を、分光光度計(型式UV−3100、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。空気をブランクとして採用した。次いで、算出された光線透過率の値について下記の基準により評価した。
◎:透過率が89%以上
○:透過率が85%以上
×:透過率が85%未満。
<質量減量>
得られた基体/保護層の積層体から保護層(組成物の硬化膜)のみを所定の寸法で剥がし取り、加熱促進試験(70℃のオーブン中で100時間保持)前後の質量減量(%)を、(試験前の質量−試験後の質量)/試験前の質量×100で算出した。次いで、算出された光線透過率の値について下記の基準により評価した。
◎:質量減量が1.0%以下
○:質量減量が2.0%以下
×:質量減量が2.0以上。
<残膜性>
加熱促進試験(70℃のオーブン中で100時間保持)前後の保護層の厚みを、レーザーフォーカス変位計を用いて測定し、残膜率(%)を(加熱促進試験後の膜厚/加熱促進試験前の膜厚×100)で算出し、以下の基準で残膜性を評価した。
○:残膜率が98.0%以上〜102%未満
×:残膜率が98.0%未満または102%以上
<初期の反り増加量>
得られた基体/保護層の積層体を、保護層(組成物の硬化膜)が上面側になるように水平なガラス板上に置いた後、株式会社日本触媒製のレーザー変位読取方式の反り角測定装置を使い、温度25℃、相対湿度50%環境下にて、半径58mm位置におけるラジアルチルト値を測定した。初期の反り増加量としては、塗布前後の反り変化量を採用した。
<加熱促進試験後の反り増加量>
得られた基体/保護層の積層体を、80℃、相対湿度85%環境下に100時間保持させ、さらに、温度25℃、相対湿度50%環境下に48時間放置したときの反り値を、初期の反り増加量と同様にしてラジアルチルト値を測定した。これにより加熱促進試験前後の反り増加量を求めた。
<寒冷試験後の反り増加量>
得られた基体/保護層の積層体を、0℃の恒温室中で30分間放置したときの反り値を、初期の反り増加量と同様にしてラジアルチルト値を測定した。これにより寒冷試験後の反り増加量を求めた。
<反り総合評価>
初期の反り増加量と加熱促進試験後の反り増加量を合算した反り量A、及び初期の反り増加量と寒冷試験後の反り増加量を合算した反り量Bから以下の基準で評価した。
○:A、B共に0.8°未満
△:A、Bの内、どちらかが0.8°以上となる
×:A、B共に0.8°以上
なお、0.8°以上反りがあれば、製造工程の工夫や透明カバー樹脂の改良を実施しても、反り規格内への改善は困難となる恐れがある。
<25℃における貯蔵弾性率E>
得られた基体/保護層の積層体あるいは基体/オリゴマーまたはポリマーの硬化物層の積層体から、保護層(組成物の硬化膜)もしくは硬化物層を剥離し、TAインスツルメンツ製動的粘弾性測定装置RSAIIIを用い以下の測定条件で測定した。
(1)サンプルサイズ:幅8mm、長さ50mm
(2)クランプ距離25mm
(3)測定モード:引っ張り
(4)周波数:1Hz
(5)幅:0.1%
(6)昇温速度:5℃/分
動的粘弾性の測定を行い、得られた25℃における貯蔵弾性率Eの値を採用した。
<25℃における損失正接tanδ>
25℃における貯蔵弾性率Eと同様な測定方法および条件により得られた値を採用した。
<ガラス点移転温度Tg>
25℃における貯蔵弾性率Eと同様な測定方法および条件により得られた値であり、最大tanδ値の温度を採用した。
<永久変形量>
得られた基体/保護層の積層体を用いて、微小圧縮試験機(島津製作所製、型式MCT−W500)により、試験条件として、使用平面圧子50μm径、負荷速度20mN/秒、最大荷重300mN、最大荷重での保持時間90秒、徐荷速度20mN/秒、完全徐荷後の保持時間90秒とした場合の、基体/保護層の積層体に残る変形量を測定した値を採用した。なお、この試験により永久変形量が1μmを超える場合には、凹み等によりレーザー光による読み取りエラーが生じやすくなる場合や長期保存安定性に劣る場合がある。
≪製造例1≫
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル150gを加え、50℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA、株式会社日本触媒製)100gとシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)100gの混合物と、酢酸エチル25gとリンタングステン酸13mgの混合溶解物を、それぞれ3時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA−CHVE)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.5%であること、さらに、酢酸エチルの含有量は0.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2360、分子量分布(Mw/Mn)は1.64であった。
【0066】
実施例で使用するラジカル重合性基を有するオリゴマーおよびまたはポリマーの硬化物のガラス転移温度および25℃における弾性率は、表1のとおりであった。また、(メタ)アクリル酸エステル類の平均アクリレル当量も表1に示した。
≪実施例1≫
オリゴマーとしてウレタンアクリレート(商品名「紫光UV−6640B」、日本合成化学工業株式会社製)40質量部、(メタ)アクリル酸エステル類としてビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジアクリレート(商品名「SR−602」、サートマー株式会社製、平均分子量776)20質量部とヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン2モル付加物のジアクリレート(商品名「HX−220」、日本化薬株式会社製)25質量部とアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製)15質量部、光重合開始剤としてオリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(商品名「エスキュアONE」、ランベルティ製)2質量部を混合・攪拌して光ディスク用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0067】
次に、厚さ1mm、寸法120mm×120mmのポリカーボネート基板上に、スピンコーターにて光ディスク用硬化性樹脂組成物を厚さ100μm設定で塗布した。得られたポリカーボネート基板を、キセノンフラッシュUVランプを有するUV照射機(米国キセノン社製 形式RC−742)を用いて、ランプ高さ2cmで15回照射させて硬化させた。なお、320〜390nmにおける照射積算光量は約0.6J/cmであった。保護層の厚さは、100±2μmであった。得られた硬化性樹脂組成物、および、積層体の評価を行った結果を表1に示した。
≪その他の実施例および比較例≫
実施例1と同様にして、各成分を表1および表2に示した割合で混合・攪拌して、光ディスク用硬化性樹脂組成物を得た。得られた組成物を上記の評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中の略称は下記の通りである。
・UV−6640B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・UV−6100B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・UV−7000B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・CN−981:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・CN−978:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・CN−991:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・P(VEEA−CHVE):製造例1のビニル系重合体
・IB−XA:イソボルニルアクリレート
(商品名「ライトアクリレートIB−XA」、共栄社化学株式会社製)
・DCP−A:トリシクロデカンジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学株式会社製)
・Bis4EO−A:ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、共栄社化学株式会社製)
・Bis10EO−A:ビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジアクリレート
(商品名「SR−602」、サートマー株式会社製)
・PEGDA−9:ポリエチレングリコールジアクリレート(日本触媒製)
・HX−220:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン2モル付加物のジアクリレート
(商品名「カヤラッドHX−220」、日本化薬株式会社製)
・HX−620:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン4モル付加物のジアクリレート
(商品名「カヤラッドHX−620」、日本化薬株式会社製)
・HPP−A:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートHPP−A」、共栄社化学株式会社製)
・VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製)
・TMP−6EO−A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド6モル付加物のトリアクリレート
(商品名「SR−499」、サートマー株式会社製)
・TMP−9EO−A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド9モル付加物のトリアクリレート
(商品名「SR−502」、サートマー株式会社製)
・Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
・Esacure−oneオリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}
(商品名「エサキュアONE」、ランベルティ製)
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物は、透明性を有すると同時に光ディスク全体の反りを抑え、さらに、長期保存安定性(高温環境下や低温環境下での保存試験における低反り性や高温環境下での残膜性、凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れたる光ディスク、例えばブルーレイディスクに利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが20〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、硬化性樹脂組成物中に
(a)硬化物のガラス転移温度が−10〜45℃で、25℃における弾性率が50〜900MPaであるラジカル重合性基を有するオリゴマーおよび/またはポリマー20〜70質量%と
(b)(a)以外の平均アクリル当量が280〜500である(メタ)アクリル酸エステル類を30〜80質量%、および
(c)光重合開始剤と
を含有することを特徴とする光ディスク用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル類(b)として分子量が550以上であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジアクリレートを使用していることを特徴とする請求項1記載の光ディスク用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が800以上3500mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の光ディスク用硬化性樹脂組成物を硬化させてなる保護層を有することを特徴とする光ディスク。

【公開番号】特開2010−157295(P2010−157295A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335711(P2008−335711)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】