説明

光ディスク用硬化性樹脂組成物

【課題】基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが10〜150μmである保護層(透明カバー層)とを有する光ディスク(例えばブルーレイディスク)において、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れた光ディスク用硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが10〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、
(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有する、オリゴマー及び/又はポリマーと、
(b)重合性モノマーと、
(c)光重合開始剤とを含有し、
(d)25℃おける粘度が500mPa・S以上3500mPa・S以下であり、
かつ、前記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、
(A)100μmの膜厚での波長405nmにおける光線透過率が85%以上であり、
(B)70℃で100時間保持したときの質量減量が0.1%以上2.0%以下であり、
(C)25℃における貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下であり、
(D)25℃における損失正接tanδが0.10以上0.70以下であり、
(E)ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下である
ことを特徴とする光ディスク用硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク用硬化性樹脂組成物および光ディスクに関するものである。より詳しくは、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが10〜150μmである保護層(透明カバー層)とを有する光ディスク(例えばブルーレイディスク)において、該光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクは、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質のデジタルハイビジョン放送が始まったことで、フルハイビジョン対応の高画質で大画面の液晶やプラズマテレビが普及されるようになった。しかし、従来の光ディスクであるDVD(digital versatile disc)は記録容量が小さいので、高品位の動画像を長時間録画することができなかった。これに応えるために、DVDの5倍以上もの記録容量を有する新しい光ディスクの規格として青色レーザー光で情報を記録・再生するブルーレイディスクが開発、販売されるようになった。
【0003】
この新規格では、光ディスクの大容量化のために波長405nmの青色レーザー光の採用や記録・再生光学系対物レンズの開口数(NA)を0.85に大きくして、記録・再生時のレーザービームスポット径をDVDよりも約0.44倍まで小さくし、また、信号が記録されるトラックピッチ(間隔)を約0.43倍に狭くすることで、5倍以上もの大記録容量化が実現されている。
【0004】
青色レーザー光で情報を記録・再生する光ディスクに採用されている技術を以下に説明する。まずは保護層厚みに関して、レーザー入射側から見たディスク表面にはキズやホコリからの保護として保護層(透明カバー層)が施されているが、この保護層の厚み(ディスク表面と信号の記録面との距離)が、DVDでは約600μmであったが、ブルーレイディスクでは約100μmとかなり薄くしている。このように、ブルーレイディスクは保護層厚みを薄くすることで、ディスクの反り等による傾きで生じるレーザービームスポットの歪(ボケ)を抑え、信頼性の高い記録・再生が実現できるようにしている。
特許文献1には、保護層の厚みムラが情報の記録、再生に大きな問題を与えるため、保護層厚みには高い均一性が求められることが記載されている。また、特許文献2には、保護層厚みが100μm±2μmに制御される必要性が記載されている。また、特許文献3には、ディスクに生じた圧接痕や凹み等の傷(永久的な変形)が原因でレーザースポット位置が変動し、情報の記録、再生に問題が起きる可能性があることが記載されている。なお、長期安定した情報の記録、再生の観点から、ディスク保存時において、保護層厚みの変化が小さいことが望まれる。この保護層の形成方法として主に2つの方法が挙げられる。ポリカーボネート製のシートを紫外線硬化型の接着剤で貼り合わせるシート接着法と紫外線硬化型の樹脂をスピンコートで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるスピンコート法がある。現在はコストの面からスピンコート法が主流になっている。しかし、紫外線硬化型の樹脂を用いて保護層を形成すると、上述の膜厚均一性が求められことに加えて、主に紫外線硬化型の樹脂の硬化収縮によって光ディスクに反りが生じるという問題が起こる。このため、予めディスク基板を硬化収縮で生じる反りとは反対方向に反りを形成させて紫外線硬化型樹脂を塗布・硬化させる方法が行われる場合や、再生・記録装置での補正等が行われる場合があるが、許容範囲(補正可能な範囲)を超えた反りの場合は、光ディスクへの正確なデーター記録や再生ができなくなる場合や、再生・記録装置への出し入れができなくなる場合がある。また、この反りは初期の反りが小さいことが求められるだけでなく、長期安定性を確認する耐熱試験時においても反りが増加しない(小さい)ことが求められる。次に光ディスクの安定性についてであるが、特許文献4や特許文献5には、高温・高湿環境下や低温環境下に保存した場合、光ディスクに反りが発生すると駆動装置への装填に支障が生じることや、捻りを伴う反りが発生すると読み取りエラーが生じるので、種々環境下で発生する反りが少ない光ディスクが求められていることが記載されている。
【0005】
次にディスクの反りに関して、特許文献6には、光ディスクの反り発生を抑えるために、保護層の膜厚と保護層の30℃での弾性率との積を特定の値以下にすることが求められていると記載されている。さらに、特許文献7には、紫外線照射して得られる硬化塗膜の環境変化に対する寸法安定性に優れた光ディスクが開示されている。
しがしながら、反射膜上に保護層(保護層)を有する光ディスク(例えば、ブルーレーザー光により情報の読み取りを行うブルーレイディスク)において、長期に安定性良く保存(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)させるためには、更なる改良の検討が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−351102号公報
【特許文献2】特開2007−115356号公報
【特許文献3】特開2008−126518号公報
【特許文献4】特開2002−157782号公報
【特許文献5】特開2003−132596号公報
【特許文献6】特開2007−102980号公報
【特許文献7】特開2007−213744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが10〜150μmである保護層(保護層)とを有する光ディスク(例えば、ブルーレーザー光により情報の読み取りを行うブルーレイディスク)において、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れた光ディスク用硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、光ディスク用硬化性樹脂性組成物(以下、単に「組成物」と略する場合がある)を硬化させて得られた硬化物において、100μmの膜厚での波長405nmにおける光線透過率、70℃で100時間保存させた場合に起こる質量減量、25℃における貯蔵弾性率E'、ガラス点移転温度、さらに25℃における損失正接tanδを特定の範囲に設定することで、透明性が高く、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れた光ディスクが得られることを見出して本発明に至った。特に硬化物の25℃における貯蔵弾性率E'、ガラス点移転温度、さらに25℃における損失正接tanδを特定の範囲に設定することが本発明の重要な点にある。
【0009】
すなわち、本発明の光ディスク用硬化性樹脂性組成物は、上記課題を解決するために、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に厚さが10〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂性組成物であって、
(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有する、オリゴマー及び/又はポリマーと、
(b)重合性モノマーと、
(c)光重合開始剤とを含有し、
(d)25℃おける粘度が500mPa・S以上3500mPa・S以下であり、
かつ、前記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、
(A)100μmの膜厚での波長405nmにおける光線透過率が85%以上であり、
(B)70℃で100時間保持したときの質量減量が0.1%以上2.0%以下であり、
(C)25℃における貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下であり、
(D)25℃における損失正接tanδが0.10以上0.70以下であり、
(E)ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク用硬化性樹脂性組成物は、以上のように、基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが10〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、
(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有する、オリゴマー及び/又はポリマーと、
(b)重合性モノマーと、
(c)光重合開始剤とを含有し、
(d)25℃おける粘度が500mPa・S以上3500mPa・S以下であり、
かつ、前記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、
(A)100μmの膜厚での波長405nmにおける光線透過率が85%以上であり、
(B)70℃で100時間保持したときの質量減量が0.1%以上2.0%以下であり、
(C)25℃における貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下であり、
(D)25℃における損失正接tanδが0.10以上0.70以下であり、
(E)ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下であるものである。
【0011】
それゆえ、本発明によれば、該光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクは、透明性が高く信頼性の高い記録・再生が実現でき、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れた光ディスクが得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪光ディスク用硬化性樹脂組成物≫
<少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー>
本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物は、(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーを含有するものであるが、これらの成分は、それぞれ1種又は2種以上含有することができる。なお、本発明の作用効果を損なわない限り、他の成分を更に含有していてもよい。
【0013】
ラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーとは、熱及び/又は紫外線、電子線、ガンマー線等の活性エネルギー線により硬化するものをいう。
(a)ラジカル重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーとしては、飽和若しくは又は不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるウレタンポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート;ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類等とカチオン重合性化合物(例えば、ビニルエーテル類、アルキレンオキサイド類、グリシジルエーテル類等)との反応によって得られる(メタ)アクリロイル基ペンダントポリマー;デンドリマー、ハイパーブランチポリマーなどの多分岐型反応性(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。イオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール(例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はビスフェノール化合物等)又はそのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるノボラック型エポキシ樹脂類(例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂等)、トリスフェノールメタントリグリジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(商品名、ダイセル化学工業社製)等の脂環式エポキシ樹脂;多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等)そのアルキレンサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られる脂肪族エポキシ樹脂;ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類等とラジカル又はアニオン重合性化合物(例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル化合物類等)との反応によって得られるビニルエーテル基ペンダントポリマー;エチル−3−(メタ)アクリロキシオキセタン等の脂環式エーテル含有(メタ)アクリル酸エステル類等とラジカル又はアニオン重合性化合物(例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル化合物類等)との反応によって得られる脂環式エーテルペンダントポリマーが挙げられる。ラジカル重合性基とイオン重合性基を併せ持つオリゴマー及び/又はポリマーとしては、エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリブタンジエン変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラックエポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂等)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;上記エポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)との反応で得られるカルボン酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
これらの中でもウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基ペンダントポリマー、エポキシ樹脂、ビニルエーテル基ペンダントポリマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
特にウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合にはイソシアナート成分として脂環骨格または芳香環骨格を有する多価イソシアナートが好ましく、特に好ましくは脂環骨格を有する2価のイソシアナートである。脂環骨格を有する2価のイソシアナートとしてはイソホロンジイソシアナートが挙げられる。多価アルコール成分としてオキシアルキレン骨格を有する多価アルコールが好ましく、2価アルコールがさらに好ましい。オキシアルキレン骨格を有する2価アルコールとしてはオリゴエチレングリコール、オリゴプロピレングリコール、オリゴブチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが挙げられ、オリゴエチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが特に好ましい。オキシアルキレン骨格の繰り返し数は4〜12が好ましく、6〜10がさらに好ましい。水酸基含有(メタ)アクリレート成分は水酸基含有アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート等が挙げられ、これらの中でも2−ヒドロキシエチルアクリレートが特に好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは組成中にイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有しても良い。イソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合の好ましいイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分は上述と同様である。
【0016】
本願発明の実施にはウレタン(メタ)アクリレートの組成が重要である。具体的にはウレタン(メタ)アクリレート原料組成100重量部中に原料イソシアナート成分が15〜30重量部、原料多価アルコール成分が45〜65重量部、原料水酸基含有(メタ)アクリレート成分が5〜40重量部であることが好ましく、原料イソシアナート成分が18〜25重量部、原料多価アルコール成分が50〜60重量部、原料水酸基含有(メタ)アクリレート成分が15〜32重量部であることがより好ましい。またイソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合には多価アルコール成分を有するウレタン(メタ)アクリレートとの合計として100重量部に対し、1〜20重量部配合することが好ましく、5〜15重量部であることが特に好ましい。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレートの合成方法は特に制限されないが、例えば原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法;原料イソシアネート成分、原料水酸基含有(メタ)アクリレート、および多価アルコール成分を一括に仕込んで反応させる方法;原料イソシアネート成分および多価アルコール成分を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法が挙げられる。これらの中でも原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法を用いることにより、上記イソシアナート成分と水酸基含有(メタ)アクリレート成分が直接ウレタン化したウレタン(メタ)アクリレートをも同時に合成することができるため、生産性が向上するため特に好ましい。なお原料イソシアネート成分および原料水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで多価アルコール成分の順に反応させる方法を採用する場合にも原料水酸基含有(メタ)アクリレートを初期添加と後段添加に分割し、多価アルコール成分添加後に一部の原料水酸基含有(メタ)アクリレートを分割添加することも好ましい。
【0018】
組成物中の(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーの含有量は、組成物の合計量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましく30質量%以上である。合計含有量が20質量%未満であれば、光ディスクの長期保存安定性に劣る場合がある。
ブルーレイディスクでは、記録容量を上げるために、情報記録層を2層以上の多層構造を有するディスクが作成されている。この情報記録層の間には透明な紫外線硬化型樹脂を紫外線にて硬化させた中間層が形成されている。本発明の組成物は、光ディスク中の保護層形成に好適であるが、この中間層用の紫外線硬化型樹脂として用いてもよい。
【0019】
本発明の組成物を用いると硬化塗膜が傷つきにくい光ディスクの保護層を形成することができるが、更なる性能向上が必要な場合は、保護層の上に、帯電防止層、撥水層、撥油層、ハードコート層等の層を形成してもよい。
【0020】
物性上、高硬度が必要な場合には、前記(a)ラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーとしては、下記式(1):
【0021】
【化1】

【0022】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有することもできる。
【0023】
<ビニル系重合体>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、低分子量成分が増加すると硬化膜層の強度が低下することがある。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1000〜20000、さらに好ましくは1500〜10000の範囲内である。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)が500未満であると、硬化速度の低下や硬化物の強度低下を生じることがある。また20000を超えると基材との濡れ性の低下、組成物を調整する際に混合時間の延長、粘度が高くなり塗工時の作業性の低下、さらには、例えばプラスチック基材に塗布し硬化させて得られた積層体の反りが大きくなる場合がある。ここで、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/minの条件下で、東ソー株式会社製のカラム TSK−gel SuperHM−H 2本、TSK−gel SuperH2000 1本を用い、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0024】
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、固体状のモノマー含有量が多い重合体の場合を除き、液状粘性体として得ることができる。液状粘性体であれば、(メタ)アクリレート系モノマー等への溶解性が良いので、組成物を調整する際に作業効率の向上化が図れる。
【0025】
上記式(1)において、Rで表される炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基などが挙げられる。Rで表される置換基は、上記式(1)中にm個存在するが、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
上記式(1)において、mは正の整数、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数であり、nは正の整数、好ましくは50〜400の整数、より好ましくは100〜300の整数、さらに好ましくは150〜250の整数である。
【0027】
<ビニル系重合体の調製>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、下記式(2):
【0028】
【化2】

【0029】
[式中、R、Rおよびmは上記式(1)と同意義である]
で示される異種重合性モノマーを、従来から知られているカチオン重合により調整することが可能であり、又、特開2006−241189号明細書に記載された方法でリビングカチオン重合することにより、容易に調製することもできる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。後者の場合、得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0030】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。これらの異種重合性モノマーのうち、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適である。
【0031】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが1である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−ハロゲノエチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。また、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが2である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−(2−ハロゲノエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。
【0032】
上記式(1)で示されるビニル系重合体がカチオン重合可能なモノマーに由来する構造単位を有する共重合体である場合、かかる共重合体は、上記式(2)で示される異種重合性モノマーと、カチオン重合可能なモノマーとを、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合することにより、容易に調製することができる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0033】
カチオン重合可能なモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジヒドロフランなどのビニルエーテル化合物;スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;イソプロペニルスチレン、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチルなどのジビニル化合物やトリビニル化合物;などが挙げられる。これらのカチオン重合可能なモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合可能なモノマーのうち、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジヒドロフラン、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物が好適である。
【0034】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーは、ラジカル重合性またはアニオン重合性の(メタ)アクリロイル基と、カチオン重合性のビニルエーテル基とを同時に有するので、重合方法を選択することにより、(メタ)アクリロイル基またはビニルエーテル基をペンダント基として有する重合体が得られる。本発明では、上記式(2)で示される異種重合性モノマーのビニルエーテル基を、単独で、あるいは、カチオン重合可能なモノマーと共に、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合させることにより、(メタ)アクリルロイル基をペンダント基として有する上記式(1)で示されるビニル系重合体が得られる。
【0035】
上記式(2)で示される異種重合性モノマーと、カチオン重合可能なモノマーとをカチオン重合あるいはリビングカチオン重合する場合、モノマーのモル比(カチオン重合可能なモノマー/上記式(2)で示される異種重合性モノマー)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜8、さらに好ましくは0.8〜5の範囲内である。上記式(2)で示される異種重合性モノマーは上記共重合比に調整することによって、硬化性に優れ、硬化物の架橋密度が高く表面硬度に優れた組成物を得ることができる。
【0036】
<重合性モノマー>
本発明の組成物は、前記(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーに加えて、(b)重合モノマーを必須成分として含有する。重合性モノマーを含むことにより、液粘度や硬化物の物性を調節することができるという効果を奏する。
【0037】
(b)重合性モノマーとしては、少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーと共硬化可能なものである限り、特に限定されるものではないが、具体的には、前記、異種重合性モノマー、カチオン重合可能なモノマーや、スチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリルエステル系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の1官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−メンタンー1,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−2,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、p−メンタン−3,8−ジオールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.2]−オクタン−1−メチル−4−イソプロピル−5,6−ジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、などの(メタ)アクリル酸系誘導体;メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレートなどのエーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体;トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチロールメラミンのアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルのアジピン酸エステル、アリルアセタール、メチロールグリオキザールウレインのアリルエーテルなどのアリルエーテル系モノマー;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル系モノマー;フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸エステル系モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、などの1,3−ジオキソラン系モノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルピロリドン;などが挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性モノマーのうち、異種重合性モノマー、2官能以上の(メタ)アクリル系エステル化合物、環式構造を有する(メタ)アクリル系エステル化合物、エーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体が硬化性良好で好適に使用できる。
【0038】
さらに、通常使用されるポリカーボネート基板との密着性が良好な点からは、異種重合性モノマーが好適に使用でき、中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適に使用できる。
【0039】
2官能以上の(メタ)アクリル系エステル化合物は代表的には直鎖または分岐を有するアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく使用される。直鎖アルキレン基の場合には炭素数は4以上が好ましく、6以上がより好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートは貯蔵弾性率E'を調整するに有用である。また分岐を有するアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートはネオペンチルグリコール骨格を有することが好ましく、より好ましくはさらにヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル骨格を有する。分岐を有するアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートは損失正接を調整、本発明の組成物においては損失正接を低下させる効果を有する。
【0040】
環式構造を有する(メタ)アクリル系エステル化合物はガラス転移点を調整することができ、本発明においてはガラス転移点を高温化することができ、長期保存安定性に影響を与える圧接痕や凹み等の永久変形量が小さい保護膜の形成が可能になる。
【0041】
エーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体は貯蔵弾性率E'の調整に有用である。エーテル構造が増加すると貯蔵弾性率E'が下がり、アクリル基量が増加すると貯蔵弾性率E'が上がる効果を有する。エーテル構造を有する(メタ)アクリル系誘導体は好ましくは2官能または3官能のアクリレートであり、エーテル構造は好ましくはオキシアルキレン骨格を有する2価アルコール部位を有する。オキシアルキレン骨格を有する2価アルコールとしてはオリゴエチレングリコール、オリゴプロピレングリコール、オリゴブチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが挙げられ、オリゴエチレングリコール、オリゴ(エチレン−プロピレン)グリコールが特に好ましい。(メタ)アクリル系誘導体中のオキシアルキレン骨格の繰り返し数は4〜16が好ましく、6〜14がさらに好ましい。
【0042】
重合性モノマーの配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜50質量%である。重合性モノマーの配合量が70質量%を超えると、硬化収縮率や内部歪が大きくなり、例えば光ディスクの反りが大きくなる場合や保護層にヒビや割れを生じることがある。
<光重合開始剤>
本発明の組成物は、前記(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー、(b)重合モノマーに加えて、(c)光重合開始剤を必須成分として含有する。光重合開始剤を含むことにより、光照射により、すみやかに硬化させることができるという効果を奏する。
(c)光重合開始剤としては、光線の照射により重合開始ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤と、光線の照射により重合開始カチオンを発生する光カチオン重合開始剤が好適である。
【0043】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;などが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光ラジカル重合開始剤のうち、アセトフェノン類が好適であり、具体的には1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンが好適である。その中でも、光ディスク用硬化性樹脂組成物を保護層として用いた光ディスクの耐久性を向上させ、耐熱試験時の反りの増加を抑制するとの理由から、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}が特に好適である。
【0044】
光カチオン重合開始剤としては、下記の化合物が好適である。トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のアリールスルフォニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のアリールヨウドニウム塩;フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート等のアリールジアゾニウム塩。これらの中でも、アリールスルフォニウム塩、ジアゾニウム塩が好適である。特に、(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好適である。
光重合開始剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。光重合開始剤の配合量が0.1質量%未満であると組成物が充分に硬化しないことがある。逆に、光重合開始剤の配合量が10質量%を超えると、臭気の発生や硬化物の着色が大きくなったり、組成物のリサイクル性の低下、光ディスクの長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0045】
<(a),(b),(c)以外の成分>
本発明の組成物は、前記(a)少なくとも1つのラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマーと、(b)重合性モノマー、(c)光重合開始剤に加えて、紫外線吸収剤、熱重合開始剤を含んでもよい。紫外線吸収剤を含む場合には、組成物のリサイクル性を高めること、硬化速度を調整し光ディスクの反りを小さくすること等ができるという効果を奏する。
【0046】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、無機酸化物系紫外線吸収剤等が挙げられる。具体的には、フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸グリコール、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジメチルPABA(para-aminobenzoic acid)オクチル、ジメチルPABAエチルヘキシル等、従来公知の紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、後述の実施例のように、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「TINUBIN PS」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、2−{2−ヒドロキシ−4−(1−オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル}−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名「TINUBIN 479」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA93」、大塚化学株式会社製)、オクチル−3−{3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−yl)フェニル}プロピオン酸・2−エチルヘキシル−3−{3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−yl)フェニル}プロピオン酸(商品名「TINUBIN 109」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)であることが好ましい。
【0047】
紫外線吸収剤の添加量は、光ディスク用硬化性樹脂組成物全体に対して、0.03〜0.4質量部であり、好ましくは0.03〜0.3質量部であり、最も好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0048】
熱重合開始剤としては、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤と、加熱により重合開始カチオンを発生する熱カチオン重合開始剤が好適である。熱重合開始剤を含む場合には、組成物を紫外線で硬化させる場合に発生する熱を利用し、さらに硬化を進めることができるという効果を奏する。
【0049】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセテートペルオキシド、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、スクシン酸ペルオキシド、m−トルオイルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシソブチレート、t−ブチルペルオキシマレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(4,5、6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ系開始剤;などが挙げられる。これらの熱ラジカル開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱ラジカル開始剤のうち、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシドなどの金属石鹸および/またはアミン化合物などの触媒作用により効率的にラジカルを発生させることができる化合物や2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好適である。
【0050】
熱ラジカル重合開始剤を用いる場合には、熱ラジカル重合開始剤の分解温度を低下させるために、熱重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる熱重合促進剤を用いることができる。熱重合促進剤としては、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウムなどの金属石鹸、1級、2級、3級のアミン化合物、4級アンモニウム塩、チオ尿素化合物、ケトン化合物などが挙げられる。これらの熱重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの熱重合促進剤のうち、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ジメチルアニリン、トリエタールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルが好適である。
【0051】
熱カチオン重合開始剤としては、下記の化合物が好適である。ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ、二塩化ジブチル第二スズ、二臭化ジブチル第二スズ、テトラエチルスズ、テトラブチルスズ、トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム等)と電子供与性化合物(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等)との錯体;プロトン酸(例えば、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノエステル類、ホウ酸ジエステル類等)を塩基(例えば、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン等)により中和した化合物。これらの中でも、各種プロトン酸のアミン錯体が、可使時間の調整が容易であるので好適である。
【0052】
熱重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%以上、さらに好ましくは0.05〜3質量%の範囲内である。熱重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
本発明の組成物には、光励起により生じた励起状態から光重合開始剤に励起エネルギーを移し、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。これらの光増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
光増感剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光増感剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0054】
本発明の組成物には、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光重合促進剤を用いることができる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合促進剤のうち、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好適である。
【0055】
光重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、好ましくは金属酸化物からなる微粒子を含有してもよい。金属酸化物からなる微粒子を含有する場合には、保護膜の硬度が向上し、より傷つきにくく、低反射性のコーティング膜が得られるという効果を奏する。
【0057】
微粒子を構成する金属酸化物は、より好ましくは、Si、Ti、Zr、Zn、Sn、In、LaおよびYよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含む。微粒子を構成する金属酸化物は、これらの元素を含む単独の酸化物であってもよいし、これらの元素を含む複合酸化物であってもよい。微粒子を構成する金属酸化物の具体例としては、例えば、SiO、SiO、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、La、Y、SiO−Al、SiO−Zr、SiO−Ti、Al−ZrO、TiO−ZrOなどが挙げられる。これらの金属酸化物からなる微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの金属酸化物からなる微粒子のうち、SiO、TiO、ZrO、ZnOが好適である。
【0058】
金属酸化物からなる微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜300nm、より好ましくは1〜50nmである。微粒子の平均粒子径が300nmを超えると、硬化物(保護膜)の透明性が損なわれることがある。なお、微粒子の平均粒子径とは、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することにより求められる体積平均粒子径を意味する。
【0059】
金属酸化物からなる微粒子の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0〜50質量%である。微粒子の配合量が80質量%を超えると、硬化物が脆くなることがある。
【0060】
本発明の組成物は、必要に応じて表面機能調整剤を含有してもよい。表面調整剤を添加することによって、耐指紋除去性が良好になる。表面機能調整剤は、一般的には、フッ素系化合物やシリコーン系化合物が用いられ、本発明では用途に応じ、ポリエーテル変性フッ素系化合物、反応性基(例えば(メタ)アクリレート)を有するポリエーテル変性フッ素系化合物、非反応性シリコーン、反応性(例えば(メタ)アクリレート)シリコーン、高分子シリコーン、マクロモノマー系シリコーンのいずれも用いることができる。
【0061】
本発明の組成物は、必要により溶剤を含有してもよい。ここで、溶剤とは、揮発性を有するかもしくは低沸点のいわゆる有機溶剤のことをいう。有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族または脂環式炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、二塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物は、さらに必要に応じて、添加物として、無機充填剤、低収縮化剤(反応性オリゴマーまたはポリマー、非反応性オリゴマーまたはポリマー)、着色顔料、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、近赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、金属密着性向上剤などを添加することができる。これらの添加物の存在は、特に本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
添加物の配合量は、添加物の種類や使用目的、組成物の用途や使用方法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、無機充填剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲内である。低収縮化剤、着色顔料、可塑剤または援変化剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%の範囲内である。重合禁止剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤または援変助剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜3質量%の範囲内である。
【0064】
<組成物の粘度、製造方法、および、その硬化方法>
本発明の組成物は、(a)少なくとも1つのラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー、(b)重合性モノマー、(c)光重合開始剤に加えて、必要に応じて、前記ビニル系重合体、紫外線吸収剤、熱重合開始剤、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤など、さらには金属酸化物からなる微粒子、各種の添加物などとを配合し、公知の方法により混合・攪拌することにより得ることができる。
本発明の組成物の粘度は、25℃において500mPa・S以上3500mPa・S以下である。好ましくは900mPa・S以上3000mPa・S以下、より好ましくは1000mPa・S以上2500mPa・S以下である。ここで、粘度は温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業株式会社製)を用いて算出した値である。粘度が500mPa・S〜3500mPa・S範囲外であれば、保護層の厚みが100μm±2μmに制御できない場合があり、詳細には、中心部の保護層の厚みがより薄くなる場合や、端部の保護層の厚みが厚くなる場合がある。
【0065】
本発明の組成物は、紫外線を照射することにより硬化させることができる。ここでいう硬化とは、流動性のない状態のことをいう。使用する紫外線の波長としては、150〜450nmの範囲内であればよい。このような波長を発する光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜3J/cm、より好ましくは0.2〜2.0J/cm、さらに好ましくは0.3〜1.0J/cmの範囲内である。
【0066】
光照射による硬化と共に加熱による硬化を行う場合には、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などを用いればよい。加熱温度は、基材の種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃の範囲内である。加熱時間は、塗布面積などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜24時間、より好ましくは10分間〜12時間、さらに好ましくは30分間〜6時間の範囲内である。
【0067】
光照射による硬化と共に電子線照射による硬化を行う場合には、加速電圧が好ましくは0〜500kV、より好ましくは20〜300kV、さらに好ましくは30〜200kVの範囲内である電子線を用いればよい。また、照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、さらに好ましくは4〜200kGyの範囲内である。
<本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物の物性>
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、(A)100μmの厚さでの405nmにおける光線透過率が85%以上である。より好ましくは88%以上、さらに好ましくは89%以上である。光線透過率は、得られた硬化物を用いて分光光度計により測定した値である。本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、少なくとも1つのラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー、重合性モノマー、光重合開始剤を含有し、所定の硬化条件や方法により十分な硬化を行うことで上記光線透過率を達成することができた。光線透過率が85%より低いと透明性に劣るために、記録された情報の読み出し時にエラーが増加する場合がある。
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、(B)70℃のオーブン中で100時間保持させた場合の質量減量(以下単に質量減少と称する場合がある。)が、0.1質量%以上2.0質量%以下である。さらに、0.1質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下が最も好ましい。測定する硬化物の厚みは、100μ±2μmのものを採用する。質量減少の原因は未架橋の重合性モノマー成分や開始剤の残渣およびその分解生成物、あるいは低分子量の添加剤が原因と考えられるが、少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー、重合性モノマー、光重合開始剤を含有し、所定の硬化条件や方法により十分な硬化を行なうことで、上述の範囲にすることが可能となった。質量減少が0.1質量%より少なくするためには硬化物の乾燥(減圧)工程などが必要でコストアップとなり、2.0質量%より大きい場合には揮発成分の硬化物表面へのブリードアウトや、保護層の厚み変化により記録された情報の読み出し時にエラーが増加する場合や、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。すなわち質量減量は0.2質量%以上2.0質量%以下にすることで、例えば、光ディスクでは経時的な表面精度の低下が少なく保存安定性が向上したのみならず、自動車内等での使用や保存が可能となった。
【0068】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、(C)25℃における貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下である。好ましくは10MPa以上120MPa以下、よりこの好ましくは10MPa以上100MPa以下、最も好ましくは20MPa以上100MPa以下である。貯蔵弾性率E'は、得られた硬化物を用いて動的粘弾性測定により得られた値である。測定条件としては、引っ張りモード、周波数1Hz、クランプ距離25mm、振幅0.1%、昇温速度5℃/分を採用する。本発明では、少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有するオリゴマー及び/又はポリマー、重合性モノマー、光重合開始剤を含有し、所定の硬化条件や硬化方法により十分に硬化することで、貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下の硬化物を得ることができた。貯蔵弾性率E'が10MPaより小さい場合には、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。特に、圧接痕や凹みが付いたりする。また、貯蔵弾性率E'が150MPaより大きい場合では、得られる光ディスクの反りが増大したり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0069】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、(D)25℃における損失正接tanδが0.10以上0.70以下である。好ましくは0.10以上0.60以下、よりこの好ましくは0.10以上0.50MPa以下、最も好ましくは0.10以上0.40以下である。損失正接tanδは、貯蔵弾性率E'と同様に動的粘弾性測定により得られた値である。なお、測定条件も同様条件を採用する。損失正接tanδが0.70よりも大きい場合には、光ディスクの長期保存安定性が悪くなる場合がある。特に、圧接痕や凹みが付いたりする。また、0.10よりも小さい場合には、得られる光ディスクの反りが増大したり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0070】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、(E)ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下である。好ましくは0℃以上25℃以下、よりこの好ましくは5℃以上25℃以下、最も好ましくは10℃以上25℃以下である。ガラス点移転温度は、貯蔵弾性率E'と同様に動的粘弾性測定により得られた値であり、最大tanδ値の温度を採用する。なお、測定条件は、貯蔵弾性率E'と同様条件を採用する。ガラス点移転温度が30℃よりも大きい場合には、光ディスクの反りが大きくなる場合がある。また、0℃よりも小さい場合には、光ディスクに圧接痕や凹みが付いたりする場合があり、長期保存安定性が悪くなったりする場合がある。
【0071】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、10〜150μmの厚さを有している。この厚さは、好ましくは、10〜120μmであることが好ましく、20〜105μmであることがより好ましい。つまり、本発明の組成物から得られる硬化物の厚さの上限値は、150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは105μm以下である。一方、下限値は、10μm以上、好ましくは20μm以上である。
【0072】
本発明において、反射膜上とは、反射膜に直接保護層を積層する形態だけでなく、反射膜上に記録層や誘電体層等の機能層が積層され、その機能層上に保護層が積層される形態も意味する。又、ディスクの記録容量を上げるために記録層が多層に形成される場合があるが、本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物から得られる保護層は、この多層反射層間の中間層にも適用する形態も含まれる。本発明において光ディスクとしては、例えば、ブルーレイディスク等が挙げられる。ブルーレイディスク向けの保護層は、一般的には、低反り性(低収縮性)、透明性(光透過性)、ポリカーボネート基板との密着性、低腐食性、リサイクル性、速硬化性(生産性)、寸法安定性(加熱促進試験時の反りの変化、残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)等の特性が要求されている。本発明の硬化性樹脂組成物を用いた光ディスクは、上記特性を全て満たしているものである。なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例および比較例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
≪評価方法≫
<樹脂組成物粘度>
得られた硬化性樹脂組成物を、温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて測定した値を採用した。
<保護層の透明性>
得られた積層体から保護層(組成物の硬化膜)のみを所定の寸法で剥がし取り、405nmにおける光線透過率を、分光光度計(型式UV−3100、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。空気をブランクとして採用した。次いで、算出された光線透過率の値について下記の基準により評価した。
◎:透過率が89%以上
○:透過率が85%以上
×:透過率が85%未満。
<保護層の質量減量>
得られた基板/保護層の積層体から保護層(組成物の硬化膜)のみを所定の寸法で剥がし取り、加熱促進試験(70℃のオーブン中で100時間保持)前後の質量減量(%)を、(試験前の質量−試験後の質量)/試験前の質量×100で算出した。次いで、算出された光線透過率の値について下記の基準により評価した。
◎:質量減量が1.0%以下
○:質量減量が2.0%以下
×:質量減量が2.0以上。
<保護層の残膜性>
加熱促進試験(70℃のオーブン中で100時間保持)前後の保護層の厚みを、レーザーフォーカス変位計を用いて測定し、残膜率(%)を(加熱促進試験後の膜厚/加熱促進試験前の膜厚×100)で算出し、以下の基準で残膜性を評価した。
○:残膜率が98.0%以上〜102%未満
×:残膜率が98.0%未満または102%以上
<初期の反り増加量>
得られた基板/保護層の積層体を、保護層(組成物の硬化膜)が上面側になるように水平なガラス板上に置いた後、株式会社日本触媒製のレーザー変位読取方式の反り角測定装置を使い、温度25℃、相対湿度50%環境下にて、半径58mm位置におけるラジアルチルト値を測定した。初期の反り増加量としては、塗布前後の反り変化量を採用した。
<加熱促進試験後の反り増加量>
得られた基板/保護層の積層体を、70℃のオーブン中で100時間保持させ、さらに、温度25℃、相対湿度50%環境下に24時間放置したときの反り値を、初期の反り増加量と同様にしてラジアルチルト値を測定した。これにより加熱促進試験前後の反り増加量を求めた。
<寒冷試験後の反り増加量>
得られた基板/保護層の積層体を、5℃の恒温室中で5時間放置したときの反り値を、初期の反り増加量と同様にしてラジアルチルト値を測定した。これにより寒冷試験後の反り増加量を求めた。
<反り総合評価>
初期の反り増加量と加熱促進試験後の反り増加量を合算した反り量A、及び初期の反り増加量と寒冷試験後の反り増加量を合算した反り量Bから以下の基準で評価した。
○:A、B共に0.8°未満
△:A、Bの内、どちらかが0.8°以上となる
×:A、B共に0.8°以上
なお、0.8°以上反りがあれば、製造工程の工夫や保護樹脂の改良を実施しても、反り規格内への改善は困難となる恐れがある。
<保護層 25℃における貯蔵弾性率E'>
得られた基板/保護層の積層体から、保護層(組成物の硬化膜)を剥離し、TAインスツルメンツ製動的粘弾性測定装置RSAIIIを用い以下の測定条件で測定した。
(1)サンプルサイズ:幅8mm、長さ50mm
(2)クランプ距離25mm
(3)測定モード:引っ張り
(4)周波数:1Hz
(5)幅:0.1%
(6)昇温速度:5℃/分
動的粘弾性の測定を行い、得られた25℃における貯蔵弾性率E'の値を採用した。
<保護層 25℃における損失正接tanδ>
25℃における貯蔵弾性率E'と同様な測定方法および条件により得られた値を採用した。
<保護層 ガラス点移転温度>
25℃における貯蔵弾性率E'と同様な測定方法および条件により得られた値であり、最大tanδ値の温度を採用した。
<永久変形量>
得られた基板/保護層の積層体を用いて、微小圧縮試験機(島津製作所製、型式MCT−W500)により、試験条件として、使用平面圧子50μm径、負荷速度20mN/秒、最大荷重300mN、最大荷重での保持時間90秒、徐荷速度20mN/秒、完全徐荷後の保持時間90秒とした場合の、積層体に残る変形量を測定した値を採用した。
なお、この試験により永久変形量が1μmを超える場合には、圧接痕や凹み等によりレーザー光による読み取りエラーが生じやすくなる場合や長期保存安定性に劣る場合がある。
≪製造例1≫
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル150gを加え、50℃へ昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA、株式会社日本触媒製)200gと、酢酸エチル25gとリンタングステン酸13mgの混合溶解物を、それぞれ3時間かけて滴下し重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体P(VEEA)を得た。モノマーの反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.6%であること、さらに、酢酸エチルの含有量は0.1%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2210、分子量分布(Mw/Mn)は1.60であった。
≪実施例1≫
オリゴマーとしてウレタンアクリレート(商品名「紫光UV−6640B」、日本合成化学工業株式会社製)40質量部、重合性モノマーとしてビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジアクリレート(商品名「SR−602」、サートマー株式会社製)25質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(株式会社日本触媒製)20質量部、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製)15質量部、光重合開始剤としてオリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(商品名「エスキュアONE」、ランベルティ製)2質量部を混合・攪拌して光ディスク用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0075】
次に、厚さ1.1mm、寸法120mm×の120mmのポリカーボネート基板上に、スピンコーターにて光ディスク用硬化性樹脂組成物を厚さ100μm設定で塗布した。得られたPC基板を、キセノンフラッシュUVランプを有するUV照射機(米国キセノン社製 形式RC−742)を用いて、窒素雰囲気下、初めにフラッシュを2回照射し、次にフラッシュを30回照射させて硬化を完結させた。なお、320〜390nmにおける照射積算光量は約0.9J/cmであった。保護層の厚さは、レーザーフォーカス変位計を用いて測定したところ100±2μmであった。得られた光ディスク用硬化性樹脂組成物、および、基板/保護層の積層体の評価を行った結果を表1に示した。
≪その他の実施例および比較例≫
実施例1と同様にして、各成分を表1および表2に示した割合で混合・攪拌して、光ディスク用硬化性樹脂組成物を得た。得られた組成物を上記の評価方法により評価した。評価結果を表1および表2に示す。
なお、表1および表2中の略称は下記の通りである。
・UV−6640B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・UV−6100B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・UV−7000B:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業株式会社製)
・CN−972:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・CN−981:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・CN−991:ウレタンアクリレート(サートマー株式会社製)
・P(VEEA):製造例1のビニル系重合体
・IB−XA:イソボルニルアクリレート
(商品名「ライトアクリレートIB−XA」、共栄社化学株式会社製)
・DCP−A:トリシクロデカンジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学株式会社製)
・Bis4EO−A:ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートBP−4EA」、共栄社化学株式会社製)
・Bis10EO−A:ビスフェノールAのエチレンオキシド10モル付加物のジアクリレート
(商品名「SR−602」、サートマー株式会社製)
・PEGDA−9:ポリエチレングリコールジアクリレート(日本触媒製)
・1,6−Hx−A:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
(商品名「ライトアクリレート1,6Hx−A」、共栄社化学株式会社製)
・HX−220:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン2モル付加物のジアクリレート
(商品名「カヤラッドHX−220」、日本化薬株式会社製)
・HX−620:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン4モル付加物のジアクリレート
(商品名「カヤラッドHX−620」、日本化薬株式会社製)
・HPP−A:ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジアクリレート
(商品名「ライトアクリレートHPP−A」、共栄社化学株式会社製)
・VEEA:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製)
・TMP−6EO−A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド6モル付加物のトリアクリレート
(商品名「SR−499」、サートマー株式会社製)
・TMP−9EO−A:トリメチロールプロパンのエチレンオキシド9モル付加物のトリアクリレート
(商品名「SR−502」、サートマー株式会社製)
・P−2M:2−メタクリロイロオキシエチルアシッドホスフェート
(商品名「ライトエステルP−2M」、共栄社化学株式会社製)
・Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
・Esacure−oneオリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}
(商品名「エサキュアONE」、ランベルティ製)
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の光ディスク用硬化性樹脂組成物は、透明性を有すると同時に光ディスク全体の反りを抑え、さらに、長期保存安定性(加熱促進試験時の低反り性や残膜性、圧接痕や凹み等の永久変形量が小さいこと)に優れたる光ディスク、例えばブルーレイディスクに利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に存在し、かつ情報読み取り用のレーザー光を反射させる反射膜と、前記反射膜上に存在し、かつ厚さが10〜150μmである保護層とを有する光ディスクに用いられる硬化性樹脂組成物であって、
(a)少なくとも1つ以上のラジカル重合性基及び/又はイオン重合性基を有する、オリゴマー及び/又はポリマーと、
(b)重合性モノマーと、
(c)光重合開始剤とを含有し、
(d)25℃おける粘度が500mPa・S以上3500mPa・S以下であり、
かつ、前記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、
(A)100μmの膜厚での波長405nmにおける光線透過率が85%以上であり、
(B)70℃で100時間保持したときの質量減量が0.1%以上2.0%以下であり、
(C)25℃における貯蔵弾性率E'が10MPa以上150MPa以下であり、
(D)25℃における損失正接tanδが0.10以上0.70以下であり、
(E)ガラス点移転温度が0℃以上30℃以下である
ことを特徴とする光ディスク用硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−198719(P2010−198719A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273125(P2009−273125)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】