説明

光ディスク用紫外線硬化型組成物および光ディスク

【課題】 光反射層としてシリコン又はシリコン化合物を使用した際にも、湿熱環境変化時における反射層の劣化を抑制した紫外線硬化型組成物、及び湿熱環境変化時においても好適に記録信号の読み取りや書き込みが可能な光ディスクを提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび酸化防止剤を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記酸化防止剤がイソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤であり、組成物中の塩素含有量が120ppm未満である光ディスク用紫外線硬化型組成物により、高温高湿環境下においても紫外線硬化型組成物の硬化被膜とシリコン反射層界面での劣化を生じにくくでき、信号の読み取りや書き込みに支障をきたすおそれのある微細な白点の発生を効果的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高密度記録可能な光ディスクとして主流となっているDVD(Digital Versatile Disc)は厚さ0.6mmの2枚の基板を接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVDにおいては高密度化を達成するため、CD(Compact Disc)に比べ短波長の650nmのレーザーを用い、光学系も高開口数化している。
【0002】
そのDVDを製造する工程としては種々のバリエーションがあるが、基本的には、少なくとも1枚が情報記録層を有する、2枚の基板を貼り合わせる方法で作製され、その際には、紫外線硬化型組成物が接着剤として使用されている。
【0003】
再生専用型DVDの場合、貼り合せる2枚の基板構成の相違により、DVD−5、DVD−10、DVD−9、DVD−18の如く分類されている。これらの構成の詳細については公知の文献(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)により開示されているが、概略は以下の通りである。
【0004】
貼り合わせる2枚の基板として、共に基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、情報読み取りのためのレーザー光の反射膜として、例えばアルミニウムの層をピットの凹凸を覆うように設けることにより情報記録層(反射層ともいう)を形成し、それをレーザー光の反射膜としたものを用い、これらを対向させて貼り合わせたもの(DVD−10)、または2枚の内の片方には情報記録層を持たない透明な基板を使用したもの(DVD−5)、あるいは一方の基板に記録情報に対応するピットの凹凸を設け、これを覆うように金またはケイ素化合物等からなる半透明反射層(情報記録層)を形成し、他方の基板にはアルミニウムの反射層(情報記録層)を形成したもの(DVD−9)等がある。さらに、片面に反射層と半透明反射層との2層を有する基板を2枚貼り合わせた構造を有するもの(DVD−18)もあり、用途によって使い分けられている。
【0005】
DVD等の光ディスクにおいては、透明又は半透明の光反射層として銀や銀合金、シリコン又はシリコン化合物が使用されており、当該光反射層を保護する光透過層や、光反射層を有する基板を貼り合わせる接着剤層に紫外線硬化型組成物の硬化被膜が広く使用されている。シリコン又はシリコン化合物は安価であるが、光ディスクの光反射層としてシリコン又はシリコン化合物を使用すると、積層される紫外線硬化型組成物によっては高温高湿環境下で光反射層の表面が白濁し、信号の読み取りや書き込みの際に支障をきたす場合があった。
【0006】
このような問題に対し、光反射層としてシリコン又はシリコン化合物を使用した際にも高い耐久性を有する光ディスクを形成できる紫外線硬化型樹脂組成物として、光重合開始剤にオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]を使用した紫外線硬化型樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。当該組成物は、特定の光重合開始剤を使用することにより、湿熱環境変化時のシリコン反射膜の白濁を抑制できるとする組成物である。
【0007】
しかし、当該紫外線硬化型組成物は、湿熱環境変化時に目視観察による白濁を防止することができるものであるが、シリコン反射層表面の微細観察においては、微細な白点が散見される場合があり、更なる高密度記録が要求されている光ディスクにおいては、当該微細な白点が情報の読み取りや書き込みに支障をきたす場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−3699号公報
【特許文献2】特開2001−266419号公報
【特許文献3】特開2005−68348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、光反射層としてシリコン又はシリコン化合物を使用した際にも、湿熱環境変化時における反射層の劣化を抑制した紫外線硬化型組成物、及び湿熱環境変化時においても好適に記録信号の読み取りや書き込みが可能な光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の紫外線硬化型組成物は、シリコン反射層表面に劣化を生じさせる要因の一つとして推定される塩素成分含有量を低減した組成物に、シリコン反射層表面と親和性の高いイソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤を含有させることで、高温高湿環境下においても紫外線硬化型組成物の硬化被膜とシリコン反射層界面での劣化を生じにくくでき、信号の読み取りや書き込みに支障をきたすおそれのある微細な白点の発生を効果的に抑制できる。
【0011】
すなわち本発明は、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび酸化防止剤を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記酸化防止剤がイソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤であり、組成物中の塩素含有量が120ppm未満である光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、従来の組成物では抑制されていなかったシリコン反射層表面に生じる微細な劣化を抑制できるため、信号特性の向上が期待でき、高密度記録用光ディスクに適用した際にも好適に信号の読み取りや書き込みが可能な光ディスクに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび酸化防止剤を含有し、前記酸化防止剤がイソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤であり、組成物中の塩素含有量が120ppm未満の組成物である。
【0014】
[(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明に使用する(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、光ディスクの光透過層や接着剤層に使用されている各種オリゴマーを使用することができ、ウレタン(メタ)アクリレートやエポキシ(メタ)アクリレートを好ましく使用できる。
【0015】
本発明においては、塩素含有量の少ないオリゴマーを調整しやすいことから、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0016】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物と、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用できる。また、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物と、分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートも好ましく使用できる。
【0017】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート類が挙げられる。なかでも、分子内に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物を好ましく使用でき、特にトリレンジイソシアネートは、色相の悪化が無く、かつ光線透過性も低下することがないため特に好ましい。
【0018】
ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等があり、さらにこれらの(メタ)アクリレートと2個以上のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物でも良い。あるいは2個以上のヒドロキシキル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる化合物でも良く、例えばグリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコール化合物のモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。
【0019】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、ポリオール類が好ましく用いられ、その具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、エオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のアルキレンポリオール類等の多量体としての高分子ポリオールが挙げられる。
【0020】
なかでも、エーテル結合を有するポリエーテルポリオール、多塩基酸との反応や環状エステルの開環重合により得られるエステル結合を有するポリエステルポリオール、又は、カーボネートとの反応により得られるカーボネート結合を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。これらポリオール類の少なくとも一部、好ましくはポリオール類全量中の15モル%以上、更に好ましくはポリオール類全量中の30モル%以上は、分子量500〜2500であるのが好ましい。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記ポリオール類の多量体のほかに、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合体としてのポリテトラメチレングリコール等、及び、前記ポリオール類の、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキサイドの付加物等が挙げられる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、前記ポリオール類と、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等の多塩基酸との反応物、及び、カプロラクトン等の環状エステルの開環重合体としてのポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリオール類と、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、又は、ジフェニルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチルジフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、4,4’−ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート、あるいは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等のジアルキルカーボネート等との反応物等が挙げられる。
【0024】
使用するポリオールは、1種であっても2種以上を併用してもよいが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの2種以上を併用したウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、2種を併用することがより好ましい。これらポリオールを併用することで、得られる硬化膜の高温高湿環境下における耐変形性や、表面硬度を好適に調整しやすくなる。2種の併用の例としては、表面硬度を高くする場合には、ポリエステルポリオールとポリカーボネートポリオールとの併用が好ましく、耐湿熱変形性を向上させる場合には、ポリエーテルポリオールとを併用させることが好ましい。これらの中間的な特性とする場合には、ポリエーテルポリオールとポリカーボネートポリオールとを併用することが好ましい。
【0025】
ポリオール併用時における各ポリオールの含有量としては、使用するポリオールの全量に対して、ポリエーテルポリオールは20〜90質量%であることが好ましく30〜80質量%であることがより好ましい。ポリエステルポリオールの含有量としては、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%とすることがより好ましい。ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールの含有量を当該範囲とすることで、硬化物の表面硬度や耐湿熱特性が得られやすい。
【0026】
本発明に使用するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートとして、DIC(株)社製FAU−742TP、FAU−306、トリレンジイソシアネート骨格のウレタンアクリレートとしてDIC(株)社製FAU−1000、ポリエステル骨格のウレタンアクリレートとして、コグニスジャパン(株)社製Photomer−6892、ダイセルサイテック(株)社製Ebecryl−8405等が好ましく例示できる。
【0027】
本発明の紫外線硬化型組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることが特に好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート含有量を当該範囲とすることで硬化膜に適度な柔軟性を付与することが可能となる。
【0028】
本発明で使用するウレタン(メタ)アクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)としては、300〜4000であることが好ましく、400〜3000であることがより好ましい。これにより、本発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクの耐久性がより優れたものとなる。
なお、GPCによる重量平均分子量は、例えば、東ソー(株)社製 HLC−8020を用い、カラムはGMHxl−GMHxl−G200Hxl−G1000Hxlwを使用し、溶媒はTHFを用い、1.0ml/minの流量でカラム温度が40℃、検出器温度が30℃、分子量は標準ポリスチレン換算で測定を行うことで特定される。
【0029】
本発明においては、(メタ)アクリレートオリゴマーとしてエポキシ(メタ)アクリレートを実質的に含有しない組成物であると組成物中の塩素含有量を調整しやすいため好ましいが、組成物中の塩素含有量を増加させないものであれば、エポキシ(メタ)アクリレートも好適に使用できる。エポキシ(メタ)アクリレートとしては、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物とアクリル酸を反応させて得られるものであれば、特に制限がなく、ポリエステル、ポリエーテル、ゴムなどにより変性されていてもよい。
【0030】
[(メタ)アクリレートモノマー]
本発明においては、上記(メタ)アクリレートオリゴマーと併用して、一分子中に一の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、単官能(メタ)アクリレートと略記する)や、一分子中に二個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、二官能の(メタ)アクリレートと略記する。)、更には一分子中に三以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、多官能の(メタ)アクリレートと略記する。)等の(メタ)アクリレートモノマーを使用することで、所望の粘度、硬化後の弾性率を有する組成物を得ることができる。
【0031】
これら(メタ)アクリレートモノマーとしては、各種(メタ)アクリレートを使用でき、例えば単官能(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタンアダマンチル(メタ)アクリレート、などを使用できる。
【0032】
中でも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレートを用いた場合、反り変化量も少なくなるため、好ましい。
【0033】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式の二官能(メタ)アクリレートとして、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等を使用できる。
【0034】
なかでもトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等が好ましく、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0035】
また、硬化後の弾性率を高く調整したい場合に、三官能以上の(メタ)アクリレートを使用することができる。例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、等を使用できる。
【0036】
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等の紫外線硬化性化合物も必要に応じて使用できる。
【0037】
本発明における紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物全量中の単官能(メタ)アクリレートの含有量としては、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることが好ましい。二官能(メタ)アクリレートの含有量は3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが好ましい。また、三官能以上の(メタ)アクリレートの含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましい。
【0038】
[酸化防止剤]
本発明においては、酸化防止剤として、イソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤を使用する。当該酸化防止剤中のイソシアヌル酸骨格は、シリコン又はシリコン化合物との親和性が高いため、当該酸化防止剤を含有する紫外線硬化型組成物硬化被膜と、シリコン又はシリコン化合物との界面の密着性が良好となる。これにより、高温高湿環境下におけるシリコン又はシリコン化合物の光反射層表面への劣化要因の侵入と劣化の発生を好適に抑制でき、微細な白点を生じにくくすることができる。
【0039】
イソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤としては、例えば、式(1)で表される酸化防止剤を好ましく使用できる。
【0040】
【化1】

[式(1)中、Xは式(2)
【0041】
【化2】

で表される三価の基であり、Yは式(3)
【0042】
【化3】

(式(3)中、nは1〜3である。)
で表される二価の基であり、Zは式(4)
【0043】
【化4】

(式(4)中、R〜Rは各々独立してメチル基又はter−ブチル基を表し、R及びRの少なくとも一つがter−ブチル基であり、R〜Rは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
又は式(5)
【0044】
【化5】

(R〜Rは各々独立してメチル基又はter−ブチル基を表し、R及びRの少なくとも一つがter−ブチル基であり、R〜Rは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
で表される一価の基である。]
【0045】
式(1)で表される化合物は、酸化されやすい水酸基と、当該水酸基の酸化を抑制するter−ブチル基が隣接した式(4)又は式(5)で表される構造を有し、当該構造が上記式(2)で表されるイソシアヌル酸骨格を中心に配列した構造を有することで、シリコン又はシリコン化合物の劣化を好適に抑制できる。
【0046】
なかでも、式(1)中のZが式(4)で表される構造であり、式(4)中のR及びRが共にter−ブチル基である酸化防止剤は、末端に酸化されやすい水酸基を有し、当該水酸基の両側にter−ブチル基が隣接した構造を有することで、好適に酸化制御効果を示し、シリコン又はシリコン化合物の劣化を特に好適に抑制できるため好ましく、式(3)中のnが1である化合物が特に好ましい。式(1)の化合物の市販品としては、IRGANOX3114、IRGANOX3790(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。
【0047】
[紫外線硬化型組成物]
本発明の紫外線硬化型組成物は、上記の(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび酸化防止剤を含有し、組成物中の塩素含有量が120ppm未満の光ディスク用紫外線硬化型組成物である。本発明においては、上記式(1)で表される化合物を使用すると共に、塩素含有量を120ppm未満、好ましくは110ppm未満、より好ましくは105ppm未満とすることで、高温高湿下で進行するシリコンまたはシリコン化合物の酸化防止が可能となり、シリコン又はシリコン化合物の劣化を好適に抑制できる。
【0048】
組成物中の塩素含有量は、リガク社製波長分散型蛍光X線ZSX Purimusを使用し、ヘリウム雰囲気下ベリリウムフィルターを用い、定角測定元素を塩素、硫黄、リン、ケイ素及びナトリウムに設定、定角時間をピーク及びバックグラウンドともに各20秒間、照射面積30mmφとし、全元素定性分析+定角測定モードにより測定される。塩素含有量は薄膜FP法により特定される。
【0049】
本発明の紫外線硬化型組成物は、その粘度が200〜1000mPa・s、好ましくは300〜800mPa・sとすることで、被膜を好適に形成できる。
【0050】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線を照射した後の硬化膜の弾性率が、100〜3000MPa(25℃)となるように調整することが好ましい。中でも200〜2500MPaとなる組成であることがより好ましい。弾性率がこの範囲となる組成であると、硬化時の歪みが緩和され易く、高温高湿環境下に長時間曝されても反りの変化量が少ない光ディスクを得ることができる。また、硬化膜の弾性率が200〜2500MPa(25℃)となるように調整することも好ましく、弾性率がこの範囲となる組成であると、光ディスクを形成した際の記録信号のエラーレートの劣化が少なく、信頼性に優れた光ディスクを形成しやすくなる。
【0051】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物中には、上記(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー、および酸化防止剤以外に、公知の光重合開始剤、および熱重合開始剤等を用いる事ができる。
【0052】
本発明に使用できる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等がある。
【0053】
本発明に使用する紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる。また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0054】
[光ディスク]
本発明の光ディスクは、シリコン又はシリコン化合物からなる光反射層を有し、当該光反射層上に、直接上記光ディスク用紫外線硬化型組成物の硬化被膜が積層される構成である。当該構成により、本発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクは、高温高湿下でも信号の読み取りや書き込みに際して障害となる光反射層の劣化が生じにくく、音声や映像の信号やその他の特殊な信号等を好適に読み書きできる。
【0055】
当該構造を有する光ディスクとしては、例えば、第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に該第1の反射膜上に上記紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えた構造を有する光ディスクである。本発明の光ディスクは、このような構造の光ディスク、或いはこのような構造を部分的に有する光ディスクである。そのような光ディスクとしては、例えば、シリコン又はシリコン化合物からなる光反射層を有し、該光反射層上に保護層として紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えたCD−ROM又はCD−R等がある。また、例えば、シリコン又はシリコン化合物からなる光反射層を有する基板を、該光反射層を接着面として紫外線硬化型組成物により他の基板と貼り合わせたDVD−5がある。
【0056】
また、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクは、前記第1の反射膜上に設けた上記紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層上に、更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための第2の反射膜を備えた第2の基板が、前記樹脂層と前記第2の反射膜とが接するように、前記樹脂層上に設けられた構造の光ディスクであっても良い。このような構造の光ディスクとしては、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の光ディスク用基板の少なくとも一方の基板が、その表面に、シリコン又はシリコン化合物からなる光反射層を有し、2枚の基板の光反射層同士を接着面として前記2枚の光ディスク用基板を貼り合わせたDVD−9、DVD−18、DVD−10等の貼り合わせ型の光ディスクがある。
【0057】
基板としては、ディスク形状の円形樹脂基板を使用でき、当該樹脂としてはポリカーボネートを好ましく使用できる。光ディスクが再生専用の場合には、基板上に情報記録を担うピットが光反射層と積層される表面に形成される。
【0058】
光ディスク中の上記紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層は、光を効率良く透過することが好ましく、50μmの厚さにおける全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0059】
当該樹脂層の厚みは、光ディスクの構成により適切な厚さとすればよく、例えば、光ディスクがDVD−9の場合には、40〜70μmであることが好ましい。
【0060】
光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」であり、特に好ましくは再生専用型DVDである「DVD−9」である。
【0061】
光反射層上に塗布した紫外線硬化型組成物を紫外線照射することにより硬化させる場合、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0062】
紫外線を照射する場合、積算光量は0.05〜1J/cmとなるようにコントロールするのが好ましい。積算光量は0.05〜0.8J/cmであることがより好ましく、0.05〜0.6J/cmであることが特に好ましい。本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は、積算光量が少量であっても、十分に硬化し、光ディスク端面や表面のタックが発生せず、更に光ディスクの反りや歪みが発生しない。
【0063】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0064】
以下に、「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」を製造する場合の例を記載する。本発明の光ディスクの例としてはこれらに限定されるものではない。また、下記製造例で使用する紫外線硬化型組成物は、本発明で使用する上記式(1)で表される化合物を含有した紫外線硬化型組成物を意味する。
【0065】
(DVD−9の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜(第2の反射膜)が積層された光ディスク用基板(A)(第2の基板)1枚と、記録情報を担うピットと称する凹凸の上に10〜30nmのシリコン又はシリコン化合物を主成分とする合金の半透明反射膜(半透明反射膜:第1の反射膜)が積層された光ディスク用基板(B)(第1の基板)1枚を用意する。
【0066】
なお、前記第2の反射膜としては、例えばアルミニウムを主成分とするものや銀又は銀を主成分とする合金を使用することができる。また、前記光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として公知のものが使用できる。例えば、アモルファスポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等が挙げられるが、特にポリカーボネート基板を使用することが好ましい。
【0067】
次いで、紫外線硬化型組成物を前記基板(A)(第2の基板)の金属薄膜(第2の反射膜)上に塗布し、更に、半透明反射膜(第1の反射膜)が積層された前記基板(B)(第1の基板)を、半透明反射膜(第1の反射膜)の膜面が接着面となるように、金属薄膜(第2の反射膜)面に塗布された紫外線硬化型組成物を介して基板(A)(第2の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0068】
(DVD−18の製造)
更に、前記のDVD−9を製造した後に、基板(A)(第2の基板)上に形成された金属薄膜(第2の反射膜)を基板(B)(第1の基板)側に残したまま、基板(A)(第2の基板)のみを剥離することにより、基板(B)(第1の基板)/半透明反射膜(第1の反射膜)/紫外線硬化型組成物の硬化膜/金属薄膜(第2の反射膜)が順次積層されたディスク中間体を作製する。そのようなディスク中間体を2枚用意する。次いで、この2枚のディスク中間体の金属薄膜(第1の反射膜)を接着面として、それらが対向するように接着することにより「DVD−18」が得られる。
【0069】
(DVD−10の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、シリコン又はシリコン化合物を主成分とする合金による40〜60nmの反射膜が積層された光ディスク用の基板(C1)(第1の基板)及び(C2)(第2の基板)の2枚を用意する。片方の基板(C1)(第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)上に紫外線硬化型組成物を塗布し、もう片方の基板(C2)(第2の基板)を反射膜(第2の反射膜)の膜面が接着面となるように、基板(C1)(第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)面に塗布された前記組成物を介して基板(C1)(第1の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0070】
(DVD−5の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、シリコン又はシリコン化合物を主成分とする合金による40〜60nmの金属薄膜(第1の反射膜)が積層された光ディスク用基板(D)(第1の基板)を用意する。別に、ピットを有さない光ディスク用基板(E)を用意する。基板(D)(第1の基板)の前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物を塗布し、該組成物を介して基板(D)(第1の基板)と基板(E)を貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【実施例】
【0071】
(実施例1〜4及び比較例1〜5)
下記表1〜2に示した配合組成により、各組成原料を60℃で3時間・加熱・溶解して、各実施例及び各比較例の紫外線硬化型組成物を調製した。
得られた紫外線硬化型組成物を用いてDVD−9貼り合わせディスクを製造し、下記試験方法により耐久性試験を評価した。その結果は表1〜2下段に示した。
【0072】
(塩素含有量の測定)
組成物中の塩素含有量を、リガク社製波長分散型蛍光X線ZSX Purimusを使用し、ヘリウム雰囲気下ベリリウムフィルターを用い、定角測定元素を塩素、硫黄、リン、ケイ素及びナトリウムに設定、定角時間をピーク及びバックグラウンドともに各20秒間、照射面積30mmφとし、全元素定性分析+定角測定モードにより測定した。塩素含有量は薄膜FP法により特定した。
【0073】
(DVD−9貼り合わせディスクの耐久性試験)
記録情報のピットが形成され、そのピットを覆うように厚さ50nmのアルミニウム薄膜が積層されたポリカーボネート基板に上記各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物をディスペンサで塗布し、半透明反射膜としてシリコンが積層されたポリカーボネート製ディスク基板を半透明反射膜が紫外線硬化型組成物に接するように重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化膜の膜厚が50〜60μmになるよう回転させた。次いでアイグラフィック株式会社製紫外線硬化装置を用い、メタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)で、積算光量0.1J/cmで半透明基板側から空気中で紫外線を照射し、各組成物を使用したDVD−9を作製した。
作製したディスクに対し、Audeo Dev(株)製SA−300を用い内周(Position:24.50−25.00mm)、中周(Position:40.03−40.51mm)領域のPIエラー数を測定した。PIエラー数は内中周測定値の平均値を採用した。
【0074】
その後エスペック社製エタック恒温恒湿器を使用して、80℃85%RH240時間の環境試験を行った。試験後各ディスクのPIエラー数を測定した。
環境試験前後でのPIエラー数よりPIエラー比(環境試験後のPIエラー数/環境試験前のPIエラー数)を求めた。
PIエラー比が2未満のものを○
PIエラー比が2以上のものを×とした。
【0075】
(耐久試験後外観)
耐久試験後の光ディスク外観は、(株)キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−200(倍率25倍)を用いて確認した。
欠陥のないものを○
白いブツ状欠陥が確認できるものを×
白いブツ状欠陥が頻発しているものを××とした。
また、実施例1、3及び比較例1、3における観察結果を図1〜4として示した。
【0076】
(弾性率の測定方法)
紫外線硬化型組成物を、ガラス板上に硬化塗膜が100±10μmになるよう塗布した後、メタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて、窒素雰囲気下積算光量0.5J/cmで硬化させた。この硬化塗膜をティー・エイ・インストルメント(株)社製の自動動的粘弾性測定装置で測定し、25℃における動的弾性率E’を弾性率とした。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1〜2中の化合物は以下の通りである。
UA:ポリプロピレングリコール(Mw:1000)1モルとトリレンジイソシアネート2モル反応後、ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得たウレタンジアクリレート(Mw:2100)
FAU−1000:ウレタンアクリレート DIC(株)社製(2,4−トリレンジイソシアネート1モルに対し、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを2モル反応させて得たウレタンジアクリレート Mw:434)
Photomer6019:ウレタントリアクリレート(G−PPG/IPDI/HEA,Mn=1500、G−PPG:グリセリン変性したプロピレングリコールジアクリレート、IPDI:イソホロンジイソシアネート、HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレートを表す)のトリプロピレングリコールジアクリレート20%カット品 コグニスジャパン(株)社製
Photomer3016:ビスフェノールA型エポキシジアクリレート コグニスジャパン(株)社製 (Mw:1300)
TMP(3EO)TM:トリメチロールプロパン1モルに3モルのエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレート
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
PHE:フェノキシエチルアクリレート
リン酸メタクリレート:エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート PM−2 日本化薬(株)社製
HCPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
TPO:トリメチルフェニルジフェニルホスフィンオキサイド
IRGANOX3114:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
【0080】
表1〜2に示すように、本発明の組成物であるオリゴマー起因の塩素含有量を120ppm未満にし且つ式(1)で表される化合物を配合して作製した実施例1〜4の光ディスクは、PIエラー比が小さく、高温高湿環境下での耐久性は良好であった。耐久試験後の光ディスク外観でも欠陥が無かった。
【0081】
一方、塩素含有量は120ppm未満だが式(1)で表される化合物を含まない比較例1、塩素含有量120ppm以上で且つ式(1)で表される化合物を含まない比較例2、塩素含有量は120ppm以上で且つ式(1)で表される化合物を含有する比較例3〜5はPIエラー比が大きく、高温高湿環境下での耐久性が無かった。耐久試験後の光ディスク外観は、ポリカーボネート基板越しに白いブツ状欠陥が観察され、外観が悪いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例1において作成した光ディスクの耐久試験後の外観観察結果(倍率25倍)である。
【図2】本発明の実施例3において作成した光ディスクの耐久試験後の外観観察結果(倍率25倍)である。
【図3】本発明の比較例1において作成した光ディスクの耐久試験後の外観観察結果(倍率25倍)である。
【図4】本発明の比較例3において作成した光ディスクの耐久試験後の外観観察結果(倍率25倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーおよび酸化防止剤を含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物であって、前記酸化防止剤がイソシアヌル酸骨格を有する酸化防止剤であり、組成物中の塩素含有量が120ppm未満であることを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、式(1)で表される請求項1に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【化1】

[式(1)中、Xは式(2)
【化2】

で表される三価の基であり、Yは式(3)
【化3】

(式(3)中、nは1〜3である。)
で表される二価の基であり、Zは式(4)
【化4】

(式(4)中、R〜Rは各々独立してメチル基又はter−ブチル基を表し、R及びRの少なくとも一つがter−ブチル基であり、R〜Rは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
又は式(5)
【化5】

(R〜Rは各々独立してメチル基又はter−ブチル基を表し、R及びRの少なくとも一つがter−ブチル基であり、R〜Rは各々独立して水素原子又はメチル基を表す。)
で表される一価の基である。]
【請求項3】
シリコン又はシリコン化合物からなる光反射層を有し、当該光反射層上に紫外線硬化型組成物の硬化被膜を有する光ディスクであって、前記紫外線硬化型組成物が請求項1又は2に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−53167(P2010−53167A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216545(P2008−216545)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】