説明

光ディスク装置、及び光ディスク装置の制御方法

【課題】構成部品をそれほど追加することなく効果的に装置内を冷却可能な光ディスク装置、及び光ディスク装置の制御方法を提供することを課題とする。
【解決手段】光ディスクDにレーザ光を照射する光ディスク装置1であって、光ディスクDを回転させるモータ2と、レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度変化に基づいて、モータ2の回転速度を増減する制御部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからデータを読み取る、あるいは光ディスクにデータを書き込む光ディスク装置、及び光ディスク装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、回転する光ディスクにレーザ光を照射してデータの読み書きを行うため、温度上昇に起因する動作不良を防止するための各種制御が行われている(例えば、特許文献1−4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−179662号公報
【特許文献2】特開2002−42361号公報
【特許文献3】特開2005−56471号公報
【特許文献4】特開2009−146552号公報
【特許文献5】特開2005−56460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ディスクにレーザ光を照射するレーザ素子は、温度による特性変化が著しい。このため、レーザ素子の駆動電流を何ら制御しない場合、温度変化に追従して出力が変動し、レーザ光のパワーが不安定になる。そこで、光ディスク装置では、レーザ光のパワーが一定になるように、レーザ素子の駆動電流の帰還制御が行われている。
【0005】
ここで、光ディスクの長時間再生などによって光ディスク装置の内部やその周囲の温度が高温になると、例えば、その影響を比較的受けやすい光ピックアップでは、レーザ素子の温度上昇に伴うレーザ光のパワー低下を補償するべく、レーザ素子の駆動電流の帰還制御によって駆動電流が増加し、更なる温度上昇を招くという循環状態に至り、定格電流を超えてレーザ素子の破損に至る虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、それほど構成部品を追加することなく効果的に装置内を冷却可能な光ディスク装置、及び光ディスク装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び光ディスク装置内の特定の部位の温度に基づいて、モータの回転速度を増減することにした。
【0008】
詳細には、光ディスクにレーザ光を照射する光ディスク装置であって、前記光ディスクを回転させるモータと、前記レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度変化に基づいて、前記モータの回転速度を増減する制御部と、を備える。
【0009】
ここで、上記レーザ素子の温度変化とは、レーザ素子の温度を直接測定して温度変化を検知する態様のみならず、レーザ素子の近傍に設置した周辺温度を測定してレーザ素子の温度変化を間接的に検知する態様も含む。
【0010】
光ディスクは平たい円盤であるため、回転するとディスクの内周側の空気が外周側へ向かい、中心部の気圧が下がる。このため、気圧の下がった光ディスクの中心部に光ディスク装置の内外の空気が流入し、光学ピックアップや周辺の基板類へ流れる気流が発生する。光ディスクの回転速度が速くなれば、この気流も増加し、光学ピックアップやその周辺の基板、集積回路類の冷却が促進される。
【0011】
光ディスクの増速による冷却効果は、光ディスクに接近する光学ピックアップが、光ディスク装置内の電子機器の中でも比較的高い。このため、上記光ディスク装置では、レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及びレーザ素子の温度変化に基づいて、光ディスクを回転させるモータの回転速度を増減しているが、光ディスクの回転速度の増加に伴う冷却促進効果は、光ピックアップのみならず、その周辺に設置される電子機器類にも与えられる。
【0012】
上記光ディスク装置であれば、レーザ素子の駆動電流と温度変化に基づいて光ディスクの回転速度を増減しているため、それほど構成部品を追加しなくても効果的に装置内を冷却することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記レーザ素子の駆動電流と前記光ディスク装置内の温度が増加すると、前記モータを線速度一定の制御から回転速度一定の制御へ切り替えるものであってもよい。CAV制御であれば、光ディスクの回転速度が光学ピックアップの位置に関わらず一定であるため、増速による冷却が効果的に実現される。
【0014】
また、前記制御部は、前記モータの回転速度を上げた後に前記レーザ素子の駆動電流と前記光ディスク装置内の温度が増加すると、該レーザ素子の発光を停止するものであってもよい。レーザ素子の発光が停止されれば発熱量が減少するので、光ディスクの回転速度を上げた際の冷却が速やかに行われる。
【0015】
また、前記制御部は、前記レーザ素子の温度が所定の温度を超えた場合に前記モータの回転速度を上げ、該モータの回転速度を上げた後に該レーザ素子の駆動電流が所定の閾値を超えた場合に、該レーザ素子の発光を停止するものであってもよい。モータの回転速度を上げた後にレーザ素子の発光が停止されれば、冷却を速やかに行なうことができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記モータの回転速度を増加した状態において、前記光ディスクに記録されたデータの読み取り要求が無い場合は、前記レーザ素子の発光を停止するものであってもよい。データを読み取る必要が無い場合にレーザ素子の発光が停止されれば増速状態における冷却が更に促進される。
【0017】
また、本発明は、方法としての側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、光ディスクにレーザ光を照射する光ディスク装置の制御方法であって、前記レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度変化に基づいて、前記光ディスクを回転させるモータの回転速度を増減するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
構成部品をそれほど追加することなく効果的に装置内を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光ディスク装置の構成図である。
【図2】システムコントローラが実行する処理フロー図である。
【図3】制御内容を実施形態と従来例とで比較した図である。
【図4】実験データである。
【図5】変形例に係る光ディスク装置のシステムコントローラが実行する処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明を実施するための形態を例示的に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0021】
<構成>
図1は、本実施形態に係る光ディスク装置の構成図である。光ディスク装置1は、光ディスクDを回転させるスピンドルモータ2や、スピンドルモータ2によって回転される光ディスクDにレーザ光を照射し、その反射光を検知する光学ピックアップ3を備えており、光ディスクDのデータを読み取ることができる。
【0022】
光学ピックアップ3は、半導体のレーザ素子であるレーザダイオード(以下、LDという)や、LDから放射されたレーザ光やその反射光が通過する各種レンズ、LDに向かう反射光を分光するビームスプリッタ、ビームスプリッタによって分光された反射光を検出するフォトダイオード、対物レンズを動かすアクチュエータを備えており、フォトダイオードの信号をRF(高周波)アンプ4へ送る。光学ピックアップ3のアクチュエータは、レーザ光が光ディスクDの記録層で焦点を結ぶように対物レンズと光ディスクDとの間の距離を調整するフォーカスサーボ5と、レーザ光がトラックをトレースするように対物レンズの位置を調整するトラッキングサーボ6によって制御される。LDは、出力が一定になるよう、AGC(自動利得制御回路)8からの制御信号に基づく駆動電流の帰還制御が行われる。なお、光学ピックアップ3は、CD(Compact Disc)やDVDといった赤色系ディスク用、又はBD(Blu-ray(登録商標) Disc)といった青色系ディスク用、或いはこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0023】
フォーカスサーボ5およびトラッキングサーボ6は、システムコントローラ7に制御されており、RFアンプ4を経た光学ピックアップ3のフォトダイオードからの信号が入力されるトラッキング/フォーカスエラーアンプ9において演算された、対物レンズの実際の移動量と制御目標値との誤差に基づく、光学ピックアップ3のアクチュエータの制御を行う。また、トラッキングサーボ6は、連続した誤差信号がシステムコントローラ7から入力されると、スレッドサーボ10に信号を送って送りモータ11を作動させ、光学ピックアップ3を光ディスクDの径方向にスライド移動させる。
【0024】
スピンドルモータ2は、スピンドルサーボ12によって制御されている。スピンドルモータ2の回転速度は、基本的に、RFアンプ4の出力信号から抽出されるクロックと既定の内部クロックとが同期するように、システムコントローラ7によって調整される。ここで、システムコントローラ7は、基本的に線速度が一定のCLV(Constant Linear Velocity)制御でスピンドルモータ2を制御しており、例えば、光ディスクDがCDであり且つ1倍速で再生する場合であれば、RFアンプ4の信号から抽出されるクロックが4.3218MHzとなるようにスピンドルモータ2の回転速度を調整する。システムコントローラ7がスピンドルモータ2の回転速度をこのように調整することにより、光ディスクDは、基本的に線速度一定で回転することになり、例えば、CDの場合であれば約1.25m/sec、DVDであれば約3.5m/sec、BDであれば約5.3m/secで回転することになる。但し、これらの数値はあくまでも各メディアを1倍速で再生する時のものであり、実際には、光ディスク装置1に加わる振動等に起因するデータの読み飛ばし等を考慮し、CDであれば4倍、DVDやBDであれば1.6倍速となるよう、システムコントローラ7がスピンドルモータ2の回転速度を調整する。このため、データが適正に読み取られていれば後述の半導体メモリ13の空き領域が飽和するが、その場合は光ディ
スクDのデータを読み取らないで単にトラックをトレースする状態になるようにシステムコントローラ7が制御する。
【0025】
光学ピックアップ3のフォトダイオードから出力される信号は、RFアンプ4を介してアドレスデコーダ14やエンコーダ・デコーダ15へ送られる。アドレスデコーダ14では、光ディスクDのグルーブ(溝)に記録されているアドレスの信号が復調されて絶対アドレスが読み出される。また、エンコーダ・デコーダ15では、RFアンプ4からの信号に対する各種の変調処理や復調処理が施され、例えば、光ディスクDがCDやDVDの場合にはEFM(Eight Fourteen Modulation)変調後にCIRC(Cross Interleaved Reed Solomon Code)処理による誤り訂正が行われ、光ディスクDがBDの場合には1−7PP(Parity Preserve/Prohibit RMTR)変調後に2つのエラー訂正符号(LDC(Long Distance Code)及びBIS(Burst Indicating Subcode))を組み合わせた誤り訂正が行
なわれる。そして、映像や音声といったコンテンツのデータが出力される。
【0026】
エンコーダ・デコーダ15から出力されたデータは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)で構成される半導体メモリ13を制御するショックプルーフメモリコントローラ16によって半導体メモリ13に一時的に蓄積され、光ディスク装置1に加わった振動等による光学ピックアップ3のデータの読み飛ばしが解消される。なお、半導体メモリ13の容量は、耐衝撃性能に応じて適宜決定する。
【0027】
ショックプルーフメモリコントローラ16から出力されたデータは圧縮されているため、圧縮エンコーダ・デコーダ17において、光ディスクDの種類に応じた各種の圧縮・伸張処理が行われる。圧縮エンコーダ・デコーダ17は、ショックプルーフメモリコントローラ16から送られるデータや、光ディスク装置1の外部からA/D(Analog to Digital)コンバータ18を介して入力される映像音声のデータを伸張し、光ディスク装置1の
外部へD/A(Digital to Analog)コンバータ19を介して出力する。
【0028】
システムコントローラ7は、不揮発性メモリ20に格納されたプログラムを実行する演算装置であり、操作キー21への操作に基づいて光ディスク装置1の上記各部を統括的に制御し、その作動状態を表示部22に表示する。また、システムコントローラ7には、光学ピックアップ3やその周辺の温度を検知する温度センサ(サーミスタ)23が接続されており、更に、光学ピックアップ3のLDの駆動電流の信号線やスピンドルモータ2の回転数の信号線が接続されている。
【0029】
<処理フロー>
図2は、システムコントローラ7が実行する処理フロー図である。システムコントローラ7は、光ディスクDの再生中、以下の処理フローを実行する。
【0030】
(ステップS101)システムコントローラ7は、光ディスクDの再生中、温度センサ23の温度が第一の所定温度(以下、高温検知温度1という)を超えているか否かの判定を行なう。この高温検知温度1は、冷却を更に促進する必要があるか否かの判定基準として設定された既定の温度であり、LDの許容温度や冷却の促進に伴うスピンドルモータ2の消費電力の増大などを総合的に勘案して決定された温度である。
【0031】
(ステップS102)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が高温検知温度1を超えたことを検知すると、次に、光学ピックアップ3のLDの駆動電流が既定の電流値(LDの仕様に基づいて決定する値であり、以下、検出閾値という)を超えているか否かの判定を行なう。システムコントローラ7は、否定判定の場合に再びステップS101の処理を行う。LDは、出力が一定になるよう、駆動電流の帰還制御が行われているため、温度が上昇すると特性変化に伴うレーザ光のパワー低下を補償するべく駆動電流が増
加する。本ステップは、温度センサ23が何らかの理由によりLDに影響を与えないような温度変化(外乱)を検知した場合の不要な動作を排除する目的で設けられており、LDの駆動電流に基づく判定処理を行うことで、不用意なスピンドルモータ2の回転速度の変更が防止される。
【0032】
(ステップS103)システムコントローラ7は、光学ピックアップ3のLDの駆動電流が既定の電流値を超えていれば、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCLV制御から角速度が一定のCAV(Constant Angular Velocity)制御へ切り替え、そして単位時
間当たりの回転数を上げる。この場合、スピンドルモータ2の回転速度の制御は、RFアンプ4の出力信号から生成されるクロックと既定の内部クロックとを同期させる制御から、スピンドルモータ2から送られる単位時間当たりの回転数と規定の目標回転数(単位時間あたりの回転数)とを一致させる制御へと切り替わる。この目標回転数は、スピンドルモータ2の回転によって光学ピックアップ3の冷却効果が期待される単位時間あたりの回転数であり、CLV制御における回転速度よりも速い値に設定されている。CLV制御だと光学ピックアップ3の位置によって回転速度が異なるため、増速による冷却効果が光学ピックアップ3の位置に応じて異なってしまうが、CAV制御であれば増速による冷却効果が光学ピックアップ3の位置に関わらず同様である。
【0033】
また、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCLV制御からCAV制御へ切り替えると、RFアンプ4から出力される信号のクロックも変わるため、システムコントローラ7は、スピンドルモータ2の回転速度の制御が切り替わったことをエンコーダ・デコーダ15へ通知する。これにより、エンコーダ・デコーダ15では、RFアンプ4からの信号に対する各種の変調処理や復調処理に用いるクロックの周波数が適切な値に調整される。CAV制御は、例えば、映像や音声といったコンテンツのデータではなく、カーナビゲーションシステムの地図データのように高速アクセスが望ましいデータを格納したデータディスクにアクセスする場合に用いる制御方式であり、データの読み書きやランダムアクセスの速さがCLV制御よりも優れている。CAV制御へ切り替え後の角速度の設定値は、予めテーブルに設定されてメモリに格納されたものであるが、少なくともCLV制御の時よりも光ディスクDの回転速度が速くなるように設定されており、例えば、光ディスクDがDVDであれば最外周のトラックにおいて約6倍の読み取り速度となるような角速度が設定されている。光ディスクDの回転速度が増加すると半導体メモリ13の空き領域が直ちに飽和し得るが、その場合は光ディスクDのデータを読み取らないで単にトラックをトレースする状態になるようにシステムコントローラ7が制御する。
【0034】
光ディスクDは平たい円盤であるため、回転するとディスクの内周側の空気が外周側へ向かい、中心部の気圧が下がる。このため、気圧の下がった光ディスクDの中心部に光ディスク装置1の内外の空気が流入し、光学ピックアップ3や周辺の基板類へ流れる気流が発生する。光ディスクDの回転速度が速くなれば、この気流も増加し、光学ピックアップ3やその周辺の基板、集積回路類の冷却が促進される。なお、光ディスク装置1に冷却ファンが設けられている場合には、これらのファンとの協調制御を行うことで冷却効果を更に促進するようにしてもよい。協調制御を採る場合は、例えば、スピンドルモータ2の回転速度と冷却ファンの回転速度との相関を規定したマップを予め記憶させておき、これに沿った制御を行うようにしてもよいし、各種の演算式を用いたものであってもよい。協調制御を採る場合は、冷却ファンと光ディスクDとの位置関係や気流の流通経路などを総合的に勘案し制御方法や制御マップ・演算式を検討し、これらに対応するプログラムによりシステムコントローラが制御することになる。
【0035】
(ステップS103a)システムコントローラ7は、リード要求の有無を判別する。リード要求とは、レーザ光を照射して光ディスクDの情報を読み取る必要があることを示す情報である。
【0036】
(ステップS103b)システムコントローラ7は、リード要求があるとLDに駆動電流を流してレーザをオンにする。
【0037】
(ステップS103c)一方、システムコントローラ7は、リード要求が無ければLDの駆動電流を停止してレーザをオフにする。再生中にリード要求が無くなる場合の例としては、例えば、再生中にチャプターのスキップ操作が行われ、光学ピックアップ3が移動しているような場合である。
【0038】
(ステップS104)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が第二の所定温度(高温検知温度1よりも高い温度であり、以下、高温検知温度2という)を超えているか否かの判定を行なう。この高温検知温度2は、LDやサーボ系を全て停止する必要があるか否かの判定基準として設定された既定の温度であり、LDの許容温度やコンテンツの再生が途切れた場合にユーザへ与える不快感などを総合的に勘案して決定された温度である。
【0039】
(ステップS105)システムコントローラ7は、ステップS104の判定処理が否定判定だった場合、温度センサ23の温度が第三の所定温度(第一の所定温度よりも低い温度であり、以下、復帰温度という)より下がったか否かの判定を行なう。この復帰温度は、冷却を更に継続する必要があるか否かの判定基準として設定された既定の温度であり、高温検知温度1とのオフセット(適切なヒステリシス動作特性を持つような値)などを総合的に勘案して決定された温度である。システムコントローラ7は、否定判定の場合に再びステップS104の処理を行う。
【0040】
(ステップS106)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が復帰温度より下がっていれば、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCAV制御から通常のCLV制御へ戻し、そして単位時間当たりの回転数を下げる。また、スピンドルモータ2の回転速度の制御が切り替わったことをエンコーダ・デコーダ15へ通知する。これにより、光ディスクDの回転に伴う冷却効果が元に戻る。
【0041】
(ステップS107)一方、システムコントローラ7は、ステップS104の判定処理が肯定判定だった場合、光学ピックアップ3のLDの駆動電流を遮断してLDを停止する。
【0042】
(ステップS108)システムコントローラ7は、LDを停止した後、トラッキングサーボ6やフォーカスサーボ5を停止する。なお、スピンドルモータ2の回転速度は、CAV制御による制御で一定に保たれる。
【0043】
(ステップS109)システムコントローラ7は、トラッキングサーボ6やフォーカスサーボ5を停止した後、温度センサ23の温度が復帰温度より下がったか否かの判定を行なう。システムコントローラ7は、否定判定の場合に再び本ステップS109の処理を行う。また、システムコントローラ7は、肯定判定の場合、LDに駆動電流を流してレーザ光を光ディスクDへ照射させる等、光ディスクDの再生に必要な処理を行い光ディスクDの再生(CLV制御による通常速度による再生)を再開する。尚、光ディスクDの再生が再開されると、再生中の処理(ステップS101から)が行われる。
【0044】
<効果>
以上のように構成される光ディスク装置1であれば、LDの駆動電流と温度センサ23の温度に基づいてスピンドルモータ2の回転速度が増減するため、LDの温度変化に追従してLDの駆動電流が増大しても、光ディスクDの回転速度の増大によって冷却が促進さ
れる。このため、LDの駆動電流の帰還制御に起因するLDの破損が防止される。
【0045】
図3は、本実施形態に係る光ディスク装置1が行なう制御内容と、従来例に係る光ディスク装置が行う制御内容とを比較した図である。従来例に係る光ディスク装置の場合、高温になると動作を停止し、温度が低下すればCLV制御による通常動作に移行していたため、LDの破損の虞が無いにも関わらず光ディスクの再生が停止したりすることがあり、ユーザのストレスの一因になり得た。一方、本実施形態に係る光ディスク装置1であれば、冷却の要否を温度とLDの駆動電流に基づいて判定し、通常動作から動作停止へ至る前に光ディスクの回転速度を上げて冷却の促進を図っている。このため、冷却装置を増設等しなくても、動作停止に至る前に通常動作へ戻る措置が光ディスク装置内で試みられるようになり、ユーザにストレスを与えることがほとんど無くなる。
【0046】
図4は、本実施形態に係る光ディスク装置1を動作させたときの実験データである。このときの実験環境は、周囲温度が80℃である。この例では、温度センサ23を光学ピックアップ3の近傍に設置しているため、温度センサ23の温度は光学ピックアップ3の温度と同じと仮定する。本実験では、高温検知温度1を100℃、高温検知温度2を105℃、復帰温度を95℃、検出閾値を150mAに設定している。図4の実験データから判るように、温度センサ23の温度が100℃を超え、更にLDの駆動電流も150mAを超えると、光ディスクDの回転速度が増して冷却が促進される。尚、この状態では光ディスクからのデータは読み取られ、そのデータを用いた音楽再生等の処理は行われる。そして、温度センサ23の温度が105℃に至らないで95℃よりも下がれば、光ディスクDの回転速度が通常に戻る。この場合、動作停止に至る前に通常動作へ戻っているので、ユーザにストレスを与えることも無い。一方、光ディスクDの回転速度を増しても温度センサ23の温度が105℃に至れば、動作停止に至ってしまい、ユーザにストレスを与えることになる。しかしながら、冷却装置を増設等しなくても、動作停止に至る前に通常動作へ戻る措置が光ディスク装置内で試みられるようになるため、従来例に比べてユーザにストレスを与える確率が減ることになる。
【0047】
なお、上記実施形態では、温度センサ23の温度やLDの駆動電流が増加すると光ディスクDの回転速度の制御をCLV制御からCAV制御へ切り替えていたが、CLV制御のまま回転速度を上げてもよい。この場合、上記実施形態では、各メディアを読み取る速度を、CDであれば4倍、DVDやBDであれば1.6倍程度の速度としていたため、これよりも倍数の高い速度にする。また、上記実施形態では、温度センサ23の温度が高温検知温度2を超えたら光ディスクDを回転させたままLDやトラッキングサーボ6、フォーカスサーボ5を停止させ、温度センサ23の温度が復帰温度より下がったら再生を再開していたが、温度センサ23の温度が高温検知温度2を超えたら光ディスク装置1を完全に停止させてもよい。また、上記実施形態では、温度センサ23の温度やLDの駆動電流が閾値を超えるとスピンドルモータ2を増速していたが、温度や駆動電流に比例するようにスピンドルモータ2を増速してもよい。
【0048】
また、上記実施形態に係る光ディスク装置1は、次のように変形してもよい。以下、上記実施形態の変形例について説明する。下記の変形例は、上記実施形態に係るシステムコントローラ7が実行する処理フローを改変したものであり、温度が上がるとレーザ光を照射させたまま光ディスクDの回転速度を上げ、温度が更に上がり或いはLDの駆動電流が閾値を超えればLDをオフにするものである。図5は、本変形例に係るシステムコントローラ7が実行する処理フロー図である。
【0049】
(ステップS201)システムコントローラ7は、上述したステップS101と同様、光ディスクDの再生中、温度センサ23の温度が高温検知温度1を超えているか否かの判定を行なう。
【0050】
(ステップS202)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が高温検知温度1を超えていれば、上述したステップS103と同様、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCLV制御から角速度が一定のCAV(Constant Angular Velocity)制御へ切
り替え、そして単位時間当たりの回転数を上げる。
【0051】
(ステップS202a)システムコントローラ7は、上述したステップS103aと同様、リード要求の有無を判別する。
【0052】
(ステップS202b)システムコントローラ7は、上述したステップS103bと同様、リード要求があるとLDに駆動電流を流してレーザをオンにする。
【0053】
(ステップS202c)一方、システムコントローラ7は、上述したステップS103cと同様、リード要求が無ければLDの駆動電流を停止してレーザをオフにする。
【0054】
(ステップS203)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が復帰温度より下がったか否かの判定を行なう。
【0055】
(ステップS204)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が復帰温度より下がっていれば、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCAV制御から通常のCLV制御へ戻し、そして単位時間当たりの回転数を下げる。また、スピンドルモータ2の回転速度の制御が切り替わったことをエンコーダ・デコーダ15へ通知する。これにより、光ディスクDの回転に伴う冷却効果が元に戻る。
【0056】
(ステップS205)システムコントローラ7は、温度センサ23の温度が高温検知温度2を超えているか、或いは、光学ピックアップ3のLDの駆動電流が検出閾値を超えているか否かの判定を行なう。システムコントローラ7は、否定判定を下した場合、再びステップS202aの処理を行う。
【0057】
(ステップS206)一方、システムコントローラ7は、スピンドルモータ2の回転速度の制御をCAV制御にしたにも関わらず、温度センサ23の温度が高温検知温度2を超え、或いは、光学ピックアップ3のLDの駆動電流が検出閾値を超えていれば、光学ピックアップ3のLDの駆動電流を遮断してLDを停止する。
【0058】
(ステップS207)システムコントローラ7は、LDを停止した後、トラッキングサーボ6やフォーカスサーボ5を停止する。なお、スピンドルモータ2の回転速度は、CAV制御による制御で一定に保たれる。
【0059】
(ステップS208)システムコントローラ7は、トラッキングサーボ6やフォーカスサーボ5を停止した後、温度センサ23の温度が復帰温度より下がったか否かの判定を行なう。システムコントローラ7は、否定判定の場合に再び本ステップS208の処理を行う。また、システムコントローラ7は、肯定判定の場合、LDに駆動電流を流してレーザ光を光ディスクDへ照射させる等、光ディスクDの再生に必要な処理を行い光ディスクDの再生(CLV制御による通常速度による再生)を再開する。尚、光ディスクDの再生が再開されると、再生中の処理(ステップS201から)が行われる。
【符号の説明】
【0060】
1・・光ディスク装置,2・・スピンドルモータ,3・・光学ピックアップ,4・・RF(高周波)アンプ,5・・フォーカスサーボ,6・・トラッキングサーボ,7・・システムコントローラ,8・・AGC(自動利得制御回路),9・・トラッキング/フォーカス
エラーアンプ,10・・スレッドサーボ,11・・送りモータ,12・・スピンドルサーボ,13・・半導体メモリ,14・・アドレスデコーダ,15・・エンコーダ・デコーダ,16・・ショックプルーフメモリコントローラ,17・・圧縮エンコーダ・デコーダ,18・・A/D(Analog to Digital)コンバータ,19・・D/A(Digital to Analog)コンバータ,20・・不揮発性メモリ,21・・操作キー,22・・表示部,23・・温度センサ(サーミスタ),D・・光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにレーザ光を照射する光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるモータと、
前記レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度変化に基づいて、前記モータの回転速度を増減する制御部と、を備える、
光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記レーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度が増加すると、前記モータを線速度一定の制御から回転速度一定の制御へ切り替える、
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータの回転速度を上げた後に前記レーザ素子の駆動電流と該レーザ素子の温度が増加すると、該レーザ素子の発光を停止する、
請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レーザ素子の温度が所定の温度を超えた場合に前記モータの回転速度を上げ、該モータの回転速度を上げた後に該レーザ素子の駆動電流が所定の閾値を超えた場合に、該レーザ素子の発光を停止する、
請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータの回転速度を増加した状態において、前記光ディスクに記録されたデータの読み取り要求が無い場合は、前記レーザ素子の発光を停止する、
請求項1から4の何れか一項に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクにレーザ光を照射する光ディスク装置の制御方法であって、
前記レーザ光を照射するレーザ素子の駆動電流及び該レーザ素子の温度変化に基づいて、前記光ディスクを回転させるモータの回転速度を増減する、
光ディスク装置の制御方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−169014(P2012−169014A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29740(P2011−29740)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】