説明

光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法

【課題】有効な測定データの取得数を効率的に増大させる、光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法を提供する。
【解決手段】最初の測定において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順に、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置の評価においては、通常、測定条件を定義する諸パラメータを一方向にスキャンさせてデータを取得する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、諸パラメータを一方向にスキャンさせると、該パラメータが適正値からずれてきて、光ディスク装置の動作が不安定な状態となる場合がある。このような状態になると、測定不能となったり測定時間の増大を招いて測定が打ち切られたりすることにより、有効な測定データが少なくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、有効な測定データの取得数を効率的に増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光ディスク装置のデータ測定装置は、最初の測定において設定した、前記複数の設定パラメータを、前記複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順に、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうデータ測定手段を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る光ディスク装置のデータ測定装置は、測定開始において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、予め設定した指標に基づいて、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうデータ測定手段を有することを特徴としてもよい。
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る光ディスク装置のデータ測定方法は、最初の測定において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、前記複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順に、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光ディスク装置のデータ測定方法は、測定開始において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、予め設定した指標に基づいて、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴としてもよい。
【0009】
すなわち、本発明に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法は、前記複数の設定パラメータの適正値からのずれ量が小さい順となるように複数の設定パラメータを変化させる順序を決定し、該順序でデータの測定を行なう。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法によれば、有効な測定データの取得数を効率的に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を示すフローチャートを示す図である。
【図2】トラッキングオフセットとフォーカスオフセットとを複数の設定パラメータとしたときの本実施形態によるジッタの測定結果の例を示す図である。
【図3】従来の光ディスク装置の評価において行なわれる設定パラメータのスキャン方法を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における決定した複数の設定パラメータの設定順序の例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態において、複数の設定パラメータの数が3である場合の、決定した複数の設定パラメータの設定順序の例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を示すフローチャートを示す図である。
【図7】ライトパワとεとを2つの設定パラメータとしたときのBERの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態が適用される光ディスク装置は、主に、記録可能なブルーレイディスク(BD−RE、BD−Rなど)に対する再生、記録、または消去を行う装置である。しかし、たとえば、コンパクトディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RWなど)、ディジタル多目的ディスク(DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD−RAMなど)にも適用することができる。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を示すフローチャートを示す図である。
【0015】
本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法は、光ディスク装置に通常実装されているデータ測定装置(例えば、ジッタ測定部やBER(Bit Error Rate)測定部)を利用することができる。すなわち、光ディスク装置にコンピュータを接続し、コンピュータプログラムにより光ディスク装置の状態が所望の測定条件となるように光ディスク装置を制御するとともに、光ディスク装置から測定データを取得することができる。
【0016】
本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置は、本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を実行するためのコンピュータプログラム(データ測定手段)と、上記のように光ディスク装置に接続されたコンピュータ(データ測定手段)と、光ディスク装置(データ測定手段)と、により構成することができる。
【0017】
複数の設定パラメータの設定順序を決定する(S100)。すなわち、データ測定において設定される複数の設定パラメータの設定順序を決定する。設定パラメータとは、測定条件を定義するために設定されるパラメータをいう。例えば、光パワ、ライトストラテジの各ファクタ、トラッキングオフセット、フォーカスオフセットであり得る。複数の設定パラメータの設定順序は、複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順となるように決定する。設定パラメータの設定順序をパラメータ距離に基づいて決定するのは、設定パラメータの適正値からのずれを最も単純かつ的確に示すものがパラメータ距離であるからである。
【0018】
複数の設定パラメータの設定順序は、複数の設定パラメータ(すなわち、複数の設定パラメータの組合せ)に番号を付すことにより決定される。
【0019】
図2は、トラッキングオフセット(以下、「TOF」と称する)とフォーカスオフセット(以下、「FOF」と称する)とを複数の設定パラメータとしたときの本実施形態によるジッタの測定結果の例を示す図である。図2に示すように、各設定パラメータの単位は[%]であり、複数の設定パラメータのパラメータ距離lは、下記式(1)で定義される。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、xは、各設定パラメータの値[%]を示し、nは設定パラメータの個数を示す。
【0022】
パラメータ距離lには重み付けをすることもできる。下記式(2)は、重み付けをする場合のパラメータ距離lを定義する式である。
【0023】
【数2】

【0024】
ここで、anは、各設定パラメータの値xに対する重み付け係数を示す。
【0025】
このようにパラメータ距離lに重み付けをすることにより、測定項目ごとに複数の設定パラメータを変化させる順序を最適化することができるため、有効な測定データの取得数をさらに効率的に増大させることができる。
【0026】
図2に示す測定結果は、TOFを0[%]、かつ、FOFを0[%]に設定した条件で最初に測定し(以下、最初の測定における設定パラメータを「測定開始点」と称する)、次に、パラメータ距離lが5[%]となるような各設定パラメータ(すなわち、TOFが5[%]でFOFが0[%]、TOFが−5[%]でFOFが0[%]、TOFが0[%]でFOFが5[%]、TOFが0[%]でFOFが−5[%]、のいずれかの組合せ)でジッタを測定している。そして、以降、パラメータ距離lが、√50、10、・・・となる各設定パラメータでジッタを測定している。すなわち、設定パラメータであるTOFおよびFOFの設定順序をパラメータ距離lが小さい順となるように決定している。
【0027】
図3は、従来の光ディスク装置の評価において行なわれる設定パラメータのスキャン方法を示す図である。
【0028】
図3のA、Bにそれぞれ示す番号は、設定パラメータの設定順序を示す。図3のAに示すように、設定パラメータを一方向にスキャンさせると、設定パラメータが適正値からずれてきて、光ディスク装置の動作が不安定な状態となる場合がある。このような状態になると、測定不能となったり測定時間の増大を招いて測定が打ち切られたりすることにより、有効な測定データが少なくなるという問題がある。
【0029】
図3のBは、図3のAのように設定パラメータを一方向にスキャンさせていないため、上記問題は緩和されると考えることもできるが、図3のBに示すような渦巻き状の設定パラメータの設定順序は、数式で表現し難く、設定パラメータが3つ以上になると実施が困難になるという問題がある。
【0030】
図4は、本実施形態における決定した複数の設定パラメータの設定順序の例を示す図である。図4の矢印は、2つの設定パラメータ(すなわち、第1設定パラメータと第2設定パラメータ)の数値が大きくなる方向を示す。
【0031】
図4のAに示すように、複数の設定パラメータの設定順序は、測定開始点における各パラメータの値に対し増加および減少させるように、パラメータ距離が小さい順に決定することができる。一方、図4のBに示すように、複数の設定パラメータの設定順序を、測定開始点における各パラメータの値に対し増加させるように、パラメータ距離が小さい順に決定することもできる。
【0032】
測定開始点は、例えば、設計中心(設計における標準値)であってもよく、測定者による経験値であってもよい。
【0033】
第1内部カウンタ値mを1に、第2内部カウンタ値iを0にそれぞれ設定する。各内部カウンタ値は、コンピュータプログラムにおいて設定されてもよい。第1内部カウンタ値mは、次に測定される設定パラメータの番号を示す。第2内部カウンタ値iは、一の測定項目(例えば、ジッタ)において、測定不能となった設定パラメータの累積数を示す。
【0034】
カウンタ値mの番号の設定パラメータに光ディスク装置を設定し、データを測定し(S102)、内部カウンタ値mをインクリメントする(S103)。
【0035】
ステップS102におけるデータの測定において、測定不能でないと判断されたときは(S104、No)、ステップS102に戻ってデータの測定を継続する。
【0036】
ステップS102におけるデータの測定が、測定不能であると判断されたときは(S104、Yes)、内部カウンタ値mおよび内部カウンタ値iをインクリメントする。ステップS102において内部カウンタ値mをインクリメントするのは測定不能と判断された設定パラメータでの再度のデータ測定を回避するためである。
【0037】
内部カウンタ値iがインクリメントされた結果、内部カウンタ値iが5となった場合は(S106、No)、データの測定は終了する。すなわち、本実施形態においては、測定不能となったデータの測定回数に閾値5を設け、測定不能となったデータの測定回数が5以上となった場合は、測定を中止する。内部カウンタ値iが5未満である場合は、ステップS102に戻って、測定不能となった設定パラメータの次の番号の設定パラメータでデータの測定を継続する。
【0038】
本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法によれば、複数の設定パラメータの適正値からのずれ量が小さい順となるように複数の設定パラメータを変化させる順序を決定し、該順序でデータの測定を行なう。これにより、有効な測定データの取得数を効率的に増大させることができる。
【0039】
以上、本発明の第1実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法について説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0040】
例えば、複数の設定パラメータの数を3以上とすることもできる。図5は、複数の設定パラメータの数が3である場合の、決定した複数の設定パラメータの設定順序の例を示す図である。図5の矢印は、3つの各設定パラメータの数値が大きくなる方向を示す。図5に示す番号は、パラメータ距離lが小さい順となる設定パラメータの設定順序の例を示す。
【0041】
また、例えば、ステップS106においては、測定不能となったデータの測定回数が閾値を越えた場合は測定を中止するが、これに代えて、データの測定時間が閾値を超えた場合に測定を中止するようにしてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法は、複数の設定パラメータを、予め設定した指標に基づいて、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴とする。ここで、指標は、被測定対象である光ディスク装置から取得したデータの測定結果に基づいて設定してもよい。上記以外の点については第1実施形態と同様であるため重複となる説明は省略する。
【0043】
本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置は、本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を実行するためのコンピュータプログラム(データ測定手段、選択手段)と、上記のように光ディスク装置に接続されたコンピュータ(データ測定手段、選択手段)と、光ディスク装置(データ測定手段)と、により構成することができる。
【0044】
図6は、本発明の第2実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を示すフローチャートを示す図である。
【0045】
事前測定を実施する(S600)。事前測定は、測定により取得したデータから指標を設定するために実施する。
【0046】
図7は、ライトパワとεとを2つの設定パラメータとしたときのBERの測定結果を示す図である。図7においては、BERが低くなる設定パラメータを薄く、BERが高くなる設定パラメータを濃く、というようにBERを濃淡で示している。
【0047】
図7において×印で示す点は測定開始点を示す。事前測定は太線の四角で囲んだ領域における測定点の設定パラメータで行なう。例えば、測定点を25個とすることができる。また、事前測定においては、第1実施形態を適用して、パラメータ距離が小さい順となるように設定パラメータを変化させてデータを取得してもよい。
【0048】
事前測定データに基づき近似関数を計算する(S601)。本実施形態においては、指標は、測定データの推定値を与える、設定パラメータの近似関数としている。近似関数は、事前測定で測定したデータから最小二乗法により得ることができる。
【0049】
近似関数に基づき、設定パラメータの設定順序を決定する(S602)。近似関数により、設定パラメータに対する測定データの推定値が得られる。したがって、近似関数から近似の信頼を示す相関係数を計算し、相関係数に基づいて設定パラメータを変化させる方法を逐次選択する。
【0050】
相関係数が高い場合(すなわち、指標とデータの測定結果との相関関係が高い場合)は、近似関数による推定値が良好な順に設定パラメータを変化させてもよい。すなわち、例えば、測定データがBERの場合は、最もBERが小さい推定値を与える設定パラメータの順に設定パラメータを設定しデータを測定してもよい。
【0051】
相関係数が低い場合(すなわち、指標とデータの測定結果との相関関係が低い場合)は、近似の信頼度が低いため、近似関数を利用せず、第1実施形態と同様にパラメータ距離が小さい順となるように設定パラメータを設定してデータを測定する。
【0052】
本実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
【0053】
以上、本発明の第2実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定装置およびデータ測定方法について説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、指標に範囲を設け、範囲外のデータの測定は行なわないようにすることもできる。すなわち、指標に近似関数を用いる場合は、BARの推定値が閾値を超える場合は、そのようなBARの推定値を与える設定パラメータでのデータの測定を行なわないようにしてもよい。また、設定パラメータに指標としての範囲を設け、範囲外の設定パラメータでのデータの測定は行なわないようにすることもできる。
【0055】
また、例えば、第1実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法と第2実施形態に係る光ディスク装置のデータ測定方法を自由に切り替えてデータの測定をすることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初の測定において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、前記複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順に、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうデータ測定手段を有することを特徴とする光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項2】
前記パラメータ距離は、前記パラメータごとの重み付けがされたパラメータ距離であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項3】
前記データ測定手段は、測定時間が閾値を超えた場合、または、測定不可能となった前記データの測定回数が閾値を超えた場合に前記データの測定を中止することを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項4】
測定開始において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、予め設定した指標に基づいて、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうデータ測定手段を有することを特徴とする光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項5】
前記指標は、前記データの測定結果に基づいて得られた、前記データの推定値を与える前記複数の設定パラメータの近似関数であることを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項6】
前記データ測定手段は、前記指標に範囲を設け、前記範囲内の指標のみに基づいて、前記複数の設定パラメータを変化させることを特徴とする請求項4または5に記載の光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のデータ測定装置と、請求項4〜6のいずれかに記載のデータ測定装置と、のいずれかを選択する選択手段をさらに有し、
前記選択手段が選択したデータ測定装置によりデータを測定することを特徴とする光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記指標と前記データの測定結果との相関関係が高いと判断した場合は、請求項4〜6のいずれかに記載の光ディスク装置のデータ測定方法を選択することを特徴とする請求項7に記載の光ディスク装置のデータ測定装置。
【請求項9】
最初の測定において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、前記複数の設定パラメータのパラメータ距離が小さい順に、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴とする光ディスク装置のデータ測定方法。
【請求項10】
測定開始において設定した、測定条件を定義する複数の設定パラメータを、予め設定した指標に基づいて、それぞれ順次変化させてデータの測定を行なうことを特徴とする光ディスク装置のデータ測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−134395(P2011−134395A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293419(P2009−293419)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】