説明

光ディスク装置の調整方法

【課題】特殊な装置や部材を用いることなく、トラッキング動作が安定するように光ディスク装置のスピンドルモータを調整することができる光ディスク装置の調整方法を提供する。
【解決手段】前記光ヘッドを配置する工程と、メインビーム及び2本のサブビームを最適化する工程と、光ディスク駆動機構を配置する工程と、光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、外周での2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、内周での前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しする光ディスク装置の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにデータを記録する又は光ディスクからデータを読み出す光ディスク装置の光ディスクを駆動する光ディスク駆動機構の位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は光ディスク装置の概略図である。図1に示す光ディスク装置は、トラバースシャーシ1と、トラバースシャーシ1の取り付けられている光ディスク駆動機構2と、光ディスクDsの記録面にレーザ光を照射する光ヘッドAとを有している。
【0003】
図2は光ヘッドの概略配置図である。図2に示す光ヘッドAは、レーザ光源Ldと、グレーティングGrと、ビームスプリッタBsと、対物レンズLbと、ミラーMrと、コリメータレンズLcと、受光素子Pdとを有している。レーザ光源Ldより出射されたレーザ光はグレーティングGrを投下するときに後述のメインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2に変換され、ビームスプリッタBsに入射する。ビームスプリッタBsは入射したレーザ光の一部が透過するものであり、ビームスプリッタBsを透過したレーザ光はミラーMrにて反射されコリメータレンズLcに入射し、拡散光から平行光に変換される。コリメータレンズLcを透過したレーザ光は対物レンズLbに入射し、光ディスクDsの記録面に後述のレーザスポットを結像させる。
【0004】
光ディスクDsで反射したレーザ光は、対物レンズLb、コリメータレンズLc、ミラーMrをとおり、ビームスプリッタBsに入射する。ビームスプリッタBsに入射したレーザ光は一部が屈曲され、受光素子Pdに入射する。レーザ光は受光素子Pdにて電気信号に変換される。光ヘッドAはトラバースシャーシ1に設けられているガイド軸11にガイドされて往復動する。
【0005】
光ディスク駆動機構2は、光ディスクDsを保持するターンテーブル21と、ターンテーブル21と連結し、ターンテーブル21を回動し、トラバースシャーシ1に固定されるスピンドルモータ22とを有している。光ヘッドAのレーザ光を照射する対物レンズLbはガイド軸11に沿って移動するものであり、対物レンズLbの軌道Lmは、本来、延長するとターンテーブル21の中心を通るように光ヘッドAを通るように配置されている。
【0006】
光ディスク装置において光ヘッドAより照射されたレーザ光は、光ディスクDsの記録層の表面(記録面)にレーザスポットとして結像する。光ヘッドAは記録面にレーザスポットが正確に結像するように対物レンズLbを光ディスクDsに対して接近離反する方向に微小量駆動するフォーカシング動作を行う。また、光ヘッドAは記録層に形成される後述のトラックTrをレーザスポットが正確にトレースするように対物レンズLbを光ディスクDsの中心に対して接近離間する方向に微小量駆動するトラッキング動作を行う。
【0007】
図3は光ディスクの記録層の拡大図である。図3に示す光ディスクDsは既にデータが記録されているDVDメディアである。光ディスクDsには突条Gv(グルーブGv)と凹溝Rd(ランドRd)とが交互に並ぶように、らせん状又は同心円状に配置されている。隣り合うグルーブGvとランドRdの一対でトラックTrを形成しており、グルーブGv及びランドRdはそれぞれ、トラック幅の半分に形成されている。
【0008】
このトラッキング動作を行うための方法として、3つのビームを用いるDPP(Differencial Push Pull)方式が用いられることが多い。図3に示すように、レーザ光がグレーティングGrを透過することで中央にメインビームMppが、メインビームMppを挟んで対称にサブビームSbp1、Sbp2が形成される。図3に示すように、メインビームMppはグルーブGvにレーザスポットを結像し、サブビームSbp1、Sbp2はランドRdにレーザスポットを結像している。
【0009】
受光素子PdはメインビームMppの反射光量と各サブビームSbp1、Sbp2の反射光量を検知する素子を別途備えている。トラッキングエラー信号TEはメインビームMppの反射光による信号MgとサブビームSbp1、Sbp2の反射光による信号Sg1、Sg2とから以下の式で得られる。
TE=信号Mg−k(信号Sg1+信号Sg2)
(kは定数)
トラッキング動作では対物レンズLbを光ディスクDsの記録層と平行に移動させ、このトラッキングエラー信号TEが最適な数値(最大値)になるようにするものである。トラッキング動作を行うことで、メインビームMppはグルーブGvを安定的にトレースすることができる。トラッキングエラー信号TEが最大になるためにはサブビームSbp1、Sbp2がメインビームMppからそれぞれ、トラックピッチの半分になるようにすれば良い。
【0010】
光ヘッドAをガイド軸11に係合させ、初期設定位置に移動させ、光ヘッドに対してフォーカスオン(フォーカシング調整を行い、ディスクの面ぶれにのみレーザスポットが追従する状態)にする。光ヘッドAのグレーティングGrを回転させ、トラッキングエラー信号TEが最大になるようにし、光ヘッド調整機を取り外し、ターンテーブル21に調整用光ディスクを載置した光ディスク駆動機構2をトラバースシャーシ1に配置する。トラッキングエラー信号TEが最大になるように、光ディスク駆動機構2を移動させる。
【0011】
図5は従来の光ディスク装置のターンテーブルと光ヘッドの相対位置を示す概略図である。このように光ヘッドA及び光ディスク駆動機構2を配置した場合、光ヘッドAが初期設定位置にあるときにおいて、メインビームMpp及びサブビームSbp1、Sbp2は図5に示すような理想的な配置になる。すなわち、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2とを結ぶ直線B1が、光ヘッドAの初期設定位置でトラックTrのメインビームMppが照射される部分での接線と最適な角度θ1をなすように設定される。
【0012】
図5に示すように、光ヘッドAの対物レンズLbの軌跡を延長したときに、軌跡の延長が必ずしも光ディスク駆動機構2のターンテーブル21の中心と重なるとは限らない。すなわち、光ヘッドAの初期設定位置PpでのメインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2とを結ぶ直線B1は、この位置のトラックTrの接線と角度θ1で、すなわち、ターンテーブル21の中心と初期設定位置Ppとを結ぶ直線L1に対して90°+θ1の角度で交差している(接線と半径は直交するので)。
【0013】
光ヘッドAは平行に移動するのでメインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2とを結ぶ直線B1のガイド軸11に対する傾きは一定のままで摺動する。対物レンズLbが到達する光ディスクDsの最外周部Poとターンテーブル21の中心とを結ぶ直線L2と直線L1がなす角をαとすると、直線L2とメインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2徒を結ぶ直線B1とがなす角は90°+θ1+αとなり、最外周部Poでの接線と直線B1とがなす角はθ1+αとなる。
【0014】
すなわち、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2を結ぶ直線B1は初期設定位置Ppでは接線に対して最適な角度θ1になるが、それ以外ではθ1+αとなり、これにより、光ヘッドAが移動するとトラックTr上でのメインビームMpp及びサブビームSbp1、Sbp2の照射位置が変化する。メインビームMpp及びサブビームSbp1、Sbp2のトラックTr上での照射位置が変化すると、トラッキングエラー信号TEが大きく変動し、トラッキング動作が不安定になる場合がある。
【0015】
この不具合を解消するために特開2004−152411号公報に記載の発明では、反射率の異なる領域を備えたモーター調整用光ディスクを用い、該モーター調整用光ディスクを回転させた状態で、反射率の異なる領域を検出する回転検出手段にて検出し、その下流に設けられたピックアップを内周及び外周に移動させ、反射率の異なる領域を検出するまでの時間差によってモーターを調整するものが示されている。
【0016】
また特開2002−50064号公報に記載の発明では、まず、ピックアップを外周部に移動させDPP信号が最大になるようにモーターを調整し、その後内周部に移動させ内周部でDPP信号が最大になるようにモーターを調整し、再度外周部でサブ信号のうねりが小さくなるようにモーターを微調整するものが示されている。
【特許文献1】特開2004−152411号公報
【特許文献2】特開2002−50064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特開2004−152411号公報に記載の発明では、モーター調整用の光ディスクと回転検出手段を別途準備しなくてはならず、組み立て装置に必要な部材が増え、組み立てにかかるコストが高くなる。また、反射係数が異なる領域を備えたモーター調整用の光ディスクでモーターを調整した光ディスク装置の場合、実際の光ディスクを用いた場合に最適な状態にならない場合もある。
【0018】
また、特開2002−50064号公報に記載されているように、ピックアップを外周に配置しDPP信号最大になるようにターンテーブルを調整し、その後ピックアップを内周に配置してDPP信号が最大になるようにターンテーブルを調整し、その後再度外周にピックアップを配置して、サブ信号のうねりを減らすものの場合、最後にサブ信号のうねりを元にターンテーブルを微調整するので、外周側及び内周側でDPP信号を安定して検出できるとは限らない。
【0019】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、特殊な装置や部材を用いることなく、トラッキング動作が安定するように光ディスク装置のスピンドルモータを調整することができる光ディスク装置の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため本発明は、シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、前記光ヘッドを前記光ヘッドの径方向に摺動可能に配置する工程と、前記光ヘッドのグレーティングを調整しメインビーム及び2本のサブビームを最適化する工程と、前記シャーシの所定の位置に調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構を配置する工程と、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする。
【0021】
この構成によると、光ディスクに光ヘッドよりレーザ光を照射するときに、照射する位置にかかわらず、一定又は略一定且つ良好なトラッキングエラー信号を取得することができる。
【0022】
これにより、光ヘッドのトラッキング動作を精度よく行うことができ、光ディスクからのデータの読出し又は光ディスクへのデータの記録を安定して、精度よく行うことができ、光ディスク装置の性能を安定させることができる。
【0023】
上記目的を達成するため本発明は、シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構をシャーシに配置し、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする。
【0024】
この構成によると、光ディスクに光ヘッドよりレーザ光を照射するときに、照射する位置にかかわらず、一定又は略一定且つ良好なトラッキングエラー信号を取得することができる。
【0025】
これにより、光ヘッドのトラッキング動作を精度よく行うことができ、光ディスクからのデータの読出し又は光ディスクへのデータの記録を安定して、精度よく行うことができ、光ディスク装置の性能を安定させることができる。
【0026】
上記目的を達成するため本発明は、シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構をシャーシに配置し、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記メインビームの反射光の電気信号と前記2本のサブビームのうち一方の反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記メインビームの反射光の電気信号と前記2本のサブビームのうち一方の反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする。
【0027】
この構成によると、光ディスクに光ヘッドよりレーザ光を照射するときに、照射する位置にかかわらず、一定又は略一定且つ良好なトラッキングエラー信号を取得することができる。
【0028】
これにより、光ヘッドのトラッキング動作を精度よく行うことができ、光ディスクからのデータの読出し又は光ディスクへのデータの記録を安定して、精度よく行うことができ、光ディスク装置の性能を安定させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、特殊な装置や部材を用いることなく、トラッキング動作が安定するように光ディスク装置のスピンドルモータを調整することができる光ディスク装置の調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は光ディスク装置の概略図である。図1に示す光ディスク装置は、トラバースシャーシ1と、トラバースシャーシ1の取り付けられている光ディスク駆動機構2と、光ディスクDsの記録面にレーザ光を照射する光ヘッドAとを有している。
【0031】
図2は光ヘッドの概略配置図である。図2に示す光ヘッドAは、レーザ光源Ldと、グレーティングGrと、ビームスプリッタBsと、対物レンズLbと、ミラーMrと、コリメータレンズLcと、受光素子Pdとを有している。レーザ光源Ldより出射されたレーザ光はグレーティングGrを投下するときに後述のメインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2に変換され、ビームスプリッタBsに入射する。ビームスプリッタBsは入射したレーザ光の一部が透過するものであり、ビームスプリッタBsを透過したレーザ光はミラーMrにて反射されコリメータレンズLcに入射し、拡散光から平行光に変換される。コリメータレンズLcを透過したレーザ光は対物レンズLbに入射し、光ディスクDsの記録面に後述のレーザスポットを結像させる。
【0032】
光ディスクDsで反射したレーザ光は、対物レンズLb、コリメータレンズLc、ミラーMrをとおり、ビームスプリッタBsに入射する。ビームスプリッタBsに入射したレーザ光は一部が屈曲され、受光素子Pdに入射する。レーザ光は受光素子Pdにて電気信号に変換される。光ヘッドAはトラバースシャーシ1に設けられているガイド軸11にガイドされて往復動する。
【0033】
光ディスク駆動機構2は、光ディスクDsを保持するターンテーブル21と、ターンテーブル21と連結し、ターンテーブル21を回動し、トラバースシャーシ1に固定されるスピンドルモータ22とを有している。光ヘッドAのレーザ光を照射する対物レンズLbはガイド軸11に沿って移動するものであり、対物レンズLbの軌道Lmは、本来、延長するとターンテーブル21の中心を通るように光ヘッドAを通るように配置されている。
【0034】
光ディスク装置において光ヘッドAより照射されたレーザ光は、光ディスクDsの記録層の表面(記録面)にレーザスポットとして結像する。光ヘッドAは記録面にレーザスポットが正確に結像するように対物レンズLbを光ディスクDsに対して接近離間する方向に微小量駆動するフォーカシング動作を行う。また、光ヘッドAは記録層に形成される後述のトラックTrをレーザスポットが正確にトレースするように対物レンズLbを光ディスクDsの中心に対して接近離間する方向に微小量駆動するトラッキング動作を行う。
【0035】
図3は光ディスクの記録層の拡大図である。図3に示す光ディスクDsは既にデータが記録されているDVDメディアである。光ディスクDsには突条Gv(グルーブGv)と凹溝Rd(ランドRd)とが交互に並ぶように、らせん状又は同心円状に配置されている。隣り合うグルーブGvとランドRdの一対でトラックTrを形成しており、グルーブGv及びランドRdはそれぞれ、トラック幅の半分に形成されている。
【0036】
このトラッキング動作を行うための方法として、3つのビームを用いるDPP(Differencial Push Pull)方式が用いられることが多い。図3に示すように、レーザ光はグレーティングGrを透過することで中央にメインビームMppが、メインビームMppを挟んで対称に所定の距離はなれてサブビームSbp1、Sbp2が形成される。すなわち、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2は同一直線上に配置されている。メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2を結ぶ直線B1は、トラックに対してθ0だけ傾く。
【0037】
受光素子PdはメインビームMppの反射光と各サブビームSbp1、Sbp2の反射光をそれぞれ、独立して検出することができるものであり、その反射光の光量に応じて信号強度が決定される。トラッキングエラー信号TEはメインビームMppの反射光による信号MgとサブビームSbp1、Sbp2の反射光による信号Sg1、Sg2とから以下の式で得られる。
TE=信号Mg−k(信号Sg1+信号Sg2)
(kは定数)
トラッキング動作は上述したようにメインビームMppが適切な位置に照射されるように、対物レンズLbを光ディスクDsの記録層と平行に移動させる動作である。このトラッキング動作はトラッキングエラー信号TEが最適な数値(最大値)になるように対物レンズLbを光ディスクに沿う方向に駆動することでなされる。トラッキング動作を行うことで、メインビームMppはトラックを安定的してトレースすることができ、データの読出し又は記録を精度よく行うことができる。トラッキングエラー信号TEを最大になるようにするにはサブビームSbp1、Sbp2の照射位置がメインビームMppの照射位置より、トラックピッチの半分ずれるようにトラッキング動作を行えばよい。
【0038】
上記のトラッキングエラー信号の検出はトラック幅の狭いDVDで用いられている方式であり、トラック幅の広いCDの場合、トラッキングエラー信号TEは次の式で表される。
TE=信号Sg1−信号Sg2
トラック幅の広いCDの場合であっても同様に、トラッキングエラー信号TEが最大になるようにトラッキング動作を行う。
【0039】
光ヘッドAがトラッキング動作を精度よく行うようにするためには、光ディスクDsの記録面のどの部分(たとえば、内周側、外周側等)にレーザ光を照射しても、光ディスクDsへレーザ光を照射する位置にかかわらず、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2とを結ぶ直線B1がトラック対して一定の角度をなすように、光ヘッドA及び光ディスク駆動機構2を配置すればよい。
【0040】
直線B1がトラックに対して一定の角度をなすには、光ディスクDsの任意の位置でのサブビームSbp1、Sbp2の反射光による信号の位相差が一定になるようにすれば良い。すなわち、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2との反射光による電気信号の位相差が常に一定になるようにすれば、トラッキングエラー信号TEを安定して検出することができる。
【0041】
図4は本発明にかかる光ディスク装置の調整方法を示すフローチャートである。まず、トラバースシャーシ1にガイド軸11等を取り付け、トラバースシャーシ1に光ヘッド調整機(図示省略)を配置し、光ヘッドAをガイド軸11に係合させる(ステップS11)。光ヘッドAを光ヘッド調整機のディスク面に対しレーザ光を照射しフォーカスオン(フォーカシング調整を行い、光ディスクDsの面ぶれにのみレーザスポットが追従する状態)にするとともに、光ヘッドAのグレーティングGrを動かして、メインビームMppとサブビームSbp1、Sbp2を結ぶ線B1がトラックTrに対して所定の角度をなす(トラッキングエラー信号TEが最大になる)ように調整する(ステップS12)。
【0042】
光ディスク調整機をトラバースシャーシ1より取り外し、調整用ディスク(図示省略)をターンテーブル21に載せた状態で、光ディスク駆動機構2をトラバースシャーシ1に配置する(ステップS13)。
【0043】
光ヘッドAを調整用ディスクの外周部に配置し、調整用ディスクに対してレーザ光を照射し、トラッキングエラー信号TEを検出し、トラッキングエラー信号TEが最大になるように、光ディスク駆動機構2の位置を調整する(ステップS14)。その後、光ヘッドAよりレーザ光を照射し、受光素子PdにてサブビームSbp1、Sbp2の反射光を受光し電気信号Sg1、Sg2に変換し、その電気信号の位相差P1を検出する(ステップS15)。
【0044】
光ヘッドAを調整用ディスクの内周側に移動させ、レーザ光を照射し、受光素子PdにてサブビームSbp1、Sbp2の反射光を受光し電気信号Sg1、Sg2に変換し、その電気信号の位相差P2を取得する(ステップS16)。ステップS15で求められた外周での位相差P1とステップS16で求められた内周での位相差P2との差(P1−P2)を算出し0になるかどうか判定する(すなわち、位相差P1と位相差P2とを比較する)(ステップS17)。P1−P2が0でない(ステップS17でNO)場合、光ディスク駆動機構2の位置を調整し(ステップS18)、ステップS15に戻る。P1−P2が0(ステップS17でYES)の場合、光ディスク駆動機構2をトラバースシャーシ1に固定し(ステップS19)、調整を終了する。
【0045】
このように、調整することで、光ヘッドAは、光ディスク駆動機構2のターンテーブル21に載置された光ディスクDsに対して、光ディスクDsの記録層のどの部分にレーザ光を照射しても、サブビームSbp1、Sbp2との位相差が変化しないので、安定したトラッキングエラー信号TEを検出することができ、トラッキング動作が安定するので、それだけ、データの読出し及び(又は)記録を精度よく行うことができる。
【0046】
上記実施例では、3ビームを用いてトラッキングを行うものに対して、外周と内周とのサブビームSbp1、Sbp2の位相差が変化しないように調整するものを例に説明しているが、それに限定されるものではなく、メインビームとサブビームの一方との位相差が変化しないように調整するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、DVD、CD等の光ディスクを記録媒体とする光ディスク装置の調整において適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】光ディスク装置の概略図である。
【図2】光ヘッドの概略配置図である。
【図3】光ディスクの記録層の拡大図である。
【図4】本発明にかかる光ディスク装置の調整方法を示すフローチャートである。
【図5】従来の光ディスク装置のターンテーブルと光ヘッドの相対位置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
A 光ヘッド
Ld レーザ光源
Gr グレーティング
Bs ビームスプリッタ
Mr ミラー
Lc コリメータレンズ
Lb 対物レンズ
1 トラバースシャーシ
11 ガイド軸
2 光ディスク駆動機構
21 ターンテーブル
22 スピンドルモータ
3 光ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、
前記光ヘッドを前記光ヘッドの径方向に摺動可能に配置する工程と、
前記光ヘッドのグレーティングを調整しメインビーム及び2本のサブビームの照射位置を最適化する工程と、
前記調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構を前記シャーシの所定の位置に配置する工程と、
前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、
前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、
前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記外周での電気信号の位相差を取得する工程、前記内周での電気信号の位相差を取得する工程、前記外周及び内周での位相差の差を算出する工程及び光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする光ディスク装置の調整方法。
【請求項2】
シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、
調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構をシャーシに配置し、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、
前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記2本のサブビームの反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、
前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記外周での電気信号の位相差を取得する工程、前記内周での電気信号の位相差を取得する工程、前記外周及び内周での位相差の差を算出する工程及び光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする光ディスク装置の調整方法。
【請求項3】
シャーシと、前記シャーシに配置され、光ディスクを回動するための光ディスク駆動機構と、レーザ光を出射するレーザ光源、前記レーザ光をメインビーム及び該メインビームを挟んで対称に形成される2本のサブビームに分けて前記光ディスクに照射させるためのグレーティング及び光ディスクより反射したレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子を備え、前記シャーシに摺動可能に取り付けられた光ヘッドとを有する光ディスク装置の調整方法であって、
調整用光ディスクを配置した光ディスク駆動機構をシャーシに配置し、前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの外周に配置させるとともにレーザ光を照射してトラッキングエラー信号を検出し、トラッキングエラー信号が最大になるように光ディスク駆動機構の位置を調整する工程と、
前記調整用光ディスクの外周にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記メインビームの反射光の電気信号と前記2本のサブビームのうち一方の反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記光ヘッドを前記調整用光ディスクの内周に移動し、該調整用光ディスクの内周部にレーザ光を照射させ、前記受光素子にて変換された前記メインビームの反射光の電気信号と前記2本のサブビームのうち一方の反射光の電気信号の位相差を取得する工程と、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差を算出する工程と、
前記光ディスク駆動機構の位置を調整する工程とを有しており、
前記外周での電気信号の位相差と前記内周での電気信号の位相差との差が0になるまで、前記外周での電気信号の位相差を取得する工程、前記内周での電気信号の位相差を取得する工程、前記外周及び内周での位相差の差を算出する工程及び光ディスク駆動機構の位置を調整する工程を繰り返して行うことを特徴とする光ディスク装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−141363(P2007−141363A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333742(P2005−333742)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】