説明

光ディスク装置及び光ディスク装置におけるレーザ光パワーの制御方法

【課題】光ディスク装置において、より正確で安定したレーザ光源のパワー制御を実現する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置は、レーザ光源からのレーザ光を受け、そのレーザ光パワーを観測するモニタ・ダイオードを有している。モニタ・ダイオードは、レーザ光源からのレーザ光パワーに応じた電気信号を生成する光検出器である。レーザ光制御部は、モニタ・ダイオードの測定結果に応じてレーザ光源への駆動電流を制御する。光ディスク装置は、モニタ・ダイオードの出力変動を測定し、その測定結果に応じてモニタ・ダイオードのゲインを制御する。このゲイン制御によりレーザ光制御の正確性と安定性を高め、その結果、記録/再生の安定化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク装置におけるレーザ光パワーの制御方法に関し、特に、レーザ光のパワー制御のためにそのレーザ光を検出する検出器のゲイン制御に関する。
【背景技術】
【0002】
動画再生装置、動画記録再生装置あるいはコンピュータのデータ記憶装置など、光ディスク装置は多くの用途において使用されている。データを記憶する光ディスクの種類として、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはBD(Blue-ray Disc)などが知られている。また、CD、DVD、BDのそれぞれは、再生のみのディスク・タイプと記録再生のディスク・タイプとを有している。
【0003】
光ディスク装置は、レーザ光源からのレーザ光を光ディスクに照射し、光ディスクの記録面で反射したレーザ光によって、光ディスクに記録されたデータを再生する。また、記録機能を有する光ディスク装置は、光ディスクの記録面にレーザ光を照射し、記録面の状態を変化させることによってデータを光ディスクに記録する。
【0004】
正確かつ安定した再生及び記録を行うためには、レーザ光のパワー(レーザ出力パワー)を正確に制御することが必要である。そのため、光ディスク装置においては、レーザ光パワーを自動的に制御するシステムが実装されている。これを、APC(Automatic Power Control)と呼ぶ。APCは、レーザ光源からのレーザ光のパワー(強度)をモニタし、レーザ光パワーが所望の範囲内となるようにレーザ光源へ与える駆動電流を調整する。
【0005】
レーザ光のパワーは、適切なサーボ制御のためにも、正確かつ安定して制御する必要がある。光ディスク装置は、ピック・アップ(光ヘッド)のサーボ制御により、レーザ・スポットを正確に目的位置に位置決めする(レーザ・スポットの位置制御)。光ディスク装置のサーボ制御システムは、ディスク半径方向における位置制御であるトラッキング・サーボ制御と、フォーカシング・サーボ制御とを行なう。サーボ制御システムは、ユーザ・データの再生と同様に記録面によるレーザ光の反射光(のRF信号)を使用するため、正確かつ安定したサーボ制御のために、レーザ発光パワーを正確かつ安定的に制御することが要求される。
【0006】
APCは、レーザ光源から光ディスクに照射されるレーザ光の一部をフォト・ダイオード素子により受光し、光信号を電気信号に変換する。この電気信号は、増幅器により増幅されて、コントローラに転送される。フォト・ダイオード素子と増幅器とを含む回路装置(レーザ光検出器)を、本明細書において、モニタ・ダイオードと呼ぶ。
【0007】
光ディスクに照射されるレーザ光パワーは、光ディスクの種類よって異なり、また、予熱動作と記録/再生との間において異なる。そのため、フォト・ダイオード素子が受光するレーザ光パワーも、それらによって変化する。モニタ・ダイオード(の増幅器)のゲインのゲインが一定である場合、モニタ・ダイオードからの出力は、レーザ光の大きなパワー変化に応じて大きく変化する。このため、光ディスクの種類の間や予熱動作と記録/再生との間において、モニタ・ダイオードの異なるゲインを選択するAPCが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−146050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献に開示されているように、レーザ光パワーの種類によってモニタ・ダイオードのゲインを選択することで、モニタ・ダイオードの出力変化率(動作範囲)を所望の値にすることができ、より正確なAPCを実現することができる。しかし、最適かつ安定した記録動作/再生動作のためには、レーザ光パワーの制御は常に正確性を高めることが要求されている。
【0010】
モニタ・ダイオードからの出力信号は、伝送路により制御回路のモニタ部へと伝送される。この伝送路上において、モニタ・ダイオードからの出力信号にノイズが重畳することがある。伝送路におけるノイズの大きさは回路構成や使用状況により変化するが、数mVのノイズが加わることがある。モニタ・ダイオード出力が小さい場合、その数mVのノイズがAPCに悪影響を及ぼす。
【0011】
レーザ光源からのレーザ光パワーは、記録動作におけるマーク生成において大きい。一方、そのレーザ光パワーは、再生動作(サーボ制御を含む)において、また、記録動作におけるサーボ制御(スペースへのレーザ光照射)において小さい。そのため、再生動作及び記録動作におけるサーボ制御において、モニタ・ダイオード出力におけるノイズが特に問題となる。
【0012】
モニタ・ダイオード出力信号のノイズによる変動はレーザ光源からのレーザ光パワーの変動につながり、その結果、RF信号が変動する。このため、データの再生及びサーボ制御の正確性と安定性とを損ね得る。従って、本発明の目的は、より正確で安定したレーザ出力パワーの制御を行い、安定した再生及び/又は記録動作を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の代表的な一例である光ディスク装置は、レーザ光を光ディスクに向けて照射するレーザ光源と、前記レーザ光制御のために前記レーザ光源からのレーザ光を受光するモニタ光検出器と、前記モニタ光検出器の出力に応じて前記レーザ光源のパワーを制御するレーザ・パワー制御部と、前記モニタ光検出器の出力変動を表す信号変動を測定し、その測定結果に応じて前記モニタ光検出器のゲインを制御する制御部とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施の形態によると、光ディスク装置において、より正確で安定したレーザ光源のパワー制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の光ディスク装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のモニタ・ダイオードの構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、ノイズにより変動するダイオード・モニタ出力とRF信号との関係を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、モニタ・ダイオードのゲイン制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において、ノイズの影響を低減されたダイオード・モニタ出力とRF信号との関係を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、モニタ・ダイオードの他のゲイン制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0017】
本実施形態は、光ディスク装置におけるレーザの出力パワー制御に特徴を有している。本形態において、この制御をAPC(Automatic Power Control)と呼ぶ。APCにより、レーザ光源周辺の温度変化、経時劣化等による発光効率の変化を補正し、レーザ光パワーが正確で安定するように制御することができる。
【0018】
光ディスク装置は、レーザ光源からのレーザ光を受け、その発光パワー(レーザ光パワー)を観測するモニタ・ダイオードを有している。モニタ・ダイオードは、レーザ光源からのレーザ光パワーに応じた電気信号を生成(光信号を電気信号に変換)する光検出器である。モニタ・ダイオードは、検出したレーザ光パワーを表す電気信号をレーザ光制御部に送る。
【0019】
レーザ光制御部は、モニタ・ダイオードの測定結果に応じてレーザ光源への駆動電流を制御し、所望のレーザ光パワー(レーザ光強度)を得る。本実施形態の光ディスク装置は、特に、モニタ・ダイオードのゲイン制御(感度制御)に特徴を有している。本実施形態のゲイン制御によりAPCの正確性と安定性を高め、その結果、再生動作及び/又は記録動作の安定化を図ることができる。
【0020】
本形態のAPCについて具体的な説明を行なう前に、本形態の光ディスク装置の全体構成について、図1のブロック図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の光ディスク装置100の構成を模式的に示すブロック図である。この光ディスク装置100は、ホスト・コンピュータ150と接続され、装着された光ディスク101(例えば、ブルーレイ・ディスク(BD))から再生したデータをホスト・コンピュータ150へ転送する。
【0021】
光ディスク装置100は、ホスト・コンピュータ150から送られてくるデータを、書き込み可能な光ディスク101(例えば、BD−R)に記録する機能を有してもよい。本実施形態のAPCは、再生動作及び記録動作の双方において使用することができるが、再生動作に特に有用である。
【0022】
光ディスク装置100は、スピンドル・モータ102、信号処理回路110、復調回路111、光ディスク判別回路112、レーザ・ドライバ113、システム・コントローラ114、メモリ115、データ・バス116、光ピック・アップ120及びレーザ・パワー制御回路123を備える。
【0023】
スピンドル・モータ102は、光ディスク装置100に装着された光ディスク101を回転する。光ピック・アップ120は、対物レンズ103、スプリッタ104、コリメート・レンズ105、集光レンズ106、光電変換素子107、レーザ光源108及びモニタ・ダイオード121を有する。光ピック・アップ120は、光ディスク101からデータを再生する時には、弱いレーザ光を光ディスク101に照射し、そのレーザ光の反射光により、光ディスク101に記録されているデータを再生し、反射光に対応する信号を出力する。
【0024】
レーザ光源108は、典型的には、半導体レーザであり、記録及び再生のために所定の強度(パワー)のレーザ光を出力する。レーザ光源108は、装着される光ディスクの種類毎に定められた波長のレーザ光を出す。レーザ光源108から出射されたレーザ光は、コリメート・レンズ105、スプリッタ104そして対物レンズ103を通って光ディスク101の記録面の所定半径位置に照射される。対物レンズ103は、光ピック・アップ120内のアクチュエータによって駆動され、光ディスク面上にレーザ光が合焦するように調整される。
【0025】
レーザ光源108は、光ディスク101にデータを記録する時には、再生時より強いレーザ光を光ディスク101に照射する。記録可能な光ディスク101は、レーザ光が照射された部分の熱による物理特性の変化によって記録層に記録ピットを形成し、記録層の反射率を変化させてデータを記録する。
【0026】
光ディスク101の記録面で反射したレーザ光は、スプリッタ104で分離され、集光レンズ106で集光され、光電変換素子107に導かれる。光電変換素子107は、受光した反射光を電気信号に変換し、反射光に対応する電気信号を出力する。信号処理回路110は、光電変換素子107から出力された信号からRF信号を生成する。
【0027】
モニタ・ダイオード121はレーザ光パワーをモニタするための光検出器であり、APCのために、レーザ光のパワー(レーザ光強度)を測定する。モニタ・ダイオード121は、光電変換素子であるフォト・ダイオード素子と、その出力を電圧に変換して増幅する増幅器と、を有している。本実施形態において、モニタ・ダイオード121のゲイン(感度)は可変であり、システム・コントローラ114がそのゲイン制御を実行する。
【0028】
本実施形態は、このモニタ・ダイオード121のゲイン制御に特徴を有している。この点の詳細は後述する。なお、モニタ・ダイオードの信号帯域は、再生時のレーザ光に重畳される高周波に対して十分帯域が低いものでもよい。モニタ・ダイオード121で検出されたモニタ・ダイオード出力信号はレーザ・パワー制御回路123に与えられる。
【0029】
信号処理回路110は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)であり、光電変換素子107の出力からRF信号のデジタル・データを生成する。また、信号処理回路110は、光ディスク構造によって異なる光ディスク判別用信号、光ビームの焦点を調整するためのフォーカス誤差信号、光ディスク101のトラックに追従するためのトラッキング誤差信号を光電変換素子107の出力からから生成し、それらを出力する。
【0030】
復調回路111は、信号処理回路110から出力されたデジタル・データを光ディスクの種類毎に定められた方法に従って復調する。復調回路111は、さらに復調したデータのエラー検出及びエラー訂正を行った後、そのデータをメモリ115(バッファ)に一時的に格納する。
【0031】
光ディスク判別回路112は、信号処理回路110から出力される光ディスク判別用信号によって、装着された光ディスク101の種類を判別する。光ディスク判別回路112から与えられる光ディスク101の種類判定結果はデータ・バス116を介してシステム・コントローラ114に与えられる。
【0032】
システム・コントローラ114は光ディスクの判別結果に基づいて、判別された光ディスクに最適な条件(再生条件/書込条件)になるように、各回路を制御する。システム・コントローラ114は、信号処理回路110からの誤差信号を使用して、トラッキング及びフォーカシング・サーボ制御を実行する。
【0033】
レーザ・ドライバ113は、光学ヘッド120のレーザ光源108を駆動するためのレーザ駆動信号を出力する。レーザ・ドライバ113は、レーザ・パワー制御回路123の制御下において、レーザ駆動信号(駆動電流)をレーザ光源108に与える。
【0034】
レーザ・パワー制御回路123は、APCを実行する。レーザ・パワー制御回路123は、レーザ・ドライバ113を介してレーザ光源108へ駆動電流を制御して、レーザ光源108の出力パワーを制御する。レーザ・パワー制御回路123はレジスタを有しており、そこに再生時及び(記録機能を有する場合は)記録時のレーザ・パワー目標値を格納している。レーザ・パワー制御回路123は、目標値とモニタ・ダイオード121の測定結果に応じて、レーザ光源108への駆動電流を制御する。
【0035】
システム・コントローラ114は、光ディスク装置100の動作を制御するプロセッサ及びメモリを備える。また、システム・コントローラ114は、所定の処理を行うロジック回路を有していてもよい。システム・コントローラ114のメモリは、実行されるプログラム及び該プログラムを実行する際に必要なデータを格納する。
【0036】
システム・コントローラ114は、光ディスク装置100と接続されるホスト・コンピュータ150との間のデータ及びコマンドの送受信を制御するインターフェースを備える。システム・コントローラ114は、メモリ115に一時的に記憶されたデータの読み出し及びメモリ115へのデータの書き込みを制御する。また、システム・コントローラ114は、ホスト・コンピュータ150から受信したコマンドを解釈し、受信したコマンドに従った処理を行う。
【0037】
メモリ115は、バッファ領域を含み、光ディスク101から再生されたデータをそのバッファ領域に一時的に格納する。また、ホスト・コンピュータ120から転送されたデータを一時的に格納する。データ・バス116は、光ディスク装置100の各回路を相互に接続する。各回路間の信号は、データ・バス116により伝送される。図1に示す構成は、光ディスク装置の回路構成の一例であって、いずれの機能をハードウェアあるいはソフトウェアにより実装するかは、光ディスク装置の設計に依存する。
【0038】
上述のように、本実施形態の光ディスク装置100は、そのAPCに特徴を有しており、特に、モニタ・ダイオード121のゲイン制御に特徴を有している。図2は、モニタ・ダイオード121の構成の一例を模式的に示す周辺回路図である。図2の例において、モニタ・ダイオード121は、8つの入出力端子を有している。
【0039】
具体的には、モニタ・ダイオード121は、グランド端子GND、電源端子VCC、モニタ信号の出力端子OUTP、OUTN、シリアル・データ入力端子SDA、クロック端子SLK及びイネーブル信号端子ENを有している。
【0040】
モニタ・ダイオード121の動作パラメータは、シリアル・データ入力端子SDAから、クロック端子SLKのクロック信号に従って入力される。特に、本実施形態において、モニタ・ダイオード121(内の増幅器)のゲイン(出力の感度)が設定可能である。システム・コントローラ114は、シリアル・データ入力端子SDAを介して、ゲイン値をモニタ・ダイオード121に設定する。システム・コントローラ114は、イネーブル信号端子ENへの信号により、シリアル・データ入力端子SDAでの受信の許否を制御する。
【0041】
モニタ・ダイオード121は、出力端子OUTP、OUTNから、検出したレーザ光パワー(強度)に応じた電気信号(電圧信号)を出力する。具体的には、モニタ・ダイオード121は、受光したレーザ光を電圧信号に変換し、設定されているゲイン値に従って増幅する。増幅されたモニタ信号は、出力端子OUTP、OUTNからレーザ・パワー制御回路123に送られる。
【0042】
なお、本実施形態において、モニタ・ダイオード121におけるゲインは、レーザ光入力に対する電気信号出力の比を定義するパラメータであれば、モニタ・ダイオード121内の回路構成におけるいずれのパラメータであってもよい。
【0043】
レーザ・パワー制御回路123は、レーザ・パワー目標値を内部に保持している。レーザ・パワー制御回路123は、レーザ・パワー目標値とモニタ・ダイオード121からの出力とを比較し、その差分値を算出する。算出された差分値は、レーザ・ドライバ113に与えられる。
【0044】
レーザ・ドライバ113は、レーザ・パワー制御回路123によって計算された差分値によって、レーザ光源108から出力されるレーザ光の強度を制御する。差分値はレーザ光源108への駆動電流を表わす値であり、レーザ・ドライバ113がこの駆動電流をレーザ光源108へ供給することで、所望のレーザ光パワーを得る。これによって、レーザ光源108周辺の温度変化、経時劣化等によるI/Lの変化を補正し、レーザ強度を安定して制御する。
【0045】
システム・コントローラ114は、レーザ・パワー目標値をレーザ・パワー制御回路123にセットする。システム・コントローラ114は、光ディスク判別回路112による光ディスク種類のよって判別結果に応じて、再生時及び(記録機能を有する場合は)記録時のレーザ・パワー目標値を設定する。
【0046】
さらに、本実施形態のシステム・コントローラ114は、レーザ・パワー目標値の決定において、モニタ・ダイオード121のゲイン値を参照する。モニタ・ダイオード121のゲインに応じて、同一強度のレーザ光に対するモニタ・ダイオード121からの出力信号強度が変化する。そのため、システム・コントローラ114は、予め定められている設定に従って、モニタ・ダイオード121のゲインに応じて目標値を決定する。一般に、ゲイン値が大きくなれば、目標値も大きくなる。
【0047】
システム・コントローラ114に代わって、レーザ・パワー制御回路123が目標値を算出してもよい。例えば、レーザ・パワー制御回路123は、システム・コントローラ114からモニタ・ダイオード・ゲインの値を取得し、それを保持する。レーザ・パワー制御回路123は、光ディスク判別回路112の判別結果とゲイン値とに応じて目標値を決定し、その値を保持する。
【0048】
なお、システム・コントローラ114は、光ディスク判別回路112の判別結果に従って目標値を決定し、ゲイン設定値に応じてモニタ・ダイオード121から取得した値を変化させてもよい。あるいは、目標値とモニタ・ダイオード出力との間の差分の算出において、ゲイン値に応じてそれら双方の値を変化させてもよい。
【0049】
以下において、モニタ・ダイオード121のゲイン設定について具体的に説明を行う。以下に説明する構成において、システム・コントローラ114がこの処理を行う。光ディスク装置の設計に従って、いずれの構成要素がこの処理を行ってもよい。システム・コントローラ114は、モニタ・ダイオード121の出力変動を測定し、その測定結果に応じてモニタ・ダイオード121のゲイン値を決定する。
【0050】
温度変化や経年変化と異なり、短い時間内におけるモニタ・ダイオード121の出力変動は、ノイズに起因すると考えることができる。つまり、モニタ・ダイオード121からシステム・コントローラ114への伝送路においてノイズが重畳し、システム・コントローラ114が取得するモニタ・ダイオード出力値が変動する。
【0051】
システム・コントローラ114は、測定した出力変動量(ノイズ・レベル)に応じてモニタ・ダイオード・ゲインを調整する。具体的は、ノイズ(による出力変動)の測定値の増加に従って、ゲインを大きくする。これにより、モニタ・ダイオード出力に対するノイズの影響を所望のレベルまで小さくすることができる。
【0052】
システム・コントローラ114は、モニタ・ダイオード出力変動を表す信号変動を測定することで、モニタ・ダイオード121の出力変動を測定することができる。モニタ・ダイオード121の出力信号は、モニタ・ダイオード121の出力変動を直接に表す。このほか、モニタ・ダイオード出力の変化に応じて変化する信号であるRF信号の変動も、ノイズによるモニタ・ダイオード出力変動を表す。
【0053】
図3は、モニタ・ダイオード出力とRF信号との関係を模式的に示す図である。RF信号は、光ディスク101からの反射レーザ光の検出信号であり、レーザ光源108からのレーザ光パワーが変動すると、それに応じて変動する。APCは、モニタ・ダイオード121の出力に応じてレーザ・パワーを変化させるため、ノイズによりモニタ・ダイオード出力が変動するとレーザ・パワーが変動し、その結果、RF信号が変動する。このように、RF信号変動は、モニタ・ダイオード出力変動を表している。
【0054】
従って、システム・コントローラ114は、モニタ・ダイオード121の出力変動を直接あるいは間接的に測定することができる。モニタ・ダイオード121の出力変動の直接の測定は、モニタ・ダイオード121の出力値を参照し、その変動を測定する。RF信号の変動を測定することで、システム・コントローラ114は、モニタ・ダイオード121の出力変動を間接的に測定することができる。
【0055】
まず、モニタ・ダイオード121の出力信号を観測し、モニタ・ダイオード出力変動を直接に測定する処理の好ましい一例を、図4のフローチャートを参照して説明する。この処理は、再生動作におけるモニタ・ダイオード121のゲインを決定する。
【0056】
システム・コントローラ114がホスト・コンピュータ150から再生動作指令を受信すると(S11)、システム・コントローラ114は、レーザ光の必要パワーを確認する(S12)。上述のように、光ディスクの種類によって再生におけるレーザ光パワーは異なる。光ディスク判別回路112の判定に従ったレーザ光パワー値を得る。
【0057】
システム・コントローラ114は、レーザ光源108の点灯前にモニタ・ダイオード121の出力信号を観測し、その変動を測定する(S13)。レーザ・ドライバ113からパワーが供給されておらずレーザ光源108は発光していないため、ゼロ・レベル(基準レベル)よりも大きいモニタ・ダイオード出力値は、伝送路上のノイズに起因するものである。つまり、モニタ・ダイオード出力値が、変動量を示す。
【0058】
システム・コントローラ114は、特定時間の間、モニタ・ダイオード出力を観測してその変動量を測定する。システム・コントローラ114は、特定時間として、光ディスク装置100に予め設定されている同一長の時間を使用する、あるいは、予め設定されたルールに従って測定毎に変化させてもよい。
【0059】
変動量の測定は、いくつかの方法を使用することができる。例えば、システム・コントローラ114は、測定時間内における最大値を出力変動量の測定値として使用することができる。あるいは、測定時間内に測定した出力値から閾値を決定し、その閾値以下の範囲内の最大値を出力変動量として使用してもよい。
【0060】
システム・コントローラ114は、モニタ・ダイオード出力信号の変動量の測定結果に応じて、モニタ・ダイオード121のゲイン値を決定し、その値をモニタ・ダイオード121のレジスタにセットする(S14)。好ましい構成において、システム・コントローラ114は、工程S12において確認したレーザ光パワーの値と出力変動量測定値とから、ゲイン値を決定する。モニタ・ダイオード出力は、レーザ光パワーとゲインとで決まるため、モニタ・ダイオード出力に対するノイズの影響を効果的に抑えることができる。
【0061】
好ましい例は、ノイズ測定値に対するレーザ光によるモニタ・ダイオード出力値の比が規定範囲内(例えば、特定の値以上)となるように、モニタ・ダイオード121のゲイン値を決定する。例えば、レーザ光パワーがP[mW]、ノイズ測定値がN[mV]、ゲイン値がG、そして上記特定の値が10であるとする。
【0062】
ゲイン値Gは、N×10/P以上の値に設定される(例えば、N×10/P)。このように出力変動量(N)に規定係数(例えば、10/P)を乗じて、適切かつシンプルにゲインを算出することができる。なお、ゲイン値の算出方法は、光ディスク装置の設計に従って、適切な方法を使用すればよい。
【0063】
続いて、システム・コントローラ114は、再生におけるパワーのレーザ光を光ディスク101に向けて照射する(S15)。具体的には、システム・コントローラ114は、レーザ・パワー制御回路123に目標値をセットし、レーザ発光を指示する。レーザ・パワー制御回路123は、レーザ・ドライバ113により、レーザ光源108に所定のパワーを供給して、レーザ光源108にレーザ光を出力させる。
【0064】
レーザ・パワー制御回路123は、モニタ・ダイオード121の出力信号に従って、レーザ光パワーが所望の値になるように、レーザ光パワー(レーザ光源108への駆動信号)を制御する(S16)。システム・コントローラ114は、光ディスク101に照射されているレーザ光により、目的の領域にあるデータの再生処理を実行する(S17)。
【0065】
図5は、ゲイン調整後のモニタ・ダイオード出力とRF信号とを模式的に示している。ノイズ測定結果に応じて適切にモニタ・ダイオード・ゲインが調整されているため、ノイズによるそれらの変動が効果的に抑制されている。このように、モニタ・ダイオード121の出力変動に応じてそのゲインを決定することで、APCにおけるノイズの影響を提言し、より正確で安定した再生を行うことができる。本構成は、モニタ・ダイオード121の出力を観測するので、その出力におけるノイズ(による変動量)を直接に測定することができ、より正確なノイズ測定を行うことができる。
【0066】
上記構成は、再生動作指令を受ける度にゲイン調整を行うため、各再生動作において適切なゲインを設定することができる。これと異なり、あるいはこれに加えて、システム・コントローラ114は、光ディスク装置100への光ディスク装着に対する初期化処理において、ゲイン調整を行ってもよい。ノイズ測定方法は、初期化処理における測定と再生動作指令に応答した測定との間において異なっていてもよい。例えば、測定時間をこれらの間で変えることができる。これらの点は、以下の構成において同様である。
【0067】
次に、モニタ・ダイオード出力変動を表すRF信号変動を測定することで、モニタ・ダイオード・ゲインを調整する処理を説明する。図6のフローチャートは、再生動作のためのゲイン調整の好ましい処理例を示している。
【0068】
システム・コントローラ114がホスト・コンピュータ150から再生動作指令を受信すると(S21)、システム・コントローラ114は、レーザ光の必要パワーを確認する(S22)。システム・コントローラ114は、工程S22において確認した必要なレーザ光パワーから、モニタ・ダイオード・ゲイン値を算出する(S23)。さらに、その算出値をモニタ・ダイオード121のレジスタにセットする(S24)。この値が、モニタ・ダイオード・ゲインの初期値である。
【0069】
続いて、レーザ光源108は、再生におけるレーザ光パワーで発光し(S25)、システム・コントローラ114は、再生動作を開始する(S26)。再生により読み出すデータは、再生動作指令が示すアドレスのデータ、あるいは、規定の領域におけるデータであってもよい。レーザ光源108からのレーザ光が光ディスク101に照射される。その反射光は、光電変換素子107により電気信号(電流)に変換される。信号処理回路110は、光電変換素子107からの電気信号からRF信号を生成する。
【0070】
システム・コントローラ114は、信号処理回路110からRF信号を取得し、その変動を測定する(S27)。測定時間は、図4を参照して説明した処理と同様である。変動量は、RF信号の最小値と最大値と差分を使用して定義することができる。測定値における最大値と最小値の決定は、設計により選択された方法に従えばよい。例えば、システム・コントローラ114は、測定結果から決定した閾値で決まる範囲内における最大値と最小値を特定し、それらから変動量を算出する。あるいは、測定値における最大値と最小値をそのまま使用してもよい。
【0071】
また、変動量の表し方は、特に限定されない。電圧値で得られるRF信号の値をそのまま使用して変動量を算出する、あるいは、RF信号の平均値を算出し、その平均値に対す最大値と最小値との差分の比、によって変動量を表してもよい。以下においては、この比に応じて適切なモニタ・ダイオード・ゲインを決定する処理例を説明する。
【0072】
次に、システム・コントローラ114は、工程S27において決定した変動量と閾値A[%]とを比較する(S28)。変動量が閾値A以上である場合、システム・コントローラ114はモニタ・ダイオード121に新たなゲイン値をセットする(S24)。変動量が大きいため、設定されているゲイン値よりも大きいゲイン値をセットする。システム・コントローラ114は、新たなゲイン値において、工程S25〜工程S28を実行する。
【0073】
工程S28において変動量が閾値Aよりも小さい場合、モニタ・ダイオード・ゲインは、現在設定されている値に決まる。光ディスク装置100は、現状設定におけるモニタ・ダイオード121を使用してAPCを行いながら、再生動作指令に従った再生動作を続行する(S29)。
【0074】
このように、本構成は、RF信号の変動を測定し、その測定結果に応じてモニタ・ダイオード・ゲインを調整する。RF信号の変動量が規定範囲となるように、ゲイン値は決定される。再生及びサーボ制御は、RF信号に基づいて行われる。上記例において、変動量は平均値に対する差分の比で表わされ、規定範囲はAより小さい値である。RF信号によりモニタ・ダイオード出力ノイズを測定し、それに応じてゲイン調整することで、効果的に再生及びサーボ制御を安定化させることができる。
【0075】
上記構成はRF信号を観測するが、これに代えて、モニタ・ダイオード出力を観測してもよい。モニタ・ダイオード出力は、RF信号と同様に、平均値を基準値として変動する。レーザ光を受光しながらモニタ・ダイオード出力を測定することで、実際の再生動作に則した測定を行うことができる。しかし、より正確なノイズ測定のためには、図4を参照して説明したように、レーザ光源108からのレーザ出力がない状態において、ノイズ測定を行うことが好ましい。
【0076】
上述のように図4及び図6を参照して再生動作におけるモニタ・ダイオード・ゲインの制御方法を説明したが、記録動作においても本実施形態の手法によりモニタ・ダイオード・ゲインを設定することができる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
100 光ディスク装置、101 光ディスク、102 スピンドル・モータ
103 対物レンズ、104 スプリッタ、105 コリメート・レンズ
106 集光レンズ、107 光電変換素子、108 レーザ光源
110 信号処理回路、111 復調回路、112 光ディスク判別回路
113 レーザ・ドライバ、114 システム・コントローラ、115 メモリ
116 データ・バス、120 光ピック・アップ、121 モニタ・ダイオード
123 レーザ・パワー制御回路、150 ホスト・コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を光ディスクに向けて照射するレーザ光源と、
前記レーザ光制御のために前記レーザ光源からのレーザ光を受光するモニタ光検出器と、
前記モニタ光検出器の出力に応じて前記レーザ光源のパワーを制御するレーザ・パワー制御部と、
前記モニタ光検出器の出力変動を表す信号変動を測定し、その測定結果に応じて前記モニタ光検出器のゲインを制御する制御部と、
を有する光ディスク装置。
【請求項2】
前記信号変動は、前記モニタ光検出器の出力の変動である、
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記測定において、前記モニタ光検出器による前記レーザ光源からのレーザ光の受光がゼロである、
請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力変動量に係数を乗じて前記ゲイン値を算出する、
請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、再生動作におけるレーザ光パワーと前記測定結果とに基づいて、前記再生動作における前記ゲイン値を算出する、
請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記信号変動は、前記レーザ光源からのレーザ光を前記光ディスクに照射し、その反射光から生成した電気信号の変動である、
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電気信号の変動量が規定範囲内となるように前記ゲイン値を決定する、
請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
レーザ光源からのレーザ光を光ディスクに照射する光ディスク装置において、前記レーザ光のパワーを制御する方法であって、
モニタ光検出器の出力変動を表す信号変動を測定し、
前記測定の結果に応じて前記モニタ光検出器のゲインを設定し、
光ディスクからのレーザ光を前記モニタ光検出器で受光して、前記設定されたゲインにおいて前記受光したレーザ光を電気信号に変換し、
前記モニタ光検出器からの電気信号に応じて、前記レーザ光源を制御する、
方法。
【請求項9】
前記測定は、前記モニタ光検出器の出力を観測してその出力変動を測定する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定において、前記モニタ光検出器による前記レーザ光源からのレーザ光の受光がゼロである、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記出力変動量に係数を乗じて前記ゲイン値を算出する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
再生動作におけるレーザ光パワーと前記測定結果とに基づいて、前記再生動作における前記ゲイン値を算出する、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記信号変動は、前記レーザ光源からのレーザ光を前記光ディスクに照射し、その反射光から生成した電気信号の変動である、
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記電気信号の変動量が規定範囲内となるように前記ゲイン値を決定する、
請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−18731(P2012−18731A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155862(P2010−155862)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】