説明

光ディスク装置

【課題】トレイを筐体に出し入れする際、ボトムカバーが下部筐体部(ボトムシャーシ)と擦れることでボトムカバーの表面に傷が付くことを防止する。
【解決手段】筐体2に対しトレイ3を出入自在に保持するレール8と、レール8を移動可能に保持するために筐体のボトムシャーシ2bに取り付けたレールガイド9を備え、レールガイド9はレール8の走行方向に直交する断面が略コの字形状であり、レール8と当接する底面の一部に凸部10を形成した。凸部10は、レールガイド9のうち筐体の前面側端部領域に形成され、トレイ3が筐体2から引き出されたときにレール8がレールガイド9の凸部10に乗り上げる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置に係り、特に光ディスクを載置するトレイを収納する筐体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子機器に搭載される光ディスク装置では、装置本体(筐体)に出入自在に保持されたトレイを備え、このトレイを筐体から引き出した状態で光ディスクを載置し、再びトレイを筐体に収納することで光ディスクを装置本体に装着する構造となっている。このうちパソコン等に内蔵されるスリム型の光ディスク装置では、トレイには、光ディスクを回転させるスピンドルモータや、光ディスク半径方向に移動可能でディスク記録面にレーザ光を照射して情報を記録または再生する光ピックアップが取り付けられている。またスリム型の光ディスク装置では、筐体の高さ(厚さ)が制限されているため機構部品の剛性が低く、トレイと筐体の間隙も小さくなっている。そのため、光ディスクの装着やトレイの出入操作において、過大な外力が印加されるとトレイが筐体から脱落するなど様々な不具合が生じる恐れがある。
【0003】
例えば特許文献1に開示されるトレイは、光ディスクの脱着時にトレイのエッジ等との接触によるディスク記録面の損傷を防止することを目的とし、光ディスクの下面に対向する略半月状で平坦な凹部と、この凹部の略半月状の弦に相当する箇所に形成された側面部によって形成される稜角部を円弧上に面取りした構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−059436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スリム型の光ディスク装置の課題として、トレイの出し入れ時にトレイの下面側と筐体の内面とが接触し易いことが挙げられる。すなわち、厚みが12.7mmや9.5mm等に代表されるスリム型の光ディスク装置では、部品間の隙間が狭く、かつ部品がたわみ易いため、過大な荷重をかけてトレイを摺動させると、トレイの下面に取り付けられるボトムカバーが筐体の底面であるボトムシャーシと擦れることがある。その結果、ボトムカバーの表面のコーティング材が剥れたり傷付きが発生したりすることになる。これにより、トレイの外観を損ねるだけでなく、コーティング材の剥離が原因でベース材である金属面が露出し、外部から静電気が到来してトレイに搭載している電子部品を静電破壊(ESD)させる恐れもある。
【0006】
前記特許文献1を始め従来技術では、トレイの下面側と筐体の内面とが接触してボトムカバーを傷付ける問題については考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、トレイを筐体に出し入れする際、ボトムカバーがボトムシャーシと擦れることでボトムカバーの表面に傷が付くことのない光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光ディスクが載置されたトレイを筐体に収納して光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、筐体に対しトレイを出入自在に保持するレールと、レールを移動可能に保持するために筐体のボトムシャーシに取り付けたレールガイドを備え、レールガイドはレールの走行方向に直交する断面が略コの字形状であり、レールと当接する底面の一部に凸部を形成した。
【0009】
ここで前記凸部は、レールガイドのうち筐体の前面側端部領域に形成され、トレイが筐体から引き出されたときにレールがレールガイドの凸部に乗り上げる構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トレイの出し入れ操作においてトレイのボトムカバーへの傷付きによる外観劣化や静電破壊がなく、信頼性の高い光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明に係る光ディスク装置の一実施例を示す外観斜視図(表面側)。
【図1B】本発明に係る光ディスク装置の一実施例を示す外観斜視図(裏面側)。
【図2A】図1の光ディスク装置の内部構成を示す斜視図(オープン状態)。
【図2B】図1の光ディスク装置の内部構成を示す斜視図(クローズ状態)。
【図3A】レールガイド9に形成した凸部の形状の例を示す斜視図。
【図3B】レールガイド9に形成した凸部の形状の例を示す斜視図。
【図4A】本実施例におけるトレイ浮上動作を示す模式図(オープン状態)。
【図4B】本実施例におけるトレイ浮上動作を示す模式図(クローズ状態)。
【図5A】比較のために従来のトレイ動作を示す模式図(オープン状態)。
【図5B】比較のために従来のトレイ動作を示す模式図(クローズ状態)。
【図6】本実施例におけるトレイの浮上動作のヒステリシス現象を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1Aと図1Bは、本発明に係る光ディスク装置の一実施例を示す外観図であり、図1Aは表面側(光ディスク載置側)、図1Bは裏面側から見た斜視図である。図において、1は光ディスク装置、2は筐体(シャーシ)、2aは上部筐体部(トップケース)、2bは下部筐体部(ボトムシャーシ)、3はトレイ、4は載置面、5はスピンドルモータ、6は光ピックアップ、7はボトムカバー、8はレール、9はレールガイド、11はベゼル、12はイジェクトボタンである。
【0013】
光ディスク装置1は、筐体2と、筐体2に出入自在に保持されたトレイ3を有している。筐体2は、金属製のトップケース2aとボトムシャーシ2bを組み合わせた袋状であり、筐体2の前面側開口からトレイ3を収納する構成となっている。トレイ3の表面側の載置面4には光ディスクを載置する。またトレイ3には、光ディスクを回転させるスピンドルモータ5、光ディスクにレーザ光を照射して情報の記録や再生を行う光ピックアップ6、及びこれらを駆動する電子回路基板が取り付けられ、これらは、トレイ3の裏面側からボトムカバー7を介して支持されている。光ピックアップ6は、図示しないフィードモータによって、光ディスクの半径方向に移動する。
【0014】
トレイ3はその側面に取り付けたレール8を介して、筐体2に対して収納及び引き出しの移動が行われる。また、筐体2のボトムシャーシ2bの側面には、レール8を移動可能に保持するレールガイド9が設けられている。トレイ3の出入移動をスムーズに行わせるため、レール8とレールガイド9の間には所定の間隙(クリアランス)を設けるとともに、レール8はトレイ3に対して移動可能に取り付けられている。
【0015】
トレイ3を収納するときは、トレイ3の前面に設けられたベゼル11を筐体2側に押し込み、筐体2に設けられた係合部とトレイ3に設けられた係合部とを係合させることで、トレイ3を筐体2内にロックさせる。一方トレイ3を引き出すときは、ベゼル11に設けられたイジェクトボタン12を押すことで、筐体2に設けられた係合部とトレイ3に設けられた係合部とのロックを解除し、トレイ3を筐体2から前面側に引き出す。
【0016】
図2Aと図2Bは、図1の光ディスク装置のトップケース2aを除去した内部構成を示し、図2Aはトレイ3を筐体2から引き出した状態(オープン状態)を、図2Bはトレイ3を筐体2に収納した状態(クローズ状態)を示す斜視図である。レールガイド9はボトムシャーシ2bの側面に固定され、レール8はトレイ3の後部領域においてトレイ3側面を前後方向に移動可能に取り付けられている。
【0017】
図2Aのオープン状態では、トレイ3に取り付けたレール8の後端部がボトムシャーシ2bに取り付けたレールガイド9の前端部に挿入され、図2Bのクローズ状態では、トレイ3のレール8の全体がボトムシャーシ2bのレールガイド9に挿入される。本実施例では、レールガイド9の前端部分(記号Cで示す)においてレール8との接触面に凸部を設けたことを特徴とする。これにより、図2Aのオープン状態では、レール8がレールガイド9の凸部に乗り上げることで、トレイ3をボトムシャーシ2bから浮上(離間)させるようにした。また、図2Bのクローズ状態では、レール8をレールガイド9の凸部よりも奥行き方向に後退させることで、トレイ3を通常の高さ位置に戻すようにした。
【0018】
図3Aと図3Bは、レールガイド9に形成した凸部の形状の例を示す斜視図である。
レールガイド9は、レール8の走行方向に直交する断面が略コの字形状となっており、レール8はその内面に沿って走行する。本実施例では、レールガイド9の前端部領域において、レール8と当接する底面9aの一部に凸部10a(図3A)または凸部10b(図3B)を形成している。よって走行中のレール8は、この凸部10aまたは凸部10bに乗り上げることになる。図3Aに示す凸部10aはレール8が乗り上げる方向を緩やかな斜面を有する台形状とし、また図3Bに示す凸部10bは円弧状としており、いずれも凸部10a、10bへのレール8の乗り上げがスムーズに行えるようにしている。凸部10a、10bの高さはトレイ3の所望の浮上量から決めれば良いが、例えば0.3〜0.5mmとする。これらの凸部10a、10bの形成は、レールガイド9の一体成形加工の中で容易に実現できる。凸部の形状はこの例に限るものではなく、また凸部をレールガイド9と別体で形成しても良い。レールガイド9はトレイ3の左右側面に2本存在し、本実施例では右側のレールガイド9に凸部を設けたが、両方のレールガイド9に凸部を設けても良い。
【0019】
図4Aと図4Bは、本実施例におけるトレイ浮上動作を示す模式図である。図4Aはオープン状態であり図2AのA−A断面を、図4Bはクローズ状態であり図2BのB−B断面を示す。各図面において、トレイ3の底面にはボトムカバー7とレール8が取り付けられ、レール8はトレイ3の後部領域を移動可能となっている。また、ボトムシャーシ2bの上面にはレールガイド9が取り付けられ、レールガイド9の前端部領域にはレール8に向かう凸部10が形成されている。
【0020】
図4Aのオープン状態では、レール8がレールガイド9の凸部10に乗り上げることでトレイ3が浮上し、ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの間隙はS1に増大する。図4Bのクローズ状態では、レール8の前端(図面右端)がレールガイド9の凸部10より後部側(図面左側)に後退し、レール8がレールガイド9の底面9aに接触してトレイ3は通常の高さに戻り、ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの間隙は通常値S0となる。
【0021】
トレイ3の出し入れ操作において、収納開始時(図4Aのオープン状態からクローズ状態に移行時)はユーザがトレイ3の前面を押し込む操作が加わるので、トレイ3の先端には下方成分の荷重Wが印加される。その影響で、トレイ3は変形しボトムシャーシ2b側にやや沈むことになるが、ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの間隙を大きな値S1としているので、両者が接触して擦れることはない。よって、ボトムカバー7のコーティングが剥れ傷付きが発生することを防止できる。
【0022】
図5Aと図5Bは、比較のために従来のトレイ動作を示す模式図である。図5Aはオープン状態であり、図5Bはクローズ状態である。従来構造では、レールガイド9の底面(レール受け面)は直線状であって凸部を有していない。そのため、図5Aのオープン状態でも図5Bのクローズ状態でも、レール8はレールガイド9の底面9aに接触するためトレイ3は一定の高さで走行し、ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの間隙は一定値S0のままである。
【0023】
トレイ3の出し入れ操作において、収納開始時(図5A)にはトレイ3の先端に荷重Wが印加され、その影響でトレイ3は変形しボトムシャーシ2b側にやや沈むことになる。ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの通常の間隙量S0ではトレイ3の沈み量を吸収しきれず、両者が接触して擦れる場合が生じる。その結果、ボトムカバー7の表面のコーティングが剥れ傷付きが発生することになる。
【0024】
図6は、本実施例におけるトレイの浮上動作のヒステリシス現象を示す図である。図6では、トレイの開閉位置と、ボトムカバー7とボトムシャーシ2bの間隙量の関係を表している。間隙量は、トレイ3がクローズ状態ではS0となりオープン状態ではS1となるが、その切替わり位置は、トレイ収納時はa位置、引き出し時はb位置となり、浮上動作にヒステリシス現象を有する。これは、トレイ3を保持するレール8が、トレイ3に対して所定の区間で移動可能に取り付けられているからである。このヒステリシスのため、トレイ収納過程では間隙量がS1となる区間は長いが、引き出し過程では短くなる。しかし、トレイ引き出し時はユーザがトレイ3に触れることはないので、トレイ3に荷重Wが印加されてボトムカバー7がボトムシャーシ2bに接触する恐れはなく、問題にはならない。
【0025】
以上のように本実施例によれば、レールガイド9に凸部10を設けることでトレイ3を浮上させ、トレイ3に荷重が印加されてもボトムカバー7に傷付きが発生しないようにした。これより、外観劣化や静電破壊の恐れがなく、信頼性の高い光ディスク装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…光ディスク装置、
2…筐体(シャーシ)、
2a…上部筐体部(トップケース)、
2b…下部筐体部(ボトムシャーシ)、
3…トレイ、
4…載置面、
5…スピンドルモータ、
6…光ピックアップ、
7…ボトムカバー、
8…レール、
9…レールガイド、
10…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクが載置されたトレイを筐体に収納して該光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、
前記筐体に対し前記トレイを出入自在に保持するレールと、
該レールを移動可能に保持するために前記筐体のボトムシャーシに取り付けたレールガイドを備え、
該レールガイドは前記レールの走行方向に直交する断面が略コの字形状であり、前記レールと当接する底面の一部に凸部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記凸部は、前記レールガイドのうち前記筐体の前面側端部領域に形成され、
前記トレイが前記筐体から引き出されたときに前記レールが前記レールガイドの凸部に乗り上げることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスク装置において、
前記凸部は、前記レールが乗り上げる方向を緩やかな斜面形状としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光ディスク装置において、
前記レールが前記レールガイドの凸部に乗り上げる区間は、前記トレイが前記筐体から引き出される過程よりも前記トレイが前記筐体に収納される過程の方が長いことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスクが載置されたトレイを筐体に収納して該光ディスクに情報を記録再生する光ディスク装置において、
前記筐体に対し前記トレイを出入自在に保持するレールと、
該レールを移動可能に保持するために前記筐体のボトムシャーシに取り付けたレールガイドを備え、
該レールガイドの前記レールとの当接面には、前記トレイが変形したとき、該トレイの底面に取り付けたボトムカバーが前記筐体のボトムシャーシに接触して傷付くことを防止するための凸部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164386(P2012−164386A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23923(P2011−23923)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】