説明

光ディスク

【課題】レーベル面にインクによって着色印刷された画像の見た目の色彩を一定に維持することができる光ディスクを提供する。
【解決手段】光ディスク10は、レーベル面Aにインクによって着色印刷可能なプリンタブル層16と、プリンタブル層16の内側に設けられた可視光反射層15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーベル面の色彩を安定化させた光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
多数枚のCDやDVD等の光ディスクに対して音声や映像などの電子データの記録を行うとともにレーベル印刷を行うメディア処理装置が知られている。このようなメディア処理装置は、メディア(光ディスク)へレーザ光によって電子データを記録する光ディスクドライブ装置のほか、レーベル面にタイトルやデザイン等を印刷するインクジェットプリンタ等を備えている。
【0003】
上記メディア処理装置等により、レーベル面にインクジェット印刷が可能な光ディスクは、レーベル面にインクによって着色印刷可能なプリンタブル層を備えている必要がある。このプリンタブル層を備えた光ディスクは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された可視光情報媒体(光ディスク)は、透可視光性基板上に記録部分を保護する保護層を備え、レーザ光により可視光学的に読み取り可能な情報を記録でき、前記透可視光性基板の再生可視光が入射する側の裏面に水性の印刷用インクが定着可能な親水性紫外線硬化性樹脂膜(プリンタブル層)が形成され、このプリンタブル層の表面にインクジェットプリンタを用いて印刷が可能である。
【特許文献1】特開平8−102088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のメディア処理装置のプリンタにおいて、プリンタブル層を備えた光ディスクのレーベル面に印刷する画像の色彩を一定に保つためには、その色彩を測色器によって測定し、基準となる色彩との比較結果に従って一定かつ最適の色彩(見た目の色彩)を保つように、インクの調合等を制御している。
【0006】
ところが、従来のプリンタブル層を備えた光ディスクに対して、上記測色器による測定を行う際に、光ディスクのデータ記録面やディスクの側面から可視光が入射してレーベル面を透過することにより画像の見た目の色彩が変化してしまう。このため、上記測色器による測定結果が不安定となる。
【0007】
また、既にレーベル印刷された光ディスクをユーザが手に持つなどした場合に、データ記録面やディスクの側面から可視光が入射してレーベル面を透過することにより、レーベル面に印刷された画像の色彩が変化して、ディスク作成者が意図した色彩と異って見えるという問題点がある。
【0008】
本発明の目的は上記問題点を解消することに係り、レーベル面にインクによって着色印刷された画像の見た目の色彩を一定に維持することができる光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明にかかる光ディスクは、レーザ光により光学的に読み取り可能なデータが再生及び/又は記録し得る光ディスクであって、
前記レーザ光が入射するデータ記録面の裏面がレーベル面となっており、
前記レーベル面を形成し、該レーベル面にインクによって印刷可能なプリンタブル層と、
該プリンタブル層の内側に設けられた可視光反射層とを、少なくとも備える。
上記構成によれば、レーベル面から入射してプリンタブル層を通過する可視光は、可視光反射層によって反射され、プリンタブル層を経てレーベル面側へ出射される。また、可視光反射層は、データ記録面側から入射する可視光がプリンタブル層へ透過することを規制する。
これにより、レーベル面側からの可視光のみがレーベル面に作用するので、光ディスクの置かれる環境によって、データ記録面から入射する可視光が変化して、レーベル面にインクによって着色印刷された画像の見た目の色彩が変化してしまうことを防ぐことができるので、前記画像の色彩を一定に維持することができる。
【0010】
また、前記可視光反射層が、プリンタブル層の内側に隣接して形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、プリンタブル層に隣接する可視光反射層は、レーベル面から入射してプリンタブル層を通過する可視光をプリンタブル層の直下で反射し、また、データ記録面側から入射する可視光をプリンタブル層へ透過することをプリンタブル層の直下で規制する。よって、プリンタブル層と可視光反射層との間に他の層が存在しないので、プリンタブル層と可視光反射層との間の層の縁部から入射する可視光が存在せず、より確実に前記画像の色彩を一定に維持することができる。
【0011】
また、前記可視光反射層が、光ディスクを保護する保護層を介して形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、プリンタブル層の直下に保護層が形成されるので、レーベル面側から受ける物理的又は機械的障害に対して、効率よく前記可視光反射層を保護することができる。
【0012】
また、前記光ディスクは、前記レーベル面側においてクランプ孔からレーベル印刷可能領域の内周縁にいたるクランピング領域と、レーベル印刷可能領域の外周縁から光ディスクの外周縁に至る透明なディスク縁部と、を有し、
前記可視光反射層が、前記クランピング領域に隣接する前記プリンタブル層の内側縁部の側面、および、前記ディスク縁部に隣接する前記プリンタブル層の外側縁部の側面を覆うように形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、さらに、プリンタブル層の縁部の側面を透過して外部からプリンタブル層へ可視光が入射することを防ぐと共に、前記縁部の側面から可視光が外部へ漏れ出ることも防ぐことができる。従って、プリンタブル層に印刷された画像の見た目の色彩が変化防止の効果を、さらに上げることができる。
【0013】
また、前記可視光反射層の材質が酸化マグネシウムまたは硫酸バリウムであることが好ましい。このような素材を用いて形成することにより、反射率が高い可視光反射層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る光ディスクの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る光ディスクをレーベル面側から見た平面図である。
【0015】
本実施の形態に係る光ディスクは、図1に示すように、タイトルやデザイン等を印刷するレーベル面Aに対してインクによる印刷が可能なCDやDVDなどの円盤状の光ディスク10である。この光ディスク10は、後述するように、レーベル面Aにインクによって印刷可能なプリンタブル層16と、プリンタブル層16の内側に設けられた可視光反射層15とを、少なくとも備えている(図2〜図4参照)。なお、レーベル面Aへの印刷はメディア処理装置や単体のインクジェットプリンタ等によって行うことができる。
【0016】
図1において、光ディスク10は、中心に設けられた孔は、光ディスク駆動装置のスピンドルのクランパーでクランプするためのクランプ孔19であり、このクランプ孔19周辺は、透明基板11のみで形成されたクランピング領域20となっている。
【0017】
また、クランピング領域20の外側のレーベル面A側は印刷可能領域21となっている。この印刷可能領域21の外周のディスク縁部22は、クランピング領域20と同様に、透明基板11で形成された領域となっている。
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る光ディスクの断面構造について、実施例1〜3を挙げて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例1の構造を示す断面図である。
実施例1に係る光ディスク10Aは、例えば、記録層が1層のCD等の光ディスクであり、その印刷可能領域21における断面構造は、図2の断面図に示すように、透明基板11の片面(図2では上面)にデータデータ記録層12、レーザ反射層13、保護層14、可視光反射層15およびプリンタブル層16を順次重ねて形成した構造である。
【0020】
透明基板11はポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ樹脂等からなる。データ記録層12は、有機色素材料を用いレーザ光照射による色素の分解という化学変化を利用してピットを形成したり、金属材料を用いレーザ光照射による加熱での金属材料の相変化(結晶化・非結晶化)により反射率を変化させたりすることで、データが記録される。
【0021】
レーザ反射層13は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金などが用いられる。また、保護層14は、レーベル面A側から受ける物理的又は機械的障害に対して、データを記録するデータ記録層12を保護する層であり、耐衝撃性に優れた紫外線硬化樹脂等で形成され、光ディスク全体の反りの防止と強度の向上をも図っている。なお、この保護層14は、材質の異なる複数の層が積層されて形成された層であってもよい。
【0022】
可視光反射層15は、酸化マグネシウムまたは硫酸バリウムの膜からなり、レーベル面Aからプリンタブル層16を透過して入射した可視光を、図2の矢印方向に高い反射率でレーベル面A側へ反射するように機能する。
【0023】
プリンタブル層16は、紫外線硬化性樹脂膜等からなり、このプリンタブル層16の表面が印刷可能領域21となる。この印刷可能領域21は、インクジェットプリンタなどからのインクの吐出により画像印刷が可能な領域であり、レーベル面Aにタイトルやデザイン等を印刷することができる。
【0024】
光ディスク10(10A)のレーベル面Aの裏面はデータの記録(又はデータの読み出し)を行うデータ記録面Bとなっており、このデータ記録面Bからレーザ光を透明基板11を通してデータ記録層12に照射することで、データをピット列や相変化に変えて記録したり、照射したレーザ光の反射可視光からデータ記録層12に記録されたデータの読み出しを行うことができる。このときレーザ反射層13はデータ記録時のデータ記録層12におけるレーザ光の吸収率を高め、あるいは、データ読み出し時のレーザ光の反射率を高める。
【0025】
本実施例1では、上述のように、プリンタブル層16の直下に隣接して、可視光反射層15を設けているため、レーベル面Aからプリンタブル層16を透過して入射した可視光を可視光反射層15によって高い反射率でレーベル面A側へ反射する。
【0026】
また、反対側のデータ記録面Bや側面からディスク10A内に侵入する可視光に対しては、データ記録面B側へ反射するので、プリンタブル層16へほとんど透過することがない。これにより、データ記録面Bやディスクの側面から入射した可視光によって、プリンタブル層16に印刷された画像の見た目の色彩が変化することを防ぐことができる。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例2の構造を示す断面図である。なお、図2に示した実施例1と同一の構成部分には同一符号を付して、その重複説明を省略する。
【0028】
実施例2に係る光ディスク10Bの印刷可能領域21における断面構造は、図2の断面図に示すように、透明基板11の片面(図2では上面)にデータ記録層12、レーザ反射層13、可視光反射層15、保護層14およびプリンタブル層16を順次重ねて形成した構造である。
【0029】
実施例2では、保護層14を可視光反射層15とプリンタブル層16との間に形成した以外は実施例1と同様の構造である。
【0030】
本実施例2においても、プリンタブル層16から入射した可視光を、可視光反射層15にてプリンタブル層16側へ高い反射率で反射させることができる。従って、この場合にも、データ記録面Bやディスクの側面から入射した可視光によって、プリンタブル層16に印刷された画像の見た目の色彩が変化することを防ぐことができる。
また、プリンタブル層の直下に保護層が形成されるので、レーベル面側から受ける物理的又は機械的障害に対して、効率よく前記可視光反射層を保護することができる。
【実施例3】
【0031】
図4は、本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例3の構造を示す断面図である。なお、図2に示した実施例1と同一の構成部分には同一符号を付して、その重複説明を省略する。
【0032】
実施例3に係る光ディスク10Cの印刷可能領域21における断面構造は、透明基板11の片面(図4では上面)にデータ記録層12、レーザ反射層13、保護層14、可視光反射層15およびプリンタブル層16を順次重ねて形成した構造である。
【0033】
そして、レーベル印刷可能領域21の内側縁部21Aおよび外側縁部21Bでは、図4に示すように、可視光反射層15が光ディスク10Cのレーベル面Aの表面まで形成され、プリンタブル層16の縁部(クランピング領域20側のプリンタブル層16の縁部、およびディスク縁部22側のプリンタブル層16の縁部)の側面を覆うように形成される。
【0034】
この構造により、実施例1と同様の効果に加えて、さらに、プリンタブル層16の縁部の側面を透過して外部からプリンタブル層16へ可視光が入射することを防ぐと共に、プリンタブル層16の縁部の側面から可視光が外部へ漏れ出ることも防ぐことができる。従って、プリンタブル層16に印刷された画像の見た目の色彩が変化することを防止する効果を、さらに上げることができる。
【0035】
なお、上述の実施例1〜3における光ディスク10A、10B、10Cの積層構造は、記録層が1層のCD等の光ディスクの構造を例に挙げて説明したが、本発明の特徴であるレーベル面Aにインクによって印刷可能なプリンタブル層16と、該プリンタブル層16の内側に設けられた可視光反射層15とを備えていれば他の積層構造のものでもよい。例えば、記録層が2層以上の多層構造の光ディスクなどでもよく、さらにDVD、次世代光ディスクなどにおける追記型、繰り返し記録型等の各種規格の光ディスクに適用することができる。
【0036】
以上、説明したように本発明の実施の形態に係る光ディスク10(10A,10B,10C)は、レーベル面Aにインクによって着色印刷可能なプリンタブル層16と、プリンタブル層16の内側に設けられた可視光反射層15とを備えることで、レーベル面Aから入射してプリンタブル層16を通過する可視光は、可視光反射層15によって反射され、プリンタブル層16を経てレーベル面A側へ出射される。また、可視光反射層15は、データ記録面B側から入射する可視光がプリンタブル層16へ透過することを規制する。
これにより、レーベル面A側からの可視光のみがレーベル面Aに作用するので、光ディスク10(10A,10B,10C)の置かれる環境によって、データ記録面Bから入射する可視光が変化して、レーベル面Aにインクによって着色印刷された画像の見た目の色彩が変化することを防ぐことができるので、前記画像の色彩を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ディスクを示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例1の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例2の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光ディスクの実施例3の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10(10A,10B,10C)…光ディスク、11…透明基板、12…データ記録層、13…レーザ反射層、14…保護層、15…可視光反射層、16…プリンタブル層、19…クランプ孔、20…クランピング領域、21…印刷可能領域、21A…(レーベル印刷可能領域21の)内側縁部、21B…(レーベル印刷可能領域21の)外側縁部、22…ディスク縁部、A…レーベル面、B…データ記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光により光学的に読み取り可能なデータが再生及び/又は記録し得る光ディスクであって、
前記レーザ光が入射するデータ記録面の裏面がレーベル面となっており、
前記レーベル面を形成し、該レーベル面にインクによって印刷可能なプリンタブル層と、
該プリンタブル層の内側に設けられた可視光反射層とを、少なくとも備えることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
前記可視光反射層が、プリンタブル層の内側に隣接して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
前記可視光反射層が、光ディスクを保護する保護層を介して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク。
【請求項4】
前記光ディスクは、前記レーベル面側においてクランプ孔からレーベル印刷可能領域の内周縁にいたるクランピング領域と、レーベル印刷可能領域の外周縁から光ディスクの外周縁に至る透明なディスク縁部と、を有し、
前記可視光反射層が、前記クランピング領域に隣接する前記プリンタブル層の内側縁部の側面、および、前記ディスク縁部に隣接する前記プリンタブル層の外側縁部の側面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光ディスク。
【請求項5】
前記可視光反射層の材質が酸化マグネシウムまたは硫酸バリウムであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−181620(P2009−181620A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18651(P2008−18651)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】