説明

光デバイスおよびその製造方法

【課題】 信頼性の高い光デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 光デバイスは、第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアと、前記キャリアの第1領域に搭載された光学部品と、上部に前記キャリアを搭載する温度制御装置と、を備える。光デバイスの製造方法は、 第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアを準備する第1工程と、第1工程後に、前記キャリアを温度制御装置上に搭載する第2工程と、第2工程後に、前記キャリアの第1領域に第1光部品を搭載する第3工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光デバイスは、その信頼性を向上することが求められている。光デバイスは、温度制御装置によって各光学部品の温度を制御している。これにより、光学部品の光特性の安定化が図られる。温度制御装置を内蔵する光デバイスは、たとえば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−101700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度制御装置は、複数のペルチェ素子を上板と下板とで挟んだ構造を備えており、機械的強度が比較的低い。光デバイスの信頼性を確保するためには、温度制御装置にかかる歪を低減することが必要である。
【0005】
本発明は、信頼性の高い光デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光デバイスは、第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアと、前記キャリアの第1領域に搭載された光学部品と、上部に前記キャリアを搭載する温度制御装置と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る光デバイスによれば、第2領域が第1領域よりも大きい厚みを有することから、第2領域の剛性が確保される。それにより、光デバイスの信頼性が向上する。
【0007】
前記キャリアは、前記第1領域とは別の部品搭載領域となる第3領域をさらに備え、前記第3領域に第2光部品が搭載されていてもよい。前記第1光学部品は、光アイソレータとしてもよい。前記第2光学部品は、半導体レーザとしてもよい。前記温度制御装置は、上板と下板との間に複数のペルチェ素子を挟んだ構造を有していてもよい。
【0008】
本発明に係る光デバイスの製造方法は、第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアを準備する第1工程と、第1工程後に、前記キャリアを温度制御装置上に搭載する第2工程と、第2工程後に、前記キャリアの第1領域に第1光部品を搭載する第3工程と、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る光デバイスの製造方法によれば、第2領域が第1領域よりも大きい厚みを有することから、第2領域の剛性が確保される。それにより、光デバイスの信頼性が向上する。
【0009】
前記キャリアは、前記第1領域とは別の部品搭載領域となる第3領域をさらに備え、前記第3領域に第2光部品を搭載した後、前記第2工程を実施してもよい。前記第1光学部品は、光アイソレータとしてもよい。前記第2工程は、ロウ付けによって前記キャリアを前記温度制御装置上に搭載する工程であり、前記第3工程は、レーザ溶接によって前記キャリアの第1領域に前記第1光部品を搭載する工程であってもよい。前記第2光学部品は、半導体レーザとしてもよい。前記温度制御装置は、上板と下板との間に複数のペルチェ素子を挟んだ構造を有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度制御装置にかかる歪が低減できるため、信頼性の高い光デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】比較例に係る光デバイスを説明するための図である。
【図2】発明の実施形態に係る光デバイスを説明するための図である。
【図3】発明の実施形態に係るキャリアを説明するための図である。
【図4】発明の実施形態に係るキャリアを説明するための図である。
【図5】発明の実施形態に係る組み立て工程を説明するための図である。
【図6】発明の実施形態に係る組み立て工程を説明するための図である。
【図7】発明の実施形態に係る組み立て工程を説明するための図である。
【図8】他の形態のキャリアを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。まず、本発明に関する比較例を説明する。
(比較例)
【0013】
図1は、比較例に係る光デバイスの一例である光デバイス200を示す図である。光デバイス200は、パッケージ10およびキャップ11によって閉じられた空間内に、温度制御装置20、キャリア30、光アイソレータ40、レンズ41、サブキャリア42、および半導体レーザ50を備える。図1は、パッケージ10を透過して、温度制御装置20、キャリア30、光アイソレータ40、レンズ41、サブキャリア42、および半導体レーザ50を示している。
【0014】
温度制御装置20は、上板20aと下板20cとで複数のペルチェ素子20bを挟んだ構成を有する。キャリア30は、温度制御装置20上に配置されている。光アイソレータ40、レンズ41およびサブキャリア42は、キャリア30上に配置されている。半導体レーザ50は、サブキャリア42上に配置されている。半導体レーザ50、レンズ41、および光アイソレータ40は、半導体レーザ50の出力光がこの順で通過するように配置されている。また、パッケージ10において、光アイソレータ40からの光が出力される部位に、ガラス等の透明部材を有するフォルダ60が設けられている。
【0015】
図1を参照して、比較例にかかるキャリア30における、光出力方向の端部は光アイソレータ40が搭載される領域の厚さと同じである。このため、キャリア30の当該端部の剛性は比較的小さく、ストレスが掛かった場合、反りやすい。キャリア30の反りは、温度制御装置20にかかる歪を大きくするという問題がある。
(実施の形態)
【0016】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図2は、実施の形態に係る光デバイス100について説明するための図である。図2において図1と同じ部位には同じ符号を付与しており、その説明を省略する。図2は、パッケージ10を透過して、温度制御装置20、キャリア30、光アイソレータ40、レンズ41、サブキャリア42、および半導体レーザ50を示している。光デバイス100が図1の光デバイス200と異なる点は、キャリア30の形状である。図3および図4は、図2におけるキャリア30を拡大して説明する図である。図3はキャリア30の斜視図、図4はキャリア30の側面図である。
【0017】
キャリア30の本体は、たとえば鉄ニッケルコバルト合金(KOVAR)で構成されている。キャリア30は、第1領域32、第2領域31、第3領域33に分けられる。第1領域32は、第1光部品として、光アイソレータ40が搭載される領域である。第2領域31は、第1領域32よりも厚みが大きい領域である。第2領域31は、第1領域32とキャリア30における光出力方向の端部との間に位置しており、部品が搭載されない部品非搭載領域である。第3領域33は、第2光学部品として、本実施の形態ではレンズ41とサブキャリア42上に搭載された半導体レーザ50とが搭載される領域である。
【0018】
以上のように、本実施の形態による光デバイス100では、キャリア30に第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域32と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域31が設けられている。
【0019】
キャリア30の厚みは、そこに搭載される光部品の光軸の高さ方向を所定の目標に合わせることを考慮して決定される。したがって、第1領域32の厚みの設計自由度は低く、比較的薄くなってしまう。一方、本実施の形態では、第1領域32よりも大きな厚みを有する第2領域31を設けたため、キャリア30の端部における剛性が確保される。
【0020】
この第2領域31は、部品が搭載されない部品非搭載領域であるため、その表面高さの制御を行う必要はなく、通常は図1で説明した比較例のように、第1領域32と同じ厚さとされる部分である。本実施の形態によれば、キャリア30の端部である第2領域31の剛性が向上することから、キャリア30の反りが抑制されて、温度制御装置20にかかる歪を低減できるという効果を奏することができる。
【0021】
つぎに、本実施の形態に係る光デバイス100の製造工程について説明する。図5〜7は、本実施の形態に係る光デバイス100の製造工程を説明する図であり、図における番号は、図2〜4と同じものを付与している。
【0022】
図5を参照して、まず、キャリア30に光部品を実装する。ここでは、光部品として、レンズ41と、半導体レーザ50を搭載したサブキャリア42とが実装される。実装の際には、YAGレーザなどを用いたレーザ溶接あるいはロウ付けが採用される。この状態では、光アイソレータ40は実装されない。これは続く温度制御装置20へのキャリア30の実装工程における熱で、光アイソレータ40が損傷することを防止するためである。
【0023】
図6を参照して、パッケージ10内に温度制御装置20を実装した後、前記組み立てられたキャリア30を実装する。この実装には、温度制御装置20とキャリア30との間の熱伝導を良好にするために、ロウ付けが採用される。ロウ材としては、たとえばSnAgCu系材料を使用できる。ロウ付けの作業温度は、ロウ材の融点より高い温度であり、例えば230℃程度である。この時点では、光アイソレータ40はキャリア30上に搭載されていないため、比較的熱に弱い光アイソレータ40の損傷が防止できる。
【0024】
つぎに、図7を参照して、キャリア30に光アイソレータ40を実装する。この実装にはたとえばYAGレーザを使用したレーザ溶接が使用される。このレーザ溶接は、キャリア30と光アイソレータ40との境界にレーザを照射することで実施される。レーザ溶接においては局所的に温度上昇が生じるだけなので、光アイソレータ40の熱的損傷は回避できる。ただし、レーザ溶接を実施することで、キャリア30にはストレスが生じてしまう。
【0025】
比較例に示した構造のキャリア30では、このストレスに起因して、キャリア30が反ってしまう。キャリア30と温度制御装置20とは、前記したようにロウ付けされていることから、キャリア30の反りによって、温度制御装置20の上板20aも反ってしまう。これにより、温度制御装置20に大きなストレスが生じて、信頼性が低下してしまうほか、最悪の場合は、温度制御装置20を構成するペルチェ素子が上板から剥れて破壊されてしまう。
【0026】
一方、本実施の形態では、キャリア30に第2領域31として厚い領域を備えていることから、キャリア30の端部における剛性が向上している。このため、キャリア30の反りを抑制することができ、温度制御装置20の信頼性低下あるいは破壊が防止できる。以上の工程の後、パッケージ10をキャップ11で封止することで、図2に示す光デバイス100が完成する。
【0027】
なお、光アイソレータ40のレーザ溶接の際に、互いに対向する両端にレーザを照射する場合、キャリア30において当該レーザが照射される両端を結ぶ方向においてストレスが特に大きくなる。一方で、第2領域31は、長手方向において高い剛性を発揮する。したがって、光アイソレータ40のレーザ溶接の際に、光アイソレータ40において第2領域31の長手方向の両端にレーザを照射すれば、第2領域31の剛性を有効に活用することができる。
【0028】
図1に示した比較例と、図2に示した本実施の形態とで、キャリア30の反りの相違を調査した。本実施の形態については、上記した組み立て工程を経て完成したものであり、比較例については、上記した組み立て工程を踏襲し、キャリア30についてのみ、比較例に示した構造を採用している点で異なっている。
【0029】
本実施の形態に係るキャリア30の端部(第2領域31)の厚みは1000μm、光アイソレータ40の搭載領域(第1領域32)の厚みは500μmとした。また、比較例のキャリア30の端部(光アイソレータ40の搭載領域含む)の厚みは500μmとした。比較例および本実施の形態のいずれのキャリア30も、本体材料は同じ鉄・ニッケル・コバルト合金(KOVAR)を採用している。YAGレーザの照射条件は、本実施の形態および比較例ともに、パワー6.0J、照射時間2.0msであった。
【0030】
調査の結果、比較例では、溶接前と比べて、光アイソレータ40の搭載領域を中心として、平均で10μm程度の変形(反り)を生じていた。一方、本実施の形態では、溶接前と比べて、平均で4μm程度の変形しか生じていないことが確認できた。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限るものではなく、種々の変更をなし得る。キャリア30の第2領域31の厚みは、キャリアの端部において必要とされる剛性を確保できる範囲で任意に決定することができる。たとえば、前記した例では、キャリア30の第2領域31の厚みは、第1領域32の2倍の厚みであったが、そのほか、たとえば、第1領域32の1.5倍〜3倍程度であっても構わない。
【0032】
また、第2領域31の存在により光軸が遮られる場合には、第2領域31に切欠部を設けてもよい。図8は、キャリア30の他の例について説明する図であり、図3と同じ部位には同じ番号を付している。図8に示すキャリア30は、第2領域31が第3領域33よりも厚い形態を有している。図8に示すように、切欠部34を備えていることにより、第2領域31によって光軸が遮られることが防止できる。
【0033】
また、キャリア30の第1領域32に搭載される光部品、あるいはキャリア30の第3領域33に搭載される光部品としては、たとえばレンズ、エタロン、回折格子、受光素子などであってもよい。
【0034】
また、上記実施の形態のキャリア30の第3領域33は第1領域よりも厚みが大きいが、これは搭載する光部品の光軸やその他の設計的必要性から任意に決定することができる。たとえば、第1領域32と同じか、あるいは小さい厚みであっても構わない。なお、第3領域33の厚みが第1領域と同じか小さい厚みである場合には、第3領域33側の端部の剛性が小さいことが懸念となることが考えられる。この場合、第2領域31と同様に、第3領域33よりも大きな厚みを有する部位を部品非搭載領域として設けても良い。さらに、キャリア30の第3領域33は、第2光部品を搭載するための領域であるため、必要なければこれを設けない構造であっても構わない。
【0035】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 パッケージ
11 キャップ
20 温度制御装置
20a 上板
20b ペルチェ素子
20c 下板
30 キャリア
31 第2領域
32 第1領域
33 第3領域
40 光アイソレータ
41 レンズ
42 サブキャリア
50 半導体レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアと、
前記キャリアの第1領域に搭載された光学部品と、
上部に前記キャリアを搭載する温度制御装置と、を備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記キャリアは、前記第1領域とは別の部品搭載領域となる第3領域をさらに備え、前記第3領域に第2光部品が搭載されてなることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1光学部品は、光アイソレータであることを特徴とする請求項1または2記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第2光学部品は、半導体レーザであることを特徴とする請求項2記載の光デバイス。
【請求項5】
前記温度制御装置は、上板と下板との間に複数のペルチェ素子を挟んだ構造を有することを特徴とする請求項1ないし4記載の光デバイス。
【請求項6】
第1の厚みを有し部品搭載領域となる第1領域と、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有し、そこから端部までの間は部品が搭載されない部品非搭載領域となる第2領域とを備えるキャリアを準備する第1工程と、
第1工程後に、前記キャリアを温度制御装置上に搭載する第2工程と、
第2工程後に、前記キャリアの第1領域に第1光部品を搭載する第3工程と、を含むことを特徴とする光デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記キャリアは、前記第1領域とは別の部品搭載領域となる第3領域をさらに備え、前記第3領域に第2光部品を搭載した後、前記第2工程を実施することを特徴とする請求項6記載の光デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第1光学部品は、光アイソレータであることを特徴とする請求項6または7記載の光デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程は、ロウ付けによって前記キャリアを前記温度制御装置上に搭載する工程であり、
前記第3工程は、レーザ溶接によって前記キャリアの第1領域に前記第1光部品を搭載する工程であることを特徴とする請求項6,7または8記載の光デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第2光学部品は、半導体レーザであることを特徴とする請求項7記載の光デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記温度制御装置は、上板と下板との間に複数のペルチェ素子を挟んだ構造を有することを特徴とする請求項6ないし10記載の光デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−33582(P2012−33582A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169867(P2010−169867)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】