説明

光データ伝送装置、光データ伝送方法及び光通信装置

【課題】双方の光データ伝送装置が共に送信優先モードに設定されるような誤った設定がなされた場合であっても、確実に送受信できる光データ伝送装置を提供する。
【解決手段】送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信部5と、パルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信部6とを備えて半二重通信する光データ伝送装置1であって、他の制御装置100との間でデータを送受信する必要がある制御装置300に接続され、当該制御装置300から入力される通信許可信号により前記送信部5から送信を開始し、前記送信部5から出力した光信号に対する応答が前記受信部6で確認されない場合に、所定の再送時間間隔で前記送信部から光信号を出力する再送処理を繰り返す再送制御部7を備え、送信開始後、前記再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信部と、パルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信部とを備えて半二重通信する光データ伝送装置、光データ伝送方法及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造設備では、各製造装置間で半導体ウェハを自動搬送するために、各製造装置に設けられたロードポート上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置を搬送する搬送台車が用いられている。
【0003】
このような搬送台車と製造装置には光データ伝送装置が組み込まれ、光データ伝送装置を介して授受される制御情報に基づいて、搬送台車と製造装置間でウェハキャリア装置が移載される。つまり、各製造装置が固定設備となり、搬送台車が移動設備となる。
【0004】
特許文献1に記載されているように、光データ伝送装置は、ビット情報が予め設定された二種類の周期と二種類のパルス数とを組み合わせたパルス信号列に変調されるとともに、任意のビット数で構成されビット間に所定幅のヌル期間が設定された十数msec.のフレームデータを、発光素子と受光素子を介して送受信するように構成されている。
【0005】
光データ伝送装置は、自装置側の送信部から出力された光信号が迷光として自装置側の受信部に受信される誤受信を回避するために、自装置側の送信部から光信号が出力される間は自装置側の受信部で光信号の受信が禁止されているため、相手側の光データ伝送装置との間で全二重通信を行なえず、半二重通信するように構成されている。
【0006】
当該光データ伝送装置は、相手側の光データ伝送装置からの光信号を受信部で受信すると、それに応答して送信部から相手側の光データ伝送装置に光信号を送信する受信待機モードと、相手側の光データ伝送装置からの光信号を受信部で受信する前に、自装置側の送信部から相手側の光データ伝送装置に光信号を送信する送信優先モードの何れかにモードを設定するモード設定部が設けられている。
【0007】
送信優先モードに設定された光データ伝送装置は、外部から通信許可信号が入力されると、相手側の光データ伝送装置に対して送信部から光信号を出力し、相手側の光データ伝送装置が応答して出力した光信号を受信部で受信することにより、ハンドシェークが成立し、以後双方で半二重通信が行なわれる。
【0008】
受信待機モードに設定された光データ伝送装置は、外部から通信許可信号が入力されると、相手側の光データ伝送装置から出力される光信号を受信部で受信するまで待機し、当該光信号を受信すると、これに応答して相手側の光データ伝送装置に対して送信部から光信号を出力することにより、ハンドシェークが成立し、以後双方で半二重通信が行なわれる。
【0009】
また、各光データ伝送装置には、相手側の光データ伝送装置に対して送信部から光信号を出力し、相手側の光データ伝送装置が応答して出力した光信号を受信部で受信する迄の間は、所定の再送時間間隔で送信部から光信号を出力する再送処理を繰り返す再送制御部を備えている。そして、再送制御部は、光データ伝送装置が送信優先モードに設定された場合にのみ作動するように構成されている。
【0010】
一対の光データ伝送装置で半二重通信する場合、一方の光データ伝送装置が送信優先モードに設定され、他方の光データ伝送装置が受信待機モードに設定される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4372830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、双方の光データ伝送装置が共に送信優先モードに設定されるような誤った設定がなされ、双方の光データ伝送装置に通信許可信号が入力され、ほぼ同時に送信がなされるような場合には、双方の再送制御部がほぼ同時に作動して、同じ再送時間間隔で同期して光信号が出力される状態になり、通信不良状態が継続するという問題があった。
【0013】
このような場合に、数多くの固定設備及び移動設備に設置された数多くの光データ伝送装置の一方側の光データ伝送装置に対して、モード設定部によるモード設定を送信優先モードから受信待機モードに変更する必要があるが、非常に煩雑で時間を要する作業となっていた。
【0014】
本発明の目的は、上述した従来の問題に鑑み、双方の光データ伝送装置が共に送信優先モードに設定されるような誤った設定がなされた場合であっても、確実に送受信できる光データ伝送装置及び光通信装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的達成をするため、本発明による光データ伝送装置の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信部と、パルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信部とを備えて半二重通信する光データ伝送装置であって、所定の制御装置に接続され、当該制御装置から入力される通信許可信号により前記送信部から送信を開始し、前記送信部から出力した光信号に対する応答が前記受信部で確認されない場合に、所定の再送時間間隔で前記送信部から光信号を出力する再送処理を繰り返す再送制御部を備え、送信開始後、前記再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されている点にある。
【0016】
光データ伝送装置が制御装置から入力される通信許可信号により送信を開始して、その応答が受信部で確認されない場合に、送信部から光信号を再送出力することになる。再送出力しても、相手側の光データ伝送装置による再送処理とタイミングが重なれば、当該再送処理が繰り返されることになる。このような場合でも、上述の構成によれば、送信開始後、再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されているので、所定回数に達した後の再送処理で相手側の再送処理とタイミングがずれることになり、受信部で応答を確認できる機会が確保できるようになり、確実にハンドシェークできるようになる。
【0017】
本発明による光通信装置の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、少なくとも上述の光データ伝送装置を一対備えて構成されている点にある。
【0018】
本発明による光データ伝送方法の特徴構成は、動請求項3に記載した通り、送信部により送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信処理と、受信部によりパルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信処理を実行することにより半二重通信する光データ伝送方法であって、所定の制御装置から通信許可信号が入力されると前記送信処理を開始し、前記送信処理で送信した光信号に対する応答が前記受信処理で確認されない場合に、再送制御部により所定の再送時間間隔で前記送信処理を繰り返す再送制御処理を実行するように構成され、前記再送制御処理は、前記送信処理の開始後、前記再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されている点にある。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、双方の光データ伝送装置が共に送信優先モードに設定されるような誤った設定がなされた場合であっても、確実に送受信できる光データ伝送装置光データ伝送方法及び光通信装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体デバイスの製造設備における製造装置,ウェハキャリア装置,搬送台車の概略斜視図
【図2】光データ伝送装置の要部の回路図
【図3】(a)は変調されたビット情報で構成されるフレームデータの説明図、(b)は変調されたビット情報のパルス周期とパルス数の説明図
【図4】半二重通信が確立するまでのシーケンスを示すタイムチャート
【図5】半二重通信が確立できない通信不良状態を示すタイムチャート
【図6】本発明による再送処理を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による光データ伝送装置光データ伝送方法及び光通信装置の実施形態を説明する。
【0022】
図1に示すように、半導体デバイスの製造設備では、半導体ウェハに順次所定の処理を施すための固定設備としての各種の製造装置10(10a,10b,10c,10d)が通路13に沿って配設され、製造装置10間で半導体ウェハ21を自動搬送するために、製造装置10に設けられたロードポート11との間でウェハキャリア装置20を受け渡し搬送する移動設備としての搬送台車30が走行レール12に沿って走行可能に設けられている。
【0023】
搬送台車30は、製造装置10の上部空間に設置された走行レール12に沿って自走する走行機構32を備えた基台31に、ウェハキャリア装置20を掴持するためのチャック機構36を備えた昇降体35を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構33が組み込まれている。
【0024】
昇降機構33は、昇降体35と、昇降体35の上面の所定の箇所に一端が固着された複数のベルト34と、基台31にベルト34の夫々の他端が固着された巻取軸を回転駆動する昇降用モータを備え、昇降用モータの駆動によりベルト34が巻き上げまたは繰り出され、昇降体35が昇降可能に構成されている。
【0025】
チャック機構36は、ウェハキャリア装置20の上面の被掴持部を掴持するための一対の爪37を備え、昇降体34内部に備えた掴持用ソレノイドまたはモータの駆動により、爪37が掴持姿勢または開放姿勢となることでウェハキャリア装置20を掴持又は開放するように構成されている。
【0026】
このような搬送台車30は、例えば、走行レール12に組み込まれた通信インタフェースを介してホストコンピュータと通信可能なシステム通信部を備え、ホストコンピュータからの指示に基づいて、所定の製造装置10に走行し、当該製造装置10との間でウェハキャリア装置20を授受するように構成されている。
【0027】
また、搬送台車30と各製造装置10との間でウェハキャリア装置20を授受するために、双方に光データ伝送装置1が組み込まれている。当該光データ伝送装置1は、SEMI E84−0200Aインタフェース規格等に基づき動作する。
【0028】
搬送台車30には、システム通信部を介してホストコンピュータからの指令に基づいて所定の製造装置10に移動するために走行機構32を制御し、光データ伝送装置1を介した製造装置10との送受信データに基づいて昇降機構33及びチャック機構36等を制御する制御装置が搭載されている。
【0029】
図2に示すように、光データ伝送装置1には、所定のフレームデータを、発光素子と受光素子を介して送受信するマイクロコンピュータ1a,1bが組み込まれている。
【0030】
搬送台車30側のマイクロコンピュータ1aは、搬送台車30側の制御装置300との間でデータの送受信を行なう複数の入出力信号線301,302と、光データ伝送装置1による通信を許可する通信許可信号線303が接続されている。
【0031】
製造装置10側のマイクロコンピュータ1bは、製造装置10側の制御装置100との間でデータの送受信を行なう複数の入出力信号線101,102と、光データ伝送装置1による通信を許可する通信許可信号線103が接続されている。
【0032】
搬送台車30側のマイクロコンピュータ1aと、製造装置10側のマイクロコンピュータ1bには、それぞれ近赤外領域の波長で発光する発光ダイオード2a,2bと、発光ダイオード2a,2bから出力された信号光を受光するフォトダイオード3a,3bが接続されている。つまり、発光ダイオード2aとフォトダイオード3a、及び、発光ダイオード2bとフォトダイオード3bの組合せにより、データの送受信が行なわれる。
【0033】
フォトダイオード3a,3bにより検出された信号光は、二値化処理部であるコンパレータ4a、4bを介して二値化されてパルス信号に波形整形され、マイクロコンピュータ1a,1bの割込み信号ポートに入力されるように構成されている。
【0034】
また、マイクロコンピュータ1a,1bの出力ポートにはスイッチング用のトランジスタのベース端子が接続され、出力ポートから出力されるパルス信号により発光ダイオード2a,2bが駆動されるように構成されている。
【0035】
それぞれのマイクロコンピュータ1a,1bは、制御装置300,100から入力信号線301,101を介して入力された所定ビット数(例えば8ビット)の送信信号を送信用のフレームデータに変調して、発光ダイオード2a,2bを介して光信号を出力する送信部5と、フォトダイオード3a,3bを介して受信された光信号からフレームデータを再生し、所定ビット数の受信信号に復調して、出力信号線302,102を介して制御装置300,100に出力する受信部6を備えている。
【0036】
図3(a)に示すように、送信部5で変調されるフレームデータは、フレームの先頭を示すスタートビットSTAと、複数のデータビットDと、データビットDのパリティを示すパリティビットPと、フレームの終了を示すストップビットSTPで構成されている。
【0037】
図3(b)に示すように、0または1で表される各ビット情報は、75μsec.または105μsec.の二種類のパルス周期と、11パルスまたは6パルスの二種類のパルス数の組合せで定義されている。
【0038】
スタートビットSTAはパルス周期が75μsec.でパルス数が11、ストップビットSTPはパルス周期が105μsec.でパルス数が11、送信信号を構成する各データビットDの0はパルス周期が75μsec.でパルス数が6、データビットDの1はパルス周期が105μsec.でパルス数が6、パリティビットPはパルス周期が75μsec.または105μsec.でパルス数が6に設定されている。
【0039】
さらに、各ビットを構成するパルス出力期間SPの間、即ち、各ビット間には500μsec.のヌル期間NPが設定されている。以後、パルス出力期間SPに検出される一連のパルス信号列をビットグループとも表記する。
【0040】
つまり、各ビット情報が予め設定された任意の周期とパルス数とを組み合わせたパルス信号列に変調されるとともに、ビット間に所定幅のヌル期間が設定されたフレームデータが光データ伝送装置1間で送受信される。
【0041】
受信部6は、フォトダイオードで受信された各ビットグループを構成するパルス信号の周期とパルス数を計測し、当該周期とパルス数が所定の許容範囲(図3(b)の括弧内に示す数値)に収まるときに真のビット情報であると判定する処理を、全ビットグループに対して実行してフレームデータを再生し、適正に再生されたフレームデータからデータビットDを抽出して受信信号を取り出す復調処理を実行する。
【0042】
尚、ビット情報を示す周期とパルス数及びその組合せ、ヌル期間の長さ、フレームデータに含まれるデータビット数はシステムに応じて任意に設定することができ、上述の具体的数値に制限されるものではない。1フレームのフレームデータの送信時間は、制御装置300,100から入力信号線301,101を介して入力された送信信号のビット数に依存するが、通常、数msec.から数十msec.の範囲に設定される。
【0043】
図2に戻り、マイクロコンピュータ1a,1bのそれぞれには、相手側の光データ伝送装置1からの光信号を受信部で受信すると、それに応答して送信部から相手側の光データ伝送装置1に光信号を送信する受信待機モードと、相手側の光データ伝送装置からの光信号を受信部で受信する前に、自装置側の送信部から相手側の光データ伝送装置1に光信号を送信する送信優先モードの何れかにモードを設定するモード設定部8が設けられている。
【0044】
モード設定部8は、設定されたモードをマイクロコンピュータ1a,1bに入力するモード信号線104,304と、モード信号線104,304の論理をハイレベルまたはローレベルに切り替えるスイッチ105,305を備えている。
【0045】
マイクロコンピュータ1a,1bのモード信号線104,304の入力端子は電源電圧にプルアップされており、スイッチ105,305が閉じられるとローレベルの信号が入力され、スイッチ105,305が開けられるとハイレベルの信号が入力される。
【0046】
通常、スイッチ105,305を設けることなく、モード信号線104,304を接地するか否かによってモードが設定される。マイクロコンピュータ1a,1bに入力されるモード信号線104,304の信号レベルがローレベルのときに受信待機モードに設定され、ハイレベルのときに送信優先モードに設定される。そして、通常は、搬送台車30側のマイクロコンピュータ1aが送信優先モードに設定され、製造装置10側のマイクロコンピュータ1bが受信待機モードに設定される。
【0047】
さらに、各光データ伝送装置1には、相手側の光データ伝送装置1に対して送信部5から光信号を出力し、相手側の光データ伝送装置が応答して出力した光信号を受信部6で受信する迄の間は、所定の再送時間間隔T1で送信部から光信号を出力する再送処理を繰り返す再送制御部7を備えている。そして、再送制御部7は、光データ伝送装置1が送信優先モードに設定された場合にのみ作動するように構成されている。
【0048】
搬送台車30に設置された光データ伝送装置1は、製造装置10間の移動中には、制御装置300から通信許可信号線303を介した制御信号により通信が禁止され、目的とする製造装置10の前に到達すると通信許可信号線303を介した制御信号により通信が許可される。
【0049】
目的とする製造装置10に設置された光データ伝送装置1も、搬送台車30が自装置の前に到達すると、通信許可信号線103を介した制御信号により通信が許可される。
【0050】
搬送台車30に設置された光データ伝送装置1は、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に対して光信号を出力し、製造装置10に設置された光データ伝送装置1からの応答光信号が受信部6で受信される迄、再送時間間隔T1で光信号を再送し、製造装置10に設置された光データ伝送装置1からの応答光信号が受信部6で受信されると、その後、半二重通信方式で送受信を開始する。
【0051】
搬送台車30の停止時に双方の光データ伝送装置1の光軸一致した後、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に入力される通信許可信号が遅延し、受信処理が滞った場合であっても、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1から光信号が再送されるため、その後通信許可信号が入力されると製造装置10に設置された光データ伝送装置1は適正に光信号を受信できるようになる。
【0052】
半二重通信方式が採用されるのは、自装置側の送信部5から出力された光信号が迷光として自装置側の受信部6に受信される誤受信を回避するためであり、自装置側の送信部6から光信号が出力される間は自装置側の受信部6では光信号の受信が禁止されている。
【0053】
再送時間間隔T1は、平均的なフレームデータの送信時間、または受信時間に所定のマージンを加算した値であり、例えば、平均的なフレームデータの送信時間Tが30msec.であれば、再送時間間隔T1が40msec.程度に設定される。尚、この値は例示であり、再送時間間隔T1はシステムに応じて適宜設定される値である。
【0054】
図4には、半二重通信が確立するまでのシーケンスが示されている。時刻t1で搬送台車30が停止位置に到達し、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に通信許可信号線103を介した制御信号が入力されて通信が許可されると、製造装置10に設置された光データ伝送装置1は、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1から出力される1フレームの光信号の受信を待つ。
【0055】
その後、双方の光軸が一致し、時刻t2で搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に通信許可信号線303を介した制御信号が入力されて通信が許可されると、製造装置10に設置された光データ伝送装置1は、当該光信号を受信して、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に応答信号を出力する。
【0056】
搬送台車30に設置された光データ伝送装置1が当該応答信号を受信することによりハンドシェークされ、半二重通信が確立する。尚、製造装置10に設置された光データ伝送装置1への通信許可信号が遅延した場合には、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1から、再送時間間隔T1で1フレームの光信号が繰り返し出力される。
【0057】
しかし、図5に示すように、製造装置10に設置された光データ伝送装置1が送信優先モードに設定されるような誤った設定がなされると、時刻t1で製造装置10に設置された光データ伝送装置1から光信号が出力される。
【0058】
その後、時刻t3で搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に通信許可信号線303を介した制御信号が入力されて通信が許可されると、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1からも光信号が出力される。
【0059】
このとき、通信許可信号線303を介した制御信号の入力タイミングが製造装置10に設置された光データ伝送装置1からの再送タイミングと一致すると、双方の再送制御部がほぼ同時に作動して、同じ再送時間間隔T1で同期して光信号が出力される状態になり、通信不良状態が継続する。図5には、このような通信不良状態が示されている。
【0060】
そこで、図6に示すように、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7は、再送回数が所定回数、例えば10回に達する迄の間、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1よりも長い再送時間間隔T2で再送処理を繰り返し、その後再送時間間隔T1で再送するように設定されている。
【0061】
再送時間間隔T2での再送回数nは、確実にハンドシェークの機会が得られるように複数回に設定することが好ましく、バースト的な外来ノイズを回避できる値であればよい。
【0062】
このように構成すれば、仮にモード設定部8の設定に誤りが発生し、固定設備である製造装置10と移動設備である搬送台車30の双方に設置された光データ伝送装置1の双方の再送制御部7によって、各送信部5から光信号が再送出力される場合であっても、搬送台車30の光データ伝送装置1に備えた再送制御部7が、製造装置10の光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1よりも長い再送時間間隔T2で再送処理を繰り返すため、搬送台車30の光データ伝送装置1の送信部5から光信号が再送されるまでの間に、製造装置10の光データ伝送装置1の送信部5から再送された光信号が搬送台車30の光データ伝送装置1の受信部6で受信される機会が確保できるようになり、確実にハンドシェークできるようになる。図6では、時刻t4で半二重通信が確立する。
【0063】
例えば、再送時間間隔T1が40msec.に設定されている場合、再送時間間隔T2を数msec.から十数msec.程度長く設定すれば、その間に製造装置10の光データ伝送装置1の送信部5から再送された光信号が搬送台車30の光データ伝送装置1の受信部6で受信される機会が確保できる。受信部6で光信号が受信されている間は、送信部5からの光信号の送信は禁止される。
【0064】
つまり、再送時間間隔T2は、少なくともフレームデータのスタートビットSTAが認識可能な時間だけ、再送時間間隔T1よりも長くなるように設定すればよい。
【0065】
一般に半導体製造設備に設置される製造装置10の台数は1000台以上あり、製造装置10の光データ伝送装置1のモード設定部8の誤設定を正しい設定に修正するための作業量は膨大となるが、それに比べて台数が少ない搬送台車30の光データ伝送装置1を改造する方が遥かに作業量が少なくて済む。
【0066】
具体的には、搬送台車30の光データ伝送装置1のマイクロコンピュータ1aの再送制御部7として機能する制御プログラムを交換すればよいのであるが、予め、このような制御プログラムを搬送台車30の光データ伝送装置1のROMに記憶しておいてもよい。
【0067】
また、予め、搬送台車30の光データ伝送装置1のマイクロコンピュータ1aの再送制御部7として機能する制御プログラムに、再送時間間隔T1で再送するか再送時間間隔T2で再送するかを切り替えるスイッチを光データ伝送装置1に組み込み、マイクロコンピュータ1aでスイッチが何れに操作されたかを検知して、再送時間間隔を自動切替するように構成してもよい。
【0068】
搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7は、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1と等しい再送時間間隔T1で所定回数再送処理を繰り返しても、送信部5から出力した光信号に対する応答が受信部6で確認されない場合に、双方が同期して光信号を再送していると推定し、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1よりも長い再送時間間隔T2で再送処理を繰り返すように設定されてもよい。
【0069】
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7が、再送回数が所定回数に達する迄の間、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1よりも長い再送時間間隔T2で再送処理を繰り返すように設定され、所定回数が経過すると、元の再送時間間隔T1で再送する例を説明したが、再送回数に制限を設けずに、搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7が、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔T1よりも長い再送時間間隔T2で再送処理を繰り返すように設定されてもよい。
【0070】
つまり、互いに送受信する光データ伝送装置1の再送制御部7により光信号が再送される再送時間間隔が異なる値に設定されていればよい。
【0071】
述した実施形態では、何れも搬送台車30に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔を他方より長く設定する場合を好ましい例として説明したが、本発明は、製造装置10に設置された光データ伝送装置1に備えた再送制御部7による再送時間間隔を他方より長く設定してもよいことはいうまでもない。
【0072】
上述した各実施形態は何れも本発明の一例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、製造設備等に使用され、空間を伝播するパルス光により固定設備と移動設備間の通信を行なう光データ伝送装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1:光データ伝送装置
1a,1b:光データ伝送装置に組み込まれたマイクロコンピュータ
5:送信部
6:受信部
7:再送制御部
8:モード設定部
10:製造装置
11:ロードポート
12:走行レール
20:ウェハキャリア装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信部と、パルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信部とを備えて半二重通信する光データ伝送装置であって、
所定の制御装置に接続され、当該制御装置から入力される通信許可信号により前記送信部から送信を開始し、前記送信部から出力した光信号に対する応答が前記受信部で確認されない場合に、所定の再送時間間隔で前記送信部から光信号を出力する再送処理を繰り返す再送制御部を備え、
送信開始後、前記再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されている光データ伝送装置。
【請求項2】
少なくとも請求項1記載の光データ伝送装置を一対備えて構成されている光通信装置。
【請求項3】
送信部により送信信号をパルス状の光信号に変調して出力する送信処理と、受信部によりパルス状の光信号を受光して受信信号に復調する受信処理を実行することにより半二重通信する光データ伝送方法であって、
所定の制御装置から通信許可信号が入力されると前記送信処理を開始し、前記送信処理で送信した光信号に対する応答が前記受信処理で確認されない場合に、再送制御部により所定の再送時間間隔で前記送信処理を繰り返す再送制御処理を実行するように構成され、
前記再送制御処理は、前記送信処理の開始後、前記再送処理が所定回数に達する前後で、再送時間間隔が異なるように設定されている光データ伝送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−209952(P2012−209952A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127792(P2012−127792)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【分割の表示】特願2010−9278(P2010−9278)の分割
【原出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】