説明

光トランシーバ

【課題】送信光サブアセンブリの信頼性や放熱特性を損なうことなく、送信光サブアセンブリによる電磁波放射を簡易な構造で抑止できるようにする。
【解決手段】送信光サブアセンブリ(TOSA)15は、光素子を収容する本体部15bを有し、本体部15bの周囲に導電性ラバー21を配設し、導電性ラバー21が本体部15bと筐体(上筐体11、下筐体12)とに接触している。導電性ラバー21は、直方体形状の本体部15bの周囲を囲むように配設され、両側と上下の表面が筐体に接触するように構成する。また、導電性ラバー21が配設される位置は、TOSA15のスリーブ15aに最も近い側の位置とし、第2フランジ15dの壁面に当接させる。また、各筐体11,12にも段差11cを設け、導電性ラバー21の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光サブアセンブリを内蔵する光トランシーバに関し、より詳細には、光トランシーバの送信光サブアセンブリによる電磁波放射を抑える機能を備えた光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を電気信号に変換してこれを処理する光受信部と、電気信号を光信号に変換して光ファイバ中に出射する光送信部と、光ファイバに付属する光コネクタを受納する光レセプタクルとを備えた光トランシーバについては、幾つかの業界標準が定められ、その機械的、電気的仕様が規格化されている(SFF−MSA、X2−MSA等)。これらのトランシーバは、ホスト基板の電源を生かしたまま、このホスト基板に搭載される光トランシーバを交換できる、プラガブルタイプの光トランシーバである。例えば、特許文献1、特許文献2などに、これらプラガブルタイプのトランシーバについて開示されている。
【0003】
光トランシーバは、光送信部である送信光サブアセンブリ(Transmitter Optical Sub-Assembly:TOSA)、光受信部である受信光サブアセンブリ(Receiver Optical Sub-Assembly:ROSA)、これらの光サブアセンブリと電気的に結合し電気信号を処理する電子回路を搭載する回路基板、及び回路基板を搭載するフレーム等で構成されている。
電子回路としては、送信光サブアセンブリ内に搭載されている半導体レーザ(Laser Diode:LD)を駆動するための駆動回路、あるいは、受信光サブアセンブリ内に搭載されているフォトダイオードにより光信号から変換された電気信号を増幅、再生する受信回路、これら駆動回路、受信回路を制御する制御回路などがある。
【0004】
上記のような光トランシーバにおいては、その通信速度は10Gbps超からさらに高速化が見込まれている。この場合、通信速度の高速化に伴って内部の動作周波数も高くなると、光トランシーバの外部へ電磁波放射が漏れるようになり、EMI(Electro Magnetic Interference)の問題となる。特にサブアセンブリが送信光アセンブリ(TOSA)の場合は、高周波の駆動信号が送信光アセンブリに流されるため、電波波放射によるEMIの抑制が課題となる。
【0005】
TOSAは、そのパッケージの外面と、光トランシーバの筐体の内壁面とが空間を介して平行に配置されているため、筐体とTOSAのパッケージとの間に電位差がある場合、平行平板モードにより共振現象が発生する。そして共振により蓄積されるエネルギーは放射エネルギーとなって外部に放射され、ノイズとなって外部の機器に影響を与える。
通常、光トランシーバの筐体はフレームグランド(FG;Frame GND)であり、光トランシーバの筐体にホルダを介してTOSAのスリーブが保持されているため、そのスリーブもFGとなる。しかしながら、筐体とスリーブでは若干の電位差が生じ、上記のごとくの共振現象の発生要因となっている。
【0006】
このような電磁波放射の問題に対して、従来では、光トランシーバの筐体のシールド性を高め、筐体からの電磁波漏洩を抑えるような対策が取られている。例えば、光トランシーバの筐体内に導電性弾性体等のシールド材を配置して、筐体の隙間からの電磁波漏洩を抑制したり、あるいは、TOSAに電波吸収体を貼付して、外部への電磁波放射を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,459,918号明細書
【特許文献2】米国特許第6,371,787号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなシールド材を用いてシールド性を向上させようとする場合、種々の形状の複数のシールド材を所定位置に配置しなければならないため、光トランシーバの組み立て作業性を低下させたり、あるいはシールド材が高価なため、光トランシーバのコストアップを招来したりする、等の課題がある。
また、TOSAに電波吸収体を貼付する場合、EMIの抑制効果を得るためには、ある程度広い面積に電波吸収体を貼付する必要がある。しかしながら、この場合、電波吸収体の反力によりTOSAへの機械的ストレスが増加して不具合の要因となったり、あるいは、電波吸収体によりTOSAの放熱面積が減少し、放熱特性が悪化したりする、という課題が生じる。
【0009】
上記各特許文献に記載された標準は、光トランシーバの互換性を第一の目的とするものであって、個々のトランシーバの内部構造、内部電気的特性等は、規格化された業界標準の範囲で随意に設計できるものであり、普遍的なものではない。
【0010】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、送信光サブアセンブリの信頼性や放熱特性を損なうことなく、送信光サブアセンブリによる電磁波放射を簡易な構造で抑止できるようにした光トランシーバの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光トランシーバは、電気信号を光信号に変換して出力する光素子を有する光デバイスと、光デバイスを収容する筐体とを有する光トランシーバであって、光デバイスが、光素子を収容する本体部を有し、本体部の周囲に導電性ラバー部材を配設し、導電性ラバー部材が本体部と筐体とに接触していることを特徴としている。
上記の導電性ラバー部材は、中空のラバーチューブを環状に成形してなり、もしくはラバーシートを環状に打ち抜き成形してなっている。
【0012】
また、上記光デバイスの本体部は、断面が矩形の直方体形状部を有し、導電性ラバー部材が、直方体形状部の一部の領域で本体部の周囲を囲むように配設されている。また、光デバイスは、外部からの光コネクタプラグと前記本体部の光素子とを光学的に結合するためのスリーブを有し、導電性ラバー部材が配設される直方体形状部の一部の領域は、直方体形状部が最も前記スリーブに近い側の領域である。
また、本発明の光トランシーバは、本体部とスリーブとの間に、直方体部の周囲表面よりも壁面が突出しているフランジを有し、導電性ラバー部材は、前記フランジの壁面に当接した状態で配設されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の光トランシーバは、その筐体が、本体部の直方体形状に沿って配設された導電性ラバー部材の上面、下面、及び両側の側面の4面に接触する壁部を有することを特徴としている。
また、本発明の光トランシーバは、スリーブと本体部とが並ぶ方向を前記光トランシーバの前後方向とするとき、光トランシーバの筐体は、導電性ラバー部材が接触する部分の少なくとも一部に、方向の段差が形成され、導電性ラバー部材は、段差を形成する面に接触して位置決めされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信光サブアセンブリの信頼性や放熱特性を損なうことなく、送信光サブアセンブリによる電磁波放射を簡易な構造で抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による光トランシーバの一例を説明する図である。
【図2】図1の光アセンブリから上筐体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】光トランシーバのTOSAを示す斜視図である。
【図4】光トランシーバの要部の構成を説明するための図である。
【図5】本発明の光トランシーバが備えるTOSAの構成例を示す斜視外観図である。
【図6】TOSAに設ける導電性ラバーの構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る光トランシーバの要部の構成を説明するための図である。
【図8】導電性ラバーが導通を確保するための構成例を説明する図である。
【図9】本発明に係る光トランシーバのTOSAの要部周辺の構成例をより詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明による光トランシーバの一例を説明する図で、光トランシーバの斜視外観図を示すものである。
光トランシーバ1は、ホスト装置(不図示)のフェースパネルの開口内に装着して用いられるものであって、上筐体11と下筐体12とからなる筐体10を有する。上筐体10と下筐体は、金属ダイキャストにより成形されている。これらの上筐体11と下筐体12は、筐体を形成し、また、上筐体11と下筐体12は、光コネクタ(不図示)が挿入される光レセプタクル14を形成している。
なお、以下の説明では、光トランシーバ1において光レセプタクル14が形成されている側を前側とし、その反対側を後側とする。また、前後方向に交差する方向であって、筐体内の回路基板の板面に平行な方向を幅方向とする。また、前後方向及び幅方向に直交する方向を上下方向とする。
【0017】
筐体10の側面には、ラッチ端20が形成されている。光トランシーバ1は、図示しないホスト装置の回路基板上に設けられた金属製のレールに収納されるが、このラッチ端20は、レールの側面の係合孔と係合するものであり、この係合により光トランシーバ1はホスト装置内に保持される。
【0018】
筐体10の前部には、グリップ13が取付けられている。このグリップ13を光レセプタクル14の周囲で前後にスライドすることにより、筐体側面のラッチ端20を出没させ、光トランシーバ1とホスト装置のレールとを係合させたり、その係合を解除させたりすることができる。
また、筐体を構成する上筐体11の上部には、放熱機構として、放熱フィン11aが形成されている。光トランシーバ1は主にこの放熱フィン11aを介して、送信光アセンブリ(TOSA)や内部の電子回路が発する熱を放熱する。
【0019】
図2は、図1の光アセンブリから上筐体を取り外した状態を示す斜視図である。
下筐体12は、送信光サブアセンブリ(TOSA)15、受信光サブアセンブリ(ROSA)16、これら各光サブアセンブリを保持するホルダ17、導電性不織布18、回路基板19等の部品が搭載され、これら部品をその内部空間に収容するものである。
TOSA15は、本発明の光デバイスに相当するものであり、電気信号を光信号に変換して出力する機能を有するものである。TOSA15は、断面が矩形の直方体形状部を有する本体部15bを備え、本体部15b内にLD(laser diode)等の光素子やペルチェ素子等を有する。また、ROSA16はその内部に受光素子であるフォトダイオード等を有している。
【0020】
ホルダ17は、TOSA15及びROSA16を保持するためのものであり、TOSA15及びROSA16は、ホルダ17を介して下筐体12に保持されている。
回路基板19は、TOSA15及びROSA16と電気信号の授受を行う電子回路(IC)を搭載している。回路基板19とTOSA15及びROSA16は、フレキシブルプリント回路(FPC:Flexible Printed Circuit)基板19a,19bで接続される。また、導電性不織布18は、筐体内の前方の空間と後方の空間とを電磁的に分離するためのものである。
【0021】
図3は、光トランシーバのTOSAを示す斜視図で、本発明の特徴である導電性ラバー部材を設置しない状態のTOSAの構成を説明するためのものである。
TOSA15は、スリーブ15a及び本体部15bを有している。スリーブ15aと本体部15bが並ぶ方向が光トランシーバの前後方向に一致し、スリーブ15a側が前側となる。本体部15bは、上記のようにLD等の光素子やペルチェ素子を内蔵し、LDに電気的に接続されたリード端子を有している。本体部15bのリード端子は、フレキシブルプリント回路基板19aを介して回路基板19(図2)に電気的に接続されている。
【0022】
スリーブ15aは、円筒状の形状をなし、その内孔に光コネクタプラグのフェルールを受容し、当該フェルールに保持された光ファイバと、本体部15bの光素子とを光学的に結合する。スリーブ15aは、その中心軸線方向に沿った一部に他の部分より大径の第1フランジ15cを含んでいる。第1フランジ15cは、ホルダ17(図2等)に対してTOSA15を固定するための部分である。また、スリーブ15aと本体部15bとの間に第2フランジ15dが設けられている。第2フランジ15dは、本体部15bの直方体形状よりもその壁面が突出している。
【0023】
図4は、光トランシーバの要部の構成を説明するための図で、本発明の特徴である導電性ラバー部材を設けていない状態のTOSAの設置部分の断面を斜視図にて示すものである。また、ホルダ等の一部の部品の図示は省略している。
光トランシーバでは、図4のA,Bに図示する部分で、TOSA15のパッケージを構成する本体部15bの外面と、TOSA15を内部に収容する筐体10(上筐体11,下筐体12)の内壁面とが空間を介して平行になっている。この筐体10とTOSA15の本体部15bの間に電位差が生じると、平行平板モードにより共振現象が発生する。そして共振により蓄積されるエネルギーは放射エネルギーとなって外部に放射され、EMIの問題となる。
【0024】
図5は、本発明の光トランシーバが備えるTOSAの構成例を示す斜視外観図である。本発明に係る実施形態では、TOSA15の本体部15bの周囲に、導電性ラバー部材である導電性ラバー21を設ける。導電性ラバー21は、本体部15bの直方体形状部の一部の領域に接触して、本体部15bの周囲を囲むように設けられる。導電性ラバー21を設けたTOSA15を筐体10の内部に設置すると、導電性ラバー21の周囲は、上筐体11または下筐体12に接触し、筐体10とTOSA15の本体部15bとの導通が図られる。
【0025】
このときに、導電性ラバー21は、ホルダ17に固定される第1フランジ15cにできるだけ近い位置とする。つまり導電性ラバー21は、第1フランジ15cと導電性ラバー21との長さLができるだけ短くなるように、本体部15bの最も前側で、本体部15bとスリーブ15aとの間に位置する第2フランジ15dに接触させるよう設置される。これにより、第1フランジ15cに対する導電性ラバー21の反力によるモーメントをできるだけ低減させ、TOSA15に対する機械的ストレスを少なくすることができる。
【0026】
図6は、TOSAに設ける導電性ラバーの構成例を示す図である。TOSA15の本体部15bに設ける導電性ラバー21としては、例えば図6(A)に示すように、導電性ラバーチューブを環状に成形したものを用いることができる。導電性ラバーチューブは、その内部が中空のチューブ形状を有している。
また、他の例では、図6(B)に示すように、所定厚みの導電性ラバーシートを打ち抜き成形して、環状の導電性ラバー21を作成したものであってもよい。
【0027】
導電性ラバー21は、TOSA15の本体部15bの周囲を囲むように設けられ、筐体10に接触させる構造である。従って、筐体10の内部でTOSA15への機械的なストレスを増大させないようにするため、前後方向の長さDは、本体部15bの前後方向の長さに比して短くし、筐体10から受けるストレスを低く抑えるようにする。
このときに、筐体10への接触面積を確保して十分な導通をとるため、上筐体11を、導電性ラバー21の幅方向両側の表面にも接触するように構成する。これにより、矩形の本体部15bの周囲に設けられた導電性ラバー21は、上下方向の両側の表面及び幅方向両側の表面の4つの面で筐体10に接触する。
【0028】
また、導電性ラバー21の内側の寸法W2は、本体部15bの対応する寸法W1(図5)よりも若干小さく設定する。これにより、導電性ラバー21を本体部15bに装着したときに、導電性ラバー21の内面を、本体部15bの外面に十分に接触させることができる。
このような構成とすることで、電波吸収体を必要とすることなく、電磁波放射を抑えることができる。また、上記のような導電性ラバー21を用いることで、本体部15bの広い面を電波吸収体等で覆う必要がなく、TOSA15に対して機械的ストレスを過大にかけることなく、TOSA15の信頼性を損なわずに電磁波放射を低減させることができる。
【0029】
図7は、本発明に係る光トランシーバの要部の構成を説明するための図で、本発明の特徴である導電性ラバー部材として導電性ラバーを設けたTOSAの設置部分の断面を斜視図にて示すものである。
光トランシーバの上筐体11には、筐体内の内部空間を前後に区画する区画壁11bが設けられている。区画壁11bの前側には、光サブアセンブリを保持するホルダ17が設置され固定される。TOSA15の場合、ホルダ17が備えるTOSA固定用の図示しない孔部にTOSA15が挿入され、スリーブ15aに設けられた第1フランジ15c(図5)が、その孔部に係合して固定保持される。また、図7では図示されないROSA16についても同様にホルダ17に固定保持される。
ホルダ17は、区画壁11bの前側に、導電性不織布18とともに固定される。区画壁11bには、TOSA15,ROSA16のスリーブを通すための図示しない切り欠きが設けられる。また、ホルダ17には、光コネクタに係合するフック17aが設けられている。
【0030】
光トランシーバの筐体10(上筐体11,下筐体12)はフレームグランド(FG)であり、この筐体10にホルダ17を介してTOSA15のスリーブ15aが保持されている。このため、TOSA15のスリーブ15aもFGとなる。このとき従来の構成では、筐体10とスリーブ15aには若干の電位差が生じ、共振現象の発生要因となっていた。これに対して、本発明に係る実施形態では、導電性ラバー21を配置することにより、TOSA15のスリーブ15aと、筐体10との導通が確保され、筐体10のFGと、TOSA15のスリーブ15aのFGとの抵抗が減少し、共振現象による電磁波放射の原因となる電位差をなくすことができる。
【0031】
図8は、導電性ラバーが導通を確保するための構成例を説明する図で、TOSAに設けられた導電性ラバーの設置部分を前方斜め方向から見た様子を示すものである。
TOSA15の本体部15bの周囲に設けられた導電性ラバー21は、その周囲で上筐体11または下筐体12に接触する。具体的には、導電性ラバー21の上側で導電性ラバー21に接触する上筐体11に、突壁部11e,11dを設ける。これにより、導電性ラバー21の幅方向の両側の表面が、それぞれ突壁部11e,11dに接触する。また、導電性ラバー21の下側は、下筐体12に接触している。
【0032】
こうして、導電性ラバー21の上下方向の両側の表面と、幅方向の両側の表面とが上筐体11または下筐体12の壁面に接触し、導通を確保することが可能となっている。また、導電性ラバー21が筐体10に接触した状態では、自然に開放された状態よりも圧縮されるように設計されているため、接触状態がより良好となり、より十分な導通を確保することができる。また、TOSA15の光学的調芯を行うためにTOSAの位置が調整された場合にも、導電性ラバー21の弾性変形によって常にTOSAの本体部15bと筐体10との接触を確保することができる。
【0033】
図9は、本発明に係る光トランシーバのTOSAの要部周辺の構成例をより詳細に説明するための図で、TOSA15の設置部分の断面構成を示すものである。
上述したように、TOSA15の本体部15bの周囲には、導電性ラバー21が配置される。図9の例では、導電性ラバー21は中空のチューブ形状のもの(図6(A))が適用されているが、図6(B)に示すような中空構造ではない成形体を用いるものであってもよい。
【0034】
図示するように、導電性ラバー21は、TOSA15の本体部15bの周囲に接触するとともに、上筐体11及び下筐体12に接触する。これにより筐体10とTOSA15の本体部15bとの導通を確保する。TOSA15の本体部15bは、スリーブ15aと導通している。これにより共振現象を発生させるスリーブ15aと筐体11,12との電位差をなくすことができる。
【0035】
導電性ラバー21は、TOSA15の本体部15bの最前部(スリーブ15a側)に配置される。ここでは本体部15bとスリーブ15aとの間に配置された第2フランジ15dの後側壁面に導電性ラバー21を当接させる。これにより、第2フランジ15dがストッパとして機能し、導電性ラバー21が前側に位置ずれすることがない。また、上筐体11及び下筐体12には、導電性ラバー21を前後方向に位置決めするための段差11cが設けられ、段差11cを形成する面に導電性ラバー21を接触させる。この構成によっても導電性ラバー21が位置ずれしないようになっている。
【0036】
また、TOSA15の本体部15bの上面及び下面には、放熱のための熱伝導材22を設置している。TOSA15の本体部15b内には、LD等の光素子(発光素子)やペルチェ素子等が設置される。ペルチェ素子は、本体部15b上側の内壁面に搭載されている。ここではペルチェ素子の一方のプレートを本体部15bの上側の内壁面に密着させ、他方のプレート上にLDを搭載する。LDを冷却するために前記他方のプレートを降温した場合には、本体部15bの上側の内壁面に接触しているプレートは昇温される。従ってTOSA15では、この熱を外部に放出する必要がある。
【0037】
このとき、本体部15bの外壁面が放熱面となって内部の発熱を放熱する。放熱された熱は、上筐体11の放熱フィン11aから外部に放熱される。
本発明では、本体部15bの周囲の一部に導電性ラバー21を配置するため、放熱面として機能する本体部の外周面はその分小さくなる。放熱が不足することによるTOSA15へのストレスを回避するため、本体部15bの上面と上筐体11の内壁面との間、及び本体部15bの下面と下筐体12の内壁面との間にゲル状もしくはシート状の熱伝導材22を配置する。
【0038】
これにより、TOSA15の本体部15bと上筐体11、及び下筐体12とを空気を介在させることなく接触させる。この構成によりTOSA15から多くの熱を上筐体11に逃がし、上筐体11に形成された放熱フィン11aから放熱させることができる。また、ペルチェ素子から遠い本体部15bの下側においても、下筐体12との間に配した熱伝導材22により補助的な放熱効果を付与することができる。
TOSA15の第2フランジ15dと本体部15bとは溶接により接合されているが、導電性ラバー21は、溶接部の近傍に配置され、その後方にゲル状の熱伝導材22が配置される。導電性ラバー21によって、ゲル状の熱伝導材22の不要なはみ出しを抑えることができる。
【0039】
また、本体部15bの後方側に、導電性ラバー21の機能をバックアップするための導電性部材23を配置してもよい。この例では、本体部15bの最後部の上面側にのみ、本体部15bの上面と上筐体11の内壁面とを導通させるための導電性部材23を配置している。これにより導電性ラバー21の導通機能をバックアップすることができるが、導電性部材23は必須ではなく、導電性ラバー21の機能のみによってTOSA15によるEMI耐性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…光トランシーバ、10…筐体、11…上筐体、11a…放熱フィン、11b…区画壁、11c…段差、11e,11d…突壁部、12…下筐体、13…グリップ、14…光レセプタクル、15…TOSA、15a…スリーブ、15b…本体部、15c…第1フランジ、15d…第2フランジ、16…ROSA、17…ホルダ、17a…フック、18…導電性不織布、19…回路基板、19a,19b…フレキシブルプリント回路基板、20…ラッチ端、21…導電性ラバー、22…熱伝導材、23…導電性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を光信号に変換して出力する光素子を有する光デバイスと、前記光デバイスを収容する筐体とを有する光トランシーバであって、
前記光デバイスは、前記光素子を収容する本体部を有し、
前記本体部の周囲に導電性ラバー部材を配設し、前記導電性ラバー部材が前記本体部と前記筐体とに接触していることを特徴とする光トランシーバ。
【請求項2】
前記導電性ラバー部材は、中空のラバーチューブを環状に成形してなり、もしくはラバーシートを環状に打ち抜き成形してなることを特徴とする請求項1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記本体部は、断面が矩形の直方体形状部を有し、
前記導電性ラバー部材は、前記直方体形状部の一部の領域で前記本体部の周囲を囲むように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記光デバイスは、外部からの光コネクタプラグと前記本体部の光素子とを光学的に結合するためのスリーブを有し、前記導電性ラバー部材が配設される前記直方体形状部の一部の領域は、前記直方体形状部が最も前記スリーブに近い側の領域であることを特徴とする請求項3に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記本体部と前記スリーブとの間に、前記直方体部の周囲表面よりも壁面が突出しているフランジを有し、前記導電性ラバー部材は、前記フランジの壁面に当接した状態で配設されていることを特徴とする請求項4に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
前記筐体は、前記直方体形状に沿って配設された前記導電性ラバー部材の上面、下面、及び両側の側面の4面に接触する壁部を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1に記載の光トランシーバ。
【請求項7】
前記スリーブと前記本体部とが並ぶ方向を前記光トランシーバの前後方向とするとき、
前記筐体は、前記導電性ラバー部材が接触する部分の少なくとも一部に、前後方向の段差が形成され、前記導電性ラバー部材は、前記段差を形成する面に接触して位置決めされていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−54214(P2013−54214A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192525(P2011−192525)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】