説明

光トランシーバ

【課題】取り扱う信号に対する共振現象を抑制可能な光トランシーバを提供する。
【解決手段】光トランシーバは、光電変換を行う光サブアセンブリと、光サブアセンブリに電気的に接続された電子回路と、電子回路を収容する第1の空間と光サブアセンブリを収容する第2の空間とを画成する上ハウジング及び下ハウジング30と、を備える。上ハウジング及び下ハウジング30は、一対の側壁30aを有する。第1の空間を画成する一対の側壁30aの内面32a、32bは、互いに対向する一対の波形の面である。一対の波形の面のうち一方の波形の面の周期と前記一対の波形の面のうち他方の波形の面の周期が、互いに異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバに関するものである。より詳細には、本発明は、光トランシーバの構造に関するものであり、特に、当該光トランシーバに搭載されている電子回路主要部を外界とシールドする構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光トランシーバにおいて外部に露出している電気コネクタプラグからの配線を、回路主要部に導くパターン構造が記載されている。すなわち、特許文献1には、配線パターンを回路基板内層に設け、基板の表面、及び裏面には接地パターンを形成し、当該接地パターンを上下ハウジングに含まれているシールドガスケット(導電性の弾性体)に接触させて回路主要部と外界とをシールドする構造が記載されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、光トランシーバに搭載されている光サブアセンブリ(OSA:OpticalSub-Assembly。Transmitter Optical Sub-Assembly及びReceiver Optical Sub-Assembly)と回路基板とをフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)で接続する構造が開示されている。
【0004】
さらに、下記非特許文献1には、光トランシーバの一業界標準規格であるXFP型光トランシーバについての仕様が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−316484号公報
【特許文献2】米国特許第7,425,135号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】10 Gigabit Small Form FactorPluggable Module Rev. 3.1 (April 2, 2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光トランシーバでは、高周波を電気的に閉じた空間で伝搬させた場合に、共振周波数の問題が顕在化する。したがって、光トランシーバで取り扱う信号に対する共振現象を抑制する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面に係る光トランシーバは、ホストシステムの電気コネクタに係合して、該ホストシステムとの間の光電変換機能を提供する光トランシーバであって、光電変換を行う光サブアセンブリと、光サブアセンブリに電気的に接続された電子回路と、電子回路を収容する第1の空間と光サブアセンブリを収容する第2の空間とを画成する上ハウジング及び下ハウジングと、を備える。上ハウジング及び下ハウジングは、一対の側壁を有する。第1の空間を画成する一対の側壁の内面は、互いに対向する一対の波形の面である。一対の波形の面のうち一方の波形の面の周期と前記一対の波形の面のうち他方の波形の面の周期が、互いに異なっている。
【0009】
また、近年、光通信システムにおける伝送速度が高速化されており、当該伝送速度は10Gbps(Giga-bit per second)に達し、或いは、それを超える速度が現実的になってきている。これに伴い、機器からの電磁誘導雑音(EMIノイズ)が顕在化してきている。光トランシーバでは、動作周波数が増すにつれ、その特性波長が短くなり、従来、EMI雑音の漏洩について無頓着であった機器の僅かな隙間も、高周波雑音の漏洩原因となってしまう。特許文献1に開示の光トランシーバのシールド構造は、回路主要部と機器外部に露出しているコネクタプラグとの間における高周波雑音に対しては、有効なものである。しかしながら、光トランシーバには、EMI雑音に対してより優れた回路主要部のシールド構造が望まれている。
【0010】
さらに、かかる高速動作が要請される機器においては、動作周波数と機器の外形(厳密には内寸)で規定される共振周波数との相互関係が問題となってくる。動作周波数が高くなると、その共振周波数と動作周波数とが同一領域に存在することがあり、回路の周波数特性に乱れが誘起されることがある。この現象は、共振周波数のスペクトルが鋭いほど、顕著になる。
【0011】
一方、光トランシーバ、特にプラガブル光トランシーバは、ホストシステムに準備されたケージに挿入され、ケージ奥端のコネクタに光トランシーバ後端のプラグを挿入してプラグとコネクタとの電気的導通を図り、もって、ホストシステム内で利用される。この光トランシーバの外寸については、当該光トランシーバがホスト側のケージに挿入される関係で、業界標準(MSA:Multi-Source Agreement)が規定されている。したがって、上記共振周波数と動作周波数を乖離させるために、光トランシーバの外寸を調整することは不可能である。このような背景から、外寸の規定されている標準の光トランシーバにおいて、共振周波数、又はそのスペクトルの先鋭さを緩和する必要がある。
【0012】
本発明の別の側面は、上記課題に対する一つの解を提供するものであり、外寸の規定された仕様の範囲内で、光トランシーバの回路主要部のシールド特性を高めることを目的としている。
【0013】
本発明の別の側面に係る光トランシーバは、ホストシステムの電気コネクタに係合して、当該ホストシステムとの間の光電変換機能を提供する。この光トランシーバは、光サブアセンブリ、電子回路、上ハウジング、及び、下ハウシングを備えている。光サブアセンブリは、光電変換を行う。電子回路は、光サブアセンブリに電気的に接続されている。上ハウジング及び下ハウジングは、電子回路を収容する第1の空間と光サブアセンブリを収容する第2の空間とを画成する。第1の空間と第2の空間とが個別独立にEMIシールドされている。
【0014】
光トランシーバに代表される光電(E/O)変換機能を有する機器では、光信号の通過経路をその光コネクタ側に設けることが必須である。本光トランシーバによれば、第1の空間と第2の空間とが個別独立にEMIシールドされているので、第2の空間、即ち、光コネクタ側に存在する光信号の通過経路を介した回路主要部に対するEMI雑音のシールドが達成される。
【0015】
本発明の別の側面に係る光トランシーバでは、第1の空間は、上ハウジング及び下ハウジングの間に挟まれた第1のシールドガスケットによりシールドされ、第2の空間は、上ハウジング及び下ハウジングの間に挟まれた第2のシールドガスケットによりシールドされていることが好適である。
【0016】
本発明の別の側面に係る光トランシーバは、電子回路が設けられた回路基板であって、第1の空間に位置する第1の部分と、第2の空間に位置する第2の部分と、1の部分に対して第2の部分とは反対側において当該光トランシーバの外部に露出して電気コネクタと係合するコネクタプラグを提供する第3の部分と、を有する回路基板と、第2の空間において光サブアセンブリと回路基板の第2の部分とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板と、を更に備え、回路基板の表面は、更に、第1の部分と第3の部分との境界に接地パターンを有しており、第1のシールドガスケットは、接地パターンと上ハウジング又は下ハウジングとに電気的に接触していることが好適である。また、接地パターンは、回路基板上において第1の空間の周囲に延長されていることが好適である。このような構成によれば、第1の空間がより好適にシールドされる。また、コネクタプラグと電子回路とを接続する配線が、上記境界において回路基板の内層に設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の別の側面に係る光トランシーバでは、回路基板の表面が、第1の部分と第2の部分との境界に接地パターンを備えており、第1のシールドガスケットは当該接地パターンと上ハウジング又は下ハウジングとに電気的に接触していることが好適である。また、接地パターンは、回路基板上において第1の空間の周囲に沿って延長されていることが好適である。このような構成によれば、第1の空間がより好適にシールドされる。また、光サブアセンブリと電子回路とを接続する配線が、上記境界において、回路基板の内層に設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、取り扱う信号に対する共振現象を抑制可能な光トランシーバが提供される。また、本発明の別の側面によれば、回路主要部のシールド特性を高めた光トランシーバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る光トランシーバの外観を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る光トランシーバの分解斜視図である。
【図3】一実施形態に係る光トランシーバを、上ハウジングを省略してその内部を露出させた状態で示す斜視図である。
【図4】一実施形態に係る光トランシーバの下ハウジングを示す斜視図である。
【図5】一実施形態に係る光トランシーバの上ハウジングを示す斜視図である。
【図6】一実施形態に係る光トランシーバの縦断面図である。
【図7】一実施形態に係る光トランシーバにおいて、光サブアセンブリと回路基板とを接続するFPC基板の取付の状態を示す一部拡大斜視図である。
【図8】一実施形態に係る光トランシーバにおいて、光サブアセンブリと回路基板とを接続するFPC基板の取付の状態を側面から見て示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一実施形態に係る光トランシーバ10の外観を示す斜視図である。また、図2は、一実施形態に係る光トランシーバの分解斜視図である。図1及び図2に示す光トランシーバ10は、いわゆるXFP型の光トランシーバであって、その外形、電気的仕様はMSA(Multi-SourceAgreement)により規定されている。即ち、光トランシーバ10は、幅×長×高=18.3×71.1×8.5mmのハウジングを有している。また、この光トランシーバ10は、全二重モードにおいて伝送速度10Gbpsの光信号の通信が可能である。
【0022】
光トランシーバ10は、その前方側に二芯光コネクタを受ける光レセプタクル11を有し、その後方側には、当該光トランシーバ10が搭載されるホストシステムのコネクタに係合するコネクタプラグ12を有している。光トランシーバ10は、その側面に、ケージと係合するためのフック片72cを先端に設けたアクチュエータ72を有している。このアクチュエータ72は、光レセプタクル11の前方でベール71を回転させることで前後にスライドさせることが可能である。このスライド動作により、フック片72cとケージとの係合を解除し、光トランシーバ10をケージから引き抜くことが可能となる。
【0023】
ラッチ機構70は、ベール71とアクチュエータ72を含んでおり、光レセプタクル11(下ハウジング30)の側面に組立てられる。すなわち、ベール71は逆U字状形態を有しており、当該ベール71の一対の脚部71aの先端部内面には、第1の突起71bが形成されている。また、脚部71aには、突起71bの側方側(光トランシーバ10におけるついて後方側)にも第2の突起71cが形成されている。一方、アクチュエータ72はベール71をトレースするようにU字状の部分を含んでおり、ベール71の一対の脚部71aの間にセットされる。このU字状の部分は、一対の脚部71aのそれぞれに沿う一対の側部72aを含んでいる。これら一対の側部72aの各々からは、光トランシーバ10の後方に向けてアーム部72bが延びている。アーム部72bの先端には上述したフック片72cが形成されている。
【0024】
ベール71の第1の突起71bは、下ハウジング30の前方側の側壁31bに形成された孔31aに嵌め込まれる。また、第2の突起71cは、アクチュエータ72の側部72dに形成された弧状のスリット72eを突き抜けて、下ハウジング30の側壁31bに形成された弧状の溝31cにセットされる。これにより、ラッチ機構70は、下ハウジング30に組み付けられる。
【0025】
第1の突起71bを軸としてベール71を光レセプタクル11の前方で回転させると、第2の突起71cが溝31c内でスライドし、このスライド動作によりアクチュエータ72が光トランシーバの前方にスライドする。そうすると、アーム部72bのフック片72cがケージのフック(図示せず)を押し広げ、これにより、光トランシーバ10とケージとの係合が解除され、光トランシーバ10をケージから引き抜くことが可能となる。
【0026】
以下、図2及び図3を参照しつつ、光トランシーバ10の各部を詳細に説明する。なお、図3は、一実施形態に係る光トランシーバを、上ハウジングを省略してその内部を露出させた状態で示す斜視図である。図2及び図3に示すように、光トランシーバ10は、大きくは、上ハウジング20、下ハウジング30、電子回路を搭載する回路基板40、光受信サブアセンブリ(ROSA:Receiver Optical Sub-Assembly)50、光送信サブアセンブリ(TOSA:Transmitter Optical Sub-Assembly)60、及び、ラッチ機構70を備えている。
【0027】
上ハウジング20と下ハウジング30は金属ダイキャスト製の部品である。両ハウジングを組立てることにより形成される組立体(ハウジング)の前方側には、光レセプタクル11が提供される。上ハウジング20と下ハウジング30の間には、ガスケット80が挟み込まれている。このガスケット80は、回路基板40上の電子回路を外界からシールドするための部品である。
【0028】
ガスケット80は、第1の部分(第1のシールドガスケット)80aと第2の部分(第2のシールドガスケット)80bとを含んでいる。第1の部分80aは、電子回路の主要部が収容される第1の空間10aをシールドし、第2の部分80bは、ROSA50及びTOSA60が収容される第2の空間10bをシールドする。
【0029】
回路基板40は、大きく三つの部分より構成されている。すなわち、回路基板40は、第1の部分40d、第2の部分40e、及び、第3の部分40fを含んでいる。第1の部分40dは、電子回路の主要部を搭載しており、第1の空間10aに収納されている。この第1の部分40dと、当該第1の部分40dに搭載された電子回路とは、ガスケット80の第1の部分80aによりEMIシールドされる。
【0030】
第2の部分40eは、回路基板40の一端側の部分であり、ROSA50及びTOSA60からのFPC基板91及び92と接続するパッドが形成されている。この第2の部分40eは、第2の部分80bによりEMIシールドされる。
【0031】
また、第3の部分40fは、第1の部分40dに対して第2の部分40eとは反対側、即ち、回路基板40の他端側の部分であり、当該第3の部分40fには、上述したプラグ12が形成されている。この第3の部分40fは、外部に露出している。
【0032】
第1の部分40dと第3の部分40fとを接続する配線は、第1の部分40dと第3の部分40fとの境界において、回路基板40の内層を経ている。また、第1の部分40dと第2の部分40eとを接続する配線は、第1の部分40dと第2の部分40eとの境界において、回路基板40の内層を経ている。
【0033】
回路基板40の表面上には、両部分40dと40fの境界において、ガスケット80の第1の部分80aと接触する接地パターン40gが形成されている。この接地パターン40gは、第1の部分40dの周囲全体を覆うように設けられている。接地パターン40gは、更に、第1の部分40dと第2の部分40eとの境界において、再度、ガスケット80の第1の部分80aと接触している。このように、ハウジングの第1の空間10aは、接地パターン及び接地電位により完全にシールドされている。
【0034】
従来の光トランシーバにおいては、通常、ROSA50及びTOSA60を収容する第2の空間10bと、回路主要部を搭載する第1の空間10aとを一体としてシールドする構成が採用されていた。しかしながら、このような構成では、ROSA50及びTOSA60と光レセプタクル11との境界に必ず存在する光経路からのリークを防ぐことが困難であった。本光トランシーバ10では、第1の空間10aと第2の空間10bとの間にも、シールド機構を設けることにより、光経路からのリークが存在する場合であっても、その絶対量を低下させることが可能である。なお、図2〜4では、上ハウジング20又は下ハウジング30の側壁上にガスケット80をセットするための溝を記載していないが、当該溝を設けることによりハウジング20及び30の組立は、より容易となる。
【0035】
本光トランシーバ10は、更に、複数のヒートシンク40bを備えている。ヒートシンク40bは、回路基板40上の電子回路、特に集積回路(IC)40aと上ハウジング20との間に介在している。これらヒートシンク40bは、IC40aの放熱経路を提供する。
【0036】
下ハウジング30の側壁30aには、例えば高さ0.75mmの段差30cが設けられている。この段差30cに回路基板40の周辺部がセットされた状態で、回路基板40は、上ハウジング20と下ハウジング30との間に挟み込まれている。上ハウジング20と下ハウジング30とは、複数(3本)のビス30eにより固定される。そして、回路基板40は、ビス30e用のビス孔30dを逃れるための括れ部40cを有しており、この括れ部40cがビス孔30dを提供する壁に接することと、上下ハウジングが回路基板40を挟み込むこととにより、回路基板40の前後方向のスライド動作が規制される。
【0037】
図4は、一実施形態に係る光トランシーバの下ハウジングを示す斜視図である。また、図5は、一実施形態に係る光トランシーバの上ハウジングを示す斜視図である。下ハウジング30は、その前方側に光レセプタクル11の主要構造を備えており、下ハウジング30と上ハウジング20とを組立てることで、LCコネクタ仕様に沿う光レセプタクル11が形成される。
【0038】
下ハウジング30は、ROSA50及びTOSA60を搭載するための搭載部30gを有している。搭載部30gは、ROSA50及びTOSA60の円筒状の外形に適合するように、形成されている。光レセプタクル11に対するROSA50及びTOSA60の光学的な調芯、即ち、ROSA50のスリーブ部50b及びTOSA60のスリーブ部60bの光レセプタクル11内での位置決めは、両スリーブ部50b及び60bのそれぞれに設けられている一対のフランジで、下ハウジング30のリブ30hを挟み込むことにより実現される。上ハウジング20にも、搭載部30gとリブ30hと同様の機構20g及び20gが設けられている。
【0039】
上ハウジング20及び下ハウジング30は、互いに組み付けられることによって、第1の空間10a及び第2の空間10bを画成する。上ハウジング20は、天板部20i、区画壁21e、天板部20j、一対の側壁20a、及び、後方壁21fを含んでいる。また、下ハウジングは、底板部30i、一対の側壁31d、区画壁31e、底板部30j、一対の側壁30a、及び、後方壁31fを含んでいる。
【0040】
第2の空間10bは、天板部20i、底板部30i、区画壁21e及び31e、並びに、一対の側壁31dによって画成されている。第1の空間10aは、天板部20j、底板部30j、区画壁21e及び31e、一対の側壁20a、一対の側壁30a、後方壁21f、及び、後方壁31fによって画成されている。
【0041】
具体的に、上ハウジング20及び下ハウジング30は、光レセプタクル11の後方に、ROSA50及びTOSA60を搭載するための第2の空間10bを、側壁31d、天板部20i及び30i、並びに、区画壁21e及び31eで囲むように画成する。
【0042】
第1の空間10aは、第2の空間10bの後方に提供されている。第1の空間10aと第2の空間10bとは、区画壁21e及び31eによって区画されている。第1の空間10aとその後方の光トランシーバ10の外界とは、後方壁21f及び31fで区画されている。すなわち、第1の空間10aは、その側面を側壁20a及び30aで、前後それぞれを、区画壁21e及び31e、後方壁21f及び31fで囲まれている。
【0043】
本光トランシーバ10では、側壁20a及び30aの内面22a、22b、32a、及び32bが、波型に加工されている。即ち、光トランシーバ10では、互いに対向する一対の面が波状の面に加工されている。これら波状の面は、光トランシーバ10の前後方向に周期を有しており、一対の面が互いに対向する方向に振幅を有するものとなっている。例えば、波状の面の高さは0.25mmである。また、面22a及び32aにおける周期は、3.19mmであり、面22b及び32bにおける周期は2.87mmである。即ち、対向する面の周期は、互いに異なっている。
【0044】
このような光トランシーバ10の内面の構造は、当該光トランシーバ10で取り扱う信号に対する共振現象を抑制するためのものである。例えば、本光トランシーバ10は、10Gbpsといった高周波の信号を取り扱うことができる。このような高周波を電気的に閉じた空間で伝搬させた場合には、その共振周波数の問題が顕在化する。閉じた空間内で真空の誘電率を仮定した場合に、光トランシーバの外形仕様から決まる共振周波数は、数GHz〜数十GHz程度となり、光トランシーバ10の動作速度と重複している。閉じた空間の外形が平行平板で規定されている場合には、その内寸で決定される周波数で共振現象が顕著になり、空間内に搭載されている電子回路の高周波特性に大きな乱れを誘起してしまう。本光トランシーバ10では、この共振周波数を緩和するために、第1の空間10aを画成する内面の形状を、波型にすることに加えて、互いに対向する内面のおける波のピッチを異ならせることで、当該内面間の間隔を不均一としている。これによって、本光トランシーバ10は、共振現象を抑制している。
【0045】
以下、図6を参照する。図6は、一実施形態に係る光トランシーバの縦断面図である。図6に示すように、光トランシーバ10の第1の空間10aの前後では、区画壁21eと区画壁31eの間、及び、後方壁21f及び後方壁31fの間に、ガスケット80の第1の部分80aが挟み込まれている。また、第2の空間10bの前方においても、ガスケット80の第2の部分80bが上下ハウジングの間に介在している。具体的には、上ハウジング20の一対の斜面21gと下ハウジング30の側壁31dの内側の一対の斜面31gとの間に、ガスケット80の第2の部分80bが挟み込まれる(図2、図4、及び図5を参照)。また、第2の部分80は、スリーブ部50b及び60bのそれぞれの一対のフランジ間の小径部に沿う曲げ部80cを含んでおり、当該曲げ部80cが、小径部とリブ21hとの間に挟み込まれる(図2、図4、及び図5を参照)。
【0046】
このように、光トランシーバ10では、金属製の上下ハウジング20及び30とガスケット80とにより、回路主要部を搭載する第1の空間10aと、ROSA50及びTOSA60を搭載する第2の空間10bとが個別独立にEMIシールドされている。さらに、IC40aと上ハウジング20の内面(天板部20jの内面)との間にはヒートシンク40bが介在しており、当該ヒートシンク40bが、IC40aで発生した熱を、上ハウジング20を介してケージに効率良く伝える。
【0047】
以下、図7及び図8を参照する。図7は、一実施形態に係る光トランシーバにおいて、光サブアセンブリと回路基板とを接続するFPC基板の取付の状態を示す一部拡大斜視図である。図8は、一実施形態に係る光トランシーバにおいて、光サブアセンブリと回路基板とを接続するFPC基板の取付の状態を側面から見て示す拡大平面図である。
【0048】
図7及び図8に示すように、光トランシーバ10においては、ROSA50及びTOSA60はそれぞれ、フレキシブルプリント基板(FPC基板)91及び92を介して回路基板40と接続される。すなわち、ROSA50、TOSA60はそれぞれ、同軸形状を有する光デバイス部50a、60a、筒状のスリーブ部50b、60bを有している。光デバイス部50a、60aそれぞれの底面からは、複数のリードピン50c、60cが延び出している。FPC基板91,92はそれぞれ、一端91c、92cにおいて、リードピン50c、60cと接続し、一旦上方に延びた後、ヘアピン部91a、92aを介して下方に曲がり、回路基板40の表面に沿って光トランシーバ10の後方に向けて延び、回路基板40のパッド40i、40jに接続している。
【0049】
本光トランシーバ10は、パッド40i及び40jとヘアピン部91a及び92aとの間の回路基板40上の位置にビームリードデバイス95及び96を備えている。ビームリードデバイス95及び96は、共に円柱状をなしている。これらビームリードデバイス95及び96は、パッド40i及び40jとヘアピン部91a及び92aとの間でFPC基板91及び92を折り曲げるために設けられている。
【0050】
すなわち、FPC基板91、92はそれぞれ、それらの他端91e、92eにおいて回路基板40のパッド40i、40jに接続されている。FPC基板91、92は、パッド40i、40jとヘアピン部91a及び92aとの間において、リードデバイス95、96と回路基板40との間に挟まれつつ、リードデバイス95、96の外周をなぞるように、上方へ折り曲げられている。なお、リードデバイス95及び96としては、一般の整流用ダイオード又は小信号用のダイオード等を用いることができる。
【0051】
光トランシーバ10はXFP型の光トランシーバであり、その全高は規格により8.5mmに定められている。このよう狭い空間内でFPC基板91及び92を折り曲げた場合には、その曲率は小さくなり、大きな回復力(反発力)が応力として回路基板40とFPC基板91及び92との間の接続部、すなわち、パッド40i及び40j上のソルダリング部に及ぼされてしまう。したがって、このような応力は、接続部の電気的信頼性を阻害する要因となる。光トランシーバ10では、パッドのソルダリング部に及ぼされる応力を緩和するために、リードデバイス95、96のそれぞれによりFPC基板91、92を回路基板40に対して押し付けている。これらリードデバイス95、96のリードは、回路基板40上のいずれの部品とも電気的接続が遮断されている。場合によっては、リードデバイス95及び96は、全てグランドに接続され、回路に電気的な影響を与えることは無い。
【0052】
以下、このようなFPC基板の取付構造を有する光トランシーバについて、その製造方法を説明する。この製造方法では、まず、回路基板40上にIC40aを含む所定の電子部品を搭載し、これら電子部品をソルダリングにより固定することにより。電子部を作製する。
【0053】
一方、この電子部を作製する工程とは独立に、ROSA50及びTOSA60を作製する。すなわち、フォトダイオード(PD)を搭載した光デバイス部50aとスリーブ部50bとを、実際に検査用光ファイバからの光信号を当該PDで受信しつつ最適な位置で調芯し、互いに固定する。同様に、実際にレーザダイオード(LD)に電流を供給しつつ、スリーブ部60bから伸び出す検査用光ファイバからの光信号を受信しつつ、光デバイス部60aとスリーブ部60bとを調芯して、互いに固定する。これら一連の作業により、ROSA50及びTOSA60を得る。
【0054】
次いで、光デバイス部50a,60aとFPC基板91、92とを、それぞれ接続する。ここで、FPC基板91、92それぞれの一端91c、92cのそれぞれには、光デバイス部50a、60aから延び出すリードピンに対応した位置に、ビアホールが形成されている。これらビアホールにリードピンを挿入し、ビアホール周りのランド部とリードピンとを半田接続する。
【0055】
次いで、FPC基板91、92の他端91e、92eと回路基板40上のパッド40i、40jとを、それぞれソルダリングにより固定する。この状態では、FPC基板91及び92には如何なる曲げ加工も施されておらず、回路基板40を水平に保持した場合に、FPC基板の一端91c、92cに接続されているROSA50、TOSA60は、それぞれのスリーブ部50b、60bの先端が上方に向かうように、固定されている。
【0056】
次いで、回路基板40上でパッド40i及び40jが形成されている位置よりも先端側において、リードデバイス95及び96を固定する。この際、リードデバイス95、96により、FPC基板91、92をそれぞれ、強く挟み込む。これにより、ROSA50及びTOSA60に力が加わっても、その力がFPC基板の端部91e、92eに及ばないようにする。
【0057】
その後、FPC基板91、92をそれぞれ、リードデバイス95、96の外周に沿って回路基板40に対して上方に曲げる。さらに、ROSA50及びTOSA60のスリーブ部50b及び60bを前方に向けるように、ヘアピン部91a、92aをそれぞれ形成する。
【0058】
以上の工程により組み上がった回路基板40とROSA50及びTOSA60の中間生成物を下ハウジング30の所定箇所にセットする。そして、下ハウジング30にシールドガスケット80をセットした上で、上ハウジング20を下ハウジング30に重ね合わせ、ビス30eにより、両ハウジングを固定することで光トランシーバ10が完成する。なお、上ハウジング20又は下ハウジング30のトップ面にガスケット80をセットする溝を設けておき、ガスケット80を当該溝に予めセットしておくことで、上下ハウジングの組立が簡略化される。
【符号の説明】
【0059】
10…光トランシーバ、10a…第1の空間、10b…第2の空間、11…光レセプタクル、12…コネクタプラグ、20…上ハウジング、20a…側壁、20g…搭載部、20h…リブ、20i…天板部、20j…天板部、21e…区画壁、21f…後方壁、22a,22b…内面、30…下ハウジング、30a…側壁、30c…段差、30d…ビス孔、30e…ビス、30g…搭載部、30h…リブ、30i…底板部、30j…底板部、31a…孔、31b…側壁、31c…溝、31d…側壁、31e…区画壁、31f…後方壁、40…回路基板、40a…IC(電子回路)、40b…ヒートシンク、40c…括れ部、40d…第1の部分、40e…第2の部分、40f…第3の部分、40g…接地パターン、40i,40j…パッド、50…ROSA、50a…光デバイス部、50b…スリーブ部、50c…リードピン、60…TOSA、60a…光デバイス部、60b…スリーブ部、60c…リードピン、70…ラッチ機構、71…ベール、72…アクチュエータ、80…シールドガスケット、80a…第1の部分、80b…第2の部分、91,92…FPC基板、95,96…ビームリードデバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストシステムの電気コネクタに係合して、該ホストシステムとの間の光電変換機能を提供する光トランシーバであって、
光電変換を行う光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリに電気的に接続された電子回路と、
前記電子回路を収容する第1の空間と前記光サブアセンブリを収容する第2の空間とを画成する上ハウジング及び下ハウジングと、
を備え、
前記上ハウジング及び前記下ハウジングは、一対の側壁を有し、
前記第1の空間を画成する前記一対の側壁の内面は、互いに対向する一対の波形の面であり、
前記一対の波形の面のうち一方の波形の面の周期と前記一対の波形の面のうち他方の波形の面の周期が、互いに異なっている、
光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57965(P2013−57965A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256298(P2012−256298)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2009−37875(P2009−37875)の分割
【原出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】