説明

光ネットワークシステム

【課題】局側終端装置の構成を簡易化し得るとともに、加入者側終端装置のアップグレードを容易に行え得る光ネットワークシステムを提案する。
【解決手段】この光ネットワークシステム1では、リング状光ファイバ3を巡回する光波長多重バースト信号の授受をOLT2a〜2eが行う際に、当該OLT2a〜2eにおいて光信号の波長変換を行う必要がないため、各OLT2a〜2eにおいて光-電気-光のOEO変換が不要となり、その分、各OLT2a〜2eの回路構成を簡素化し得る。また、OLT2a〜2e間や、OLT2a〜2e及びONU10a,10b,…,10x間全てで光通信が可能となり、ONU10a,10b,…,10xにおいて例えば100Mbpsから1Gbps、或いは1Gbpsから10Gbps等の伝送速度のアップグレードを容易に行え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークシステムに関し、例えば光ファイバ等の光伝送路を介して光通信を行う光ネットワークシステムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速インターネットアクセスの需要が高まり、各家庭まで光ファイバを引き、光通信によるデータ通信を可能としたFTTH(Fiber To The Home)が普及していきている。実際上、光ファイバを用いた光ネットワークシステムとして、図3に示すように、中継用の複数のノード101a,101b,101c,101dがリング状光ファイバ102によりリング状に接続されたROADM(Reconfigurable Optical Add / Drop Multiplexer)システム103が構築され、さらにこのROADMシステム103の各ノード101a,101b,101c,101dにそれぞれPON(Passive Optical Network)システム104a,104b,104cが構築された光ネットワークシステム100が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、ROADMシステム103は、リング状光ファイバ102に接続された複数のノード101a,101b,101c,101dのうち、例えばメトロネットワークシステムやコアネットワークシステム等の上流ネットワークシステム(図示せず)に接続されたノード101aと、PONシステム104bが構築されたノード101cとの間で光通信を行う際、これらノード101a,101c間で挿入及び取り出させる1つの波長がオペレーションサーバ(図示せず)により設定され得る。
【0004】
これによりROADMシステム103では、これら2つのノード101a,101cにだけ共通した1つの波長を占有させ、この占有させた1波長を用いてこれら特定のノード101a,101c間で光通信させ得るようになされている。実際上、ROADMシステム103のノード101cは、リング状光ファイバ102を巡回する連続した光信号の中から、占有する波長の光信号を分離し、自己に接続されたPONシステム104bに当該光信号を送出し得るように構成されている。
【0005】
ここで、光ネットワークシステム100における各PONシステム104a,104b,104cは、全て同一構成を有することから、そのうちの1つであるPONシステム104bに着目して、以下説明する。PONシステム104bは、キャリアの局舎に設置された1つの局側終端装置(以下、これをOLT(Optical Line Terminal)と呼ぶ)110を有し、このOLT110がシステム間光ファイバ109を介してノード101cに接続されている。
【0006】
また、PONシステム104bは、OLT110に1本の第1光ファイバ111を介して光スプリッタ112が接続され、この1本の第1光ファイバ111が当該光スプリッタ112により複数の第2光ファイバ113a,113b,…,113xに分岐されて、この分岐された各第2光ファイバ113a,113b,…,113xに、各加入者宅にそれぞれ設置された加入者側終端装置(以下、これをONU(Optical Network Unit)と呼ぶ)114a,114b,…,114xが接続された構成を有する。
【0007】
このように、PONシステム104bでは、OLT110とONU114a,114b,…,114xとの間に光スプリッタ112を設け、OLT110と光スプリッタ112までを一本の第1光ファイバ111で接続し、当該光スプリッタ112にて1つの第1光ファイバ111を複数の光ファイバ113a,113b,…,113xに分岐し、当該光スプリッタ112を中心にしたスター型に複数のONU114a,114b,…,114xを接続させることで、OLT110及び光スプリッタ112間の1本の第1光ファイバ111を複数のONU114a,114b,…,114xで共有させ、OLT110及び光スプリッタ112間における光ファイバの敷設コストの低減が図られている。
【0008】
ところで、このようなPONシステム104bでは、OLT110からONU114a,114b,…,114xのx1方向(以下、これを下り方向と呼ぶ)への光通信と、ONU114a,114b,…,114xからOLT110のx2方向(以下、これを上り方向と呼ぶ)への光通信にそれぞれ異なる波長を割り当て、一心の第1光ファイバ111及び第2光ファイバ113a,113b,…,113xで上下信号を同時に送受信し得るようになされている。
【0009】
実際上、PONシステム104bは、OLT111からONU114a,114b,…,114xへの下り方向信号が、OLT111及びONU114a,114b,…,114x間の光スプリッタ112において分岐され、光スプリッタ112に接続された全てのONU114a,114b,…,114xにそれぞれ同じ下り方向信号をマルチキャスト配信し、当該下り方向信号の中から各ONU114a,114b,…,114xがそれぞれ自己宛の光信号のみを抽出し、他宛の光信号を廃棄することで、所定のデータを取得し得るようになされている。
【0010】
一方、このPONシステム104bにおいて、ONU114a,114b,…,114xからOLT110への上り方向信号に関しては、OLT110がONU114a,114b,…,114xに対して送信タイミングを通知し、この送信タイミングに合せて各ONU114a,114b,…,114xがOLT110に対して、それぞれバースト状の光バースト信号を送信し得る。これにより、PONシステム104bは、各ONU114a,114b,…,114xからの光バースト信号を光スプリッタ112にて合波し、当該光バースト信号を多重化した上り方向信号を生成し得るようになされている。これによりPONシステム104bでは、上り方向用の1つの波長を複数のONU114a,114b,…,114xで共用して、OLT110と上り方向での光通信を実行し得るようになされている。
【0011】
このようにPONシステム104bでは、ROADMシステム103とは全く異なるシステム構造を有しており、当該ROADMシステム103が用いる光信号の波長とは異なる波長の光信号を用いて、下り方向及び上り方向の光通信を行いている。このため、OLT110では、ROADMシステム103のノード101cにて抽出された連続した光信号を受け取ると、ROADMシステム103で用いている光信号の波長を、PONシステム104bに用いる下り方向用の波長に変換し得るようになされている。
【0012】
また、OLT110は、PONシステム104bにおいて用いている上り方向用の波長でなる上り方向信号を、ROADMシステム103にて用いる波長に変換し、これをROADMシステム103のノード101cへと送出し得るようになされている。これによりROADMシステム103は、PONシステム104bのOLT110から上り方向信号をノード101cが受け取ると、上り方向信号を連続した光信号として、当該ノード101cからリング状光ファイバ102に伝送し、ノード101dを経由させてノード101aまで送出し得るようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献1】最新フォトニックネットワーク技術の概要 インターネット<URL:http://www.ntt.co.jp/journal/0710/files/jn200710008.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、かかる構成でなる光ネットワークシステム100は、オペレーションサーバが任意に設定した波長の光信号でノード101a,101c間に光通信を行わせるROADMシステム103と、このROADMシステム103で用いる連続した光信号の波長とは異なる波長の下り方向信号及び上り方向信号を用いたPONシステム104a,104b,104cとを組み合わせており、これらシステム構成が全く異なるROADMシステム103とPONシステム104a,104b,104cとの間で光通信を行わせている。
【0015】
このため、PONシステム104a,104b,104cの伝送速度を例えば100Mbpsから1Gbps、或いは1Gbpsから10Gbpsにアップグレードする際には、PONシステム104a,104b,104cに合わせて予めROADMシステム103のキャパシティ増強も別途必要となり、ONU114a,114b,…,114xでのアップグレードが容易に行い難いという問題があった。
【0016】
また、この光ネットワークシステム100では、PONシステム104a,104b,104cからROADMシステム103、或いはROADMシステム103からPONシステム104a,104b,104cに光信号を伝送する際、ROADMシステム103又はPONシステム104a,104b,104cで用いられている波長へ光信号をそれぞれ変換する必要がある。
【0017】
そのため、PONシステム104a,104b,104cの各OLT110では、ROADMシステム103との間で光信号の授受を行う際、光信号の波長を変換するために、光信号から一旦電気信号に変換した後、再び電気信号を光信号に変換(以下、これをOEO(Optical Electric Optical)変換とも呼ぶ)して、波長の変換を行っている。このため、従来の光ネットワークシステム100では、光から電気に変換し、その後、電気から再び光に変換するOEO変換を、全てのOLT110でそれぞれ行っていることから、その分、各OLT110の回路構成が煩雑化しているという問題があった。
【0018】
そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、局側終端装置の構成を簡易化し得るとともに、加入者側終端装置のアップグレードを容易に行え得る光ネットワークシステムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するため本発明の請求項1は、上流ネットワークに接続されたリング状光伝送路に沿って複数の局側終端装置が配置され、各前記局側終端装置には、第1光伝送路を介して光スプリッタが接続され、該第1光伝送路が前記光スプリッタで複数の第2光伝送路に分岐されて、該第2光伝送路にそれぞれ加入者側終端装置が接続されており、前記局側終端装置は、前記リング状光伝送路を巡回する光波長多重バースト信号の中から、それぞれ自己に割り当てられた波長の光信号を下り方向信号として抽出する波長分離手段と、前記光スプリッタを介して各前記加入者側終端装置に前記下り方向信号をマルチキャスト配信する配信手段と、各前記加入者側終端装置からの光バースト信号が時分割多重され、前記下り方向信号と波長が異なり前記局側終端装置毎に固有に割り当てられた波長の上り方向信号を取得する取得手段と、前記上り方向信号を前記光波長多重バースト信号に合波する波長統合手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項2は、前記リング状光伝送路には、前記上流ネットワークシステムと接続したアクセスブリッジが設けられており、前記アクセスブリッジは、前記複数の局側終端装置のうち、一の局側終端装置からの上り方向信号を前記光波長多重バースト信号から抽出し、前記上流ネットワークシステムの送信先、又は他の局側終端装置のいずれかに割り当てられた波長の下り方向信号に、前記上り方向信号を変換する波長変換手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各局側終端装置において光-電気-光のOEO変換が不要となり、その分、各局側終端装置の回路構成を簡素化し得るとともに、これら局側終端装置の間や、局側終端装置及び加入者側終端装置の間全てで光通信が可能となり、加入者側終端装置のアップグレードを容易に行え得る光ネットワークシステムを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光ネットワークシステムの全体構成を示す概略図である。
【図2】OLTの回路構成を示すブロック図である。
【図3】従来の光ネットワークシステムの全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
【0024】
図1において、1は本発明の光ネットワークシステムを示し、図3に示した従来の光ネットワークシステム100におけるOLT110とは異なり、本願発明では各OLT2a,2b,2c,2d,2eにおいてそれぞれ光-電気-光のOEO変換を不要とし、光ネットワークシステム1内全てにおいて光通信化を実現し得るようになされている。
【0025】
実際上、この光ネットワークシステム1は、リング状光ファイバ3を介して複数のOLT2a〜2eとアクセスブリッジ4とがリング状に接続された構成を有し、例えばメトロネットワークシステムやコアネットワークシステム等の上流ネットワークシステム(図示せず)が当該アクセスブリッジ4に接続されている。
【0026】
光ネットワークシステム1は、波長の異なる複数の光を多重化した光波長多重バースト信号がリング状光ファイバ3内を一方向に向けて伝送し得るようになされており、例えばアクセスブリッジ4が上流ネットワークから光信号を受け取ると、アクセスブリッジ4にて当該光信号を所定の波長に変換し、これを光波長多重バースト信号としてリング状光ファイバ3の一方向に向けて伝送し得る。これにより光ネットワークシステム1では、光波長多重バースト信号がリング状光ファイバ3の一方向に沿って巡回し、当該光波長多重バースト信号が各OLT2a,2b,2c,2d,2eの順番で各OLT2a〜2eに到達し得る。
【0027】
ここで、各OLT2a〜2eには、光波長多重バースト信号の中から抽出する光信号の波長がそれぞれ個別に割り当てられており、光波長多重バースト信号を受信すると、自己に割り当てられた波長のみをこの光波長多重バースト信号の中から抽出し、自己宛でない他の波長の光信号を光波長多重バースト信号のまま通過させ得る。
【0028】
例えば、アクセスブリッジ4は、OLT2c宛の光信号を上流ネットワークシステムから受け取ると、波長変換手段4aによって、光-電気-光のOEO変換して当該光信号の波長を、送信先であるOLT2cに予め割り当てられている波長λc1に変換し、リング状光ファイバ3を巡回する光波長多重バースト信号に波長λc1の光信号を合波し得るようになされている。
【0029】
これにより、OLT2cは、隣接するOLT2bからリング状光ファイバ3を介して受け取った光波長多重バースト信号の中から、自己に割り当てられた波長λc1の光信号のみを抽出し得る。この際、OLT2cは、自己に割り当てられた波長λc1以外の例えば、OLT2aに割り当てられた波長λa1や、OLT2bに割り当てられた波長λb1、OLT2dに割り当てられた波長λd1、OLT2eに割り当てられた波長λe1の各光信号を、光波長多重バースト信号の中から抽出することなくそのまま通過させ、当該光波長多重バースト信号を隣接するノード2dへ伝送し得るようになされている。
【0030】
ここで、各OLT2a,2b,2c,2d,2eには、それぞれ1本の第1光ファイバ6を介して光スプリッタ7が接続されており、この1本の第1光ファイバ6が当該光スプリッタ7により複数の第2光ファイバ8a,8b,…,8xに分岐されて、この分岐された各第2光ファイバ8a,8b,…,8xに、各加入者宅にそれぞれ設置されたONU10a,10b,…,10xが接続されている。なお、図1では、光スプリッタ7を介してONU10a,10b,…,10xが接続された構成をOLT2b,2c,2dについてだけ示し、残りのOLT2a,2eについても同様の構成を有するものの、光スプリッタ7及びONU10a,10b,…,10xの記載は省略しシステム構成図を簡略化している。
【0031】
このように、本発明の光ネットワークシステム1でも、OLT2cとONU10a,10b,…,10xとの間に光スプリッタ7を設け、OLT2cと光スプリッタ7までを一本の第1光ファイバ6で接続し、OLT2c及び光スプリッタ7間の1本の第1光ファイバ6を複数のONU10a,10b,…,10xで共有させることで、OLT2c及び光スプリッタ7間における光ファイバの敷設コストの低減が図られている。
【0032】
この場合、光ネットワークシステム1は、OLT2cからONU10a,10b,…,10xのx1方向(下り方向)の下り方向信号が、OLT2c及びONU10a,10b,…,10x間の光スプリッタ7において分岐され、光スプリッタ7に接続された全てのONU10a,10b,…,10xにそれぞれ同じ下り方向信号をマルチキャスト配信し得るようになされている。これにより、各ONU10a,10b,…,10xは、マルチキャスト配信された下り方向信号の中から、それぞれ自己宛の光信号のみを抽出し、他宛の光信号を破棄することで、所定のデータを個別に取得し得るようになされている。
【0033】
一方、この光ネットワークシステム1において、ONU10a,10b,…,10xからOLT2cのx2方向(上り方向)の上り方向信号は、下り方向信号に用いる波長λc1と異なる波長λc2が割り当てられ、一心の第1光ファイバ6及び第2光ファイバ8a,8b,…,8xで上下信号を同時に送受信し得るようになされている。
【0034】
また、例えば、他のOLT2bでも上り方向信号は、下り方向信号に用いる波長λb1と異なる波長λb2が割り当てられ、一心の第1光ファイバ6及び第2光ファイバ8a,8b,…,8xで上下信号を同時に送受信し得るようになされている。このように光ネットワークシステム1では、下り方向信号用の波長λa1〜λe1と、上り方向信号用の波長λa2〜λe2の異なる波長が、OLT2a〜2eにそれぞれ予め割り当てられている。
【0035】
ここで、OLT2cは、上り方向信号を生成する際、ONU10a,10b,…,10xに対して送信タイミングを通知し得るようになされており、その送信タイミングに合せて各ONU10a,10b,…,10xからそれぞれバースト状の光バースト信号を送信させ得る。これにより、光ネットワークシステム1は、各ONU10a,10b,…,10xからの光バースト信号を光スプリッタ7にて合波し、当該光バースト信号を多重化した上り方向信号を生成し得る。かくして、光ネットワークシステム1では、上り方向用の1つの波長λc2を複数のONU10a,10b,…,10xで共用してOLT2cと光通信し得るようになされている。
【0036】
OLT2cは、光スプリッタ7から上り方向信号を受け取ると、これをリング状光ファイバ3の光波長多重バースト信号に合波し、隣接するOLT2d,2eを順に経由してアクセスブリッジ4に伝送し得るようになされている。これにより、アクセスブリッジ4は、OLT2cからの上り方向信号を光波長多重バースト信号から分離し、例えば送信先である上流ネットワークシステムにて用いる光信号の波長や、或いは他のOLT2a,2b,2d,2eで用いる下り方向信号の波長λa1,λb1,λd1,λe1に変換し、送信先に伝送し得るようになされている。
【0037】
かくして、光ネットワークシステム1は、各OLT2a〜2eにおいてそれぞれ光-電気-光のOEO変換を不要とし、光ネットワークシステム1内全てにおいて光通信化を実現し得るようになされている。
【0038】
次に、このような光ネットワークシステム1に用いるOLT2cの回路構成について以下説明する。なお、この光ネットワークシステム1に用いる各OLT2a,2b,2c,2d,2eは全て同一構成を有することから、説明の便宜上、そのうちOLT2cにだけ着目して以下説明する。
【0039】
図2に示すように、OLT2cは、OLT2bからリング状光ファイバ3を介して光波長多重バースト信号を波長分離手段21により受け取り、この波長分離手段21によって、受信用に予め割り当てられた波長λc1と、他のOLT2a,2b,2d,2eに割り当てられた波長λa1,λb1,λd1,λe1とに光波長多重バースト信号を分波し得る。
【0040】
実際上、この波長分離手段21は、例えば波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)からなり、自己に割り当てられた波長λc1からなる光信号を下り方向信号として光波長多重バースト信号から抽出すると、この下り方向信号を光カプラ23,25を介して第1光ファイバ6に送出し得る。
【0041】
これによりOLT2cは、当該OLT2cとは離れた箇所に設置された光スプリッタ7まで第1光ファイバ6を介して下り方向信号を伝送し得るようになされている。かくして、OLT2cは、光スプリッタ7で下り方向信号を分岐させ、同じ内容の下り方向信号を各ONU10a,10b,…,10xにマルチキャスト配信し、各ONU10a,10b,…,10xにおいてそれぞれ自己宛の光信号を抽出させ、自己以外の他のONU宛の光信号を廃棄させ、ONU10a,10b,…,10x毎にそれぞれ必要なデータを取得し得るようになされている。
【0042】
一方、波長分離手段21は、自己に割り当てられた波長λc1を分離した後の残りの光波長多重バースト信号をそのまま波長統合手段22に送出し、当該波長統合手段22にて必要に応じて送信用の上り方向信号を合波し隣接するOLT2dに伝送し得るようになされている。ここで、OLT2cは、波長統合手段22において光波長多重バースト信号に上り方向信号を合波する際、以下のようにして複数のONU10a,10b,…,10xにおける送信タイミングを調整し得るようになされている。
【0043】
実際上、ONU10a,10b,…,10xは、上り方向信号として光波長多重バースト信号に合波したいデータのデータ量を示した光信号(以下、これをレポート信号と呼ぶ)を生成し、これを光スプリッタ7を介してOLT2cに送出する。OLT2cは、ONU10a,10b,…,10xからそれぞれ光スプリッタ7を介してレポート信号を光カプラ25で受け取ると、これらレポート信号を光カプラ25から光スプリッタ27に送出し、当該光スプリッタ27によりゲート・レポートコントローラ28に送出し得る。
【0044】
これにより、ゲート・レポートコントローラ28は、例えばONU10aからのレポート信号を受け取ると、当該レポート信号を光電変換し、その結果得られた電気信号に基づいて、ONU10aが送出したいデータ量を検出して、当該データ量を基にONU10aの送信タイミングを決定し得るようになされている。
【0045】
このとき、ゲート・レポートコントローラ28は、光スイッチ29に制御信号を送出しており、当該レポート信号が波長統合手段22に送出されないように、当該光スイッチ29においてレポート信号を遮断させ得るようになされている。そして、ゲート・レポートコントローラ28は、送信タイミングを示す電気信号をゲートメッセージ用光源30に送出し、当該ゲートメッセージ用光源30により当該送信タイミングを示した電気信号を光電変換して光信号を生成して、これをゲート信号として光カプラ23に送出し得る。
【0046】
これにより光カプラ23は、ONU10aにまで受け渡される下り方向信号にゲート信号を合波し、ONU10aにゲート信号を受け取らせて送信タイミングを通知し得るようになされている。かくして、ONU10aは、この送信タイミングに従ったタイミングで光バースト信号を送出することで、光スプリッタ7にて他のONU10b,…,10xから送信された光バースト信号と衝突することなく時分割多重した上り方向信号を生成させ得るようになされている。
【0047】
これにより、OLT2cは、外部の光スプリッタ7から第1光ファイバ6を介して上り方向信号を光カプラ25により受け取り、これを光スプリッタ27を介して光スイッチ29に送出し得る。この際、光スイッチ29は、ゲート・レポートコントローラ28から制御信号を受け取っていないことから、光経路が切り替えられ、光スプリッタ27から受け取った上り方向信号を波長統合手段22にそのまま送出し得るようになされている。
【0048】
波長統合手段22は、波長分離手段21から受け取った光波長多重バースト信号に上り方向信号を合波し、これをリング状光ファイバ3を介して隣接したOLT2dへ送出し得るようになされている。このようにして、OLT2cは、ONU10a,10b,…,10xからの光バースト信号を時分割多重した上り方向信号を、光波長多重バースト信号に合波し、リング状光ファイバ3を介してOLT2d,2eを経由させ、アクセスブリッジ4まで送出し得るようになされている。
【0049】
以上の構成において、光ネットワークシステム1では、上流ネットワークにアクセスブリッジ4を介して接続されたリング状光ファイバ3に沿って複数のOLT2a〜2eを配置して、各OLT2a〜2eに第1光ファイバ6を介して光スプリッタ7を接続し、第1光ファイバ6を光スプリッタ7で複数の第2光ファイバ8a,8b,…,8xに分岐して、この第2光ファイバ8a,8b,…,8xにそれぞれONU10a,10b,…,10xを接続するようにした。
【0050】
また、この光ネットワークシステム1を構成するOLT2a〜2eでは、リング状光ファイバ3を巡回する光波長多重バースト信号の中から、それぞれ自己に割り当てられた波長λa1〜λe1の光信号を下り方向信号として分離し、この下り方向信号を光スプリッタ7を介して各ONU10a,10b,…,10xにマルチキャスト配信するようにした。
【0051】
このように、この光ネットワークシステム1では、各OLT2a〜2eがそれぞれ自己宛の光信号を下り方向信号として光波長多重バースト信号から分離することができ、OLT2a〜2e毎に接続されたONU10a,10b,…,10xに対して下り方向信号をそれぞれ受け渡し、各ONU10a,10b,…,10xに対して、下り方向信号の中から自己宛の光信号のみを分離させることで、ONU10a,10b,…,10x毎に固有のデータをそれぞれ取得させることができる。
【0052】
また、この光ネットワークシステム1では、ONU10a,10b,…,10xからOLT2c方向(上り方向)x2に光信号を送出するときには、各ONU10a,10b,…,10xで生成した光バースト信号が光スプリッタ7で時分割多重され、下り方向信号の波長λa1〜λe1と異なる波長λa2〜λe2の上り方向信号を生成し、これをOLT2a〜2eにて光波長多重バースト信号に合波するようにした。
【0053】
これにより、光ネットワークシステム1では、各ONU10a,10b,…,10xからの光バースト信号を上り方向信号としてそのまま光波長多重バースト信号に合波して、リング状光ファイバ3に接続されたアクセスブリッジ4に受け渡すことができる。かくして、光ネットワークシステム1では、アクセスブリッジ4により、上り方向信号を送信先に割り当てられた波長に変換して当該送信先の下り方向信号を新たに生成し、これを光波長多重バースト信号に合波することで、送信先にて自己に割り当てられた波長を基に下り方向信号を抽出させ、送信元であるONU10a,10b,…,10xと、送信先との間で光通信を行え得る。
【0054】
このように、この光ネットワークシステム1では、リング状光ファイバ3を巡回する光波長多重バースト信号の授受をOLT2a〜2eが行う際に、当該OLT2a〜2eにおいて光信号の波長変換を行う必要がないため、各OLT2a〜2eにおいて光-電気-光のOEO変換が不要となり、その分、各OLT2a〜2eの回路構成を簡素化し得る。
【0055】
また、この光ネットワークシステム1では、リング状光ファイバ3に光波長多重バースト信号を巡回させ、OLT2a〜2e毎にそれぞれ割り当てられた固有の波長λa1〜λe1を基に光波長多重バースト信号から下り方向信号を分離したり、或いは当該光波長多重バースト信号に上り方向信号を合波し、また、これら下り方向信号及び上り方向信号を用いてOLT及びONU10a,10b,…,10x間で光通信を行うようにしたことで、OLT2a〜2e間や、OLT2a〜2e及びONU10a,10b,…,10x間全てで光通信が可能となり、ONU10a,10b,…,10xにおいて例えば100Mbpsから1Gbps、或いは1Gbpsから10Gbps等の伝送速度のアップグレードを容易に行え得る。
【0056】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、例えば、OLT2a〜2eの回路構成については種々の構成からなる回路を用いるようにしてよい。また、上述した実施の形態においては、リング状光伝送路、第1光伝送路及び第2光伝送路として、光ファイバ構造からなるリング状光ファイバ3、第1光ファイバ6及び第2光ファイバ8a,8b,…,8xを適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光波長多重バースト信号や、下り方向信号、上り方向信号を伝送できればこの他種々のリング状光伝送路、第1光伝送路及び第2光伝送路を適用してもよい。
【0057】
また、上述した実施の形態においては、リング状光ファイバ3に配置された各OLT2a〜2e毎にそれぞれ固有の波長λa1〜λe1を割り当てて、例えば1つのOLT2cが1つの波長λc1の光信号を下り方向信号として光波長多重バースト信号から抽出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、リング状光ファイバ3に配置された複数のOLTを所定数毎にグループ化し、グループ単位でそれぞれ固有の波長λa1〜λe1を割り当てて、グループ内の全てのOLTで1つの波長λa1の光信号を光波長多重バースト信号から分離するようにしてもよい。
【0058】
なお、この場合、各グループでは、複数のOLTのうち一つをマスタOLTとし、他の残り全てをスレーブOLTとして設定し、同一波長を用いるスレーブOLT全てをマスタOLTが統括制御し得るようになされている。実際上、このマスタOLTは、各スレーブOLTに光スプリッタを介して接続されたONUからのレポート信号を、各スレーブOLTから受け取り、当該レポート信号を基にゲート信号を生成し、自己に接続されたONUだけでなく、スレーブOLTにおけるONUの光バースト信号の送信タイミングをも制御し得るようになされている。
【0059】
そして、このような構成を有した光ネットワークシステムであっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏することができ、また同一波長を複数のOLTで共有させ、OLTに接続するONUの数を増加させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 光ネットワークシステム
2a,2b,2c,2d,2e OLT(局側終端装置)
3 リング状光ファイバ(リング状光伝送路)
4 アクセスブリッジ
6 第1光ファイバ(第1光伝送路)
7 光スプリッタ
8a,8b,…,8x 第2光ファイバ(第2光伝送路)
10a,10b,…,10x ONU(加入者側終端装置)
21 波長分離手段
25 光カプラ(配信手段、取得手段)
22 波長統合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流ネットワークに接続されたリング状光伝送路に沿って複数の局側終端装置が配置され、各前記局側終端装置には、第1光伝送路を介して光スプリッタが接続され、該第1光伝送路が前記光スプリッタで複数の第2光伝送路に分岐されて、該第2光伝送路にそれぞれ加入者側終端装置が接続されており、
前記局側終端装置は、
前記リング状光伝送路を巡回する光波長多重バースト信号の中から、それぞれ自己に割り当てられた波長の光信号を下り方向信号として抽出する波長分離手段と、
前記光スプリッタを介して各前記加入者側終端装置に前記下り方向信号をマルチキャスト配信する配信手段と、
各前記加入者側終端装置からの光バースト信号が時分割多重され、前記下り方向信号と波長が異なり前記局側終端装置毎に固有に割り当てられた波長の上り方向信号を取得する取得手段と、
前記上り方向信号を前記光波長多重バースト信号に合波する波長統合手段と
を備えることを特徴とする光ネットワークシステム。
【請求項2】
前記リング状光伝送路には、前記上流ネットワークシステムと接続したアクセスブリッジが設けられており、
前記アクセスブリッジは、
前記複数の局側終端装置のうち、一の局側終端装置からの上り方向信号を前記光波長多重バースト信号から抽出し、前記上流ネットワークシステムの送信先、又は他の局側終端装置のいずれかに割り当てられた波長の下り方向信号に、前記上り方向信号を変換する波長変換手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の光ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175305(P2012−175305A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34015(P2011−34015)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信研究機構、「高度・放送研究開発委託研究/λアクセス技術の研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】