説明

光ハイブリッド回路及び光受信機

【課題】2:2光カプラを用い、導波路交差を避けた光ハイブリッド回路を提供する。
【解決手段】第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラと、第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラと、第2の出力チャネルと第3の出力チャネルに接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラと、第5、第6の出力チャネルに接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラと、第1の出力チャネルと第7の出力チャネルに接続された第9、第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラと、第8の出力チャネルと第4の出力チャネルに接続された第11、第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ハイブリッド回路及び光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多量の光情報伝送を可能にするため、多値位相偏移変調方式が活発に研究開発されている。多値位相偏移変調信号を復調するためには、通常、90度ハイブリッドを含む光受信機が用いられる。90度ハイブリッドは、信号の位相変調状態により、異なる分岐比を有する出力形態を示す。90度ハイブリッドを、小型に且つ広波長帯域を有する特性に製造することが望まれる。このような条件を満たすためには、90度ハイブリッドを半導体基板上にモノリシックに集積化することが望まれる。
【0003】
モノリシック集積化が可能な光導波路構造を有する90度ハイブリッドとして、4:4多モード干渉(MMI:multimode interference)カプラが挙げられる(例えば、IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 5, No. 6, pp. 701-703, 1993年6月)。4:4MMIカプラの場合、入力側の4入力チャネルの内、中心軸非対称性を有する2つのチャネルを適切に選べば、MMI領域内部のモード干渉作用により、90度づつ異なる位相関係を得ることができる。
【0004】
図7Aは、4:4MMIカプラの構成を概略的に示す。MMIカプラ101の4入力チャネルの内の2つの入力チャネルに信号Sと局部発振光LOが入射すると、4出力チャネルから2つの同相信号I,および2つの直交位相信号Qが出力し、90度ハイブリッドとして機能する。出力側で外側の2チャネルを1対の同相信号Iとして取り出すため、2箇所の導波路交差を用いる必要がある。同一層内で導波路交差を形成すると、過剰損、クロストークの原因となる。過剰損、クロストークを最小限に抑えるため、交差する導波路は直交させることが望まれる。さらに、ペアとなる導波路の光学長は同一とする。このため、素子サイズの増大が避けにくい。動作波長帯域の面でも不利となる。
【0005】
1対の入力チャネルと、同相関係にある1対の第1出力チャネルと、同相関係にある1対の第2出力チャネルとを備えるMMIカプラと、その同相関係にある2つの出力チャネルに接続された2つの入力チャネルと、2つの出力チャネルを備え、同相関係にある信号を直交位相関係にある信号に変換する2:2光カプラとを有する光ハイブリッド回路も提案されている(例えば特開2010−171922号)。
【0006】
図7Bは、2:4MMIカプラ102と2:2MMIカプラ103を用い、2:4MMIカプラ102から1対の同相関係Iにある信号(S−L)、(S+L)を出力し、2:2MMIカプラ103から1対の直交位相関係Qにある信号(S+jL)、(S−jL)を出力している。
【0007】
入力側、出力側に、それぞれ2つの2:2光カプラを並列に配置し、中間で1つの導波路交差を形成し、位相シフタを組み合わせた方式も提案されている(例えば、Journal of Lightwave Technology, Vol. 7, N0. 5, pp. 794-798, 1989年5月)。2:2光カプラは、素子設計が比較的容易であり、作製トレランスにも優れている。これらを組み合わせて90度ハイブリッドを実現することができる。
【0008】
図8Aは、4つの2:2光カプラと1つの位相シフタを組み合わせた方式を概略的に示す。入力側に2つの2:2光カプラ111,112を併設し、4つの出力チャネルの内、内側の2チャネルを交差させ、出力側の2つの2:2光カプラ121,122の入力チャネルに接続する。導波路交差を1箇所に低減できる。ここで、内側の2つのチャネルの導波路交差を90度で行うとし、外側の2つのチャネルはペアとなるチャネルと同一光学長とする。さらに、位相シフタ131を一方の外側チャネル、図では下側のチャネル、に接続し、基本的に±(π/2)の位相差を得る。このようにして、出力側の2つの光カプラ121,122から、2つの直交信号Q,2つの同相信号Iを得る。直交する2つの内側チャネルの曲率半径をR,外側の2つのチャネルの曲率半径をR=R/2とする。外側の2つのチャネルが規定する幅を、90度ハイブリッドの幅W,入力側の光カプラ111,112の入力側端面から出力側光カプラ121,122の出力側端面までの長さを、90度ハイブリッドの長さLとすると、90度ハイブリッドの占有面積(dimension)Dは、D=W*Lで近似できる。各光カプラの長さは、105μmと設定した。交差するチャネルは、光カプラ出力端面を出てから交差するまでに角度θ曲げられるとする。交差角度は2θとなる。
【0009】
図8Bは、90度ハイブリッドの占有面積Dの曲率半径R1に対する関係を示すグラフである。交差角度は90度とした。横軸は曲率半径R1をリニアスケールで示し、縦軸は占有面積Dをログスケールで示す。極率半径R1の増加と共に、占有面積は指数関数的に増加する。信号強度のロスを抑制するためには、曲率半径は大きいことが好ましく、例えば、200μmに設定する。この時、占有面積Dは、約0.4mm弱である。
【0010】
図8Cは、90度ハイブリッドの占有面積Dの、交差するチャネルの交差角度(2θ)に対する関係を示すグラフである。曲率半径Rは200μmとした。横軸は、交差角度(2θ)をリニアスケールで示し、縦軸は占有面積Dをログスケールで示す。交差角度(2θ)の増加と共に、占有面積Dは指数関数的に増加する。交差角度2θを90度とすると、占有面積Dは、約0.4mm弱となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−171922号公報、
【非特許文献1】IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 5, No. 6, pp. 701-703, 1993年6月、
【非特許文献2】Journal of Lightwave Technology, Vol. 7, N0. 5, pp. 794-798, 1989年5月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、2:2光カプラを用い、導波路交差を避けた光ハイブリッド回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1観点によれば、
第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラと、
第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、前記第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラと、
第2の出力チャネルと第3の出力チャネルに同じ光学長で接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラと、
第5、第6の出力チャネルに同じ光学長で接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラと、
第1の出力チャネルと第7の出力チャネルに接続された第9、第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラと、
第8の出力チャネルと第4の出力チャネルに接続された第11、第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラと、
を有し、前記第4の光カプラの前記第7、第8の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネル、及び前記第6の光カプラの前記第11の入力チャネルまでの光学長は等しく、前記第1の光カプラの前記第1の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第9の入力チャネルまでの光学長、および前記第2の光カプラの前記第4の出力チャネルから前記第6の光カプラの前記第12の入力チャネルまでの光学長は、等しく、且つ前記第1の光カプラの前記第2の出力チャネルから前記第3、第4の光カプラを介して前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネルまでの光学長と等しい、光ハイブリッド回路
が提供される。
【0014】
本発明の他の観点によれば、
光受信領域と、処理領域とを含む半導体基板と、
光受信領域において第1の屈折率を有する導波層と第1の屈折率より低い第2の屈折率を有し、導波層を挟むクラッド層とをハイメサ構造に加工、パターニングした光ハイブリッド回路であって;
第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラと、
第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラと、
第2の出力チャネルと第3の出力チャネルに同じ光学長で接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラと、
第5、第6の出力チャネルに同じ光学長で接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラと、
第1の出力チャネルと第7の出力チャネルに接続された第9、第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラと、
第8の出力チャネルと第4の出力チャネルに接続された第11、第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラと、
を有する、光ハイブリッド回路と、
を有し、前記第4の光カプラの前記第7、第8の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネル、及び前記第6の光カプラの前記第11の入力チャネルまでの光学長は等しく、前記第1の光カプラの前記第1の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第9の入力チャネルまでの光学長、および前記第2の光カプラの前記第4の出力チャネルから前記第6の光カプラの前記第12の入力チャネルまでの光学長は、等しく、且つ前記第1の光カプラの前記第2の出力チャネルから前記第3、第4の光カプラを介して前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネルまでの光学長と等しい、光ハイブリッド回路と、
を有する光受信機
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−1】および、
【図1−2】図1A〜1Gは、第1の実施例による光ハイブリッド回路を説明するためのダイアグラム、グラフ、であり、図1Aは構成を示すダイアグラム、図1Bは機能を示すダイアグラム、図1Cは、曲率半径に対する面内面積を従来の素子と比較して示すグラフ、図1Dは、位相差による4出力の変化を示すグラフ、図1Eは波長に対する4出力の変化を示すグラフ、図1Fは波長に対する相対位相ずれを示すグラフ、図1Gは、製造方法を説明するための基板断面図である。
【図2】図2A〜2Dは、第1の実施例の変形例を示すダイアグラムである。
【図3】図3は、第2の実施例による光受信機を示すダイアグラムである。
【図4】図4は、第3の実施例による光ハイブリッド回路を示すダイアグラムである。
【図5】図5は、第4の実施例による光受信機を示すダイアグラムである。
【図6】図6は実施例による光受信機を集積化した半導体基板の平面図である。
【図7】図7A,7Bは、公知技術による光ハイブリッド回路の例を示すダイアグラムである。
【図8】図8A,8B、8Cは、他の公知技術による光ハイブリッド回路の例を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施例による光ハイブリッド回路を説明する。
【0017】
図1A,1Bは、第1の実施例による光ハイブリッド回路の構成、及び作用を示すダイアグラムである。図1Aに示すように、光ハイブリッド回路は、第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラPC1と、第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラPC2と、第2の出力チャネルと第3の出力チャネルに同じ光学長の光導波路WG2,WG3で接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラPC3と、第5、第6の出力チャネルに同じ光学長の光導波路WG5,WG6で接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラPC4と、第1の出力チャネルに光導波路WG1で接続された第9入力チャネルと、第7の出力チャネルに光導波路WG7で接続された第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラPC5と、第8の出力チャネルに光導波路WG8で接続された第11の入力チャネルと、第4の出力チャネルに光導波路WG4で接続された第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラPC6と、光導波路WG4に接続された位相シフタPSを含む。
【0018】
光導波路WG7とWG8の光学長は等しく、光導波路WG1およびWG4の光学長は、光導波路WG2(WG3),第3の光カプラPC3,光導波路WG5(WG6),第4の光カプラPC4,光導波路WG7(WG8)の総光学長に等しい。光導波路WG4は位相シフタPSを備える。第1の入力チャネルに信号Sが供給され、第4の入力チャネルに局所発振光(基準光)LO(簡単化のため、以下Lで表記する)が供給される。光カプラPC5が同相信号Iを出力し、光カプラPC6が直交位相信号Qを出力する。
【0019】
図1Bを参照して、光ハイブリッド回路の機能を説明する。光カプラPCは、2つの入力チャネルに供給された入力信号をそれぞれ2分割し、一方は位相を90度ずらして出力チャネルに供給する機能を有する。入力が一方のみの場合はその入力信号が2分割される。なお、ベクトル量であるので90度位相のずれた2成分に分割されると、振幅は1/(21/2)になる。第1の入力チャネルに信号Sが供給され、第4の入力チャネルに局所発振光(基準光)Lが供給される。光カプラPC1は、第1、第2の出力チャネルに信号Sを2分割し、位相を90度ずらした信号を発生させる。同様に、第2の光カプラPC2は、第3、第4の出力チャネルに基準光Lを2分割し、位相を90度ずらした信号を発生させる。第3、第4の光カプラPC3、PC4は、結果としては、2入力を交換した出力を形成する。第5の光カプラには、信号S成分と−π/2位相のずれた基準光L成分が供給され、同相信号S−L、S+Lを供給する。第6の光カプラPC6には、−π/2位相のS成分とL成分が供給され、直交信号S−jL,S+jLを供給する。
【0020】
この構成を、以下のように考えることもできるであろう。図中、光カプラPC3,PC4を外すと、上部では、光カプラPC1、PC5がマッハツェンダ干渉計を構成し、下部では光カプラPC2、PC6がマッハツェンダ干渉計を構成する。ここで、上下のマッハツェンダ干渉計の内側のアームに、新たなマッハツェンダ干渉計を構成する光カプラPC3,PC4を直列接続する。
【0021】
なお、信号光S及び基準光Lは、
S = P1/2exp[−j・Ψ
L = P1/2exp[−j・Ψ
と表記できる。ここで、PおよびPは、信号光及び基準光の強度であり、ΨおよびΨは信号光及び基準光の位相である。信号光、基準光は同じ周波数成分を有すると仮定している。なお、第3及び第4光カプラからなるマッハツェンダ干渉計により、位相関係が90度回転する。4つの出力チャネルにおける相対位相関係は、S−L,S+L,S−jL,S+jLとなり、直交位相関係を示すことがわかる。90度ハイブリッドとして機能する。
【0022】
図1Bの上下のマッハツェンダ干渉計において、一方のアームは2つの光カプラを経由している。他方のアームは単一モード導波路である。従って2つのアームの光路長は一般的には異なる。光路長差による位相ずれδφEXが生じる。位相ずれδφEXが生じると、直交位相関係はδφEXの−2倍に比例してずれることになる。
【0023】
FM = (p+π)/2 − 2・δφEX (radian)
ここで、pは任意の整数、FMは所望の直交位相関係からの変化量を示す指数である。理想の直交関係、
FM = ±π/2 (radian)
とするためには、
φk = (p+π)/2 + 2・δφEX (radian)
に設定すればよい。
【0024】
本実施例においては、図1Aに示すように導波路交差が不要である。従って、曲げ導波路の曲げ角度を容易に小さくすることができる。
【0025】
図1Cは、曲げ導波路の曲率半径Rに対する90度ハイブリッド回路の占有面積を示すグラフである。曲げ半径に依存せず、占有面積をほぼ一定に保つことが出来る。なお、参考のため、図8A、8Bに示す従来の素子面積を併せて示す。曲率半径200μmの場合、従来素子と較べて、ほぼ1/70以下に小型化することができる。導波路の形状に対する要求も少なく、導波路の総長を短くすることができ、作製工程に由来する揺らぎを小さくすることもできる。
【0026】
図1Dは、2つの光信号の相対的位相差Δρに対する透過特性を示す。横軸が相対的位相差Δρを示し、縦軸が4つのチャネル出力Ch1〜Ch4の透過率(任意メモリ)を示す。シミュレーションに用いた90度ハイブリッドは、後述するInP基板上にInGaAsP導波層を有するハイメサ導波路構造を有するとした。
【0027】
図1Gは、90度ハイブリッド回路を製造するプロセスを説明するための概略断面図である。n型InP基板11の上に、例えば有機金属気相成長エピタキシ(MOVPE)によりアンドープのGaInAsP層12(発光波長1.3μm)を厚さ約0.3μm成長し、続いてp型InP層13を厚さ約2.0μm成長する。p型InP層13の上にSiO膜等をスパッタリング等で形成し、フォトレジストパターンを用いて所望形状にエッチングし、ハードマスク14を形成する。ハードマスク14をエッチングマスクとし、例えば誘導結合プラズマ(ICP)反応性イオンエッチング等のドライエッチングで高さ約3.0μmのハイメサ構造を形成する。光カプラ、導波路等をパターニングすることにより、90度ハイブリッド回路を形成することができる。
【0028】
例えば、2:2光カプラは多モード干渉(MMI)カプラとし、50:50の分岐比を得るように、導波路幅2.0μm、MMIカプラの導波路アレー間隔1.0μm、MMIカプラの幅5.0μm、MMIカプラの長さ105μm、に設定した。位相シフタφkの適正化のため、φkの値をビーム伝播法に基づく数値解析を用いて求めた。φEXは−0.816π(radian)と見積もられ、最適なφkは、
φk = (3π/2) + 2・(−0.816π) = −0.132π (radian)
となった。図1Aに示す位相シフタPSのシフト量を−0.132πに設定した時、図1Dに示すような特性が得られる。過剰損失やクロストークも生じず、良好な90度ハイブリッドとして機能することが判る。
【0029】
図1E,1Fは、図1Aに示す90度ハイブリッド回路の透過振幅特性及び相対位相ずれ(Δφ)特性を示す。横軸はCバンドの波長を示し、縦軸が透過振幅特性及び相対位相ずれ(Δφ)特性を示す。図1Eに示す分岐特性は、波長によらずチャネル間偏差が0.4dB以下に抑えられている。同等強度の4成分に分割されている。図1Fに示す相対位相ずれは、Cバンド帯域内、全チャネルで±5度以下である。経験上±5度以内の位相ずれであれば、エラーなく完全に復調することができる。
【0030】
なお、InP基板上に90度ハイブリッド回路を形成する場合を説明したが、同一基板上に局所発振光源、フォトダイオード、論理回路等を作製することも可能である。Si基板上に、酸化シリコン等の誘電体層を介してSi層を有するSOI基板を用いて90度ハイブリッド回路を形成することもできる。GaAs基板を用いることも可能である。なお、90度光ハイブリッド回路の構成は図1Aに示すものに限られない。
【0031】
図2Aは、位相シフタPSを、導波路WG4ではなく、導波路WG1に設ける場合を示す。このように、位相シフタは下部のマッハツェンダ干渉計のアームに配置しても、上部のマッハツェンダ干渉計のアームに配置してもよい。同相成分と直交成分が、図1Aと較べて入れ替わる。素子の寸法、特性は変わらない。
【0032】
図2Bは、光カプラPC3の入力チャネルと光カプラPC1,PC2の出力チャネルの間の光導波路を省略して、光カプラPC3を光カプラPC1,PC2に直結した構成をしめす。
【0033】
図2Cは、さらに光カプラPC3と光カプラPC4との間の光導波路も省略し、直結した場合を示す。寸法の小さな90度ハイブリッド回路を作製するのに有利な構成となろう。
【0034】
図2Dは、直列に接続した光カプラPC3,PC4の分岐比を50:50でなく、X:YとY:Xに設定する場合を示す。たとえば、X=85,Y=15である。反対の比とすることにより、同じ結果を得ることができる。原理的には任意の比率が可能である。
【0035】
図3は、第2の実施例による光受信機を示すダイアグラムである。図1Aに示した90度ハイブリッド回路21の入力側に基準光発振器LOを配置して、第2光カプラの入力チャネルに基準光を供給する。また、90度ハイブリッド回路21の2対の出力をそれぞれバランスドフォトダイオードBPDで差動検出し、トランスインピーダンスアンプTIAを介して、アナログデジタル変換機ADCでデジタル信号に変換し、論理回路31で論理演算する。局所発振器LO,光カプラPC,光導波路WGの部分をまとめて光回路20とし、バランスドフォトダイオードBPD以下の回路部分を電子回路30とする。
【0036】
図6に示すように、InP基板に光回路領域20、電子回路領域30を形成し、集積化した光受信機を形成することができる。
【0037】
図4は、基準光源を特に用いない第3の実施例を示す。90度ハイブリッド回路21の前段に、片方のアームに光路長差を有する1:2光カプラPPCが設けられている。差分4位相偏移変調(DQPSK differential quadrature phase shift keying)信号光のような、差分位相変調信号が1:2光カプラPPCに供給される。一方のアームでDQPSK信号パルスの1ビット分の遅延が与えられ、次段の2入力が形成される。信号光パルスは、1:2MMIカプラを経由し、2つの経路に分かれた信号光同士は、前述の位相差δρを形成し、干渉する。結果的に1:2MMIカプラ以降の動作は、第1の実施例の90度ハイブリッド同様である。
【0038】
図5は、図4に示す光ハイブリッド回路を用いた光受信機を示す。図3の発振機LOの代わりに、1:2MMIカプラPPCを用いている。動作はほぼ同様である。
【0039】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限られるものではない。例えば、種々の変更、置換、改良、修正、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラと、
第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、前記第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラと、
前記第2の出力チャネルと前記第3の出力チャネルに同じ光学長で接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラと、
前記第5、第6の出力チャネルに同じ光学長で接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラと、
前記第1の出力チャネルと前記第7の出力チャネルに接続された第9、第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラと、
前記第8の出力チャネルと前記第4の出力チャネルに接続された第11、第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラと、
を有し、前記第4の光カプラの前記第7、第8の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネル、及び前記第6の光カプラの前記第11の入力チャネルまでの光学長は等しく、前記第1の光カプラの前記第1の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第9の入力チャネルまでの光学長、および前記第2の光カプラの前記第4の出力チャネルから前記第6の光カプラの前記第12の入力チャネルまでの光学長は、等しく、且つ前記第1の光カプラの前記第2の出力チャネルから前記第3、第4の光カプラを介して前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネルまでの光学長と等しい、光ハイブリッド回路。
【請求項2】
前記第1〜第6の光カプラが、多モード干渉カプラである請求項1記載の光ハイブリッド回路。
【請求項3】
前記第1の出力チャネルと前記第9の入力チャネルを接続する第1の導波路と、
前記第4の出力チャネルと前記第12の入力チャネルを接続する第4の導波路と、
をさらに有する請求項1記載の光ハイブリッド回路。
【請求項4】
前記第2の出力チャネルと前記第5の入力チャネルを接続する第2の導波路と、
前記第3の出力チャネルと前記第6の入力チャネルを接続する第3の導波路と、
前記第5の出力チャネルと前記第7の入力チャネルを接続する第5の導波路と、
前記第6の出力チャネルと前記第8の入力チャネルを接続する第6の導波路と、
前記第7の出力チャネルと前記第10の入力チャネルを接続する第7の導波路と、
前記第8の出力チャネルと前記第11の入力チャネルを接続する第8の導波路と、
をさらに有する請求項3記載の光ハイブリッド回路。
【請求項5】
前記第5、第6の入力チャネルは、前記第2、第3の出力チャネルに直接接続され、前記第7、第8の出力チャネルは前記第10、第11の入力チャネルに直接接続されている請求項3記載の光ハイブリッド回路。
【請求項6】
前記第5の出力チャネルと前記第7の入力チャネルを接続する第5の導波路と、
前記第6の出力チャネルと前記第8の入力チャネルを接続する第6の導波路と、
をさらに有する請求項5記載の光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記第7、第8の入力チャネルは、前記第5、第6の出力チャネルに直接接続されている請求項5記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記第1の導波路又は前記第4の導波路は位相制御器を備える請求項3記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
前記位相制御器は、前記第5の光カプラに入力する2つの信号間の位相差と、前記第6の光カプラに入力する2つの信号間の位相差とがπ/2ずれるように位相を制御する請求項8記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
前記第1〜第6の光カプラは、入力する信号を等分岐比で分配する請求項1記載の光ハイブリッド回路。
【請求項11】
前記第1、第2、第5、第6の光カプラは、入力する信号を等分岐比で分配し、前記第3光カプラは入力する信号をX:Yで分配し、前記第4光カプラは入力する信号をY:Xで分配する請求項1記載の光ハイブリッド回路。
【請求項12】
1つの入力チャネルと、前記第1の光カプラの一入力、及び前記第2の光カプラの一入力に接続された、位相差を有する2つの出力チャネルを有する入力用光カプラをさらに有する請求項1記載の光ハイブリッド回路。
【請求項13】
光領域と、電子領域とを含む半導体基板と、
前記光領域において第1の屈折率を有する導波層と前記第1の屈折率より低い第2の屈折率を有し、前記導波層を挟むクラッド層とをハイメサ構造に加工、パターニングした光ハイブリッド回路であって;
第1、第2の入力チャネルと、第1、第2の出力チャネルを有する第1の光カプラと、
第3、第4の入力チャネルと、第3、第4の出力チャネルを有し、前記第1の光カプラと並列に配置された第2の光カプラと、
前記第2の出力チャネルと前記第3の出力チャネルに同じ光学長で接続された第5、第6の入力チャネルと、第5、第6の出力チャネルを有する第3の光カプラと、
前記第5、第6の出力チャネルに同じ光学長で接続された第7、第8の入力チャネルと、第7、第8の出力チャネルを有する第4の光カプラと、
前記第1の出力チャネルと前記第7の出力チャネルに接続された第9、第10の入力チャネルと、第9、第10の出力チャネルを有する第5の光カプラと、
前記第8の出力チャネルと前記第4の出力チャネルに接続された第11、第12の入力チャネルと、第11、第12の出力チャネルを有する第6の光カプラと、
を有し、前記第4の光カプラの前記第7、第8の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネル、及び前記第6の光カプラの前記第11の入力チャネルまでの光学長は等しく、前記第1の光カプラの前記第1の出力チャネルから前記第5の光カプラの前記第9の入力チャネルまでの光学長、および前記第2の光カプラの前記第4の出力チャネルから前記第6の光カプラの前記第12の入力チャネルまでの光学長は、等しく、且つ前記第1の光カプラの前記第2の出力チャネルから前記第3、第4の光カプラを介して前記第5の光カプラの前記第10の入力チャネルまでの光学長と等しい、光ハイブリッド回路と、
を有する光受信機。
【請求項14】
前記光領域に形成され、前記第1光カプラに入力信号を供給する入力部と、前記第2光カプラに局部発振光を供給する局部発振光発生部と、
前記電子領域に形成され、前記第9〜第12の出力チャネルの出射光を電気信号に変換する光電変換部と、
前記電子領域に形成され、演算処理を行う演算部と、
をさらに有する請求項13記載の光受信機。
【請求項15】
前記光電変換部が2組のバランスドフォトダイオードを有する請求項14記載の光受信機。
【請求項16】
前記光領域が、1つの入力チャネルと、前記第1の光カプラの一入力、及び前記第2の光カプラの一入力に接続された、位相差を有する2つの出力チャネルを有する入力用光カプラをさらに有する請求項13記載の光受信機。
【請求項17】
前記第1〜第6の光カプラが、多モード干渉カプラである請求項13記載の光受信機。
【請求項18】
前記第1の出力チャネルと前記第9の入力チャネルを接続する第1の導波路と、
前記第2の出力チャネルと前記第5の入力チャネルを接続する第2の導波路と、
前記第3の出力チャネルと前記第6の入力チャネルを接続し、前記第2の導波路と同じ光学長を有する第3の導波路と、
前記第4の出力チャネルと前記第12の入力チャネルを接続する第4の導波路と、
前記第5の出力チャネルと前記第7の入力チャネルを接続する第5の導波路と、
前記第6の出力チャネルと前記第8の入力チャネルを接続し、前記第5の導波路と同じ光学長を有する第6の導波路と、
前記第7の出力チャネルと前記第10の入力チャネルを接続する第7の導波路と、
前記第8の出力チャネルと前記第11の入力チャネルを接続し、前記第7の導波路と同じ光学長を有する第8の導波路と、
をさらに有する請求項13記載の光受信機。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−198292(P2012−198292A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60830(P2011−60830)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】