説明

光ヒューズ

【課題】光軸合わせ、交換が容易で、その構成が簡単な光ヒューズを提供する。
【解決手段】本発明の光ヒューズは、筐体の内部に、透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂と、未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持部と、光熱変換部と、形状変形部とを有する。このような光ヒューズに、光ファイバから過剰強度の光が入力されると、コアからの漏れ光が多くなる。そして、この漏れ光は光熱変換部に達し、光熱変換部を発熱させる。これにより、形状変化部は熱せられて変態温度を超えると収縮を始め、形状変化部より内周に配置された保持材に内部応力が発生する。そして、この内部応力によりコアが遮断されてヒューズ内の光導波路に光が通らなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー等の光導波路に既定値以上の強度の光が流れた際に、光導波路を遮断する光ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスティックや石英ガラス等からなる光ファイバーや、絶縁膜上に形成した単結晶シリコン基板上に酸化シリコン系の線路を設けたSOI(Silicon On Insulator)等の光導波路により光信号を送受信する光通信が普及している。このような光導波路においては、電気回路におけるヒューズと同様に、過剰な強度の光が流れた際に、光導波路を遮断する光ヒューズが提案されている。
【0003】
上記の光ヒューズとして、光導波路の途中に低融点ガラスや金属薄膜を配置し、既定値以上の強度の光が流れると、低融点ガラスや金属薄膜が溶融し、光導波路が遮断するものが提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。また、MEMSシャッターと光電池を組合せた光ヒューズが提案されている。
【特許文献1】特開平11−281842号公報
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.43(2004)L256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低融点ガラスや金属薄膜を用いた光ヒューズは、2本の光ファイバーを低融点ガラスや金属薄膜で挟む構成である。そのため、光ヒューズ間の光軸合わせが難く、光ヒューズの交換が困難である。さらに、また、MEMSシャッターを用いた光ヒューズは、その構成が大掛かりとなる。従って、光ヒューズの低廉化は難しい。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであって、光軸合わせ、交換が容易で、その構成が簡単な光ヒューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、該筐体の内部に、前記2箇所の前記透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂と、未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持部と、光熱変換部と、形状変形部とを有することを特徴とする光ヒューズにより解決される。
【0007】
または、上記の課題は、少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、該筐体の内部に、前記2箇所の前記透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂と、未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持部と、光熱変換部と、形状変形部と
を有することを特徴とする光ヒューズにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自己形成型光硬化によりコアを形成するので、光軸合わせが容易であるため、光ヒューズの交換が容易である。光ヒューズに交換後、ヒューズの両側の光ファイバ等からコア形成波長の光を導入することで、コアを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
図1(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る光ヒューズの断面図であり、図1(a)は横断面図であり、図2(b)は図1(a)のI−I線に沿った縦断面図である。
【0011】
本実施の形態に係る光ヒューズ100は、未硬化の光硬化性樹脂11と、光硬化性樹脂11の外周部に配置されて光硬化性樹脂11の漏れを防止する保持部12と、保持部の外周部に配置されて光を熱に変換する光熱変換部13と、光熱変換部13の外周部に配置され所定の温度を超えると収縮する形状変化部14と、形状変化部14の外周及び光硬化性樹脂11,保持部12, 光熱変換部13,及び形状変化部14の側面を覆う筐体10とを備えている。
【0012】
光硬化性樹脂11は、例えば特開2002−365459、特開2002−169038、特開2004−149579に記載された、任意の光硬化性樹脂のうち、融点又はガラス転位点が低いものを用いると良い。この点で(メタ)アクリル系又はエポキシ系の樹脂を用いることが望ましい。また、特開2002−169038、特開2004−149579に記載された、硬化機構と屈折率の異なる2種類の樹脂を用いて、高屈折率である光硬化性樹脂のみを硬化させる波長で硬化させても良い。この場合、残りの未硬化の樹脂混合物は、例えば熱硬化させても良い。
【0013】
保持材12は、光透過性を有し、光透過性樹脂11が漏れない材料であれば、任意の材料を用いることができる。
【0014】
光熱変換部13は、光を熱に変換する材料であれば、任意の材料を用いることができる。特に、炭素粉末(グラファイト)は安価に入手できるので、光熱変換部13として好適である。また、炭素粉末等の光熱変換材を保持部12に分散させてもよい。
【0015】
形状変化部14は、例えば、TiNi合金等の形状記憶合金からなり、所定の温度(変態温度)を超えると、収縮するようになっている。この変態温度は、TiNi合金の組成比により制御することができる。また、有機材料からなる熱収縮チューブにより形状変化部14を形成してもよい。このような有機材料として、PFA樹脂、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)等のフッ素系樹脂、フロロプラスティック系樹脂、シリコーン系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0016】
筐体10は、光透過性樹脂11が漏れない材料であれば、任意の材料を用いることができるが、少なくとも光透過性樹脂11と接する部分は光を透過する光透過部10wとなっている。
【0017】
次に、本実施の形態に係る光ヒューズを光ファイバーへ取り付ける方法について、図2(a),(b)及び(c)を参照して説明する。
【0018】
まず、図2(a)に示すように、所定の位置に貫通孔が設けられたコネクタ20の両端に光ファイバー30を固定する。
【0019】
次に、図2(b)に示すように、コネクタ20の窪みに光ヒューズ100を配置する。この際、予め、光ヒューズ20の光透過性樹脂11と光ファイバー30の位置が一致するようにコネクタ20の貫通孔は加工されている。
【0020】
最後に、光ファイバー30の両側から光硬化性樹脂11を硬化させうる波長の光を導入する。光硬化性樹脂1に内在させる光重合開始剤の吸収端に合わせて、例えば近紫外乃至紫又は青色レーザを用いると良い。すると、光ヒューズ100の未硬化の光硬化性樹脂1内部に、レーザーの光路に合わせて光硬化性樹脂硬化物から成るコア15が形成される。ここで、未硬化の光硬化性樹脂11してメタアクリル系樹脂のメタアクリレートを用いた場合、その硬化物であるコア15の屈折率は1.5程度である。一方、未硬化物である光透過性樹脂11の屈折率は1.45である。このようにして、コア15と光硬化性樹脂11との間に屈折率差が生じるので、図2(c)に示すように光導波路が形成される。
【0021】
上記の工程を経て、光ヒューズ100が光ファイバー30へ取り付けられる。
【0022】
このような光ヒューズ100に、光ファイバ30から過剰強度の光が入力されると、図3
(a)に示すように、コア15からの漏れ光Lが多くなる。この漏れ光はコア15外周の未硬化の光硬化性樹脂11を硬化させる場合もあるが、いずれにせよコア15からの漏れ光は保持材12を介して光熱変換部13に達し、光熱変換部13を発熱させる。この発熱により、形状変化部14は熱せられて変態温度を超えると収縮を始め、形状変化部14より内周に配置された保持材12に内部応力が発生する。そして、図3(b)に示すように、この内部応力によりコア15が遮断されてヒューズ内の光導波路に光が通らなくなる。
【0023】
このような本実施の形態の光ヒューズ100によれば、光ヒューズ100が遮断されても、コア15未形成の光ヒューズ100と交換が容易となる。また、光ヒューズ100の構成が単純であるため、安価に光ヒューズ100を提供することができる。
【0024】
形状変化部14として、形状記憶合金を用いた場合、コア15が遮断された後、その変態温度より低い温度まで戻せば、形状変化部14は膨張して変形前の形状に戻る。そのため、未硬化の光硬化性樹脂11及びコア15を新たな未硬化の光硬化性樹脂11と交換すれば、光ヒューズ100として再生させることができる。
【0025】
尚、上記の実施の形態では、保持部12の外周を取り囲むように光熱変換部13を配置したが、例えば、保持部12の上方のみに光熱変換部13を配置してよい。この場合、形状変化部13は光熱変換部13の上方のみに配置される。このように、光熱変換部13及び形状変形部13の配置及び形状は適宜、変更が可能である。
【0026】
また、上記の実施の形態では、光熱変換部13は炭素粉末により形成したが、炭素粉末と同様の効果を奏するものであれば変更が可能である。さらに、上記の実施の形態では、形状変形部14を形状記憶合金や熱収縮チューブにより形成したが、これらと同様に熱により変形(膨張又は収縮)する材料であれば変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る光ヒューズの断面図であり、図1(a)は横断面図であり、図2(b)は図1(a)のI−I線に沿った縦断面図である。
【図2】図2(a),(b)及び(c)は、本発明の実施の形態の光ヒューズを光ファイバーに取り付ける工程を示す縦断面図である。
【図3】図3(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る光ヒューズの遮断の機構を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 筐体
10w 光透過部
11 未硬化の光硬化性樹脂
12 保持部
13 光熱変換部
14 形状変化部
15 コア
20 コネクタ
30 光ファイバー
100 光ヒューズ
L 漏れ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
該筐体の内部に、前記2箇所の前記透明な部分を接続するように、自己形成型光硬化により形成された透明なコア部と、
コア部を取り巻く未硬化の光硬化性樹脂と、
未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持部と、
光熱変換部と
形状変形部と
を有することを特徴とする光ヒューズ。
【請求項2】
少なくとも相対する2箇所に、所望の波長光に対して透明な部分を有する筐体と、
該筐体の内部に、前記2箇所の前記透明な部分を接続するように保持された、自己形成型光硬化により硬化可能な未硬化の光硬化性樹脂と、
未硬化の光硬化性樹脂が外部に漏れないように保持する保持部と、
光熱変換部と
形状変形部と
を有することを特徴とする光ヒューズ。
【請求項3】
前記光熱変換部は、炭素粉末からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ヒューズ。
【請求項4】
前記形状変形部は形状記憶合金からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光ヒューズ。
【請求項5】
前記保持材と前記光熱変換部は一体化していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光ヒューズ
【請求項6】
前記保持材の内部に光熱変換材を分散させたことを特徴とする請求項5に記載の光ヒューズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−219236(P2007−219236A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40601(P2006−40601)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】