説明

光ピックアップおよび光ディスク装置

【課題】ラック方式の球面収差補正機構において、レンズ初期位置検出用のセンサを設けなくとも、レンズ初期位置を安定させる。
【解決手段】コリメータレンズを移動させて球面収差の補正を行う球面収差補正機構を備える。そして、球面収差補正機構は、コリメータレンズが保持されたレンズホルダを光軸方向に移動可能に保持する移動軸と、駆動モータによって回転されるリードスクリューと、を備える。そして、レンズホルダに連接され、スクリュー溝に噛み合わされるように突出する第1のラック歯と該第1のラック歯との間にリードスクリューを挟んで設けられた第2のラック歯と、を含むラックを備える。この第2のラック歯は、第1のラック歯がスクリュー溝に噛み合わされた状態では、リードスクリューに接することなく少なくともその一部がスクリュー溝内に配置され、その傾斜角度が該スクリュー溝の傾斜角度と異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリメータレンズを動かして球面収差補正を行う光ピックアップおよび光ディスク装置に係り、特に、ラック方式の球面収差補正機構を備える光ピックアップおよび光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Blu−ray Disc等の光情報記録媒体では、その光情報記録媒体表面から信号記録面までの厚みのばらつきにより、球面収差が大きくなり、一意的に記録面に光スポットを精度良く絞ることが困難である。このために光ディスク装置で使用する光ピックアップには球面収差を補正する機構が必要となっている。球面収差を補正するためには、コリメータレンズをモータ等により物理的に動かしてレーザ光源とコリメータレンズの距離を変えることが一般的に行われている。
【0003】
近年、光情報記録媒体の1層あたりの高密度化が進むとともに、光情報記録媒体1枚を構成する層の数が増える傾向にある。このような光情報記録媒体において、記録再生機能の確保・向上を図るために、より精度の高い精度の球面収差補正が求められている。そのため、球面収差補正を行う際に、コリメータレンズの初期位置(以下、「レンズ初期位置」という)を精度よく検出することも重要になっている。
【0004】
ところで、光ピックアップが備えるラック方式の球面収差補正機構は、コリメータレンズが保持されたレンズホルダに連接するラックと、コリメータレンズの光軸方向に軸を有するリードスクリューとを含んで構成される。ラックは、突出して形成されたラック歯を有しており、このラック歯と、リードスクリューの螺旋状のスクリュー溝とが噛み合わさった状態で配置されている。
【0005】
そして、ステッピングモータによってリードスクリューがその軸を中心に回転すると、ラック歯がスクリュー溝に沿って動かされる。これにより、リードスクリューの軸方向、すなわち光軸方向にラックが移動され、コリメータレンズも同様にその光軸方向に移動される。このようにして、球面収差補正の際にはコリメータレンズが動かされる。
【0006】
このような光ビックアップにおけるレンズ初期位置の検出には、フォトインタラプタが用いられている。このフォトインタラプタの受光素子と発光素子の間をレンズホルダの一部が遮ったときに、コリメータレンズがレンズ初期位置にあることを示す検出信号が出力される。そして、この検出信号の出力を機に、ステッピングモータが制御されてリードスクリューの回転が停止する。その結果、コリメータレンズがレンズ初期位置に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−205732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レンズ初期位置検出用のフォトインタラプタは、コリメータレンズを保持するレンズホルダの下方に設けられることが多く、ラック方式の光ピックアップをより薄く作成する上での障害となっていた。
【0009】
この点、フォトインタラプタを廃して、ナット方式のように、ラックをメカリミットに押し当ててラックの動きを止めることにより、コリメータレンズをレンズ初期位置に配置するという方法も考えられる。しかし、ラックをメカリミットに押し当てた後でも、しばらくの間は、リードスクリューが回転しているため、この回転によりラック歯がスクリュー溝を乗り越えようとし、ラックが跳ね上がってしまう。その結果、レンズ初期位置が安定しないという別の問題が生じる。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、ラック方式の球面収差補正機構において、レンズ初期位置検出用のセンサを設けなくとも、レンズ初期位置を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光ピックアップは、コリメータレンズと、コリメータレンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダをコリメータレンズの光軸方向に移動させて球面収差の補正を行う球面収差補正機構と、を備えるものである。
【0012】
この球面収差補正機構は、レンズホルダを光軸方向に移動可能に保持する移動軸と、螺旋状のスクリュー溝が形成され、駆動モータによって回転されるリードスクリューと、を備える。そして、レンズホルダに連接され、スクリュー溝に噛み合わされるように突出する第1のラック歯と該第1のラック歯との間にリードスクリューを挟んで設けられた第2のラック歯と、を含むラックを備える。この第2のラック歯は、第1のラック歯がスクリュー溝に噛み合わされた状態では、リードスクリューに接することなく少なくともその一部がスクリュー溝内に配置され、その傾斜角度が該スクリュー溝の傾斜角度と異なっている。なお、本発明の光ディスク装置は、上述した構成の光ビックアップを備えるものである。
【0013】
本発明の上述した構成によれば、第1のラック歯がスクリュー溝を乗り越える前に、第2のラック歯をスクリュー溝に確実に接触させることができ、第1のラック歯がリードスクリューを乗り越える方向にこれ以上動かないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明によれば、第1のラック歯がリードスクリューのスクリュー溝を乗り越えることを第2のラック歯で防ぐことができるので、第1のラック歯がスクリュー溝を乗り越える際に発生するラックの跳ね上げを防止することができる。その結果として、例えば、コリメータレンズのレンズ初期位置を安定させることができる、という効果を奏する。
【0015】
また、レンズ初期位置を検出するための検出センサを設ける必要がないので、従来よりも低コストで光ピックアップを製造することができる。それに加え、部品点数が従来よりも少なくなるので、光ピックアップを構成する各部品の配置レイアウトの自由度を高くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光ピックアップを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る球面収差補正機構を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るラックを示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るラックを示す平面図である。
【図7】ラックの跳ね上がり防止のための動作(その1)を示す説明図である。
【図8】ラックの跳ね上がり防止のための動作(その2)を示す模式図である。
【図9】ラックの跳ね上がり防止のための動作(その3)を示す模式図である。
【図10】ラックの跳ね上がり防止のための動作(その4)を示す模式図である。
【図11】本発明の変形例に係るラックを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0018】
以下の手順で説明を行う。
<一実施形態例:第1のラック歯の前方に第2のラック歯を設けた例>
1.光ディスク装置の構成
2.光ピックアップの構成
3.球面収差補正機構の構成
4.ラックの動作
<変形例:第2のラック歯を円弧状に形成した例>
【0019】
<一実施形態例>
本発明の一実施形態の例を、図1〜図10を参照して説明する。
[1.光ディクス装置の構成]
まず、光ディスク装置の構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は光ディスク装置の構成を示す斜視図、図2は図1に示す光ディスク装置の一部を図1とは逆側から見たときの拡大斜視図である。
光ディスク装置1は、光情報記録媒体100の記録面と光ピックアップ3の対物レンズ11とが対向するように、光情報記録媒体100が装填されるディスクトレイ2を備える。そして、ディスクトレイ2に組み込まれたベースユニット5と、光ピックアップ3と、一対の移動軸4A,4Bと、モータ6と、ターンテーブル7とをさらに備える。
【0020】
図2に示すように、一対の移動軸4A,4Bの両端は、ベースユニット5に固定され、移動軸4A,4Bは、光ピックアップ3を光情報記録媒体100の半径方向に移動可能な状態で支持している。
【0021】
光ピックアップ3には、光情報記録媒体100の周方向側の一端部に連接するラック12が設けられている。ラック12は、ラック歯を有しており、このラック歯と、リードスクリュー13の螺旋状のスクリュー溝とが噛み合わさった状態で配置されている。リードスクリュー13は、その軸が移動軸4A,4Bと平行になるように配置されている。そして、当該軸を中心として回転可能となるように、その一端がベースユニット5に支持され、他端がモータ6の軸に固定される。
【0022】
モータ6は、ベースユニット5に取り付けられている。このモータ6が、リードスクリュー13を回転させると、ラック12のラック歯がスクリュー溝に沿って動かされるようになっている。これにより、ラック12に連接された光ピックアップ3が、リードスクリュー13の軸方向に平行な移動軸4A,4Bに沿って、光情報記録媒体100の半径方向に移動させられる。
【0023】
ターンテーブル7(図1を参照)は、ベースユニット5に回転可能に保持される。そして、その下部に配置されたモータ(不図示)により回転され、ディスクトレイ2に装填された光情報記録媒体100を所定方向に回転させる。なお、光ピックアップ3には、不図示のフレキシブル基板が接続されており、このフレキシブル基板を介して光ピックアップ3の動作を制御するための各種信号および電力が供給される。
【0024】
[2.光ピックアップの構成]
次に、光ピックアップ3の構成について図3を参照して説明する。
図3は、対物レンズが設けられていない面側から見た光ピックアップの構成(光学系の構成)を示す説明図である。以下では、対物レンズ11Aの光軸方向をX軸方向、コリメータレンズ45Aの光軸方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義する。
【0025】
光ピックアップ3は、第1の波長の光を出射する第1の光源を有する光源部41Aと、第1の波長とは異なる第2および第3の波長の光を出射する第2および第3の光源を有する光源部41Bとを備える。この光ピックアップ3は、第1の波長の光が通過する光学機器が配置された第1の光学系統と、第2あるいは第3の波長の光が通過する光学機器が配置された第2の光学系統とに分かれる。
【0026】
第1の光学系統では、対物レンズ11Aを介して第1の波長が光情報記録媒体100(図2を参照)に照射され、光情報記録媒体100から反射される第1の波長の反射光が光検出器44Aで受光される構成となっている。また、第2の光学系統では、対物レンズ11Bを介して第2あるいは第3の波長が光情報記録媒体100に照射され、光情報記録媒体100から反射される第2あるいは第3の波長の反射光が光検出器44Bで受光される構成となっている。
【0027】
図3に示された例では、対物レンズ11A,11BのX軸のプラス側には、1/4波長板(不図示)および立ち上げミラー46A,46Bが配置される。そして、立ち上げミラー46A,46Bと光検出器44A,44Bとの間に、コリメータレンズ45A,45B、偏光ビームスプリッター43A,43Bおよびマルチレンズ42A,42Bが配置される。なお、光源部41A,41Bは、偏光ビームスプリッター43A,43Bの偏光分離面に対向している。
【0028】
ここで、光源部41Aの第1の光源としては、例えばBD(Blu−ray Disc)の記録再生に対応する波長405nm近傍の青紫色レーザ光を出射するレーザダイオードを用いることができる。また、光源部41Bの第2の光源としては、例えばDVDの記録再生に対応する波長660nm近傍の赤色レーザ光を出射するレーザダイオードを用いることができる。さらに、光源部41Bの第3の光源としては、例えばCDの再生に対応する波長785nmの赤外レーザ光を出射するレーザダイオードを用いることができる。それぞれ、対応する光情報記録媒体100の種類に応じて、それぞれの規格における公差の範囲の波長の光を出射する光源を用いることが可能である。なお、第2および第3の波長の光を出射する光源として、同一基板上に形成されたレーザ素子を用いる場合は、光源部41Bの小型化により、光ピックアップ14全体の小型化を図ることができる。
【0029】
以上説明したように、第1および第2の光学系統の構成はほぼ等しいので、以下では第1の光学系統についてのみ説明を行う。
まず、図3に示すように、BDに対しては、光源部41Aは、第1の波長のレーザ光を出射する。すると、偏光ビームスプリッター43Bは光源部41Aからのレーザ光を反射してコリメータレンズ45Aに導く。コリメータレンズ45Aは、偏光ビームスプリッター43Aからのレーザ光を平行光に変換して立ち上げミラー46Aへ導く。このとき、球面収差補正機構50が、光情報記録媒体100の保護層の厚みに応じてコリメータレンズ45Aを保持するレンズホルダ51をY軸方向に移動させて、球面収差を補正する。なお、球面収差補正機構50の詳細な構成については図4にて後述する。
【0030】
立ち上げミラー46Aは、コリメータレンズ45Aからのレーザ光を反射し、1/4波長板(不図示)を介して対物レンズ11Aに導く。対物レンズ11Aは、光情報記録媒体100の記録面に所定の光スポットを形成する。
【0031】
光情報記録媒体100の記録面により反射されたレーザ光は、対物レンズ11Aおよび1/4波長板(不図示)を再度通って立ち上げミラー46Aに導かれる。立ち上げミラー46Aは、光情報記録媒体100からのレーザ光を反射し、コリメータレンズ45Aを介して偏光ビームスプリッター43Aに導く。偏光ビームスプリッター43Aは、立ち上げミラー46Aからのレーザ光を透過し、マルチレンズ42Aを介して光検出器44Aに導く。そして、光検出器44Aは、第1の波長の反射光を検出する。
【0032】
[3.球面収差補正機構の構成]
次に、球面収差補正機構50の構成について図4を参照して説明する。
図4は、図3に示す球面収差補正機構の構成を示す斜視図である。
球面収差補正機構50は、一対の移動軸52A,52Bと、ラック53と、螺旋状のスクリュー溝が形成されたリードスクリュー54と、ステッピングモータ55とで構成される。
【0033】
一対の移動軸52A,52Bの両端は、光ピックアップ3の筐体内壁に固定され、これら移動軸52A,52Bはレンズホルダ51をY軸方向に移動可能な状態で支持している。このレンズホルダ51には、コリメータレンズ45Aの光軸がY軸方向と平行になるように保持される。そして、レンズホルダ51におけるZ軸のマイナス側の端部には、ラック53が連接されている。
【0034】
このラック53は、図5(a)および図5(b)に示すように、Z軸のマイナス方向に突出する第1のラック歯81A,81Bと、Z軸のプラス方向に突出する第2のラック歯82とを含んで構成される。そして、これら第1のラック歯81A,81Bは、図5(b)に示すように、リードスクリュー54のスクリュー溝に噛み合わさるように配置される。また、第2のラック歯82は、第1のラック歯81A,81Bとの間にリードスクリュー54を挟み、その一部がスクリュー溝内に配置される。ただし、第1のラック歯81がスクリュー溝に噛み合わされた状態では、第2のラック歯82は、リードスクリュー54に対して非接触となる。
【0035】
ここで、第1のラック歯81A,81Bのリードスクリュー54に対する噛み合わせ率を100パーセントとすると、第2のラック歯82の噛み合わせ率が約30パーセント(25〜35パーセント)となるように構成されていることが好ましい。これにより、第1のラック歯81A,81Bがリードスクリュー54を乗り越えようとした際にだけ、乗り越えてしまう前に第2のラック歯82をスクリュー溝に確実に接触させることができる。その結果、ラック53の跳ね上がりを防止することができる。なお、ラック53のより詳細な構成については図6にて後述する。
【0036】
リードスクリュー54には、上述のリードスクリュー13(図2を参照)と同様に、第1のラック歯81A,81Bが噛み合わさった状態で、その軸を中心として回されると、その回転方向に応じてラック53をその軸に移動させる。このリードスクリュー54は、その軸がY軸方向を向いて配置されている。そして、その軸を中心として回転可能となるように、一端が光ピックアップ3の筐体内壁84(図4を参照)に支持され、他端がステッピングモータ55の軸に固定されている。
【0037】
次に、ラック53の構成について図6を参照して説明する。
図6は、ラックの構成を示す平面図である。
図6(a)は、X軸のプラス方向から見たラックを示す上面図である。
図6(b)は、X軸のマイナス方向から見たラックを示す下面図である。
図6(c)は、Y軸のマイナス方向から見たラックを示す側面図である。
図6(d)は、Z軸のマイナス方向から見たラックのB−B断面を示す断面図である。
図6(e)は、Z軸のプラス方向から見たラックのB−B断面を示す断面図である。
【0038】
ラック53は、図6に示すように、レンズホルダ51(図4を参照)と連接するホルダ連接部61と、このホルダ連接部61よりもZ軸のマイナス方向側に設けられたスクリュー挟入部62とを備える。
【0039】
ホルダ連接部61は、ラック上面70とラック下面71との間を貫通する螺子孔72を有しており、図4に示すように、螺子孔72に挿入された螺子73が螺子止めされることにより、ラック53がレンズホルダ51に連接して固定される。
【0040】
スクリュー挟入部62は、ホルダ連接部61からZ軸のマイナス方向に突出する突出ベース部74を有する。この突出ベース部74は、X軸のマイナス側の端部に設けられたU字状のヒンジ部75を介して、板状に形成された第1の歯ベース76を延設している。
【0041】
第1の歯ベース76は、板状に形成されており、その両面がZ軸に対して直交するように配置されている。そして、第1の歯ベース76におけるZ軸のマイナス方向側の面上には、第1のラック歯81A,81Bが設けられている。第1のラック歯81A,81Bは、それぞれ同じ形状であるので、それらを区別する必要がない場合は第1のラック歯81と記載する。
【0042】
第1のラック歯81は、図6(d)に示すように、第1の歯ベース76のほぼ上端からほぼ下端まで形成されている。そして、リードスクリュー54のスクリュー溝の傾斜角度に合わせて傾斜させた状態、すなわち第1のラック歯81のX−Y平面における断面がスクリュー溝と平行になるように配置されている。また、第1のラック歯81のY−Z平面における断面は、図5(b)に示すように、どの位置でもほぼ同一形状に形成されている。この断面の形状は、Z軸のマイナス方向側になればなる程先細りとなる、いわゆるテーパー状となっている。これにより、第1のラック歯81をリードスクリュー54のスクリュー溝に噛み合わせることができる。
【0043】
また、第2の歯ベース77は、第1の歯ベース76と対向するように歯ベース接続部88によって接続されており、第1の歯ベース76とでリードスクリュー54を挟んでいる。この第2の歯ベース77は、第1の歯ベース76と同様に板状に形成されており、そのZ軸のプラス側の面上には、第2のラック歯82が設けられている。
【0044】
第2のラック歯82は、図6(e)に示すように、第2の歯ベース77のほぼ上端から下端まで形成されている。この第2のラック歯82は、第1のラック歯81と同様に傾斜しているが、その傾斜角度は、リードスクリュー54のスクリュー溝の傾斜角度とは異なっている。この第2のラック歯82の傾斜角度は、第1のラック歯81がスクリュー溝に噛み合わされた状態において、第2のラック歯82がリードスクリュー54に接することなく、その一部がスクリュー溝内に配置されるような角度でなければならない。なお、第2のラック歯82のY−Z平面における断面は、図5(b)に示すように、どの位置でもほぼ同一形状に形成されており、その形状は、Z軸のプラス方向側になればなる程先細りとなる、いわゆるテーパー状となっている。また、第2のラック歯82の歯先は、X−Y平面にほぼ平行に形成されている。
【0045】
このような傾斜角度で第2のラック歯82を構成することで、第1のラック歯81A,81Bがリードスクリュー54を乗り越えようとした際に、第2のラック歯82をスクリュー溝に線や面ではなく点で接触させることができる。その結果、ラック53の跳ね上がりを防止できるとともに、このときラック53がリードスクリュー54に食いついて動かなくなることを防止できる。
【0046】
ところで、突出ベース部74および第1の歯ベース76には、図6(b)に示すように、それぞれが対向するようにZ軸方向に突出した一対のバネ保持部92が形成されている。そして、このバネ保持部92は、図5(a)に示すように、自然長から押し縮められた状態のバネ83を保持している。このバネ83の付勢力によって第1の歯ベース76がZ軸のマイナス方向に押し出され、第1のラック歯81A,81Bが一定以上の力でリードスクリュー54のスクリュー溝に押し付けられる。これにより、第1のラック歯81A,81Bがスクリュー溝から容易に離脱することを防止できる。
【0047】
[4.ラックの動作]
次に、ラック53による跳ね上がり防止に関する動作について図7〜図10を参照して説明する。
球面収差の補正を行う前準備として、コリメータレンズ45Aを予め決まったレンズ初期位置に戻す必要がある。例えば、図3に示すような位置に配置されたコリメータレンズ45をレンズ初期位置に戻すには、まず、ステッピングモータ55によりリードスクリュー54が所定方向に回転する。
【0048】
すると、第1のラック歯81A,81B(図5を参照)がリードスクリュー54のスクリュー溝に沿って動かされ、このラック53に連接されたレンズホルダ51が移動軸52A、52Bに沿って移動する。これにより、レンズホルダ51に保持されたコリメータレンズ45AがY軸のマイナス方向に動かされ、図7に示すように、光ピックアップ3の筐体内壁84にラック53が押し当てられて、ラック53のY軸のマイナス方向への移動が停止される。
【0049】
ここで、ラック53が筐体内壁84に押し当てられた直後は、図8(a)に示すように、第1のラック歯81は、リードスクリュー54のスクリュー溝に噛み合わされた状態となっている。そして、第2のラック歯82は、図8(b)に示すように、スクリュー溝に接触することなく一部が収納された状態となっている。
【0050】
しかし、ラック53が筐体内壁84に押し当てられた後のしばらくの間は、ラック53がY軸のマイナス方向にこれ以上移動できない状態にもかかわらず、ステッピングモータ55によるリードスクリュー54の回転が継続されている。そして、リードスクリュー53のスクリュー溝が傾斜しているので、その回転により第1のラック歯81は、図9(a)に示すように、スクリュー溝を乗り越える方向(8(a)の矢印方向)に動かされる。このとき、第2のラック歯82も、図9(b)に示すように、第1のラック歯81と同じ方向(図8(b)の矢印方向)に同じ距離だけ動かされる。
【0051】
そして、第1および第2のラック歯81,82がさらに矢印方向(図9(a)および図9(b)を参照)に動かされて図10(b)に示すように、第2のラック歯82がラック溝に点で接触する。すると、第1および第2のラック歯81,82が、図10(a)および図10(b)に示すように、スクリュー溝に接触して矢印方向にこれ以上動けなくなり、リードスクリュー54が第1のラック歯81と、第2のラック歯82とにより噛み付かれる。これにより、ラック53の動きが完全に停止するとともに、リードスクリュー54が物理的に回転不可能となり、ステッピングモータ55がロックされる。なお、ラック53の動きが完全に停止された際のコリメータレンズ45Aの位置がレンズ初期位置となる。
【0052】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、第1のラック歯81がリードスクリュー54のスクリュー溝を乗り越えることを第2のラック歯82で防ぐことができる。これにより、第1のラック歯81がスクリュー溝を乗り越える際に発生するラック53の跳ね上げを防止することができる。その結果として、例えば、コリメータレンズ45Aのレンズ初期位置を安定させることができる、という効果がある。
【0053】
また、本発明の一実施形態によれば、フォトトランジスタ等の検出センサを光ピックアップ3に設けなくとも、コリメータレンズ45Aのレンズ初期位置を安定させることができる。これにより、従来よりも低コストで光ピックアップ3を製造することができる。それに加え、部品点数が従来よりも少なくなるので、光ピックアップ3を構成する各部品の配置レイアウトの自由度を高くすることもできる。
【0054】
また、本発明の一実施形態は、ステッピングモータ55を制御する仕様が、タイムアウト仕様、逆起検出仕様どちらに対しても適応することができる。タイムアウト仕様とは、ステッピングモータ55を予め定められた時間だけ回転させてコリメータレンズ45Aをレンズ初期位置方向に動かす仕様である。また、逆起検出仕様とは、ステッピングモータ55における電磁誘導の逆転、すなわちリードスクリュー54が物理的に回転不可能(図9に示す状態)になったことを検出してステッピングモータ55の動作を停止させる仕様である。
【0055】
<変形例>
上述した一実施形態では、X−Y平面にほぼ平行な歯先が形成された第2のラック歯82を有するラック53を備えているが、このラック53の代わりに図11に示すラック101を備えてもよい。なお、ラック101は、ラック53の第2のラック歯82を第2のラック歯102に置き換えたものであるので、以下では第2のラック歯102についてのみ説明をする。
【0056】
第2のラック歯102は、一実施形態に係る第2のラック歯82(図6(e)を参照)と同様に、第2の歯ベース77のほぼ上端から下端まで形成されており傾斜している。そして、第2のラック歯102は、第1のラック歯81がスクリュー溝に噛み合わされた状態において、リードスクリュー54に接することなく、その一部がスクリュー溝内に配置されるように構成される。さらに、図11に示すように、第2のラック歯102は、その歯先の一部がリードスクリュー54の軸を中心とした円弧状に形成されている。このように、図11に示す例に限らず例えば、第2のラック歯102の歯先全体を円弧状に形成してよいことはいうまでもない。
【0057】
このような第2のラック歯102の構成によれば、Z軸のマイナス方向だけでなく、X軸のプラスまたはマイナス方向とZ軸のマイナス方向との合成成分方向にラック101が跳ね上がろうとする場合であっても確実に防止することができる。
【0058】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明のラックは上記各実施形態例に限定されるものではなく、例えば、図3に示した光ピックアップ3以外のレイアウトの光ピックアップに対して適応することも可能である。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1・・・光ディスク装置、2・・・ディスクトレイ、3・・・光ピックアップ、4A,4B・・・移動軸、5・・・ベースユニット、6・・・モータ、7・・・ターンテーブル、11・・・対物レンズ、12・・・ラック、13・・・リードスクリュー、14・・・光ピックアップ、41A,41B・・・光源部、42A,42B・・・マルチレンズ、43A,43B・・・偏光ビームスプリッター、44A,44B・・・光検出器、45A,45B・・・コリメータレンズ、46A,46B・・・立ち上げミラー、50・・・球面収差補正機構、51・・・レンズホルダ、52A,52B・・・移動軸、53・・・ラック、54・・・リードスクリュー、55・・・ステッピングモータ、61・・・ホルダ連接部、62・・・スクリュー挟入部、70・・・ラック上面、71・・・ラック下面、72・・・螺子孔、73・・・螺子、74・・・突出ベース部、75・・・ヒンジ部、76・・・第1の歯ベース、77・・・第2の歯ベース、81・・・第1のラック歯、82・・・第2のラック歯、83・・・バネ、88・・・歯ベース接続部、92・・・バネ保持部、100・・・光情報記録媒体、101・・・ラック、102・・・第2のラック歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリメータレンズと、
前記コリメータレンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを前記コリメータレンズの光軸方向に移動させて球面収差の補正を行う球面収差補正機構と、を備え、
前記球面収差補正機構は、
前記レンズホルダを前記光軸方向に移動可能に保持する移動軸と、
螺旋状のスクリュー溝が形成され、駆動モータによって回転されるリードスクリューと、
前記レンズホルダに連接され、前記スクリュー溝に噛み合わされるように突出する第1のラック歯と該第1のラック歯との間に前記リードスクリューを挟んで設けられる第2のラック歯と、を含むラックと、を有し、
前記第2のラック歯は、前記第1のラック歯が前記スクリュー溝に噛み合わされた状態では、前記リードスクリューに接することなく、少なくともその一部が前記スクリュー溝内に配置され、その傾斜角度が該スクリュー溝の傾斜角度と異なる
光ピックアップ。
【請求項2】
前記第2のラック歯の歯先が、リードスクリューの軸を中心とする円弧状に形成されている
請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記リードスクリューに対する前記第1のラック歯の噛み合わせ率が100パーセントであるとすると、前記リードスクリューに対する前記第2のラック歯の噛み合わせ率は25〜35パーセントの間である
請求項1または2に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記第1のラック歯が前記スクリュー溝を乗り越えようとしたときに、前記第2のラック歯がスクリュー溝に点で接触して前記ラックの移動を停止させ、前記ラックの移動が停止すると、前記球面収差の補正を行うための初期位置に前記コリメータレンズが配置される
請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項5】
コリメータレンズと、
前記コリメータレンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを前記コリメータレンズの光軸方向に移動させて球面収差の補正を行う球面収差補正機構と、を備え、
前記球面収差補正機構は、
前記レンズホルダを前記光軸方向に移動可能に保持する移動軸と、
螺旋状のスクリュー溝が形成され、駆動モータによって回転されるリードスクリューと、
前記レンズホルダに連接され、前記スクリュー溝に噛み合わされるように突出する第1のラック歯と該第1のラック歯との間に前記リードスクリューを挟んで設けられる第2のラック歯と、を含むラックと、を有し、
前記第2のラック歯は、前記第1のラック歯が前記スクリュー溝に噛み合わされた状態では、前記リードスクリューに接することなく少なくともその一部が前記スクリュー溝内に配置され、その傾斜角度が該スクリュー溝の傾斜角度と異なる
光ピックアップを含む光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119037(P2012−119037A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269106(P2010−269106)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】