説明

光ピックアップのレンズ駆動機構

【課題】組み立て作業性に優れ、動作不良が発生し難い光ピックアップのレンズ駆動機構を提供する。
【解決手段】光ピックアップのレンズ駆動機構40は、モータ41と、モータ41の駆動によって回転するリードスクリュ42と、リードスクリュ42のネジ部421に螺合するナット部材43と、レンズ(図示せず)を保持し、リードスクリュ42の回転によるナット部材43の移動とともに移動するレンズ保持部材44と、リードスクリュ42のネジ部421のモータ41側端部近傍に配置され、ナット部材43と当接することがあるバネ部材47と、を備える。バネ部材47には、モータ41で押さえられる突起部471aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に記録される情報の読み取りや光記録媒体への情報の書き込みを行う際に用いられる光ピックアップに関し、詳細には、それに備えられるレンズ駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ピックアップの中には、球面収差の補正を行う目的でレンズ駆動機構を備えるものがある。このレンズ駆動機構の具体例としては、例えば光ピックアップの光学系中に配置されるコリメートレンズを光軸方向に移動可能とするものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。このレンズ駆動機構を備える光ピックアップでは、コリメートレンズの位置がレンズ駆動機構によって移動されることで、コリメートレンズから出射される光の収束発散状態が変わり、球面収差の補正が行えるようになっている。
【0003】
図8は、従来の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構の構成を示す概略斜視図である。図9は、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備えるリードナットについて説明するための図で、図9(a)はリードナットの概略斜視図、図9(b)はリードナットとレンズホルダの関係を示す図である。
【0004】
従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100においては、ステッピングモータ101の出力軸にリードスクリュ102が取り付けられており、ステッピングモータ101の駆動によってリードスクリュ102が回転する。リードスクリュ102には、両端部を除いて螺旋状のネジが切られている。
【0005】
リードスクリュ102には、内面にネジが切られた貫通孔1031を有するリードナット103が螺合している(図9(b)参照)。リードナット103は、レンズ駆動機構100が配置されるベース(図示しない)に設けられるガイドレールに係合する係合部1032を有している(図9(a)参照)。そして、これにより、リードナット103は、リードスクリュ102が回転すると、自身は回転することなくガイドレールに沿って移動するようになっている。
【0006】
リードナット103は、コリメートレンズを保持するレンズホルダ104よりもステッピングモータ101に近い側に配置されている。リードスクリュ102の回転によりリードナット103がステッピングモータ101から離れる方向に移動する場合に、レンズホルダ104はリードナット103に押されることになる。
【0007】
レンズホルダ104には、リードスクリュ102と略平行に配置される2本のガイドシャフト105が挿通され、レンズホルダ104はガイドシャフト105に沿って移動する。2本のガイドシャフト105のうちの一方には与圧バネ(コイルバネ)106が遊嵌されており、この与圧バネ106はレンズホルダ104をステッピングモータ101側に付勢している。
【0008】
このために、リードスクリュ102がステッピングモータ101の駆動によって回転されて、リードナット103がステッピングモータ101から離れる方向に移動すると、レンズホルダ104は、リードナット303によって押される形で、与圧バネ106の付勢力に反してステッピングモータ101から離れる方向に移動する。一方、リードナット103がステッピングモータ101に近づく方向に移動すると、レンズホルダ104は与圧バネ106の付勢力によってステッピングモータ301に近づく方向に移動する。
【0009】
板バネ部材108は、リードナット103がリードスクリュ102のネジ山から抜け落ちて、リードナット103が使用できなくなるのを防止するために設けられる。図10は、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備える板バネ部材の構成を示す概略斜視図である。板バネ部材108は、天板となる第1の部分1081と、第1の部分1081に対して折り曲げられた部分であって、リードナット103と当接する部分を有する第2の部分1082と、図示しないベース(レンズ駆動機構100が配置されるベース)に固定するために使用される固定部1083と、が備えられる。これらの各部は一体的に形成されている。
【0010】
固定部1083は、天板より低い位置に設けられ、天板と略平行な板面を有している。この天板と略平行な板面には、ビス留めができるように形成されるビス孔1083aと、位置決めピンによって位置決めできるように形成される位置決め孔1083b、1083cと、が形成されている。
【0011】
図11は、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構における、板バネ部材の固定状態について説明するための図である。板バネ部材108は、図11に示すように、ステッピングモータ101に設けられる固定部1011がベース200(レンズ駆動機構100が配置されるベースで、光ピックアップのベース)に固定される部分と同じ位置で、その固定部1083が固定されるようになっている。具体的には、ステッピングモータ101の固定部1011(図8も参照)には、板バネ部材108の固定部1083と同様のビス孔と、2つの位置決め孔が形成されている。これにより、ベース200に形成される2つの位置決めピン202、203によって、ステッピングモータ101の固定部1011と板バネ部材108の固定部1083とが重なり合った状態(板バネ部材108の固定部1083の方が上側に位置する)で位置決めされる。そして、ステッピングモータ101の固定部1011と、板バネ部材108の固定部1083とは、ビス201によってベース200に固定される。
【0012】
図12は、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備える板バネ部材の作用を説明するための図である。図12に示すように、板バネ部材108は、リードスクリュ102のステッピングモータ101側のネジ端部近傍SE1でリードナット103に当接するように配置されている。板バネ部材108は、ステッピングモータ101側に移動するリードナット103に押されると弾性変形し、他方のネジ端部SE2がある側に向かってリードナット103に力を加えることになる。このために、リードナット103がリードスクリュ102のネジ山から抜け落ちて使用できなくなるという事態が防止される。
【0013】
なお、リードナット103がステッピングモータ101から離れる方向に進み続け、リードスクリュ102のネジ山から抜け落ちて使用できなくなるという事態は、与圧バネ106の存在により生じないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−277330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100においては、板バネ部材108がビス201によってベース200に固定される構成であるために、板バネ部材108の形状が複雑、且つ、大型化してしまうといった問題がある。また、このように板バネ部材108がビス201によってベース200に固定される構成を採用すると、光ピックアップの組み立て作業における作業性が必ずしも良くなく、このような構成は好ましい構成とは言えない。
【0016】
リードナット103がリードスクリュ102のネジ山から抜け落ちて使用できなくなることを防止する板バネ部材の固定方法として、例えば次のような構成を採用することも考えられる。すなわち、ベース200ではなく、ステッピングモータ101の固定部1011に例えばフック等を設けて、これに板バネ部材を引っ掛ける構成を採用することが考えられる。これによると、ビス留め作業が不要であるために作業性の面では優れる。しかしながら、ステッピングモータ101が固定部1011を有さない場合には、この手法は適用できないといった問題がある。
【0017】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、組み立て作業性に優れ、動作不良が発生し難い光ピックアップのレンズ駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は、光源と、前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズとの間の光路中に配置されるレンズを駆動するレンズ駆動機構であって、モータと、前記モータの駆動によって回転するリードスクリュと、前記リードスクリュのネジ部に螺合するナット部材と、
前記レンズを保持し、前記リードスクリュの回転による前記ナット部材の移動とともに移動するレンズ保持部材と、前記リードスクリュのネジ部の前記モータ側の端部近傍に配置され、前記ナット部材と当接することがあるバネ部材と、を備え、前記バネ部材には、前記モータで押さえられる突起部が設けられていることを特徴としている。
【0019】
本構成によれば、バネ部材は、モータ(の外殻)によって押さえられることで、その取り付け位置に固定可能となる。このために、バネ部材はビス留め或いは接着剤によって固定する必要がなく、バネ部材の取り付け作業が容易となる。また、本構成は、モータが固定部(モータ自身を固定するためのものを指す)を備えなくても、モータによるバネ部材の固定が可能となり、低コスト化に有利である。
【0020】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記バネ部材は、前記モータが固定配置されるベースに設けられる取付部に挿入配置されるのが好ましい。本構成によれば、バネ部材が簡単且つ確実に取り付けられるようになるとともに、バネ部材の機能が安定して発揮され得る。
【0021】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記バネ部材には、前記取付部と係合して、前記取付部からの抜け止めとして機能する弾性部が設けられているのが好ましい。本構成によれば、取付部に挿入されたバネ部材が更に確実に固定されることを期待できる。
【0022】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記モータは軸受け部を有し、
前記突起部は、前記軸受け部に押さえられるのが好ましい。モータの軸受け部は、モータ本体部から突出し、そのサイズはモータ本体部より小さい。このために、本構成によれば、バネ部材が必要以上に大きくなることを避けられる。
【0023】
上記構成の光ピックアップのレンズ駆動機構において、前記レンズは、コリメートレンズであることとしてもよい。球面収差を補正する目的で、コリメートレンズが光軸方向に移動可能とされる光ピックアップに対して、本発明は好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、バネ部材によって、ナット部材がリードスクリュのネジ部から抜け落ちて使用できなくなるという動作不良が防止される。そして、本発明によれば、そのようなバネ部材の取付作業が非常に簡単である。すなわち、本発明によれば、組み立て作業性に優れ、動作不良が発生し難い光ピックアップのレンズ駆動機構が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図
【図2】本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図
【図3】本実施形態の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構の構成を示す概略平面図
【図4】本実施形態の光ピックアップのレンズ駆動機構が備えるリターンスプリングの構成を示す概略斜視図
【図5】本実施形態の光ピックアップにおいて、レンズ駆動機構をピックアップベースに取り付ける途中の状態を示す概略斜視図
【図6】本実施形態の光ピックアップにおいて、レンズ駆動機構をピックアップベースに取り付け終えた状態を示す概略斜視図
【図7】図6のA−A位置における概略断面図
【図8】従来の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構の構成を示す概略斜視図
【図9】従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備えるリードナットについて説明するための図
【図10】従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備える板バネ部材の構成を示す概略斜視図
【図11】従来の光ピックアップのレンズ駆動機構における、板バネ部材の固定状態について説明するための図
【図12】従来の光ピックアップのレンズ駆動機構が備える板バネ部材の作用を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明が適用された光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本実施形態の光ピックアップの構成を示す概略平面図で、図1(a)は光ピックアップの上面図、図1(b)は光ピックアップの側面図である。なお、図1(b)は、図1(a)に示す矢印Aに沿って見た図である。また、図1(b)には、理解を容易とするために、光ディスクDも併せて示している。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の光ピックアップ1は、ピックアップベース10と、ピックアップベース10上に固定配置される対物レンズアクチュエータ30と、を備えた構成となっている。なお、本実施形態の光ピックアップは、ブルーレイディスク(BD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)といった3種類の規格の光ディスクDに対して情報の読み取りや書き込みを行うことが可能となっており、BD対応の第1の対物レンズ17とDVD及びCD対応の第2の対物レンズ23とを備える構成となっている。
【0029】
ピックアップベース10の左右の端部には軸受け部10a、10bが設けられている。ピックアップベース10は、この軸受け部10a、10bによって、光ディスクDの再生や記録を行う装置である光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGS(図1(a)に破線で示す)に摺動可能に支持されることになる。光ディスク装置に設けられるガイドシャフトGSは光ディスクDの半径方向(ラジアル方向)に延びるように配置される。このため、ガイドシャフトGSに対して摺動可能とされる光ピックアップ1は、回転する光ディスクDの所望のアドレスにアクセスして、情報の読み取りや書き込みを行うことができる。
【0030】
図2は、本実施形態の光ピックアップの光学構成を示す概略平面図である。第1のレーザダイオード(LD)11から出射された第1の波長のレーザ光は、回折素子12によって主光と2つの副光とに分けられる。回折素子12を経たレーザ光は偏光ビームスプリッタ13によって反射され、1/4波長板14及びコリメートレンズ15を通過する。コリメートレンズ15を経たレーザ光は、第1の立ち上げミラー16によって反射されて、第1の立ち上げミラー16の上方にある第1の対物レンズ17へと至る。第1の立ち上げミラー16はダイクロイックミラーであり、第1のLD11から出射される第1の波長のレーザ光を反射するようになっている。
【0031】
第1の対物レンズ17は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第1の対物レンズ17によって情報記録面RSに集光されたレーザ光は、情報記録面RSで反射される。この反射光(戻り光)は、第1の対物レンズ17を通過後、第1の立ち上げミラー16で反射され、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18を順に透過し、センサーレンズ19によって非点収差を与えられてフォトディテクタ(受光素子)20に集光する。フォトディテクタ20は受光した光信号を電気信号に変換する光電変換手段として機能する。
【0032】
なお、第1のLD11は、本実施形態ではBD対応のレーザ光源であり、波長405nm帯のレーザ光を出射する。
【0033】
第2のレーザダイオード(LD)21は、第2の波長のレーザ光と第3の波長のレーザ光とを切り換えて出射できるようになっている。第2のLD21から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ18によって反射され、その後、偏光ビームスプリッタ13、1/4波長板14、コリメートレンズ15、及び、ダイクロイックミラーとして構成される第1の立ち上げミラー16を、順に透過する。第1の立ち上げミラー16を透過したレーザ光は、第2の立ち上げミラー22によって反射されて、第2の立ち上げミラー22の上方にある第2の対物レンズ23へと至る。
【0034】
第2の対物レンズ23は、入射したレーザ光を光ディスクDの情報記録面RS(図1(b)参照)に集光する機能を有する。第2の対物レンズ23で情報記録面RSに集光された後に反射された反射光(戻り光)は、第2の対物レンズ23を通過後、第2の立ち上げミラー22で反射され、第1の立ち上げミラー16、コリメートレンズ15、1/4波長板14、偏光ビームスプリッタ13、ビームスプリッタ18、センサーレンズ19を順に透過してフォトディテクタ20に集光する。
【0035】
なお、第2のLD21は、本実施形態ではDVD及びCD対応のレーザ光源であり、波長650nm帯のレーザ光(DVD用;第2の波長のレーザ光)と波長780nm帯のレーザ光(CD用;第3の波長のレーザ光)とを切り換えて出射可能となっている。すなわち、第2のLD21は2種類の光源を含む構成となっている。このようなレーザ光源は、例えばモノリシックタイプ或いはハイブリッドタイプの2波長レーザであってよい。
【0036】
以上で説明した光学部品11〜23は、いずれもピックアップベース10上に搭載されるが、第1の対物レンズ17及び第2の対物レンズ23は、ピックアップベース10上に配置される対物レンズアクチュエータ30に搭載された状態で、ピックアップベース10に搭載されることになる。対物レンズアクチュエータ30は、ワイヤ32よって片持ち支持されるレンズホルダ31によって2つの対物レンズ17、23を保持する構成である(図1参照)。この対物レンズアクチュエータ30は、磁石によって作られる磁界と、コイルを流れる電流との電磁気的な作用を利用して、レンズホルダ31をフォーカス方向とトラック方向とに移動できるようになっている。このような対物レンズアクチュエータ30の構成は公知であるために、その詳細な説明は省略する。
【0037】
また、ピックアップベース10に搭載されるコリメートレンズ15は、球面収差を補正できるように、詳細は後述するレンズ駆動機構によって光軸方向(図2の矢印M方向)に移動できるようになっている。
【0038】
図3は、本実施形態の光ピックアップが備えるレンズ駆動機構の構成を示す概略平面図である。図3に示すように、光ピックアップ1のレンズ駆動機構40は、ステッピングモータ41と、リードスクリュ42と、リードナット43と、レンズホルダ44と、ガイドシャフト45と、与圧バネ46と、リターンスプリング47と、を備える。
【0039】
ステッピングモータ41は、リードスクリュ42を回転する駆動源である。駆動源としてステッピングモータを用いることによって、ステップ数によって、リードスクリュ42の回転によって移動するレンズホルダ44の移動量(言い換えれば、レンズの移動量)を管理することが可能になる。なお、レンズ駆動機構40は、レンズホルダ44が基準位置にあることを検知するフォトインタラプタ(図示せず)を備えており、このフォトインタラプタからの情報と併せてレンズホルダ44の位置を把握することが可能になっている。
【0040】
ステッピングモータ41の出力軸に取り付けられる金属製のリードスクリュ42には、螺旋状のネジが切られたネジ部421が設けられている。なお、リードスクリュ42の両端部側には螺旋状のネジが切られていない部分が存在する。樹脂製のリードナット43は、内面にネジが切られた貫通孔を有し、リードスクリュ42のネジ部421と螺合する。リードナット43は、従来のレンズ駆動機構100(図8〜図12参照)と同様に、リードスクリュ42が回転すると、自身は回転することなく、リードスクリュ42の長手方向(図3に矢印で示す方向)に移動するように構成されている。なお、リードナット43は、レンズホルダ44よりもステッピングモータ41側に配置される。また、このリードナット43は、本発明のナット部材の一例である。
【0041】
レンズホルダ44は、コリメートレンズ15を保持するレンズ保持部441を有するとともに、リードナット43と当接可能となるように、レンズ保持部441から延出する延出部442を有する。また、延出部442には、リードスクリュ42と略平行に配置されるガイドシャフト45が挿通される軸受け部443が設けられている。レンズホルダ44は、軸受け部443に挿通されるガイドシャフト45に沿って移動する。なお、レンズホルダ44に保持されるコリメートレンズ15の光軸とガイドシャフト45とは略平行な関係となっている。また、レンズホルダ44は、本発明のレンズ保持部材の一例である。
【0042】
ガイドシャフト45に遊嵌される与圧バネ(コイルバネ)46は、その一端がレンズホルダ44に当接し、他端がピックアップベース10に当接している。この与圧バネ46は、ガイドシャフト45に沿って移動するレンズホルダ44がステッピングモータ41に近づく向きにレンズホルダ45を付勢している。
【0043】
リードスクリュ42の回転により、リードナット43がステッピングモータ41から離れる方向に移動すると、レンズホルダ44は、リードナット43によって押される形で、与圧バネ46の付勢力に反してステッピングモータ41から離れる方向に移動する。一方、リードナット43がステッピングモータ41に近づく方向に移動すると、レンズホルダ44は与圧バネ46の付勢力によってステッピングモータ41に近づく方向に移動する。
【0044】
リターンスプリング47は、ステッピングモータ41に近づく方向に移動するリードナット43がリードスクリュ42のネジ部421から抜け落ちて、リードナット43が使用できなくなるのを防止するために設けられる。具体的には、リターンスプリング47は、リードスクリュ42のネジ部421のステッピングモータ41側の端部近傍に配置される。そして、リターンスプリング47は、ステッピングモータ41側に移動するリードナット43に押されると弾性変形し、ステッピングモータ41から離れる方向の力をリードナット43に加えることになる。このために、リードナット43がリードスクリュ42のネジ部421から抜けて使用できなくなるという事態が防止される。このリターンスプリング47は、本発明のバネ部材の一例である。
【0045】
図4は、本実施形態の光ピックアップのレンズ駆動機構が備えるリターンスプリングの構成を示す概略斜視図である。板金によって一体的に形成されるリターンスプリング47は、図4に示すように、リターンスプリング47を固定配置するために使用される部分である固定部471と、固定部471に対して折り曲げられた部分であり、リードナット43に当接する部分である弾性部472と、を備える。固定部471と弾性部472とには、リターンスプリング47がリードスクリュ42に当たらないように、切り欠き473が形成されている。
【0046】
固定部471には、その底部中央を弾性部472が無い側に略90°折り曲げて得られる第1の折曲部471aと、その左右端部の上部側を各々、弾性部472側に折り曲げるとともに略くの字状とした第2の折曲部471bと、が形成されている。なお、後述の記載から明らかとなるように、第1の折曲部471aは本発明の「モータに押さえられる突起部」の一例であり、第2の折曲部471bは本発明の「取付部からの抜け止めとして機能する弾性部」の一例である。
【0047】
本実施形態の光ピックアップ1においては、レンズ駆動機構40はピックアップベース10に直接取り付けられる構成となっている。図5は、本実施形態の光ピックアップにおいて、レンズ駆動機構をピックアップベースに取り付ける途中の状態を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の光ピックアップにおいて、レンズ駆動機構をピックアップベースに取り付け終えた状態を示す概略斜視図である。なお、図5及び図6は一部分を拡大して示した図であり、省略された部分がある。また、図6においては与圧バネ46の記載が省略されている。
【0048】
レンズ駆動機構40がピックアップベース10に取り付けられる場合には、まず、ピックアップベース10に一体的に設けられた取付部10cに、リターンスプリング47の固定部471(正確には、固定部471の一部)が挿入される(図5に示す状態)。取付部10cは、挿入されるリターンスプリング47の左右の端部側を前後方向から挟むように設けられている(ここでの左右や前後といった表現は、リターンスプリング47が図4のように配置された状態を念頭においた表現である)。
【0049】
リターンスプリング47が取付部10cに挿入されると、略くの字状に設けられて弾性を有する第2の折曲部471bが取付部10cに挿入された状態となる(図6参照)。このために、第2の折曲部471bの弾性力によって、リターンスプリング47は取付部10cから抜け難くなっている。
【0050】
リターンスプリング47が取付部10cに取り付けられると、次に、ステッピングモータ41及びガイドシャフト45がピックアップベース10上に固定配置される。これらの固定配置によって、リードスクリュ42、リードナット43、レンズホルダ44、及び与圧バネ46もピックアップベース10上に配置されることになる。
【0051】
なお、本実施形態においては、低コスト化を狙ってステッピングモータ41には、ネジ留め用のフランジ(従来の光ピックアップのレンズ駆動機構100における、例えば図8に示す固定部1011)が別途取り付けられていない。このために、ステッピングモータ41は、ピックアップベース10に接着剤を用いて固定されるようになっている。
【0052】
図7は、図6のA−A位置における概略断面図である。なお、図6では、ピックアップベース10は省略されている。図6に示すように、ステッピングモータ41がピックアップベース10に固定された状態において、リターンスプリング47の第1の折曲部421aは、ステッピングモータ41の本体部から突出する軸受け部411によって押さえられている。このために、リターンスプリング47が取付部10cから抜けてしまうといった事態が防止される。
【0053】
すなわち、本実施形態では、リターンスプリング47は、第1の折曲部421a(係合部)がステッピングモータ41の軸受け部411によって押さえられること、及び、弾性部として機能する第2の折曲部421bの弾性力、によって、接着固定やビス留めすることなく、確実にピックアップベース10の取付部10cに固定配置される構成となっている。このために、レンズ駆動機構40の組み立て作業が容易である。また、リターンスプリング47が確実に固定されるために、リードナット43がリードスクリュ42のネジ部421から抜け落ちて使用できなくなるといった事態を確実に避けられ、本実施形態のレンズ駆動機構40は動作不良を起こし難い。
【0054】
以上に示した実施形態は本発明の一例であり、本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は以上に示した構成に限定されるものではない。
【0055】
例えば、以上に示した実施形態では、リターンスプリング47の第1の折曲部421aがステッピングモータ41の軸受け部411によって押さえられる構成としたが、この構成に限られる趣旨ではない。すなわち、リターンスプリング47の第1の折曲部421aがステッピングモータ41の他の外殻部分によって押さえられる構成も本発明に含まれる。
【0056】
また、以上に示した本実施形態では、リターンスプリング47が取付部10cから抜けないように、第1の折曲部421aに加えて第2の折曲部421bも設ける構成とした。しかし、この構成に限られず、第2の折曲部421bを設けない構成も本発明の範囲に含まれる。
【0057】
また、以上に示した本実施形態では、レンズ駆動機構40をピックアップベース10に直接取り付ける構成とした。しかし、この構成に限らず、レンズ駆動機構40を専用に搭載するベース部材を設ける構成とし、レンズ駆動機構を搭載したベース部材をピックアップベース10に取り付ける構成としても構わない。
【0058】
また、本実施形態では、レンズ駆動機構40によって移動されるレンズがコリメートレンズであることとした。しかし、これに限らず、他のレンズを移動するレンズ駆動機構に対しても、当然本発明は適用できる。例えば、球面収差の補正を行うために使用されるビームエキスパンダーが備えるレンズ駆動機構に対しても、本発明は適用可能である。
【0059】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップはBD、DVD、CDに対応する構成とした。しかしながら、本発明の光ピックアップのレンズ駆動機構は、光ピックアップが対応可能な光ディスクの種類が、本実施形態で示したもの以外の場合(対応可能な光ディスクの種類が複数の場合ばかりでなく単数の場合も含む)でも適用できるのは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、光源と、光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する集光レンズとの間の光路中に配置されるレンズを駆動するレンズ駆動機構を備える光ピックアップに好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 光ピックアップ
10 ピックアップベース
10c 取付部
11 第1の光源
15 コリメートレンズ
17 第1の対物レンズ
18 第2の光源
19 第2の対物レンズ
40 レンズ駆動機構
41 ステッピングモータ
42 リードスクリュ
43 リ―ドナット(ナット部材)
44 レンズホルダ(レンズ保持部材)
47 リターンスプリング(バネ部材)
411 軸受け部
421 ネジ部
471a 第1の折曲部(突起部)
471b 第2の折曲部(弾性部)
D 光ディスク(光記録媒体)
RS 情報記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射される光を光記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズとの間の光路中に配置されるレンズを駆動する光ピックアップのレンズ駆動機構であって、
モータと、
前記モータの駆動によって回転するリードスクリュと、
前記リードスクリュのネジ部に螺合するナット部材と、
前記レンズを保持し、前記リードスクリュの回転による前記ナット部材の移動とともに移動するレンズ保持部材と、
前記リードスクリュのネジ部の前記モータ側の端部近傍に配置され、前記ナット部材と当接することがあるバネ部材と、
を備え、
前記バネ部材には、前記モータで押さえられる突起部が設けられていることを特徴とする光ピックアップのレンズ駆動機構。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記モータが固定配置されるベースに設けられる取付部に挿入配置されることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップのレンズ駆動機構。
【請求項3】
前記バネ部材には、前記取付部と係合して、前記取付部からの抜け止めとして機能する弾性部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップのレンズ駆動機構。
【請求項4】
前記モータは軸受け部を有し、
前記突起部は、前記軸受け部に押さえられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ピックアップのレンズ駆動機構。
【請求項5】
前記レンズは、コリメートレンズであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ピックアップのレンズ駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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