説明

光ピックアップユニットを保護する手段を有する光ディスク装置

光ディスク装置は、光ディスクを搬送するためのトレー1を備えており、トレー1は、装置内の位置と、一部装置外の位置との間で移動可能とされている。装置はさらに、動作中において光ディスクを保持し駆動するための構造13を備えている。構造13は、ターンテーブル6と、光ピックアップユニット8と、光ピックアップユニット8を移動させるためのガイド手段とを備えている。構造13は、回転する光ディスクの背後の水平傾斜軸14回りにおいて、傾斜可能とされている。トレー1にはキャッチ部材9が設けられ、光ピックアップユニット8には協働するキャッチ面20が設けられていることにより、トレー1が移動している際に、キャッチ部材9がキャッチ面20に当たり得る。これにより、光ピックアップユニット8を、セーブ位置に移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを搬送するためのトレーを備えた光ディスク記録および/または再生装置であって、
上記のトレーは、光ディスクを装置に挿入するためまたは光ディスクを装置から取り出すために、装置内の後方位置と、一部装置外の前方位置との間で移動可能とされており、
当該装置はさらに、記録動作または再生動作中において光ディスクを保持し駆動するための構造を備えており、
上記の構造は、ターンテーブルと、そのターンテーブルの背後に配された光ピックアップユニットと、回転する光ディスクに平行な平面内において、ターンテーブルに近い前方位置およびターンテーブルからより離れた後方位置の間で、光ピックアップユニットを移動させるためのガイド手段とを備えていることにより、回転する光ディスクの背後の水平傾斜軸回りにおいて、光ディスクがターンテーブルとクランパーとの間に駆動可能にクランピングされる上方位置と、当該構造が下方に移動されターンテーブルが光ディスクから解除される下方位置との間で傾斜可能とされている、
光ディスク記録および/または再生装置に関するものである。
【0002】
上記の「背後」との表現は、前方および後方へのトレーの動きに関するものであって、したがって「背後」とは、いくらかの距離をもって後方の位置にあることを指す。トレーの前方位置においては、操作者は、手動で光ディスクをトレーから取り出すこと、および/または手動でトレー上の光ディスクを交換することができる。トレーの後方位置では、上記の傾斜構造により光ディスクをトレーから持ち上げることができ、それにより、ターンテーブルが、光ディスクの中心位置と噛合し、光ディスク上方のクランパーに光ディスクを押し付ける。すると、光ディスクは、ターンテーブルにより(あるいは場合によってはクランパーにより)回転可能に駆動され、その間、光ピックアップユニットは、半径方向(すなわち光ディスクの回転軸に対する半径方向)に延びる軌跡に沿って、光ディスク下方を移動する。
【背景技術】
【0003】
上記で述べたような種類の光ディスク記録および/または再生装置は、たとえば、米国特許出願公開US−A−2003/0179695号に開示されている。この装置は、コンピュータの一部であってもよいし、音楽および/またはビデオシステムに組み込まれていてもよい。光ディスクは、CD、DVD、ブルーレイディスク、または光ピックアップユニットにより読取可能な任意の他の光ディスクもしくは光磁気ディスクであってもよい。
【0004】
一般的に、装置は、「eject(排出)」ボタンを押すことにより開けることができ、それにより、たとえば装置から光ディスクを取り出すため、トレーが後方位置から前方位置へと移動する。しかしながら、トレーが前方への移動を開始する前に、光ディスクを解除しトレー上に置くために、上記の構造はまず下方へと傾く。それにより、上記の構造は、水平位置(トレーの移動方向に対して平行な位置)から、傾斜位置(トレーの移動方向と角度をなす位置)へと動き、構造中のターンテーブルに近い部分は、構造中の回転している光ディスク背後の水平傾斜軸に近い部分よりも、より下方へと動かされる。
【0005】
さらに、トレーが前方への移動を開始する前に、光ピックアップユニットは、その前方位置へと移動させられる(すなわち、ターンテーブル近くに配される)。構造が傾斜させられるため、光ピックアップユニットの前方位置は、構造の水平傾斜軸により近い光ピックアップユニットの後方位置よりも低い位置となる。光ピックアップユニットの最も上方にある部分は対物レンズなので、光ピックアップユニットがトレーの移動中において前方位置ではなく後方位置に配されている場合、トレーが光ピックアップユニットの対物レンズに当たって損傷を与えるかもしれない。そのため、通常の状況では、光ピックアップユニットが最も低い位置にある場合のみ、トレーが後方位置から前方への移動を開始する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ピックアップユニットがその前方位置にないときに、トレーが後方位置から前方位置へと移動させられることも起こり得る。たとえば、電流が断絶され、装置が機能できない場合が挙げられる。かかる場合には、光ディスクを除去するため手動でトレーを前方に移動させることはでき得るが、光ピックアップユニットがその後方位置にあれば、この手動の移動によって光ピックアップユニットの対物レンズにトレーが当たることもあり得る。
【0007】
本発明の1つの目的は、装置への光ディスクの挿入または装置からの光ディスクの取出しのために光ディスクを搬送する移動可能なトレーを備えた、上記で述べたタイプの光ディスク記録および/または再生装置であって、トレーの移動が光ピックアップユニットの部品を損傷し得ない装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、請求項1に記載の装置により達成される。具体的には、本発明に係る装置においては、トレーにキャッチ部材が設けられ、光ピックアップユニットに協働するキャッチ面が設けられていることにより、トレーが後方位置から前方位置へと移動する際に、光ピックアップユニットが後方位置にある場合に、キャッチ部材がキャッチ面に当たり、光ピックアップユニットを、前方位置すなわちターンテーブルの方に移動させるように構成されている。これにより、光ピックアップユニットは、より低い位置へと移動させられるため、トレーの部品が光ピックアップユニットの上を移動する際に、移動中のトレーが対物レンズに衝突する可能性がなくなる。
【0009】
1つの好ましい実施形態では、光ピックアップユニットの対物レンズが、トレーの対称軸の垂直面内に配され、上記のキャッチ部材およびキャッチ面が、ある距離をもって上記の垂直面の一方の側に配され、好ましくは7mmよりも大きな距離をもって配される。これにより、半径方向への対物レンズの移動経路が、トレーの対称面内に配され、キャッチ部材は、対物レンズの移動経路に平行な経路を辿ることとなるので、キャッチ部材は、対物レンズから離れた状態に保たれ、したがって対物レンズに衝突する可能性がなくなる。
【0010】
好ましくは、キャッチ部材は、光ピックアップユニットのキャッチ面に容易に当たることができるように、トレーの下面に設けられた突起とされる。1つの好ましい実施形態では、キャッチ部材は、傾斜させられた下面を有するものとされ、それにより、キャッチ部材の前方側が、キャッチ部材の後方側よりも低くされる。トレーが前方位置に向かって移動する際、キャッチ部材は、その前方側すなわちより低い前端において、キャッチ面に当たる。この前端は、キャッチ面に接触するよう、十分に低い位置まで届いていなくてはならない。キャッチ部材は、光ピックアップユニットを、ターンテーブルに近い低い位置へと押しやった後、トレーが前方位置に向かってさらに移動するのに伴って、キャッチ面の上を通過する。その後、トレーが後方位置へと戻される際、キャッチ部材は再びキャッチ面の上を通過する。しかしながら、それによりキャッチ部材が光ピックアップユニットの部品に接触するであろう場合には、光ピックアップユニットは、キャッチ部材の傾斜させられた下面によって少し下方へと押しやられるので、キャッチ部材が、光ピックアップユニットを、後方すなわちターンテーブルから離れる方向に移動させることはない。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、上記のキャッチ面は、光ピックアップユニットの後方側かつ/または上側に設けられた突起の、実質的に垂直な表面とされる。その位置においては、キャッチ部材は、キャッチ面に容易に接触する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、光ディスク記録および/または再生装置の実施形態のいくつかの部分を説明することにより、本発明をさらに説明する。これらの部分とは、光ディスクを搬送するためのトレーと、光ディスクドライブおよび光ピックアップユニットを含む構造であって、それによりトレーが、光ディスクを装置に挿入するためまたは光ディスクを装置から取り出すために、装置内の後方位置および一部装置外の前方位置の間で移動可能とされている構造とである。説明は、単なる概略的な説明図である図面を参照して行う。図面は、単なる概略的な説明図であって、本発明の説明に関係する部分のみが示されている。
【0013】
図1から4に示したトレー1は、プラスチック製で、上面図(図1)および底面図(図3)で見ると実質的に長方形の形状をしている。トレー1の上面には、直径12cmのCDまたはDVDを受け取って搬送するための、円形の窪み2が付与されている。この窪み2は、トレー1の両側面まで延設されており、それにより、CDまたはDVDがトレー1に担持される際に操作者が手動でそのCDまたはDVDを噛合させることができるように、隙間3が形成されている。
【0014】
トレー1には、中央の開口部4が設けられており、この開口部4は、CDまたはDVDが回転駆動される際にターンテーブル6を受け入れるための円形部分5と、CDまたはDVDの記録または再生が行われている際に光ピックアップユニット8を受け入れるための、実質的に長方形の部分7とを有している(図5参照)。ターンテーブルは、回転軸6aの回りに回転可能とされており、支持面6bが設けられている。
【0015】
トレー1の下面には、突起9が設けられており、この突起9は、底面図(図3)で見ると長方形であり、側面図(図2および図4)で見ると平坦かつ傾斜させられた下面10を有している。突起9は、図5および図6を参照して後述するように、光ピックアップユニット8を移動させるためのキャッチ部材である。
【0016】
図5は、トレー1の断面図を示しており、矢印11は、トレー1の前方および後方への可動性を示している。図5では、トレー1は後方位置にある状態で図示されており、このとき、トレー1は光ディスク記録および/または再生装置の内部にある。この後方位置では、ターンテーブル6および光ピックアップユニット8は、トレー1の中央の開口部4内に存在することができる。ターンテーブル6は、ドライブモーター12のシャフト上に取り付けられており、ドライブモーター12は、水平傾斜軸14回りに矢印15で示すように回転することができる構造13上に取り付けられている。
【0017】
光ピックアップユニット8は、矢印16で示すように、構造13に対して直線移動するための、構造13に取り付けられた案内手段(図示せず)により案内される。この光ピックアップユニット8の移動は、ターンテーブル6の回転軸に対して半径方向への変位である。これにより、光ピックアップユニット8の対物レンズ17は、ターンテーブル6にクランピングされターンテーブル6と共に回転している光ディスク(図示せず)の表面に近接して、その表面に沿って移動する。
【0018】
トレー1が、図6の矢印18で示すような後方位置から前方位置への移動を開始する前に、構造13は、矢印19で示すように下方へと移動する。これにより、ターンテーブル6は低い位置に到達し、トレー1はターンテーブル6の上を移動できるようになる。通常の状況では、これにより、光ピックアップユニット8は、ターンテーブル6近くの前方位置にあることとなり、トレー1はさらに光ピックアップユニット8の上を移動できるようになる。しかしながら、光ピックアップユニット8が何らかの理由によりその後方位置にある場合には、トレー1は、光ピックアップユニット8の対物レンズ17に接触して対物レンズ17に損傷を与えかねない。かかる接触を防止するために、トレー1の下面には、光ピックアップユニット8のキャッチ面20に当たることができるキャッチ部材9が設けられており、光ピックアップユニット8が、矢印21で示すようにターンテーブル6近くの前方位置に移動されるようになっている。これにより、もはやトレー1が対物レンズ17に損傷を与えることはあり得ない。
【0019】
光ディスク記録および/または再生装置の上記で述べた実施形態は、単なる一例にすぎず、非常に多くの他の実施形態が可能である。
【0020】
図面では、本発明に係る装置は、水平に置かれているものとして描かれてきた。しかしながら、装置の向きが水平に配されていない場合には、本明細書および特許請求の範囲中の「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」との語は、対応の参照方向も含む点に留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トレーの上面図
【図2】図1に係るトレーの側面図
【図3】図1に係るトレーの底面図
【図4】図1中の2つの矢印IVに従う断面図
【図5】動作位置にある本発明に従う装置を示した図
【図6】別の位置にある本発明に従う装置を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを搬送するためのトレーを備えた光ディスク記録および/または再生装置であって、
前記トレーは、前記光ディスクを当該装置に挿入するためまたは前記光ディスクを当該装置から取り出すために、当該装置内の後方位置と、一部当該装置外の前方位置との間で移動可能とされており、
当該装置はさらに、動作中において前記光ディスクを保持し駆動するための構造を備えており、
前記構造は、回転軸回りに回転可能であり、かつ前記光ディスク用の支持面を有しているターンテーブルと、光ピックアップユニットと、前記支持面に平行な平面内において、前記ターンテーブルに近い前方位置および前記ターンテーブルからより離れた後方位置の間で、前記光ピックアップユニットを移動させるためのガイド手段とを備えており、
前記構造は、前記回転軸に対して実質的に垂直に配向された傾斜軸回りにおいて、前記光ディスクが前記ターンテーブルとクランパーとの間に駆動可能にクランピングされる上方位置と、当該構造が下方に移動され前記ターンテーブルが前記光ディスクから解除される下方位置との間で、傾斜可能とされており、
前記トレーにはキャッチ部材が設けられ、前記光ピックアップユニットには協働するキャッチ面が設けられていることにより、前記トレーが前記後方位置から前記前方位置へと移動する際に、前記光ピックアップユニットが該光ピックアップユニットの前記後方位置にある場合に、前記キャッチ部材が前記キャッチ面に当たり、前記光ピックアップユニットを前方位置に移動させるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記光ピックアップユニットの対物レンズが、前記トレーの対称軸の垂直面内に配されており、
前記キャッチ部材および前記キャッチ面が、ある距離をもって前記垂直面の一方の側に配され、好ましくは7mmよりも大きな距離をもって配されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記キャッチ部材が、前記トレーの下面に設けられた突起であることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記キャッチ部材が、傾斜させられた下面を有しており、該キャッチ部材の前方側が、該キャッチ部材の後方側よりも低くなっていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記キャッチ面が、前記光ピックアップユニットの後方側かつ/または上側に設けられた突起の、実質的に垂直な表面であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−541327(P2008−541327A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510684(P2008−510684)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051337
【国際公開番号】WO2006/120597
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】